林檎が毒に変わるとき、それは即ち時間の経過 (12)

 丑三つ時。予期せぬインターホンの音によって、静寂に沈んでいたぼくの意識は引き上げられた。

 心臓が跳ね上がる。頭が重い。どうやら、眠りについてからそう時間は経っていないらしい。頭を掻きながら思考の回復を待つ。

「インターホン……」

 呟いて、事実確認。カーテンの隙間から外を窺うと、当然、暗闇が広がっていた。後ろ髪を引かれたが、渋々ベッドから抜け出しそのままリビングへと向かう。

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 リビングのテーブルに置きっぱなしだったペットボトルのキャップを開けて、水を呷る。半分ほどを呑み込んで、覚醒。

 夢だったか、時間からしてその可能性は高い。玄関の方に視線を向けてみたけれど、異常は感じられない。まあ内側から見ても異常なんてわかるわけはないのだが。

 最近眠りが浅いから、幻聴があってもおかしくはない。そう決めつけて寝室に戻ろうとすると、玄関の扉の辺りからカタカタと奇音が聴こえた。

 耳を凝らすと、どうやら扉の向こう側に誰かいるらしいことがわかる。会話しているから二人以上。憤りを覚えつつ、ぼくは解錠し扉を開ける。

 扉の前には二人の男が立っていた。予想通り知人ではない。片方は恰幅がよく坊主頭の若い男。コワモテからモテを抜いた感じ。

 もう片方はストリート系のファッションに身を包んだ、チャラそうな若い男。粋がってるだけの奴。

 たぶん、二人とも歳はぼくとそう変わらないだろう。

 二人は扉が開いたことに驚きもせず、挨拶するわけでもなくぼくの顔を眺めて、ただただにやにやと不快な笑みを浮かべていた。頭の悪そうな二人組だ。

 事実、真夜中にインターホンを鳴らしている時点で相当イッちゃってるけれど、かと言って放置するわけにもいかない。インターホンを連打なんてされたら殺したくなるし。

「なんすか」

 ぼくは不機嫌かつ不愉快さを隠そうとはしない。こんな奴らに気を遣うのは馬鹿らしかった。

 恰幅のいい男はぼくの気なんて関係なさそうに、にやけ面で応える。どうやらストリート系の男は取り巻きなようだ。

「いやね、隣の奴に用があるんだけど出ねえんだよ。三日経った林檎を食わされそうになったから、きたんだけど」

「はあ……、それぼくには関係ないよね」

「何か知らね」

「今のご時世、隣人と付き合いなんてないから」

 確か若いカップルが住んでいたはずだが、ぼくはそれ以上のことを知らない。引っ越してきたときも挨拶にこなかったし。まあ、こないからと言ってどうとも思わないけれど。

「あっそう。じゃっいいや」

 そう言って、恰幅のいい男はストリート系の男を促し、一緒に去っていった。せめて謝れよ、とは言わない。これ以上関わりたくなかった。

 二人が廊下の角を曲がったのを確認してから、嘆息しつつ扉を閉めて施錠する。

 次きたら通報しよう。そう心に決めて、寝室に戻りベッドに横になった。

 ああ眠い。瞼を閉じると次第に身体が沈んでいく。意識は墜落直前。これくらいが心地いい。

 だけど、それは邪魔される。インターホンに。

 がばっと勢いよく起き上がる。また鳴った。血管が膨張する感覚。力強く足音を立てながら玄関に向かう。

 扉を開けると、隣人のカップルが立っていた。

 男の方は細身の冴えない感じ。眼鏡をかけていて、緩いパーマのかかった髪は中途半端な長さ。たぶん手入れをしていないのだろう。
 
 女はケバい、可愛くない、頭悪そうの三拍子。死ねばいいのに。

「うるせえよ」

「あっごめんなさい」

 男が頭を下げる。女にも下げさせろよ。そういう意味を込めて、ぼくは舌打ちした。

 それにしてもこの男も馬鹿だ。どうやら迷惑だということに今気づいたらしい。五日経った林檎を食べて死ねばいいのに。

「で、なに」

「林檎って何日まで大丈夫だと思いますか」

「三日は際どい。普通に考えたらわかるだろ。五日経ったら死ぬのに」

 女がわざとらしくため息をついた。ため息をつきたいのはこっちだというのに、どうにも立ち場を理解していないようだ。

「そう……ですか。でも、三日経ってるからって検査は酷いと思いませんかね。四日経ったわけじゃないのに」

「知らん死ね」

 ぼくはそう言って扉を思いっきり引いて閉める。そうして施錠して、チェーンをかけてからインターホンの電源を切った。

 急いで寝室に戻り、充電中の携帯電話を開く。

 番号を入力。三コール目に通じた。ぼくは名乗りもせず、相手の言葉を聴かず、いきなり話し出す。

「三日経った林檎を食わそうとして隣人が揉めてる。どうにかしてくれ」

「ああ、それは際どいですね。わかりました。住所、いいですか」

 住所と隣人の部屋番号を告げると相手は、ありがとうございますと言って電話を切った。これでいい。

 明日には静かになっていることだろう。きっと四日経った林檎を食べて。

 ぼくは再び眠りについた。

終わりです。
依頼してきます。

あっほんとだ。
すいません寝ぼけてました。

深夜のインターホン程出ようとする奴は少ない
この主人公はなかなかの変わり者だな
いやこの世界では普通なのかもしれないが
深夜に繋がる電話とか

色んな解釈が考えられるけど取り敢えず言いたいのは説明不足

なろうでも評価されなかったからこっちに来たんだろうが絶望的に表現力が足りない
独特の世界観を伝えるには語彙が必要だ
著名の小説家でさえもう少し説明をいれる

頑張って

>>10
ご指摘ありがとうございます。
はい、あなたの仰る通りです。
つまらないものをつまらないと指摘してくれる人が周囲におらず、この場を借りました。
励みになります。本当にありがとうございました。

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