胸糞展開、アイドルの性格改変有ります。閲覧注意でお願いします。
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「おめでとうございます!美優さん!!」
「幸せになってね、美優」
私の周りを囲んで、他のアイドルの皆が口々に私を祝福してくれる。
私、三船美優が、プロデューサーさんと結婚することになり、今日、他のアイドルの前でその事を発表した。
プロデューサーさんは多くのアイドルをプロデュースしており、
その何れの娘からも深い信頼と愛情を受ける優秀なプロデューサーである。
だから、当然私にはライバルが多かった。
皆それぞれに魅力的な子達なので、私がプロデューサーに選ばれたのは今でも何かの間違いではないか、
と考えることがある。
主に歳が近く、好みも考えも非常に似通っていたのが彼の傍に居れた理由なのかもしれないな、
と今ではそう思ったりもしているが。
他のアイドル達も皆、それぞれ複雑な感情を胸に抱えている事だろうが、皆一様に祝福してくれた。
私は隣で笑顔で微笑むプロデューサーに少し微笑むと、
「みんな…本当にありがとう……、私、幸せになります…!!」
と、涙ぐみながら皆に宣言した。
次々に祝いの言葉を投げてくれるアイドル達の手を、一人一人握り返しながらお礼を言っていると、一人の少女が私の目の前に立った。
「美優さん…、ご結婚おめでとうございます」
そう言ったのは年少組のアイドルの一人、橘ありすちゃんだった。
「あ…ありすちゃん…、ありがとう…ね?」
ぎこちなく挨拶を返した私は、自分の内心が相手に伝わらない様に取り繕うのに必死だった。
と言うのも、私三船美優はこの少女、橘ありすが如何しようもない位に苦手だった。
もちろんありすちゃんが私に何かした訳ではない。
もし彼女と同年代だったら、この年齢でトップアイドルの一角に輝く程の容姿と才能に恵まれた彼女に、嫉妬の一つでも覚えたかもしれない。
だが、下手したら親子ほどの歳の差である。
そんな感情はとても湧いて来なかった。
ただ私がありすちゃんを苦手なのは、私の勝手な感情。
私の幼い頃の、暗い暗い水底に沈んだある出来事の所為だった。
あれは十数年前。
私が丁度、目の前にいるありすちゃん位の年齢だった頃の話だ。
私の故郷の山形では、今程ではないが過疎化が徐々に進み、子供も少なくなり学年の子供達が全員顔見知りの様な状態だった。
そんな中でも、同じ町内で同学年の、ある「少女」と私が、仲良くなるのは半ば当然のことだった。
仲が良かった…のだろうか??
今でも時々疑問に思うことがある。
「少女」と私の関係は、まるでお姫様と姫に仕える召使いのそれだった。
彼女は、彼女のご両親が相当年齢が行ってから苦労して授かった一人娘だったらしく、
かなり溺愛されて育てられたようで、服装はまるでお姫様が着るようなフリルの付いた青いワンピースを何着も所持しており、
振る舞いもそれに相応しく、我儘勝手なお姫様のように周りに振る舞っていた。
自然、クラスからは浮いた存在となる。
。
一方私はと言うと、一般家庭に生まれ、普通に育った普通の少女だった。
そんな私の存在を面白く思ったのか、はたまた自分を引き立てる良い素材になると思ったのか、
彼女は私に接近してきて、私を横に連れ歩くようになった。
押しの弱い私にそれに逆らう事など出来ようも無く、唯々諾々と従うようになり、私たちはいつも二人で行動するようになった。
自然、派手な彼女の横に並ぶと、普通な私は周りに地味な印象を与える。
子供というものは面白いもので、そういう役割が決まるとそういう形に嵌まってしまうらしく、
私はクラスの中で、以前にも増して地味な存在になっていった。
幼い頃から溺愛する両親に我儘勝手に育てられた彼女は、我慢をする事を一切知らない子供で、周りに対しても常にそう振る舞っていた。
特に所有欲には貪欲で、少しでも自分が欲しい物があると、自分の物にせずにはいられない癖があった。
それがお金で買える物や替えの効く物、給食のプリンや可愛いペンケースなどで済んでいれば、まだ可愛いものだった。
彼女の両親は娘のおねだりに何でも応えていたし、彼女もそれで満足していた。
しかし、それが替えの効かない物が対象になると、当然毎回彼女の思い通りにはいかない。
そんな時の彼女の癇癪は常軌を逸したモノになり、周りを大いに閉口させたものだ。
私も当然、その被害の例外ではなかった。
クラスの席替えの際に、当時淡く思いを寄せていたサッカークラブのキャプテンの少年と隣り合わせになり、
密かに小さな胸を踊らせていた。
しかし、同じく彼に憧れていた彼女に、
「みーゆちゃん!席代わって!?いいでしょっ??」
と、有無を言わさず無理矢理席を奪われた。
とても悲しい思いをした事を、今でも覚えている。
そんな折、私は当時見ていたテレビ番組の、魔法少女アニメの懸賞に幸運ながら当選した。
当時としてはかなり凝った作りの、プラスチックの宝石が散りばめられたピンク色のペンダントで、
当時の私はまるで宝物が当たったかのように大喜びで首に掛け、大いに家族に自慢したものだ。
そのまま秘密にしていれば良かったのだが、子供というものは宝物を手に入れるとどうしても周りに自慢したくなるものである。
私も例外ではなく、特に仲の良かった同じクラスの真子ちゃんだけには、その秘密を明かした。
真子ちゃんもその番組のファンだったので、盛大に喜んでくれ、また同じくらい羨ましがり、私に何度も見せてくれ、とせがんできた。
私も別に嫌ではなかったのでその願いを快諾し、その日の放課後に隣町の真子ちゃんの家まで見せに行くことになった。
だが、私には一つだけ気を付けなければいけないことがあった。
「彼女」も、またその魔法少女番組の大ファンであり、親にせがんで番組の懸賞に何通もの葉書を送っているのは周知の事実だった。
ペンダントを持ち運んでいる所を彼女に見つかりでもしたら、取り上げられるのは火を見るよりも明らかである。
私は、
『みーゆちゃん!』
と、わざとらしく名前を伸ばして呼んでくる彼女の嫌らしい顔付きを思い出し、ぶるっと一つ身震いをした。
私は家に帰ると、大事に勉強机の棚に仕舞ってあったペンダントをハンカチで何重にも包み、
ポケットにしまい込むと手で隠すようにして隣町の真子ちゃんの家まで駆け出していった。
念の為に街中を通らず、自分の街と隣街を隔てる雑木林の池の方へ走っていた。
その池は意外と深く、また湖面に藻が張っているので溺れやすく、何年かに一回、生徒が溺れる事件が起きている。
学校では一人では決して行ってはいけない、行く時は大人と一緒で、と厳しく指導されている曰く付きの場所である。
当然「彼女」とも出会う確率が少ない、とそう思い、この道を選んだのだが、
嗚呼、なんという事だろう。
池に辿り着き、しばらく池のほとりを走っていると、後ろの方から私に声を掛ける人物が居た。
「みーゆちゃんっ!!」
そのわざとらしい伸ばした声に私は背筋を凍らせた。
なんと其処には青いワンピースを着た「少女」が立って居た。
なぜ彼女が此処に???
まるでポケットに隠したペンダントを狙う魔法少女アニメの悪役の様に、
魔力でこの場所を探し当てたとでも言うのだろうか???
子供である私は、混乱した頭でそんな愚にもつかないことを考えつつ、
無意識にポケットの中身をを手で隠した。
そんな私の行動を目聡く見咎めた彼女は、嫌らしく微笑みながら歩み寄って来た。
「みゆちゃんが急いで走っていくのを見て、どこに行くのかなー、と思って追いかけてきたんだけど… 」
そして、まるで当然の権利のように、
「何持ってるの??みーせーてっ!?」
と、私の腕から、ハンカチで包まれたペンダントを奪い取ってしまった。
その中身が、自分も欲しがっていた魔法少女のペンダントだとわかると彼女は喜色満面で、
当然の権利のようにペンダントを自分の首に掛け、こう言ってのけた。
「素敵っ!!私もこれ欲しかったのーっ!! ねえ、みーゆちゃんっ!! このペンダント頂戴っ!いいでしょ!?」
またも彼女はいやらしく伸ばした名前の呼び方で、
恥知らずにも私の手から大事なものを奪おうとしてきたのだ。
その彼女の、ペンダントが自分の物になると言うことを全く疑ってない顔つきに、私は初めて激しい怒りを覚えた。
「だめっ!!返してっ!!」
私は短く叫ぶと、彼女の首に飛びつくように手を伸ばし、ペンダント奪い返そうとした。
まさか召使いも同然の私に、こんなにも激しく抵抗されるとは夢にも思ってなかったに違いない彼女は、
一瞬だけ虚を突かれた様な顔すると、一転、鬼女の様に目を釣り上げて、顔真っ赤にして私に掴みかかってきた。
池の端で彼女と私は必死に揉み合った。
何時しか私は、ペンダントの事も忘れ、ただ只管にこの私の大事なものを奪って行く存在を私の前から取り除こうと、
必死に爪を立てて彼女に突き立てようと闇雲に手を振り回していた。
その試みの一つが偶然彼女の顔面に命中し、私の爪が彼女の瞳にズブリ、と入った。
あの気味の悪い感触は、未だに忘れられない。
その強烈な衝撃に大きく身体を仰け反らせた彼女は、池の縁から足を踏み外しそのまま足を滑らせて水面へと落下していった。
落下といっても、水面から地面まで僅か1メートル程である。
足さえつけば、手を伸ばせば楽々這い上がれる距離だろう。
しかし、池の水深は子供の身長より僅かに深く、少女の足は底に着かず、彼女は片目を抑えながら必死に息をしようと水面でもがいていた。
慌てて地面からしゃがみ込んで、必死にもがく彼女を見下ろす私。
彼女はそんな私を見て、
「美優ちゃん!たすけ、助けてっ!!」
と、叫び、私に向かって必死に手を伸ばしてきた。
私は慌てて彼女に手を伸ばそうとして、そこでふと有る事に思い当たり、その手を止めた。
こんなにも私の大切なものを奪おうとする疫病神を、此処で見捨てさえすれば、
私の今後の人生は何も奪われずに過ごせるのではないか、私はそう考えたのだ。
私は伸ばした手を宙に止めてしばらく考えていたが、手をゆっくりと引っ込め、そのまま眼を閉じて耳を両手で塞ぎ、その場にしゃがみ込んだ。
薄目を開けて見てみると彼女は、私が何をしているのか、何が起きてるのか理解できないような顔をして、その次の瞬間、凄まじい絶叫と共に、
私の悪口だか叫び声だか解らない罵声を座り込んで耳を塞ぐ私に浴びせ続けた。
やがて、その叫び声があぶくと共に聞こえなくなる。
それでも私は日が傾くまで目を閉じて座り込んでいた。
辺りが暗くなり始めた気配を感じ、恐る恐る池の水面を見下ろすと、
藻の澱みの中に鬼のような形相で目を見開き、私を睨み付ける彼女の遺体が池の底に沈んでいた。
「き、きゃぁああああっ!!!!」
余りに衝撃的な物を間近で目撃した私は、激しい恐慌に囚われ、その場を大慌てで走り去った。
ほの暗い雑木林の奥、澱んだ水の底で睨み付けてくる彼女の顔、
私はアレを思い出す度に水面の恐怖に囚われ、この歳になるまで未だに泳ぐことが出来ない。
そして家へと帰り着くと、自分の部屋へと飛び込み、布団を被ってガタガタと震え続けた。
母が晩御飯に呼ぶ声も一切無視し、そのまま只管眠気が訪れ、私の心を救ってるのを待ち望んでいたのだった。
翌日、行方不明になった彼女を捜索するために、発狂寸前の彼女の両親と警察と町内会の人たちが総出で町中を捜索した。
そしてやがて、町外れの池で彼女が沈んでいるのを発見したのだ。
その彼女の名前は中村アリス。
同じ名前のありすちゃんの事を、私が苦手に思うのは当然のことだ、と理解して頂けただろうか…。
(美優さんは岩手出身だよ)
ありすちゃんは私と当たり障りの無い言葉を二、三交わすと、早々に話を切り上げて隣にいるプロデューサーさんの元に移動して行った。
そちらでは会話も充分弾んでいるようだ。
無理もない。
過去のトラウマから友好的に接することのできない私より、
長年プロデュースしてくれているプロデューサーさんの方がどれだけ話しやすいだろうか。
ありすちゃんには気を使わせてしまったかもしれない、悪い事をしたかな…。
そんなことを考えていると、気がつけば一人の少女が遠慮がちに私の前に立っていた。
「み、美優さん…、結婚…お、おめでとう…」
少女は心配になりそうな程の白い顔に微笑みを浮かべながら、そう私に祝いの言葉をくれた。
白坂小梅ちゃん。
スピリチュアルさが魅力のアイドルで、外連味の無い私とはあまり仕事が被った事が無い。
そんな小梅ちゃんが、挨拶もそこそこに私の肩越しに背後をじーっと見つめているのに気が付いた。
「ありがとうね、小梅ちゃん。………如何したの?何かあるの??」
と、私が後ろを振り向きながら尋ねると、小梅ちゃんは、
「うん…良くないモノが見える…よ? …何を言ってるかまではわからないんだけど、凄く恨めしそうに美優さんを見てる…」
私は、その言葉を聞いてビクッと体を竦ませた。
>>11 何で俺ちゃんと調べたのに山形って書いたんだろう…。
そもそも美優さん使ったのに岩手にイチゴ狩りが有るって見つけたからなのに…。
…多分、真田丸で伊達が出て来るトコ見ながら書いたからやな。
申し訳ないです。岩手に脳内変更してください。以後訂正します。
先程まで思い出していた自分のトラウマを、まるで見てきたように言い当てられた気がしたからだろうか。
彼女は霊が見えると評判のアイドルだ。
今の今迄はそんな事信じていなかったが、まさか本当に霊が見えるとでも言うのだろうか??
私のあの暗い過去を見通せるとでも言うのか――
青褪めた私の顔を見て、小梅ちゃんは慌てた様子で、
「で、でも安心して…??美優さんの守護霊はとても強いから…
強いお侍さんだから…、美優さんには絶対手出しできない…よ…?」
と、フォローを入れてきてくれた。
別に霊に怯えた訳では無いのだが。
が、まさか顔を青褪めさせた本当の理由を小梅ちゃんに語る訳にもいかない。
曖昧に頷き、小梅ちゃんにお礼を言う。
「ありがとうね、安心したわ…」
すると、小梅ちゃんは嬉しそうに微笑み、私の守護霊とやらの来歴に付いて詳しく捲し立て始めた。
どうやら、こう言う類の話を出来るのが嬉しいらしい。
正直、私が話を持て余し始めていると、何やら急に室内に甘い匂いが漂ってきた。
何時も甘い匂いをさせている、お菓子作りが得意なアイドル、
三村かな子ちゃんがホールケーキを手にして部屋に入ってきたのだ。
「はーい、お祝いのケーキが焼けましたよー♪」
年少組のアイドル達が喜びの声を挙げて、加奈子の周りに群がりはじめる。
小梅ちゃんも例外ではなく、髪に隠れてない方の片目をキラキラと輝かせながら、
ケーキに視線が釘付けになっている。
「はいはーい!!一杯あるから大丈夫だよーっ!さぁ、並んで並んで♪」
まるで魔法のようにホールケーキを次々と取り出し、机に並べていくかな子ちゃん。
並んだ子供たちとアイドル達に、順番に希望のケーキを取り分けて行く。
すると、小梅ちゃんは名残惜しそうに私に、
「…何かあったら、私に相談…して…?? 詳しく『観て』みるから……」
と、言い残し、列に並ぶために嬉しそうにフラフラと去って行った。
後に残ったのは、ぽつんと取り残された私。
私は、正直助かった思いで、ふうっ、と溜息を一つ付くと、気を取り直す様に顔を上げた。
見えない事を気にしていても始まらないし、対策の仕様がない。
気にしない事にしよう。
そう思うと私は、同じように取り残されたプロデューサーさんと目が合い、
苦笑しながら頷きあうと、ケーキを配る列の後に並ぶ事にした。
やがて、順番が来て、
「はい美優さん、何にしましょうか??」
と、かな子ちゃんが机の上のケーキを一つ一つ、丁寧に解説してくれた。
色取り取りのケーキは、どれを選んでも美味しそうだ。
私は、えーと、と悩みながら呟くと、おいしそうな赤いイチゴが乗ったショートケーキを指差し、
「これを頂けますか??」
と、遠慮がちにかな子ちゃんにお願いした。
明るい調子で「はーい♪」と答えたかな子ちゃんは、手際よくショートケーキを切り分けると皿の上に乗せ私に手渡してくれた。
それを受け取り、応接室の机の前に行きソファーに腰掛け、ケーキを食べようとフォークを手に取った。
すると、いつの間にか私の目の前に座っていたありすちゃんが、チーズケーキの乗った皿を手にして、私をじーっと見つめていた。
正確に言うと、私が受け取ったショートケーキを。
あまりに真剣に見ているので、私はありすちゃんに、
「ど、どうしたの?ありすちゃん」
と尋ねてみた。
するとありすちゃんは、
「私もイチゴがよかったなぁ…、美優さん、イチゴちょうだい??」
と、可愛らしく私に微笑みかけ、イチゴをねだってきた。
「え…ええ、いいわよ??」
私は一瞬戸惑いながらも、イチゴをありすちゃんの皿に移す。
ありすちゃんは、わぁい!!と喜ぶと、イチゴを乗せたケーキの皿を持って、年少組が集まっている机に移動していった。
そんなありすちゃんを見て、かな子ちゃんは、
「ふふふ♪ありすちゃん、本当にイチゴが好きなんですね、
何時もは大人びた発言してますけどまだまだ子供なんですねぇ…」
と、微笑まし気に顔を綻ばせた。
そんなかな子ちゃんの言葉に曖昧に、ええ、そうね…と、頷きながらも、
私は内心で激しく動揺していた。
なぜなら、先程イチゴをねだってきた時のありすちゃんの顔。
その顔が、重なって見えたからだ。
私が見捨てたあの少女の顔に――
私はその後、目の前のイチゴの取り除かれたショートケーキを、虚ろな瞳で眺め続ける事しか出来なかった――
その日から私は、ありすちゃんの事を目で追うことが多くなっていた。
あの日から一度も、私の幼馴染のあの少女とありすちゃんの顔が重なる事は無い。
それはそうだろう、と私は思う。
私の幼馴染のアリスとありすちゃんは似ても似つかない風貌だからだ。
ありすちゃんはアイドルにふさわしい美少女だが、私の幼馴染は服装こそお姫様の様ではあったが、
お世辞にも美少女とは言えなかった。
至って普通の少女だったのだ。
名前が同じというだけで、過敏に反応し過ぎていたのかもしれない。
そう考えた私は、漸く落ち着きを取り戻し、平穏な毎日を過ごしていた。
だがそんなある日、再び私の心をざわつかせる出来事が起こったのだ。
私の故郷岩手で行われるイチゴ祭りのキャンペーンガールに、ありすちゃんが選ばれたのだ。
当初、プロデューサーさんは私にこの仕事を回すつもりだったらしい。l
なんでも私に故郷に錦を飾らせる為に、この仕事を取って来てくれたとか。
そのせいか、会場も私の実家から程近い場所にある。
だが、結婚することになり、アイドルの仕事をセーブしつつあった私はこの仕事を辞退する事にした。
かなり大規模なお祭りになるらしいので、後輩のアイドル達の飛躍のきっかけになれば、と思っての事だ。
選りにもよってその仕事に、ありすちゃんが選ばれる事になるとは…。
イチゴ好きなのを考慮してのプロデューサーの判断らしいが、
私は、あの幼馴染と過ごした故郷に、ありすちゃんが立ち入る事に、
不思議と何か嫌な予感を覚えて仕方がなかった。
その予感を抑えて、私はプロデューサーさんとありすちゃんを笑顔で見送った。
だがその三日後、帰ってきたありすちゃんを見て、私は思わず絶句した。
どういう事なのか。
一体何を意味するのか――
彼女は、なんと、青いワンピースを着て帰ってきたのだ。
見間違えようも無いその鮮やかな青、可憐な白のフリル。
それは間違いなく、あの少女の着ていた服だった。
ありすちゃんに服の事を聞けずに、一週間ほどが経過した
私は最近、彼女の事が気に掛かり、夜も碌に眠れない毎日を過ごしていた。
ありすちゃんは周りがよくもまぁバリエーションが毎日続くものだと関心する位、微妙に違う青のワンピースを着てきた。
私はその事に益々戦慄覚えた。
周りの人間は知らないだろうが、私にだけは身に覚えがある。
私の幼なじみの少女も、毎日毎日違うワンピースを着て登校していたのだ、
周りが呆れるくらいに毎日。
私は重なり続ける共通点に何やら空恐ろしくなり、以前にも増してありすちゃんの事を避けるようになり、
声を掛ける事が出来なくなっていたのだ。
故に服の真相が聞けない。
聞けないゆえの不安、不安からの不眠、の悪循環。
もう私には、顔も雰囲気も全く違うはずの少女達が重なって見えて、如何しようもなくなっていた――
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