【安価】世界平和は君の手に (79)

昔々、勇者に封印されし魔王がおりました。

昔々、第四惑星の宇宙人は星々を彷徨い歩いていました。

昔々、地球の地下深く充電中の古代兵器がありました。

昔々、闇夜に紛れる大怪盗が……

今は今、これは世界を守る物語でございます。


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エントランス

受付さん「おはよーございます、新人さん。未曾有の危機が日替わりで訪れる職場へようこそ!」

???「………」

受付さん「えーと、世護隊に配属の方でしたよね? 確か、名前は…」


【履歴書】(指定にそぐわないものは安価下と扱う)
下1…名前、性別、年齢
下2…性格
下3…特殊能力(個人に扱える範疇に限る)
下4…容姿

受付さん「まぁ、細かいことは気にしなくていいですかね! ホールにて隊長から説明がありますのでお進み下さい」


【履歴書】
丹波俊郎 24歳 男
無気力だが割とお人好し
能力 気配を敏感に感じ取れる
容姿 少々老け顔

受付さん(ふふふ、彼が上手くやっていけると良いんですが)


丹波「校長先生のお話みたいなのは昔から苦手なんだよなぁ…はぁ」

ホール

隊長「えー…諸君、地球の危機に良く集まってくれた。私がこの世護隊の隊長だ」

丹波(…………えーと)

隊長「知ってはいると思うが、3年前のスメラギ流星群の日に世界はただ在るものから脅かされるものにシフトチェンジした。何に脅かされているかといえば……人の理を外れた存在 ジンリガイ だ」

丹波(面倒くさいがツッコんだほうが良いんだろうか)

隊長「まぁ、一般常識だが宇宙人、怪獣、超能力者、UMA…大体、オカルト系の胡散臭いものがジンリガイに該当する」

丹波「あの…」

隊長「そしてその中でも私達の部隊は地球の命運に関わる特級ジンリガイの対応を任されているのだ!」

丹波「あの、隊長…」

隊長「なんだ、今、大事な所なんだが!」

丹波「【下2】」

1、集まってるの三人しか居ないんですけど……他の隊員は?

2、こんなチビっこいのが隊長なわけないだろ

3、ダルいんで自室に帰ってもいいッスか?


丹波「集まってるの三人しか居ないんですけど……他の隊員は?」

隊長「他など居ないぞ?」


丹波「は?」


隊長「私たちの部隊は精鋭部隊だからな、はっはっは」ぺか-

丹波「いやいやいや、いくら何でも少なすぎるだろう!?」

隊長「新人のくせにびゃーびゃー言うなーっ!!…うぐぐ、うちは予算があまりないのだから仕方がないのだー!!」すたたたた

丹波「あっ、逃げやがった」



シーン……。



丹波(えーと……取りあえず同僚になるんだし軽く自己紹介ぐらいはしとくべきなのか?)


誰に話しかける?…下2


1、短髪スパッツ

2、おとなし眼鏡

3、筋肉モリモリのマッチョマン


丹波「俺、丹波俊郎…あんたもここに居るってことは世護隊なんだよな?」

眼鏡「は、はい…えっと、その」

丹波「……?」

眼鏡「わ、私は口下手でして、その履歴書の方を見ていただけると幸いでひゅッ」

丹波(……盛大に噛んだな)

眼鏡「あうぅぅ……////」プシュー


【履歴書】(指定にそぐわないものは安価下と扱う)

下1…名前、年齢

性格 おとなしく真面目

下3…特殊能力(個人に扱える範疇に限る)

容姿 ボブヘアーの眼鏡ガール


アリサ「その…技術部から移動してきましたアリサ・隅野・ドーソンです」

ぺこりと挨拶するアリサの姿は成人していてもまだ幼さを感じさせる。

丹波「職業…天才発明家?」

履歴書に目を通す際に丹波の口から思わず言葉が漏れる。
これが研究員や技術員なら視線は素通りしただろうが、なんてったって”天才”発明家だ。

アリサ「そ、それは隊長さんが書いたのでして、私なんかが天才だなんて恐れ多いです…!!」

丹波「でも、発明家なんだろ? 俺は面倒くさがりで学がないから尊敬するぜ」

アリサはその後もあたふたと否定していたが、純粋に丹波の賞賛は嬉しかったのか「うぅ……恐縮デス」…と、最終的には折れたようだ。


丹波「それと…気になっているんだが名前からしてハーフなのか?」

アリサ「あ、はい…母が英国生まれでして…その、変じゃないでしょうか?」

丹波「何が?」

アリサ「えと、目とか青いですし…名前も長くて……」

いつも以上にもじもじと言葉を紡ぐ所からしてコンプレックスな部分なのだろう。

丹波「あー、そういう面倒くさい事は分からねぇけど、眼は普通に綺麗だと思うぞ?」

アリサ「そ、そ、そうですか……////」

ぷしゅーと顔を赤らめてるアリサを尻目に、丹波は残る同僚に目を向けていた。


丹波「さてと、次はどっちに話しかけ……」

ウー!ウー!ウー!ウー!ウー!ウー!!

もう一度、周りを見まわそうと顔を上げると大音量のサイレンと共に間の抜けた隊長の声が響く。

『わーにんぐ!わーにんぐ!わーにんぐ!』

丹波「な、何だぁ!?」

隊長『諸君、初日から働かせて悪いがジンリガイが出現した!』

丹波「!!」

”ジンリガイ”その一言で自分を含め辺りにいた事務職員たちの雰囲気が変わる。

隊長『幸いにも脅威ランクはC! 互いの力量を見定める良い機会だろう……それでは世護隊、出動っ!!』

丹波「ちっ、かったるいが行くしかねぇか…」

アリサ「が、頑張りましょう丹波さん!」

マッチョ「むんっ、中々に滾る」

短髪「…………ぐぅ」

ゴタゴタは嫌いだが世界を守るのに四の五の言ってはいられない。


森林

世護隊専用の航空機で急ぎ向かったのは人払いの済んだ森林である。

受付さん『皆さん、通信に異常はありませんね?』

丹波「あぁ、しっかり聞こえてる」

アリサ「此方も異常なしです」

マッチョ「筋肉的に問題なしだ!」

短髪「…………ぐぅ」

受付さん『今回のジンリガイはコードネーム ワイバーン』

丹波「ワイバーン…?」

受付さん『恐らく外的要因によりトカゲ類がジンリガイ化したものでしょう…それでは今回の指揮は…ザザッ…ザザザ』

隊長『あー、丹波君…さっき、いちゃもんを付けてきた君には現場の指揮を任せるぞ』

…ブツン

回線に割り込んでまで指名してきたあたり隊長は俺に対して私怨タップリなのだろう。

丹波「……了解」

丹波(さて、メンバーのスペックもジンリガイの情報もほぼ不明ときたか……やれやれ、どうしたもんか)


下2…丹波の指揮内容


丹波「とりあえず、全員の得異分野を確認だ…俺は敵感知に特化しているのでレーダー役として動かせてもらう。作戦としては前衛向きのメンバーは茂みで待ち伏せして俺の合図で奇襲攻撃」

アリス「あの、私は…戦闘が苦手なのですが……」

丹波「後衛は通信中継のサポートやサンプルが取得出来た場合に分析して特徴や弱点の解析をしてもらう」

アリス「りょ、了解しました!!」

丹波「えーと…そういや名前も知らないな……マッチョと短髪は速やかに自身の情報を伝えてくれ」


名前、年齢
性格
特殊能力(個人に扱える範疇に限る)
容姿

下1…マッチョマン

下3…短髪スパッツ

木谷ちゃんの性格はこちらで賄わせていただきます。
お手数ながらマッチョマンの履歴書をテンプレで頂けると幸いです。

下1…マッチョマン


イアン「俺はイアン・カーライル、呼び方はイアンでいい。ミスタータンバー、俺の能力は肉体の鋼鉄化だ…好きに使ってくれ俺は攻防どちらにも対応できるカラな!」

その巨躯から粗暴な印象があったが、にっこりと柔らかな笑みもって話す辺り温厚な男なのだろう。

木谷「ん、木谷だよー…えっと、傷とかすぐに治るし、あんまり痛くないかも」

確か、彼女はホールや作戦開始時もぐーすか寝てた気がする、何というか全体的にぽわぽわしている…前衛っぽいが大丈夫なのだろうか?

丹波「じゃあ、アリス以外は奇襲に備えて待機……俺の合図で茂みから飛び出してくれ」

三人「「了解!」」


丹波(五感機能…鋭敏化)



ー グルルルルルルルルルッ!! バサッ、バサッ! グオオオオォォン! ー



丹波「草木で姿は視えないが音で十分に分かる…来る!」

下2…コンマ値=ワイバーンの大きさ

そこそこでかいので長めに書きます。きょうはここまで。


イアン「唸れ、マッスル……アイアンフィストッ!!」

木谷「てやー」

熱くるしい鉄の拳とゆるりとしたナイフ投合が巨大な影に向かい放たれる。

丹波「やったか…!?」

これで終われば丹波は録画しているバラエティー番組をリアルタイムで視聴出来たのだが……やはり、簡単にはいかないようだ。
一瞬、引き下がるも爬虫類の独特な舌先を見せながらワイバーンは現れ出た。

ワイバーン「グギャルルルガァァァーッ!!」

咆哮。

ただ、一声鳴いただけで森に静寂が訪れる。

圧倒的な存在感、まさしく人の理を外れた存在である。

イアン「オー、シット…タンバー、トカゲ野郎は全然応えてないみたいだゼ?」

丹波「面倒くさいが、そうみたいだな…木谷、ナイフの刺さり具合はどうだ?」

木谷「むー、さっきちょだけかなー」

木谷は血の付いたナイフを眺めて訝しげに答えた。

丹波「あれ、さっき投げたナイフをもう回収したのか?」

木谷「んにゃ、木谷のナイフにはどれもワイヤーを付けてあるから巻き取って回収したんだー」

木谷の腰では小型の巻き取り機がキュルキュルと音を立てナイフを集めている。
切っ先はどれも血に濡れているが柄まで達した物は見受けられない。

丹波「……これだけあればサンプルとしては充分か。 木谷、そのナイフに付いた血液をアリサに解析してもらいたいから戻ってくれるか?」

木谷「了解、二人はー?」

丹波「俺とイアンは此処で解析までの時間を稼ぐ」

イアン「オーケー、タンバー!!」

文句一つ言わずにイアンは巨獣の前に踏み出した。
俺なら数時間はごねてただろうに…。

木谷『こちら、木谷ー…アリサちゃんに血液サンプルを届けに戻るよー』

アリサ『了解…血液ですね! 解析機材を揃えてお待ちしてます』

後退する木谷を見送り、丹波はゆらりとナイフを構える。

丹波「それじゃ、なるたけ頑張らずにダラダラとやるか!」


敵とみなしたのか、餌とみなしたのか…細かい事は分からないがワイバーンがこちらへ向かってくる。

丹波「うーわ、改めて見てもおっかねぇな。あーあー、涎だらだら流してくれちゃって……こっちだ、こっち!」

ダンプカーの様な突進をわざわざ待つ事もなく、丹波は手を叩きながらワイバーンの背後へ走り出す。

ワイバーン「グギャルル!」

目の前の獲物を追うようにワイバーンも身体の向きを変えて再度、突撃。

イアン「ヘイ、ビッグリザード!! こっちを見てないのは無用心ダナ!!」

ワイバーンの視界から外れたイアンがレスリングの要領で片足にしがみつく。
伝承にて語られるワイバーンと同じく、このジンリガイの見た目は前脚が翼となった巨大なトカゲ、股下に手を伸ばす事は叶わない。

イアン「ふんっ、うおぉぉぉぉっ!!!」

ワイバーン「ギュアァァァァ!?」

雄叫びを上げてイアンが翼竜の片足を持ち上げていく。
元々、地上でバランスよく走る骨格ではないワイバーンはぐらりと身体を傾かせ地面へ倒れ込んだ。

丹波「よしっ、そのまま決めちまえ!」

イアン「あー、タンバー…悪いが抑えつけるので手一杯、胸一杯ダ!」

身体を鋼鉄化させワイバーンの足にしがみ付くイアンの姿はさながら罪人用の足枷。
此方からは決定打を出せないが見事にワイバーンを無力化している。

丹波(俺の力じゃあ、奴の防御を穿つのは難しい)

丹波(イアンのスタミナが切れる前に間に合ってくれればいいんだが……)

ワイバーン「ゴガアァァァァァァッ!!」


その頃、サンプルを届けに向かった木谷は…

木谷「アリサっち、持ってきたよー」

ナイフとワイヤーを駆使した高速機動で木々の合間を飛び抜け、後衛の待機ポイントまで辿り着いていた。

アリサ「木谷さん、こちらの機械にナイフをセットして頂けますか?」

木谷「はいはいー、それっ!」

すっぽりとナイフを納めた機械は駆動を始め、解析結果をモニターに映し出す。

アリサ「なる程……やっぱり、DNAの配列から分かりますが異世界生物ではなく原生生物の変異体…体構造は地球の蜥蜴と何ら変わりないと思われます」

木谷「なるほどー」

直ぐ様、考察を始めるアリサを傍目に木谷の視線は岩場に居た小さな蜥蜴に集められていた。

アリサ「初撃の反応から察するに…ワイバーンは硬い鱗と弾力のある皮膚を持っていますね…」

木谷「………てりゃっ!」

アリサ「木谷さんのナイフは鋭利であっても威力不足……でも、血液に毒性も検出されてるからイアンさんに直接的な攻撃はさせられない」

木谷「んふー…お腹プニプニだねぇ、キミ」

アリサ「うーん、丹波さんはあくまでサポート役ですし…って何をしてるんですか、木谷さん?」

木谷「トカゲっちのお腹プニプニだよー、アリサっちもプニプニしよーよー!」

アリサ「そんなことしてる場合じゃ…お腹……それです、木谷さん!!」

木谷「ぷにぷに…?」


再び、時間稼ぎをしている丹波達はというと…

イアン「ぬうぅぅ…」

ガキンッ、ガキンッ、森に不釣り合いな金属音が木霊する。
片足にしがみ付いた異物を引き剥がそうとワイバーンが岩に自らの足をぶつけているのだ。

丹波「絶対に離すなよ、イアン!」

イアン「わ、わかっているが…衝撃が……ぐおぉぉぉっ!!」

イアンは身体を鋼鉄化させている為、ダメージは無いに等しい。
しかし、イアンの純粋な筋力のみで行われている鉄の拘束は徐々に緩みだしていた。

丹波「駄目なのか…!!」

アリサ『お、お待たせしてすいません!』

丹波「!!」

通信が繋がり、絶望に向かう流れが希望へと変わっていく。

アリサ『解析の結果、ワイバーンの血は毒性を含んでいることが分かりました』
アリサ『更に筋肉と鱗の鎧は生半可な攻撃を無効化させてしまいます…しかし、腹部の皮膚は柔らかい事も判明しました』
アリサ『ですので、今回は中距離一点突破兵装を用意させていただきました!!』

通信が切れると同時に木々の陰から人が飛び出した。

木谷「みんなー、丸太は持ったー?」

謎の人影は背中に何かを背負った木谷だ。

丹波「な、なんだ…その機械は!?」

アリサ『工事用杭打ち機を改造、小型化した兵装、ドラグーンパイルです』
アリサ『機械を相手の身体に密着させ高速で鉄杭を放つ近接兵装…その一撃は有無を言わせぬ貫通力となっています!』

木谷「木谷が振り回すには重過ぎるから…丹波っち、パース!」

軽快な兵装説明がアリサの口から放たれ、木谷から丹波へ無造作に秘密兵器が投げ渡された。

丹波「お、俺が最後を決めるのかよ?」

アリサ『丹波さんの能力ならば正確に心臓を探し当てて貫ける筈です!!』

イアンに目を向けるも拘束に手一杯、木谷には扱えぬ重量、アリサに関してはこの場に居ない……適任が丹波だけなのは火を見るよりも明らかである。

丹波「……ぐっ、やってやらぁ!!」

丹波(聴覚機能を高め…視覚で奴の動きを見極める…)

ドクン…ドクン……!!

丹波(聞こえる、聞こえるぞ!!)

ワイバーン「ゴギャァァァァァッ!!」

イアン「タンバー、もう…げ、限界だっ!?」

遂にイアンの拘束を振り解きワイバーンが距離を取ろうと翼をはためかせた。
それと同時に丹波はワイバーンの胸部に向け飛び込んでいた。

丹波「逃がすかよッ、穿てドラグーンパイル!!」

プシュー………ガゴンッ!!

ドラグーンパイルの蒸気機関が唸りを上げる。
丹波は間一髪の所で鉄杭をジンリガイへ打ち込んだのだ。



丹波の一撃(コンマ値が高いほど高精度)…下2


コンマ76…良

ワイバーン「グッ……ガァッ…」

ズズンッ……

正確に心臓部を貫かれたワイバーンはその動きを停止させた。
胸から流れ出た毒の血はドラグーンパイルの吸引機を経由しタンクに溜め込まれる。

丹波「はぁ、はぁ……ははっ、やったぞ」

まるで他人事のように笑う丹波。

アリサ『やりましたね、みなさん!』

素直に勝利を喜ぶアリサ。

イアン「イヤー、ハッハー!!」

笑顔でダブルバイステップを決めるイアン。

木谷「……おー、ビクビクだぁ」

無邪気に横たわるワイバーンをペタペタと触る木谷。

統一感のない集まりだが世護隊の晴れある初出撃は大成功の内に幕を閉じたのであった。


?精度 良 の為 ワイバーンの血液を入手しました

?ドラグーンパイルが使用可能となりました

?ランクC ワイバーンの討伐実績を入手しました


【次回予告】

無事にジンリガイを撃退した世護隊の面々。

やんややんやと浮かれムードで過ごしているが、新たな危機が迫っているぞ!

次回 【下2】

1、脱落必至 隊長のウルトラハードトレーニング

2、ランク不明 謎の出会いにご用心!

3、網と肉と食い意地の戦い


本部から離れ、世護隊は一軒の飲食店に集められていた。

隊長「うむ、ジンリガイ討伐ご苦労様である…今日は私の奢りなので存分に食べたまえ!」

受付さん「焼肉食べ放題ですから存分にお楽しみ下さい♪」

丹波「うっし、食うぞー!!」

イアン「はっはー、極厚のステーキはあるカナ?」

アリサ(タンパク質の取り過ぎを防ぐ為に…ニンジンは火を通すと……)

各々が好きな物を取りに席を立ちさる。

受付さん「…いきましたね」

隊長「あぁ、私らも準備を始めるとしようか」


木谷「んにゃ?」

タレの魔改造に勤しむ木谷を他所に隊長達も席を離れた。


丹波「にしても、隊長も太っ腹だよなぁ」

アリサ「ジンリガイのせいで生産が不安定なのに食べ放題店で打ち上げですからね」

イアン「値上げの波は庶民のライフを削りマース」

ひょいひょいと取り皿に肉や野菜を乗せながら丹波達は世間話に花を咲かせていた。

丹波「他に客が見当たらないのはそのせいかもな」

アリサ「あっ、丹波さん…お肉ばかりではなくお野菜もキチンと取って下さい!」

丹波「せっかくの食べ放題なんだからケチケチすんなって…いてっ」

ぼすっ。

丹波が小言から逃げ出す様に廊下の角を曲がると何かにぶつかる。

丹波「前見てないで歩いてて、すまねぇ……?」

恐らく他の客だろうと思い。謝りながら丹波は衝突した相手に目を向ける。

下1……そこに居たのは?


そこに居たのは?

ヨマモリくん「ヨマー」

ぷにっとボディで世を護る、みんな大好きヨマモリくん!!

丹波「……えっ」

彼はのほほんとした顔付きと手に持つ血塗れたナイフのアンバランスさが売りの世護隊公認ゆるキャラなのだが、何故にこの店を彷徨いているのだろう。

アリサ「隊長がお呼びしたのでしょうか…?」

ヨマモリくん「……ヨママー」

首を傾げて此方を見つめる姿はマスコットとして百点の可愛さだろう。

アリサ「愛らしいですね、丹波さん!」

丹波「あ、あぁ…」

着ぐるみがゆらりと丹波に近付いてくる。


丹波「どうかしたか?」

ヨマモリくん「ヨーマッ!!」

淡白な動きから一変、ヨマモリくんが丹波に向けてナイフを振りかざしてきた。
静から動へ移る速さはハシビロコウやカエルの捕食を思わせる。

丹波「なっ、危ねぇ!?」

それを丹波は超直感を用いて、間一髪の所で避けた。
着ぐるみにサイズを合わせたナイフはまるで鉈のように大きく物々しい。

イアン「タンバー、相手は着ぐるみ、ノットスケアリーだぜ?」

丹波「馬鹿野郎っ、床を見てみろ!!」

イアン「!?」

普通、着ぐるみの持つ武器は子供が近付いても良いように柔らかい材質で作られている。
しかし、ヨマモリくんの巨大ナイフは明らかに木製の床を貫いて突き刺さっているのだ。

アリサ「ジ、ジンリガイでしょうか!?」

丹波「さぁな、面倒ごとなのは一目瞭然だ」

ヨマモリくん「ヨー……マッ!!」

肝心の相手は床に突き刺さるナイフを引っこ抜こうと悪戦苦闘していた。

イアン「やるか、タンバー!」

アリサ「ここは一旦逃げるべきです」

丹波(どうする…)

下1

1、戦闘
2、逃亡
3、その他


丹波「いや、ここは理性的に話し合いをするべきだ!」

アリサ「えぇっ!?」

イアン「イッツ、ジョーク!?」

どちらの提案も断り、丹波はヨマモリくんの前に出た。
丹波は無謀にもこの謎生物と対話をこころみるようだ。

丹波「えーと…ヨマモリ!」

ヨマモリくん「ヨマー?」

自分の名前に反応したのかヨマモリくんが此方に目を向けている。

丹波「お前は世護隊の一員なんだから、馬鹿な事は止めるんだ!!」

ヨマモリくん「………」

丹波「俺らは仲間だ!!」

ヨマモリくん「………」

下1…ヨマモリくんの反応

コンマ80以下…説得失敗

コンマ80以上…おや、ヨマモリくんの様子が!?


ヨマモリくん「ヨマッ!」

ヨマモリくんがナイフ鉈を引き抜くのを止めて近付いてきた。

アリサ「まさかの展開ですか!?」

丹波「アリサ、大事なのは言葉じゃない…魂だぜ」

ヨマモリくん「ヨーマ、ヨーマ…ヨマー!!」

その足取りは軽く、ホップステップジャンプ…からの熱い右ストレートが丹波の腹部に繰り出された。

メキャッ

丹波「ごぶっ…!!」

鈍い音を響かせながら丹波は遥か後方へ吹き飛ばされていった。

アリサ「丹波さーん!?」

ヨマモリくん「ヨママー!」

高らかに右手を掲げ、勝ち誇るヨマモリくんを尻目にアリサ達は撤退を余儀なくされた。


丹波「ぐっ、滅茶苦茶イテェな…ヨマモリの野郎!!」

ガラガラと店の壁だった瓦礫を退けて丹波が立ち上がる。

イアン「大丈夫か、タンバー!」

丹波「肋骨を何本かやってる気はするが、なんとかな」

丹波「あいつの馬鹿力は洒落になんねぇ……何か考えないとヤバいぜ」

アリサ「幸いにも、ヨマモリくんはナイフの回収で追っては来ていません」

丹波「よしっ、アイツから離れながら作戦会議といくか」


下1~3…候補から良さげな作戦を決行


丹波達は元いた座席を目指しながら簡易的なブリーフィングを行なっていた。

丹波「幸いにも、この店には世護隊の主要メンバーが集まってる…束になりゃあ、大抵の奴には勝てるだろ!!」

アリサ「ですが、今は通信機器なんて持ち合わせてないですよ!?」

丹波「あまり広い店じゃねぇんだ…居なきゃ走って探すに決まってんだろ!」

アリサ「えぇ!?」

イアン「あぁ、地道だが確かな方法ダナ!」

先を行く男性陣を見ながらアリサはため息を吐いた。

アリサ「だ、大丈夫でしょうか…私…心配になってきました」


廊下にバキバキと木の割れる音が響く。


ヨマモリくん「………ふぅ、乱雑に暴れすぎてしまったかな」

巨大ナイフを引き抜いた謎生物は流暢な日本語で言葉を紡いだ。

『いや、腑抜けたヒヨッコを脅かすには十分だったぞ』

ヨマモリくん「あー…そう?」

『引き続き、頼むぞー』

ヨマモリ「了解……ヨマヨマっと」

ぽきゅむんぽきゅむんと気の抜ける音を響かせてヨマモリ君は歩き出す。


がらがらっ…

丹波「隊長、緊急事態…だ?」

ようやく座敷に辿り着いた丹波達であったが襖戸を開けるとそこはもぬけの殻となっていた。
あるのはひっくり返った座布団と箸やイアン用のフォークぐらいだ。

アリサ「誰も……い、いませんね」

丹波「チッ、先に襲撃でもされたのか…?」

ばごんっ

イアン「ともかく、タンバー、奴が来るまで此処に留まるのは良くないゼ」

丹波「あぁ、早い所移動しよーー」

ばごんばごんっ!!

イアンと丹波の間の壁をぶち抜いて、ヨマモリくんが再び現れる。

丹波「各自、離脱態勢を取れ…無理に戦うな!!」

イアン「わかってル」
アリサ「了解です!」

ヨマモリくん「ヨーマー」

丹波(イアン達は部屋の出口付近に居るから良いが…俺はどうしたもんかな)

(丹)(ヨ)【出口】(イ)(ア)

下1…丹波の行動









丹波(さっきみたいな一撃をもらうのはマズい、先手必勝!)

丹波は投げナイフの要領で卓上のフォークをヨマモリくんの背中に投げつける。

ヨマモリくん「……?」

ぽにょんと弾き返されたナイフが床に落ちる。

丹波(柔らかボディ過ぎるだろ…!?)

ヨマモリくん「ヨマー!」

振り向いたヨマモリくんが左の拳を丹波へ向けて振るう。

丹波「くっ、無いよりは幾分かマシだよ…なっ」

それに対して丹波は幾枚かのを座布団を盾代わりに迫る拳へ投げつけた。

ヨマモリくん「ヨマッ!?」

飛来物に驚きながらもヨマモリくんは器用に座布団を叩き落としていく。


粉砕された座布団からバラバラと羽毛が舞った。

ヨマモリくん「ヨママ!! ヨ、マ、マ…うわわっ!?」

どうだと言わんばかりの鳴き声(?)をあげたヨマモリくんであったが、その身体はずるりと後ろへ倒れこんだ。

丹波「ふぅ、囮の座布団に喰いついてくれて助かったぜ…」

アリサ「い、いったい何をなされたんですか?」

丹波「座布団を投げる時にアレをばら撒いておいたんだ」

丹波の指差した方を見ると鉄箸が地面に散乱していた。
どうやら、ヨマモリくんは小躍りしている際に即席鉄箸ローラーで滑ってこけた様だ。

丹波「イアン、重石と拘束を…」

イアン「ワカッテいるとも!!」

パキパキと身体を鋼鉄化させたイアンが此方を見てニカりと笑う。
倒れこんだヨマモリくんに大の字でのし掛かるイアンの姿は…某ジ◯リ作品のワンシーンに酷似していた。

ヨマモリくん「ヨマー!ヨママー!」

ヨマモリくんが短い手足をジタバタと暴れさせるもひっくり返った亀の如く起き上がる事は叶わない。

アリサ「ど…どうします……コレ?」

丹波「決まってんだろ…【下2】」


1、危険なジンリガイは討伐だ

2、拘束して他のメンバーを探すぞ

3、ツラを拝ませてもらうんだよ

4、その他 も 可。


丹波「ヨマモリよぉ……お前、倒れる時にうわっ…って言ってたし中に誰か居るんだよなぁ?」

ヨマモリくん「ヨ、ヨマッ!?」

コンコンとヨマモリくんの頭部をノックする丹波の姿は完全に悪役である。

アリサ「丹波さん、中の人とか夢のない事を言ってはいけませんよ?」

丹波「知るかよ、俺は焼肉食い放題を肋骨折りパーティーにされて気が立ってんだ!!」

スポッと被り物の頭が宙を舞う。

ヨマモリくん「あぁっ!!」


アリサ「これは……!?」

下2…ヨマモリくんの中身

1、歯車やネジが詰まっている

2、小柄な人間が入っている

3、その他


ヨマモリくん『あーあ、もうバレちゃったかー』

非生物だと一目でわかるほどにヨマモリくんの体内には歯車やネジが詰め込まれている。
そんなヨマモリくんの内部スピーカーから残念そうな声が響く。

丹波「誰だ…手前」

ヨマモリくん『んー、機転は効くけど詰めが甘いかなぁ』

丹波「だから、お前は誰だって…ッ!!」

怒鳴り付ける丹波の首筋に冷たいものが当たる。

ヨマモリくん『こういうタイプなら換えの機体を用意してるって予想しておかなきゃー』

細身の機人が突如として現れ、メンバー全員の首筋にナイフを向けていた。

丹波「………面倒くさいが降参だ」

ヨマモリくん「…じゃあ、死のうか」

ヨマモリくんの号令に合わせて機人が一斉にナイフを振り下ろす。

イアン「オーマイガッ!!」

アリサ「きゃっ」


世護隊の面々は血だまりに横たわる……事はなかった。

アリサ「あ、あれ?」

ヨマモリくん『あははっ、安心してよ。パーティー用の引っ込みナイフさ』

丹波「隊長…近くに居るんだろ?」

隊長「ん、気付いてたのか…よっと」

座敷の掛け軸からひょっこりと受付さんと隊長が姿を見せた。

アリサ「えっ、なんで…あっ、危険です隊長さん!」

丹波「落ち着け、俺らは隊長に一杯くわされたんだよ」

大きな溜息をつく丹波をニヤニヤと見ながら隊長は話し出した。

隊長「はっはっは、たかだかワイバーン如きを退けた程度で私が奢るわけないだろう。これは緊急時を想定した訓練だよ」

イアン「じゃあ、あのスケアリードールは何なんだ!?」

隊長「彼女は…あー、名前は秘密にしてほしいんだっけか」

ヨマモリくん『秘密の方が面白いでしょ?』

隊長「まぁ、私の古い友人だ。今回の訓練で擬似ジンリガイとして動いてもらった」

丹波「………」

隊長「今日は自分の未熟さを痛感した事であろう……それをどうするか考えて明日から過ごすこと、以上解散!!」

拍子抜けながらも苦虫を噛んだ様な形で世護隊の焼肉パーティーは幕を閉じた。


木谷「…むにゃ」

因みに行方知れずの木谷は店外の原っぱで爆睡していたらしい。


下1 …次の日の丹波の行動

1、戦闘訓練

2、仲間との交遊を深める

3、資料閲覧


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