ピーチ「バブルって、よく見ると可愛いわよね」
きっかけはピーチ姫のこの言葉であった。
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バブル――
マリオたちが暮らすワールドに生息する、火の玉のようなモンスター。
普段は溶岩の中に潜んでおり、他の生き物が近づくと溶岩の中から飛び出して攻撃や威嚇を行う。
マリオやルイージも冒険の最中、このバブルには何度も手こずらされている。
そのせいもあり、これまではいいイメージを持たれているとは言い難かった。
ところが、先述したピーチ姫の言葉を発端にバブルが注目を浴び、まさかのバブルブームが到来する。
ほんの少しでも溶岩があれば、十分生きていけることが分かり、
愛玩用のペットとして――
あるいは暖房や料理に使う熱源として――
中にはバブルに芸を仕込むなんていう器用な者まで現れ――
これまで城や火山でしか見られなかったバブルが、町中でも見られるようになった。
「この黒い目がキュートなのよねぇ~」
「バブルのおかげで、風呂をすぐ沸かせて助かるよ」
「庭で飼ってたら、ドロボーを追い払ってくれたぜ!」
一家に一匹はバブルを――そんな時代が本当にやってきてしまった。
このブームに目を付けたのが、我らが大王。
クッパ「ほう、バブルが流行っておるだと?」
カメック「いかがいたしましょう、大王様?」
クッパ「むろん乗るに決まっておる! このビッグウェーブに!」
クッパ「今、ワガハイの城は溶岩が何割を占めている?」
カメック「三割ほどです」
クッパ「よし、七割に増やすのだ!」
クッパ「設備投資をして、バブルをたくさん養殖するのだぁっ!」
カメック「ははーっ!」
クッパは部下に命じて、コインを何百枚何千枚とはたいて、設備投資を行った。
そして大量に増やした溶岩エリアで、バブルの養殖を始めた。
元々クッパは防衛のために城内にバブルを飼っており、ノウハウがあった。
バブルの養殖は大成功した。
こうして養殖されたバブルは「クッパ印のバブル」として、安価で市場に出回った。
マリオワールドの国民たちはこの新しいバブルに群がった。
「クッパ印のバブル、買った?」
「買った買った! 普通のバブルより一回り大きいのに、安いんだよな!」
「クッパもたまにはいいことするじゃないか!」
これによりクッパは大儲け。
カメック「大王様、キノコ王国より仕入れた最高級のワインでございます」
クッパ「うむ、ご苦労」ゴクゴク
クッパ「うまい!」
クッパ「ガッハッハ、設備投資は大成功だ!」
クッパ「今のワガハイなら、マリオを金で服従させられるし、ピーチ姫だって金で買える!」
クッパ「なーんちゃってな! ガーッハッハッハッハッハッハッハ!」
クッパ城は潤い、亀たちの笑い声がいつまでも響いた。
この笑い声が途絶えることは未来永劫ないと思われた。
ところが――
≪「クッパ印のバブル」で大ヤケド!≫
≪クッパ城産バブルによるトラブル多発! 雑な養殖方法が原因か!?≫
≪消費者、怒りの声……! デモ隊がクッパ城に押しかける事態に……≫
クッパ城で養殖されたバブルは通常のバブルに比べ、凶暴性が高いことが明らかになり、トラブルが続出した。
原因は、強引かつ性急に養殖された結果、天然物よりかえって攻撃的になってしまったのでは、と分析されている。
これらの事件を受け、バブルブームは急速に終焉に向かうことになる。
クッパ城にはもはや埋め立てるほどすらできないほどに広がる溶岩エリアと大量のバブル、そして借金だけが残った。
溶岩から生まれたブームは、実に熱しやすく冷めやすいものであった。
クッパ城にて、もはや城の九割ほどの面積を占める溶岩で楽しそうに跳ねるバブルたちを眺めながら、
今日も借金返済に追われるクッパはこうつぶやいた。
クッパ「これがバブル崩壊、というやつか……」
―おわり―
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