ペパロニ「練習が終わった後、いつものところで……」
アンチョビ「あのなぁ……『ツラ貸せ』、ってドゥーチェに向けて使う言葉か?」
ペパロニ「私と姉さんの仲じゃないっすか!」
アンチョビ「そうゆうのとはなんか違う! 絶対ちょっと間違ってるからな」
ペパロニ「そっすかぁ?」
アンチョビ「お前……私ら三年が来年卒業するからって、ちょっと調子のって気てないか?」
ペパロニ「のってませんよ! のれるわけないっす! 寂しいじゃないっすか!」
アンチョビ「どうだかねぇ」
ペパロニ「あーもー私が悪かったですってば! 怒っちゃやですよぉ姉さぁーんー!」
アンチョビ「わぁっジョギングの最中にしがみつくなぁ! ころんだらどうする!」
ペパロニ「えへへー! すんません!」
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アンチョビ「ったく……で、話ってなんだ? あっ、言っとくけど、来年の総統はお前でもう決まりだからな? それは取り消さないぞ?」
ペパロニ「や、今日はそれとは別の話っす」
アンチョビ「ふぅん? じゃあ、何だ?」
ペパロニ「ま、それはまた後でって事で……あっ、おーい一年! お前らあんまり飛ばして走るなよー?」
アンチョビ「そうだぞー。自分のペースで走れ~」
ペパロニ「ゆっくりでもいいから、いっぱいいっぱい走れ~」
アンチョビ「無理に私らのペースに合わせなくていいからな~」
一年生達<<『はーい』
ペパロニ「おーい、私ら二年組はもうちょっと頑張るぞー! いいかお前らー、後輩達にはカッコをつけて、先輩方にはイイトコみせるぞ! 足回せぇー!」
二年生達<<『っしゃー!』
アンチョビ「うんうん、その調子だぞぺパロニ。来年こそは全国大会で優勝っ……はまだ無理かもしれないけど、それでも我がアンツィオの戦車道をより強く、より太く!」
ペパロニ「うすっ、まかせてくださいっす! 姉さんが一生懸命まいてくれた種、私達がしっかり育てて見せるッス!」
アンチョビ「……! お、おう。ふん、ペパロニのくせに、いきなり殊勝な事ゆーなっ」
ペパロニ「あれー……? おやぁ……? 姉さん、もしかしてちょっとグッときちゃいましたぁ?」
アンチョビ「だ、黙れアホっ。生意気だぞっ」
ペパロニ「えへへ! 失礼しましたぁ!」
アンチョビ「こんにゃろ……」
ペパロニ「へへへ……あ、それでさっきの話っすけど……いいっすか?」
アンチョビ「むー……」
ペパロニ「聞いてます? 姉さん?」
アンチョビ「……生意気を言った罰」
ペパロニ「へ?」
アンチョビ「おーい皆よく聞けぇー! 今からこのペパロニが、この私を10分以内にグラウンド周回遅れにしてやるとほざいたぞー!
ペパロニ「はあっ!? ちょっ!? 姉さん何言ってんすか!?」
アンチョビ「やってもらおーじゃないかー!!」
皆<<『いえーい!』
ペパロニ「ええー……ノリ良すぎだろ皆……」
アンチョビ「ふふん、時間以内にできなかったら、私は帰るからなっ♪」
ペパロニ「ええ!? そりゃないっすよぉ!」
アンチョビ「ふんっ!」
ペパロニ「ちょっ……何ヘソまげてんすかぁ!? い、一周1000メートルのグラウンドだから、10分で追いつくには相対速度で、えーと、えーと……何キロっすかぁ!?」
アンチョビ「知らん! ほらほら! そんなのどーでもいいから、先輩にイイトコみせてみろぉ!」
ペパロニ「ちょ、ちょ、ほんと姉さんて時々そーいうガキみたいな……」
アンチョビ「ああん!?」
ペパロニ「ああもうっ! 分かりましたよ! やってやろーじゃないっすかぁ!」
だだだだだだだだ!!
ペパロニ「おーいお前ら私の走りを見てろよおっ! あ、でも一年生は真似はするな?」
<『わー先輩はやーい!』
ペパロニ「うおぉぉぉぉぉ待っててくださいね姉さぁぁぁぁぁん!」
たったった。
アンチョビ(やっと静かになった)
たったった。
アンチョビ(あっ!ペパロニっ! だからお前ジャージを吊り上げすぎなんだってばっ!)
アンチョビ(ああもう、お尻の形があんなにくっきり。ホレホレ後輩たちが見てるぞー)
アンチョビ(まぁ、あいつはそーいうの気にしないんだろうけどなぁ)
たったった。
アンチョビ(あー、なんだったっけ、ペパロニが何かアホなこといってたな)
ペパロニ『姉さんは安産型っすねぇ、走ってるとこ追っかけてると、姉さんのお尻がムニンムニンしてるっす』
アンチョビ(んー、あいつのはお尻は、小さいし、きゅっとしてるし……)
アンチョビ(なんていうかこう……くにんくにんって感じ、か? ……アホ。私もアホだ)
たったった。
アンチョビ(あ~……気持ちいいなぁ、秋の青空だぁ……)
アンチョビ(大会も終わって、総統役も近々ペパロニに継がせて……なんか肩の力、抜けるなぁ……)
たったった。
アンチョビ(……卒業、かぁ……この学校にきて、戦車道を立ち上げて、大会にもでて、いろんな奴に出会って……この子達ともであって……)
たったった。
アンチョビ(……ああ……やってて良かったなぁ……戦車道……)
たったった。
アンチョビ(……ん、ペパロニ、あいつまた背が伸びたな? ほんと、おっそい成長期だなぁ)
アンチョビ(いつのまにやら、頭一つ分、私よりでっかくなりおって)
アンチョビ(……うん、ペパロニの背中、大きくて、良い背中だ。頼りがいのある、おっきい背中だよ)
アンチョビ(来年、わが校を頼むぞ……)
たったった。
アンチョビ「……っってあのバカ、あと五分ぐらいしかないのに、そのペースじゃ私に追いつけないだろ!」
アンチョビ「もー……やれやれ、ちょっとゆっくり走ってやるかぁ……」
たっと、たっと、たっと。
カルパッチョ「……ドゥーチェ? 何一人で笑ってるんです?」
アンチョビ「わぁ!? お前いつの間に隣に……あーもぉ! お前らはホントにもぉ!」
カルパッチョ「? 変なドゥーチェ」
本日はここまでになります。
明日以降ぼちぼち投稿していきます。
お楽しみいただければ幸いです。
>>5のアンチョビのセリフの『戦車道を立ち上げて』ってところ、『戦車道を立て直して』の間違いですね。
アンツィオ校の戦車道、衰退してるとはいえ存在はしてましたし。
さぁこんな熱い日は部屋に引きこもってクーラー効かせながらSS作業こそが大正義!
コメントくださった方、ありがとうございます。そのちょっとした一言の、漏れ聞こえてくる感想が、私にとっては巨大な励みになります。
10分が過ぎて……
ペパロニ「っしゃあぁぁっ……追いついたっ、姉さん、追いついてみせましたよ……ぜぇ、ぜぇ……」
アンチョビ「お、おぅ、お疲れ、頑張ったな」
ペパロニ「こひゅー、こひゅー……約束、守ってくださいよ……あぁしんどかった……」
アンチョビ(10分はちょっと無理があったのかな? 悪いことしたかなぁ)
アンチョビ「……て、うわぁっ!? だからしがみつくな、体重をかけるなー! お前のほうが体おっきいんだぞぉっ!?」
ペパロニ「すんませんドゥーチェ、だけど足、ガクガクなんすよぉ……」
アンチョビ「ああもう、汗が! 汗っぺちゃべちゃして気持ち悪いっ!」
ペパロニ「姉さんだって走って汗かいてるんすから、どうせ一緒じゃないっすかぁ」
アンチョビ「私の首にお前の腕を回すなっ、オギャア蒸し蒸しするぅ!」
ペパロニ「ちょっとだけ、ちょっとの間だけっすからぁ……」
アンチョビ「あーくそぅ……20分ぐらいにしとくんだった……」
ペパロニ「え~でも一応これ罰なんでしょ? それじゃあ意味なくないっすか……?」
アンチョビ「お前がゆーなっ! もぉ~……うぁクサっ、息をっ、吹きかけるなっ、耳元でハァハァいわすなぁ!」
カルパッチョ「ふふ、大変ですねぇ、ドゥーチェ」
アンチョビ「だからお前もっ、側にいるのに黙りこくってニコニコしながら眺めてるんじゃなぁい!」
カルパッチョ「だってドゥーチェが、このまえ私に教えてくれました」
アンチョビ「あん?」
『みんなが熱くなってる時でも、お前だけはいつも冷静でいろ。ノリと勢いだけじゃない、静と動のぶっとい二柱……それが我らの目指すべきアンツィオ流だ』
カルパッチョ「ドゥーチェが授けてくれた戦車道……それが私の戦車道です」
アンチョビ「……!」
カルパッチョ「私の、大切な……」
アンチョビ「……い、いやっ、ごまかされないぞっ、素直さを盾にとるんじゃない……! なんかお前らさいきん素直じゃなくないか!?」
ペパロニ「へへ、たぶん私らなりに、無い頭をなんとか使おうとしてるんすよ。だから勘弁してほしいっす」
アンチョビ「だっ……だからそーいう言い方もなんかズルいっていうか……ごにょごにょ……」
ペパロニ・カルパッチョ「えへへ……」
アンチョビ「……っ。 ……ぐぅぅぅ! ああもう、おい、他のやつらもっじろじろ見てんじゃないっ! 見世物じゃなぞぉ!」
カルパッチョ「見世物じゃなかったんですか?」
ペパロニ「見世物だよなぁ?」
アンチョビ「おまっ」
ペパロニ「皆ちゃんと見てたかぁー! 私の走りを見ていたかぁー!? 私はやってやったぞぉー!! ひゃっはぁー!」
アンチョビ「ぐぉ!? こら私に体重をかけるな、朗らかに拳を掲げるなぁ!」
<<『いえーい!!! 未来の新ドゥーチェー!』
アンチョビ「きいい! みんな素直なのはいいけど、なんか腹立つなぁ! ええい、いいかげんにペパロニ腕を離せ! ……よおおぉし見てろよ!」
……だだだだっ!
ペパロニ「うわっとと!? いきなり振りほどかないでくださいよ……ってドゥーチェ!? なんでいきなり全力ダッシュ!?」
カルパッチョ「わぁ、はやーい」
アンチョビ「おい、いいか!? 私がお前を抜き返したら……やっぱりさっきの約束は無しだからな!」
ペパロニ「は、はぁぁ!? そんなぁ! そ、それがドゥーチェのやることですかぁ!?」
アンチョビ「これが元祖ドゥーチェの走りだぁぁぁ! おまえら目にやきつけろぉぉぉぉ!」
<<『いぇーい! ドゥーチェ! ドゥーチェ! やっぱりドゥーチェだぁ!』
<<ペパロニ『また軽々しく皆でノりやがってぇ……』
<<カルパッチョ『それよりも、ドゥーチェ本気だね。逃げないと本当においつかれちゃうよ?』
<<ペパロニ『ひ、ひぃぃ!? もう走れないよぉ……』
アンチョビ(……あははっ)
アンチョビ(やっぱり楽しい、楽しいなぁ……!)
アンチョビ(お前たち……私は皆が大好きだぞ……!)
だだだだ!
アンチョビ(本当に来年で……あーあ、卒業……するのかぁ……)
たったった……
アンチョビ(お……?)
アンチョビ(……ハハ、また来たなコイツめ! この忌々しい『寂しさ』めっ!)
アンチョビ(負けるもんか、私はおまえなんかにゃ負けないぞ! お前なんかに追いつかれるもんか!)
アンチョビ(こんなに気持ちのいい青空なんだ!)
アンチョビ(こんなに楽しい奴らなんだ!)
アンチョビ(今は、お前なんか、あっちいけぇー!)
アンチョビ(走る、走る、私は走るんだぁー! はっはっはぁー!)
だだだだ……!
とりあえずここまで、になります。
早く話を進めないと。
スレに目を通し、もしも皆さまの心に何かぽっと浮かぶ言葉があったならば、それをさらっと聞かせてもらえると、私の心が豊かになって、SSもより豊かになります、たぶん。
練習が終わって……。
ペパロニ「えっと、姉さんごめんなさい、ちょっと先に行って、待っててもらえます?」
アンチョビ「一緒にいかないのか?」
ペパロニ「や、あの、用がすんだらホントすぐに行きます……すんませんっ」
アンチョビ「……? そうか。じゃあ先に行ってるぞ」
てくてくてく
アンチョビ「赤い夕陽に照らされて、燃ゆる白亜の我らはアンツィオ(校歌【vita evviva:人生万歳】二番出だし)、か……綺麗な夕焼け空だ……」
<<「あ、ドゥーチェ! お疲れさまでーす!」
アンチョビ「おぉ! また明日なぁ~!」
<<「はーいっ」
アンチョビ「……。……白い校舎が真っ赤に燃えてる……初めてこれを見たときは……感動したなぁ……」
アンチョビ「……放課後になると、静かだな……。……」
アンチョビ「……ええい! ペパロニめ! そっちが誘ったんだから一緒に来いってんだっ! なんか寂しいだろう!」
アンチョビ「……それにあそこって、薄暗くてちょっと気味悪いんだよなぁ……昼間は涼しくて良い場所なんだけどさぁ……ぶつぶつ……」
学園の片隅にある林の中...
アンチョビ「そういえば、三回くらいこの場所で女の子に告白されたっけ、あはは」
アンチョビ(下級生の子に呼び出されて……女子校あるあるなのかなぁ、まいっちゃうよね)
アンチョビ(まぁでも、ごめんねって言って断っても、みんな次の日にはわりとケロっとしてるんだ。告白のスリルを楽しんでるって感じなのかなぁ?)
アンチョビ(なんだかんだで女の子同士だし、そーゆう、ゴッコ遊びなんだろうね)
アンチョビ(しっかし、薄暗い林の中にベンチが一つぽつんと……学校は、何を考えてこんな場所作ったんだろ)
アンチョビ「……やっぱり、そーいう秘密の遊びのための場所、なのかな? この学校のそうゆうとこ、やっぱり好きだなぁ……」
アンチョビ(あ……スズムシの声がする……海の上でも、ちゃんと季節を感じてるのか……)
アンチョビ「……。しっかし遅い! 遅いぞぞペパロニのやつ。日が暮れるとここ、真っ暗になるんだけどなぁ……」
初めてのSSでして、いろいろ手探りでやってます。改行スペースなんかもちょこちょこ変わってたりして、見苦しくて申し訳ないです。
アンチョビ「……あっ、まずいっ! もしかして……」
アンチョビ(私に卒業プレゼントを送るサプライズ企画があるって、二年の子が言ってたよな……言ってたよなっていうか、偶然聞いちゃったんだけど、それじゃないよな!?)
アンチョビ(あちゃー! ドッキリのお返しをしようと思って、一人一人のイニシャルを刻んだペンダントを作ってるのに! まだ全員分は完成してないぞ!)
アンチョビ(うあー、その場でお返ししてこその演出なんだけどなぁ……)
アンチョビ「いやいやでもでも、何かを準備してるような素振りはまだなかったし……」
アンチョビ(あの子達が何かごそごそしてるのなら、私がそれを見抜けないはずはない)
アンチョビ(うん。それに、どうせサプライズをやるなら最後の訓練の時だろう。そうに決まってる)
アンチョビ(……ふふ、楽しみだなぁ。まずは皆のドッキリにちゃんと驚いてあげて)
アンチョビ(場がちょっと落ち着いたら、「実はこの私もお前らに贈り物があーる!」って感じでペンダントを全員に配るのだ。ふふ、みんな驚くぞー。)
アンチョビ「……きひひっ」
アンチョビ(何人かは、泣いちゃうかもなぁ!)
アンチョビ(全員の首に、私が直接ペンダントをかけてあげるんだ。一人一人、名前を読んで……一緒に戦車道をやってくれてありがとう、って伝えて……これからも頑張れよって…………)
アンチョビ「……ぐすっ」
アンチョビ(っつぁッ! アホか私は! 自分が涙ぐんでどーする!? しかも想像でっ、恥ずかしいなぁもおっ!)ゴシゴシ
アンチョビ「……ええいっ、ペパロニめ! お前が待たせるからいけないんだっ! さっさと来んかーい!」
アンチョビ「うー、なんだろ、私一人ではしゃいでないか? 変な子か? ……って、あ、そうかっ」
アンチョビ「……これって、生理はじまるやつだ……うぁー……」
アンチョビ(私って、軽いし量もあんまり出ないけど……なーんかちょっぴり情緒不安定になるっていうか)
アンチョビ(やたら感情の起伏が激しくなるんだ……何だかなぁ)
アンチョビ(うー。ますます早く帰りたくなってきた。おーいペ・パ・ロ・ニィィィィ! ほったらかして帰るぞぉぉぉ!)
アンチョビ(……。……あいつって、コレの時、どんな感じなんだろ。あぴってくる事なかったな。軽いのかな)
アンチョビ(普段があんな感じだし、女の子的なアレコレをなんだかイメージしにくいんだよねぇ)
アンチョビ(でも、おチビちゃん達にはそこが受けるのかな。あいつも何度か、ここで告白されたこあるって言ってたし)
アンチョビ(ペパロニ……そういう場面で、どんな顔をするんだろ)
アンチョビ「……。」
アンチョビ「わお、全然想像できないや、あはは」
アンチョビ(私も、何度かこうしてペパロニに呼び出されたことはあったけど……毎回戦車道についての相談だったな。いや、好きだとか言われても、困るけどさ)
アンチョビ(うん、あいつはおバカさんだけど、以外と真面目なところもあるのだ。最後の時に、それは褒めてやるかなぁ……)
アンチョビ(まぁたぶん、今日もその事だろう。来年は自分が総統をやるんだ。いろいろ気になる事や不安もあるだろ)
アンチョビ「……うむ」
アンチョビ(そうだ、きっとこれが、私の最後の仕事なんだ)
アンチョビ(このアンツィオ高校で、私がやるべき最後の役目なんだな……)
アンチョビ(……。夕暮れの風が涼しい……、木の匂いも良いなぁ……)
アンチョビ「……。おお、すごい、言葉にならないぞ。思いでがいっぱいありすぎて、記憶が多すぎて、言葉じゃおっつかないんだ」
アンチョビ「うん、目をつぶってると、色んな事が浮かんでくる……うぉー、すごいぞぉー……」
アンチョビ(……。)
アンチョビ「……。」
ポロ
アンチョビ「……お?」
ポロポロ
アンチョビ「お、お、おおお!? え、涙? ええ!? なんでぇ!?」
ポロポロポロ……
アンチョビ「うそっ、何それー! いくら情緒不安定って、わわわ……」
ポロポロポロ……
アンチョビ「ちょ、うはは! なんか笑っちゃうよなぁもぉー! バカだぁ! あは、ふええん、あははっ」
アンチョビ「……っていかん、やばいやばい、ペパロニが来たらどうする、笑われてしまうだろっ、ううぅー止まれ止まれ」ゴシゴシ
ポロポロポロポロ……
アンチョビ「もー! 早く止まれよぉー! 私は笑ってるのに、勘弁してくれぇ……来るなー、ペパロニまだ来るなよー……」
ガサガサッ
ペパロニ「……え、あの……アンチョビ姉、さん?」
アンチョビ「……」
アンチョビ「ぎゃっ」
アンチョビ「な、なんでこのタイミングできちゃうかなぁー……」
ペパロニ「ど、どうしたんすか姉さん? なんで泣いてるんですか!?」
アンチョビ(恥ずかしいなぁもう、私はドゥーチェなのに! 人前で、こんな)
アンチョビ「な、何でもないから。待て、あんまり近づくな、見るな」
ペパロニ「だ、だけど、姉さん泣いてるじゃないっすか」
アンチョビ「大丈夫だから、本当に」
ペパロニ「でも」
アンチョビ「いいって、気にするな」 ゴシゴシ
ペパロニ「気にするなっていわれても……」
アンチョビ「いいって言ってるだろ! 本当になんでもない!」
ペパロニ「だけど泣いてるのにほっとけないっすよ!」
アンチョビ「だからぁ! 心配してくれるのはありがたいけど! でも、私が気にするなっていってるんだ!」
ペパロニ「な、泣きながら怒鳴らないでくださいよ……」
アンチョビ「いいから少し黙ってろ! あっち向いてろ! ちょっとそこで待て!」
ペパロニ「わかった、わかりましたから、落ち着いてくださいよドゥーチェ……」
アンチョビ(うう、なんかもう、いろいろと情けない……)
アンチョビ「くそぅ……お前ってやつは……来いって時には来ないし、そのくせ来るなって時に来るし……」
ペパロニ「遅くなったのは謝りますけど、でも、本当に、どうしたんです、やっぱ心配になりますよ」
アンチョビ「あ・り・が・と・う! でも本当に、大丈夫なんだってば」
ペパロニ「そう、すかぁ……?」
アンチョビ「ああもうくそぉー、はやく止まらないかなぁー」ゴシゴシ
ペパロニ「……」(チラチラ……)
アンチョビ「見るなってっ……まぁ、驚かせたのは私も悪かったよ……」
ペパロニ「はあ……」
アンチョビ「あー、やっと収まってきた……で、ペパロニ、話があるんだろ? ほら、聞いてやるから」
ペパロニ「へ? い、いや、でも」
アンチョビ「……あのな、本当に、何でもないんだ。心配してくれるのは嬉しいよ。でも、ツマラナイわたくし事だ」
アンチョビ(ちょっとナイーブになっただけなんだって)
アンチョビ(さすがにお前にだって、そういう時ぐらいあるだろ? 分かってくれよう……)
ペパロニ「うー……」
ペパロニ「えと、だけど」
アンチョビ「なんだっ」
ペパロニ「……話、なんだったかもう、忘れました……」
アンチョビ「……はああ!?」
ペパロニ「だ、だって私の話なんて、今はどうでもいいじゃないすか!」
アンチョビ「いいわけあるか! 私はお前の話を聞くためにずっと待ってたんだぞ!」
ペパロニ「で、でも……。少しくらい理由を聞かせてくれてもいいじゃないっすか!」
アンチョビ「結局それか……! あのなぁ、何度も言うけど、たいした事じゃないんだってば、信じてくれよもぅ……」
アンチョビ(……って、……私も、こいつも……変に意地になってるだけじゃないか……)
アンチョビ(頭に血がのぼってるんだ、落ち着け……)
アンチョビ(そうだ、ペパロニがそれで納得するなら話してやればいいじゃないか……ちょっと恥ずかしいけど……)
アンチョビ「あのな……」
ペパロニ「……じゃ、じゃあなんで話してくんないんですか!?」
アンチョビ「ぷぁっ!? おいっ、唾!」
ペパロニ「あっ、す、すんません……と、とにかくっ、姉さんは言いたくない言いたくないって言いますけど」
ペパロニ「ワケも教えてくれないのに気にするなって、そんな事できるわけないじゃないっすか!」
アンチョビ「うわ!? ちょ、近いっ」
ペパロニ「姉さんと私ってそこまでドライな関係だったんすか!?」
アンチョビ「ちょちょ、だから近い近い! 顔近い! 唾がぁ! 肩を握るなぁ!」
ペパロニ「ね、姉さんが泣いててしかもその理由もわからないのに、それをスルーしてこっちの話をって……」
ペパロニ「ど、どんだけ私って自分勝手なんすか!?」
ペパロニ「姉さん私のことをそんな風に思ってたんすか!? それってすっごいショックっすよ!?」
アンチョビ「ぺ、ペパロニのくせにたたみかけてくるなっ、それに、そーいう事を言ってるんじゃないんだっアホ!」
ペパロニ「っ……ア、アホは姉さんのほうっす!」
アンチョビ(なっ……!?)
ペパロニ「だ、だって私の話なんて、今はどうでもいいじゃないすか!」
アンチョビ「いいわけあるか! 私はお前の話を聞くためにずっと待ってたんだぞ!」
ペパロニ「で、でも……。少しくらい理由を聞かせてくれてもいいじゃないっすか!」
アンチョビ「結局それか……! あのなぁ、何度も言うけど、たいした事じゃないんだってば、信じてくれよもぅ……」
アンチョビ(……って、……私も、こいつも……変に意地になってるだけじゃないか……)
アンチョビ(頭に血がのぼってるんだ、落ち着け……)
アンチョビ(そうだ、ペパロニがそれで納得するなら話してやればいいじゃないか……ちょっと恥ずかしいけど……)
アンチョビ「あのな……」
ペパロニ「……じゃ、じゃあなんで話してくんないんですか!?」
アンチョビ「ぷぁっ!? おいっ、唾!」
ペパロニ「あっ、す、すんません……と、とにかくっ、姉さんは言いたくない言いたくないって言いますけど」
ペパロニ「ワケも教えてくれないのに気にするなって、そんな事できるわけないじゃないっすか!」
アンチョビ「うわ!? ちょ、近いっ」
ペパロニ「姉さんと私ってそこまでドライな関係だったんすか!?」
アンチョビ「ちょちょ、だから近い近い! 顔近い! 唾がぁ! 肩を握るなぁ!」
ペパロニ「ね、姉さんが泣いててしかもその理由もわからないのに、それをスルーしてこっちの話をって……」
ペパロニ「ど、どんだけ私って自分勝手なんすか!?」
ペパロニ「姉さん私のことをそんな風に思ってたんすか!? それってすっごいショックっすよ!?」
アンチョビ「ぺ、ペパロニのくせにたたみかけてくるなっ、それに、そーいう事を言ってるんじゃないんだっアホ!」
ペパロニ「っ……ア、アホは姉さんのほうっす!」
アンチョビ(なっ……!?)
アンチョビ「はああああ!?」
アンチョビ「お前この私にむかってアホっていったかぁ!? 言ったなぁ!?」
ペパロニ「姉さんがアホなこと言うんだからアホって言うしかないじゃないっすか!! アホぉ!」
アンチョビ「また言ったー!」
ペパロニ「姉さんが泣いてたんすよ!? その理由を少しも話してくれないんすよ!?」
ペパロニ「それで気にするなだなんて……」
ペパロニ「できるわきゃないじゃないっすか!」
ペパロニ「姉さんが泣いてるんだ! それを私にほっとけだなんて……」
ペパロニ「アホ! ドゥーチェのアホ! そんなんでドゥーチェが務まるんすか!?」
アンチョビ(ムカムカムカァ!)
アンチョビ「お前、おま……いいか? こ・の・私が、恥ずかしいから話したくないって言ってんだ!」
アンチョビ「それが以外に理由が必要かぁ!?」
ペパロニ「いりますっ! だってそんなの理由にならないっす!」
アンチョビ「この私が命令してるんだ! 私が、聞・く・な・と言ってるんだ!」
ペパロニ「そんなもんっ、知ったこっちゃないっす!!」
アンチョビ「おま……!、何様のつもりだぁ!」
ペパロニ「何様とか関係ないでしょ! とにかく! 説明してくれるまで私は話しないっすから!」
アンチョビ「ああそうかい! ならずっとそこで立ってろ! 私はもう帰る!」
ペパロニ「はぁ!? そんなのダメに決まってるじゃないっすか! 話てくれるまで帰しませんからね!!」
アンチョビ「な、な、な……!! このドゥーチェに向かってその舐めた口! 下剋上か貴様! いい度胸だなあああ!?」
ペパロニ「わっ……!?」
アンチョビ「貴様すくっ、粛清してやっ……う……っ!?」
アンチョビ(……こいつ! 胸倉つかんでもびくともしない!?)
アンチョビ(いくら背が伸びたからって……そうか、体幹をちゃんと鍛えてるんだな……)
ペパロニ「姉さん……」
アンチョビ「な、なんだよ、その悲しそうな顔は……」
ペパロニ「……何が下剋上っすか……なんで分かってくれないんすかっ……私はただ……」
アンチョビ「……う……」
アンチョビ(……うう、無抵抗で棒立ちの後輩に、私は何をやってるんだ……)
アンチョビ(……売り言葉に買い言葉でカっとなって……こいつは、ただ単純に心配してくれてるだけだって、分かってるのに……)
アンチョビ(……ああ~もうっ! 生理! お前のせいだ! 毎月毎月、めんどくさいんだよっ!)
アンチョビ(……いや、そうじゃない……自分で自分をコントロールできないんだ。……私が愚かなだけだ……)
アンチョビ(……。ペパロニ、すまん)
アンチョビ「せ……生理なんだ……」
ペパロニ「え? は……?」
アンチョビ「だから生理だよっ……あーもー!せいりせいりせいりっ!」
ペパロニ「……はい!?」
アンチョビ(ああっ、恥ずかしいいいぞおおお!)
アンチョビ「生理前はなんかすっごい気持ちが昂りやすくになるんだよ! 今みたいに!」
アンチョビ「来年になったらお前らとはもうお別れだなぁって考えてたらなんかすっごい泣けてきたんだよ!」
アンチョビ「くそ、恥ずかしいこと言わすな! ばか!!」
アンチョビ「お、お前だって女なんだから、せっ……生理くらいくるだろ!?」
アンチョビ「なんかワケもなくそういう感じになるってぐらい分かるだろ!? しかたないじゃんか!」
アンチョビ「あーもう! 私は何を叫んでんだろう!」
アンチョビ「お前が悪いんだアホ! アホ! ペパロニのアホーーーー!」
アンチョビ「……はぁ、はぁ……」
アンチョビ(……あぁ)
アンチョビ(……またやっちゃった……でも、なんかちょっとすっきりした……)
アンチョビ(うぅ、めっちゃ力んだけど、まさかまだ垂れてこないよな……?)
アンチョビ(……まぁいいや……)
アンチョビ(ええい、ペパロニめ、何を黙り込んでやがる。何か言えよ……って……)
アンチョビ「……ぶはッ!?」
ペパロニ「……あっ、は? えっ?」
アンチョビ「お、お前……あはは! お前はなんて顔をしてるんだ! は、鼻の穴がふくらんでっ、目がまんまるで」
アンチョビ「あはは! あははは! 笑わすなよお前はぁ! あははは!」
ペパロニ「……いや、まぁ、なんかびっくりして……」
アンチョビ「あはは、ほんとに笑わせてくれるよな、お前ってやつは、あはは、私が出会った中で、ほんとお前が一番おもしろい」
アンチョビ「あはは、あははは……うっ、ぐっ……!?」
アンチョビ(あ……やばいやばいやばい! またナンカ変に気分が昂って……っ!)
ポロ
アンチョビ「うぁっ」
ポロポロポロ
アンチョビ「うぁぐぁう!」
ペパロニ「わっ、えっ、姉さん!? ま、また泣いてるっすか!?」
アンチョビ「お、お前が笑かすからだ! ……ふえっ、あははっ、うぇぇぇっ、あはっ、うぐぇっ」
ペパロニ「す、すんません! って、わ、私が悪いのかなぁこれ? えと、だ、大丈夫っすか……?」
アンチョビ「いいから大丈夫だから……ぐずぅ、ちょっとしたら収まるから……待っててくれ」
アンチョビ「……ひっく……あーもー、これでわっかたろ!? 納得いったか!?」
ペパロニ「え? はぁ、まぁ……えと……ベ、ベンチ、座りますか?」
アンチョビ「うん……お前も座れ、えぐ……」
ペパロニ「う、うす」
アンチョビ「ぐす、うう、えぐ……」
アンチョビ「……おい」
ペパロニ「はい!?」
アンチョビ「他に、誰も来ないだろうな?」
ペパロニ「あ、ああ、誰もこないっすよ。私一人ですけど……」
アンチョビ「そか、ならいい」
ペパロニ「はぁ」
アンチョビ「ペパロニ、このことは誰にも話すなよ!? 私が泣いたとかっ! 生理前は変になるとか! こんなんじゃ、みんなに示しがつかん!」
ペパロニ「う、うっす……。でも、そうだったんすね、姉さん、生理、たいへんっすねぇ……」
アンチョビ「……そうなんだよ、近頃は特にちょっとヒドイんだけど……えぐ、ずずぅっ……お前の方は、どうなんだ……」
ペパロニ「私っすか? 私は……まぁ、普通にちょっとキリキリするかなってくらいで」
アンチョビ「そっか、いいな」
ペパロニ「はい、えっと……はい」
アンチョビ「……」
ペパロニ「……」
アンチョビ「……」
ペパロニ「……あの姉さん、ちょっと失礼します」
アンチョビ「?」
(ぎゅっ)
アンチョビ「うぇっ?」
ペパロニ「いや……ちょっと冷えてきたし……コレの時って、あんま身体冷やさないほうが良いらしいっすし……」
アンチョビ「……。そだな……ありがとう、……ぐずっ」
アンチョビ(……。ペパロニめ、ほんと、背がおっきくなったんだな……)
アンチョビ(私の身体を、結構すっぽり……。うー、誰かに抱いてもらうなんて、いつぶりだろ。なんか、けっこう、心地いいな……)
ペパロニ「……」
アンチョビ「……」
ペパロニ「……」
アンチョビ「……ぜ、絶対だぞ!? 絶対誰にも言うな!? ドゥーチェたる私が、こんな……醜態を……」
ペパロニ「わかりましたってば……取り合えず、落ち着きましょうよ」
アンチョビ(……だ、誰のせいで……!)
アンチョビ(……って、いかんいかん、そうだ。また人のせいにしてしまう……)
アンチョビ「……ぐずっ」
アンチョビ(しかし……こいつと二人で、こんな場所で……こんなふうに静かに)
アンチョビ(……いつのまにか本当に暗くなってきてるじゃないか……)
続きは後日になります。
ペパロニ「あ、姉さん、一応言っときますけど……」
アンチョビ「なんだ?」
ペパロニ「べ、別に私、そのケはないっすからね」
アンチョビ「そ、そうか。いや、別に改めて言わなくてもいいけど……」
ペパロニ「そ、そっすね」
アンチョビ「……。」
ペパロニ「……。」
アンチョビ「……ばか、お前が余計な事を言うから、変な感じになるんだ」
ペパロニ「あ、あはは……すんません」
アンチョビ「でも、女の子に告白されたこと、お前もあるんだよな」
ペパロニ「あるんですよねぇ、これが」
アンチョビ「そういう時は、何て言って断るんだ?」
ペパロニ「へ? な、なんでそんな事聞くんです?」
アンチョビ「だって、ペパロニと恋愛ゴトとお前って、なーんか全然イメージが結びつかなくて、だからどんな感じなのかなって」
ペパロニ「ひどいなぁ、私だって年頃の乙女なんすよ?」
アンチョビ「そうだな、ははは」
ペパロニ「はははじゃないっすよ! ……そりゃ私は、姉さんが大大大好きな恋愛小説のキャラみたいには、キラキラしてないっすけど」
アンチョビ「……なんか、バカにされた気がする」
ペパロニ「してないっす」
アンチョビ「だけど、ペパロニみたいな性格のキャラクター、小説の中によくいるぞ」
ペパロニ「そうなんすか?」
アンチョビ「うん、いるいる。ていうか、むしろ王道の類だ。勝気な感じの……」
ペパロニ「へぇ、私って実は、モテキャラだったんすか」
アンチョビ「男性キャラクターだけどな」
ペパロニ「女の子キャラじゃないんすか!」
アンチョビ「まぁ実際、もてるキャラクターではあるのかもな」
ペパロニ「うれしくないなぁ」
アンチョビ「それで……結局、どうなんだ? ペパロニって、好きな人とかいるのか?」
ペパロニ「話かわってるじゃないっすか」
アンチョビ「そうだっけ」
ペパロニ「そうっすよぉー……へへへ、しかたないっすねぇ姉さんは」
アンチョビ「……くくく」
ペパロニ「へへ、なんだろ、なんか、楽しいっすねぇ」
アンチョビ「うん、楽しい」
ペパロニ「……ありゃ? けっこうマジで暗くなってきちゃいましたね」
アンチョビ「そうだな」
ペパロニ「寒くないっすか? まだ、帰らなくて大丈夫っすか?」
アンチョビ「大丈夫。あったかいぞ」
アンチョビ「それに、木の向こうに路地の街頭の光が見えてるし、思ってたより夜でも怖くないな、ここ」
ペパロニ「一人だと怖そうっすけどね」
アンチョビ「一人はなぁ」
ペパロニ「どこでもそうっすよね」
アンチョビ「っていうか……」
ペパロニ「はい?」
アンチョビ「結局、お前の話、なんだったんだ?」
ペパロニ「あ、ほんとだ忘れてた」
アンチョビ「『ツラ貸せ』とか言っといて」
ペパロニ「言ったっすねぇ」
アンチョビ「まぁさっきは私が悪かったんだけどさ。ほれ、今度こそ聞くぞ?」
ペパロニ「はい。うー、だけどなぁ……」
アンチョビ「もー、今度はなんだ」
ペパロニ「あのですね、ホントにもう、今はどうでもいいっていうか」
アンチョビ「はああー?」
ペパロニ「お、怒っちゃやっすよ? 別にごまかしてるとかじゃなくて」
アンチョビ「なんだ」
ペパロニ「私のほうこそ、大した話じゃなかったんす。たんに、姉さんとこうやって、普通におしゃべりしたかったって言うか……」
アンチョビ「へ? 普通におしゃべりって、いっつもしてるだろ?」
ペパロニ「そうっすけど、でも、もうちょっとこう、違う雰囲気で、っていうんすかね。戦車や料理の話以外にもいろいろ……」
アンチョビ「なんだそりゃ」
ペパロニ「だって姉さん来年で卒業じゃないっすか」
アンチョビ「……まぁ、そうだけど」
ペパロニ「ほんと、そういう感じなんですよ。うーん、伝わらないっすかねぇ」
アンチョビ(まぁ、こいつなりに、寂しがってくれてるって事か……)
アンチョビ「何となく言いたい事は、わかった……たぶん」
ペパロニ「だけど今日は、こうやって普段しないような、へへ、恋バナっていうんすか? できてるし、だから、とりあえず今は満足かなって」
アンチョビ「お前がそれでいいなら、いいけど……けどこれって恋バナなのか?」
ペパロニ「ま、私ら女子校っすから、しかたないっすよ」
アンチョビ「後輩の女の子と小説の例えと……会話の中に男子がまったく出てこない」
ペパロニ「いないっすねぇ、あはは」
アンチョビ「悲しいなぁ。まぁいいや。で、ペパロニ、お前はこの学校で今まで何人に告白されたんだ?」
ペパロニ「おっ、勝負しますかぁ? 姉さんにはかなわないと思うっすけどねぇ!」
アンチョビ「勝ったところで、自慢になるかなぁ」
ペパロニ「なるっすよ。人望があるってことじゃないですか」
アンチョビ「いや、そぉかぁ?」
ペパロニ「そうそう! で、えーと、私は一番最近の告白だと、だとあの子っすねぇ、ほら、一年生の中でタンケッテの操縦が一番上手なあの子」
アンチョビ「……えっ!? マカロニのことか!?」
ペパロニ「そ、そうっすけど……なんでそんなに驚くんすか?」
アンチョビ「……わ、私も告白された事があるんだ」
ペパロニ「は!? ちょ、ちょ、詳しく聞かせてくださいよその話。い、いついつ!? いつっすか!?」
アンチョビ「え、ええと……あっ、分かってると思うけど、ここでの話はお互いに秘密だぞ!? 誰にも言うな!? カルパッチョにもだぞ!? でないとあの子たちにも迷惑が」
ペパロニ「ば、バカにしないでください、もちろんっすよ! 姉さんと私、ここだけの秘密っす! そ、それよりも……いつなんすか!?」
アンチョビ「いつだったかなぁ……あ、でも私のは結構前だ。あの時だ、夏前に皆で合宿にいったあの時だよ、初めての合宿の……」
ペパロニ「あー、あの時かぁー……」
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ペパロニ「……うわっ、姉さん姉さん」
アンチョビ「どうした?」
ペパロニ「時計みてください、もう21時っす」
アンチョビ「何ぃ、もう9時か」
ペパロニ「やー、話をしてるとあっと言う間っすね」
アンチョビ「ほんとだな。うぁー、帰ってお風呂はいってご飯食べて……うああ、そうだ、課題もやらなきゃ」
ペパロニ「あと明日は、全員で朝錬っす」
アンチョビ「ぐぇっ」
ペパロニ「姉さんファイトっす」
アンチョビ「うー……やれやれ、じゃあもう帰るかぁ……」
ペパロニ「あー、そうします、かぁ……?」
アンチョビ「……んー」
ペパロニ「……んー」
アンチョビ「……」
ペパロニ「……」
アンチョビ「そういえば、さ」
ペパロニ「はい」
アンチョビ「このドゥーチェマントさ」
ペパロニ「なんすか」
アンチョビ「便利だな」
ペパロニ「そっすねぇ」
アンチョビ「寒い時は、こうやって、横にして二人でかぶると」
ペパロニ「こんな使いかたがあったんすねぇ」
アンチョビ「まぁ、ちょっと小さいけどな。二人だと」
ペパロニ「でもこうしてくっつきゃ十分あったかいっすよ。姉さんの体温感じるっす」
アンチョビ「なんか、それはなぁ」
ペパロニ「寒い時に、四の五の言ってられないっす」
アンチョビ「だけど神聖なマントなんだからな? 本当はだめなんだぞ。お前が次期ドゥーチェだから、許すけど」
ペパロニ「え~? 誰だっていいじゃないっすか。寒がってる子を、ほっとけますかぁ?」
アンチョビ「まぁ、いいさ、来年になったらもうこのマントもお前のものだ。ペパロニの好きに使ったらいい」
ペパロニ「あー……。来年っすかぁ……」
アンチョビ「ん……。そうだな、来年だ……」
ペパロニ「……」
アンチョビ「……」
ペパロニ「そういえば、です」
アンチョビ「ん?」
ペパロニ「姉さんが泣いてた時、もちろんびっくりはしましたけど」
アンチョビ「なんだよ」
ペパロニ「あれってつまりは、私らとお別れするのが寂しいってことっすよね?」
アンチョビ「あらめていうなっ」
ペパロニ「へへ、すんません。だけど、それって、やっぱりうれしかったっす」
アンチョビ「ふん……さびしくて、悪いか」
ペパロニ「あっ、また泣きださないでくださいよぉ?」
アンチョビ「アホっ。まぁでも、うん、大丈夫だな。なんか今は、気持ちが落ち着いてる」
アンチョビ(お前が隣にいてくれるから、かもな)
ペパロニ「そっか、よかったっす」
アンチョビ「……」
ペパロニ「……姉さん? どしたんすか急に黙って」
アンチョビ「なぁペパロニ」
ペパロニ「はい?」
アンチョビ「いい機会だから、ドゥーチェの心得みたいなのを一つ、お前に伝えておくよ」
ペパロニ「え……。……はい」
アンチョビ「いいか、ドゥーチェは、一人だけではドゥーチェになれない。……わかる?」
ペパロニ「えっと……はい」
アンチョビ「皆が支えてくれるから、私はドゥーチェでいられるんだ」
アンチョビ「仲間が一緒にいてくれなかったら……私達はただの高校生なんだ」
ペパロニ「……」
アンチョビ「試合に勝つことももちろん大事だけど、私にとって一番大事なのは、一緒に戦ってくれるお前達がいること」
アンチョビ「そういう事を教えてくれるのが「戦車道」なんじゃないかなって……私はそう思う」
ペパロニ「……はいっ」
アンチョビ「来年は、お前がドゥーチェだ。お前にはお前の道がある、だけど、今の私が言った事も、覚えていてほしい」
ペパロニ「……私達の戦車道は、姉さんが敷いてくれた道の先に続くんす。だから、今の話も、忘れるわけありません……ッス!」
アンチョビ「そっか……頑張れよ!」
ペパロニ「はい! 頑張るっす!」
アンチョビ「ふふ……なぁペパロニ」
ペパロニ「へへ……なんすか姉さん、にやにやして」
アンチョビ「お前、泣かないのか?」
ペパロニ「はい?」
アンチョビ「私がいい話をしてやったんだから、ここはお前が泣くタイミングだろ? ふふ」
ペパロニ「……ぷははっ! へへ、姉さんの前では泣かないって決めてますから!」
アンチョビ「なんだ、つまらないなぁ、笑ってないで、泣けよぉ」
ペパロニ「えへへ、姉さんの涙は、みちゃいましたけどね!」
アンチョビ「うっ……あーあ、私だって、お前らの前ではどんな時でも涙はみせないって、決めてたのになぁ……」
ペパロニ「まぁでも、しかたないっすよね……私だって一応女っすから、何となくはわかります」
アンチョビ「自分でも、びっくりしたんだ……うー、くやしいなぁ」
ペパロニ「まぁまぁ、絶対内緒にするっすから……あ、けど姉さん、ほんと、寒くないっすか? お腹とか……」
アンチョビ「大丈夫だよ。……ん……そうしてさすってもらうと、うん、暖かい」
ペパロニ「へへ、どういたしまして」
アンチョビ「まぁだけど、そろそろ本当に……帰るか?」
ペパロニ「え? ……うーん、そっすねぇ……」
アンチョビ「……」
ペパロニ「……」
アンチョビ「……しゃあないなぁ、もうちょっとだけおしゃべりしてくかっ!」
ペパロニ「……やったっ! 姉さん大好きっ!」
アンチョビ「ただし、万一明日寝過ごしたら、明日グランド10周だからなっ」
ペパロニ「姉さんこそ、気をつけてくださいよぉー?」
アンチョビ「はっ! 誰にモノを言ってるんだお前は!」
---翌朝
カルパッチョ「あの、二人とも、どうしてそんなにすごいクマができてるの?」
アンチョビ「う、う……ちょっと夜更かししすぎた……」
ペパロニ「私も……」
カルパッチョ「もー、二人ともドゥーチェなんだから、体調管理をしっかりしてくださいね。 皆に示しがつかないでしょう?」
アンチョビ・カルパッチョ「ごめんなさい……」
おしまい
稚拙な所が多々あったろうと思います。
にもかかわらず読んでくれた皆さま方へ、本当にありがとうございました。
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