ダガール「フフフ…お待ちしておりました」(56)

ユダ「拳王はまだ居城に戻らぬのか?」

ダガール「は!依然として行方をくらませたまま。この機を逃す手はないかと」

ユダ「拳王を侮るな。迂闊に動けば墓穴を掘る事になるぞ」

ダガール「はっ。それともう二つ程お伝えしたき事が。あのレイが拳王と対峙したとの事」

ユダ「レイ…。もう一つは?」ピクッ

コマク「その場にマミヤも居りました。あれ程の美しい女、見間違えようもありません」

ユダ「レイとマミヤが同じ場に?フッ、それはなかなか面白い報告だ」

ダガール「マミヤにはユダ様の焼印がございます。それを見ればレイは必ず此処を突き止めましょう」

ユダ「ふむ…」

ダガール「トキやケンシロウもレイに助力する可能性も十二分にございます。如何致しましょう」

ユダ「お前達…俺は美しいか?」ムキィ

侍女A「はい、ユダ様!」

侍女B「ユダ様以上に強く、美しい方はこの世に存在しません!」

ユダ「…という事だが、流石にその3人を同時に相手にしては旗色が悪過ぎる」

コマク「サウザー様に援軍を要請しては如何でございますか?」

ユダ「六聖拳でもない南斗を幾ら集めたところで、その3人が相手ではどうにもならぬ」

コマク「サウザー様なら対抗出来ましょうが、あの方自らお出ましにはなりますまいなぁ…」

ユダ「拳王配下で奴らに対抗出来そうな者は居らぬものか。行方が知れんのは拳王だけで、他の主だった者は探せば見付かるだろう」

ダガール「こちらにリストアップしてございます」サッ

ジャギ(北斗神拳/南斗聖拳)

アミバ(北斗神拳/南斗聖拳)

リュウガ(泰山天狼拳)

ウイグル(蒙古覇極道/泰山流鞭術)

ヒルカ(泰山妖拳)

ガロン(竜吐火焔術)

ユダ「…本気でこの者共にレイ達の相手が務まると思っているのか?特に一番下の者は何だ?」

コマク「いえいえ。その者はあの拳王に面と向かって意見した剛の者。あの気概は実力以上に頼もしい何かを感じますぞ」

ユダ「今までお前の諜報に間違いがあった事は無かったな。信じようではないか」

ユダ「で、他の者はどうなる。辛うじて期待出来そうなのはリュウガ位だが、奴とて六聖拳には及ばぬぞ」

コマク「北斗の三男ジャギですが、何があったのかは知りませぬが突然一皮向けたらしく、あのケンシロウと五分の闘いを」

ユダ「何!まさか奴が!」

コマク「それにアミバは、トキすら舌を巻く秘孔術を身に付けたとの事です。今では救世主として崇められております」

ユダ「あのアミバがか?…コマクよ、お前の諜報には全幅の信頼を置いているが、流石にそれはにわかには信じられんぞ」

コマク「私も耳を疑いましたが、事実のようでございます」

ダガール「その3名を主軸にし、残りの3名は削り役にでもすれば、こちらに有利になりますかねぇ」

ダガール「では、この6名に打診を試みるという事でよろしゅうございますか?」

ユダ「そうするが良い。その間に俺も知略を張り巡らせておく事にしよう」

ユダ「ぬかるでないぞ。行け!」

ダガール「はっ!」

コマク「かしこまりましてございます」

ユダ「…」

ユダ「…レイか」

―クラブSTORK―

部下A「ジャギ様!ジャギ様!」ハァハァ

ジャギ「あ?どうした?」

部下A「えれぇ美人がジャギ様に会いたいって来てますぜぇ」ハァハァ

ジャギ「女ぁ?」

部下A「そりゃあもうヨダレもんで」ハァハァ

ジャギ「そのむさ苦しいツラして興奮すんな!…どれ、会ってやるとするか」

侍女A「貴方がジャギ様?まあ、何と凛々しいお方…」ウットリ

ジャギ「…で、俺様に何の様だ?」

ダガール「この女、貴方に差し上げると言ったら、どうなさいますかな?」サッ

ジャギ「タダで…ってわけじゃねぇんだろ?」

ダガール「流石は北斗の三男ジャギ様。察しが良い」

ジャギ「俺様に何をやらせる気だ?」

ダガール「フッフッフ…」

―奇跡の村―

ハブ「アミバ様」

アミバ「なんだ…」

ハブ「美女連れの小男が是非ともアミバ様にお会いしたいと。如何致しましょう」

アミバ「よかろう。通せ」

コマク「おお~貴方様が救世主と名高いアミバ様でございますか」

アミバ「そうだ。…で、何の用かな?」

コマク「希代の秘孔術の天才と名高いアミバ様に是非とも我が主に力をお貸し頂きたく。ヒヒッ」

アミバ「私を天才と知って助力を乞うとは、お前の主とやらは相当に賢い者のようだな。だが、ここを動くわけにはいかん」

コマク「それはどうした事で?」

アミバ「私はデクによる秘孔の究明…いや、患者の治療に忙しい身でな」

侍女B「ああ、何と気高いお方…」ウットリ

アミバ「フッ…。私の使命が、私の救世主としての自覚がそうさせるのだ…」

コマク「流石は音に聞こえたアミバ様!このコマク、感じ入りましてございます」

コマク「しかし、我が主の願いを聞き届けてくだされば、この女はもとより他の女もお好きなだけご用意致しますぞ」

アミバ「この私を見くびるでない!」カッ

コマク「ひぇっ」

アミバ「だが、そこまで私の力が必要ならば、救世主として見過ごす事は出来ぬ」

コマク「おおっ、それでは!?」

アミバ「うむ。だが、約束は果たして貰うぞ」ニヤッ

コマク「それは勿論ですとも。ヒヒッ」

―ユダの居城―

ユダ「例の者共は用意出来たか?」

ダガール「はっ。ウイグルは全身を複雑骨折しておりまして、とても戦える状態ではないので断念致しました」

ユダ「ふむ。他には?」

コマク「リュウガという男の拳王に対する忠心は並ならず、女にも食料にも全く関心を示さず、諦めざるを得ませんでした…」

ユダ「奴には少なからず期待していたが…、まあ良い」

ダガール「ヒルカと申す者は拳王軍において最も冷酷非情と謳われた男。実際に会いましたが、奴は大人しく従う様な男ではなく、引き込むのは危険と判断し…」

ダガール「最終的に引き込む事に成功したのは、ジャギ、アミバ、ガロンの3名に留まりました」

ユダ「構わぬ。奴らが3人で来るとも限らぬし、俺の知略は最悪の状況を想定したもの。元より大した影響はない」

コマク「ユダ様は本当に頭の良いお方」

ダガール「拳王やサウザーもいずれはその知略の前に墜つる事でしょう」

ユダ「ダガール、コマク、ご苦労だった。ゆっくり休むが良い」

ダガール「はっ!」

コマク「ヒヒッ、楽しみですなぁ…」

―ダガールの居室―

ダガール「コマクよ、ユダ様はレイに勝てると思うか?」

コマク「はい…。実力は劣らぬと思いますが、ユダ様はレイに嫉妬しておられる。それで不安でございます」

ダガール「ユダ様はご自分が美しいと認めた者に対しては無力になる。あのマミヤという女にすら、直接手出しが出来なかった程だ」

コマク「どうして良いのか解らず、配下の者の慰み者にしようとしていたところを、貴方様がお助けしたのでしたなぁ」

ダガール「ユダ様に汚名を着せぬ様、陰ながら支える事も副官たる私の役目。嫉妬に狂いさえしなければ拳力も器量も素晴らしいお方なのだがな…」フゥ…

コマク「ユダ様が用意した知略とは、一体どんなものでございましょうかなぁ」

男「ユダの宿星は妖星。美と知略の星だが、人は裏切りの星と呼ぶ」

ダガール「…何方ですかな?」

ダガール『暗殺拳である南斗聖拳の一派、南斗比翼拳を極めたこの私に気配を悟られぬ事なく部屋に立ち入るとは…』

男「お前達すらその裏切りの対象として例外は無いかも知れん」

ダガール「ほう…なかなか面白い事を仰いますな」チラッ

コマク「」ギラッ

コマク「にゃおーぅ!」ババッ
     
      鉱 支 猫 牙 拳

スカッ

コマク「あらっ?」

ダガール『こ、これは…!』

男「例えユダの南斗紅鶴拳の拳速を一億倍にしても、俺に触れる事は叶わぬ!」

男「お前達は黙って俺の話を聞くしか無いのだ…」

コマク「ただの一度のマグレで…」ササッ

ダガール「コマク、良いではないか。この男の話とやらを聞こうではないか」

ダガール「で、話とはどのような事ですかな?」

男「今のままではユダはレイに対して勝ち目は薄い。その理由はユダの嫉妬だ」

ダガール「ええ」

男「嫉妬というのはな、自分が持っているものを他人が持っていると思い込み、それは自分には無いものだ…と勘違いしている状態なのだ」

ダガール「…と言いますのは?」

男「ユダはな、レイという鏡を通して自分の美しさを見たのだ。だからレイに感じた美しさはユダ自身の美しさなのだ」

コマク「…では、ユダ様が常日頃自分は美しいと仰っているのはナルシストなわけではなく、事実だと…」

男「うむ。だが、ユダはその事に全く気付いていない。だから、奴が自分に対して言う“美しい”はそう在りたいという願望に留まっているだけで、事実として機能していない」

ダガール「ふむ。なるほど…」

コマク「ダガール様、今の話がお解りで?わたくしめには何が何やら…」

ダガール「それはつまり、ユダ様がご自分の美しさに気付けば、レイに嫉妬する理由は何処にも無くなるという事ですな?」

男「うむ」

ダガール「ユダ様は自分が認めた相手には無力になられるが、認める相手が自分自身だとすれば…」

男「本来の強さを遺憾無く発揮出来よう。レイにも劣るまい」

男『だが…』

ダガール「そうですな。いや、良い話を聞かせてくださいましたな」

ダガール『それ以上にユダ様の心が…』

ダガール「今夜はこちらにお泊まりなさっては?無論、食事も女性もご用意致しますぞ」

男「いや、俺はこの世界ではどんにな美味い飯も美人も頭の中で想像して楽しむしかなくてな…。気持ちだけ受け取っておく」

男「では、健闘を祈る」

コマク「…何とも妙な男でしたなぁ」

ダガール「だが、お陰で可能性の外にあったものが可能性として顕れた。ユダ様にご自身の美しさを再認識して頂かなくては」

コマク「しかし、どの様にすれば、その様な事が可能となりましょう?」

ダガール「ふむぅ…」

―ユダの居室―

ユダ「レイとマミヤ…。俺が心から美しいと認めた者達。だが、そんな者に限って何故遠く感じる!何故憤りを禁じ得ないのだ!」

ユダ「奴ら程ではないにしろ、認めるに値する美しい者を大勢囲ったというのに、俺の心は些かも満たされん」

ユダ「やはりレイ…貴様を殺して俺の方が強く美しい事を証明する以外に、この心の隙間を埋める事は叶わぬのか」ギリッ

ユダ「何故だ!何故この世に俺より美しい者が存在するのだ!」

ユダ「何故、俺には奴程の美しさが備わらなかったのだ…!」ハッ

ユダ「誰だ!?」

男「おお、初めて気取られたな。流石は南斗六星拳のユダ」

ユダ「…もしや、今の独り言を聞いていたのではあるまいな」

男「そのもしや…だ」

ユダ「くっ!」カーッ

男「恥じる事はない。一つお前に教えてやろう。他人を見て美しいと思うのは、自分が美しいからなのだ」

ユダ「…どういう事だ」

男「お前が嫉妬しているレイやマミヤの美しさは、お前の美しさだと言う事だ」

ユダ「戯れ言を抜かすな!それで慰めているつもりか!」

男「慰めではない。事実だ」

男「ただ、事実を事実とする為には、それが事実だと自分で認める必要がある。そうでなければ事実は虚構のままだ」

男「お前がどんな知略を用意したかは知らんが、お前はレイには勝てまい。自分でそう認めているのだからな。勝てない事が事実となるしかない」

ユダ「フッ…知った口を。そこまで言うなら見ているがいい。俺は必ずレイを血祭りにあげてくれる」

ユダ「俺は美と知略の星、妖星のユダ!レイなどには負けぬ!ふはははは」

男「そうか。だが、もう種は蒔いた。どんな芽が出るか、楽しみにしておこう」

男「ただ、お前やレイが死ぬといった芽だけは出て欲しくないものだ」

ユダ「安心するがいい。少なくとも俺が死ぬという芽だけは出ない事をな!」

侍女C「ユダ様」スッ…

ユダ「お前か」

侍女C「申し訳ありませぬ。立ち聞きするつもりは無かったのですが」

ユダ「構わぬ。お前にならば…な」グイッ

侍女C「あっ…」ダキッ

ユダ「お前は俺が心から美しいと認めた数少ない者。俺は美しい者の前では正直で在りたいのだ」

侍女C「はい」

ユダ「あの男の言う通り、今レイと闘えば俺は勝てぬであろう。俺はずっと幻影を追っていた。レイを、美しい南斗水鳥拳の舞を…」

ユダ「だが、そろそろ追う事を止めようと思うのだ」

侍女C「はい」

ユダ「そして、もう美しい女達で周囲を囲う事も止めよう。そうなれば、お前も自由だ」

侍女C「私をお側に置いては頂けないのですか?」

ユダ「俺の美しさはハリボテの美しさ。だがお前は本物の美しさ。お前には俺は似合わぬ」フッ…

侍女C「ユダ様…」

ユダ「無理矢理奪い去って来た俺を恨んでいよう。許してくれ」

侍女C「初めは恨みました。ですが、ユダ様は私のこの額の大きな傷を見ても眉一つ動かさず、美しいと認めて下さいました」

侍女C「他者を美しいと素直に認めるユダ様が醜かろう筈はありません。私はユダ様を心からお慕い申しております」

ユダ「お前は俺を美しいと認めるのか。言葉だけではなく、心から」

侍女C「はい。ユダ様は誰よりも美しいお方です。私の目にはそう移ります。私の心はそう認めます」

ユダ「」ダキッ

侍女C「」ダキッ

―ユダの居城―

ダガール「お待ちしておりました。私はユダ様の副官、ダガール」サッ

レイ「ユダはどこだ?」

ダガール『やはりトキとケンシロウも着いて来たか』

ダガール「ユダ様が居られる居室へ繋がる扉へとご案内致しましょう。どうぞこちらへ」

ギィー…

ケンシロウ「むっ!?」

トキ「扉が3つ…」

ダガール「お察しの通り、このうち1つだけがユダ様の居室に続く扉!」

ダガール「あなた方は3人で1つを選んでも結構ですし、1人ずつ選んで頂いても結構です」

ダガール「ただし、間違った扉を選んだ場合、ユダ様に会う事は叶いません」

ダガール『扉は全部外れ!中には用意した拳王軍の猛者が居るのみ!これこそユダ様の知略!』

ダガール『南斗六聖拳にあるまじき策だが、相手が相手だ。これで良い…。これで良いのだ…』

レイ「くっ、ユダめ!つまらん細工を!」

ケンシロウ「俺は左の扉だ」ギィ…

トキ「私は右を行こう」ギィ…

レイ「では俺は真ん中だ。この奥に奴が居なければ、どんな手を使ってもユダの居る場所を突き止めてやる…」

レイ『父さん、母さん、アイリ…今仇を取る!』ギィ…

コマク「ヒヒッ、まんまと罠にハマりましたな」

ダガール「奴等を侮ってはならぬ。爆破の用意は整っているか?」

コマク「もちろんですとも。居城を丸ごと罠とするとは、ユダ様は本当に頭の良いお方」

ダガール「…うむ

―左の部屋―

ケンシロウ「…ん?」

ガロン「む!貴様はケンシロウではないか!何故貴様がここに!」

ケンシロウ「お前はラオウの部下だな。何故ラオウの部下がユダの居城に居る」

ガロン「う…うむ」コホン

ガロン「あ~…ユ、ユダめが不穏な動きを見せていると知ってな、拳王様の為、敢えて話に乗ったのだ。決して美女に釣られて来たわけではないぞ!」

ケンシロウ「そんな話は聞いてない!」ズイッ

ガロン「ううっ!」タジッ

ケンシロウ「それで、どうするつもりだ。ラオウの為、この俺と闘うか」コキッコキッ

ガロン『バカめ!拳王様と五分に闘り合った化け物相手にこのわしが闘えるわけがなかろう!』

ガロン『しかし、奴の左腕は拳王様に破壊されたはず!しかも傷はまだ癒えてはいまい…。今ならば勝てる!』

ガロン「拳王様に仇を為す者をこのわしが放っておくと思ったか!」ズンッ

ケンシロウ「かかって来い!」クイクイッ

ガロン「わしの竜吐火焔術の極意、たっぷり味わうがいいわ~」ブォォォ

ケンシロウ「あたあっ!」バギャッ

ガロン「げえっぷ!」ドシャア

ケンシロウ「お前は俺の敵ではない!」

ガロン『ぐぐ…身体を触れさせてしまったわ。わしの命ももはやこれまでか…』

ガロン「…わしはもう死んだのだな?」

ケンシロウ「言ったはずだ。お前は俺の敵ではないと。敵ではない者を殺す事は出来ぬ」

ガロン「なんだと!?どういう事だ!」

ケンシロウ「お前のその目が俺の拳を止める。俺の拳はお前を敵だと認識しておらぬという事だ」

ケンシロウ「ここは通して貰うぞ」クルリ

ガロン「…負けたわ。あの小娘といい、ケンシロウといい、全く見事な者共よ」

ガロン「この乱世を救うとすれば、あの様な者達であろうな…」ズキッ

ガロン「いでえっ!わしも変な欲を出さぬが身の為という事だな」フゥフゥ…

―右の部屋―

ギィ…

ジャギ「おう来たな。へっへっへ…さて、どんな美女が…げえっ!?」

トキ「…ジャギ?ジャギだな」

ジャギ「何でここにトキが来るんだよぉ!美女はどうした美女は!」

トキ「お前はユダの策略に利用されたのであろう」

ジャギ「ユダぁ?またあの野郎か!全くとんでもねぇ疫病神だ!」

トキ「お前のその顔、アミバに治療してもらったのだな?」

ジャギ「ん?ああ…。兄者の病もヤツが治したんだってな。最初聞いた時はビックリしたぜ」

トキ「フッ、あの男は天才だ」

ジャギ「兄者と闘う理由はねぇし、闘いたくもねぇ。だからここ通っていいよ」

トキ「いや。私にはある」

ジャギ「えっ?」ギクッ

トキ「ケンシロウと同じく、弟の成長した姿を見ておきたい」スーッ…

ジャギ「ちょっ、ちょっと待て!俺は兄者の腕を知ってる!兄者と闘り合ったら死んじまう!なっ?なっ!?」

トキ「ケンシロウをも認めさせた、北斗羅漢撃の真髄を見せてくれ」ギラッ

ジャギ『げっ、眼光だけで殺されそうだ』

ジャギ『ユダの野郎め…。ヤツのせいでレイの次はトキと闘り合う羽目に!』スッ…

ジャギ「ほおおおお…」スーッ…

北斗神拳秘奥義
     無 歩 の 構 え

トキ「む!」

トキ『闘いの場に在りながら、殺気も怒気も、気配すらも感じぬ!』

トキ『これが羅漢撃の極意か!いや、北斗神拳そのものの真髄が体現されているかの様だ』

トキ「ジャギ、見事だ」スウーッ…

     北 斗 天 帰 掌

ジャギ『あれは北斗天帰掌!相手の拳に倒れても恨みを残さず天に帰るという近いの儀礼!…トキはこの構えに死ぬ覚悟を!』

トキ『ジャギ、存分に来るが良い』コクリ

ジャギ『悪いが俺は天帰掌は構えねぇぞ。闘いたくもねぇ闘いでくたばって、恨みを残さねぇなんて出来るわけねぇだろが』

ジャギ「トキ!これが極めた羅漢撃!この無想の突きがかわせるかー!」

北斗神拳奥義
     無 想 羅 漢 撃

ブオカガガ!

トキ「!」カッ

トキ「うおっ!」ブシュウッ

トキ「うぐっ…」ガクッ

トキ「気付いた時には当たっていた…!避ける事も防ぐ事も出来ぬ。ジャギ、お前は何という拳を身に付けたのだ」

ジャギ「受けに回ってくれて助かったぜ。兄者に相討ち狙いで来られたらひとたまりもねぇからな」

トキ「お前に勝つには相討ちを覚悟せねばならぬという事か…。見事だジャギ。成長したな」フッ

ジャギ「まだだよ。俺はこの拳をもっと磨き上げるんだ。相討ちすら許さねぇ程な」

トキ『ケンシロウ…。お前がジャギを生かした理由がよく解ったぞ』

―ユダの居城―

コマク「3つの部屋では既に闘いが始まっておりましょう。今爆破すれば誰も逃げる事は出来ますまい」

ダガール「…うむ」

ダガール『本当にこれで良いものか…』

アミバ「爆破だと?それはどういう事かな?」スッ

ダガール「むっ!貴方は真ん中の部屋で待機していたはずでは!?何故ここに!」

アミバ「んん~?ユダが退けとほざいたのよ。天才のこの俺に退けと!」

コマク「どういう事だ!ユダ様に伺っていた話とは違いますぞ!」

ダガール「ユダ様!まさかレイと直々に決着を!」

ダガール「コマク、この扉を開けるのだ!」

コマク「お忘れでございますかダガール様。この3つの扉は一度閉めたら二度と開けられぬ仕掛けとなっている事を」

アミバ「おのれら~…、この天才を謀りおったな!この場でデクにしてくれるわ!」

ダガール「ほう、この私と闘ろうと言うのですか。知っておりますぞ!貴方は秘孔の知識に長けるだけで拳法の腕前はさほどではないと言う事を!」ピシッ

アミバ「なにぃ~?」

ダガール「貴方は手当たり次第に様々な流派を学んだは良いが、誰からも奥義を授けられなかったとか!それで南斗比翼拳伝承者のこの私に勝てますかねぇ?」

アミバ「南斗六聖拳ならいざ知らず、その様なザコ南斗などものの数ではないわ!天才を侮辱した罪の重さを思い知らせてくれる!」ササッ

ダガール「ザコ南斗…?ふっ、ふははは!これは可笑しい。…私はそういう冗談は許せたいタチでね」スッ

ダガール「こちらこそ思い知らせてあげましょう!」

ダガール『正直、これ程の猛者が集う中、私だけが闘いの外に居た事に我慢ならなかったのだよ』

ダガール『私もまた拳士!南斗比翼拳の伝承者ですからな!』フワーッ…

ダガール「はッ!」ビュオッ

アミバ「ふんっ!」バゴオッ

ダガール「ぐあっはっ!」ヨロッ

アミバ「俺はかつてレイと共に南斗水鳥拳を学んだ男だ!お前程度の拳など止まってみえるわ!」

アミバ「印可を受けていないとは言え、ザコ南斗とはわけが違うぞ!」ギラッ

ダガール『くくっ!私とした事が敵を甘く見過ぎたか!あの鋭い眼光は一流拳士のそれ!』タラリ

ダガール『ユダ様を相手にするつもりで掛かって丁度良いやも知れぬ…』

コマク『この男、ダガール様より一段上手だ。わしもサポートせねばなるまい…』

ダガール「ぐはっ」ドシャッ

コマク「ぎゃっ」ビターン

アミバ「二人掛かりでその様では話にならぬわ。フッフフフ」

ダガール「バカな…何と言う強さだ」ハァハァ

コマク「我々が子供扱いに!」ゼェゼェ

アミバ「天才の俺は慈悲深い。今すぐ詫びを入れ、俺の天才振りを称えるならば今回の件は無かった事にしよう…」

アミバ「さあ、どうする?」カキッカキッ

コマク「ひっ!参りましたぁ!」ガバアッ

ダガール「悔しいが認めざるを得ぬ。この強さでどの拳法の奥義も印可も受けておらぬとは。恐るべき天才拳士よ」ガクッ

アミバ「やはり俺は拳法家としても天才だったようだな…」フッ

アミバ『トキだのケンシロウだの拳王だのがおかしいだけよ。俺は充分天才だ』

―真ん中の部屋―

レイ「…むっ!?」

ユダ「久し振りだな、レイ!」

レイ「…誰だ?」

ユダ「フッ、そうか。髪も短くし、化粧も落としたからな。これを見ろ」サッ

レイ「U・D…?貴様!ユダか!」

ユダ「レイ!今日こそ決着を付けてくれる!貴様の幻影を追うのもこれで終いだ!」ババッ

レイ「黙れ!ジャギを唆し、俺の両親を殺しアイリの幸せを奪ったその報い、今こそ受けて貰うぞ!」ススッ

ユダ「今は乱世、平和な世とは違うのだ。そやつらは生き抜く力が無かった。それだけの事に過ぎぬわ!」

レイ「貴様!」バッ

ユダ「沈め!水鳥!」バッ

バシィーン…

レイ「」スタッ

ユダ「」スタッ

レイ「ユダ!腕は衰えておらんな!」

ユダ「貴様こそ、以前にも増して技が切れているな。そうでなくてはつまらん!」

レイ「それ程の腕がありながら何故女拐いなどにに身をやつしている!」

レイ「マミヤは、マミヤはお前のせいで女である事を捨てようとしているのだ!」

ユダ「…貴様を動かすのは両親や妹、そしてマミヤへの愛か?」

レイ「そうだ!愛を知らぬお前には解るまい!」

ユダ「笑止!今は乱世!人の為に動く時代ではない、自分の為に動く時代なのだ!」

ユダ「ヒャハッ!」ブシャアッ

      伝 衝 裂 波

レイ「!」サッ

ユダ「切れろ切れろ切れろおっ!」ブシャシャシャシャ

レイ「無駄だ!この距離でその技では俺を捉えられぬ!」ササササッ

ユダ「フフフ…それはどうかな?」

レイ「なに?…むっ!」ガコン

ドバアアアーッ!

レイ「部屋の四方から水が!?貴様、俺を溺死させようとでも言うのか!それではお前も巻き添えを受けるぞ!」

ユダ「貴様を溺死させるつもりはない。安心しろ」

レイ「…水が止まった?」キョロキョロ

ユダ「この水場で貴様の水鳥拳を存分に発揮出来るかな?」ニヤリ

レイ「くっ、そういう事か!」

ユダ「貴様の華麗な動きの真髄はその脚の動きにある!だが、脚を封じられては…ひゃは!」ブシャッ

ズババババッ

レイ「ぐあっ!」ズバッ

ユダ「どうだ!先程の様には交わせまい!切り刻んでやるわ!」ブシャシャシャシャ

レイ「うっ!ぐあああっ…!がはっ!」ガクッ

ユダ「止めだ!」

南斗紅鶴拳奥義
        血 粧 嘴

レイ「!」クワッ

レイ「ひょおぅっ!」バシャッ

パアアアッ…

ユダ「!…おお…」

ユダ『美しい…。これぞまさしく俺が追い求めた美しい南斗水鳥拳の舞い!』

レイ「でやあああっ!」

南斗水鳥拳奥義
       飛 翔 白 麗

ユダ『この拳に倒れるならば悔いは無い!むしろ本望!このまま認めた男の胸に抱かれて死にたい!』

―他者を美しいと素直に認めるユダ様が醜かろう筈はありません。私はユダ様を心からお慕い申しております。

ユダ「!」ハッ

ユダ「俺は何を考えているのだ!」キッ

レイ「ユダ、妖星は二度と輝かぬ!」

ブシュン!

スバアッ!

ユダ「ぐう…!ぐぬふふふ…起死回生の奥義も腕一本止まり!残念だったなレイ…!」ニヤリ

レイ「なっ!?」

ユダ「腕はもう一本あるぞ!」スウーッ…

レイ「うっ!いかん!」サッ

南斗紅鶴拳奥義
    南 斗 鷹 爪 破 斬

ズビュウッ

レイ「うおあっ!ぐうっ…う…腕が」ダラーン

ユダ『脚を封じられた状態でこの拳速をもってしても致命に至らぬのか!流石は俺が認めた男!』ハァハァ…

ユダ「お互いに腕一本失ったが、脚を封じられているお前の方が不利!最後は俺の知略が勝ったな!」

―ユダの居城―

侍女C「ユダ様…きゃっ」ドンッ

マミヤ「あっ!だ…大丈夫?」スッ

侍女C「え…ええ…」

マミヤ「ごめんなさい。ちょっと聞きたい事があるの。レイという男を知らない?ここに来てるはずなの」

侍女C「おそらく、ユダ様の元に…。私もユダ様を探していたのです。副官のダガール様ならユダ様の居場所をご存知だと思って…」

マミヤ「そう。なら目的は一緒ね。そのダガールって人、何処に居るの?」

侍女C「貴女は…?」

マミヤ「これを見て。貴女と同じよ」サッ

侍女C「肩にUDの烙印が」

マミヤ「さあ、行きましょう」

侍女C「ええ」

アミバ「ん~?おお~っ?美女だ、美女が来おったぞ!しかも二人!」

侍女C「ダガール様!」ダダッ

アミバ「あっ、貴方は!」

ダガール「おお、貴女はいつぞやの。折角逃がして差し上げたのにまた舞い戻って来られるとは、どうしたわけですかな?」

アミバ「天才を働かせた礼として、この二人は貰って行くぞ。さあ、私と一緒に来なさい」スッ…

マミヤ「退きなさい!」バチン

アミバ「ああ~!この俺の顔を!この俺の天才の顔を~!」ワナワナ…

アミバ「貴様!この俺を誰だと思ってるんだあ!」

マミヤ「貴方邪魔」キッ

侍女C「天才でしたならば、少しは空気を読んで頂けますかしら」キッ

アミバ「うぐっ!ぐうう…」ヘナヘナ…

ダガール『天才にも弱点がありましたか』

ダガール「―なるほど。しかしそれは無理ですな」

マミヤ「ええっ!どうして!」

ダガール「この扉は一度閉めると二度と開かぬ仕掛けが施されているのです」

マミヤ「ケンやトキは!?彼らなら仕掛けごと扉を破壊する事くらいわけは無いはず!」

ダガール「ユダ様の拳にすら耐えるよう設計されているのです。破壊する事などとてもとても…」

ドガアアアン!

ジャギ「ふう~…!」コキッコキッ

バギャアアアアン!

ケンシロウ「はあ~…!」スッ

マミヤ「ケン!」

ダガール「…信じられん」

ケンシロウ「マミヤ、レイを追って来たのか?」

マミヤ「ええ、この扉の向こうにユダも居るみたいなんだけど、破壊する以外に開ける方法が無いみたいなの」

ジャギ「げっ!トキが居たからケンシロウが居る事は予想してたが、レイの野郎まで居やがるのか!」

ジャギ「これ以上面倒に巻き込まれるのは御免だ!俺は帰らせて貰うからな!」

トキ「うむ。ジャギよ、また会おう。再び成長したお前を見るのを楽しみにしているぞ」

ジャギ「へっ!…ったく、タダ働きの骨折り損だったが…」

ジャギ『あのトキにある程度認められただけ儲けモンかも知れんな』フッ

タタタタタッ

侍女A「ああっ!」

侍女B「お探ししておりました!」

ジャギ「あん?」

アミバ「…なんだ…?」

侍女A「どうか私を」

侍女B「貴方の側に置いて下さいませ!」

ジャギ「俺の…」

アミバ「…傍に?」

侍女A「はい…初めてお会いした時からわたくしの心は」

ケンシロウ「ふん!」ボコォッ

ドバアアアッ!

トキ「むぅ、いかん!」グッ

ダガール「手を掴め!」グッ

ジャギ「ケンシロウのバカ野郎!」グッ

アミバ「俺以上に空気の読めぬ奴め!」グッ

ザバアアアア…

レイ「水が引いて行く…」

ユダ「誰だ!あの扉を破壊するとは…!?」

ケンシロウ「俺だ!」ズイッ

レイ「ケン!皆!無事か!」

トキ「マミヤさん、立てるか?」

マミヤ「え、ええ…。ありがとうトキさん」

ジャギ「俺だ!…じゃねぇよバカが!おい、生きてるか?」

侍女A「ええ…」ポッ

アミバ「俺の天才的な反射神経がなくば危ないところであったわ…」フーッ…

侍女B「素敵…」ポッ

ダガール「すんでのところであった。お前にはまだまだ働いて貰わねばならぬでな」

コマク「おお…ダガール様ぁ」ブワッ

ガロン「いきなり水か流れ込んで驚かされたが、このわしの体のお陰で流されずに済んだわ。大事ないか?」

侍女C「…ありがとうございました」

侍女C「ユダ様!」

マミヤ「レイ!」

レイ「来るな!来てはならぬ!」

ユダ「我らはここで決着を付ける!この宿命の闘い手出しする事は許さぬ!」

ユダ『そうだ。この闘いで俺はレイの幻影を追い払い、そして決別するのだ!』

ユダ『ありのままの自分を認めなかった自分とな!』

ケンシロウ「この南斗同士の宿命の闘いには、北斗とて立ち入る事は出来ぬ!」

トキ「マミヤさん、見届けるがいい。男と男の死を賭した闘いを」

マミヤ「レイ…」

マミヤ『勝って!私にはもはや祈るしか…』

侍女C「ユダ様…」

侍女C『勝たなくてもいい。生きて戻って…。そして私のお傍に…』

レイ「はああああ…行くぞユダ!」

ユダ「ふおおおお…来るが良いレイ!」

レイ/ユダ「南斗究極奥義!」

     断 己 相 殺 拳

男「見事な知略だったな。流石は長年ユダの副官を務めるだけの事はある」

ダガール「おお、貴方か。…さて、何の事ですやら」

男「侍女の一人をユダにけしかけたのはお前だろう?ユダに自らの美しさに気付かせる為…」

ダガール「…まあ、あれほど上手くハマるとは私も計算しておりませんでしたがね。半ば一か八かのギャンブルの様なものでしたよ」

男「いや、お前は二人の気持ちを見抜いていたんだろう?隻眼ながら確りとものは見えている様だ」

ダガール「ああ…これですか」パサッ

男「!」

ダガール「酷い傷でしょう?かつてユダ様と拳を交えた折り、一瞬でこの様ですよ。美に拘るユダ様にこの姿を見せるわけには参りませんでなぁ」

男「今のユダなら気にしないんじゃないのか?」

ダガール「ええ。ですが今やこの眼帯は私のトレードマークの様なものですからな」パチッ

男「トレードマークで思い出したが、一つ気になる事がある。ユダの紋章は何故UDなんだ?」

ダガール「ユダのスペルはJUDAと綴るでしょう。その端を抜いた中の二つの字を紋章としたのですよ。何処かおかしな点がありますかな?」

男「いや…。俺は最初ユー(U)ダ(D)と読んでしまってな。ユダのユをそのままアルファベットのUで読ませていると思い込んでいたのだ」

ダガール「…フッ!」

ダガール「フハハハハ!これは可笑しい!私はそういう冗談は嫌いではなくてねぇ!」

ダガール「そうだ…。ユダ様に会って行かれますか?望むならばレイにも」

男「うむ」

ダガール「ユダ様」

ユダ「ダガールよ。俺が何も知らぬと思ったか。まんまとしてやられたわ」

ダガール「流石はユダ様。私の策など貴方の前では児戯に等しいものでありましたなぁ」

ユダ「だが、気付いたのはつい先程だ。この知略を司る妖星のユダをハメるとは、お前も大したものよ」

ダガール「お誉めに預かり光栄にございます。して、御体の加減は如何ですかな?」

アミバ「天才のこの俺が診ているのだ。悪いはずがなかろう。腕も綺麗に切断されていたお陰で、無事接合も成りそうだ」

ダガール「貴方は本当に天才ですなぁ…。どうです?ここでユダ様の主治医として仕えませぬか?私以上の地位が約束されましょうぞ」

アミバ「俺は地位肩書きに興味は無い!デクを使い新秘孔を究明…」チラッ

侍女B「」ニコニコ

アミバ「いや、病に苦しむ者共を治療し続ける事しか頭に無いのだ!」

侍女B「ああ…アミバ様…」ウットリ

ユダ「お前には世話になった。その女が欲しければくれてやろう。お前も依存はあるまい?」

侍女B「はい!」

侍女C「ユダ様…」

ユダ「お前にも世話になった。例えダガールの策にハマったとは言え、俺がお前に見せた気持ちに偽りはない」

ユダ「お前はこれから自由だ。そのアミバに着いて行くなり、マミヤの村で暮らすなり、好きにするが良い」

侍女C「いいえ。私もダガール様の策に嵌められた者の一人ですわ」ニコッ

ユダ「…お前…」

侍女C「私がユダ様に申し上げた言葉、心に偽りはございません」

侍女C「どうか今まで通り、お傍に置いてくださいませ」ニコッ

ユダ「美しい、何と美しい笑顔だ」フッ

侍女C「ユダ様、貴方様もです」

レイ「ユダ」スッ

ユダ「レイか…。俺はお前の両親や妹にした事を詫びるつもりはない」

ユダ「俺はこの通り動く事すら叶わぬ。仇を討ちたいのならば討つがいい」

侍女C「ユダ様!」

レイ「…俺とて餓えた狼となって多くの殺戮を繰り返した。だが、マミヤやケンに会って人間に戻れたのだ」

レイ「お前もまた人間に戻った。もう何も言う事はない」

レイ「それに…俺もとてもではないがお前を殺せる拳を放てそうにない。まだ両腕がまともに動かん」フッ

ユダ「」フッ

レイ「俺はマミヤと共に村へ戻る」クルリ

レイ「さらばだ、ユダ」

ユダ「…さらばだ、レイ」

ユダ『追い続けたレイの背中。しかしもうそれを追う必要はない!』

ユダ『何故ならば…』

侍女C「…」

ユダ『俺を認め、俺が認める者と、こうして愛し合う事が出来るのだから!』

―終わり―

―おまけ―

ガロン「ケンシロウに一撃で倒された挙げ句、わしだけ美女をものに出来んかったわい!」

ガロン「わしが居る意味があったのか?何故わしだけこんな散々な目に…」

男「お前は元々、大した見せ場もなくレイに倒される運命だったのだ。それから見れば今のお前は恵まれている」

ガロン「なんじゃお前は。こんな可哀想なわしの何処が恵まれておるのだ」

ガロン「何だか知らんが、こんな様なら華々しく散っていた方が良かったわ!」

男「じゃ、これ読んでみろ」サッ

ガロン「ん~?ほう、今の時代に漫画の本など残っておったのか。どーれ…」

ガロン「むっ、これはあの小娘ではないか!そしてこれはわしでこれはあのレイという男」

男「うむ」

ガロン「ぬ~…」パラパラ

ガロン「うぬうぬ~…」ワナワナ…

ガロン「なんじゃこれは。わしの名前すら出て来んではないか!しかもこの無様な最期はなんだ!」ビリィッ

男「今のお前とそっちのお前、どっちがマシだ?」

ガロン「い…今のわしじゃ…」

男「最後に火ッ火ッ火~!と叫びながら爆死するのと、散々な目に会いながらも何だかんだで生きるのとでは?」

ガロン「生きる方が良い…」

男「そういう事だ」

ガロン「しかし、折角生きるならわしとてもう少し活躍したいのだが」

男「朗報だ。若干二名ほど、お前の活躍が楽しみだと言ってくれている俺の世界の住人が居る」

ガロン「なにっ!それではもしかして!もしかして!」ハァハァ

男「一所懸命考えているが、お前を題材にしてもまるで構想が練れん」

ガロン「はあ~…」ガックリ

男「俺以外の有志に期待するか、構想が練り上がるまではお預けだ。何時になるか解らんがな」

ガロン「殺して!もういっそ殺して!」

―ホントに終わり―

スレタイはダガールになっていますが、実質的にユダ編です。

スレタイがダガールになっているのはダガールを黒幕にした為と、ユダよりも好きだという個人的な好みによるものです。

今回もお付き合いありがとうございました!

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