モバP「サキュバスアイドル水本ゆかり」 (32)
「Pさん……♡」
目覚めたその瞬間から、今自分が見ている光景は夢だと思った。
目覚めたのに『夢』だなんて表現はおかしいかもしれないが……けれど、そうとしか思えなかった。
「Pさん……うふふ、面白い顔♪ まだ、寝ぼけているんですか? いつかの私のように」
「……俺は、寝ぼけているのか?」
「さあ、どうでしょう? でも、どちらでもいいじゃありませんか」
ここは、事務所の一室。外は暗く、すでに夜になっていることがわかる。
そして……ソファーで寝ていた俺の身体の上に、ひとりの少女がまたがっている。
艶めかしい息遣いは静かに荒々しく、舌なめずりをする顔つきは普段の彼女とは程遠く。
「はーっ♡ はーっ♡ やっと……やっと、あなたを味見できます。ずーっと、我慢していたんですよ?」
なにより、彼女の頭から生えた2本の山羊のような角と、背中から伸びる漆黒の翼が……彼女が、俺の知る清純令嬢ではないということをまざまざと見せつけていた。
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