実録! テレポート装置が普及した世界 (42)
20XX年。
テレポート装置が普及して十数年が経った。
今回はそのテレポート装置が販売、普及されるまで。
その結果起きた人々の生活の変化。
そして――社会がどうして崩壊したのか。
以上を辿っていきたいと思う。
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まずはテレポート装置の説明から始めよう。
テレポートとは離れた場所に一瞬で移動することである。
その意味の通りこれで行えるのは、二つの装置間の転送だ。
この際、距離の制約は存在しない。
10mだろうが、1kmだろうが、国と国の間だろうが、地球の裏側だろうが一っ飛びである。
そして転送できる物にも制限はない。
生き物でも、物資でも転送可能である。
装置の大きさは冷蔵庫を少し大きくしたくらい。
家庭の電力でも十分に使えるため、今や一家に一台テレポート装置は欠かせないものとなっている。
それを可能にした技術は……詳細に関しては難解なため省略する。
とにかく安心、安全で副作用なども一切起こさずに瞬間移動出来る理論と思っていいだろう。
そして装置を開発したのはテレポート社……世界的に有名な大企業なため皆さんもご存じのはず。
しかし、その当時は名もないベンチャー企業の一つであったのだ。
当時転送技術というものは眉唾ものの理論として扱われていた。
そんな不確かなものに、大企業はリソースを割くことはなかった。企業が大きくなればなるほど保守的になるのは今も昔も同じである。
そういうわけでフットワークの軽いベンチャー企業、テレポート社が、当時理論を研究していた大学との共同開発という形で装置を作り上げたのだった。
とはいえ、初期のテレポート装置の値段は高く一般庶民の手が出るものではなかった。
また、本当にそんなことが出来るのか、詐欺じゃないかという声もかなり大きかった。
その反応を予想していたテレポート社の対応はきわめて普通だった。
テレビで大々的に宣伝したのだ。
CMで、ニュースで、バラエティの番組で……とにかくテレポート装置を宣伝しまくった。
開発費用がかさみ、金が底を尽きそうになっていたベンチャー企業にとっては一種の賭けだった。
しかし、社は確信を持っていた。
「きちんと我が社の製品を知ってもらえれば売れる」と。
そしてその考え通り……テレポート装置は売れ始めた。
とはいえ、最初は少しずつだったと言っていいだろう。
テレポート装置が社会に浸透していないため、個人での使用しか方法が無かったからだった。
遠く離れた友達、恋人、家族の元に……そういう使い方のみ。
それでも便利だったため売れていたのだが……発売から一時して、爆発的に普及したきっかけがあった。
とある観光地がテレポート装置を設置、ポート開放を無料で行ったことである。
テレポート装置は、電話のようなものだ。電話が声を伝える代わりに、装置は人を送るといった解釈で構わないだろう
つまり、電話番号のように一台毎に固有のパスワードが設定されていて、そのパスワードを登録している装置にしか転送できない。
そうやって制限しておかなければ、知らない人間が突然転送してやってくるという事態が起きかねないからだ。
ポート開放とはその固有のパスワードを誰にでも分かるようにすること。
つまり、テレポート装置を持っていれば誰でもその観光地に一瞬でいけるようになったということだった。
効果は瞬く間に現れた。
装置さえ持っていれば、無料で行けるのだ。
とりあえず、という感覚で所有者は観光に訪れる。
もちろん中には来ただけで、すぐに帰った者もいただろう。
だが、おみやげを買ったり、宿に泊まったりとする人は目に見えて増えた。
基本無料で配ったアプリで気に入った者がアイテム課金するのと同じ理屈だった。
スマホ(テレポート装置)さえ持っていれば楽しめるというわけだ。
その観光地は人気があったがアクセスが不便だったという側面もあるだろうが、増収増益は目に見えるほどだった。
そして観光地に行った者もSNSなどで感想を上げ、拡散される。
他の観光地も、装置を持っていない者も後に続けとテレポート装置の需要は爆発的に高まった。
そうしてテレポート装置は普及していったのである。
以上、普及までの道筋を語った。
次からは普及してからの変化、弊害などを語っていきたいと思う。
次回は産業を中心に語っていきたい。
……ちなみに、この年テレポート装置にコンビで一人がハエの被り物を、一人がハエの着ぐるみから頭だけ出して表れるという設定のコントで人気を得た芸人がいたらしい。
こんな感じでテレポート装置が流行ったらというのを語っていきたいと思います。だいぶ見切り発車ですが。
開発は軍だったり、国の機関だったり、普及方法も普通に最初から需要があって転売屋が買い占めたり、とか考えましたがこの方法で行きます。スマホとかも最初はそこまで普及してなかったし、そんな想定で。
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