まどか「あなたが欲しい」 (197)

まどマギの百合物です
3回くらいに分けて投下する予定です

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まどか「……」

さやか「おりゃっ!このっ!」

まどか「あのー、さやかちゃーん」

さやか「何っ!?悪いけど、今手が離せなっ……!」

さやか「ちょちょちょっ!?ヤバいヤバい!」

さやか「……あーっ!やられるっ!」

まどか「はぁ……」

ほむら「……駄目ね。だいぶゲームにのめり込んでしまってるわ」

まどか(もう、さやかちゃんってば。寄り道って何のことかと思ってたけど……)

まどか(まさか新しくできたゲームセンターだったなんて……)

さやか「くそーっ。これで1セットずつ、次は負けられない……!」

まどか(自分だけゲームに熱中しちゃって、わたしたちはおいてけぼりだよ……)

まどか「……ごめんね、ほむらちゃん。こんなことに付き合わせちゃって」

ほむら「別にまどかが謝ることじゃないわ。悪いのは誘うだけ誘ってほったらかしにするさやかよ」

まどか「でも、さやかちゃんの気が済むまでここでぼんやりしてるのもなぁ……」

ほむら「私たちも何かやってみる?」

まどか「そうしたいけど、ゲームのことはあまり……」

まどか「……あ、じゃあプリクラとかどうかな?」

ほむら「そのプリクラというのはどんなゲームなの?」

まどか「ゲームじゃないの。写真というか……」

まどか「とにかく、行ってみようよ」

ほむら「わ、わかったわ」

まどか「あ、あった。ほむらちゃん、これだよ」

ほむら「これ……?」

まどか「うん。ほら、入って入って」

ほむら「ねぇ、結局これは何をするものなの?」

まどか「これはね、写真を撮って、落書きとかをして、それをシールにしてくれるんだ」

ほむら「そうだったのね……」

まどか「……よし、と。ほむらちゃん、撮るよー」

ほむら「えぇ。いつでもいいわ」

まどか「はい、チーズっ」

――――――

まどか「……あ、出てきた。よく撮れてるよ」

ほむら「思ったより綺麗に写ってるわね」

まどか「一緒に撮ってくれてありがとう。これ、大事にするね」

ほむら「大好きって落書きは少し恥ずかしいけど、まどかが喜んでくれたのならよかったわ」

まどか(えへへ、ほむらちゃんとの2ショット……。わたしと、ほむらちゃんだけの……)

まどか(さやかちゃんが一緒だったらみんなで撮ったと思うし、これに関しては少しだけ感謝して……)

ほむら「まどか?どうしたの、ぼーっとして」

まどか「あっ…う、ううん、何でも。そろそろさやかちゃんも終わっただろうし、戻ろっか」

ほむら「そうね、そうしましょう……」

さやか「おーい、まどか、ほむらー」

まどか「あれ、さやかちゃん。ゲーム終わったの?」

さやか「うん。結局ボスにボッコボコにされちゃってさ」

さやか「まどかもほむらも見当たらなくなってたから、探しにきたんだよ」

ほむら「……誘うだけ誘ってほったらかしというのはどうなのかしらね」

さやか「わ、悪かったよ。じゃあ、何かやりたいものは……」

ほむら「いえ、もういいわ。正直、ゲームと言われてもよくわからないもの」

さやか「でも何もしなかったってわけでもないんでしょ?」

ほむら「まどかと2人でプリクラ?を撮って、それで終わりよ」

さやか「え、そうなの?」

まどか「うん。わたしたち、ゲームはあんまり詳しくないから」

さやか「それはそれでいいんだけど、あたしを仲間はずれにしてプリクラだなんて……」

ほむら「先に私たちを放置したのはあなたの方でしょう?」

さやか「それはそうだけど…せ、せめてどんなの撮ったか見せてくれない?」

まどか「えーと、ほむらちゃんとの秘密だから…ごめんね?」

さやか「そんなー……」

ほむら「それはそれとして、そろそろ帰った方がいいんじゃない?」

まどか「そうだね。今日はこれでおしまいにしよう」

さやか「今日はほんとごめん。あたしから誘っておいて……」

ほむら「謝らなくても、別に怒ってはいないわ。少し呆れただけで」

さやか「どっちにしろダメじゃん……」

ほむら「私たちを誘ったこととの差し引きでマイナスかしら」

さやか「ほんと悪かったってば……」

まどか「それじゃ、帰……?」

さやか「まどか、どした?」

まどか「……あ、えと…何でも」

さやか「でも今、このクレーンゲームの景品見てたような気がしたけど」

まどか「別にそんなこと……」

さやか「んー…それもそっか。中身プライズフィギュアだし、まどかが欲しがるものじゃないか」

さやか「まどかが欲しがるのはそっちのぬいぐるみとかだろうし」

まどか「あはは……」

ほむら「ほら、帰るんじゃなかったの?」

さやか「っと、そうだった。まどか、帰るよ」

まどか「わ、わかった」

まどか(だけど、あの景品……)

さやか「それじゃまどか、あたしたちはここで」

ほむら「またね、まどか」

まどか「うん。また明日」

さやか「じゃーねー」

まどか「……さやかちゃんもほむらちゃんも、行ったよね」

まどか「よし。さっきのゲームセンターに戻らなくちゃ」

まどか(さっきのあれ、わたしの見間違いじゃなければ、あれは……)

まどか「えっと、確かこの辺…あ、あった……」

まどか「……やっぱり。このフィギュア、ほむらちゃんにそっくり……」

まどか「まるでほむらちゃんをモデルにして作ったみたいにすごくよく似てる……」

まどか「……」

まどか(お財布にはまだそれなりにある。これがいつまで残ってるかわからないし……)

まどか「これ、取っていこう。クレーンゲームはぬいぐるみしかやったことないけど…何とかなるよね」

まどか(ほむらちゃんそっくりのこのフィギュアを取って、それで……)

まどか「うぇへへ……」

まどか「……よ、よし、誰かに会う前に早く取って帰らないと」

――――――

まどか「うー、全然取れないよー……」

まどか(最初の1回で持ち上がらないってわかったから少しずつずらして……)

まどか(あとちょっとのところまで来たのに、ものすごい粘られてる……)

まどか「……これ以上はお財布の中身も危ないし、これで決めるよ」

まどか「横は…このくらい。縦は…ここっ!」

まどか「……お願い、落ちてきてっ!」

ガタン

まどか「あ……!」

まどか「や…やった、取れたっ!」

まどか「やっと…やっと取れた。念願のほむらちゃんを……!」

まどか「これでダメだったらどうしようかと思ったけど…取れてよかったぁ……」

まどか「えへへ、嬉しいな……」

まどか「……さて、目的も果たせたことだし早く帰らないと」

まどか「いつまでもここにいると杏子ちゃんに見つかっちゃいそうだし……」

杏子「アタシがどうかしたか?」

まどか「ひいっ!?き、杏子ちゃん!?」

杏子「ず、ずいぶん驚かせたみたいだな、悪い」

まどか「うう、ん。気にしないで……」

杏子「そ、そうか。まどかは1人でクレーンゲームをしに来たのか?」

まどか「な、何で?」

杏子「いやだって、まどかはゲーセンに来てもそれしかしないだろ」

杏子「アタシが声かける前もこのクレーンゲームやってたみたいだけど、何を取ったんだ?」

まどか「べっ、べべべ、別に何でもないよっ!た、ただのぬいぐるみだから!」

杏子「ホントかー?何のぬいぐるみか、ちょっと見せてくれよ」

まどか「ほ、ほんとに大したものじゃないから!見せるまでもないっていうか……」

まどか「……とっ、とにかくわたし、帰るね!ばいばい!」

杏子「あ、おい!」

杏子「……行っちまった。何だったんだ、ありゃ?」

杏子「やけに慌ててたというか、キョドってたというか……」

杏子「クレーンゲームの景品もまどかの取ったのが最後だったみたいだし」

杏子「……ま、何でもいいか。さって、アタシも何かゲームでもするかな」

――――――

まどか「……」

まどか「うぇへへ、ほむらちゃん……」

まどか「いつだったか、さやかちゃんが景品のフィギュアはあまり出来がよくないって言ってたけど」

まどか「このほむらちゃんはいいなぁ……。本物には及ばないけど、十分によくできてるよ……」

まどか「これ、ほむらちゃんの私服なのかな。黒いワンピースがすごく似合ってる……」

まどか「……だけど、どうしてほむらちゃんのフィギュアがゲームセンターの景品になってたんだろう」

まどか「まさかほむらちゃんが自分で作って売ってるわけないだろうし……」

まどか「まぁでも、そのおかげでわたしがこうしてほむらちゃんを手にできたんだよね」

まどか「もっと…欲しいなぁ、ほむらちゃん。でも、売ってるわけなんて……」

QB「どうやら気に入ってくれたみたいだね」

まどか「えっ……?き、キュゥべえ?ど、どうして?」

QB「どうしてって、君が予想通りにそれを持ち帰ったからさ」

まどか「もしかして…このほむらちゃんのフィギュアのこと……?」

QB「うん。それは僕たちが作ったものだよ」

QB「それよりも、今言った言葉は本当かい?まどか」

まどか「今言った言葉って…わたし、何か言った?」

QB「それがもっと欲しいって言ってたじゃないか」

まどか「うえっ!?え、えっと、それは……」

QB「……まどかさえよければ、ほむらの人形…作ってあげてもいいよ」

まどか「ほ…ほんと?」

QB「本当だよ。ただ、その代わり……」

まどか「その代わり……?あっ、ダメだよ、契約はしないからね!」

QB「まだ何も言ってないじゃないか。勿論してくれるに越したことはないけど」

QB「その代わり、君の感情を観測させて欲しいんだ」

まどか「えっ?わたしの?」

QB「元々僕たちがそれを作ったのが感情とエネルギーの研究の為だからね」

QB「今まで大きな成果は得られなかったんだけど、まどかならもしかすると何かが起こるかもしれない」

まどか「協力って、一体何を……」

QB「特に難しいことはないよ。君はただ普通に僕たちからほむら人形を購入してくれるだけでいい」

まどか「……お金、払うの?」

QB「当たり前じゃないか。むしろ、どうして無償で手に入ると思っていたんだい」

QB「だけど、無理にとは言わないよ。まどかが駄目なら他の誰かにお願いするから」

まどか(あんなこと言って…どこまで本当かわからないけど)

まどか(せっかく作ってくれるって言ってるんだし……)

まどか「……わかった、買うよ」

QB「きゅっぷい。契約成立だね」

まどか「うん。よろしくね」

QB「わかってると思うけど、このことは秘密だよ。特にほむらにはね」

まどか「わ、わかったよ」

QB「それじゃ、僕は準備があるからこれで。明日、もう1度来るよ」

まどか「またね、キュゥべえ」

QB(まどかがほむらを好いているのはまず間違いない。だけど、本当のことは言えずにいる)

QB(そんなまどかの膨れ上がった欲求を満たす為にほむらフィギュアを作ってあげるとまどかを誘う)

QB(お金を払って作り物が手に入れば、次第に手に入らない本物よりもこっちに入れ込むようになるはず)

QB(例え作り物で満足できなかったとしても、本人に秘密でこんなものを買っているなんて言えるわけないだろうし)

QB(もし隠れてほむらのフィギュアを買っていることがバレてしまえば、いくらあの2人といえども仲違いを起こす)

QB(どっちにどう転んだとしても、僕にとっては都合のいい結果になりそうだ)

QB(それに、お金の使いすぎが理由で契約をしてくれるかもしれない)

QB(お金と人間関係は契約するに十分すぎる理由になるからね)

QB(きゅっぷい)

――翌日――

さやか「さー、今日もゲーセン行くよー!」

ほむら「昨日行ったばかりじゃない」

さやか「いーの。昨日回りきれてなかったしさ」

ほむら「回れなかったのはあなたがゲームにのめり込んでいたからでしょう」

さやか「うっ……。じ、じゃあまどかは?」

まどか「ごめんね、さやかちゃん。わたしも今日はちょっと都合が……」

さやか「ありゃ、まどかも?」

まどか「うん。悪いけど、わたし先に帰るね」

ほむら「わかったわ。まどか、また明日」

まどか「ほむらちゃん、さやかちゃん、またね」

さやか「じゃーねー」

ほむら「……それじゃ、私もそろそろ」

さやか「しゃーない、杏子でも誘って行ってくるかな」

ほむら「あんまりのめり込むんじゃないわよ」

さやか「わーってるって」

ほむら(……まどか、何だかそわそわしてたみたいだけど、どうしたのかしら)

――――――

まどか「ただいまっ。キュゥべえ、いる?」

QB「やぁ。おかえり、まどか」

まどか「昨日言ってた準備、終わってる?」

QB「勿論だよ。パソコンの画面を見てみるといい」

まどか「わ…な、何これ、ほむらちゃんがいっぱい……!」

QB「今、まどかに提供できるほむら人形のリストさ。サンプル画像も用意させてもらったよ」

QB「注文もここから僕たちに直接届くようにしてあるし、誰かに気づかれる心配もない」

QB「新製品も今後増やしていくつもりだよ」

まどか「うわぁー…こんなにほむらちゃんが……」

QB「……あんまり聞いてないみたいだね。新製品のリクエストは常時受け付けてるから」

まどか「あ…うん、わかった。ありがとう、キュゥべえ」

QB「僕の方こそ。協力してくれて助かったよ、まどか」

QB「それを手にしたことで、ほむらとの関係がどうなるのか……」

まどか「えっ?」

QB「いや、何でもないよ。それじゃ、用件も済んだことだし僕はこれで」

QB「まどかの注文を心待ちにしているよ」

まどか「またねー」

まどか「……さて、と。どんなものがあるか、一通り見てみようかな」

まどか「リストと言うより、どこかの通販サイトみたいな感じだね……」

まどか「でも、こんなにほむらちゃんがあると目移りしちゃうよ……」

まどか「どのほむらちゃんもよくできてて、すごく可愛いもん」

まどか「まさかあのキュゥべえがほむらちゃんをこんなに可愛く作れるなんて思ってなかったよ」

まどか「せっかくだから何かひとつ買ってみようかな。最初だし、あんまり高くないものを……」

まどか「……ぱっと見た感じ、やっぱり精巧なのはお値段も高くなってるみたい」

まどか「安いのだと…この辺かな。フィギュアというよりはおもちゃって感じだけど」

まどか「何かよさそうなのは……」

まどか「これ…いいかも。想像してたフィギュアとは違うけど」

まどか「でも、その分他のと比べて値段も安いし、置く場所にも困らないし」

まどか「……何より、ほむらちゃんを自由に動かせるんだよね」

まどか「うん、決めた。まずこれを買ってみよっと」

まどか「えーと、ご注文はこちら…に、商品番号を書いて……」

まどか「……これで完了、っと」

まどか「楽しみだなぁ。早く来ないかなぁ……」

まどか「でもこれ、わたしのもあればいいのに。そしたらほむらちゃんと……」

まどか「うぇへへへへ……」

――翌日 放課後――

まどか「はー……」

まどか(昨日注文はしたけど、普通の通販だったら折り返しで確認メールが来るよね)

まどか(そういうの何も来なかったなぁ。ちゃんと届いてるのかな)

まどか(……でも、まさかほむらちゃんのフィギュアが手に入るなんて思わなかったよ)

まどか(ほむらちゃんのことは…好き、だけど、こんなこと言うわけにはいかないし……)

まどか(なら、その代わり…というわけじゃないけど、ほむらちゃんのフィギュア……)

ほむら「……まどかってば」

まどか「えっ……?あ、あれ、ほむらちゃん……」

ほむら「何だかぼんやりしていたみたいだけど、どうかしたの?」

まどか「う、ううん。何でもないよ、気にしないで」

ほむら「そう?ならいいのだけど」

まどか「……」

まどか(あのフィギュアみたいに自由に動かす…というわけじゃないけど)

まどか(本物のほむらちゃんとあんなことやこんなこと、やってみたいなぁ……)

まどか(……まぁ、叶うはずないからキュゥべえからあれを買ったんだけど)

ほむら「ま、まどか?どうして私をじっと見てるの?」

まどか「あ…ご、ごめんね。ほんとに何でもないの」

ほむら「別に謝ることはないわ。は、恥ずかしいけど、まどかだったら…構わないから」

まどか「……えへへ、ありがとう」

ほむら「ほら、帰りましょう」

まどか「う、うん」

まどか(いつか…友達としてじゃなく、恋人として、なんて……)

まどか(いくら何でも、無理だよね……)

まどか「ただいまー……」

知久「おかえり。まどか宛てに荷物が来ていたよ」

まどか「え、わたし宛て?」

知久「通販サイトからだったみたいだけど、何か買ったのかい?」

まどか「……あ、うん。ちょっとね」

知久「荷物はまどかの部屋に置いておいたからね。一体、何を買ったんだい?」

まどか「あ、あはは、ちょっと、ね。大したものじゃないから……」

まどか「わ、わたし部屋に行ってるから!」

知久「う、うん」

まどか「……ふぅ、危ない危ない。こればっかりは見られるわけにはいかないからね」

まどか「それじゃ早速開封して……」

まどか「……うわ、何か…うわ、どうしよ、すごい恥ずかしい……」

まどか「これが…動くほむらちゃんフィギュア……。思ってたよりちっちゃいかも……」

まどか「可動なんだから、思ったように動かせばいいんだろうけど何だか触りづらいなぁ……」

まどか「……ご、ごめんねほむらちゃん、触るね」

まどか「わ、思ったよりも結構動いてくれる……」

まどか「……」

まどか「こ、こうしてるとほむらちゃんをおもちゃにしちゃってるみたいで変な気分……」

まどか「でも、普段なら絶対しないようなポーズとか仕草をさせることができるのは面白いというか」

まどか「擬似的にだけど、そういうほむらちゃんを見れて嬉しいというか……」

まどか「……だ、ダメダメ。本人の知らないところでそういうことさせちゃ」

まどか「そ、そうだ。せっかくのほむらちゃんなんだし、もっとかっこいいポーズを……」

まどか「えっと、この武器持たせて、こんな感じにして……」

まどか「……この前何となく作ったキュゥべえのぬいぐるみ、敵ってことにしよっと」

――――――

まどか「ふー……」

まどか「お風呂入ったし、ママは今日遅くなるって言ってたし、明日お休みだし……」

まどか「……普段ならしないようなこと、させてみちゃったり…しよう、かな」

まどか「顔、笑顔にして…こっちはこうで…と……」

まどか「……やっぱり、こういう仕草も可愛いなぁ、ほむらちゃん」

まどか「もっと可愛い姿や仕草のほむらちゃん、見てみたいな……」

まどか「……そうだ。新しいほむらちゃんのフィギュア、買ってみよう」

まどか「パソコン立ち上げて、と。確かこのアイコンを起動すれば……」

まどか「……うん、繋がった。どういうシステムなんだろう、これ」

まどか「キュゥべえのことだから普通の通販のシステムじゃないと思うけど……」

まどか「まぁ…何でもいっか。わたしはほむらちゃんが買えるのなら、それで」

まどか「……それよりも、次はどれを買ってみようかな」

まどか「今回はとにかく可愛いほむらちゃんにしよう。何かいいものは……」

まどか「……これはいまいちかな、機関銃持ってて…可愛いではないよね」

まどか「こっちのは昨日はなかった新しいのみたいだけど…どんなのだろ……」

まどか「……か、可愛い…これ、すごく可愛い……!」

まどか「ほむらちゃんらしい、キッとした顔してかっこいいはずなのに、何でこんなに可愛いんだろう……」

まどか「服とかの出来もすごいよさそうだし…これ、買っちゃおうかな……」

まどか「……あ、でもやっぱりその分いい値段するね。可動と比べると倍以上もするんだ」

まどか「でもこれ、いい出来だし、どうしよう……」

まどか「買えないことはない、けど買うと今月はもう何も買えなくなるくらいなんだよね……」

まどか「他の誰かが買うってことはないはずだから、売り切れる心配はないんだけど……」

まどか「うーん…いいや、買っちゃえ!お金のことは…い、今は知らないっ!」

まどか「キュゥべえの気まぐれで販売終了とか言われても嫌だしね」

まどか「それじゃ、このほむらちゃんを…注文、っと」

まどか「……これでよし。あとは来るのを待つだけ」

まどか「前回は注文してすぐに来たし、今回も早いといいなぁ」

まどか「この調子でほむらちゃんフィギュアがどんどん増えていけば」

まどか「もっと色んなほむらちゃんが手に入るんだよね……」

まどか「楽しみだな…うぇひひ……」

今回はここまで
次回投下は29日深夜を予定しています

今回のは前回予告の
まどか「あの子がほしい」(仮)を改題したものです

作中に登場するフィギュアは全て実在する商品を参考にしています
完結したら答え出す予定

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――日曜日――

まどか「それで、またのめり込んじゃったの?」

さやか『そうなんだよ……。おかげでもう今月はすっからかんよ……』

まどか「もう。無駄遣いしちゃダメだよ」

さやか『ヤバいヤバいとはわかってるんだけど、どうしてもクリアしたくてさ……』

まどか「結局クリアできたの?」

さやか『……まだ』

まどか「そ、そっか」

コンコン

まどか「ん…ちょっとごめん。はーい」

知久「まどか、また荷物が来ているけど……」

まどか「あ…そうだった」

知久「確か金曜日にも荷物が来ていたね」

まどか「う、うん」

知久「お小遣いや貯金箱のお金で買ってる間は何も言わないけど、無駄遣いはしないように」

まどか「む、無駄遣いじゃないもん」

知久「それならいいんだ。……じゃ、僕はこれで」

まどか「ありがとう、パパ」

バタン

さやか『もしもーし、まどかー?』

まどか「っと、ごめんね」

さやか『話、聞こえてたんだけど…通販で何か買ったの?』

まどか「そ、そんなところ」

さやか『何だ、ならまどかだって無駄遣いしてるんじゃない』

さやか『話からするに結構な額のもん買ったみたいだし、衝動買いじゃないといいけど』

まどか「ち、違うもん。欲しかったから買ったんだもん」

まどか「……わ、わたし荷物開けてみないとだから、これで切るね」

さやか『あいよー。またねー』

まどか「……ふぅ。よし、さっそく開けて……」

まどか「箱もだいぶ大きい……。あれは可動だから小さかったんだと思うけど……」

まどか「盾と銃は無しで、あとは台座にはめて……」

まどか「……可愛い。すごく、すっごく可愛いよぉ、ほむらちゃん」

まどか「え、何これ、すごい。すごいよっ!」

まどか「サンプル画像見たときも可愛いって思ったけど、実物はもっと可愛いなんて……!」

まどか「こんなものが数千円で手に入っちゃっていいの……?」

まどか「キュゥべえのことだから大丈夫だと思うけど、わたし以外の人の手に渡っちゃダメなやつだよこれ……!」

まどか「特にこの…顔というか、表情、だよね」

まどか「表情は…最近はあんまりしなくなったキッとした感じでかっこいいのに」

まどか「ほっぺたはまんまるで、そのギャップがすごく可愛い……」

まどか「何というか…おまんじゅうとか大福みたい……」

まどか「体の線もわたしより細くて…華奢なのに、柔らかそう……」

まどか「それに、この魔法少女の衣装。普段はあんまりじっくり見る機会はないけど、こんなに素敵だったんだね」

まどか「でも、このタイツみたいなのってこんなツルツルしてたっけ……?」

まどか「まぁ…それはいっか。服のシワとかスカートとかも作り込んであって……」

まどか「これだけ細部まで作ってあるんだったら、もしかして……」

まどか「……だ、ダメダメ。いくらほむらちゃん本人じゃないとは言え、こんなことしちゃダメだよ」

まどか「か、勝手に…その、す、スカートを覗くのなんて…ぜ、絶対よくないよね」

まどか「こういうことは本人の了承を…って、違う、そうじゃなくて……」

まどか「……す、スカートの中、ちゃんと作ってあるのかとか、不具合がないか確認しなくちゃだから」

まどか「べ、別にほむらちゃんのスカートを覗きたいわけじゃなくて、あくまで確認のため……」

まどか「……そ、それじゃ…ごめんね、ほむらちゃん」

まどか「あんまり見るのもあれだし、ちょっとだけ……」

まどか「……」

まどか「……う、うん。特に問題はない、かな」

まどか「はぁ……。何だかすっごくドキドキしたぁ……」

まどか「まさか…ほむらちゃんのスカートを覗くなんて……」

まどか「……それにしても、キュゥべえはどうやって作ったんだろう」

まどか「もし本当に見たんだとしたら羨ま…許せないけど」

まどか「こ、今回はこんなにかわいいほむらちゃんを作ってくれたんだし?大目に見てあげようかな」

まどか「それじゃ…そろそろ片づけなくちゃ」

まどか「……これでよし、と」

まどか「クローゼットの中じゃ飾ってるとは言いにくいけど……」

まどか「誰かに見られるわけにもいかないし、仕方ないよね」

まどか「これからまた増えるだろうし、あとでクローゼットの中、整理しよっと」

まどか(……さっき覗いた、スカートの中…ほむらちゃんもあんな感じなのかな)

まどか(もしそうなのだとしたら、ほむらちゃんのあれも……)

まどか「……うぇひひひひひ」

まどか「……ふぅ。ちょっと落ち着こう」

まどか「今の、誰にも…パパやママに見られてないよね……?」

まどか「友達にそっくりのフィギュアのスカート覗いてニヤニヤしてるところなんて見られた日には……」

まどか「……そ、そうだ。また新しいものが入ってないか、見てみよっかな」

まどか「可愛いほむらちゃんは買ったから…次はかっこいいほむらちゃん、かなぁ」

まどか「……じゃなかったら、美人なほむらちゃんとかもよさそう」

まどか「どちらかと言えば、かっこいいとか美人の方が似合いそうだし…何かよさそうなのは……」

まどか「かっこいいのだったら…こう、何かに立ち向かってるのとかそれっぽいけど……」

まどか「……これなんかよさそう。時間遡行のイメージかな」

まどか「他には……」

まどか「このほむらちゃん…すごい美人……」

まどか「……」

まどか「……はっ。つ、つい見惚れちゃった」

まどか「前回とは違って、かっこよくて、美人で…でも、ほむらちゃんで……」

まどか「これ、買っちゃおう。こんなほむらちゃんを買わない手はないし」

まどか「前回よりまた少し高くついちゃうけど…お年玉の貯金下ろしてきたから大丈夫……」

まどか「あとはパパたちに怪しまれないように受け取り場所を近くのコンビニにして…これでよし、っと」

まどか「……可愛いほむらちゃんとかっこいいほむらちゃん。早く並べてみたいなぁ」

まどか「えへへ…ほむらちゃん……」

QB「……」

QB「まどかは僕の予想通りにほむらフィギュアを買ってくれているみたいだね」

QB「それに、中々面白い感情のデータも取れている。まどかに頼んで正解だったよ」

QB「あとはまどかが契約してくれたら何も言うことはないんだけど……」

QB「……そろそろ、彼女の方にも働きかけてみる必要があるかもしれないね」

QB「彼女ならきっと、しぶしぶながらも買ってくれるはず」

QB「そして、それがバレたときは……」

QB「……そうと決まったら早速試作品を作ってみなくちゃ」

QB「きゅっぷい」

――数日後 放課後――

さやか「それでさ、ようやくボス倒したと思ったらそのあとにラスボスがいてさ」

ほむら「結局ゲームクリアはできなかったわけね……」

さやか「そうなんだよ。それから……」

まどか「……」

まどか(やっと放課後……。コンビニに到着したってメールも来たし、受け取りに行かなきゃ)

まどか(それにしても、今回はやけに時間かかったなぁ。待ちくたびれちゃったよ)

まどか(でも、あとは荷物を受け取って、それで家に帰ったら……)

さやか「おーい、まどかー?」

まどか「……へっ?な、何?」

さやか「何というわけじゃないんだけど、どうしたのさ。ぼーっとしちゃって」

まどか「あ、うん。ちょっと考え事というか……」

ほむら「何か悩みでもあるの?」

まどか「大したことじゃないから、大丈夫だよ」

ほむら「そう?なら、いいんだけど」

まどか「じゃ、そろそろ帰ろ……」

ほむら「……まどか?」

まどか(……恥ずかしくなっちゃうから、あんまりじっと見たことなくて気づかなかったけど)

まどか(ほむらちゃんのほっぺた、柔らかそう。あのフィギュアみたいに……)

ほむら「まどか?私の顔に何かついてる?」

まどか(おまんじゅうや大福みたいで…すっごく可愛い……)

まどか(触ってみたいなぁ。ふにふにしてみたいなぁ……)

ほむら「ちょ、えっ?まど、何を……」

まどか(例えば…こんな感じに……)

ほむら「っ……」

まどか(あは、柔らかい……。おまんじゅうや大福なんて目じゃないくらい……)

まどか(ほむらちゃんのほっ…ぺ、た……)

ほむら「あ、あの…まどか……?」

まどか「……う、うわわわわっ!?ご、ごめん、わたしっ……!」

ほむら「い、いえ、謝らなくてもいいの。まどかにだったら構わないから」

ほむら「ただ、まどかがいきなり頬を触ってきたのは…驚いたけれど」

さやか「いやぁ、見てるあたしも驚いたよ。こう、両手でだったから……」

さやか「そのままキスするんじゃないかって思うくらいだったよ」

まどか「きっ…ききき、キスだなんて、そんなっ!?」

さやか「そんなに必死にならなくても…冗談だよ、冗談」

ほむら「冗談なら、もう少しまともな冗談を言いなさいよ……」

さやか「あはは、ごめんごめん。でも、まどかは何でほむらの顔を触ったりしたのさ?」

まどか「その…特にキスがしたいとかじゃないんだけど……」

まどか「ただ、ほむらちゃんの…ほっぺたが……」

さやか「はい?」

まどか「なっ、何でもない!何でもないからっ!」

さやか「どう見てもそうとは思えないんだけど……」

まどか「ほ、ほむらちゃんも本当にごめんね。いきなりあんなことしちゃって……」

ほむら「さっきも言ったけど、謝ることなんてないのよ。確かに驚いたけど、別に嫌だったわけじゃないわ」

ほむら「……むしろ、私は…少し嬉しかったから」

まどか「えっ……?」

ほむら「い、いえ、何でもないわ。それよりも、そろそろ帰りましょう?」

まどか「あ、そうだ。わたし、少し用があって…先に帰るね」

さやか「用?何かあるの?」

まどか「うん、ちょっとね。大したことじゃないんだけど」

ほむら「だったら一緒でもいいんじゃないかしら……?」

まどか「そ、それはそうなんだけど…わたしの用事に付き合わせるのも悪いから」

まどか「……それじゃほむらちゃん、またね」

ほむら「え、えぇ。まどか、また明日」

さやか「まどか、あたし忘れてるー……」

ほむら「……さ、私たちも帰りましょう」

さやか「んー……」

ほむら「何?言っておくけど、もうゲームセンターには付き合わないわよ」

さやか「そうじゃなくって、まどか…何か変だったなーって」

さやか「わざわざあたしたちから別れて帰るみたいだし……」

ほむら「……そうね、何か隠し事のようなものがあるとは思うけれど」

ほむら「まどかが秘密にしておきたいのなら、私は詮索するつもりはないわ」

さやか「しかし、まどかがほむらにも隠し事をするなんて珍しいね」

ほむら「そうかしら?」

さやか「うん。あの子、あたしたちには秘密にしてることも、ほむらには素直に喋ってるみたいだしさ」

さやか「そのほむらにも話さないところを見ると、結構な隠し事みたいな気がするなぁ」

さやか「ほむらは気にならないの?まどかの抱えてる秘密が何なのか」

ほむら「それは…私だって気にはなるけど……」

さやか「そりゃそうだよね。なんせ他の誰でもない、まどかのことだもん」

さやか「好きな人の秘密ともなれば気にするなって方が無理だと思うし」

ほむら「……何を言ってるの、あなたは。私は別にそんなつもりじゃないわ」

さやか「あれ、違うの?」

ほむら「えぇ。まどかはあくまで私の大切な友達で、さやかの言うような友情を超えた特別な気持ちは……」

ほむら「……持ってないわ」

さやか「なんだ、そうなのか。あたしはてっきりほむらはまどかのことが好きなんじゃないかって」

ほむら「そんなわけ…ないでしょう。そもそも、私もまどかも女なのよ?」

さやか「別におかしくもないと思うよ。女の子が女の子に恋しちゃってもさ」

さやか「……それにあんたたち、他の相手なんて考えられないくらいにお似合いだしね」

ほむら「そう見られる程に仲が良いという褒め言葉として受け取らせてもらうわ」

さやか「んもう、つれないなぁ」

ほむら「それ、まどかに言って困らせたりしたら…わかってるわね?」

さやか「わ、わかってるよ。こんなん言うのほむらにだけだって」

さやか(そうやってまどかを気遣うから好きだって思われるのに……)

ほむら「私に言うのもどうなのかしら……」

さやか「……んじゃ、あたしたちもそろそろ帰ろうよ」

ほむら「それもそうね」

さやか「よーし、今日こそクリアしてやるぞー」

ほむら「さっきも言ったけど、ゲームセンターには付き合わないわよ。行くなら1人で行きなさい」

さやか「まぁまぁ、いいじゃない。クレーンゲームで好きな景品取ってあげるから」

ほむら「さて、私はこれで失礼するわね」

さやか「あ、ちょっと待ってよー!」

――――――

ほむら「ただいま……」

ほむら「誰もいないのに、つい言ってしまうわね……」

ほむら(……全く。どうしてこう人の気持ちを煽ってくるのかしら、さやかは)

ほむら(さっきは適当に誤魔化しておいたし、さやかも冗談半分だったから気づいてないと思うけど)

ほむら(さやかの言う通り、私はきっとまどかのことが好き…なんだと思う……)

ほむら(他の誰にも抱かない、特別な気持ちをまどかに対してだけは持っているから……)

ほむら(もっとまどかの側にいたい。まどかに私だけを見てもらいたい……)

ほむら(まどかに好きって言ってもらって…私だけのまどかに……)

ほむら「……まどか。私、あなたが欲しい」

『その願い、叶えてあげるよ』

ほむら「……隠れてないで出てきたらどうかしら、インキュベーター」

QB「別に隠れていたわけじゃないよ。ただ、君の独り言を聞いて声をかけただけさ」

ほむら「そう……。なら、今すぐここから失せなさい。さもなくば……」

QB「潰される前に消えるけど、その前に僕の話を聞いてくれないかな?」

ほむら「話……?今更、何の話を……」

QB「君のまどかが欲しいという願い。それを叶えてあげられると言ったら?」

ほむら「……何を言ってるの?」

QB「話を聞く気になってくれたかい?」

ほむら「……話しなさい」

QB「簡単な話さ。僕たちが君の為にまどかを用意してあげるよ」

QB「勿論、まどか本人とはいかないから作り物ということになってしまうけど……」

ほむら「作り物……?」

QB「うん。君たちで言うフィギュアという奴だね」

ほむら「その…まどかのフィギュアを、お前たちが作ってくれると……?」

QB「君にとっても悪い話じゃないはずだよ。作り物とは言え、念願のまどかが手に入るんだから」

ほむら「……結構よ。お前たちのことだから、裏に何かあるに決まってるもの」

QB「特に何をしてほしいということはないよ。ただ、これを僕たちからお金で購入してほしいだけさ」

QB「でも、残念だよ。ほむらならきっと話に乗ってくれると思ったんだけど」

QB「僕を信用してくれないというのなら仕方ない。もう2度と手にする機会はないと思うけど、それでいいんだね?」

ほむら「それで結構よ。ほら、さっさと失せなさい」

QB「……だけど、試作したまどかフィギュアも君が買ってくれないとなると廃棄するのももったいないし」

QB「別の誰かに譲ってしまうかもしれないね」

ほむら「なっ…そんなこと、させないわよ!まどかを他の誰かになんて……!」

QB「なら、僕の提案を受けてくれるかい?」

ほむら「そ、それは……」

QB「買ってくれないのなら、やっぱり別の誰かに……」

ほむら「あぁもう!わかったわよ、買えばいいんでしょう!?」

QB「きゅっぷい。契約成立だね」

ほむら「……それで、まどかの…を売ってくれるって」

QB「僕の提案を受けてくれたからね。まどかフィギュアはちゃんと売ってあげるよ」

ほむら「そ、そう。どうやってやり取りをするつもり?」

QB「それについては用意してあるよ。君が帰ってくる前、パソコンに少し細工を施してね」

ほむら「……人のパソコンを勝手に操作するのはどうなの?」

QB「気にしなくても、君がどんなデータを持っていたとしても僕に興味はないよ」

ほむら「そういうことじゃないわよ……」

QB「とにかく、そのパソコンに追加されたアイコンから直接システムにアクセスできるから」

ほむら「わ、わかったわ」

QB「それじゃ、ほむらの物色の邪魔になるから僕は帰るね。ほむらからの注文、心待ちにしているよ」

ほむら「……はぁ。何をやってるのかしら、私は」

ほむら「あいつのやることなんて碌なものじゃないってわかってるはずなのに……」

ほむら「……で、でも、これでまどかのフィギュアが他の誰かの手に渡るのを阻止できたのだから」

ほむら「こうするしかなかっただけ、よね。私は…まどかのフィギュアが欲しいわけじゃ……」

ほむら「……」

ほむら「他に誰もいない…はずよね。インキュベーターの口車に乗るのも癪だけど、少しだけ……」

ほむら「……な、何よ、これ。まどかが…色んなまどかが、こんなにあるなんて……!」

ほむら「このまどかも…こっちのまどかも、とても素敵で可愛い……」

ほむら「これを作ったのが感情を理解できないインキュベーターだなんて、信じられないわ……」

ほむら「それにしても、本当によくできて……」

ほむら「……可愛い。このまどか、とても可愛いわ」

ほむら「可愛らしくて、可憐で、キュートで…凄く素敵……」

ほむら「どこから情報持ってきてるのか知らないけど、魔法少女姿のまどかもいいものね……」

ほむら「私は…まどかが魔法少女になることに反対してるだけで、この恰好についてはどちらかと言えば賛成で……」

ほむら「そこそこの値段はするけど…これを買ってしまえば、いつでも好きなときに……」

ほむら「……まどかに秘密で買うわけにはいかないって、頭ではわかってるはずなのに」

ほむら「画面にはご注文ありがとうございましたの文字が……」

ほむら「最初は欲しいわけじゃないと思ってたはずなのに、まさか買ってしまうなんて…ごめんなさい、まどかぁ……」

ほむら(……だけど、何だかんだで楽しみではあるのよね)

――――――

まどか「ふぅ……」

まどか(何とか無事に持って帰れた……。パパに見つかったときはどう言い訳しようかと思ってたけど)

まどか(こういうときに限って買い物に出ててくれて助かったよ……)

まどか「……それよりも、何だか開けるのが怖いなぁ。色んな意味で」

まどか「でも、今がチャンスだよね。家に誰もいないから…ニヤニヤしてるの見られることもないんだし……」

まどか「一応部屋の鍵はかけて、と。よし、それじゃさっそく……」

まどか「今回の箱は…前と比べると縦長みたい。何でわざわざ変えてるんだろ……」

まどか「ビニール剥いで、台座に立てて…これでいい、かな」

まどか「画像で大体のイメージはわかってるけど、実物は……」

まどか「……うはぁー…す、すごい。すごいよ」

まどか「見惚れちゃうくらいにかっこよくて、美人で……」

まどか「直視すると…何だか恥ずかしくなって、ドキドキしてきちゃう……」

まどか「……だけど、可愛いもかっこいいも美人も全部持ってるなんて…ずるいなぁ、ほむらちゃん」

まどか「ひとつ前のほむらちゃんはとっても可愛かったのに、今回は真逆で……」

まどか「いいよぉ……。ほむらちゃん、すっごく凛々しくて…綺麗だよぉ……」

まどか「こんなに素敵なほむらちゃんが…わたしだけのもので……」

まどか「うぇひひひひひ……」

まどか「ふぅ……。少し、落ち着いたかな……」

まどか「改めて見ると…やっぱり、すごくいい出来だよね……」

まどか「こう、髪がぶわーってなってて、銃を構えて…はないけど、恰好も様になってて」

まどか「前回もそうだったけど、わたしよりも華奢なのにこんなにも柔らかそうで……」

まどか「何より、やっぱりかっこよくて美人で…すごく素敵だな」

まどか「普段のほむらちゃんは可愛いとかっこいいと美人の中間くらいの位置だけど」

まどか「かっこよさと美人さに全振りしたほむらちゃんもいいなぁ……」

まどか「わたしと同学年の女の子だけど、イケメンって言葉が似合っちゃうくらいだよ……」

まどか「もちろん可愛い全振りのほむらちゃんも、同じくらいに素敵で大好きだけどね」

まどか「せっかく2種類買ったんだし、可愛いほむらちゃんも一緒に並べて……」

まどか「……可愛いほむらちゃんもかっこいいほむらちゃんも…どっちもすごくいいけど」

まどか「並べて見ると何かに中てられたような気がして…わ、わたし、どうにかなっちゃいそうで……」

まどか「でも、どっちのほむらちゃんもとっても魅力的で…どちらかなんて選べないよぉ……」

まどか「……あ、あのね、ほむらちゃん。わたしね、ほむらちゃんのこと……」

まどか「な、なんて、わわわ、わたし、何言ってるんだろうね、あ、あはは……」

まどか「今はこのほむらちゃん相手にも言えないけど…いつか、ちゃんと言わないとだよね」

まどか「わたしの、本当の気持ちを……」

QB「やぁ。こんにちは、まどか」

まどか「あ、キュゥべえ。今日はどうしたの?」

QB「近くに用があったから、ついでに寄ってみただけだよ。それより、ほむらフィギュアは気に入ってくれたかな?」

まどか「もちろんだよ!まさかあんな素敵な出来になるなんて、思ってなかったから」

QB「それならよかった。これからも購入をお願いするよ」

まどか「そのつもりだけど、ひとつ聞きたいことがあって……」

まどか「ほむらちゃんのフィギュア、スカートの中まで作ってあったけど、あれって……」

QB「心配しなくても実際に見たわけじゃないよ。あくまで体型や着ている服のデータから作ったものだから」

QB「ほむら相手に覗きなんてしたら何体潰されるかわかったものじゃないからね」

まどか「じゃあ、あれは実際のほむらちゃんと比べると全くの別物ってこと?」

QB「多少の差はあるはずだけど、それほど遜色はないと思うよ」

まどか「そ、そっか。そうなんだ、あれ、ほむらちゃんの……」

QB「君が何を考えているのかは知らないけど、埋めてあるよりちゃんと作ってあった方が嬉しいみたいだね」

まどか「それは…そうだけど、そんなにあれじゃないもん」

QB「何にせよ、あれはまどかが買ったものなんだし好きに鑑賞するといい」

まどか「う、うん。それはそれとして、欲しいほむらちゃんのリクエストがあるんだけど……」

QB「何か案はあるのかい?」

まどか「ちょっと待ってね、確かノートにイラストを描いておいたから……」

まどか「……あ、あった!ほら、見てこれ!」

QB「念の為にそれぞれの説明をお願いできるかな?」

まどか「えっとね、まずは水着だよ!こっちが紫で、こっちは虹柄なんだ」

QB「その隣の…色々盛ってあるのは何だい?」

まどか「これ?これはわたしが考えた、ほむらちゃん悪魔モード!」

まどか「キュゥべえからわたしを守るために魔法少女であることも捨てて、それで……」

QB「そんな設定まで聞いてないよ……。それにしても、よくこんなアイディアが浮かんだもの……」

QB「……おや?これは」

まどか「キュゥべえ?何か変なところでもあった?」

QB「……いや、何でもないよ」

まどか「そう?じゃ、このノートはキュゥべえに預けておくから」

まどか「できるだけこのイラスト通りに作ってね」

QB「わかったよ。早速持ち帰って試作してみることにしよう」

QB「確認するけど、このノートに描いてあるイラスト全てをフィギュアにするってことでいいんだね?」

まどか「えーと…うん、それで大丈夫。なるべく早くしてくれると嬉しいな」

QB「善処するよ。確認も取れたことだし、僕はこれで失礼するね」

まどか「ばいばーい」

QB(……まさか、ほむらのイラストのページ裏にまどか自身のイラストが残っているなんてね)

QB(多分これもまどかが思いついたアイディアなんだろう。描いたことを忘れていたみたいだけど)

QB(天使か女神のような自分のイラストを残してあるなんて中々アレだけど、案としては悪くない)

QB(これは僕が有効活用させてもらおう。これをフィギュアにしたなら、ほむらは間違いなく購入してくれるはず)

QB(……色々やらなくちゃいけなくなってしまったし、急いで帰らないと)

今回はここまで
読んで下さってる方、ありがとうございます

次回投下は30日深夜を予定しています

フィギュア沼もやばいけどドール沼もやばいと聞きます
たぶん値段が違うのかな

次から本文

――数日後――

まどか「さやかちゃん、お昼にしよー?」

さやか「おーう。ちょいと待ってー」

まどか「今日はどこで食べる?」

さやか「んー。動くのも面倒だし、教室でいいんじゃない?」

まどか「じゃ、そうしよっか」

さやか「……そういや、ほむらの奴はどこ行った?」

まどか「え?……あれ、さっきまでいたのに」

さやか「今日もどっか行っちゃったみたいだね……」

まどか「う、うん。ほむらちゃん、どうしたんだろう」

さやか「ここ数日ずっとあんな感じだよね。お昼も放課後も乗ってこないし」

さやか「付き合いが悪いとか言うつもりはないけど…どことなく様子が変なんだよね」

まどか「ほむらちゃん、どうしちゃったんだろう。何かしちゃったかな……」

さやか「何かしたわけじゃないと思うけど…様子が変なのはまどかもだよ?」

まどか「わ、わたしも?」

さやか「うん。ちょっと前まではほむらちゃんほむらちゃんって言ってたのに」

さやか「最近はあんまりほむらのこと言わなくなったような気がするんだけど……」

まどか「えっ?そ、そうかな……?」

さやか「今までがべったりだったから、このくらいが適正なんじゃないかって気はするけどね」

さやか「でも、急に言わなくなるなんてどうしたのさ。ほむらの様子も変だし、何かあった?」

まどか「ううん。特に何もなかったはずだよ」

さやか「なら、何でほむらは急におかしくなったんだろう……?」

まどか「今はひとまずお昼にしよう。ほむらちゃんは…放課後にまた声かけてみようよ」

さやか「ん、そうしよっか」

――放課後――

ほむら「……」

ほむら(今日もまどかから逃げ…てるわけじゃないけど、距離を取ってしまったわ……)

ほむら(私はいつまでこんな無意味なことを続けるつもりなのかしら……)

ほむら(勿論、好きでこんなことしてるわけではないのだけど……)

ほむら「今日のところは帰りましょう。まどかにはまた明日……」

さやか「おーい」

まどか「ほむらちゃーん」

ほむら「えっ……?ま、まどか?」

さやか「一応あたしもいるんだけどね。それより、これから帰りでしょ?」

ほむら「え、えぇ。そのつもりではあるけど」

まどか「じゃあ…一緒に帰ろう?」

ほむら「そ、それは…ごめんなさい、予定があるから……」

ほむら「……と、とにかく今日はこれで。それじゃ」

まどか「あ、待っ……」

さやか「……行っちゃったね」

まどか「うん……」

さやか「一体どうしたんだろ。まどかの顔も見れてないって感じだったけど……」

まどか「顔も見たくないくらいに嫌われちゃったのかなぁ……」

さやか「心配しなくても、それだけは絶対にないから大丈夫だって」

まどか「じゃあ何で……」

さやか「これはあたしの考えだけど…この間のまどかが1人で帰ったことが何か関係してるとか?」

まどか「そ、そんなことないと思うけど…でも、ほむらちゃんには何か隠し事してるように見えちゃったのかも……」

さやか「あれが実際何だったのかは知らないけど、ほむらとしてはまどかが隠し事してるっぽいのが面白くないんじゃない?」

さやか「好きな相手のことはどんな些細なことも知りたいって思っちゃうものだし」

まどか「す、好きって、そんな……」

さやか「はたから見てるとそうとしか思えないよ。ただ、それもあくまであたしの勝手な想像で」

さやか「本当のところはほむら本人に聞くしかないんだよねー……」

さやか「まどかにも話せないとなると…なかなか手ごわくなりそう」

まどか「……今日のところはわたしたちも帰ろう。ほむらちゃんも行っちゃったし」

まどか「また明日、声かけてみよう」

さやか「んー…ちょっと心配だけど、そうするしかないかぁ……」

まどか(でもほむらちゃん、何だか喜んでるような困ってるような…複雑な顔してた……)

まどか(ほむらちゃん、ほんとにどうしちゃったんだろう……?)

――――――

ほむら「ただいま……」

ほむら「……はぁ」

ほむら「まさか、こんなことになるなんて……。やっぱり、やめておくんだった……」

ほむら「インキュベーターからまどかの…フィギュアを買ったところまではよかったけど……」

ほむら「そのせいで…まどかに対してやけに恥ずかしくなってしまって、距離を取ってしまったわ……」

ほむら「まどかの側に居づらくなって、まっすぐに顔を見れなくて……」

ほむら「……何より、まどかに隠し事を…秘密を作ってしまうなんて」

ほむら「例え、まどかのことが好きだからこその秘密だとしても…やっぱり、後ろめたさを感じてしまうわね……」

ほむら「隠していることも、秘密にしていることも、全て正直に話してしまえば楽になるんだと思うけど……」

ほむら「誰にも話せないわよね……。私がまどかのことを想って、まどかのことが好きだからだとしても」

ほむら「まどかに隠れて、こんな…好きな人を模したフィギュアを買ってしまったなんて……」

ほむら「よく考え…なくても、今の私ってだいぶ気持ち悪いんじゃないかしら……?」

ほむら「……でも、出来は思った以上にいいから腹が立つのよね。インキュベーターのくせに」

ほむら「まどからしい、あどけない笑顔と可愛らしい仕草にお似合いの魔法少女の服で……」

ほむら「特にこのスカートなんて、まるで花が咲いているみたいで……」

ほむら「……そう言えばこのまどかって、スカート穿いてるのよね」

ほむら「このスカートの中って…どうなってるのかしら……」

ほむら「……い、いえいえいえ、なな、何を考えてるの、私は」

ほむら「い、いくら好きな人のフィギュアで、本人じゃないとしても……」

ほむら「すすす、スカートを勝手に覗くなんて真似をするわけには……」

ほむら「……とは言っても、気にならないわけじゃないし、興味が無いと言えば嘘になるし……」

ほむら「……まどか、ごめんなさい。すぐ、すぐ終わらせるから」

ほむら「ほんの少しだけ……」

ほむら「……」

ほむら「も、もこもこしたフリルで埋められているわ……」

ほむら「……わ、私は何をがっかりしてるのかしら。丸見えよりもこの方がよっぽどいいじゃない」

ほむら「フリルで何も見えなくてよかったけど…こう、なんて言うか……」

ほむら「確かに…あると期待したことはしたし、ドキドキしたことはしたけど……」

ほむら「あぁもう、これじゃまるで私が変態かセクハラ犯みたいじゃない……」

ほむら「いくら相手がまどか本人じゃない、作り物だとしても…何をしてるのかしら、私は……」

ほむら「何も私はまどかにこんなことがしたいわけじゃない…と言っても説得力ないわね……」

ほむら「元はと言えば全部インキュベーターがこんなまどかを作ったせいだからで……」

ほむら「……なんて、偉そうなことを言ってるけど、そのインキュベーターから購入したのよね」

ほむら「たったひとつだけでこれだけ悶々とするんだから、もう買わない方がいいのかもしれないけど……」

ほむら「気が付けばあのページを開いて新着商品を確認してしまってるわ……」

ほむら「……フィギュアを買ってしまったのも、結局のところはまどかのことが…どうしようもないくらい好きだからで」

ほむら「まどかに内緒で好きな人のフィギュアを買って、少なからず罪悪感と恥ずかしさを感じてしまったのよね……」

ほむら「……まぁ、罪悪感を持ったとしてもそれで本当のことが言えるようになるわけじゃないんだけど」

ほむら「まどかには…私の想いを伝えたい……。けど、こんなの迷惑にしかならないだろうし……」

ほむら「……それに、受け取ってもらえるはずのない告白をしたって嫌われてしまうだけ」

ほむら「満足…できるわけじゃないけど、仕方ないわよね。まどかと恋人になれるわけ、ないんだから……」

ほむら「だけど、やっぱりこれ以上買うのは…何だかよくない気がするし、やめて……」

ほむら「……えっ、待って、え、何これっ!?」

ほむら「こ、こんなまどか…私、見たことなくて…まるで女神みたい……!」

ほむら「普段のまどかとは違って、凛々しくて…女神のようなドレスも、伸ばしたロングヘアも…とても似合ってるわ……!」

ほむら「でも、どこかまどからしい可愛さも残っていて…綺麗で、素敵……」

ほむら「……もう買うのはやめようかと思ったけど、こんなまどかを見せられて…我慢できるわけないわよね」

ほむら「値段が前回と比べて2倍程違っても、この女神まどかが手に入るのなら安いもの……」

ほむら「……いいわ、買ってしまいましょう。買わずに後悔するより、買って後悔した方がいいと思うし」

ほむら「この商品番号を送って…注文完了、と……」

ほむら「あとは無事届くのを待つだけね」

ほむら「……でも、これって本当にインキュベーターが考案してるのかしら。作ってるのは間違いないと思うけど」

ほむら「あのインキュベーターにこんなアイディアが出るとはどうにも信じられないわ……」

ほむら「それよりも…これから、どうしようかしら……。1度まどかと距離を取ったせいか、何となく戻りづらい……」

ほむら「……気負わずに今まで通り接すればいいのだろうけど…今の私にそれができるのかしら」

ほむら「多分、無理…よね……。まどかの顔も見れないくらいに…恥ずかしくて、ドキドキしてしまうから……」

ほむら「何より、叶うはずのない想いを抱いたまま、想い人に対して何でもないように振る舞うなんて…私には……」

ほむら「……今日はもう早く夕飯を済ませて休みましょう」

ほむら(私は…どうしたいのかしら……?告白した方がいいとは思うけど、どうせ玉砕するのなら……)

ほむら「……そう言えばあの女神まどかのドレス、どこかで見たような……」

――数日後――

さやか「……あれからしばらく経つけど、ほむらの様子はおかしくなる一方だね」

まどか「うん……」

さやか「最初のうちこそ目を合わさないでも会話はしてたのに、今はそれさえ目に見えて減ってるし……」

まどか「何だかほむらちゃんに避けられちゃってるみたいだし…どうしちゃったんだろう……?」

さやか「まどかとケンカしたわけでもないし、かと言ってマミさんや杏子と何かあったわけでも……」

まどか「……わたし、ほむらちゃんに嫌われちゃったのかな」

さやか「はぁ……?そんなのあるわけないよ。あのほむらがまどかのこと、嫌うなんて」

まどか「だって、そうとしか思えないんだもん……」

さやか「大丈夫だって。あぁもう、そんな泣きそうな顔しないの」

さやか「ほむらに何があって、どういう理由でまどかと距離取ってるかはわからないけど」

さやか「まどかのことを嫌うなんて、絶対にありえないからさ」

まどか「……ありがと、さやかちゃん」

まどか(もしかして、気づかれちゃったのかな。わたしの、ほむらちゃんに対しての気持ちが……)

まどか(わたしのほむらちゃんが好きって気持ちに気づいて…気持ち悪いって思われちゃったのかな……)

まどか(今はまだ誰にも気づかれてないはずだけど、もし隠れてほむらちゃんのフィギュア買ってることもバレちゃったら……)

さやか「……おーい、まどかー?」

まどか「あっ…な、何?」

さやか「いや、だいぶ悩んでる顔してたからさ。あんま思い詰めるんじゃないよ?」

まどか「……ありがとう」

まどか(ほむらちゃんに距離取られちゃうなんて初めてで…どうしたらいいのかわかんないよ……)

まどか(これがケンカだったら謝って仲直りすればいいんだろうけど、そういうわけでもなくて……)

まどか(……わたしのこと、嫌いになっちゃったの?もう、興味なくなっちゃったの……?)

さやか「さて、あたしたちも帰ろっか」

まどか「そう…だね……。今、支度するよ……」

まどか(ほむらちゃん、何を思ってわたしを避けてるんだろう……。最近は全然話せてないし……)

まどか(こうなったらもう直接ほむらちゃんに聞いてみよう。全部話してくれるかはわかんないけど)

まどか(何もしないよりはずっといいはずだよね。よし、そうと決まったら……!)

――――――

ほむら「……これでよし」

ほむら「ふぅ…やっと組み立てが終わったわ……。何だって今回はこんなに部品多いのかしら……」

ほむら「今度インキュベーターに会ったら締め上げてあげるとして……」

ほむら「……ふふっ。とても素敵よ、まどか。髪も伸ばしてるせいか、普段よりずっと大人びて見えるわ」

ほむら「まどかは美人よりも可愛らしいって印象だけど、女神まどかは正反対ね……」

ほむら「このドレス、魔法少女の衣装とは対照的で…だけど、まどかによく似合ってるわ……」

ほむら「……す、少し胸が見えちゃうくらい、胸元がざっくりと開いていて…目のやり場に困るというか」

ほむら「ふ、普段なら絶対に見れないものが見えてるせいか、凄くドキドキしちゃってる……」

ほむら「……でも、本当に綺麗よ、まどか。まるで…魔法少女の私を絶望から救ってくれる、希望の女神みたい」

ほむら「……なんて恥ずかしいことも、このまどかには言えるのよね」

ほむら「はぁ……。まどかのことが好きで、両想いになりたいのに……」

ほむら「それが叶わないからってこれを買って、満足…とはいかないけど満たされて、罪悪感は大きくなって……」

ほむら「もう自分でも、どうしたらいいのかわからない……」

ほむら「……そう言えば、このまどかもスカートね。魔法少女のときは…もこもこで埋まっていたのよね」

ほむら「まぁ、どうせ今回もそれっぽい何かで埋めてあると思っ……」

ほむら「……」

ほむら「……はっ」

ほむら「な、ななな、なん、何で普通に作って、あるのよ……!」

ほむら「前回がそうだったから、今回もそうなんだとばかり……!」

ほむら「わ…わた、私、み、見え、見ちゃった、のよね。た、例え作り物のフィギュア相手だとしても……」

ほむら「ま、まどかの…し、白い…ぱ、パン、パン……!」

ほむら「……こ、これはあくまで不可抗力で…の、望んだかどうかと言われたらそうだけど」

ほむら「わ、私はまどかのが見たくて覗いたわけじゃなくて……」

ほむら「あぁもう、これじゃ本当にまどかのスカートを覗いた変態じゃない」

ほむら「いくら埋められてなかったとしても、凝視していいわけじゃないのに……」

ほむら「それに、スカートの形状見れば埋められてないってすぐわかったはずじゃ……」

ほむら「……待って。これを作ってるのはインキュベーターのはず、よね」

ほむら「だとしたら…私が見たのと同じものを見ているわけで……」

ほむら「胸元も、スカートの中も普通に作ってあるということは、つまり……」

ほむら「……これをどういうデータの下に作っているのかはわからないし」

ほむら「インキュベーターが作ってるから、私が買えるわけでもあるけど」

ほむら「……それとこれとは話が別よね。今度会ったら蜂の巣にしてやるわ」

ほむら「でも、やっぱりこのドレス、どこかで見た気がするのよね……」

ほむら「どこだったかしら……。こんな立体じゃなくて……」

Prrrrrrrr

ほむら「で、電話?まどか、から……?」

ほむら「……も、もしもし?」

まどか『あ、ほむらちゃん。よかった、出てくれて』

ほむら「まどかからの電話だもの。それで、何か用……?」

まどか『うん。今日、これからわたしの家…来てくれないかな?』

ほむら「え?」

まどか『……ほむらちゃんと、話したいことがあるの』

ほむら「……それは、今この電話じゃ駄目なのかしら?」

まどか『できることなら、直接会って話したいから……』

ほむら「……わかったわ。じゃあ、これからそっちに向かうわね」

まどか『うん。待ってるからね』

ほむら「えぇ。それじゃ、またあとで……」

ほむら「……どうしたのかしら、まどか。直接会って話がしたいなんて」

ほむら「まさか…私の気持ちがバレたわけじゃないと思うし……」

ほむら「何にせよ、まどかの家に行かなきゃいけないんだろうけど……」

ほむら「まどかと普通に話せるか、いつも通りに振る舞えるか…心配だわ」

ほむら「……でも、いつまでも距離取ってるわけにもいかないわよね」

ほむら「私は何もまどかに嫌われたいわけじゃ…ないのだから……」

ほむら「フィギュアを買ってしまったのも、避けてしまったのも…全部、まどかのことが……」

ほむら「……なんて、こんなこと…言えないわよね。言ってしまったら友達でさえいられなくなるもの」

ほむら「とにかく、早く片づけてまどかの家に行ってみましょう……」

ほむら(……このまどかに聞いても答えが貰えるわけないって、わかってるけど)

ほむら(ねぇ、まどか。まどかは私のこと…どう思ってる……?)

ほむら(私は…まどかのこと……)

ほむら「……片付いたし、行きましょう」

――――――

まどか「いらっしゃい、ほむらちゃん。来てくれてありがとう」

ほむら「……まどかに誘われたんだもの」

まどか「えっ?」

ほむら「な、何でもないわ。相変わらずまどかの部屋は可愛らしくて素敵ね」

まどか「そうかな。ありがとう」

ほむら「……まどか?何をきょろきょろしてるの?」

まどか「あ…う、ううん。何でもない、よ」

まどか(大丈夫かな……。うまく隠せたと思うけど……)

まどか(ほむらちゃんに電話したあとで、フィギュアを机に並べてることを思い出して)

まどか(来る前に全部箱に戻してクローゼットにしまうのも間に合いそうになかったし……)

まどか(結局、部屋の目につきにくいところに隠すしかなかった……)

まどか(……仮に箱に戻せたとしてもクローゼットのほむらちゃんコーナー、もういっぱいなんだよね)

まどか(調子に乗って買いすぎたのもあるし、まさかあんなに大きくなるなんて……)

まどか(ほむらちゃんが勝手に部屋を漁ったりしないのはわかってるけど、それでも不安だな……)

まどか(あんまりきょろきょろしてたら怪しまれちゃうし、いつも通りに……)

まどか「……」

ほむら「ま、まどか……?今度は私のことをじっと見てるみたいだけど……」

まどか「……え?えと…と、特に意味はないよ、うん」

まどか(ほむらちゃんと顔を合わせて話すのが久しぶりで…何だかいつも通りにできない……)

まどか(何より、ほむらちゃんと2人きりで…余計にドキドキしちゃう……)

まどか(毎日フィギュアを見てるはずなのに、全身が熱くなって、少し息苦しくて……)

まどか(……わかっていたはずだけど、やっぱり本物のほむらちゃんは全然違うよ)

まどか(生きて、動いていて、呼吸をして、熱を持っていて……)

まどか(ほむらちゃんフィギュアにはなかった、ほむらちゃんとしての『存在』があるんだもん……)

まどか(……久しぶりだからって、あんまり変なことしたり言ったりしないようにしなきゃ)

ほむら(まどかに誘われて部屋まで来たのはいいけど、どうしたものかしら……)

ほむら(2人きりになって、それから何をしたらいいかまで頭が回ってなかったわ……)

ほむら(ただ、何をするにしても突拍子もないことをしたりしないかが不安で……)

ほむら(……やっぱり、今まで通りの私を演じるしかないわよね。来る途中もそう思ってたじゃない)

ほむら(遊ぶにしても話をするにしても、今まで通り友達としての私でなくちゃいけないのに……)

ほむら(久しぶりのまどかは作り物なんかとは何もかもが違って…感情が抑えきれない……)

ほむら(嬉しいだとか、好きだとか…まどかに対しての気持ちが溢れるくらいに湧いてきて)

ほむら(口を開いたら全部零れてしまいそうで……)

ほむら(だからと言ってこのままというわけにもいかないし、何かした方が……)

まどか「……ねぇ、ほむらちゃん」

ほむら「えっ?な、何?」

まどか「電話でも言ったけど…ほむらちゃんに聞きたいことがあるの……」

ほむら「あ、あぁ、そうだったわね。一体何かしら……?」

まどか「すごく言いにくいことなんだけど…ほむらちゃん、わたしのことを避けてない……?」

ほむら「えっ……?」

まどか「ここ最近のほむらちゃん、何だかわたしから距離を取ってるみたいだったから……」

まどか「……もしかして、わたしのこと…嫌いになっちゃったの?もう、興味もなくなっちゃったの?」

ほむら「そ、そんなわけないでしょう。嫌いになったわけじゃないし、興味なんてありすぎるくらいで……」

ほむら「……今のは忘れて」

まどか「じゃあ、ほむらちゃんはわたしのことを悪いように思ってるわけじゃないってこと……?」

ほむら「当たり前じゃない。まどかのこと、悪く思うわけなんてないわ」

まどか「……なら、よかった。けど、だったらどうしてわたしのことを避けていたの?」

ほむら「それは……」

まどか「ほむらちゃんが何を思ってそうしてたのか、教えてくれないかな……?」

ほむら「……少し、顔を合わせづらくて。勿論、私が勝手にそう思っていただけで」

ほむら「でも、いつまでも距離を取っているわけにもいかないし…何より、まどかに誘われたから」

ほむら「今日、こうしてまどかに会いに来たの」

まどか「そうだったんだ……」

ほむら「……ごめんなさい。私、自分のことばかりで、まどかの気持ちを考えてあげられなかった」

ほむら「私の気持ちのせいで、まどかに辛い思いをさせてしまって……」

まどか「う、ううん、いいの。ほむらちゃんがわたしを嫌ってるわけじゃないのなら、それで」

まどか「でも…もしまた気まずいと思うことがあっても、距離を取ったり避けたりはしないでほしいな……」

まどか「わたし、ほむらちゃんに距離取られちゃって…少し悲しかったし、寂しかったから」

ほむら「えぇ、もう2度とまどかと離れたりしないわ。だから…今回は、許してもらえないかしら……?」

まどか「……も、もう1回。今の、もう1回言って」

ほむら「もう1回……?もう2度とまどかと離れたりしないから…許して、まどか」

まどか(うはぁー……。2度と離れたりしないなんて、すっごく嬉しいよぉ……)

ほむら「……まどか?」

まどか「あっ…ゆ、許す、許すよ。今回のことは全部、水に流しちゃおう」

ほむら「ふふっ……。ありがとう、まどか」

まどか「あはは……」

ほむら(でも、水に流してくれるのは避けてたことまでよね……)

ほむら(その原因を知ったら、いくらまどかでも許してくれるわけ……)

まどか「ほむらちゃん、どうかしたの?」

ほむら「あ…いえ、何でもないわ。それより、せっかく来たんだし何かしましょう?」

まどか「それじゃ、お菓子と飲み物でも持ってくるよ」

ほむら「手伝いましょうか?」

まどか「ううん、大丈夫。すぐ取ってくるから、ちょっと待っててね」

バタン

ほむら「……ふぅ」

ほむら(何とか…まどかにちゃんと謝って、距離を取ってたことは許してもらえたけど)

ほむら(私はまどかに対して何をどうしたいのかしら……)

ほむら(まどかを見ていると、おかしくなるくらいドキドキして…目が離せなくなって……)

ほむら(でも…どうすることもできない、わよね。本当のことを伝えるわけにはいかないし……)

ほむら(かと言って、これ以上我慢して…今まで通り友達の私を演じるのも無理みたいで……)

ほむら(私は…一体どうしたら……)

ほむら「……まどかのベッド、微妙に乱れてるわね。私に電話するまで寝ていたわけではないと思うけど」

ほむら(まどかの…ベッド……)

ほむら(こんなこと…許されない、やっちゃいけない行為だってわかっているはず…だけど……)

ほむら「……ごめんなさい。少し、少しだけ」

ほむら(私は…何をしてるの……?勝手にまどかのベッドを使うなんて……)

ほむら(これじゃまるっきり、本当に変態みたいじゃない……。早くやめないとなのに)

ほむら(まどかの匂いがして…まどかに包まれているみたいで……)

ほむら(……まどか…好き、好きぃっ…私、まどかのことっ……!)

カタン

ほむら「……っ!」

ほむら「び、びっくりした……。棚からぬいぐるみが落ちてくるなんて……」

ほむら「……でも、まどかが戻ってきたわけじゃなくてよかったわ」

ほむら「こんな…ベッドに潜り込んでいるところを見られたら1発で終わってしまうだろうし……」

ほむら「とにかく、落ちたぬいぐるみを戻しておきましょう。スペースが空いてるし、あそこから落ちてきたのね」

ほむら「それにしても、どうして触ってもいないぬいぐるみが勝手に落ちたりしたのかしら……」

ほむら「あら……?ぬいぐるみの影に何か隠して……」

ほむら「……え?これって、まさか……」

今回はここまで
読んで下さってる方、ありがとうございます

次回投下は7月1日深夜を予定しています

今回の投下で完結の予定です

次から本文

まどか「ほむらちゃーん。持ってきた…よー……」

ほむら「あ……」

まどか「ちょっ…ちょちょちょ、な、なな、何、何してるのっ!?」

ほむら「ご、ごめんなさい。その、ぬいぐるみが落ちてきたから戻そうと思って……」

まどか「そんなのどうでもいいから!は、早くそこから……」

ほむら「……ねぇ、まどか」

まどか「な、何?」

ほむら「これって…私のフィギュア、よね……?」

まどか「あ…ぁ……」

まどか(終わった……。何もかも……)

ほむら「まどか……?」

まどか「え、えと、その、あの…それ、それは……」

まどか「……ごめん、なさい。ほむらちゃんの…フィギュア、です」

ほむら「そう……。よくできてるわね……」

まどか「そ、そうかな……」

ほむら「ここにひとつと、向こうの棚にもいくつか隠してあるみたいね」

まどか「そこからだと見えちゃってるよね……。全部、机に並べるよ……」

ほむら「……これで全部?」

まどか「うん……。持ってるほむらちゃんのフィギュアはこれで全部」

ほむら「色々持ってるのね……」

まどか(ほむらちゃん、複雑な顔してる……。あんな顔になるのも、当たり前だよね……)

まどか(友達だと思ってた相手が、自分のフィギュアを隠し持っていたんだから……)

まどか(全部ほむらちゃんの前に並べた以上、言い訳なんてできるわけないし……)

まどか(よくてフィギュア全破棄の上、好感度だだ下がり。悪ければ、このまま……)

まどか(どっちだとしても、もう全部おしまいだよ……)

まどか「……ごめんなさい。ほむらちゃんに内緒で、こんなことをして」

ほむら「別に謝らなくてもいいわ。まどかは…悪いことをしたわけじゃないと思うし」

まどか「悪いことはしてないかもしれないけど…嫌われて、愛想を尽かされるには十分すぎる理由だよ……」

まどか「……最初は軽い気持ちだったの。ほむらちゃんのフィギュアを手にする機会があったから」

ほむら「それって……」

まどか「だけど、最初のひとつを手にしたことで…たぶん、抑制が利かなくなっちゃったんだ……」

まどか「これがただの物欲とか購買欲だけだったら…いくらでも抑えられたのに……」

ほむら「だったら、まどかはどうして私のフィギュアを……?」

まどか「わたしがほむらちゃんのフィギュアを集めていた、1番大きな理由は……」

まどか「……ほむらちゃんのことが、好き…だから」

ほむら「えっ……」

まどか「ほむらちゃんが今思ってるような友情としてじゃなく、愛情として……」

まどか「恋の対象として…ほむらちゃんのことが、好きなの……」

ほむら「……まさか、まどかが私のことを」

まどか「わたし、どうかしてるよ……。同性のほむらちゃんを好きになっちゃうなんて……」

まどか「それに、そのわたしが…水着や妄想上の、こんな恰好のほむらちゃんフィギュアを持ってるんだもん……」

まどか「……気持ち悪い、よね」

ほむら「……えぇ、そうね。同性を好きになって、相手のフィギュアを集めているのは」

ほむら「多分、どう考えても、誰に聞いても…普通じゃないんだと思う……」

まどか「……本当にごめん。廃棄しろって言うならするし、顔も見たくないって言うなら、わたしは」

ほむら「でも、それは相手が他の誰かだったならの話。私は…まどかにだったら構わない」

まどか「……何でほむらちゃんはそんなに優しいの?こんなの…軽蔑されたっておかしくないのに」

ほむら「おかしいことなんて何ひとつないわ。方法は少し変わってたけど、まどかの愛情表現なんだもの」

ほむら「それに…まどかの気持ちも理解できるから……」

まどか「そんなこと……」

ほむら「……ねぇ、まどか。これから私の家に来てくれないかしら?」

まどか「え、ほむらちゃんの……?」

ほむら「まどかに…教えなきゃいけないことと、伝えなきゃいけないことがあるから」

まどか「それは…ここじゃダメなことなの……?」

ほむら「駄目ではないけど、見てもらった方が手っ取り早いと思うから」

まどか「……わかった。じゃあ、支度してくるから少し待ってて」

ほむら「えぇ。ありがとう」

ほむら(……まさか、まどかが私のを持ってるなんて思いもしなかったけど)

ほむら(私が見つけてしまったからとは言え、まどかだけが話して私が黙っているのは…ずるいわよね)

ほむら(きちんとまどかに話さないと。私がどういう気持ちで、何を隠しているのかを……)

――――――

ほむら「さぁ、上がって」

まどか「お、おじゃまします……」

まどか(ほむらちゃんの家に来るのも何だか久しぶりだな……)

ほむら「……まどか?」

まどか「あっ…な、何でもない。それで、話って……」

ほむら「……まどかは私に本当のことを話してくれたから。私も、隠してること…全て話すわ」

まどか「隠してることって……」

ほむら「……まどかは私に隠れて私のフィギュアを集めていたってことだったけど」

ほむら「実はね、私もまどかのフィギュアを持ってるの……」

まどか「……え?」

ほむら「私もまどかと同じで、内緒でフィギュアを……」

まどか「ま、待って待って!な、何でほむらちゃんがわたしのフィギュアを持ってるの?」

ほむら「さっきも言ったでしょう?フィギュアを持ってるまどかの気持ちも理解できるって」

まどか「じゃあ…じゃあ、ほむらちゃんが持ってるのって……!」

ほむら「……まどかのフィギュアを持っている理由は…私もまどかのことが、好きだからよ」

まどか「ほむらちゃんが…わたしの、こと……」

ほむら「私は…まどかのことが好き。だけど、この想いを言うつもりなんてなかった……」

まどか「どうして……?」

ほむら「そんなの、わかりきってることじゃない。私もまどかも、女だから」

ほむら「まどかにとっての私は…友達でしかないんだって……」

まどか「わ、わたし、言ったでしょ?ほむらちゃんのことが……」

ほむら「まどかの気持ちを聞いた今はともかく、以前はそう思っていたの……」

ほむら「だから、迷惑にしかならないこんな気持ちは…伝えるべきじゃないって」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「まどかのフィギュアだって最初は買うつもりなんてなくて、半ば無理やりだと思ってたはずなのに」

ほむら「後になって、まどかのことがどうしようもなく好きだから買ったんだと気づいてしまったの……」

ほむら「距離を取ったのも…まどかに隠れてこんなものを集めていたせいで顔を合わせづらくなったから……」

まどか「そう…だったんだ……」

ほむら「……私の想像が正しければ、まどかもきっと私と同じなんじゃないかしら」

まどか「うん……。わたしも、ほむらちゃんが好きで…でも、本当のことは言えなくて……」

まどか「ほむらちゃんと…そうなれないのならって、フィギュアを……」

ほむら「私たち、同じ想いで…同じ行動をしていたのね……」

まどか「そう言えば…ほむらちゃんはどこでわたしのフィギュアを……?」

ほむら「……インキュベーターからよ。まどかのフィギュアを作って売ってやると言われて」

まどか「わたしもキュゥべえから…感情の観測のために買ってもらえないかって」

まどか「フィギュアを作ったのは感情とエネルギー研究のためで、わたしはそれに協力する形で買ってたの」

ほむら「その感情の観測が何なのかは知らないけど、あいつのことだから間違いなく碌なものじゃないわね」

ほむら「どうせ私に売りつけたのもそういう目的の為だったんでしょう。でなきゃあいつがこんなもの作るわけないし」

ほむら「あぁもう、結果がどうあれあいつに利用されてたなんて屈辱だわ……」

ほむら「今度会ったら蜂の巣…いえ、私たちを利用してたんだから、こちらも……」

まどか「……ねぇ、ほむらちゃんはどんなフィギュアを買ったの?」

ほむら「えっ?」

まどか「わたしが持ってるのは全部見せたんだし、ほむらちゃんのも見せてほしいなって」

ほむら「い、いいけど…何だか恥ずかしいわね、本人の前に出すのは」

まどか「わたしだってそうだったんだから。もう終わったって気持ちの方が大きかったけど……」

ほむら「……どうしても見たいの?」

まどか「え、そんなにアレなやつなの……?」

ほむら「ち、違うわよ。わかった、今持ってくるから……」

ほむら「……ほら、持ってきたわ」

まどか「あれ、それで全部なの?」

ほむら「私が持ってるのはこの2つだけ。まどか程は持ってないのよ」

まどか「な、何かそう言われちゃうとなぁ……。えっと、魔法少女の衣装と……」

まどか「……え?な、何でこれのフィギュアがあるの?どうして?」

ほむら「私、その女神みたいなまどかをどこかで見た気がするんだけど…知ってるの?」

まどか「これ、わたしが落書きで書いたやつだよ……。ほむらちゃんにも見せたことあるでしょ?」

ほむら「そう言われると……」

まどか「これを知ってるのはわたしとほむらちゃんだけのはずなのに、どうして……」

まどか「……もしかして、あのノートって」

ほむら「まどか?」

まどか「あ、えと…わたし、フィギュアのリクエストのためにノートに案を描いてキュゥべえに渡したの」

ほむら「それがあの…水着と悪魔っぽい私なのね」

まどか「うん。そのときに使ったノートが、女神のわたしが書いてあるノートだったみたいで……」

まどか「わたしはそれに気が付かずに渡しちゃったんだ……。たぶん、キュゥべえは気づいてたと思う……」

まどか「このノートに載ってるイラスト全てをフィギュアにしてもいいかってわざわざ聞いてきたし……」

ほむら「そう……」

まどか「うー…恥ずかしい……。まさかわたしの落書きがフィギュアになって、ほむらちゃんが持ってるなんて……」

まどか「ほむらちゃんになら、魔法少女とか水着でも全然いいけど…さすがにこんな妄想のわたしは恥ずかしいよぉ……」

ほむら「私は…構わないし、嬉しいわ。女神のまどかも可愛くて、綺麗で」

ほむら「それに、まどかの持ってる悪魔の私と女神のまどか、対になった妄想…もしもの私たちも素敵だと思うわ」

まどか「……だけど、やっぱり勝手に使われたのは嫌だな。ほむらちゃん、キュゥべえに会ったらわたしの分もお願いするね」

ほむら「え、えぇ……」

まどか「えへへ……」

ほむら「……さっきの話の続き、なんだけど」

まどか「さっきの話って…わたしたちがフィギュアを買ってた話のこと、だよね……」

ほむら「……私たちがフィギュアを買っていたのは、相手のことが好きだから」

ほむら「まどかは私のことが、私はまどかのことが……」

まどか「そう…だね……」

ほむら「なら、私たちは…両想いなのよね……?」

まどか「そういうことになるかな……」

ほむら「……まどかの好意は、私への恋ってことで…間違いない?」

まどか「うん。わたしは…ほむらちゃんと、恋人になりたいな……」

まどか「ずっと…そうなりたいって思ってた。ほむらちゃんの隣に、恋人として……」

ほむら「……私もよ。まどかと、恋人になりたいって…叶うはずのない夢を見てた」

ほむら「でもっ…私たちの本音は、私たちの気持ちは夢や作り物なんかじゃ…ない、のよね……」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「……まどか、好き。私、まどかのことが…大好き」

ほむら「私と…恋人として、付き合って…くれる……?」

まどか「……嬉しい。お互い本音言っちゃってるけど…ほむらちゃんに告白してもらえて」

まどか「返事は…もちろん、決まってるよ。わたし、ほむらちゃんの恋人になる」

ほむら「……ありがとう、まどか。告白、受けてくれて」

まどか「そんなの、当たり前じゃない。わたしも、ほむらちゃんが好きなんだから」

ほむら「まどかと付き合って、恋人になれたんだから…もう、言いたいことを抑え込む必要はないのよね」

まどか「わたしたち、本当の気持ちを伝えられなくてフィギュアを買ってたけど……」

まどか「でも、本当に付き合えたんだし…今持ってるのってどうしたらいいのかな?」

ほむら「そうね…少なくとも、好きと言えないからって理由はなくなってしまったし……」

まどか「いつまでも持ってるのもあれだし、返品とか廃棄…する……?」

ほむら「返品はまだしも、廃棄は…しづらいわね。まどかのフィギュアであることに違いはないから……」

まどか「だけど、ほむらちゃんと付き合えたのにフィギュアは手放したくないなんて…わがままだよね……」

ほむら「……いいんじゃないかしら、それで」

まどか「えっ?」

ほむら「何も無理に手放す必要はないと思うわ。これを持ってて、不利益があるわけじゃないのだから」

まどか「ほむらちゃんはそれでいいの……?付き合ったのに、わたしがフィギュア持ってて」

ほむら「私はそれで構わないわ。だって、私のことが大好きでそれを持ってくれてるんだもの」

ほむら「むしろ…手放したりしないで、ずっと持っていてほしいと思ってるわ」

まどか「そ、そっか。じゃあ…大切に持ってることにするね」

ほむら「えぇ。私もまどかのフィギュア、大事にするわ」

まどか「……わたしのことは大事にしてくれないの?」

ほむら「言うまでもないことじゃない。どんな宝物よりも大事にしてあげるから」

まどか「えへへ……」

ほむら「……少し恥ずかしいわね。ついさっきまでは想ってる人、慕ってる人のフィギュアだったのに」

ほむら「今はもう、付き合ってる恋人のフィギュアになったのよね……」

ほむら「ただ、どちらかと言えば嬉しい気持ちの方が大きいんだけど」

ほむら「……ふふっ、何だかおかしいわね、私たちって。お互いのフィギュアを持ってる恋人なんて、聞いたことないわ」

まどか「普通の恋人だったら、絶対ないことだもんね」

ほむら「確かにちょっと変わってると思うけど、私はこれがいいわ」

ほむら「好きな人…付き合ってる恋人のフィギュアを持ってる、今のままが……」

まどか「わたしも。わたしのをほむらちゃんが持って、ほむらちゃんのをわたしが持って……」

まどか「他の人から不思議に見られても、わたしはとっても嬉しいことだって…そう、思うんだ」

ほむら「……ありがとう。まどか」

まどか「ほむらちゃんの気持ちもちゃんと聞けたし…わたし、そろそろ帰るね」

ほむら「えっ?あ、あぁ…もうこんな時間だったの、気づかなかったわ」

まどか「明日からの学校も…友達としてじゃなく、恋人としてになるんだよね」

ほむら「そうなるわね……」

まどか「あ、でも今まで通りにしないとだよね。べたべたしてたら気づかれちゃう」

ほむら「私は気づかれたら気づかれたで構わないわ。まどかも無理に隠そうとしなくても大丈夫よ」

まどか「そう?なら、遠慮せずに恋人らしくするよ」

ほむら「えぇ。私もそうさせてもらうわね」

まどか「……さて、と。それじゃ、わたしはこれで」

まどか「付き合って最初の夜だからか、離れるのが少し寂しいけど…明日また会えるんだもんね」

ほむら「また明日、学校で会いましょう」

まどか「あ、あの…ふ、不束者だけど、これからよろしくね」

まどか「……そ、それじゃっ!また、明日っ!」

ほむら「まど…ふふっ、不束者だなんて……」

ほむら(まどかも言ってたけど、明日からの学校は友達じゃなく、恋人としてのものになるのよね……)

ほむら(私たちのことも、さやかたちなら悪く言ったりはしないだろうし…きっと大丈夫……)

ほむら「明日からがとても楽しみね。今までの毎日とどう変わるのか……」

ほむら「……そうだ、せっかくなんだしクローゼットにしまったりしないでケースでも買って飾ってみようかしら」

まどか「……」

まどか「わたし、ほむらちゃんと…付き合えたんだよね。夢なんかじゃなくて、本当に……」

まどか「明日…実際はさっき告白したときから、わたしたちは恋人に……」

まどか「……あぁもう。ダメだよ、嬉しすぎてニヤけちゃうよぉ」

まどか(ほむらちゃんは気づかれたら気づかれたでいいって言ってたけど)

まどか(わたしは…さやかちゃんたちにどう思われるのか気になっちゃうな……)

まどか(みんなのことだから心配しなくてもきっとわかってくれると思うけど……)

まどか「……ま、なるようになるよね。それにほむらちゃんも一緒なんだから」

まどか「それよりも…早く会いたいな……。今日は告白しておしまいだったし、これから恋人らしいことも……」

まどか「うぇへへへへ……」

――数日後――

さやか「……」

マミ「えーと……」

杏子「で?これは一体どういうことなんだ?」

さやか「い、いやぁ……。何と言ったらいいのか……」

マミ「最近あの2人が随分と仲がいいからどうしたのか聞いてみたのよ」

マミ「そしたら何でも少し前から付き合ったって……」

杏子「付き合った、ねぇ。アタシはあいつらがいいなら文句言う気はないけど……」

さやか「それに関してはあたしもマミさんも同意見なんだよ。ただ……」

まどか「ほむらちゃん、あーん」

ほむら「あむ…うん、美味しいわね」

まどか「ねー。まぁ、わたしが作ったわけじゃないんだけど」

ほむら「それで、何の話だったかしら?」

まどか「ほら、わたし可動のフィギュア持ってたでしょ?あれから自分のも買ったんだよ」

ほむら「まどか自身の?それはまたどうして……」

まどか「せっかくほむらちゃんと恋人になれたからね。こっちも一緒の方がいいと思って」

まどか「それに、これでほむらちゃんと恋人らしいことをさせてみたりしてるんだ」

ほむら「ふふっ。もう、まどかったら……」

まどか「ほむらちゃんはあれから何か買ったりした?」

ほむら「いくつか新しいものを増やしたわ。2つしか持ってなかったのもあって、少し寂しかったから」

まどか「そうなんだ。どんなの?」

ほむら「奮発して3つも買っちゃったのよ。えっと、確か携帯にそのとき撮った画像が……」

まどか「わ、何このケース。いつの間にかいい感じになってるよ」

ほむら「出しっぱなしじゃかわいそうだし、この方が見栄えもいいから。で、これが新しく買った3つね」

まどか「ひとつが水着で、もうひとつが浴衣…あれ、これは?」

ほむら「それは舞妓…のようなものね。私がそんな感じでイメージしたものだから」

まどか「へぇー……。素敵だと思うけど、何かちょっと派手すぎない?」

ほむら「そんなことないわ。こんなによく似合ってるじゃない」

まどか「……えへへ、ほむらちゃんにそう言ってもらえると嬉しいな。ありがとう」

ほむら「お礼は言わなくていいのよ。私はまどかには着物が似合うと思ったから、これにしたんだもの」

ほむら「もっとも、まどかに似合わないものなんてないけれど。女神のドレスも、水着だってとても可愛らしいわ」

まどか「も、もう。いくら恋人でもそんなこと言っちゃダメだよ、恥ずかしいよ……」

ほむら「あら、ごめんなさい。でも、本当のことなんだから仕方ないじゃない」

まどか「でも、着物かぁ。わたし、ほむらちゃんも似合うと思うな、黒くて長い着物映えする髪型だし」

まどか「……わたしも着物のほむらちゃんを作ってもらおうかな。フィギュア、びっくりするくらい安くなったもんね」

ほむら「私たちを利用しようとしたんだから、当然よ。私たちに売っていたのも、結局裏があってのことだったんだから」

ほむら「それに、あいつはあいつで感情の研究が捗るとか言ってたし、お互い不利益はないからこれでいいのよ」

まどか「あはは……。でもまぁ、わたしもこの値段で買えるようになったのは嬉しいかな」

杏子「……あの2人はさっきから何の話をしてるんだ?」

さやか「杏子が来る前からずっとあんな調子でさ……。2人が好きなら、あたしもマミさんもそれでいいんだけど……」

マミ「2人は…付き合ってるんだから、ここが私の家だとしても2人の世界を作ってベタベタイチャイチャするのはわかるのよ」

マミ「だけど、まさかイチャイチャしながらあんなディープな話するとは思わなかったわ……」

杏子「フィギュアってアレだろ、よくゲーセンのクレーンゲームの景品になってる」

さやか「そう、それ。話を聞く限り、あの2人キュゥべえからお互いのフィギュアを買ってるみたいなんだよ……」

杏子「……ちょっと意味わからん。そんなもんなくたって、もう付き合ってんじゃねぇか」

マミ「わ、私たちに言われても困るわ……。特に隠すわけでもなく普通に話し始めたから、私たちも困惑して……」

さやか「好きな人の持ち物が欲しいとかならわかるんだけど、さすがのあたしもこれは理解できない……」

ほむら「……そうだ。インキュベーターに本物の衣装を用意させるのはどうかしら?」

まどか「あ、それいいかも。聞いてみないとわかんないけど、キュゥべえのことだからできるだろうし」

ほむら「まどかには是非この着物と女神のドレスを着てもらいたいわ」

まどか「だけどこの女神の服、胸元がざっくり開いてるし……」

ほむら「それを言うなら私の悪魔の服も大概よ。背中側がら開きじゃない」

まどか「……まぁでも、ほむらちゃん以外に見せるわけじゃないし…別にいいかな」

まどか「わたしだけっていうのも恥ずかしいから、そのときは一緒に着てくれる……?」

ほむら「えぇ、勿論。一緒に女神と悪魔になりましょう」

杏子「……フィギュアの話してたと思ったら今度はコスプレの話かよ」

さやか「あー、ダメ。あたしもうついていけない……」

マミ「私も……。こんな話をする恋人、見たことも聞いたこともないわ……」

杏子「アタシも付き合いきれないよ、こんな色んな意味でのバカップルには……」

マミ「……フィギュアもコスプレも私たちには理解できない話でも、それを否定しなければいいわよね」

杏子「だな。話は理解できなくても、付き合ったことを祝福して、幸せを願って見守ってやろう」

さやか「そうしよっか。……全く、この2人は」

ほむら「まどか……」

まどか「ほむらちゃん……」


Fin

これで完結です
最後まで読んでいただき、ありがとうございました

ちなみに作中に出てきたフィギュアの参考元ですが

まどかが買ったもの
プライズの黒ワンピほむら
マックスファクトリー figma 暁美ほむら
グッドスマイルカンパニー 暁美ほむら
ギフト 暁美ほむら
ウェーブ 暁美ほむら 水着Ver
ウェーブ 暁美ほむら BEACH QUEENS
アニプレックス 悪魔ほむら

まどかが買おうとしてやめたもの
2011年1番くじプレミアム B賞 暁美ほむら
アニプレックス 暁美ほむら 時間遡行Ver

ほむらが買ったもの
グッドスマイルカンパニー 鹿目まどか
グッドスマイルカンパニー アルティメットまどか
ウェーブ 鹿目まどか BEACH QUEENS
フリーイング 鹿目まどか 浴衣Ver
アニプレックス 鹿目まどか 舞妓Ver

となります
詳細は画像検索してみてください

読んで下さった方、感想頂けた方、本当にありがとうございました
書きあがって推敲が終わってから発表されたルミナスフィギュア…もっと早く言ってくれたら

・次回予告

まどか「100+50の質問」

タイトル未定 夏っぽいやつ

ほむら「バトルメイド暁美」


またクロスものを書きたいこのごろ
候補は某ブラウザゲームか某ハンティングアクションゲーム
以前の作品の予告で書いたディスガイアは5が出ちゃったしスパロボっぽいのは機体が決まらない

またどこかで見かけたらよろしくお願いします

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