【ラブライブ】ほのかな憂鬱 (261)

2作目です。
今回は書き溜めていないので、ゆっくり更新になりますがよろしくお願いします。

・アニメ基準
・オリキャラ出る(予定)
・劇場版後のお話

前作【ラブライブ】A-RISEという偶像
【ラブライブ】A-RISEという偶像 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1466793478/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1467474812

生徒会長として、新年度の最初のお仕事は入学式。

前日から、幼馴染で、生徒会役員の海未ちゃん、ことりちゃんと、生徒会長挨拶の草案を作っていた。

こないだの、卒業式みたいに歌って済ませられないかなぁと簡単に考えていたが、なんでか海末ちゃんに厳しく止められちゃったんだよね。

下校時間ギリギリまで、生徒会室であーでもない、こーでもないと話しつつ、なんとか無難なあいさつ文が出来上がった。

「いやぁ~。これで明日は安泰だよぉ~。」

何だかんだで、あいさつ文の殆どは海未ちゃんが考えたようなものだけど、私はとりあえず目途がついたことにホッとしていた。

「結局、私がほとんど作ったようなものなのですが、それについてはどう思っているのですか?」

海未ちゃんが怖い目をしながら、私に詰め寄ってくる。

「あ、ははは・・・。海未ちゃんはやっぱり頼りになるなぁ~。なんて?」

私はいつものように、おどけて見せた。

「はぁ・・・。貴女は生徒会長なのですよ。もっとシッカリしてもらわないと困ります。」

ブツブツと文句を言いながらも、私を助けてくれる海未ちゃん大好き。

心の中では果てしなく感謝してるんだよ。

そんな事を考えてると、ことりちゃんが助け舟を出してくれる。

「まあまあ、海未ちゃん、穂乃果ちゃんも分かってると思うから。」

「ことりはすぐ穂乃果を甘やかす。・・・次はちゃんと自分で考えるんですよ。穂乃果。」

なんだかんだ言いながら、海未ちゃんは優しい。

「はいっ。がんばります。園田教官っ。」

そう言いながら、敬礼のマネをする。

「全く・・・。調子がいいんですから。」

半分くらい諦めの表情を浮かべながら、海未ちゃんは溜息を軽くついた。

素人図鑑

「あ、もう下校時間だよ。帰ろ。」

ことりちゃんの言葉で、時間がギリギリな事に気付く。

「大変だあっ!早く帰らなきゃ。セコムさんに怒られちゃうよ!」

私の大声を合図に、3人は一斉に帰り支度を始める。

家に帰ると、雪穂がテレビを見ながら迎えてくれた。

「あ、お姉ちゃんおかえり~。」

「ただいまぁ・・・。雪穂ぉ疲れたよぉ~。」

海末ちゃんに絞られた気力を回復すべく、雪穂に抱きつこうとした。

「はいはい。どうせ明日のあいさつ全然考えてなくって、海未さんとことりさんに泣きついたんでしょ?」

あまりの図星具合に、ぐうの音も出ない。

何で雪穂は、こんなに私の事に鋭いんだろう。

「だって、仕方ないじゃん。私は堅っ苦しい挨拶苦手なんだもんっ。」

雪穂だって判ってるのに、何て意地悪な事を言うんだろう。

「お姉ちゃんがこんなんじゃ、生徒会長に推薦してくれて絵里さんの立場が無いよ。」

うぐっ。

痛いところを突いてくる。

「ぅ絵里ちゃんは、穂乃果の事ちゃんと分かってくれるもんっ。」

苦し紛れの言い訳だけど…。

「わかったわかった。もうすぐご飯だから、着替えて来たら?」

妹に軽くあしらわれる姉って一体…。

「むぅ…。着替えてくる。」

ムスッとしながら、私は自分の部屋に行った。

雪穂も明日からは、音ノ木坂の一年生。

もうちょっと上級生というものを敬ってくれても良いのに。

そういえば、明日からは雪穂も亜里沙ちゃんと一緒に、アイドル研究部の正式な仲間かぁ。

二人が部室に来た時の事を想像すると、なんかニヤケてしまう。

あれ?
明日来るんだっけ?

まあ、いいや。

他にはどんな人が来てくれるのかな。

今はまだ想像すらできないけど、バーーーローー年生の入部希望者がいっぱいくるといいな。

そしてみんなから穂乃果先輩って言われちゃったりして、えへへへ・・・。

そんな事を考えていると、下からお母さんの呼ぶ声が飛んでくる。

おっと、明日に備えてしっかりエネルギー補給しないとね。

saga入れないと新一がバーローになるゾ(なってる)

期待

sagaはその都度入れないとなんですね。
ありがとうございます。

今日は朝からとってもいい天気だよ。

入学式はこうでなくっちゃ。

ウキウキしながら、いつもの待ち合わせ場所に着く。

さすがの私も、緊張したのか朝早くから目が覚めちゃって、海末ちゃんことりちゃんとのいつもの待ち合わせに普段より早くたどり着いていた。

「おはようございます、穂乃果。今日は早いのですね。」

そう言いながら、海未ちゃんが来た。

「おっはよぅ海未ちゃん。緊張したのかなぁ、朝早くから目が覚めちゃって~。」

テヘヘと愛想笑いをする私を他所に、海未ちゃんは更に余計な事を言う。

「普段から、そのような生活態度だったら良いのですけど。」

ぅ、海未ちゃんひどい。

抗議しようとしたとき、もう一人の幼馴染が小走りでやってきた。

「ハノケチュン、ンミちゃん、おはよぉ~。」

あぁ、ことりちゃんは声は、私の荒んだ心を癒してくれる。

「ことりちゃんっ、聞いてよ。海未ちゃんが酷いんだよぉ。」

そう言いながら、私はことりちゃんにしがみ付く。

「い、言いがかりです!穂乃果が普段から正しい生活態度でいてくれたら、私もこんな事をブツブツと言わなくても良いのです。」

海未ちゃんは二人目のお母さんみたいだよぉ。

私が言い返そうとするより早く、ことりちゃんが間に入ってくれた。

「海未ちゃん。穂乃果ちゃんも今日はちゃんと来てくれたんだから、ね。」

こう言われては、海未ちゃんも強く言えない。

「そうですね。確かに、私も少し余計なことを言ってしまいました。穂乃果、すみません。」

「穂乃果ちゃんも、3年生になったんだから、これからはちゃんとするもんね?」

ことりちゃん・・・。

さらっと笑顔で釘を刺していくなんて。

あ、海未ちゃんまでついでに何か言いたそうにしてるっ。

「じ、じゃあ、3人揃ったところで、いざっ入学式へ!」

ちょっと強引だけれど、話題を逸らし、私は歩き出す。

「あ、穂乃果!」

突然の行動に少し面喰いながらも、2人は私に付いてくる。

学年が上がって3年生になっても、この風景は変わらない。

いつまでも、3人で一緒に・・・。

卒業式は無難に終わり、教室へ戻る。

今年も海未ちゃん、ことりちゃんと同じクラスで嬉しいなぁ。

ついでにヒデコ達3人ともね。

「あ~~~疲れたよぉ!」

大げさに叫びながら、私は机に突っ伏す。

「ずいぶん緊張してたみたいですからね。おつかれさまです。」

「スピーチ上手だったよ。穂乃果ちゃん。」

海未ちゃんとことりちゃんが労ってくれる。

私、なんとかやりきったよぅ。

「あはは。穂乃果も成長したねぇ。お母さんは嬉しいヨヨヨ。」

泣き真似をしながら、ヒデコが茶化してくる。

そんなに何人もお母さんはいらないよ…。

「ところで穂乃果。新入生歓迎ライブとかやるの?」

ヒデコに言われて気が付く。

一週間後に新入生歓迎会と称した部活動の猛アピール日があるんだった。

花陽ちゃんどうするんだろう?

「海未ちゃん~。アイドル研究部って会場とかの申請出してたっけ?」

「いいえ。花陽からは特に何も申請書類はもらってませんね。」

アイドル研究部の部長は花陽ちゃんだけど、もしかして分かってなかったら大変だよ。

「ヒデコごめん。花陽ちゃんに聞いてみないと分かんないから後でね。」

「あいよ。未だにμ'sのライブ見たいって知り合いが多くてさ、PVでもなんでもいいから手に入れたいなぁなんて、だからお願いね。」

いつもライブの手伝いをしてくれるヒデコたちの頼みとあれば、出来るだけ叶えてあげたい。

でも、・・・もうμ'sじゃないんだけど、そうだよね。

まだ私達が残ってるんだから、それでも良いから見たいって人は居て当然だよ。

3月中がμ'sの関係で色々忙しかったから、4月になって気が抜けちゃったのか、ぽっかりと心に穴が開いたような感じがする。

放課後、アイドル研究部の部室に行くと、先に花陽ちゃん達が来ているみたい。

「まきりんぱなちゃん。お疲れさま~!」

勢いよくドアを開けながら、中にいる3人に挨拶をする。

「あ、穂乃果ちゃん。お疲れ様です。」

「穂乃果ちゃん!スピーチ、カッコよかったにゃ!」

「何が、まきりんぱななのよ!適当な造語作らないでよ。」

花陽ちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃんがそれぞれの返事を返してくれる。

「えぇ~~~、だってすごく語呂良いじゃん、まきりんぱな!真姫ちゃん嫌?」

この名義で何か出来そうだよね。

我ながらナイスネーミングだと思うんだけどな。

「べっ、別に・・・。嫌じゃないけど…。」

真姫ちゃんは髪の毛をクルクルいじりながら口ごもる。

素直じゃないなぁもう。

「そんな所で立ち話をしていたら危ないですよ。」

後ろから来ていた海未ちゃんに窘められる。

「あ、ごめ~ん。ささ、どうぞどうぞ。」

更に後ろから、ことりちゃんも一緒に入ってきて、部室に全員がそろう。

それぞれが定位置に座ると、やっぱりちょっと物足りなさを感じる。

今はこれで全員なんだよね。

早く慣れないと。

つまらん

「花陽。あなたの席、今度はあそこじゃない?」

そういうと、真姫ちゃんは長テーブルの上座を指す。

そこは少し前まで、前部長であるにこちゃんの特等席だった場所。

えへへ、そうだねと良いながら花陽ちゃんは席を移動する。

「それと、凛もこっち。」

再び真姫ちゃんが席を指す場所は、花陽ちゃんの向かって右隣。

凛ちゃんはリーダーだからね。

「それじゃあ、真姫ちゃんはここだにゃ!」

凛ちゃんは移動すると自分の右隣の椅子をバシバシ叩く。

「ま、大体こんな感じになるわよね。」

そう言いながら、真姫ちゃんも席を移動する。

何でも形からって言うしね。

話が落ち着いたみたいなので、さっき教室でヒデコに言われた話を振ってみる。

「新入生歓迎会!それは、各部が新入生をより多く獲得しようと熾烈を極める春の一大イベント!」

突然花陽ちゃんがヒートアップする。

何かのスイッチが入ったみたい。

「これは私とした事が大失態です!アイドル研究部の新部長として、最初の大仕事をやらかしてしまう所でした!」

そこまで話すと、花陽ちゃんはハッとしてコホンと一つ咳ばらいをする。

「えっと、海未ちゃん。講堂は今どのくらいの空きがあるのかな?」

「そういわれると思って、先ほど生徒会室で確認をしてきました。今の所は、13時から演劇部。13時半から吹奏楽部の予定が入っているだけです。なので14時から残り1時間は、講堂が空いていることになります。」

海未ちゃんが事細かに説明してくれる。

「それじゃあ、私達アイドル研究部は14時から30分で押さえておく感じで良いかな?」

花陽ちゃんがみんなに同意を求める。

特にみんなその時間に用事がある訳でもないので、あっさりと予定は決まった。

「では花陽。こちらの書類に記入をお願いします。」

海未ちゃんから渡された、講堂使用許可申請書に花陽ちゃんが記入する。

場所はこれで決定っと。

となると次は・・・。と思っていると、不意に部室にノック音が響いた。

花陽ちゃんが、どうぞと言うと、おずおずと扉が開かれた。

「こんにちはぁ・・・。」

そう言いながら入ってきたのは、我が妹雪穂と絵里ちゃんの妹の亜里沙ちゃんだった。

「雪穂ちゃん!亜里沙ちゃん!来てくれたんだにゃ!」

凛ちゃんが嬉しそうに飛び上がる。

部室内がにわかに活気づく。

雪穂は私をチラッと見て、モジモジとしながら、紙を一枚渡してきた。

「もう、良いんだよね。入部届持ってきても。」

「アイドル研究部に入りたいです!よろしくお願いします!」

亜里沙ちゃんは元気いっぱいでお辞儀をしながら入部届を差し出す。

何だか初々しくて可愛いなぁ。

それにしても、なぜか私に向かって入部届を差し出す2人。

あれ?

花陽ちゃんが部長だって言ってなかったっけ?

私は入部届を受け取ると、花陽ちゃんにパスする。

「はい。確かに入部届は預かりました。これからよろしくお願いしますね。」

入部届を受け取った花陽ちゃんが、ニッコリと笑顔を向ける。

「二人とも、こっちへ来て座ったらいいわ。」

真姫ちゃんが自分の隣を促す。

「ちょうどこれから、新入生歓迎会の事を話し合う所だったの、一緒に考えよ。」

「え、いいの?」

ことりちゃんの説明に、雪穂が少し驚いたように伺ってくる。

「良いよ良いよ~。2人ともアイドル研究部の一員なんだからさ。何なら一緒にライブしちゃう?」

私はニンマリとしながら、少し意地悪な提案をしてみる。

「だだだ、ダメだよ。まだ何にも練習してないんだから、出来っこないって。」

頭をぶんぶん振りながら、雪穂は出演を拒む。

「ふふ。start dashくらいなら、出来るんじゃないですか?2人とも熱心に練習していたではありませんか。」

海未ちゃんもニコリとしながら、私の意地悪に加担する。

「入部したてで海未さんと一緒のステージに立てるなんて、亜里沙感激ですっ!」

アワアワする雪穂と、目をキラキラさせながらノッてくる亜里沙ちゃん。

「もう、そのくらいにしてやりなさい。話が進まないわ。」

真姫ちゃんが私達のワルノリを諫める。

「それじゃあ、真面目に歓迎会のライブをどうするか考えましょう。」

花陽ちゃんが、改めて仕切る。

その後の話し合いで、ライブは元μ'sの6人でstart dashを、そのあと活動の説明時に雪穂と亜里沙ちゃんをモデルにして衣装のファッションショーをしようって事で話はまとまったみたい。

帰り道、歓迎会と称してみんなでお茶をしたんだけど、まだ2人ともちょっと固い感じ。

だけど、その内すぐに慣れるよね。

ファイトだよ!

新入生の歓迎会なんだけど、私達のライブは大盛況だった。

うん、新入生だけじゃないよね、集まってるの。

でも見に来てくれる人が多いのは、やっぱり嬉しいよ。

そして、花陽ちゃんの熱い熱いアイドルトークのあと、雪穂と亜里沙ちゃんの初お披露目。

ガッチガチの雪穂と、うっきうきの亜里沙ちゃんは見事な好対照だね。

ライブが終わると、花陽ちゃんは部室で頭を抱えて悶絶してました…。

「はあぁぁぁぁうぅぅぅぅぅ!」

花陽ちゃんは頑張ったんだよ!

すっごく頑張ったんだ。

ほんのちょっとだけ、マニアなスイッチが入ってただけなんだよ…。

「凛はあんなかよちんも好きだにゃ!」

凛ちゃんは最早慰めてるのかどうか、よくわかんない。

「まあ、花陽の熱意が伝わる良いスピーチだったわよ。」

「本当・・・?」

真姫ちゃんは普段ツンツンしてる割に、上手くフォローする。

「あれなら、ミーハー気分でアイドル目指そうって人は大分ふるい落としたわね。」

あ~・・・それ言っちゃうんだね。

花陽ちゃんが、またハートブレイクしてる…。

しかたない、ここは先輩たるこの私が、花陽ちゃんを助けるときだよ!

「花陽ちゃんっ!」

「ぴゃあっ!」

突然私が声をかけると、花陽ちゃんは飛び上がるように驚いた。

「アイドルは、生半可な気持ちじゃやってられないんだよね!だから大丈夫だよ。きっと真面目にアイドル目指してくれる人が入部してくれるよ!」

「穂乃果ちゃん・・・。」

花陽ちゃんはうっすらと涙を浮かべながら、私の言葉にうなずいていた。

そんな私達の隣で、ことりちゃんは雪穂と亜里沙ちゃんに、今までの衣装を着せ替えて楽しんでました。

「やぁぁん。2人とも可愛い~~~。」

歓迎会から一週間経ったけど、アイドル研究部の部員が増える気配はないみたい。

その代わり、衣装づくりに興味があると言う新入生が、2人ほど現れたの。

まさかの、ことりちゃんに弟子入り!

今までずっと衣装関係はことりちゃんの負担だったから、それをサポートしてくれる人が増えたのは素直に喜ばしいと思う。

ただ、花陽ちゃんの心中は穏やかじゃないよね。

雪穂から聞いた噂によると、アイドル研究部には鬼が住まうとまで言われてしまっているらしい。

何その学院7不思議の1つみたいな扱い・・・。

「はぁ…。」

今日も花陽ちゃんの溜息が漏れる。

他のメンバーは基礎体力トレーニングのために、神田明神まで。

今は花陽ちゃんと二人きり。

「オカシイ・・・。今年の一年生は3クラスもあるっていうのに、どうして一人も入部希望者が来ないのぉぉぉぉ!」

花陽ちゃん、荒ぶってるなぁ。

確かに、今の2年生は1クラスしかないのに、その内3人がスクールアイドルやってるんだからね。

もっと来ても良いような感覚があるのかもしれない。

でも、それとはまた別の心配があるんだよね、きっと。

「花陽ちゃん。」

話しかけると、半壊れだった彼女がハッとして振り向く。

「花陽ちゃんが去年、アイドルがやりたいですって来てくれた時のこと覚えてる?」

「うん。それはもう。」

「あのとき、もし、凛ちゃんも真姫ちゃんもいなくて、花陽ちゃん1人だけだったら、屋上に来てくれたかな?」

「それは・・・。たぶん行けなかったと思う。私、勇気が無くて、ウジウジしてたから。」

彼女は親友と、新たに親友になる人の助けを得て、背中を押してもらう事で勇気が出せた。

じゃあ、その助けの無い人はどうすればいいんだろう。

「それでも、私達のファーストライブの時に、一番に来てくれたよね。私達は本当に嬉しかったんだよ。だから、時間はかかったかもしれないけど、花陽ちゃんはいずれμ'sに入ってくれたと思うんだ。」

花陽ちゃんは何かを考え込むように俯いている。

「気長に待てばいいと思うよ。雪穂も亜里沙ちゃんもいるんだし。」

去年の私は色んな意味で急いでいたけど、今はもう違うから。

花陽ちゃんのペースでゆっくりとやっていけば良いんだ。

「そうでだよね。私、にこちゃんから託されたアイドル研究部を、何とか大きくしなきゃって焦ってたみたい。まだ始まったばかりだよね。」

花陽ちゃんの表情に普段の柔らかい雰囲気が戻ってきた。

でも、花陽ちゃんは今の1年生に変な風に誤解されてるんだよねぇ・・・。

そのイメージを覆す良い方法ないかなぁ・・・あ、そうだ!

「花陽ちゃん!やっぱり待ってるだけじゃなくて攻めなきゃいけない時もあるよ!」

「ええっ!さっきと言ってることが違うよぉ!」

良い事思い付いちゃった~。

「花陽ちゃんがセンターの新曲で校内ライブをするんだよ!」

「エエエェェェ!わ、私がセンター?だ、ダレカタスケテェ~!」

みんなが帰ってくると、私は早速ライブの提案をする。

「どうして花陽を指名なのですか?」

海未ちゃんが当然の質問をしてくる。

花陽ちゃんが、歓迎会の一件で1年生に良くないイメージが付いている事と、入部を迷っているかもしれない人を後押ししたいとみんなに話す。

すると、凛ちゃんが嬉しそうに机に乗り出す。

「上手くいけば、両方の問題を解決できるかもしれないって事だよね!」

「まあ、今年のラブライブに向けて活動アピールしていかないとだから、ちょうど良いんじゃない?」

真姫ちゃんも賛成してくれるみたいだね。

「それじゃあ、雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんはどうするの?」

ことりちゃん良い質問!。

「もちろんっ!二人ともデビューだよ!」

今日の練習が終わり、クールダウンしているときに、ふと周りを見てみる。

ライブの日まで、あと2週間。

やっぱり目の前に目標ができると、張り合いが出てくるよね。

みんながそれぞれ動き始めている。

海未ちゃんは凛ちゃんと一緒にトレーニングとダンスの組み立て。

真姫ちゃんのボイストレーニング。

ことりちゃんはこの間弟子入りした1年生と新しい衣装の制作を。

雪穂と亜里沙ちゃんは、私達に追いつこうと一生懸命練習している。

それらの全ての現場には、どこかに花陽ちゃんの姿がある。

みんながみんなのできる事をやっている。

何だか青春っ、してるよね。

はぁ・・・、それに引き換え、私は何もしてないなぁ。

何か私が役に立つ事ってないのかなぁ。

「・・・か。・・・のか。」

「穂乃果!」

うっひゃあ!

突然近くで名前を呼ばれて、変な声出しちゃったよ。

「穂乃果。練習は終わりですよ。ボーっとしてないで行きませんか。」

あぁ、海未ちゃんが声かけてくれてたのか。

いけない、いけない。

階段を下りるとき、ふと屋上を振り返る。

私にできる事って何だろう…。

5月になって、校内ライブの日がやってきた。

空は快晴、ライブ日和だよ!

雪穂は朝から初ライブの緊張でガチガチ。

花陽ちゃんも初センターの重圧でガチガチ。

みんなが思い思いに励ましてるけど、これは・・・。

逆に、亜里沙ちゃんは初ライブが嬉しすぎてハイテンション。

うーん、大物の予感がするよ。

開演直前、もう舞台袖に待機中なんだけど、やっぱり花陽ちゃんはちょっとおかしい。

「花陽ちゃん、大丈夫?」

ことりちゃんが心配して声をかけるんだけど、ダイジョウブデスって明らかに大丈夫じゃない返事しか返ってこない。

「困ったわね。ここ一番の度胸はある方だと思ってたんだけど。」

真姫ちゃんが小声で話しかける。

「そうですね。花陽はアイドルに対する姿勢は人一倍ですから。逆に重圧を感じているのでしょうか。」

海未ちゃんもなんて声をかけていいか迷ってるのかな。

こんなとき、にこちゃんなら、どんな発破をかけてくれるだろう。

絵里ちゃんなら、なんて言って励ますだろう。

希ちゃんなら、どうやって安心させるだろう。

私は、花陽ちゃんに何をしてあげられるんだろう。

・・・ステージに立つ理由、この歌の歌詞、そうだ!

「花陽ちゃん!」

私は勢いよく声をかけると、ぴゃあっと驚く彼女の手を包み込んだ。

「今日のライブは何のためにやるんだっけ?」

努めて明るく、笑顔で話しかける。

「えっと、えっと・・・。」

すぐに答えが出てこない花陽ちゃんに、優しく語り掛ける。

「今日の歌は、みんなの夢を、みんなの望みを応援する歌だよ。今日のステージは、みんなの勇気、みんなの背中をちょっとだけ押してあげたいステージなんだよ。」

そしてそれは、花陽ちゃん自身にも当てはまるんだよ。

「私達のやる事は全然変わらない。この想いを全力でみんなへ届ける。それが私達スクールアイドルだから。」

すると、花陽ちゃんの表情から硬さが無くなっていく。

「そうだよね。私ずっと失敗する事ばかり考えてた。そうじゃないよね。私達は自信をもってこの歌をみんなに届けないといけない。自分自身を信じなきゃ、この想いはきっと届けられないから。」

「かよちんなら絶対に出来るにゃ~!」

すかさず、凛ちゃんが花陽ちゃんに抱きつく。

「ちょっとぉ、衣装がくずれるでしょ、いい加減に離れなさいよ!」

花陽ちゃんを揉みくちゃにする勢いの凛ちゃんを、真姫ちゃんが制する。

3人の様子を見て、みんなに少し笑顔が戻る。

一気に場の空気が和んだ気がする。

まきりんぱなはこうじゃなきゃね。

そうしているうちに、フミコが時間だよと教えてくれた。

さあ、みんな、今日も楽しいライブにしよう!

ライブは大盛況のうちに幕を閉じた。

雪穂も亜里沙ちゃんも、しっかり付いて来てくれたし、花陽ちゃんも堂々のセンターを務めてくれたよ。

これで花陽ちゃんの事を1年生が見直してくれたら嬉しいな。

ついでに、アイドルやりたいって人が出てきてくれると、もっと嬉しいな。

帰り道、4月に入ってから、雪穂を加えた4人での下校がいつもの風景になっていた。

ワイワイと、ライブの成功を喜ぶ会話で盛り上がっている。

「雪穂ちゃん、あんなに緊張してたのに、本番になったら別人みたいでびっくりしたよね。」

ことりちゃんの言う通り、あんなにガチガチだった雪穂がライブ始まったら、キレキレで私もびっくりしたよ。

案外、本番に強いタイプなのかなぁ。

「ええ?うーん、ステージに立つまではホント不安で仕方なかったんだけど、幕が上がったら良い意味で頭が真っ白になったというか、なんというか。」

雪穂は、自分でもよく判ってない感じの不思議そうな顔をしている

それはそれで良いのかな?

「ふふ。雪穂も亜里沙も、初ステージとは思えないほど堂々としたものでしたよ。」

「将来有望だよね。」

海未ちゃんとことりちゃんに褒められて、雪穂は顔を赤くする。

ほんと、これからが楽しみだよ。

「それにしても、花陽があんな状態で開演直前まで来てしまうなんて、どうしようかと肝を冷やしました。」

海未ちゃんの言葉に、みんながウンウンと頷く。

「穂乃果ちゃんが上手く言ってくれなかったら、今頃お通夜みたいになってたかも。」

ことりちゃんは花陽ちゃんの様子をずっと心配してたもんね。

お通夜かぁ、そういえば私達ステージで失敗したことと言えば、去年の文化祭で私が倒れちゃった時くらい?

あぁ、今思い出しても恥ずかしいよ。

私、いっぱいみんなに迷惑をかけたんだよね。

ぁー・・・、過去形じゃないか…。

何もできない私は現在進行形でみんなに迷惑をかけ続けているんじゃないかな。

「おねえちゃんって、なんて言うか、やっぱりみんなのリーダーなんだね。」

ん?

えーっと、なんかちょっと酷くない?

「ふふ。そうですよ。雪穂は家にいるとき以外の穂乃果をあまり見ていませんからね。雑で大雑把でお気楽なだけでは無いのですよ。」

海未ちゃんまでヒドイよ?!

「うわーんっ、ことりちゃぁぁぁん!」

「よしよし。雪穂ちゃんも海未ちゃんも、穂乃果ちゃんの事を褒めてるんだよ。遠回しだけど。」

夜、寝る前に携帯を見ると、花陽ちゃんからメールが来てた。

私のおかげでいつもの自分に戻れたって。

大げさだなぁ。

花陽ちゃんは自分の力で立ち直ったんだよ。

あーだこーだと書こうとしても上手く伝えられないから、一言だけファイトだよ!って返信しておいた。

花陽ちゃんの強い想いは、きっとみんなを引っ張って行ってくれる。

だから、頑張ろうね。

布団の中で目を閉じながら、アイドル研究部の事を考える。

がむしゃらに頑張るだけで良かった去年とはきっと違う。

私は3年生になったんだから。

1人だけ、何の役目も取り柄もない私が、今やれる事は何だろう。

このまま何もできずに終わってしまう事が、とても怖い。


【 花陽side 】


アイドル研究部、部長。

私は今まで、人の前に立つと言う事をほとんど経験したことがありません。

3月中はギリギリまで、にこちゃん達がいたから、それほど自分が部長であると言う意識はありませんでした。

それが4月になって、私も2年生

とうとう私が部長として、アイドル研究部を引っ張っていかなくてはなりません。

もう不安しかないよぉ。

そこで、にこちゃんに今の気持ちを聞いてもらったことがあるんです。

「花陽、あんたに必要なのは、度胸とハッタリよ!」

開口一番、私の一番苦手な分野が出てきちゃいました。

えぇぇぇ!とか言ってるうちに、にこちゃんは続けます。

「バカにしたもんじゃないのよ。ライバルと鉢合わせたとき、下級生が生意気だったとき、テストの点数が芳しくなかったとき。」

3つ目は関係ないような…。

うぅ…、3つ目はともかく、どれも私には苦手なシチュエーション。

「そしてステージに立ったとき、度胸とハッタリが重要なのよ。と言っても、あんたにはまだちょっと難しいかもしれないけどね。」

ステージに立つときに必要な度胸とハッタリって何だろう…。

「まあ、解りやすく言うと、度胸は自信、ハッタリは笑顔よ。キツイこと言うようだけど、あんた今まで、誰よりも前に出ようとか思ったことないでしょ?」

そういわれて、ハッっとする。

今までμ'sの中で、私はセンターに立ったことが無い。

みんなの中で、より目立とうという事もしなかった。

そんな事を見透かしているかのように、にこちゃんは続ける。

「もし仮に、次のライブであんたがセンターに抜擢されても、自信をもって笑顔で立つことは出来ないでしょうね。」

うぅ…反論できません。

「別にいじめたい訳じゃ無いのよ。部長である以上、いつか自分が一番前に出なきゃいけない時が必ず来る。」

私が・・・、部長だから。

「だから、強がりでも良いから度胸とハッタリを出す術を身につけておきなさい。でないと、いざという時にみんなが不安になるわ。」

やっぱり、にこちゃんは凄いです。

こんなに凄い人の後を継ぐなんて、やっぱり私じゃ力不足なんじゃ・・・。

そんな私の表情を読み取ったのか、にこちゃんは大きくため息をついた。

「はぁ、また同じような事を言うけどね、アイドルの情熱に関しては花陽が一番よ。そして人を見て、バランスをとれて、固持する安いプライドもない。これはアタシには無かった長所。だから花陽を部長に推した。分かる?」

なんだかとっても買い被られてるような気がするけど、にこちゃんが言うんだから、きっとそういう部分が私にあるって事だよね。

が、がんばりますっ。

なんていうのが、また表情に出てたのか、にこちゃんに笑顔が足りないってダメ出しをされちゃいました。

そのあと、何故かお店の中で延々と、にっこにっこにーを練習させられました…ちょっと恥ずかしかったです。

帰り際、にこちゃんはお店の前で最後にと前置きをつけて、とても大事なことを教えてくれました。

「花陽が立つステージは一体誰を向いているのか、どんな想いをぶつけたいのか、それがアイドルの価値になるのよ。」

ありがとう、にこちゃん。

私しは頑張って、部長をやりきってみたいと思います。

私は部長としての自覚が、まだ足りなかったのかもしれません。

入学式の日の放課後、部室に来た穂乃果ちゃんが新入生歓迎会の予定について聞いてきました。

そう、新入生歓迎会とは、各部が新入生をより多く獲得しようと熾烈を極める春の一大イベント!

こんな重大イベントを失念していたなんて、小泉花陽一生の不覚を取る所でした!

幸い、用意周到に準備をしてくれてた海未ちゃんのお陰で、場所の確保は大丈夫。

あとは、何をやるかって言っても、やっぱりライブしかないよね。

そんな中、入学式早々、雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんが入部届を持ってきてくれました。

これで部員は8名、寂しくなったなぁって思ってた部室も以前の活気が出てきたような気がします。

新入生歓迎ライブは、さすがにまだ雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんには早すぎるだろうと言う事で、元々の6人でstart dashを歌う事になりました。

その代わり、新入部員の2人には、ことりちゃんのおやつになってもらう事になっちゃいましたけど…。

ライブのの予定が立ったところで、早速ですが、雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんの歓迎会をすることになりました。

と言っても、場所はファミレスなんですけどね。

2人は元々、雪穂ちゃんは穂乃果ちゃんの妹、亜里沙ちゃんは絵里ちゃんの妹って事で、あんまり新人さんのイメージがないんです。

ある程度は知った仲なので、部長としては拍子抜けなんだけど個人的には心強かったりします。

みんなと楽しそうに話す二人を見ると、それぞれのキャラクターが見えてきます。

雪穂ちゃんは、責任感が強くて、優等生タイプですね。

おねえちゃんが穂乃果ちゃんだから、この成長はある意味必然だったのでは?とも思います。

なんていうか、庶民になった海未ちゃんって感じ。

今はみんなに遠慮してるけど、世話焼きさんみたいだから、将来良い先輩になりそうです。

亜里沙ちゃんは、純真無垢な天然タイプかな。

日本の文化に良くも悪くも染まってない所が、拍車をかけてる気がします。

絵里ちゃんは、日本人離れした美しさが際立つ人でしたけど、亜里沙ちゃんは日本人離れした可愛いさが際立ちます!

まじえんじぇ、です。

穂乃果ちゃんに近いかなぁって気もするけど、似て非なるものという感じがします。

「かーよちん!難しい顔してどうしたの?」

ぴゃあっ!

不意に凛ちゃんに話しかけられて、またも変な声を上げてしまう私・・・。

「うん、ちょっとね。アイドル研究部はキャラが被らないなぁって。」

それだけ個性的な集まりって事で良いよね。

「キャラ被りしないのは良い事よ。いくら人数が多くてもキャラが被ったら魅力も半減だし。」

「そーんなこと言って、真姫ちゃんついこの間まで、にこちゃんとツンデレ丸かぶりだったにゃ。」

「現在進行形で穂乃果と被り気味の凛にだけは言われたくなかったわね。」

「なにおー!」

「なによー!」

『シャー!』

猫の様に威嚇しあう凛ちゃんと真姫ちゃん。

ちょっと二人とも、私をハサマナイデェ・・・。

かわいい(かわいい)

新入生歓迎会当日。

今日歌う歌はstart dash。

なんだか、始まりの歌って感じだよね。

歌の後に衣装ショーがあるので、私達は制服で歌う事にしたんです。

μ'sのみんなで歌った時も制服だったよね。

ライブ自体は、いつもの事なのでそれほど心配は無かったんだけど、実はライブの後に部長スピーチが待ち構えていたのです!

こんなにも早く、にこちゃんに言われた部長が前に出るお仕事が来ちゃうなんて…。

度胸とハッタリ、度胸とハッタリ、度胸とハッタリ・・・。

歌い終わり、1人スタンドマイクの前に立ったとき、私は全てが真っ白になりました。

「凛は、あんなかよちんも好きだにゃ!」

全てを吐き出し、抜け殻になって戻ってきた私に、凛ちゃんが慰めの言葉をかけてくれました。

あぁ、1年生はもう誰も来てくれないかもしれません。

「あれなら、ミーハー気分でアイドルやろうって人は、大分ふるい落としたわね。」

真姫ちゃんありがとう…。

私もそう思う事にするよ。

そのあと、穂乃果ちゃんにも力強く慰めてもらって、ようやく落ち着くことができました。

その夜、今日起きたありのままを、にこちゃんにメールしました。

しばらくして帰ってきたメールには一言。

「何事も経験よ。」

うん、そうだよね。

次はこんな無様な事にならないようにしますと、部屋の窓から見えるお月様に誓ったのでした。

前回のライブから1週間、未だにアイドル研究部のドアをノックする1年生は現れていません。

「オカシイ・・・。今年の一年生は3クラスもあるっていうのに、どうして一人も入部希望者が来ないのぉぉぉぉ!」

私は荒れていました。

1クラスしかない私達2年生が、3人も入部してるんだから、3クラスあったら9人来てくれてたって良いのに。

結局入部してるのは、元々確定だった雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんだけ・・・。

あ、そういえば、衣装を作りたいっていう1年生が二人来たんでした。

でもステージに立つのは無理って言う事で、一応入部届はもらわずに、処遇についてはことりちゃんに一任することにしました。

良いなぁ、ことりちゃん。

早く私にもセンパイって言ってくれる1年生が欲しいです・・・はぁ・・・。

「花陽ちゃん。」

あ、穂乃果ちゃんが話しかけてるよ…気付いてよかったぁ。

「花陽ちゃんが去年、アイドルがやりたいですって来てくれた辺りのこと覚えてる?」

突然の質問にちょっとビックリしちゃったけど、今でもよく覚えています。

「うん、それはもう。」

まだμ'sとは名乗ってなかった頃、私は凛ちゃんと真姫ちゃんに連れられて半分くらい強制的に言わされたんだよね。

でもそうでもしなかったら、勇気のない私はμ'sの一員にはなれなかったかもしれない。

「ファーストライブの時に、一番に来てくれたよね。私達は本当に嬉しかったんだよ。だから、時間はかかったかもしれないけど、花陽ちゃんはいずれμ'sに入ってくれたと思うんだ。」

そう、なのかな…?

私は一人でも、勇気を出してこの扉をノックすることができたのかな。

気長に待てばいいと言う穂乃果ちゃんに、少し救われたような気がしました。

にこちゃんに託された部長という立場に、私は気負いすぎていたのかもしれない。

そうだよね。

私は私らしく進んでいけば良いんだ。

そう思い直したとき、突然穂乃果ちゃんが椅子を飛ばす勢いで立ちあがりました。

「花陽ちゃん!やっぱり待ってるだけじゃなくて、攻めなきゃいけない時もあるよ!」

ええ~~~!

気長に待つんじゃないのぉ!

「花陽ちゃんがセンターの新曲で校内ライブをするんだよ!」

えええ~~~!!!

私がセンター?!

どどど、どういうこと?

ダレカタスケテェ~~~。

みんなが練習から帰ってくるなり、穂乃果ちゃんは早速ライブの話をしたの。

みんなもノリノリで遂には雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんのデビューライブにまで、話が発展しちゃった。

何て言うか、さすがの行動力です。

私の汚名返上の機会まで考えてくれてるなんて、穂乃果ちゃんは流石です!

ライブまであと少しという所で、私は今までにない緊張感に襲われていました。

にこちゃんが仮にと断って言ったことが、まさか本当に実現するなんて。

私は今まで、目立つことを極力避けてきました。

私なんかがっていう理由が一番です。

みんなと比べて、派手さが無い、ダンスも上手くない、唯一声が綺麗と言われるけど、みんなで歌ってる分には、さほどのアドバンテージもない。

今からでも凛ちゃんにセンターを代わってもらおう。

そんな事ばかり考えていました。

「去年、凛がウェディングドレスの衣装を嫌がったとき、かよちんはどうしたんだっけ~?」

ぅ…。

「あ、あの時は、本当に凛ちゃんが着たら可愛いって思ったから…。」

「じゃあ、今回もそうだよ。凛はかよちんがセンターで踊った方が良いって思ってるから。」

「で、でもぉ。」

「凛が女の子らしい事に引け目を感じていたように、かよちんも目立つ事を引け目に感じてる。だから、今回はみんなでかよちんを引き立てようって思ってるよ。」

「凛ちゃん・・・。」

「かよちんのすっごく可愛い所をみんなに見てもらうにゃ!そうしたら、新入部員も集まるにゃ~!」

凛ちゃんに、みんなに応援してもらってるって事はすごく良く分かるよ。

でも、私は自分に自信なんて持てないよ。

私の中で何の結論も出ないまま、とうとう本番が来てしまいました。

頭の中でいくらシュミレートしても、ちゃんとできてる自分が想像できない。

どうしよう、このままステージに立ったら、私とんでもない失敗をしちゃうかもしれない。

ことりちゃんが心配そうに聞いてくるけど、ダイジョウブとしか返せない。

全然大丈夫じゃないのに。

もう、口から心臓が飛び出てきそうなほど、緊張でドキドキするしかなかった。

どうしよう。

どうしよう。

どうしよう。

そんな私を救ってくれたのは穂乃果ちゃんでした。

「今日の歌は、みんなの夢を、みんなの望みを応援する歌だよ。今日のステージは、みんなの勇気、みんなの背中をちょっとだけ押してあげたいステージなんだよ。」

穂乃果ちゃんの言うみんなには、きっと私も含まれている。

何故か、そんな気がしました。

「私達のやる事は全然変わらない。この想いを全力でみんなへ届ける。それが私達スクールアイドルだから。」

私は大きな間違いをしていました。

みんなに良く思われたい。

みんなに出来る所を見せたい。

そんな事ばかり考えてたような気がします。

にこちゃん、私にも安いプライドがあったみたいです。

でも、そんなの見てるお客さんには関係ないんだ。

私はスクールアイドルだから、立ってる場所が真ん中か端っこかなんてどうでもよかったんです。

(花陽が立つステージは一体誰を向いているのか、どんな想いをぶつけたいのか、それがアイドルの価値になるのよ。)

本当に、にこちゃんの言った通り。

すると、今までの緊張がウソのようにすぅっと身体が軽くなるのを感じました。

今ならちゃんと歌える。

想いを伝えられる。

私の想いを、歌に乗せて。

みんな、がんばれ!

「みなさん、今日は私達のライブに来てくださってありがとうございます。この歌は、今を悩んでいる人、あと一歩が踏み出せない全ての人へ送る応援の歌です。」

「聞いてください。oh love & piece。」

凛ちゃんと真姫ちゃんとのいつもの帰り道も、今日は胸がいっぱいです。

「今日の花陽はいつもより、一段と可愛かったわよ。」

不意に真姫ちゃんに褒められる。

えへへ、そうかなぁ。

「だから凛は言ってるにゃ。かよちんは可愛いって!」

「凛はいつでもどこでも、花陽が可愛いんでしょ。」

2人の言い合いも、どこか照れ隠しみたいに見えて微笑ましくなってくる。

「ありがとうね。私の事を信頼してくれて。」

別に今まで信頼されてなかったって事じゃないけど、ライブ前の私はどうみてもダメだったから。

「凛は、いつでもかよちんの味方だにゃ!」

「別に、私は花陽ならちゃんとできるって思ってたわよ。」

うふふ。

2人とも本当にありがとう。

「でもまさか、穂乃果ちゃんに諭されるなんて意外だったにゃ。」

「ま、それは少し同感ね。」

凛ちゃんも真姫ちゃんも凄い言い様だなぁ。

ただ、2人には悪いけど、やっぱり穂乃果ちゃんはみんなのリーダーなんだなぁって思いました。

「そんな事ないよ。穂乃果ちゃんは凄くみんなの事を見てるよ。」

歓迎会の時から、穂乃果ちゃんには支えられっぱなしだよ。

偉そうに言っちゃえば、新学期に入ってから、穂乃果ちゃんは何だか頼もしくなったような気がします。

3年生になると、やっぱり何か違う意識の違いが出てくるのかな?

このとき、私は穂乃果ちゃんの頼もしさが心の裏返しだった事に、まだ気づいていませんでした。

【 亜里沙side 】

私の大好きなお姉ちゃん。

私の尊敬する海未さん。

今私は、かつてお姉ちゃんのいた場所、そして海未さんのいる場所に立とうとしてます。

音ノ木坂学院の入学式。

理事長や穂乃果さんのスピーチを聞きながら、私は逸る気持ちを抑えることでいっぱいでした。

「亜里沙、もうちょっと落ち着いた方がいよ。」

そんな私を心配したのか、雪穂が声をかけてくれます。

彼女は、私の中学時代からの親友です。

小学校まではロシアで過ごしていた私に、学校の事、日本の事、スクールアイドルの事色んなことを教えてくれた恩人なのです。

「大丈夫!理事長と生徒会長のお話は長いのが定番なんだよね!」

入学式が終わり、教室でホームルームも終わると、私は居ても立っても居られずに雪穂の所へ一直線に向かいます。

「雪穂!ついに時が来たよ!アイドル研究部に行こう!」

せかす私とは対照的に、雪穂は落ち着いて私を制します。

「そのまえに、これ。入部届を書かないとでしょ?」

ハラッセォ!

さすが雪穂、抜かりはないね。

部活名:アイドル研究部

氏名:綾瀬亜里沙

これを持っていったら、正式に私はアイドル研究部の一員になれるんだよね!

ついに、憧れのμ's、もといアイドル研究部の部室の前に来ています。

「どうしよう雪穂!」

自分でももう、訳の分からない事を言ってるような気がします。

「とりあえず、ノックすれば良いんじゃないかな。」

雪穂、冷静すぎだよ!

軽くツッコミを心の中で入れてみたりしてる内に、体は自然とノックをしてました。

どうぞ、と声が聞こえてきたので、恐る恐るドアを開けると、そこには夢にまで見た光景が広がっていました。

「雪穂ちゃん!亜里沙ちゃん!来てくれたんだにゃ!」

そう言って出迎えてくれたのは、凛さん。

みんなの笑顔が、待ってました!って言ってるように見えたのは自意識過剰かな。

私が感極まってるうちに、雪穂が穂乃果さんの所に入部届を差し出す。

あ、待って、私も!

「アイドル研究部に入りたいです!よろしくお願いします!」

私達は、穂乃果さんに入部届を出したんだけど、それを受け取った穂乃果さんは花陽さんに用紙を渡す。

え?

部長は穂乃果さんじゃないの?

どうやら、部長は花陽さんだったみたい。

「はい。確かに入部届は預かりました。これからよろしくお願いしますね。」

入部届を受け取った花陽ちゃんが、ニッコリと笑顔を向けてくれます。

「二人とも、こっちへ来て座ったらいいわ。」

真姫さんが、自分の隣を指している。

ここが私達の席になるんですね!

私と雪穂が椅子に座ると、ことりさんがちょうど新入生歓迎会の話し合いをしていた所と教えてくれました。

いきなり重大な会議の場に入ってしまった私達。

穂乃果さんがライブに一緒に出ようって言ってくれたら、雪穂が頭をブンブン振りながら断る。

そうだよね、まだ何にもしていない私達が出ても、足手まといになるばっかりだよね。

すると、海未さんが綺麗な笑みを浮かべながら、私達にも出来るでしょう?と言ってきた。

あぁそんなぁ、早速憧れの海未さんと一緒のステージに立てる!

そう思うと、私はもう天にも昇る思いでした。

結局は、まだ早いだろうって事で、ライブの参加は見送られてしまって、ちょっと残念です。

その代わり、ことりさんの今まで作った衣装をアピールしたいからと言う事で、モデルをすることになりました!

ハラッセォ!

μ'sみなさんが来ていた衣装を着られるなんて、亜里沙は幸せです・・・。

そのあと、私達の歓迎会と言う事で、近くのファミレスで乾杯です。

あぁ、これからこんなに素敵な学院生活を送れるなんて…、私は神様に感謝しました。

みなさんと楽しくおしゃべりをして家に帰ると、お姉ちゃんが先に帰ってきているみたいです。

「おかえり、亜里沙。音ノ木坂学院はどうだった?」

お姉ちゃんが嬉しそうに、今日の事を聞いてきます。

早速入部届を持って行ったこと。

ことりさんのファッションショーのモデルになったこと。

帰りに、みんなに歓迎会をしてもらったこと。

お姉ちゃんは、自分の事の様に嬉しそうに聞いていました。

「亜里沙のデビューは何時かしらね?できれば生で見たいわ。」

すごく、お姉ちゃんの鼻息が荒いような気がします。

でも、私もみんなと一緒にステージに立てる日を楽しみにしてるんです。

新入生歓迎ライブは大盛況です。

やっぱりμ'sの人気は普通じゃないと再認識させられました。

講堂には新一年生だけじゃなく、ほぼ全ての生徒が来てるんじゃ?ってくらい人がいます。

人数は少なくなっても、その魅力は色あせるものじゃありません!

「はらっせぉ~、海未さん・・・、制服姿も、とっても素敵ですぅ・・・。」

「・・・亜里沙。いつも見てる海未さんじゃないの?」

もう、雪穂には情緒がないの?!

ライブが終わると同時に、私と雪穂はことりさんに連れられて、急いで衣装のセッティング。

私の着ているのは、μ'sが9人で初めてライブをした、僕らのLIVE 君とのLIFEの衣装。

雪穂は去年の学園祭ライブで使用した、No brand girlsの衣装。

そして、ことりさんは地区予選で着た、ユメノトビラの衣装。

今までの衣装を3人で回転させるので、結構大忙しでしたけど、すごく楽しかったです。

ステージの前でボーズを決めたときは、まるで私が本当にライブをしているかのような錯覚を覚えるくらいでした。

ハラッセォ!

衣装ショーが終わり、部室に戻ると一足先に戻っていた花陽さんが、まるで受験に失敗してしまった学生みたいに悶絶していました…。

「花陽さんは一体どうしたんでしょう?」

小声でことりさんに聞いてみると、今はそっとしておいてあげてと言われ、私と雪穂は別室へ連れていかれました。

するとことりさんが、ものすごい笑顔でこちらを見ています。

「雪穂ちゃん、亜里沙ちゃん、今日はすっごく可愛かったよぉ!それでね、2人の衣装姿を写真に撮りたいの。だから、もう一回衣装来てくれたら、ことり嬉しいな~。」

笑顔なのに、ものすごい圧力で私と雪穂は、ただ言いう通りにするしかありませんでした…。

「やぁぁん。2人とも可愛い~~~。」

かよちん…

私達の普段の練習はまず一つが体幹トレーニングです。

お姉ちゃんが教えたって言ってたから、私にはなじみ深いトレーニングなんです。

お姉ちゃんが昔バレエをやっていた頃、よく練習を一緒に真似したりしてましたから。

もう一つが体力トレーニングです。

今日は神田明神の階段を使ってのダッシュや長距離走をしています。

みなさんとの差をすごく感じるけど、頑張って追いつかなきゃ一緒のステージには立てません。

一通りの練習メニューが終わって、今は休憩中です。

「おつかれさん。今日も精が出るねぇ。」

不意の後ろからの声に振り向くと、そこには巫女姿の希さん?!

「ひさしぶりやねぇ。元気にしてた?」

みんなでワイワイと希さんを囲みます。

「希、まだここでアルバイトをしていたのですか?」

「何て言うのかな、こうやって境内の掃除とかするのがウチのルーティーンみたいになってるんよ。」

海未さんの問いに答える希さんの表情は、複雑そうな笑顔でした。

「それに、ウチって寂しがりやん?ここにいたら何時でもみんなと会えるかなって。」

「希ちゃんが素直にゃー!」

「うん、だから凛ちゃんワシワシさせて?」

そういいながら、希さんが手をワシワシさせて凛さんに迫る。

「にゃー!海未ちゃん助けて~!」

「ちょっ、凛!こっちに来ないでください!」

ハラッセォ~、これがリリホワの絆なんですね!

「ど、どうして休憩中にこんなに疲れないといけないのですか…。」

「にゃ、にゃぁ・・・。」

ボロボロになった海未さんと凛さんを尻目に、ワシワシを堪能した希さんは、ツヤツヤで満足気です。

「ところで、今日は穂乃果ちゃんと花陽ちゃんはお休み?」

「うん、2人とも新入部員が来ると悪いからって、部室で待機中なんだよ。」

ことりさんが、ついでに新入生歓迎会の時の話もしました。

「それで、花陽ちゃん、例のアイドル談義口調がさらに力強くなっちゃった感じで・・・。」

「あ~それって、1年生に怖がられるパターンやん?」

「そ。噂ではアイドル研究部の鬼部長とまで言われてるらしいわよ。」

希さんの察しの良さに、真姫さんがため息交じりで話します。

「まあ、雪穂と亜里沙がいるんだから、そこまで悲観しなくてもいいんだけど。」

真紀さんの話を聞いて、希さんは少し考え込んでいるみたいです。

「花陽ちゃんは真面目っ子やからね~。うーん、現状を打破する方法が無い、訳じゃあ無いんよね。でも。」

「何かあるなら教えて!このままじゃ、かよちんが可哀そうだよ。」

希さんの歯切れの悪るさに凛さんが身を乗り出します。

「やっぱり、みんなで考えたら良いんやないかな?ウチの考えが最善とも限らないし、案外今頃穂乃果ちゃんが良い事思い付いてるかもしれないやん?」

希さんはみんなを諭すように続けます。

「ウチもOBだから、相談ならいつでも聞くけど、最初はやっぱりみんなが考えんとね。そういうのも青春なんじゃない?」

希さんが凄く大人に見えました。

みんなできちんと話し合う。

どこか花陽さんに遠慮して、あまり触れないようにしていた気がします。

希さんに言われた通りにしてみようという事になり、私達は部室に戻ってきました。

海未さんが意を決してドアを開けます。

するとそこには、ウキウキした顔の穂乃果さんと、魂が半分くらい口から出かかってる花陽さんがいました。

「海未ちゃん、みんなぁ!ライブだよ、ライブしようよ!花陽ちゃんがセンターで!」

みんなが、『え~~~!』と声を揃えました。

それもそのはずです。

今さっき、希さんが言ってた通りの出来事が目の前で繰り広げられていたんです。

これがスピリチュアルパワーなんですね、ハラッセォ!

はあっ、はあっ!

いつもの練習より、速く走れてるかも…

早く、早くお姉ちゃんの所に行かないと。

家の前に着くと、明かりが見える。

お姉ちゃん帰ってきてる!

私は急いで家に入ると、真っ直ぐキッチンへ向かった。

「あら、おかえり亜里沙。どうしたの、そんなに慌てて。」

事情を知らないお姉ちゃんが、のん気に迎えてくれる。

「大変だよ!花陽さんが私でライブなのっ!」

「何ですって!花陽がセンターで亜里沙もライブに出るの?!ハラショー!」

あ…通じてる。

焦って意味不明な事を言ったのに、さすがお姉ちゃんです。

「それにしても、よく花陽がセンターを了承したわね。」

「えっとね、今1年生の中で、ちょっと花陽さんのイメージが悪くって。」

「花陽のイメージが悪い?あぁ、例の新入生歓迎会の時のスピーチね?」

「そうなの。それで花陽さんの良い所見せるにはライブだよって穂乃果さんが。」

「首謀者は穂乃果だったのね。ふふ、それでいつやるの?」

「来月の半ば、まだ細かい日程は決めてないの。」

「入部して1か月半くらいか…まあ妥当なところよね。」

そういえば、μ'sが9人で初ライブしたのも今の時期だっけ?

お姉ちゃんが、とても嬉しそうにしている。

「これは是非とも見に行かないとね。希とにこにも教えてあげましょっと。」

そういうとお姉ちゃんは、携帯を探してバタバタとキッチンを出ていきます。

あんなに楽しみにしてもらえるなんて、私も頑張らないと!

ライブが決定して2週間ほどで、曲は完成しました。

この制作能力の高さも、μ'sの凄い所だったんだと改めて気付かされます。

次はその曲に合わせて、凛さんを中心に振り付けとフォーメーションの組み立て。

そして、あとはみんなで合わせながら意見を出し合って、完成度を高めていきます。

「ところどころにポーズの入る箇所がありますが、そこは各自で検討してください。」

海未さんが言うには、今までも決めポーズはフリーでそれぞれが考えていたそうです。

後でバランスは考慮しますけどねとも言ってたけど、自分で考えるかぁ…。

「つまり、ラブアローシュートみたいなのを作らなきゃいけないんですね?」

私が言った瞬間、海未さんがピクッとすると、体が震えてものすごいオーラが出ています?!

「亜里沙ちゃん、それは禁句だにゃ・・・。」

そう言いながら後ずさる凛さん。

何の事だか良く分からない私を尻目に、他のメンバーも音を立てずにその場を去ろうとしています。

「亜里沙。その話、一体誰から聞いたのです?」

静かなのに、ものすごい剣幕の海未さん。

えーっと、うーんと、いつ誰に聞いたんだっけ?

「μ'sのライブ映像を見てて、海未さんが可愛いポージングしてるって言ったら誰かが教えてくれたんです!」

「え?か、可愛いだなんて、そんな…。」

ワナワナしてた海未さんが、急にモジモジしだします。

「私、がんばって海未さんみたいな可愛いポーズ考えてきます!」

「そ、そうですか。楽しみにしていますね。」

やった。海未さんに認めてもらえるように頑張って考えようっと!

「あの怒りモードの海未を丸め込むなんて、恐るべき天賦の才ね。」

「真姫ちゃん、なんか恥ずかしいこと言ってないかにゃ?」

「うるさいわね!」

ライブ当日の朝、力の付くようにと、早くからお姉ちゃんが頑張って朝ごはんとお弁当を作ってくれました。

「いい、亜里沙。自分がスクールアイドルだってことを忘れちゃだめよ。」

「うん!みんなで叶える物語だもんね!」

「そうね。必ず見に行くから、頑張るのよ。」

平日だと言うのに、お姉ちゃんは希さんとにこさんと一緒に見に行くと張り切っています。

恥ずかしくないライブにしなきゃいけません。

ライブと言っても、放課後までは当然、授業を受けるんだけど、雪穂の様子が何だか変です。

「雪穂、緊張してる?」

「え?!緊張するよー、亜里沙は緊張しないの?」

「うーん、楽しみ、かな?」

「亜里沙の性格が羨ましいよ…。」

結局、一日雪穂は緊張してソワソワしっぱなしでした。

でも、それ以上に大変なことが起きていたんです。

放課後になり部室へ行くと、顔面蒼白っていうのはこういう事を言うのね!って言いたくなるほど顔が真っ青な花陽さんがいました。

みんな思い思いに花陽さんを励ますのですが、中々立ち直ってはくれません。

着替えも終わって、ステージ脇に来ても、花陽さんと雪穂は相変わらずの様子です。

もうお手上げ状態みたいな感じだったんですけど、穂乃果さんの一言で、花陽さんは見事に復活しました。

これがみんなを引っ張るリーダーの力なんですね!

でも、花陽さんを見る穂乃果さんの雰囲気に違和感を感じたんだけど、何なのかな?

見事に復活した花陽さんのリードもあって、ライブは大成功でした!

あれだけ緊張してた雪穂も、本番には人が変わったみたいにちゃんとしてたんです。

私も、海未さんとの初ステージが楽しくて楽しくて、夢のような時間でした。

私はとうとう、あのμ'sのみなさんと同じステージに立つことができたんです!

こんなに素敵な事があって良いんでしょうか!

これからも、みんなで一緒に、あのステージに立ちたい。

これからも、ずっと一緒に・・・。

【 にこside 】

音ノ木坂を卒業して、私は進学しなかった。

学力が絶対的に足りないと言うのもあったが、私には夢がある。

本物のアイドルになるという、矢澤にこのアイデンティティ。

でも今はまだ、自分の事より心配な事があるわ。

音ノ木坂で私の意志を継ぐ後輩たち。

先輩後輩禁止のμ'sの中で、あまりそういう雰囲気は出せなかったけど、今は違う。

先輩として、あの子たちの支え、道しるべになりたい。

頭のいい真姫と海未とことりはそこまで心配はしていない。

気になるのは、花陽と穂乃果。

花陽は目立つ事が苦手で気が弱い。

知識、情熱、人間性、どれも部長にふさわしいのだけど、元々の性格をどう乗り越えていけるか。

これはあの子の成長を信じるしかないのよね。

穂乃果はバカで猪突猛進のくせに、全てを自分がしょい込みドツボにはまる癖がある。

あの子の思い付きと言うか、フリーダムな発想はある意味天才と言える。

でもそれ以上に、悩みなど無さそうに見える表面に隠れた自虐性。

彼女の闇と言える部分が表面化する前に、果たしてみんなが気付いて支えてくれるかどうか。

花陽からは、ちょくちょく連絡が来る。

私の事を先輩として見てくれる所はホント可愛いわ。

今日は直接会って、部長になったことへの不安を言っている。

この子に足りないのは自信と強気なのよね。

まあ、そういうのも経験で追々ついてくるでしょう、たぶん。

とりあえず心構えだけは伝えておいたけど、ホント大丈夫かしら。

帰りにちょっと寄り道

神田神宮に行けば、アイツがいるから。

「おや?にこっち、今日も人生相談を受けたん?」

希は今日も境内を掃除していた。

「まあね。ってあんたも案外待ってんでしょ。」

にこっちには敵わんなぁなどと、軽口をいう希。

柔らかい笑顔に隠した、全てを見透かす目。

どっちがよ、と突っ込みたくなるけど、話が長くなるから置いておく。

「花陽がねぇ…、もうちょっと自信を持ってくれないのかしら。」

別に相談や愚痴が嫌な訳じゃないけれど、こちとら心配で仕方がないのよ。

「しょうがないよ。花陽ちゃんのそんな所も魅力の内やん?」

まったく、そんなんじゃこの先思いやられすぎるわ。

「にこっちは心配症やなぁ。子供っていうのは知らないうちに勝手に成長するもんなんよ。」

アンタ誰の親よ。

あとは何でもない世間話をする。

希はあんな感じだけど、人付き合いは苦手な方。

ま、私も人のこと言えた義理じゃないけどね。

お互い気兼ねなしに会える数少ない親友ってとこね。

今日は久しぶりに花陽から連絡が来たわ。

確か今日は新入生歓迎会。

案の定、やらかしたそうよ。

まあ、あまりにも想像できる内容だったけど、ここで突き放すのも良くないわね。

かといって、気休めを言うつもりもないから、一言、何事も経験よ、とだけ返しておいた。

察しの良いあの子なら、これでも十分伝わるはず。

私も卒業してやがて一月。

アイドル活動は全然上手くいってない。

μ'sのと言えば、誰もが分かってくれる知名度だけれど、アチラさんの欲しいのはμ'sであって、矢澤にこ個人ではない。

今の所、大手しか回ってないからかもしれないけど、あまり選り好みもできないわね。

いつまでも、こんなかっこ悪い所、後輩たちに見せられないから。

久しぶりに、絵里からメール。

後で花陽からも同じ内容のメールが来るんだけど、ライブをする事になったらしいわね。

これは前部長としては行かない訳にはいかないわ。

絵里はあれで結構シスコンよね。

メールの文面から尋常じゃない位の嬉しさが伝わってくる。

花陽は、メールが堅っ苦しい文言で溢れてるわ。

これはちょっと危ないわね。

気負いすぎて上手くいかないパターンよ。

とは言っても、何事も経験なんて言った手前、安易に手は貸せない。

部長として成長するには避けて通れない道。

みんなと一緒に頑張りなさい、花陽。

ふぅ・・・、あっという間にライブ当日よ。

卒業してから日にちの進みが速い気がしてならない。

集中してるからではなく、惰性で過ごしてるからなのは分かってる。

ま、今はそれを悩んでも仕方ないわ。

絵里と希とは校門前で待ち合わせしている。

「さすがにこね。」

何がさすがなのかよく分かんないけど、絵里はよくそう言うわね。

「にこっちはいつでも現役やもんね。」

希がいつものからかい半分な目で言ってくる。

元々ライブの時は、気持ちが逸って時間より早く来てしまうのよね。

性分なんだから仕方ないのよ。

私が出る訳じゃないけど。

「完全に卒業してから、まだ1カ月半しかたってないのに、ずいぶん久しぶりな気がするわ。」

3人で少し前まで通っていた音ノ木坂学院を眺めながら、絵里がしみじみと言う。

卒業してまだ1カ月半なのに、ずいぶんと距離が遠くなった気がする。

「ウチらも色々変わってるって言う事なのかな。」

希の気持ちも少しは分かる気がする。

「ま、どうしたってそうなるわよ。」

今の自分が充実していないから、余計にそう感じるのかもしれないわね。

「さ、そろそろ時間も迫ってるから行きましょ。」

絵里に言われて動き出す私達。

講堂は思ったよりずっと埋まっていた。

中々の盛況ぶりに、OBとして鼻が高くなる。

隣にいる人が、私達に気付き声を上げようとすると、そっと絵里が人差し指を口の前に立ててウィンクする。

絵里のこういう所、すごく羨ましいわ。

すると幕が上がり、ステージに現れた花陽が挨拶をする。

「花陽ちゃん、乗り越えたみたいやね。」

希の言う通り、花陽の表情は今までμ'sで歌ってきた以上の凛々しさが伝わってきた。

「みなさん、今日は私達のライブに来てくださってありがとうございます。この歌は、今を悩んでいる人、あと一歩が踏み出せない全ての人へ送る応援の歌です。」

花陽、よく頑張ったわね。

「聞いてください。oh love & piece。」

「始まったわ!キャー亜里沙ーーー!」

絵里はもう、恥も外聞もないほどのシスコンっぷりね。

さっきまでのKKEはどこへやら、ここにいるのは只の妹バカだった。

私達のいないアイドル研究部のステージを外側から眺めるのは、すごく奇妙な感覚だった。

今すぐにでもあの場に立ちたい。

希を見ると、たぶん同じことを考えてたんだと思う。

もう、あそこは私達の居場所じゃないんだっていう喪失感。

後輩たちが立派にステージに立っている事を誇らしく思う気持ち。

色んな気持ちがごっちゃ混ぜになっている。

そんな顔してるわよ。

きっと私も。

ひとしきり感慨に浸ると、徐々に粗が見えてくるのは性格なのかしら。

雪穂と亜里沙の動作が拙いのはある意味仕方がない。

私達だってそうだったんだから。

それよりも気になったこと。


穂乃果が、輝いていない・・・。

ライブが終わって、部室に行こうかって話もしたけど、きっと今頃達成感で一杯だろうから水を差すのは止めておきましょう、と言う事になった。

帰りに私達は近くのファミレスで今日のライブについて話していた。

「エリチは実際、亜里沙ちゃんが真面目に歌って踊る所は初めて見たん?」

「ええそうよ。あぁ亜里沙は最高だったわ。誰か映像で残してないかしら。」

「ヒデコちゃん辺りが残してるんやない?誰かさんが以前やったみたいにね。」

「ちょっ希、それは言わないで・・・。」

この二人は相変わらず軽快ね。

このまま喋らせていても良いんだけど、長そうだし、私はさっそく本題をついてみた。

「ところで、今日のライブ、どうだった?」

私の表情に気が付いたのか、2人とも神妙に考えている。

「亜里沙と雪穂ちゃんに関しては、仕方がないと言える範囲内ではあるわね。」

絵里も私と同じ意見ね。

むしろ、やり始めの私達に比べたら、ずっと良かったかもしれないくらい。

「花陽ちゃんも聞いてたよりもずっと大丈夫っぽかったやん?」

何があったかは分からないけど、本番のステージに立った花陽は、希の言う通り不安を感じさせる事はなかったわね。

「あと一つ、気になったことがあるんだけど。」

私がそういうと、2人とも何となく分かってるような表情になる。

「穂乃果、よね?」

絵里が言うと、希も隣で頷く。

「今まで、私達が見てきた穂乃果はあんな程度じゃなかったわ。」

この私が、絶対に敵わないと思った。

その穂乃果が見る影もないと言ったら、どれだけの人が同調してくれるだろう。

「そうね。一応、笑顔で元気に歌って踊ってるから、傍目にはそこまで酷く無い。」

「ウチらだから分かるって事?」

「恐らくね。にこが言うのは一番近くで穂乃果を見てきた私達だから出てくる感想。」

そして、3人の見解が大体一致している。

穂乃果は何かを抱えている。

ただ、もう一緒にいない私達にはそれ以上の答えが出るはずもなかったわ。

「この事、花陽ちゃんに言う?」

希は優しくて世話焼きだからきっと教えてあげたいんだろう。

「いいえ、言わないわ。多分だけど、今日に関してはみんなそれほど穂乃果に注視出来てないはずよ。他に気にすることがあったから。」

「それなら、余計に教えてあげた方が良いんやない?」

「ちゃんと自分たちのステージを反省するなら、その内に気付くはずよ。」

にこは厳しいわね、と絵里に言われたけど、私は出来る限りあの子たち自身で頑張ってほしい。

そう願っていた。

でももし、この状態がいつまでも続くようなら、今年のラブライブは判らないかもしれない。

それくらい穂乃果の変調は全体への影響が大きい。

早く気付いて欲しい。

そう思わずにはいられなかった。

今晩も、花陽からメールが来た。

まだ興奮が覚めやらないと言った感じね。

私は今日の出来を褒めたうえで、自分たちのライブを見返すことを伝えた。

これで、花陽が気付いてくれたら良いんだけど…。

早く気付いて、ちゃんと、みんなで解決するのよ…。

>>67
ほのかわいい

【 真姫side 】

ライブの翌日、放課後部室に集まった私達に花陽がある提案をする。

「今日は、昨日のライブの反省会にしよう。」

鉄は熱いうちに打てって言うけど、ライブの反省会なんて珍しいわね。

色んな『つて』で、私達の活動は逐一動画で上げられていた。

結局はそれを見る事で、お互いの出来を言い合う事もあったけど、正式に反省会ってあんまりしたことが無い。

最初だから、雪穂と亜里沙を客観的に見たいのだろう。

最初に動画を見たときは、なんて言うか、物凄い違和感しかなかった。

にこちゃん達のいない私達。

そこをまず飲み込む事が要求されたわ。

割り切ったつもりなのに、案外、私も心にしこりを残しているのね。

雪穂と亜里沙でさえ、最初の視聴は戸惑いの色を隠せなかった。

「もう一回見よっか?」

そう言う花陽に異を唱えるものはいなかった。

2回目の視聴。

やはり気になるのは雪穂と亜里沙。

まあ、でもそれは仕方のない事よね。

「亜里沙はここの所が少し遅かったり速かったりしていますね。」

「はいっ!気を付けます!」

「雪穂は全体的にソツが無いですね。あとは止める所で体が流れないようにしましょう。」

「は、はい!」

海未が中心になってダンスにチェックを入れてる。

でも、2回、3回と見返す内に、何かが気になってくる。

何なのかしら?

みんなもそう思ってる感じよね。

花陽も難しい顔をして動画を見ている。

4回ほど見終えた所で、凛が変なタイミングで話し出す。

「やっぱりかよちんは可~愛いにゃ!」

「ええ?!」

突然の振りにもちゃんと顔を赤らめる花陽。

「何それ。いつも言ってる事じゃない。」

「だから、やっぱりって言ってるにゃ!」

「ハイハイ、ハナヨハカワイイワヨネ!」

「心がこもってないにゃ!やり直し!」

「イミワカンナイ!」

「ツッコミは適当に入れちゃダメにゃ!」

何で凛にツッコミについてダメ出しされないといけないのかしら。

何だかいつも、つまんない事で言い合いしてる気がするわね。

「ふふ、2人ともそのくらいにして、ちょっとお茶にしよっか。」

ことりが良いタイミングで話を変えてくれる。

手際よくお茶の用ができる辺り、ミナリンスキーの名も伊達ではないと思う。

「わー!ことりちゃんのマカロンだあ!」

視聴の間、ものすごく静かにしていた穂乃果が目を輝かせて飛びつく。

「穂乃果、あまり食べすぎると、後に響きますよ。」

「だいじょーぶ、だいじょーぶ。」

海未の小言も意に介さない。

「また、あの衣装を着てみますか?」

「うぐっ!ごほっごほっ!」

急にむせ返る穂乃果。

衣装って何のことかしら?

その後、気の抜けてしまった私達はダラダラと雑談を続けていた。

騒々しい部室の中で、花陽だけが難しい顔をしている。

「花陽?どうかしたの?花陽?」

「ぴゃ!あ、ごめん。なんだっけ?」

「何でもないけど、考え事?」

「あ、ううん。何でもないよ。ちょっとボーっとしてただけ。」

花陽はウソがつけないタイプ。

何かあることはすぐに分かるのだけど、まだ言う段階ではないのだろう。

「昨日の今日でまだ疲れてるなら、ちゃんと休みなさいよ。」

「真姫ちゃんありがとう。・・・それじゃあ、みんな、今日は時間も経っちゃったし、お終いにしましょ。」

それじゃあと、海未とことりはお茶の後片付けに行く。

「凛ちゃん真姫ちゃん、今日はちょっと先に帰ってて。」

帰り支度をする私達に、花陽が申し訳なさそうに言ってくる。

「かよちん、仕事なら手伝うよ?」

「ううん。大したことない事だから、すぐ終わるし。」

さっきの事と関係があるのだろうか。

まあ、ここは花陽の言う通りにしといてあげましょう。

「分かったわ。凛、先に行きましょ。」

海未とことりが戻ってきた所で、私達は先に出る。

それにしても、あのライブ映像を見てからよね。

うーん、やっぱり気になる。

途中まで歩いてきた所で、思い出した風を装う。

「あ、凛ごめん。忘れ物しちゃったわ。先帰ってて。」

「えー凛1人なのぉ。」

「もうすぐ家でしょ、子供じゃないんだから。」

「うーん、じゃあ、また明日ね。バイバイーイ。」

踵を返した私は急いで学校に戻る。

部室にはまだ電気がついていた。

もう全員帰ったようで、人の話し声は聞こえない。

意を決してドアを開けると、花陽がさっきの難しい顔をしながら、ライブ映像を見ていた。

「あ、真姫ちゃん。どうしたの?忘れ物?」

あからさまに表情を隠そうとしている。

「一人で悩んでると、出口が見えにくくなるもんよ。」

「そうにゃ、そうにゃ!」

え?

私の背後にはさっき別れたはずの凛がいた。

「凛、あなた・・・。」

「かよちんも、真紀ちゃんもウソが下手だにゃ。凛を騙すのは100億光年早いにゃ!」

「光年は距離よ!まあいいわ。話を戻すけど、花陽そのライブ映像に何があるの?」

「えへへ、ごめんね心配させて。私の中でまだ上手くまとまらなくって、話を大事にしたくなかったから。」

「かよちん水くさいにゃ。3人寄ればかしましいにゃ。」

「それを言うなら、文殊の知恵でしょ。」

凛にかまうと中々話が進まない。

でも、分かっていてもスルー出来ないのよね。

「じゃあ、折角だからみんなも一緒に見て。今度は雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんの事は抜きで。」

花陽が珍しく回りくどい。

でも、そういえば確かに、さっき見たときに何か違和感を感じた。

それが答えだと言うのだろうか。

从廿_廿从 ヴェエ

雪穂と亜里沙でないのなら、一体誰に問題があったのだろう?

私と凛は、花陽の言うがままにライブ映像を見返していた。

「あっ!凛分かったにゃ!」

突然凛が声を上げる。

むっ、この真姫ちゃんがまだ気付いてないというのに生意気ね!

「真姫ちゃん、もう一回見る?」

花陽の気遣いが少しだけ私を追い込む。

「一応、念のためにもう一回見せて。」

何となく違和感があるのは分かってるのに。

もう、その正体は何なのよ。

最後の視聴を終えると、花陽が私達を見据えながら切り出す。

「私が思ってるのはね、穂乃果ちゃんなの。」

「うん。凛もそう思う。」

穂乃果?

何が悪かったのか記憶を辿ってみるけど、特に問題があったようには思えない。

「実は昨日ね、にこちゃんにライブを見返すように言われたの。」

にこちゃんが?

と言う事は、リアルタイムで見ていたにこちゃん達が、今回のライブの異変に気付いたと言うこと?

私が思考を巡らせている間に、凛が続く。

「凛の感覚だと、穂乃果ちゃんの全力はこんな感じじゃないにゃ。」

「うん。私もそう思う。穂乃果ちゃんは、何か違う事を考えながらステージに立っている。」

感覚派の凛と、観察眼のある花陽ならではってとこね。

若干感心しながら、これからどうするのか思案する。

「で、どうするの?穂乃果に言うの?」

「にこちゃんは気付けって言ってるような気がするんだけど、それ以上どうしたらいいか判らないの。」

花陽は間接的に、にこちゃんから注意をさせられた。

と言う事は、きっと私達で解決してほしいと思っている。

ならば、この問題をどうするか。

「疑念を隠していても、何も解決しないわ。まずは海未とことりに言って、しばらく観察してもらうのはどうかしら?」

私の提案に、2人は快諾してくれた。

まずは原因の特定。

それからでなければ処置できない。

海未とことりは、ライブの事に気が付いていた。

やっぱり幼馴染なのね。

でも、何が原因か、については二人にも判らないと言う事だった。

その後も、機会を見つけては、みんなで話し合う。

雪穂にも協力を仰いだが、穂乃果が何に悩んでいるかは分からずじまい。

ここまでくると八方塞がりね。

本人から直接聞けたら楽なんだけど…。

それから何日かした帰りに、私は神田明神へ向かっていた。

希なら、あるいは妙案を授けてくれるかもしれない。

「あら、1人なんて珍しいやん。」

いつもの飄々とした柔らかな笑顔で出迎えてくれる希。

恐らく全て分かっているだろうことを前提で話しかける。

「強情な人の口を割らせるにはどうしたらいいと思う?」

あえて穂乃果の名は口にしない。

ちゃんとみんなで悩んだつもり。

でも、答えは見つけられなかった。

すると、希は少し目を閉じて考える。

「合宿なんて、良いんやない?」

合宿?

何故合宿なのか思考を巡らせていると、希が悪戯っ子のような目で私を見る。

「誰かさんと少し踏み込んだ話できたのは合宿だったもんね。」

去年、私の別荘で合宿をした朝の記憶がよみがえる。

「・・・お節介な誰かさんのお陰だったわよね。」

「特別な環境は、少しだけ心を素直にさせてくれるんよ。」

「そうね、ありがたく参考にさせてもらうわ。」

そう、かつての私がそうだったように。

今の穂乃果にはお節介を焼いてくれる人が必要なんだ。


【 穂乃果said ラスト 】

花陽ちゃんのライブ以降、私は一層疎外感を感じていた。

みんなは隠しているみたいだけど、私を除いたみんなで何かを話し合っている。

この間のライブ、私何か失敗してたのかなぁ。

私がちゃんとしていなかったばかりに、またみんなに心配をかけている。

私はどこまでみんなに迷惑をかけたら気が済むんだろう。

何度ライブの映像を見直しても、私の何が悪かったのか判らない。

「お姉ちゃん、なんか最近疲れてない?」

雪穂が私の事を心配してくれてる?!

私そんなに酷く見えてるのかな。

妹にまで心配をかけてるなんて、情けないお姉ちゃんでごめんね、雪穂。

私も、自分の事が判らないの。

ある日、真姫ちゃんが合宿を提案した。

雪穂と亜里沙ちゃんが入部して、親交を深めるためにも合宿が必要だと。

時期はちょっと早いけど、合宿地は去年と同じ真姫ちゃんの別荘。

懐かしい思い出が甦ってくる。

荷物を置いた後さっそく練習に入ろうとするのも、海は?と聞いたら海未は私ですが?というやり取りも去年と同じ。

ただ一つ違ったのは、今年は本当に海未ちゃんの予定通りの練習があったこと。

つ、疲れたあああぁぁぁ・・・。

本当だったら、すぐにでも布団に倒れこみたい気分なのに、私と凛ちゃんが夕ご飯の買い出し係を真姫ちゃんに申し付けられる。

「料理できないんだから買い出しくらい行ってきなさいよ。」

わ、私だって料理少しくらいできるもんっ!

っていうか、真姫ちゃんも言うほど料理できないよね?!

抗議をしようとしたとき、後ろから凛ちゃんに肩をつかまれる。

「穂乃果ちゃんは、コッチだにゃ・・・。」

>>228
said?
side?

>>234
ご指摘ありがとうございます
sideですよね
恥ずかしい間違いしてしまいました

8人分の食材は結構重い。

「真姫ちゃんも来てくれたら、全然楽だったのに!」

「カップラーメンしか作れない者の定めにゃ・・・。」

え?

私って料理できないキャラだったの?

カップラーメンレベル?!

「不本意だにゃ・・・。」

「凛のマネしないで!」

凛ちゃんはノリが良くていいなぁ。

レベルが近いって感じ?

・・・良い事なのかな。

「ねぇ、穂乃果ちゃん?」

さっきまでのノリで返事をしたけど、凛ちゃんは凄い真面目な顔だった。

「私、ちゃんとみんなのリーダーできてるかな?」

「え?」

「凛は、頭が悪いから、自分でちゃんと出来てるか不安で仕方ないの。」

突然の告白にちょっと驚いちゃったよ。

凛ちゃん、そんなこと思ってたんだ。

「凛ちゃんは立派だよ!海未ちゃんだって『凛は頼もしくなりましたね。』って褒めてたんだから!」

「あはは。穂乃果ちゃん海未ちゃんのマネ上手だにゃ。」

「私も海未ちゃんと同じ意見だよ。私なんかより、ずっとリーダーしてるよ!」

「・・・、穂乃果ちゃんって結構ニブイよね。」

えー!

そうなの?

って、そういう話?

「穂乃果ちゃんは、今でもみんなのリーダーだよ。みんなが穂乃果ちゃんの事を頼りにしているの。」

「えへへ~そっかなぁ?でも、嬉しいこと言ってくれるねぇ。」

おちゃらけてみたけど、凛ちゃんの顔はずっと真面目なまま、真っ直ぐな目で私を射抜いてくる。

「穂乃果ちゃんには、前だけ向いていて欲しいよ。今の穂乃果ちゃんは、後ろを振り向いてばかりだから。」

凛ちゃんに投げられた言葉をそれ以上返すことができなかった。

ご飯もお風呂も、みんなでいるのは楽しかった。

けどずっと、凛ちゃんに言われた事が頭から離れない。

私が、後ろばかり振りむいている。

そうなのかな。

前だけ向いていればいい。

本当にそれでいいんだろうか。

枕投げをすることもなく、みんなが寝静まったリビングで私は考えていた。

いつのまにか寝たみたい。

空が薄明るくなったころ目が覚めた私は、みんなを起こさないように外に出る。

「んーーーー!気分は晴れないけど、朝は気持ちいいね!」

散歩がてら浜辺に来ると、去年の事がまるで昨日の事のように思い出される。

μ'sが9人になって、みんなで頑張ろうって誓った場所。

「そっか、あの時の私は前しか見てなかったなぁ。」

思ったことを口にしてみる。

今ここで少しでも吐き出したら気持ちが楽になるかな…。

「でも、あの時とは違う・・・。私は3年生。絵里ちゃん達みたいに何かを残したい。なのに、私には何にもないよ!」

「何にもないなんて、あるもんですか。」

不意の背後からの声に振り返る。

海未ちゃん、みんな・・・。

「あなたが引っ張っていってくれたからこそ、皆がここにいるのです。」

「穂乃果ちゃんが空港で引き留めてくれなかったら、私は独りぼっちになってたんだよ。」

「穂乃果ちゃんが励ましてくれたから、前のライブで自分を取り戻してセンターを務められたの。」

「凛のリーダーは穂乃果ちゃんしかいないんだよ。」

「穂乃果、あなたが音楽室で私を見つけてくれたのが、全てなんだからね。」

「私の大好きなμ'sの先頭には、いつも穂乃果さんがいました!。」

「お姉ちゃんが頑張ってきたの、みんなが知ってるんだよ。だから、自分を否定しないで、みんなを否定しないで。」

だって、だって穂乃果は!

「先頭に立ち、切り開く者の重圧は私達には想像もできません。でも私達にはあなたの背中を支えて、共に歩むことができるんです。」

「穂乃果ちゃんの全てを信じられる。だから穂乃果ちゃんも私達の事を信じて!」

海未ちゃんとことりちゃんが私を包み込むように抱きつく。

なにこれ。

こんなの我慢できないよ!

「うぅ…ぐすっ。不安だったよぉ!みんなに何も残せない穂乃果が、不安で不安でしかたなかったよぉ!」

「穂乃果。不安があったら後ろじゃなくて、隣を見てください。」

「必ず、穂乃果ちゃんの隣にいるから。私達がいることが穂乃果ちゃんの証だから。」

去年と同じ浜辺で、去年と同じように手を繋いで並ぶ。

私にはみんながいる。

大切な仲間たちが、私の残せる唯一の証って分かったから。

大きく息を吸い込み、海に向かって叫ぶ。

「みんなー!ありがとうー!」

私もそんなに頭良くないし、ありきたりな事しか言えないけど、本当にありがとう。

よし!

悩むのやめーーー!

「じゃあ、凛ちゃん!今年の目標は?!」

「にゃ?!えっと、えっと、ラブライブ連覇だにゃ!」

「凛、大きく出たわね。」

「でも、私達ならきっと大丈夫だよ!」

「お姉ちゃんたちに負けないアイドルグループになります!」

「わ、私も何か言う流れ?えぇと…、健康第一!?」

「ふふ、それも大事ですよ。雪穂。」

「そういえば、去年体壊したのって穂乃果ちゃんだけだったよね。」

「No!ことりちゃんっ、それは言わないで~!」

合宿帰り、私は簡単なお土産を持って神田明神に向かっていた。

「おや、今日は千客万来やね。」

「おかえり、穂乃果。久しぶりね。」

「こんにちはー希ちゃん!絵里ちゃんも久しぶりっ!」

「合宿だったんでしょ?今年は海未を怒らせたりしなかった?」

「みんな、夜遊べるほど元気じゃなかったから…。」

「海未教官に、こってり絞られたんやね。」

「もう、海未ちゃんは鬼だよ!『今年は遊ぶ時間はありません!』って!」

「うふふ。でも穂乃果、とっても良い顔してるわよ。」

「そうやね。なんか良い事でもあったん?」

えへへ~、何て言えば良いかな。

言いたいことは一杯あるんだ。

「絵里ちゃんも希ちゃんも、ついでに、にこちゃんも心配してくれてありがとう。」

みんなから聞いたんだ。

陰で何としてくれようとしてたこと。

みんないつでも私の隣にいた。

私が気付いていなかっただけ。

だから…私の答えは一つ。


「もう、ひとりじゃないよ」


以上で今作は終わりになります
オリキャラは出ませんでしたね(笑
話に絡みそうになかったのでカットです
最後まで読んでくださってありがとうございました

おつでした

絢瀬が綾瀬になってたり、入学式が卒業式になってたり誤字が気になったけど、内容はおもしろかった

http://imgur.com/qZqFC3J.png
      サイジャク
歯を食いしばれ最強

  サイキョウ
俺の最弱はちっとばっか響くぞ

まだ落とさないので、出来るだけ感想などを頂けたら幸いです

と、言ってもageなきゃ誰も奥底の訳わかんないss見に来ませんよね
落とします、ありがとうございました

諦めんなよ

とっとと[ピーーー]やガイジ

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