白坂小梅のとある1日 (17)

朝、目覚まし時計が鳴りだすと、私の今日が始まる。


「ふわぁ……お、おはよう」


いつもの挨拶をして、まだ寝ぼけた顔でゆっくり……ゾンビみたいな動きで、身支度。

今日は、どんな1日になるのかな。

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朝食を食べてから、学校へ。


授業中は目立つから、おしゃべりはしない。

小さいころ、他の子には見えないって理解する前は、それで周りの子からからかわれたり、嘘つき呼ばわりされてたっけ。


だから今は、静かに授業を聞いてるんだ……ちょっと退屈だけど。

学校が終わったら、お仕事があるから事務所へ。

たしか今日は、幸子ちゃんと輝子ちゃんと一緒に雑誌のインタビュー。

2人に会えるの、嬉しいな。



「おはようございます、小梅さん、輝子さん」

「幸子ちゃん……もう、こんにちは……だよ?」

「あ、あれか、そのほうがギョーカイジンって感じだもんな……フヒヒ」


事務所の応接室にみんなが集まる。

「揃ったな。じゃあもうすぐ記者さん来るから、それまでに着替えるように」


と、プロデューサーさん。

幸子ちゃんや輝子ちゃんも、学校の制服。3人とも違う制服だから、なんだか面白い、かも。


「な、なぁ親友……なんで、わざわざ着替えるんだ……インタビューだろう?」

「そのインタビュー風景を撮って一緒に掲載するからな、流石に通ってる学校の制服はまずいだろう」

「それは、そうだね……うん、わかった」

「では早めに着替えにいきましょう。ボクは何を着てもカワイイですからね!」


……2人の制服姿、新鮮だからもっと見てたかったな。

「今日はよろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします!」

「テーマを出しますので、それについて3人で自由に話して下さい。インタビューというより、対談形式になります」


インタビューと聞いて身構えしてたみたいだけど、それなら大丈夫そうかな?


「うん、その方が……き、緊張しないで、話せる、ね……」

「あぁ……私も嬉しいぞ、フヒッ」

「緊張せずにいつものおしゃべりのように、ですね!」

「そういうことです。写真もその様子をどんどん抜いていくので、目線なども気にしないでください。自然なリラックスした表情でお願いします」

『まずは、そのユニークなユニット名について、何かエピソード等ありましたら』

「そもそも、この3人で正式なユニットと決まってたわけじゃないんですよね」

「うん……撮影のお仕事で、偶然、3人固まったんだよね」

「そこで、チーム名が必要だから何か考えてって言われて……」

「深く考えず決めましたけど、まさかそのままユニットまで組むことになるなんて……わかってたらもっとちゃんとした名前にしてましたよ!」

「で、でもインパクトはあるよな……フヒヒ」

「覚えやすいし……私はこれでよかったかなって、思うよ……?」

「まぁ、このカワイイボクがメンバーにいるユニットだとすぐに解るのは、良いことですね!」



対談の間、カメラマンさんが色んな角度からシャッターを切っている。

前から。斜めから。少し引き目に。一人ひとりをアップで。

みんな素敵な表情をして、それにつられて、私も笑顔になる。

……やっぱり、みんなでおしゃべりしてる時が、一番楽しいの、かも。

「ありがとうございました、今日はこれで以上です。プロデューサーさん、どこか削る所ありましたか?」

「いえ、事務所的にNGを出す部分もなかったですね、全文から使ってくれて構いません。幸子の発言数が多くなり過ぎないように、3人のバランス取ってもらえたら幸いです」

「ではそのように。出来上がったらまたご連絡しますので。お疲れ様でした」

「ありがとうございました!」


記者さんたちが撤収していく。何だかあっという間、だったなぁ……。


「よし、お前らもお疲れ。良かったぞ、いい記事になりそうだ」

「フフーン!ボクがいるから当然です!」

「あぁ、幸子はうまく2人の会話を引き出してたな。偉いぞ」

「そうでしょう!ほら、もっとちゃんと撫でてください!」


幸子ちゃんが、髪の毛をくしゃくしゃにされている。

ちょっと、羨ましい……。


「し、親友……私も頑張ったぞ……!」

「プロデューサーさん、わ、私も……!あの、だから……その……」


私も、頭撫でられたいな……なんて。

夕焼けの中、並んで歩く帰り道。

プロデューサーさんはまだお仕事があるから、送れなくてごめんって謝ってたけど。

みんなと一緒の時間が長くなるから、私はいいかなって、そう思う。


「夕方なのに暑いし、まだまだ太陽が眩しいな……」


と、輝子ちゃんがつぶやく。

私も明るい所より暗い方が好き。

「もうすぐ夏ですからねぇ……コンビニでアイスでも買っていきます?」

「今食べたら、晩ごはん、入らなくなっちゃうよ……?」

「小梅ちゃんは、小食だからな」

「小梅さんはもう少し食べた方がいいと思いますよ」


それは私も思う。


「そう……?別に、大丈夫だよ……?」

「まぁ、3人ともそんなに食べる方じゃないし……」

「確かにボクも人のこと言えないかも知れませんね。あ、2人とも料理できます?」

「わ、私は……あんまり……」

「トモダチを使ったキノコ料理なら、いくつか作れる……フヒヒ……」

「そこでトモダチって表現すると怖いですよ」

「友達を調理するって……スプラッター映画で、ありそうだよね……えへへ」

「小梅さんも良い笑顔で何言ってるんですか!」



さっきまであんなにおしゃべりしてたのに、全然会話が途切れない。

みんな、ほんとに仲良しなんだなって。

晩ごはんを食べて、お風呂に入って、ちょっと勉強したりして……あっという間に、もう寝る時間。

目覚まし時計のセットを確認して、ベッドに潜り込む。


そこから、最後のおしゃべりの時間。

今日あったこと、2人でお話するんだ。

「あのね、今日……何度も、寂しそうな顔してたよね……?」


そっか、気付いてたんだ。


「私……幸子ちゃんも輝子ちゃんも、親友だと思ってるけど……私たちは小さいころから、ずっと一緒だから……負けないくらい、特別だよ……」


……うん、ありがとう。


ほら、眠そうな顔してるよ。また明日、お話ししよう。

おやすみ、小梅ちゃん。


「うん……おやすみ」

後日談


「んー、これはやっぱり……」

「プロデューサーさん、どうかしたの……?」

「小梅か、丁度良かった。ほら、こないだ142'sの3人で対談したよな?その件で至急確認お願いしますって連絡がきてな」

「お、覚えてるけど……なにか、問題があったの……?」

「問題ってわけじゃないんだが……この3人並んでる写真を見てくれ。ここの小梅と幸子の間に」

「……あ、」

「確認なんだが……これって」


ごめんなさい……


「あの子が『ごめんなさい』って言ってる、よ……」

あの子がいるから小梅は1粒で2度おいしいと思います。
ここまで読んでくださった方に百物語を。

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