かきふらい先生『けいおん!』と、祈答院 慎先生『コープスパーティー』のコラボです。
世界観はまったくの正反対ですが、同じ高校生もの、メンバーの布陣や個々の設定・性格の
似ている箇所が随所に見られることから、このコラボを思いつきました。
いつもの部室で、例のおまじないを行った軽音楽部(放課後ティータイム)メンバー+αが、
タイトルのとおり天神小学校に飛ばされ、そこで如月学園のメンバーたちと会い、協力して
困難に立ち向かうストーリーです。
メンバーは両校ご存じの、以下の布陣です。
《桜が丘高校》 ※()内は担当楽器。
□平沢 唯:2年2組 軽音楽部(ギター)
□秋山 澪:2年1組 軽音楽部(ベース)
□田井中 律:2年2組 軽音楽部 部長(ドラム)
□琴吹 紬:2年2組 軽音楽部(キーボード)
□真鍋 和:2年1組 生徒会役員
□中野 梓:1年2組 軽音楽部(ギター)
□平沢 憂:1年2組
□鈴木 純:1年2組 ジャズ研究部
《如月学園》
□持田 哲志:高等部2年9組
□中嶋 直美:高等部2年9組
□篠原 世以子:高等部2年9組
□篠崎 あゆみ:高等部2年9組 学級委員長
□岸沼 良樹:高等部2年9組
□持田 由香:中等部2年3組
□鈴本 繭:高等部2年9組 演劇部
□森繁 朔太郎:高等部2年9組 演劇部
□宍戸 結衣:高等部2年9組 副担任
この両校のメンバー、上記にもありますがどこか共通している感じはありませんでしょうか。
ちなみに、ここには書かれていませんが、メンバーのピンチに駆けつけ、助けてくれるお助け
キャラを設定しています。
コープスパーティーの悲惨な世界観のもとに、1人でも死亡させるのを防ぐ目的です。
ヒントは1998年に放送された、あの巨大ロボットを操る“カラフルビーダマ人間”たちの
ギャグ&バトルアニメです。
自分も当時、実際に見ていました。
どんなキャラで、どんな経緯で登場となったのかは、今後の本編をご覧ください。
なお『けいおん!』側の時期設定は、哲志たちと学年を合わせる関係で、1期の終盤(11~
14話あたり。DVD/BRは6巻~7巻。)としており、クラス割りもそれに沿ったものと
なっています。
クラスという面で考えますと2期でもよい(唯たち5人は全員が同じクラスです。)のですが、
2期にしてしまうと、唯たちは3年生で受験を控えていてストーリー的にも難しくなることが
予想される関係です。
≪2009年9月某日 桜ヶ丘高校 音楽室≫
それは、あの終始嵐のようにドタバタした学園祭が終わって間もないころであった。
(詳しくは、1期11話「学園祭!」12話「ピンチ!」をご参照ください。)
軽音楽部、通称”放課後ティータイム”の面々と顧問の山中 さわ子は、部室兼練習場所で
ある音楽室で、練習後、お決まりのように“お茶会”をたしなんでいた。
律「なあ、みんな。」
澪「ん?なんだ?」
律「ちょっと、集まってくれよ。」
さわ子「ん?」
唯「なに?なにー?」
紬「どうしたの?」
梓「なんなんですか?律先輩。」
律「これだよ!これ、これ!」
律は周りに集まったみんなに、あるものを差し出して見せた。
それは、人の形をした紙切れであった。
澪「なんだ?これ。」
律「こないだ、ちょっとパソコンでドラムのこと調べてたんだ。で、ちょっと疲れてきたから
いろいろ見てたらさ。おまじないの特集、見つけたんだ。」
さわ子「おまじない?」
紬「律ちゃんが?」
律「そう、そう。そこで見つけたのが、これってわけ。”幸せのサチコさん”ってんだ。」
唯「幸せの………。」
梓「サチコさん………?」
律「そう。」
紬「なんの、おまじないなの?」
律「これを、みんなでいろんな方向から持ってさ。一斉にちぎるんだよ。」
唯「うん。それで?」
律「そうすれば、それをやったみんなが離れずに、ずっと友だちでいられるんだぜ。」
梓「ほんとですか?」
律「ほんとだよ。けっこう、効くらしいぜ。」
澪「でもな………。そもそも、律っておまじないに興味なんてあったのか?」
梓「そういえば、初めて聞きましたけど……。好きなんですか?」
律「あ、いや……。あたしも、部長だからさ。これから、チームとして団結しなきゃだし、
部の命運と将来を握ってるっていうか……それで。」
さわ子「………それ、わたしの立場はどうなるの………?(顧問的な意味)律ちゃん?」
律「いやいやいや………。細かいことは、抜きってことで♪」
さわ子「抜きにしないでっ!お願いだから!」
律「ま、ま…。それに、これ考えたのってどうもあたしたちと同じ高校生の子みたいだぜ。」
澪「そうなのか?」
律「同い年の子なんだし、親近感沸くだろ?プロフィール見たけど、悪い子でもなさそうだしさ。」
澪「う~ん……。まぁ、そう言われれば、そうかな………。」
唯「でも、おもしろそうだよね。ムギちゃん。」
紬「そうね。ちょっと、やってみたいわ。」
話をしているところへ、唐突に外からドアが叩かれる音。
コン!コン!コン!
紬「はーい。開いてますよ~。」
ガチャ…
ドアが開く。
憂「こんばんは~。失礼しまーす。」
純「失礼しまーす。」
唯「あ。憂~♪」
さわ子「いらっしゃい。」
唯の妹で、1年生の平沢 憂(うい)が、友人の鈴木 純を連れて入ってきた。
憂は共働きの父母に代わり家事を務める関係で、部活に入っていないいわゆる“帰宅部”で
あり、純はジャズの研究と演奏に特化したジャズ研究部、通称”ジャズ研”に入っている。
ジャズ研の練習が、いつもより少し早めに終わっていた純を連れて、憂は帰る前に音楽室に
寄ったのであった。
軽音部のことをよく知っていた純は、もとより入部するつもりなどまったくなかったのだが、
親友である憂が姉の唯絡みで部室に誘ううち、少しづつ興味を持ち始めていた。
そこへ、故意か偶然かもう1人の来客が。
和「こんにちは!唯、がんばってる?」
澪「和………。」
唯「和ちゃんも!」
唯の幼なじみで、生徒会役員の真鍋 和(のどか)。
入学当初は唯と同じクラスであったが、進級時のクラス替えで離れ離れになり、代わりに
放課後メンバーでただ1人違うクラスに入った澪が、新たなクラスメイトになった。
今日は生徒会の大事な仕事があり、それを済ませてから唯たちの様子を見に顔を出したの
である。
唯「ねえ、憂!純ちゃん!和ちゃん。こっち、こっち!」
紬「立ち話もなんだから、どうぞ。」
憂「あ、はい。」
3人は言われるがまま、テーブルの近くに歩み寄った。
歩み寄って真っ先に目にしたのが、例の“幸せのサチコさん”の紙切れ。
和「あら…?ねぇ。これ、なに?」
憂「お人形さんかな…?」
唯「あ、気になっちゃった?律ちゃん、お願い♪」
律「OK。」
律は先ほど、唯たちに話したこととまったく同じ内容を、一字一句違わず残さず、憂・純・和に
話して聞かせた。
和「ふ~ん。初めて聞くおまじないね。」
憂「おもしろそう。」
純「でも………。なんか、ちょっと気にならない?」
憂「え?なんで?」
純「“幸せのサチコさん”って言ってるけど……。その“サチコ”さんって、誰のことなん
だか、なんで幸せなのか全然わかんないし……。」
憂「純ちゃん………?」
言われてみれば、確かにそのとおりだ。
律の話している内容からすると、おまじないの効果が実現するのは間違いなさそう。
しかし、今純が言ったように、幸せのサチコさんの“サチコさん”が誰で、そもそもどうして
”幸せ”だというのか。
そのあたりのことが、なにひとつこちらに明確に示されていないのである。
和「律。そのおまじないのページに、説明とかはなかったの?」
切れものの和は、すぐに律に確認した。
律「う~ん…。一応くまなく見て回ったんだけど、かならずうまくいくみたいにしか書いて
なかったんだよな。サチコさんの由来も、なんで幸せなのかっていうのも見当たんなか
ったしさ………。」
澪「大丈夫なのか?そのページの子、下手したらサクラかなにかかもしれないぞ。」
梓「そうですよ…………。もしかしたら、同い年のふりした男の人で、あたしたちをワナに引っ
かける魂胆だったらどうするんですか?」
律「なんだよ?澪も梓も、疑ってるのか?サクラだったら、それらしくもうちょっと、手の
込んだページ作るはずだぜ。どう見ても、あたしたちと同じ高校生の子の作ったページ
にしか見えなかったんだよ。いくら“バカ”って言われてたって、この目まで言われて
もらっちゃ困るぜ?」
澪「う~ん…でもなぁ……。」
澪も梓も、まだ安心ならなかった。
”間抜けな味方は敵をもしのぐ”というくらいなので、気のいいのが売りの律がそれにつけ
込まれているのではないかと思ったのだ。
軽音部で良識持ちの2人だからこそ、100%安易に考えるわけにはいかないのである。
すると紬が、
紬「澪ちゃん。梓ちゃん。話してても、なにも変わらないし…………。一度、試してみたほうが
いいと思うんだけど………。」
唯「そうだよ!サクラとかインチキなんて、やってみなくちゃわかんないよ。」
澪「ムギ……。」
梓「唯先輩……。」
紬「やらないで後悔するより、やって後悔するほうがいいと思うんだけど……。」
唯「やろうよ!やってみようよ!」
紬も唯も、すっかり乗り気になっていた。
ここで、もう1つお知らせします。
コープスパーティーには如月学園のほか、白檀高校&桐章学園のキャラたちも登場します。
両校とも、如月学園同様に全員生存を目指すほか、桜が丘メンバーとも絡ませる予定です。
《白檀高校》
□刻命 裕也:2年4組
□黒崎 健介:2年4組 野球部
□袋井 雅人:2年4組 生徒会長
□片山 良介:2年4組
□大川 智寛:2年4組
□島田 快:2年4組
□山本 美月:2年4組 生徒会書記
□霧崎 凍孤:2年4組
《桐章学園》
□冴之木 七星:高等部2年1組
□大上 さやか:高等部2年1組
□犬丸 晴行:高等部2年1組
どうでもいいことながら、こうして見ると、女子高は桜が丘(桜高)だけという………。
3DSといいますか、『ブラッドカバー・リピーティッドフィアー』がよいと思います。
コープスパーティーは、ゲームですと現在全部で4つのシリーズがあります。
『ブラッドカバー・リピーティッドフィアー』
『ブック・オブ・シャドウズ』
『2U』(トゥーユー)
『ブラッド・ドライブ』
『2』
このうちもっとも基本的なのが『ブラッドカバー・リピーティッドフィアー』で、同作の
世界観のいろはを知ることが可能です。
少し前に、OVAとして発売された『トゥーチャード・ソウルズ』も、ストーリーに手は
加えられていますが、この『ブラッドカバー・リピーティッドフィアー』を原作とします。
もう1つのおすすめは『2U』で、全シリーズとおして唯一コメディ色の強い作品であり、
上記で紹介しております、如月学園以外の他校のキャラたちについても深く触れられます。
『2』はキャラがすべて変更された上、舞台が学校ではなくなってしまったこともあって、
自分としてはあまり好きになれません。
いかがでしょうか。
ちなみに、OVA『トゥーチャード・ソウルズ』の制作会社はアスリードです。
対する『けいおん!』は京都アニメーションで制作会社が異なり、高校生が主役という以外
共通項もほとんどなく、現実的にはコラボなどまずあり得ないのですが、それを飛び越えた
のがこの小説となります。
一番最初に申し上げましたように、桜が丘&如月両校メンバーの人数が9人、教師が学校の
OGという数少ない共通項をもとに、執筆を思い立ちました。
こちらも申し上げのとおり、白檀&桐章両校も含め、最終的には弊害も残さず、それぞれの
学校へ帰還させるラストを目指します。
唯と紬の反応に、戸惑う澪たち。
澪「和?どうする?」
和「うーん………。」
梓「純は?」
純「うーん………。」
唯「和ちゃん!やってみようよ。」
紬「純ちゃん…。やってみましょ?」
憂「やってみようよ!」
2人はしばらくの間、首をひねり続けていたが、
和「……………そうね。ちょっと、やってみようかしら。ものは試しって言うし。」
澪「和………。」
純「…………あたしも、やってみる。別に、減ったりするもんじゃないでしょ?」
梓「純も………。」
唯「うぉーい!!これで、決まりだね。ムギちゃん。律ちゃん!」
紬「さっそく、やってみましょ。律ちゃん。」
律「お、おう!じゃ、みんな並んでよ。丸くなって。」
さわ子「あ………あの………。わたしは………?」
律「あ……。さわちゃん、忘れてた………。てへっ♪」
さわ子「てへっ♪じゃないの~!一応、顧問なんだから。」
律「ごめん、ごめん……。まぁ、落ち着いてよ。さ、はやく並んで。澪も、和もさ。」
憂「梓ちゃんも、純ちゃんも並ぼうよ。」
澪「……じゃ、並ぶか。」
和「そうしましょ。」
純「さ、並ぶよ。」
梓「……うん。」
紬「ねえ。まず、このテーブルを移動したほうがいいんじゃない?終わったら、戻せばいいん
だし。」
律「お、そうだな。澪、唯。一緒に持ってくれよ。」
澪「ああ。」
唯「わかった!」
紬「梓ちゃんたちは、ソファーをお願いね。」
梓「はい。憂、純。こっち、持って。」
憂「うん。」
和「わたしも、手伝うわ。」
さっそく、準備が始まった。
音楽室はほかの教室よりやや狭いことに加え、テーブルが場所を取っている。
9人全員が輪になって並ぶには、若干きつめだ。
唯・澪・律・紬の4人がテーブルを抱え、部屋のすみに移動させた。
いつもかばんなどを置いておくソファーも、梓・憂・純・和の4人が壁際に運んだ。
憂・純・和のかばんは、各自がそれぞれわかりやすい場所に立てかけておいた。
こうして準備は整い、円陣が組まれた。
律を中心に、時計回りで澪→唯→紬→梓→憂→純→和と並び、最後にさわ子がきて完成となる。
全員が並び終えると、律が例の人型の紙切れを取り出した。
律「じゃ、始めるぜ。」
澪「ああ。」
唯「うん。」
律「あと、言い忘れてたんだけど。」
澪「なんだ?」
律「ただ、ちぎるだけじゃなくてさ……。」
紬「だけじゃなくて?」
律「ちぎる前に、心の中で呪文唱えるんだよ。」
唯「呪文?」
梓「なんですか?」
律「“サチコさん、お願いします”……これを、9回繰り返すんだってさ。」
和「9回?」
律「そう。つまり、今いる人数のぶんだけ、唱えるってこと。あたしと、澪と唯とムギ、梓、
憂ちゃんと純ちゃん、和、さわちゃんで9人だろ?」
和「うん。そうね。ちょうど、9人ね。」
律「それからさ、。みんな、9回きっかり唱えてくれよな。誰か1人でも1回足りなかったり、
1回多かったりすると失敗になっちまうからさ。間違えても、そこで止めんなよ。」
澪「失敗?失敗したら、どうなるんだ?」
律「そこまでは、書いてなかったけど……。まあ、とりあえずここはそのとおりにしな。」
唯「OK!」
律「いいか?みんな?」
全員「おうっ!」
さわ子「いいわよ。律ちゃん。」
律「それじゃ、いくぞ!みんな、念じろ!」
律の声を合図に、全員が今の言葉を心で念じ始めた。
律(サチコさん、お願いします………。)
澪(サチコさん、お願いします………。)
唯(サチコさん、お願いします………。)
紬(サチコさん、お願いします………。)
梓(サチコさん、お願いします………。)
憂(サチコさん、お願いします………。)
純(サチコさん、お願いします………。)
和(サチコさん、お願いします………。)
さわ子(サチコさん、お願いします………。)
時間にして、この間10秒あまり。
みんな一心不乱に、同じ言葉を3回、4回……。
5回、6回……。
ただひたすらに、きっかり同じ9回を目指して唱え続けた。
律「よし!そこまでっ!」
みんながまた一斉に顔を上げる。
律「みんな、9回唱えられたか?」
唯「唱えたよ!」
紬「唱えたわ。」
さわ子「大丈夫よ。」
残りのメンバーも、首を縦に振った。
澪「これで、いいのか?」
律「ああ。あたしも、バッチリ唱えたぜ。」
梓「次、その紙切れをみんなでちぎるんですね?」
律「ああ。あたし、頭持つから、みんな好きなとこ持ってよ。ちゃんと、爪でな。」
律が言葉どおり頭部を、ほかの8人は並んだ方向から、それぞれの部位を囲むように持つ。
どこもみな、人差し指と親指の2本の爪で、ガッチリとつかまれた。
律「合図したら、一斉に手前に引っ張るんだぜ。ちぎったら、切れ端はなくさないように、
生徒手帳にはさんどいて。」
唯「うん。」
和「わかったわ。」
律「じゃ、いくぞ!」
紙切れをつかんだ9人の手に、ぐっと力がこめられる。
律「せーの……。それっ!!」
つかまれた9方向から、一斉に紙切れが引っ張られ………。
ビリッ!!!
まるで図ったのかと思えるほどに、きれいな9つの切れ端ができあがった。
律「……っしゃ!大成功だぜ。」
律はその切れ端(頭部)を、みんなに見せた。
みんなも同じように、手の中の切れ端を見せる。
律「じゃ、みんな生徒手帳出して。切れ端、そこにはさむんだぜ。」
澪「ああ。」
紬「え~っと……手帳は……。」
律「はみ出さないように、確実に入れろよ。」
唯「うん。っと……。」
律とみんなは、それぞれ自分の生徒手帳を紺のブレザーの上着のポケットから取り出すと、
学生証が収まっているページのケース内に、切れ端をていねいに、確実に押し込んだ。
これで、おまじないはすべて終了ということになる。
律「よしっ!これにて、終わりっ♪みんな、切れ端は大丈夫か?」
唯「大丈夫!」
紬「入れたわ。」
梓「入れましたよ。」
澪「ちゃんと、しまったぞ。」
みんな、生徒手帳の学生証ケースに収まった切れ端を見せた。
律「憂ちゃんたちも、面倒かけたな。」
憂「いいえ。そんなことないです……。」
律「テーブルとソファーは、あたしたちで戻しとくからさ。憂ちゃんたち、もう帰っても
いいぜ。」
憂「すみません。」
純「じゃ、帰ろっか。憂。」
和「それじゃ、わたしたちはこれで………。」
和がそこまで言った、その直後だった。
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ……………。
音楽室の中に、異様な振動が起こった。
澪「なっ………なんだ!?」
唯「えっ?なに?なに?」
紬「どうしたの!?」
純「ちょっと、これって………。」
梓「地震!?」
さらにまた次の瞬間、
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ………………!!
「うわぁあああああああああああ………!!」
ここにいる誰1人経験したことのない、すさまじい揺れがみんなを襲った。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ………!!
澪「わぁああああああああっ!!」
憂「お姉ちゃん!!」
さわ子「みんなっ!!早く、テーブルの下に!」
さわ子が叫んだとき、部屋のあちこちがきしみを上げ始めた。
ミシ……ミシ……
ミシ……ミシッ……ギシッ………!
桜が丘高校の校舎は、さる有名なアメリカ出身の建築家によって建てられている。
日本文化を理解していた彼が設計したこの校舎、外観こそ今風の立派な鉄筋コンクリートの
校舎だが、中身はほとんどが趣きのある木造で、廊下から階段、教室の壁や床に至るまで、
そこらじゅうが板張りになっており、2009年現代の高校の校舎離れした佇まいなのだ。
そんなところに、謎の激しい揺れが襲ってきたのだから、大概の想像はつくだろう。
メキッ!!
バリッ!バリバリ!!バリッ!!
ガシャッ!!パリン……!
ガシャッ……!
「うわぁああああああああああああああぁ………!」
あちこちで壁の漆喰がはがれ、壁板が割れ、天井から吊り下がる丸い電灯がブランブランと
振り子のごとく大揺れし、タイル張りの天井から、タイルが数枚板張りの床に落下した。
壁際に運んだテーブルの上からはポットやティーカップ、皿が次々床に叩きつけられて砕け、
外に面した窓や、入り口のドアにはめ込まれたステンドグラス風の窓にも、今にも割れよう
かというところまで亀裂が入った。
ピシ………!ピシ………!
パリ………!パリ………!
パリッ………!
「わぁああああああああああああああああ………!」
ガガガガガガガガガガガガガ………ガ………ガ………………。
どれくらいだっただろうか。
しばらくして、ようやく長い揺れがおさまった。
音楽室の中は、もはやさっきの面影もほとんど消えた、見るも無残なまでの惨状………。
まさに“地獄絵図”と化している。
さわ子「………みんな、大丈夫!?ケガは?」
さわ子はみんなの状況を確認した。
誰もがみな床にへたりこんで、すぐには立って歩けそうもない状態だ。
律「うん………。な、な………なんとか………。」
澪「はぁ………。はぁ………。はぁ………っ………。」
和「すごい……揺れだったわね…………。」
憂「た………立てない………。立てないよ…お姉ちゃん………。」
唯「憂………。大丈夫だよ。落ち着いて……。」
普段のあのぐうたらぶりはどこへやら、唯は珍しく憂を励ましている。
ここはさすが姉というところか。
律「はぁ…はぁ……。今の……震度何ぐらいだ………?」
澪「わからない………。5強か、6弱だろ…………。」
紬「ほかの教室…大丈夫かしら………。」
純「もぉ……最悪………。」
梓「澪先輩………。」
澪「しっかりしろ、梓。大丈夫だ。」
さわ子「みんな。ちょっと、職員室に知らせてくるから、ここを動かないで。じっとしてる
のよ。」
さわ子がそう言って、職員室へ向かおうと立ち上がろうとした、次の瞬間!!
メキ……
バリンッ……!!
唯「えっ…?」
唯が左手をついていた床が割れ、大きな穴が。
それに呼応するかのように、9人が座っている部分の床全体が、音を立て、木くずをまき散ら
しながら崩れ落ちたのだ。
ババババリィィィィィィィィィィィィィィン…………!!!
唯「わぁああああああああああ…………!」
澪&律「うわぁあああああああああ…………!」
紬「いやぁああああああああああ…………!」
9人は甲高い悲鳴を上げながら、崩れた床の下へと吸い込まれていく。
梓「ぁあああああああああああ…………!」
憂&純「きゃぁああああああああああ…………!」
和&さわ子「あぁあああああああああああ…………!」
全員の視界には、飛び散る木くずと、上に飛んでいく景色、遠ざかるタイル張りの天井が写る。
やがて暗闇の中、ぷっつりとその意識が切れた。
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