女「あなたを殺して私は生きる!」 (25)

女「と言う事で、往生してください!」ブンッ

男「ぬおぉっ!?」ドサッ

女「ありゃ、避けられちゃいましたか。失敗失敗」

男「な、なんだっ!?暗くて全然分からなかったけど、なにかが俺の頬を掠ったぞ!?」

女「まぁ、大丈夫ですか?斬れてます?血は?実はうっかり耳とか取れてません?」

男「えっ?い、いやっ…痛みはないし、頬に生暖かい液体も感じないし…だ、大丈夫、耳もある。うん、万事無傷だ」

女「それは重畳です。さぁ、何時までも地面なんかに尻餅をついているものではないですよ。手を貸しますから、ほら」スッ

男「あ、あぁ、すまん…」

女「いえいえ〜♪では、改めて」チャキッ

男「?」

女「往生してくださいっ!!」ブンッ

男「そうだよ!そもそもお前が原因だったよ!!」


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女「もー、なんで避けちゃうんですか?」

男「い、いや、なんか本能的に…つ、つーかお前誰だよ!」

女「えっ?もしかして私のことを知らない感じですか?これでもこの地域では、最近ちょっとした有名人なんですけど私…」

男「ゆ、有名人…?」

女「えぇ。私のことを聞けば、最近の小学生や中学生は間違いなく狂乱しますよ。そして大人達は私の正体を暴こうと躍起になるくらいに」

男「えっ…そ、それってまさか…あなたは芸能人———」

女「いえ、通りすがりの通り魔です」

男「———とか…へっ?」

女「ですから通り魔、ですよ。子供は泣いて喚き、大人は私を捕まえようとてんてこ舞いになる連続通り魔です。あぁ、殺人鬼とも呼ばれてます」

男「じゃ、じゃあ、さっきから俺の頬を掠っていたのは、包丁とかの…」

女「私の日本刀の切っ先です♪」チャキッ

男「日本刀!?」

女「なんだ、まだ見えてないんですか?そうとう夜目が利かないようですね、あなた。そんな目でこんな夜中に出歩いてると、通り魔や痴女に襲われても文句言えませんよ?」

男「痴女には襲われてみた…って、違う!」

女「夜中なのに元気ですねぇ。しかしあなた見た目は高校生くらいなのに私を知らないなんて…あぁ、引きこもりの方ですか?」

男「ぐっ…!」

女「図星ですか。まぁそれなら、こんな田舎の通り魔事件なんて、あなたのお得意なインターネットにはそうそう乗らないでしょうからねぇ…知らないのも無理がありません」

男「くそっ…べ、別に俺は好きで引きこもりをやってるわけじゃ…!」

女「私は好きで通り魔をしてます」ドヤァ

男「ウザいと思うべきか怖いと思うべきか…って、うわっ!き、狐!?」

女「あっ、やっと見えてきましたか?えぇ、一応顔を見られるとまずいので、狐の面をしていますよ」

男(や、やっと相手が見えてきたぞ…顔には狐の面、更に服装は時代劇の浪人の様な着物。そして左手には本当に日本刀が…時代錯誤も甚だしい格好だな)

女「まぁ、どのみち声を掛けたら殺すつもりですけどね」ケラケラ

男「!」ゾクッ

男(や、やばい…今さらだが、こんな呑気にコイツを眺めてる場合じゃないぞこれ…!こ、こいつ、本物だ…なんでか分からないけど、やっぱり本能的にこいつはヤバいって分かる…マジで殺される!)

女「あはっ、良い感じに表情が強張ってきてますよ♪やっとこの状況を理解してくれましたか?」

男「あ、あぁ…まぁな」

女「あっ、逃げるとか考えないでくださいね?あなたみたいな万年引きこもり君の体力や脚力に、私が負けることはありませんが…それでも追いかけっことかは七面倒なので」

男「そ、そんなことは思ってない…」

女「では…あぁ、命乞いをするなら今の内ですよ?と言うかしてください。私はそれも込みで楽しむ派なもので。いわばメインディッシュの前の前菜ですね♪」

男「命、乞い…」

女「えぇ、土下座して慈悲を請うも良し。無様に泣いて憐れみを誘うも良し。逃げなければ、いっそ一矢報いようと向かってくるも良し…まぁ、その場合は即座に斬り捨てますが」

男「…」

男(俺は…コイツに命乞いしてまで、生にしがみ付くべきだろうか…俺はもう、半年近くも家に引きこもっている。その間、散々親や妹に心配と迷惑を掛けてきた…それにこのままじゃ高校だって時期に留年が決定するだろう。でも仮に今から高校に行ったとしても、友達もいなければ勉強だってさっぱりだ…それならもう、いっそ)

女「さて、中々に熟考しているようですが、どう命乞いするかは決まりましたか?」

男「…しろ」

女「…はい?よく聞こえませんでした。すみませんがもう一度」

男「だから…好きにしろ。お前が俺を斬り殺したければ、好きにすればいい」

女「はっ…正気ですか、あなた?」

男「至って正気だよ。どうせ俺なんて、生きてても周りに迷惑ばかり掛ける奴…そんなどうしようもない、生きてる価値のない人間だ。むしろ殺すって言うなら俺の方からお願いするよ」

女「…」

男「これが俺の命乞いだ。さぁ、一思いにやってくれ」

女「…ふざけるな」

男「えっ?」

女「ふざけるな!何が、何が自分は生きる価値もないだ!お前は!お前は!!」ガッ

男(掴み掛られて…こ、殺される…!)

女「ぐっ…ふーっ、ふーっ…あぁ…私としたことが、なんて無様な真似を…」パッ

男「ぁ…こ、殺さないのか…?」

女「興ざめです」

男「きょ、興ざめ?」

女「えぇ、あくまで私は、生に執着して恥も外聞もなく私に命乞いする人間を、無情にも切り捨てその断末魔と絶望の顔を見るのが快感なんです。したがってあなたみたいな死を覚悟したような廃人同然の人間を斬ったところで、なんの面白みもありませんから。ですから興ざめ、と」

男「そ、そんな…」

女「それにさっきの様な自分が悲劇の主人公かのように気取って、自己中心的な自己犠牲を論ずるような人間に反吐が出ます。殺す価値もない」

男「なっ、俺はそんなこと…!」

女「あるでしょう?自分で勝手に思い悩んで、自分で勝手に自分の価値を決めて…その上で自分が生きていたら周りに迷惑が掛かるから殺してくれ?ちゃんちゃら可笑しな話ですね。その考えの中に、あなたは自分が死んだらどれだけの人間が悲しむかなんて1mmたりとも考えていない…まったくもって自己中心的な自己満足の自己犠牲。自己陶酔も良い所です。そしてその実、本当は何よりも死を恐れているくせに」

男「っ…!」

女「また図星ですよね?まぁ、良く考え直すことですね。では」

男「えっ?い、行くのか」

女「えぇ、今は殺さないと決めた以上、もうあなたに用はありませんので。あぁ、安心してください?あなたがその気持ちの悪い考え方を改めた暁には、今度こそ殺してあげますから。言ったでしょう?私は、一度声を掛けた相手はどのみち殺します」

男「ぁ…」

男「っ!」ドサッ

男(や、やべぇ…緊張の糸が解けたら腰が抜けた…や、やっぱり、アイツの言う通り俺は、本心では死にたくなんてなかったんだ…)

男「くそっ、通り魔のくせに…」

男(あー、どうしよう…腰も抜けて、足も滅茶苦茶プルプルしてる…これは当分立てんぞ…)

男「…」

男(い、意識が…緊張の上に、何気に久々に他人とあんなに話したからどっと疲れが…で、でも、こんな道路のど真ん中で寝る訳には…あー、でも夜風が…ぁ)

男「…」Zzz

女「…」

男「んん…あれ…俺、いつ間に寝て…」

妹「あ…お、おはよう、お兄ちゃん」

男「妹…?えっ…ここどこ…」

妹「お、お兄ちゃんの部屋、だよ…え、えっと、ごめんなさい…その、ダメだって分かってたんだけど、お兄ちゃんが玄関の前で倒れてたから…ね、寝かせる為に、入っちゃっただけで…」

男「玄関…?」

男(まさか…さっきまのでは全部、夢?)

妹「あの、えっと、別にお兄ちゃんをベッドに寝かせただけで、私は他には何もしてないよ?だからその…」

男「悪い…出て行ってくれ」

妹「っ…!あ、あはは、う、うん。で、出てくよ、うん…えっと、ホントに勝手に入ってごめんねお兄ちゃん…あっ、朝ごはんはテーブルに置いておいたから、ちゃんと食べてね…」パタパタ

パタン…

男「はぁ…まさか夢かよ…でもあんな夢見るなんて、いい加減俺も罪悪感が限界って事か…?」

男「ってか今何時だよ…」

男「んー…はぁ…今日も一日、ゲームにネットサーフィンして無為に過ごしたな…」ボー

ガタッ

男「今日もコンビに行くか…」イソイソ

コツ…コツ…

男「そういや…あの変な通り魔とやらに会ったのはこの辺りか…」

男「いやいや、あれは夢だったんだって!」

男「…確か夢では、背後からいきなり」

男・女「「あなたを殺して私は生きる!」」

男「って、掛け声でうおぉっ!?」

女「ちっ、外しましたか…って、あら?私の決め台詞とハモった?」

男「お、おおおおおお前は!き、昨日の夢の通り魔!」

女「なぁんだ、その濁って死んだ魚の様な眼差しは、昨日の引きこもり君じゃないですか。連続通り魔に会った道を、翌日にまた通るとか中々に度胸がありますね。引きこもりの癖に」

男「ゆ、夢じゃなかった…!?」

女「夢? …あぁ、成程そういう…あなたは私がせっかく、柄にもなく説教なんてしてあげたと言うのに、それを夢として片付けた訳ですか…心底腹立たしいですね」チャキ

男「あわわわわわわわ!」ドサッ

女「そんなに怯えないでくださいよぉ…流石の私も傷つきますから。大丈夫ですよ。少なくとも、まだあなたのことは殺しませんから。ですからもっとフランクに行きましょうよ。私は元来、快楽主義者ですからシリアスな感じは苦手なんです」

男「ほ、本当か…?」ガクガクブルブル

女「通り魔に二言はありませんよ♪」

男「じゃ、じゃあ、今すぐ俺の喉元に、そ、その剣先を突きつけるのをや、止めてくれないか…?」ガクブル

女「ありゃ?あぁ、これは失礼。通りで怯える訳ですね」スッ

男「はぁぁぁぁ…」

女「さぁ、昨日も言いましたが、何時までも地面に尻餅などつくものではありませんよ」スッ

男「あ、あぁ…すまん」

女「しかし先程の反応…一応、死への恐怖に対しては、馬鹿げた見栄を張らずに素直になったようですね?」

男「まぁな…昨日お前と別れた後、腰が抜ける程に安堵したよ…生きてて良かったって」

女「それは重畳重畳♪まずは死を怖がってくれなければ殺し甲斐がありませんからねぇ」

男「こ、殺し甲斐って…」ゾクッ

男(や、やっぱりコイツは頭がおかしい奴だ…ま、まぁ、通り魔って時点で狂ってるか…)

女「でも、相変わらずその濁った眼はいただけません。と言う事はまだ、根本の考えは改まってないと…やはり殺すなら、希望に満ち溢れた輝く眼でないと美味しくありませんからねぇ…ふぅむ」ズイッ

男「な、なんだよ…」

女「いえ、昨日はあなたの自然な変化に任せようかと思いましたが…やはりここは、私が自ら一肌脱ぐのも吝かではないかなと。あなただけに任せてたら、いつまでかかるか分かったものじゃないですし…うん、決めました」

男「な、なにを…ってか面だが顔が近い…!」

男(い、良い匂いが…はっ!い、いかんぞ俺!相手は頭が狂ってる殺人鬼だぞ!?)

女「二日連続で会ったのも何かの縁。特別にこの通り魔のお姉さんが、あなたの悩みをぶった斬ってあげましょう。さぁ、さっそくお悩みプリーズ♪」

男「な、なんでそうなるんだよ!?」

女「だから言ったじゃないですか。あなたの自然な変化を待ってたら、いつまでかかるか分かったものじゃない…ですからこの私が一肌脱ぐことにしたんですよ。私は存外せっかちなもので」

男「なっ…や、やだよ!だってどうせ俺の考えが変わったら、結局お前に殺されるんだろ!?」

女「えぇ、もちろん。いやぁ、自分で手塩にかけて希望を与えた相手を斬る…考えるだけで今から期待でゾクゾクしちゃいますよぉ♪」

男「そんな相手に悩みなんぞ言えるkひぃっ!?」

女「なに勘違いしてるんです?これは善意だとか、お願いだとか、そんなものじゃないんですよ?これはあくまで命令です。分かったらさっさと大人しく、あなたの馬鹿みたいな青臭い思春期全開の悩みを言いなさい。さもなければ…」チャキ

男「お、俺を殺すってか…?」ガクブル

女「いえ、だから今のあなたは殺しませんってば。あなたが変な意地を張って悩みを言わないのでしたら、仕方ありません。あなたのご家族を殺らせてもらいましょう」スッ

男「!!??」

女「しょうがないじゃないですか。あなたは殺す価値もない上に、変化も期待できない。でも私は、昨日も今日も誰も殺ってなくて、正直もう欲求不満なんですよ…あなたのせいですよ?だったらあなたの責任であなたが償えない以上、あなたの家族に清算してもらしかないじゃないですか。ねぇ?」

男「ふ、ふざけるな!俺はどうなってもいいが、俺の家族に手を出したらタダじゃおかないぞ!」

女「だぁから、その考えをどうにかしろって言ってんですよ、私は。本当の死ぬ覚悟もないくせに口だけは尊大な…」

男「くっ…!」

女「悪いですが、私は本気ですよ?行方をくらまされては困るので、あなたの事は今日一日で調べつくしましたから…男君♪」

男「お、俺の名前を…!」

女「家族構成は父親は公務員。母親は専業主婦の傍らスーパーでパートを。そして中学生の妹さんが1人…いやぁ、男君の妹さんは可愛いですね。小動物系って奴ですか?実にキュートですよ。まぁ、あなたも顔だけ見れば整ってますしね。良いですね、顔の整った家系と言うのは」

男「…」

女「でも、妹さんは男君とは違って学校では人気者の様ですねぇ…成績優秀で部活では2年生で既にエースを務める文武両道、その在り方は品行方正にして清廉潔白、それはそれは才女と呼び声高い妹様…そんな評判が聞けましたよ」

男「何が言いたい…」

女「いやぁ、そんな完璧超人な妹様の無様な命乞い。その上で斬った時の断末魔と絶望の表情なんて、どんな極上の料理にも勝る代物だろうなぁ…と。一度でいいからそんな絶品を食べてみいたいなぁ…と」

男「ざけんな!妹は!妹だけには絶対に手を出すな!!」

女「だったら」チャキ

男「ひっ!」

女「大人しく私に悩みを言いなさい。そして己の青臭い考えを改めて、再びその眼に輝きを灯すことですね」

男「ぐっ…わ、分かった…言えばいいんだろ、言えば…その変わり絶対に家族には」

女「あはっ、安心してください。私はこの格好で声を掛けた相手しか殺らない主義ですから♪あなたが素直にしていれば、私からは接触したりしませんよ」

女「まぁでも、だからと言って取り留めもない、どうでもいいような悩みを言われても困りますし…やはりまずは脱引きこもりですかね。ではズバリ、あなたはなぜ引きこもりに?」

男「っ…!そ、それは…」

女「あっ、もしかして女絡みですか?痴情のもつれですか?裏切られましたか?」

男「へっ?い、いや、そんn」

女「あぁ!寝取りですか!寝取られましたか!あなた粗チンっぽそうですしね!」

男「んだとコラっ!」

女「そして女を、引いては他人を信じられなくなったと!そして引きこもりになったと!」

男「ち、ちがっ」

女「それで誰ですか?誰を寝取られちゃったんですか?幼馴染?先輩か後輩?まさかの妹?はたまたお母さん?」

男「いやっ、だから話をきk」

女「さぁさぁ、ではボテ腹でハメられてるビデオレターを見せてもらいましょうか!」

男「聞けよっ!!!!」

女「あら、違いましたか?」

男「最初から違うって言ってたわ!」

女「まぁ、それは失礼しました」

男「というか、アンタも通り魔とは言え、一応女なんだからその…そ、粗チンだとか、ボテ腹だとか言うなよ…恥かしくないのか…?」

女「あら、私はいつあなたに女だと明かしましたっけ?まぁ、女ですけど」

男「そりゃあ、だって…」ジー

女「あぁ、これですか?おっぱいですか?」ムニッ

男「ち、ちげーよ!このっ、ただでさえ目のやり場に困るのに寄せてあげるな!た、確かにそのむ、胸の事もあるけど、最初から声で女だって思ってたよ!そんな猫なで声の男がいてたまるか!///」

女「反応がまぁ初々しいことで…通り魔相手に童貞丸出しですね」ケラケラ

男「こ、このぉ…!///」

女「まぁ残念ながら、私は自分が変態だと自覚していますが痴女ではないので、そういう展開にはならりませんのであしからず」

男「そんな期待しとらんわ!!///」

女「あはっ、顔真っ赤にして言っても説得力ゼロですよ。あと、あなたみたいな引きこもりな童貞君相手に対する恥じらいは、生憎と私は持ち合わせていないもので…面も付けてますしねー」

男「そうかよ…」

女「そうですよー♪さて、そろそろ…男君?こんな感じで私と話していましたが、どうですかね?」

男「はっ…?な、なにが…」

女「いえ、どうせあなたが引きこもりになった原因なんて、他人への恐怖心とかなんじゃないですか?それも漠然とした形も捕めないような恐怖」

男「えっ…あ、あぁ、まぁ、それも一端では、ある…もう何年も友達とかいないし…」

女「生粋のボッチじゃないですかーやだー」ケラケラ

男「う、うるせぇ!お、俺だって本気になれば、と、とと友達の1人や2人簡単に…!」

女「ほほう?じゃあ明日は、学校に行って友達を2人ほど作って来てくださいよ。脱ひきこもり!脱ボッチ!一石二鳥!はい決定ー!通り魔先生からの宿題でーす!忘れた人は打ち首獄門の上バラバラ死体の刑だぞ☆」

男「ちょっ!まっ!む、無理だって!嘘です無理です!生意気言いました!正直俺、今この暗闇下でアンタと一対一で会話してるので一杯一杯なんだって!」

女「あっははは!まったく必死になっちゃってみっともないですねー♪でもいいですよー、それが命乞いだったら完ぺきでした。じゃあ仕方ありませんねー…そんなあなたに憐れみを感じたので特別ですよ?当分は私との会話で他人になれる所から行きましょうか。友達は小目標…いや、最終目標ですかね?」

男「どのみち作る羽目になるのか、友達…」

女「友達がいると心が豊かになりますからね。大事ですよ?心の余裕」

男「はぁ…」

女「大丈夫大丈夫。常に死とセットで存在する私との会話になれれば、一般人との会話なんて簡単にこなせるようになりますよ」

男「…凄い説得力あるなそれ」

女「でしょ?じゃっ、もうすぐ夜明けですし、今日はこの辺でお開きと言う事で」

男「ま、また明日もここに来るのか?」

女「えぇ、今日と同じ時間にここに来ますよ。あぁ、通報したければどうぞ。通報はされ慣れてますので問題ありませんから」

男「しないよ…したらどうせ」

女「一家まとめて血祭ですっ♪」チャキ

男「満面の笑みなんだろうなぁ…そしてその声なら狐の面さえなけりゃ…いや、どっちにしろ不気味で怖いわ」

ガチャ…

男「…」

妹「あっ…お、おかえり、お兄ちゃん」

男「…」スタスタ

妹「あ、朝ごはんは、今日はいつも通り、ちゃんと部屋の前に置いておいたから…た、食べてね?」

男「…」スタスタ

妹「あ、あと、今日は幼馴染さんには…」

男「行く気ない」スタスタ

妹「う、うん、じゃあ、今日も私が断っておくね…」

バタンッ

男「はぁぁぁぁ…」

男「幼馴染もいい加減、毎朝俺を迎えに来るの止めればいいのに…どんだけお人よしなんだよアイツ…」

男「…」

男「にしても今夜もか…今夜もアイツに会うのかぁ…他人との会う約束なんて久方ぶり…あ、あれ?」

男「そう言えば…通り魔とは言え女の子に会うのに、俺はこんなだぼついたジャージでいいのか…?」

男「今までは偶然だったから気にしてなかったけど…やっぱり会う約束をしたんだったら、それなりの身だしなみで行べきなんじゃ…」

男「…」ガサゴソ

男「や、やばい、こんなこと本当に久しぶり過ぎて、碌な服がない!」

男「でもいざ考え始めると、こんなジャージ着て人と会うなんて恥ずかくなってきたぞ…」

男「ど、どうしよう…」

男「…」ソワソワ

男「時間的にはそろそろだよな…」

男「振り返れば奴がいる的な」クルッ

女「あなたを殺して私は生きる!」ブンッ

男「マジでいたぁっ!って危ねぇ!!」ドサッ

女「どうも〜♪今日も無様な尻餅ご馳走様です」

男「お、お前なぁ!俺だって分かってるんなら斬りかかるなよ!当たったらどうする!」

女「あはは♪大丈夫ですよぉ、そもそも当てる気がありませんから」

男「へっ?」

女「言ったでしょう?私はあくまで、命乞いまで楽しんで殺すのが信条です。そんないきなりで不意打ちの様に殺した所で、なぁんの面白みもないじゃないですか。まぁ言うなれば、これは前菜前に出されるお水。私流のご挨拶です♪」ケラケラ

男「相変わらず考え方が恐ろしい…」

女「刀も刃ではない方で斬りかかってますしね。ほら」チャキッ

男「わ、分かった分かった、十分に見えた…だから俺の鼻先に切っ先を突きつけないで!」

女「あはは♪相変わらず愉快な反応で楽しいですね、あなたは」クイクイ

男「刺さる刺さる!押したら刺さるって!」

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