【モバマス】江上椿「永遠ブルー」 (34)

椿Pの一人称SSです。椿さん以外あまりアイドルは出ません。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1469731237

変わった形状の岩が点在する笹川流れは、新潟県有数の景勝地である。

変化に富んだ海岸線と沈んでいく夕陽のデュオは、自然の作る素朴な芸術性を

感じさせ、自ずとシャッターを切る手に力を込めさせた。

そんな俺の隣で長い髪を潮風に靡かせながら

満足げにカメラレンズを磨いている女性がいる。

「絶景だね。蓬莱山だけでなく他の岩までほとんどが一望出来るよ」

「でしょう? 地元のオススメ穴場スポットなんですよ」

「しかし椿、よくこんな場所見つけたね」

「観光用の写真を市役所の職員さんに頼まれて、散策がてらに探していたんです」

彼女――江上椿は事も無げに言うが、ここは山の中腹辺りだ。

途中の山道から獣道ですらない藪の中に潜っていって約五十分

やっと樹木のない場所に出たと一息ついたら、このような素晴らしい光景が広がっていた。

確かに綺麗だが、散策で見つけ出すレベルを超えている気がする。

「確かにこれは観光紹介のメインになるかもな」

「ですよね。ここの眺めが大好きで絶対プロデューサーさんと

 一緒に来よう、って決めていたんです」

美しい海岸に真っ赤な夕やけ、二人きりの空間――

デートとしてはこの上ないロマンティックなシチュエーションだ。

とはいえこんな所で日が暮れてしまったら帰りが難儀するので。

この風景と俺たちを写真に収めた後、急いでまたあの獣道をかき分けて麓を目指した。

飛ぶ鳥を落とす勢いで業界をリードしている346プロダクションは、成果主義を重んじている。

どれだけ丁寧で誠実なプロデュースをしていても

視聴率とかファン数とか具体的な数字が結果として出なければ干されてしまう。

だからプロデューサーたちは必死で担当の子を

トップアイドルにすべく日々邁進している。

とは言え、そんな事務所の雰囲気から完全に取り残されたアイドルも居なくはない。

俺の担当アイドル・江上椿は正にそれだった。

マイペースを信条としている俺と椿は

地方のラジオ番組を拠点にした仕事で細々と活動していた。

都心での知名度は皆無に等しく、一年経ってもアイドルランクは未だにD辺りにいる。

椿より後に入った乙倉悠貴や早坂美玲といった後輩たちが

一年目で既にBランクに届くか届かないかになっているので

俺は落第生と言われても仕方なかった。

営業こそしているものの、とにかく仕事がこない。

テレビ局の大きな仕事は比較的知名度の高い同事務所のアイドルにばかり流れていく。

最近やっと手に入れた仕事と言えば、新作映画のエキストラ

その前はハイファイ☆デイズの販促の手伝いだ。

それ以外はもっぱらレッスンを積み重ねて

定期的に出すシングルをローカルラジオで発表していた。

レッスンスタジオの常連となっている椿は、気づけば

今をときめくニュージェネレーションズよりも歌もダンスも上手くなっていた。

少なくとも俺はそう感じているし、古参の

ディープなファンたちからもそういう評価をもらっていた。

「椿さん、こんなに実力あるのになんでもっとブレイクしないんですかね?」

ファンとの交流会で必ずファンから出る台詞がこれだ。

歯に衣を着せない人種になると

「プロデューサーは本当に真面目にぼくらの椿さんをプロデュースしているのか?」

という言葉まで飛び出す。

アイドルとしてのスキルは確実に伸びているのに、歌って踊る機会に

恵まれないのは俺のプロデュース能力にあるというのだ。

ラジオ番組で椿のシングルをオープニング代わりに流して宣伝しているのが

主な活動になっている現状を見れば、そう判断されても仕方なかった。

ひょっとしたら俺にはプロデュースの才能などないのかもしれない。

とにかくあまりにも仕事がないので俺たちは

アイドル営業として日本中の地方都市を回っていた。

唯一のレギュラーであるローカルラジオでも

旅コーナーを作って、毎週向かったその土地の

プチ名産品や新たな名所を探して紹介する事にしたのだ。

椿の撮った風景や商品の写真は、彼女のブログに貼って宣伝する。

実を言うとラジオ局の予算で椿と旅行するのが主な目的だったりする。

「ここの街、始めて来ましたけど温かな雰囲気ですね。

 一杯宣伝して回りましょう!」

椿は時折番組という事も忘れて、カメラマンも

舌を巻くほどの撮影魂を燃やしている。

シャッター音ラッシュと共に流れる商品紹介は椿のラジオの名物だ。

元々俺も椿も写真撮影が趣味で、彼女も写真部のつてを使ってスカウトしたくらいだ。

「今日は良いスポット見つけられて良かったですね」

ラジオ収録が終わった後、椿はイカ焼きに舌鼓を打っていた。

今回紹介した商店街のおばちゃんたちからもらったお土産だ。

そのお土産の詰まった袋を両手に携え、俺は彼女の隣を歩いていた。

ローカルラジオであるものの、その宣伝における影響は無視できない。

実際、椿のする宣伝で活気を取り戻しつつある商店街もあった。

「ああ。良い写真撮れたし、ブログも沢山見てくれるといいな」

「ふふ。プロデューサーさんは、私ばっかり撮ってましたね」

「……! そんな事は、ないと思うけど……ハハハ」

俺は仕事の合間にこっそりと椿を撮っている。

どうも彼女はレンズを向けられると

はにかんでしまうようで身構えてしまうらしい。

そんな緊張してしまう所があるのでラジオ番組以外の仕事は少し取りづらかった。

とはいえ被写体としても優秀な椿をどうしてもレンズに収めたくて

出来るだけバレないように彼女の食事風景やインタビューをしている所を

俺は遠巻きに撮っていた。

関裕美とはまた別の意味で自分の魅力に自信がないのかもしれない。

「さて、次のラジオは特別イベントで休みだし

 レッスンのローテーションも今一つ芸がないし……

 椿、何かやりたい事あるかい?」

「じゃあ私とデートなんかどうです?」

その時の椿の事は今でも昨日のように思い出せる。

冗談混じりな物言いの中に俺はさりげない好意が包まれているのを感じた。

いいね、と軽い気持ちで受けたらあっさりとデートが決まってしまった。

デート当日、年甲斐もなくワクワクして色々と上の空だったのを思い出す。

良く見知った事務所近辺を散策するだけのデートだったが

馴染みの喫茶店も見慣れた街並みも何もかもが

デートというだけで普段とは違う景色に見えた。

変装なしに歩いても一切声のかからない彼女を見て

本当に地方でしか知名度がないんだなと改めて感じて軽くへこんだ。

しかしその時、俺の中には椿を独占しているという優越感があった。

「今日はありがとう椿」

「いいえ、私も楽しかったです」

そして夕方になって別れる時、俺は思わず去っていこうとする彼女を引き止めた。

そのまま彼女と別れていつもの明日が来るのが、酷く寂しかった。

「……? 何ですか」

「いや、その……」

キョトンとした椿をみつめたまま俺はいつになく緊張して汗を流した。

一度きりのデートで終わらせたくなかった。

意を決して彼女の手を引き寄せて胸に抱いた。

胸に抱くと彼女の柔らかな体の感触や甘い匂いが

一層意識してしまい、鼓動が激しくなっていった。

「ん……」

夕焼けに包まれたながら、俺は腕の中にいる椿の唇を奪った。

告白をすっ飛ばしてしまった、と後悔したもののもう止められなかった。

彼女から強い抵抗の無いのを良い事に、俺は彼女の優しい唇の味を貪った。

すると驚いた事に彼女の腕が俺の首に絡んできた。

そして彼女もまた、俺の唇をそっと吸い始めたのだ。

たった一分くらいのキスが、一時間くらいに感じられた。

「さ、さようなら……」

「……はい……」

キスを終えた俺たちは互いの紅潮した顏を見つめ合い、やっとそれだけ言って別れた。

俺は帰り道で彼女の唇の感触を反芻しながら

いつまでも止まらない心臓の鼓動に困惑していた。

それから俺たちはどちらからという訳もなく付き合い、旅行先でもデートを繰り返した。

幸か不幸か自由時間はたくさんあったので、デートの回数は日を追う毎に増えていった。

プロデューサーとアイドルという事も忘れて

俺たちはそれからずっと恋人の関係を保っている。

一線こそ越えていないが、このままブレイクしなければ

彼女と一緒になっても良いかな、と思い始めていた。

「新番組?」

芽衣子Pと惠Pから食事に誘われた俺は、日本酒をちびちび飲みながらその話を聞いた。

芽衣子Pと惠Pとは同期で、事務所待機組としても顔馴染みだ。

「ああ。俺の芽衣子と、あと惠と椿の三人でやるんだ。何から何まで企画してな」

「……確かに最近、旅番組は流行っている」

そう呟いた惠Pのグラスにビールを注ぎ、芽衣子Pは続けた。

「俺たち三人は皆、プロデュース業に専念している。

 だが、いくら頑張っても限界ってものがある。

 向こうから声がかかるのは、ニュージェネレーションズとか

 神崎蘭子とか、同じトップアイドルばかりだ。

 人気が出そうと判断されたら、新人だろうがなんだろうが

 事務所がプッシュしてメディアへの露出も増えて総選挙の常連にもなる。

 俺も芽衣子もこの事務所と長い付き合いをしてきた。

 だがイベントでメインを任されたのはつい最近で

 それまでの数年間はずっとその他大勢の役回り、賑やかしの仕事しか来なかった。

 酷い時にはそんな仕事すら中々来ない。椿Pも惠Pも分かるだろう」

惠Pの深いうなずきに釣られて俺も首を縦に振った。

確かに椿もラジオ以外でメインに据えるような仕事に就いた事がない。

そしてたまにイベント参加があっても、注目されるのは大抵

芽衣子Pの言うメイン格のアイドルたちばかりだった。

「だからな、俺たちで企画を作って仕事を作るんだよ。

 ないなら自分で作れ、って考えだ。

 芽衣子も惠も旅行が趣味だし、観光地巡るんなら

 名所に詳しい椿も欠かせないだろう。

 旅番組として、これ以上ないベストメンバーだと思わないか」

芽衣子Pは景気付けにハイボールをあおって飲み干し、俺たちの背中をポンポンと叩いた。

「いいか、俺たちの望みは担当アイドルの成功だ。

 だが待っていたって、アイドル数三桁の

 この大型事務所じゃあチャンスは滅多に来やしない。

 自分でチャンスを作るくらいじゃないと生き残れないんだよ。どうだ、この話乗るか?」

「ああ」惠Pが言った。「俺も企画に一つ噛ませてくれ」

「椿Pは?」

「……。良い案……だと思う……」

「よし、決まりだな。企画書は俺がまとめる。

 きっと審査を通らせて見せるからその上で一月分のスケジュールを決めよう。

 大まかなロケーションが決まれば、三人で下見に行く。

 それじゃ、気合い入れて行こうぜ!」

その日は居酒屋で大いに飲んだ。

俺はその時、どうせ打ち切りになると思っていた。

核となる売れ線のアイドルが一人でも居ればすんなり審査も通るだろうが

三人の担当アイドルの中にはそれだけの娘が居ない。

一番ランクの高い並木芽衣子ですらつい最近Cランクに上がったばかりなのだ。

しかし芽衣子Pはこの機会をずっとうかがっていたらしい。

彼の企画書は細部に渡って行き届いていて、資金も比較的リーズナブルだった。

何とか企画が事務所とテレビ局に承認されてこの番組は始まった。

「旅慣れた人だと『旅行には最低これを持っていくべき』ってものありそうね。芽衣子とかどう?」

「よくぞ聞いてくれましたー! 勇気! 直感! 度胸!

 この三つを胸に秘めていればどんな場所でもロマンある旅になる!」

「しまった……芽衣子がふらっと予定外の所に立ち寄る可能性を忘れていたわ……」

「ちょっと旅程の配分見直しましょ」

ミーティングルームで俺たちは数週間後に控えている番組の旅程を組んでいた。

その日は相馬夏美もゲストで呼ぶという事で彼女にも参加してもらっている。

数回目までは我々が企画して旅程を組んでいたが

芽衣子がふらふらと色んな場所に立ち寄るので

今日からいっそアイドルたちで自由に旅程を組んでもらって

プロデューサー陣が微調整するという事にした。

和気藹々として計画を立てている彼女たちを見ると微笑ましいが

この番組も視聴率の良かったのは最初の温泉回だけで、二回目からはガクンと落ちた。

しかし、その後営業努力で視聴率は徐々に右上がりの伸びを見せていった。

時間の都合上ほとんど編集せざるを得なかった椿の熱い九十分間のカメラトークや

生放送で芽衣子がまさかの迷子になる回は、かなり好評だった。

旅番組は経験のあるベテラン芸能人がする事が多い。

俺たちの番組は、その中でもレギュラー陣の平均年齢がダントツで低かった。

最初は単なる346プロのアイドルの押し売りと見なされていた番組だったが

俺たちプロデューサー陣の熱意と、レギュラーメンバーたちの

ガチトークが客層の心を掴んだようだ。

気がつけば番組制作の予算も大分もらえたり

相馬夏美をキャンペーンガールとして起用している旅行会社と

タイアップしたりして、旅番組の中でも五指に入る人気番組になっていた。

「すごいですプロデューサーさん! こんなにヒットするなんて」

椿たち三人はメディアに自分たちの歌を披露する機会が増えて喜んでいる。

勿論プロデューサーたちも成し遂げた喜びに笑いが止まらなかった。

「うん、そうだな……」

俺も最初は芽衣子Pたちと一緒に成功の喜びを噛み締めていた。

しかし、その喜びはすぐになくなった。ユニットとして人気も上々で

この夏には番組オープニングタイトルを冠したファーストアルバムも発表する。

以前では考えられないくらいスケジュールは隙間なく埋められていた。

この番組の人気が出るに伴って仕事が増えた訳だが

その分、俺たちはデートする時間が減ってしまった。

椿が人気者になるのは嬉しい。

以前に出したCDにも再販がかかり、売り上げも右肩上がりだ。

だけど、椿と一緒にいる時間がなくなるのは嫌だった。

三度目くらいの温泉回の収録が終わった後

先に疲労の激しい惠Pとスタッフたちを休ませた。

惠Pはこの企画が始まってからずっと根を詰めた取り組みようで

毎回収録後にぐったりとする。

俺も芽衣子Pも彼には無理やりに休息を取らせていた。

俺は芽衣子Pとくたくたになりながらも次々週までのスケジュールを

部屋でもう一度見直してから、一緒に露天風呂に入った。

「なぁ、椿P」

頭を洗っている時に横から芽衣子Pが話しかけてきた。

「椿と付き合っているだろう?」

俺はどう返事をしていいものか分からず、曖昧な返事をせざるを得なかった。

「あっ、えっと……」

「気にするな。お前たちを見れば察しがつく。

 実はな、俺も芽衣子と付き合ってたんだ」

ほっとした俺は釣られてカミングアウトした。だが、彼の言い方が気になった。

付き合ってた――すると彼は芽衣子と別れたのか?

二人の様子を見るによそよそしさも喧嘩している様子も見えないんだが。

「別に喧嘩別れをした訳じゃない。今でも仲良しコンビだよ」

「……きっかけとかは」

「そうだな、一緒にいる時間が長かったから自然の流れで付き合う事になった」

体を洗い終えた芽衣子Pは、ざぶんと風呂に浸かって話を続けた。

「芽衣子はいい娘だ。付き合えば付き合うほど、あいつの事が好きになった。

 こんな良い娘がどうしてブレイクしないんだろう。

 いっそのことこのまま中々芽の出ないアイドル活動に見切りをつけて

 二人一緒になろうかなって思っていた。

 ……だが、初めてメインの仕事が来た時のあいつの笑顔を見て思ったんだ。

 あんなに注目されるのは滅多にないからか、眩しいくらいに輝いていてな。

 その時だ、芽衣子はやっぱりアイドルなんだって思ったのは……」

そう語る芽衣子Pの目はどこか遠くを見ていた。

「芽衣子はつまり、『みんなの』芽衣子であるべきなんだ。

 『俺だけの』芽衣子じゃ、だめなんだよ。

 俺だけの応援なんかじゃ、あんなに輝く事は出来ないって知ってしまった。

 俺は芽衣子が好きだ。好きになればなるほど、俺はあいつの魅力を

 もっと大勢の人間に知ってもらいたくなった。

 たくさんの人間に芽衣子というアイドルの素晴らしさを

 知ってもらい、それを共感して欲しくなった。

 芽衣子は俺にとっての宝石だ。磨かずに手元に置いていたら

 本当の魅力なんてものは一生分からないままだ。

 あいつの立つステージは、俺の腕の中だとあまりにも狭すぎるんだ」

「……。芽衣子P、俺は……」

そう言ったっきり、俺は言葉を紡げなかった。

芽衣子Pには志も、アイドルに対する真剣な想いも負けていると感じた。

仕事が増えたら椿と一緒にいられないから困る。

そんな事で悩んでいる自分自身が酷く矮小に見えた。

「ははは、顔に似合わずポエミーだったか?

 あっ、あと今の話、惠Pには内緒な。

 ……あいつはお前や俺よりもストイックなんだぞ。

 一度惠はファッション企業関係のごたごたに巻き込まれて干されかけた。

 だから彼女のブレイクにあいつは全てを捧げている。

 邪念が入り込む隙もないくらいにな。

 惠も、あいつのそんなひたむきさが分かるから自分の気持ちを押し殺している。

 この前芽衣子にポツと言ったらしいんだよ。

 少なくとも今は惠Pのために輝きたいとな。

 そうしてあいつの心労を軽くしてやりたいんだと。

 いろいろあるんだ、アイドルも……プロデューサーも……」

俺は芽衣子Pの話をずっと黙って聞いていた。

俺の悩みが酷くつまらないものに思えた。

惠Pのようにストイックな姿勢で身を捧げる事も

芽衣子Pのように綺麗にけじめをつけて本来の職務に従じる事も、俺には出来そうにない。

二人とも俺よりずっとアイドルの事を考えていた。

それから日があまり経っていない時だったと思う。

いつものようにラジオ収録の後、俺は椿と一緒に観光地をぶらぶらと歩いた。

この街はネタになりそうな名所候補があまりなく

尺の大半を商店街の商品紹介に当てたため、少し退屈していた。

「プロデューサーさん、プロデューサーさんと

 是非行ってみたい所があるんですけど」

椿に誘われて行った場所は、特に何の特徴もない郊外の森林だった。

確かに自然を眺める事も好きだけど、田園風景広がるこの地域では

さほど珍しい撮影スポットではない。

何故彼女が俺をここに誘ったのか今一つ良く分からなかった。

「プロデューサーさん」

森の中程まで来た時、椿は俺の手を握って言った。

「ここ……メッカらしいんです。その……外でエッチをしたい人たちの……」

「えっ!?」

俺は耳を澄ました。

姿は見えないが、時折押し殺せずに漏れる嬌声が聞こえてきた。

そうなると木の葉のざわめきの狭間で弾けているような

何かがぶつかり合うような、この音は……。

「変かもしれませんけど、私、ハジメテは

 自然を感じながらしたいってずっと思ってたんです……」

椿が俺の体に身を預けた。

肩を抱きながら急速に昂っていくのを俺は感じている。

深呼吸しようと深く息を吸っても、椿の馥郁とした香りが

鼻腔に入ってますます興奮させてくる。

「プロデューサーさんはこんな所でするの、嫌いですか?

 私たち、付き合ってからもう一年以上になりますし……。

 プロデューサーさんさえ良ければ、ここで……」

「あ……うう、あ……」

椿の肩に当てた手が震えた。

彼女は目蓋をそっと閉じていつものようにキスを待っている。

だがそれが、いつものようなキスで終わらないのを俺は知っていた。

ここでキスをしたら最後、理性なんて到底保てはしない。

近くの木の幹に椿を押し付けて、脱がして

童貞丸出しの、ぎらついた欲望をぶつけてしまうだろう。

「うう……、だっ、ダメだっ……!」

無理矢理引き剥がすように、俺は椿の肩から手を放した。

放せた事が、奇跡に思えた。もう少し遅ければ、俺は椿を抱いていた。

「私じゃ、いやですか?」

「いや、そうじゃない!」俺は言った。

「椿が好きだ。ずっと一緒にいたいくらい好きだっ……!

 セックスだってしたいっ! ……だけど、……ダメなんだ……!」

出来るだけ頭の中を整理しつつも、俺はゆっくりと話した。

「椿と、してみたいけど……やっぱり椿はアイドルだ……。

 ここでお前を抱いたら、アイドルの椿として見れない気がするんだ」

「プロデューサーさん……」

「芽衣子Pたちと話して、喜んで番組を進行している椿たちを見て

 俺も、トップアイドルの椿を見てみたくなった。

 単純かもしれないけど、もっとこれからも努力し続ければ

 きっと届くんじゃないかと思った。

 けどこの関係のままだと、ずっとその夢は見れない。

 俺だけの椿になるだけだ。

 この一線まで越えてしまったら、俺はずっとブルーな気持ちを

 引きずってしまうと思うんだ。だから……」

「……。実は、私も悩んでいたんです」

椿は俺の手を温かく握った。スベスベしていて柔らかな手だ。

「椿……」

「私なりに精一杯頑張ってるけど、なかなか芽が出ませんでしたよね。

 それでも努力しているプロデューサーさんに

 私、何だか申し訳ない気持ちがして」

「それは、俺の努力が足りないからで……」

椿は首を横に振った。

「プロデューサーさんは頑張ってます。

 いつも傍にいた私が一番見てますから……。

 それで、最初はそんな気持ちもあって

 プロデューサーさんからのデートのお誘いに乗ったんです。

 プロデューサーさんは冗談のつもりで言ったと思いますが

 私はいつもデートを楽しんでました。

 もう、このままアイドルを辞めてプロデューサーさんと

 一緒になってもいいかなって思うくらいに……」

「……」

「でも、惠さんや芽衣子ちゃんを見て思ったんです。

 私の考えって逃げなんじゃないのか、って。

 もう一度、トップを続けるつもりでアイドル活動をしてみたいって。だから……」

椿は寂しそうに俯いて、俺の顔を見つめた。

「ここで一度……私たち、お別れしませんか?」

「ああ……」

俺は椿の手をもう一度握り締めた。

「だけど、約束してくれ。椿をトップアイドルにしてみせる。だから、その時は……」

「はい。トップアイドルになって、引退して

 誰にも見向きされなくなったら、その時は……もらってくれますか?」

「……もちろんだ!」

「良かった……」

椿は安堵に満ちた微笑を柔らかに浮かべると、そっと唇を重ねてきた。

今までのものよりも長く、そしてほろ苦いキスだった。

それは、別れを選んだ俺たちの苦悩と、未来への希望の味だった。

「えーと、次のおたよりは、東京のいんベルさんからです。

 『藍子さん、椿さん、こんにちは』

 はい、こんにちは。

 『写真が趣味な僕はいつもこのラジオを聞いています。
 最近は新しく出来た彼女ばかり撮っています。
 どこにでもいるような普通の娘なんですけれど
 ドジな所とか可愛くてたまりません。
 ですがこの前お気に入りの写真をモニターに一杯映して
 彼女に見せたらドン引きされました。
 別にエッチな写真は一枚もないのにどうして嫌がったのかが分かりません。
 仲直りする方法を教えて下さい』……というおたよりでした。

 椿さんはどう思いますか?」

「うーん、いんベルさん。

 女の子の許可を取っていない写真があったんじゃないですか?

 普段のさりげないしぐさとかでも、実際に隠し撮られたら

 女の子はとても恥ずかしがったりするんです。

 今度二人で一緒に旅行に行って思い出の写真を

 沢山撮ってみてはいかがですか。くれぐれも盗撮とかしてはダメですよ」

ガラスの向こう側で高森藍子とラジオ進行している椿を、俺は見守っていた。

あれから椿のラジオは最終回を迎えたが、あの旅番組で

一度ゲストに呼んだ藍子とのつてもあり、リニューアルした

藍子のラジオ番組でレギュラーを勝ち取る事が出来た。

Aランクアイドルとの共演により、椿の知名度は少し前と比べて飛躍的に上がっていく。

シンデレラプロジェクトメンバーたちのライブに参加出来たのも

今までの活動と歌唱力が認められたからだ。

トップアイドルも届かない夢ではなくなった。

やっぱり担当アイドルが輝く姿は最高に愛しい。

彼女の活躍で世界中に笑顔が花咲くその日まで

しばらく俺たちはアイドルとプロデューサーに戻ろう。

以上です

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」 
↓ 
信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか? 
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ 
いちいちターキー肉って言うのか? 
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」 
↓ 
鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。 
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋 
↓ 
信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw 
んな明確な区別はねえよご苦労様。 
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」 
↓ 
>>1「 ターキー話についてはただ一言 
どーーでもいいよ」 
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです 
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ! 
ハート「チェイス、そこの鰹節をとってくれ」
ハート「チェイス、そこの鰹節をとってくれ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1469662754/)


余談
7 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします sage 2016/07/28(木) 09:06:48.44 ID:10oBco2yO
ターキー肉チーッスwwwwww
まーたs速に迷惑かけに来たかwwwwwwwww

9 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします sage 2016/07/28(木) 09:12:33.84 ID:LxY8QrPAO
>>7
はいNG設定


この速さである
相変わらずターキー肉くん=>>1という事を隠す気も無い模様

31 ◆xmciGR96ca4q sage saga 2016/07/28(木) 12:50:19.79 ID:g6WSU+sH0
昨夜寝ぼけてスレ立てミスったんで憂さ晴らしも兼ねて久々のロイミュ飯でした。書き溜め半分残り即興なんで色々アレかもしれませんがアレがアレなんでアレしてください何でもシマリス(熱中症

建てたら荒れると判ってるスレを憂さ晴らしに建てる
つまり>>1は自分の憂さ晴らしにs速を荒らして楽しんでる

うーん、いつも通りのクズ>>1で安心するわー

聖闘士星矢?

>>31
いえR18に「運命シンドローム」と「少年のファクトリア」と題したSSがあって
それの流れでタイトルを付けました
次に投下を予定しているSSは「悲しみのエレクトラ」です

>>32
その二作も>>1が書いたの?

>>33
うん。渋にも掲載してる

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