女提督「続・黒百合鎮守府」 (184)

望月「追加シナリオの要望があったので」

提督「さっきも聞いたような…」

望月「…そうだっけ?」



女提督「黒百合鎮守府」
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三隈「もう!せっかくなんですから、もっとおめかしするべきですの!」

最上「いやいや、いいって!ホント、スカートなんて性に合わないから!」

ガチャ

提督「最上、三隈、ちょっと頼みたいことがあるんだけど…って、あれ?取り込み中?」

三隈「あら提督、どうしました?」

提督「あ、うん。ちょっと3号砲の改修を手伝ってもらおうかと思って」

最上「今日ボク達はオフだよ!」

提督「え?あ、そうだっけ」

最上「もー、提督なんだからしっかりしてよ」

三隈「急ぎの用件ならすぐにでも向かいますが…」

提督「ああ、いや、大丈夫だよ。また今度でもいいから、その時に声をかけるね」

提督「ところで二人ともお洒落してるけど…もしかして市街の方に出るの?」

三隈「ええ、せっかくの機会ですもの。外の世界のことも知っておきたいのです」

提督「そっか…気を付けなきゃダメだよ?」

三隈「はい、心得ております」

提督「変な人にはついていかないこと。夕飯までには帰ってくること。それからむぐぐ」

最上「わかったわかった!それくらい分かってるから、心配しないでって!」

提督「……まあ、そうだよね。年頃の子にこんなこと言うのもなんだよね」

三隈「心配なさらずとも、三隈は必ず提督のそばに帰ってきますわ。お気遣いありがとうございます」

提督「いやいや、気にしないで。それじゃ、二人とも楽しんできてね」

最上「はーい」

バタン

提督「…艦娘といえど、艤装を扱える以外は普通の女の子と同じだし…色んなことに憧れるものだよね…」

提督「いいなあ、夢ある若者は…ふふふ」

提督「……いやいや、私もまだ若いでしょ…若い……うん、若いはず……」

「司令官さーん、ご飯の時間なのですよー」

提督「はーい、書類片付けてから行くねー」

提督「さて…さっさと終わらせちゃおう…」

カリカリ…

ガチャ

最上「はーつっかれたぁ…」

三隈「もうクタクタですの…」ドシャ

鳳翔「あら、ずいぶん大荷物ですね。お部屋に運んでおきましょうか?」

金剛「Oh!ならワタシも手伝いマース!」

最上「あ、ちょっと待って!」

金剛「What?」

最上「えーと……あ、あった!これこれ」

鳳翔「それは?」

最上「提督へのお土産!提督は執務室?」

鳳翔「ええと、確か遠征に出た艦隊を迎えに行くと言って桟橋にいたような…」

最上「そっか、ありがと!」

パタパタ…

三隈「もう、モガミンったら!私の荷物もありますのに!」

鳳翔「まあまあ、私たちも手伝いますから…」

提督「……………」

「おーーーい!」

提督「!」クル

パタパタ…

最上「や、提督」

提督「最上、帰ってきてたんだ。おかえり」

最上「へへへ、ただいま」

提督「どう?楽しかった?」

最上「そりゃもう!今度は提督と行きたいかな?」チラッ

提督「あはは、考えておくよ」

最上「そうそう、提督にお土産があるんだ」

提督「お土産?」

最上「うん…ほらっ、じゃーん」スッ

提督「これは……?」

最上「チョーカーってやつだよ、提督に似合うと思って」

提督「アクセサリーの類、なのかな?今時の子ってこんなの着けるんだ…」マジマジ

最上「せっかくだから着けてあげようか?」

提督「うん、お願い」

最上「よーし、それじゃじっとしててね」

提督「うん」

スッ

提督(わ…なんだか、抱き締められてるみたい…)ドキッ

最上「……はい、これでよし。苦しくない?」

提督「うん、大丈夫」

提督「に、似合ってるかな?」

最上「うん、軍服に隠れる感じだけど…チラッと見えた時にアピールできそうでいい感じ」

提督「そっか…ふふふ、嬉しいよ。ありがとう」

最上「気に入ってもらえて何よりだよ」

提督「……ところでこれ、どうやって外すの?」

最上「正面に鍵穴が付いてるでしょ?そこにこの鍵を差し込むと外れる仕組みになってるんだ」チャリン

提督「へー、そんなのがあるんだ」

最上「逆に言えば…ボクが鍵を渡さない限り外れないってことでもあるんだけどねえ?」ニヤニヤ

提督「む…それは困る」

最上「なーんか、イタズラしたくなってきちゃったなー」

提督「……はっ!」バッ

最上「甘い甘い!」サッ

提督「ふふふ…私の本気をこの程度だと思わないことだね」

最上「なら早く見せてみなよ、へへっ」

提督「…せいっ!」ヒュッ

最上「ほっ!」バッ

提督「とう!はっ!」ササッ

最上「うわ、はや!?」

提督「もらったぁーーーーーー!!!」ヒュン

最上「しまっ……!」

ガッ

チャリン

提督「やば、手が滑っ……」

ポチャン

提督「」

最上「」

最上「……………」サァーッ

提督「あああああっ!?お、落ちたぁ!?」

最上「……………」

提督「ね、ねえ!あれじゃもう拾えないよ!代わりの鍵は!?」

最上「……ない…」

提督「」

最上「あっ…あは、あはははは…」

提督「あははじゃないでしょ!」

最上「で、でも提督だってふざけてたでしょ!ボクだけの責任じゃないよ!」

提督「そ、それは…そうだけど…」

提督「で…これ、どうするの…?」カチャ

最上「あー…なんなら、いっそのことハサミで切っても…」

提督「そ、それはダメ!せっかくくれたんだから、もったいないよ!」

最上「そ、そっか」

最上(ちょっぴり嬉しいかも)

提督「うーん…でも…あ、こういうのって業者の人に頼めば新しく鍵作ってくれるのかな…」

最上「ギョーシャ?」

提督「そういう鍵専門の店があるの。家の鍵とか失くした時もそこに行けば作ってくれるんだよ」

最上「へー…世間には色んな人がいるんだね…」

提督「とりあえずあとで電話してみるとして…もしそれがダメだったら、最終手段で切ることにしよう」

最上「うん…今度は鍵がないのを買うよ」

提督「買うのは確定してるんだ…」

最上「……それにしても……」

提督「…な、なに?そのキラキラした目は」

最上「こうして見ると、首輪にも見えてくるねぇ」ニィ

提督「なにか変な想像してない…?」

最上「ん?変な想像って?」

提督「い、いや!なんでもないの!///」

最上「……??」

最上「ふふふ」

提督「…………」ジリ

最上「そんな後ずさりしなくても。ちょっとなでなでするだけだよ、ねっ!」

提督「はぁ…そんなことだろうと思ったよ…」

最上「ねえ、いいでしょ?ね?」

提督「……ちょっとだけだからね」

最上「やったー!」

ポン

最上「わはー、サラサラだー」

提督「ん……くすぐったい…」

最上「よーしよしよし」ナデナデ

提督「……………」

最上「おとなしいコだねー」ワシャワシャ

提督「あ、こら!今完全に犬として見てたでしょ!」バッ

最上「あ、バレた?」

提督「そりゃおとなしいコなんて言ったらすぐバレるよ…」

最上「もう終わり?」

提督「終わり終わり、あんまり髪が乱れても困るし」

最上「ちぇー、せっかく面白そうな遊び見つけたのに」

提督「なにぃ?」

最上「な、なんでも」

天龍「イチャついてる暇あんなら資材運ぶの手伝えっての」ガシャン

提督「うわっ!?て、天龍、いつの間に…」

天龍「お前らがギャーギャー騒いでるところから見てたっての…ったく、迎えに出てきたんじゃなかったのかよ」ポイッ

提督「わっ、たっ、とと」パシ

最上「ありゃ、全部見られてたかー」

電「それはもう…」

提督「……わ、忘れてくれると嬉しいな…」

響「さて、どうかな」

天龍「おらチビ共、艤装置きに行くぞ」

雷「はーい!」

スタスタ…

龍田「うふふ…天龍ちゃんったら、提督が他の子と楽しそうにしてたから拗ねちゃったみたい」

提督「え、あ…あ、あとで謝りに行くよ…」

龍田「ホントは私も妬いてるんだけどな~…?」ニッコリ

提督「えっ…」

龍田「ふふ……許してほしいなら、今晩は付き合ってもらおうかしらぁ…」

提督「そ…それは勘弁願いたいかな…」

龍田「………うふふ、冗談よ~」ポンポン

提督「で、ですよね…あはは…」

龍田「さ~て、それじゃあ私も艤装を置きに行こうかしら」

スタスタ…

提督「…はぁ…心臓に悪い…」

最上「大変そうだね」

提督「最上のせいでしょ」

最上「てへへ」

その日の夜



提督「………はい、ありがとうございます。ではまた後日伺います」

最上「なんて?」

提督「作れるって。ただ私の方に時間がないから数日してから行くことにするよ」

最上「そっか、ならよかった」

提督「はー…しかしとんだ災難だなぁ…」

最上「いやーごめんね、ボクのせいで」

提督「ううん、善意でやってくれたことだから。気にしなくていいよ」

最上「ところでお腹空かない?」

提督「ほんとに気にしてないんだ…」

提督「お腹空かないって…それ最上がお腹空いただけでしょ」

最上「えへへ、そうかも」

提督「はぁ…こんな時間に食べたら太るよ?」

最上「どうせ運動するから大丈夫だよ」

提督「…おにぎりくらいならすぐ作れるけど。具、何がいい?」

最上「梅!」

提督「はいはい、ちょっと待っててね」ガタッ

最上「はーい」

スタスタ

バタン

最上「……………」

最上「……待ってるのも退屈だなぁ…」

最上「…何か面白いものないかな」パタパタ

ゴソゴソ

ゴソゴソ

最上「………おっ?」

最上「これは……犬耳…?」

ガチャ

提督「できたよー…って何してるの?」

最上「いや、これを見つけてさ」スッ

提督「犬耳…?ああ、確か駆逐艦の子達が遊んでたのを置いたままにしてたんだと思う」

最上「ふーん…」

最上「……………」ウズウズ

提督「……また良からぬこと考えてるでしょ」

最上「いやー、首輪してるとほんとに犬みたいだからさ。ちょっとだけ付けてみない?」

提督「遠慮します」

最上「そう言わずに」

提督「……………」

最上「……………」ムスッ

提督「………ちょっとだけだからね」

最上「さすが、話が分かるね」

提督「はぁ…」

スチャ

提督「…はい。これでいい?」

最上「おー、似合ってる似合ってる」

提督「どちらかと言うと私は猫だと思うんだけどなぁ…」

最上「おーよしよし」ワシャワシャ

提督「わっ、ちょ…もう。寝る前だからいいけど…」

最上「ほれほれ」コショコショ

提督「んっ…そ、そこはくすぐったい…」ピク

最上「でも喉元撫でるのってなんだか気持ちいいよ」サワサワ

提督「そ、そう…」

最上「うりゃ」ムギュ-

提督「ふぁ…」

最上「あははは!変な顔!」

提督「…って、もう!遊びすぎ!」バッ

最上「ありゃ、嫌だった?」

提督「嫌じゃないけど…そろそろ寝た方がいいよ、明日は演習なんだから」

最上「それもそっか。じゃ、また時間がある時になでなでしようかな」

提督「ちょ、そんな勝手な…」

最上「じゃあねー」

バタン

提督「………もう…」

提督「このおにぎりどうするのさ…せっかく作ったのに…」

提督「………なんだか、私までお腹空いてきた…」

提督「…一つだけ食べちゃおう」

パク

提督(残りは明日遠征組に渡してあげようかな…)モグモグ…







最上「……………」

最上「………提督…犬みたいでかわいいなぁ…」

最上「ふふふ…犬提督か…ちょっと面白いかも…」

~~~

翌日



最上「はい、お手」スッ

提督「…………」ポン

最上「はい、おかわり」スッ

提督「…………」ポン

最上「よーしよしよし、よくできたね~えらいね~」ワシャワシャ

提督「……楽しい?」

最上「すっごい楽しい!ね、三隈もやってみなよ!」

三隈「提督、よろしいでしょうか?」

提督「ん…まあ、いいけど…」

三隈「…………」サス

提督「ぅ……」

三隈「…………」サワサワ

提督「あっ…く、ぅ…」ピク

三隈「うふふ、可愛らしいですわ」

提督「み、三隈…くすぐったい…」

三隈「あら、もっと強めの方がお好みでしょうか?」

提督「どうせ撫でるならそっちのほうが…」

三隈「でしたらお望み通りに…」ナデナデ

提督「んん……」

最上「ほんと犬みたいだなぁ…」

三隈「提督、喉が渇いていませんか?」

提督「へ…?うん、ちょっと…」

三隈「ではわたくしが飲ませて差し上げますわ」キュルキュル キュポッ

提督「え?」

ポチャッ

三隈「はい、どうぞ!」サッ

提督「ど、どうぞって…手皿から飲むなんて、なんだか人としての尊厳が…」

三隈「あら、首輪も付いているのに犬ではないのですか?」

提督「これは首輪じゃなくてチョーカーで…」

最上「まあまあ、これも経験だよ」

提督「経験もなにももう20年以上生きてるんだけど…」

最上「ほら、一度屈辱的な目に遭うことで次同じような境遇になった時プライドをへし折られないで済むみたいなさ」

提督「何言ってるの最上…」

最上「あはは、ボクもよくわかんないや」

提督「はぁ…まあ、遊びの範疇ならいいんだけどさ…」

三隈「ちゃんとおすわりもしてくださいね」

提督「はい…」ストン

三隈「よろしい。はい、どうぞ」スッ

提督「……んっ」ピチャ

三隈「…………」

提督(………飲みづらい……)ピチャピチャ

三隈(ああ…舌が手に触れて……っ)ゾクゾク

最上「……三隈?」

三隈「はい?」

最上「いや…なんでもないよ」

提督「……ふぅ…もういいよ」

三隈「喉は潤いましたか?」

提督「うん、十分」

三隈「そうですか。それならよかったですわ」グイ

ゴクゴク

提督「!?」

最上「!?」

三隈「ぷはぁ……ん?どうしました?」

提督「い、いや…」

最上「なんでもないよ…」

三隈「?」

提督「…そういえば二人とも、そろそろ演習じゃないの?」

最上「あ、そうだった!三隈、行くよ!」パタパタ

三隈「ああっ、待ってください!」

パタパタ…

提督「……はぁ」

提督「最近こんなのばかりだなぁ…」

雷「あら?どうしてドア開けたままなの?」ヒョコ

提督「あ、雷…」

雷「ダメよ司令官、ドアはちゃんと閉めなきゃ」

提督「え、は、はい」

提督(なんで私が叱られたんだろう)

雷「司令官、はい!」スッ

提督「……?」

ポン

雷「え?」

提督「え?」

雷「いや、犬じゃあるまいし…お手するんじゃなくて、報告書出すって言ってたでしょ?」

提督「あ、ああ!そ、そうだった!」ゴソゴソ

雷「もー、しっかりしてよね」

提督「ごめんごめん、はい、これ」スッ

雷「それじゃ、投函しておくわ!」

提督「うん、よろしく」

パタパタ…

提督(つい無意識に手を出してしまった…)

その後




ガチャ

提督「ふー…」

武蔵「むっ。よう、相棒」

提督「ん?あ、武蔵。演習終わった?」

武蔵「ああ、いい戦果を挙げられたぞ」

提督「そっか、お疲れ様」

武蔵「そういう相棒も、今書類仕事が終わったところか?」

提督「うん、あとはこれを提出するだけ」

武蔵「そうか、よく頑張ったな」スッ

提督「!」ピク

ポン

武蔵「……お?」

提督「………?」

武蔵「…珍しいな、抵抗しないなんて」

提督「え?そう?」

武蔵「ああ、いつもなら髪がくずれるとか言って撫でさせてくれないものだがな」

提督「…そんなこと言ってるかな…」

武蔵「言ってるぞ。ところで、撫でてみてもいいか?」

提督「ん…ちょっとだけね」

武蔵「ああ」ナデナデ

提督「…………」

武蔵「すごいな…つやつやだ…」ナデ

提督「んん…」

武蔵「痛かったか?」ピタ

提督「あ、ううん…なんだか、気持ちよくって…」

武蔵「そ、そうか?」

武蔵「…………」スッ

提督「あ……」

武蔵「…物足りなかったか?」

提督「え…う、うん…あの、もう少しだけ…」

武蔵「…………」ポン

提督「わっ…」

武蔵「…………」ナデナデ

提督「………♪」

武蔵(いつもとはまるで様子が違うな…どうしたんだ一体…)ワシャワシャ

提督「ん~……」

武蔵「……そういえば、書類は出しに行かなくていいのか?」ピタ

提督「…え?あ…!こ、こんなことしてる場合じゃなかった!ちょっと行ってくる!」ダッ

武蔵「あ、ああ。転ぶなよー!」

パタパタ…

武蔵「……………」

武蔵(妙な体験だったな…まあ、相棒と触れ合えるのはなかなか楽しかったが…)

武蔵(……戯れとはいえ、あそこまで簡単に髪への接触を許す女だったか…?)

提督「はぁ…忘れるところだった…」

ガチャ

五十鈴「あ、提督」

提督「五十鈴?どこか行くの?」

五十鈴「……………」ジー

提督「………? どうs

グイッ

提督「きゃあぁ!?なっ、なになに!?どうしたの!?」

「いいから来なさい!」

提督「ちょっとおぉ!?」

バタンッ

五十鈴「ほら、座んなさい!」グイ

提督「な、なになに?どうしたの?」ストン

五十鈴「いいから、じっとしてて」

提督「は、はあ…」

スッ

提督「ひっ!?」ビク

五十鈴「…何よ、その反応」

提督「い、いや…急に髪を触られたものだから…」

五十鈴「そう、それは悪かったわね」クシャ

提督「わっ…」

五十鈴「はい、手鏡」サッ

提督「う、うん…?」

五十鈴「見てみなさい、髪がくしゃくしゃになってるでしょ」

提督「え?あ、ほんとだ…」

五十鈴「そんなに乱れた髪型で出歩くなんて、提督としての威厳がないってものよ」

提督「そうかな…」

五十鈴「仮にもこの五十鈴をここまで育て上げたんだから、それくらいは意識してほしいものね」

提督「ご、ごめん」

五十鈴「…ま、せっかく呼び止めたんだから私が整えてあげるわ」

提督「うん…ありがとう」

五十鈴「……………」クシャ

提督「……五十鈴?」

五十鈴「ん?ああ、ほんと綺麗な髪ねって思っただけよ」

提督「そうかな…」

五十鈴「そうよ。真っ黒で艶もあってその上サラサラで触ってて飽きないし」

提督「そ、そこまで言われると照れるな…//」

五十鈴「事実よ」スー

提督「……んん」

五十鈴「……………」

提督「……………」ポー

五十鈴「……気持ちよさそうね」

提督「ん…あ、うん…こうして誰かに髪を梳いてもらってると、なんだか小さい頃を思い出して…ちょっと安心しちゃうんだ」

五十鈴「小さい頃?」

提督「うん。私、昔からずっと髪は長いままだったからさ…母さんが似合ってるって言ってくれたのを今でも覚えてる」

五十鈴「……母さん、ね…」

提督「…憧れたりする?」

五十鈴「そんなことない、って言いたいけど…正直そんなに強い絆で結ばれた関係の人がいるのは羨ましいわ」

提督「そっか…」

提督「……私は五十鈴のことを大切な人だと思ってるよ」

五十鈴「何よ急に。口説いてるつもり?」

提督「ち、違うよ…ただ、大切な人がいるのは羨ましいって言ってたから私が五十鈴のそれになってあげられたらなって…」

五十鈴「…バカ」

提督「え?」

五十鈴「私だってとっくにあなたのことは大切だと思ってるわ。絶対に負けないくらいね」

提督「……ふふ、そっか…」

五十鈴「あー………素面でする話じゃないわね…」

提督「照れてる?」

五十鈴「そうよ、二度と言わないんだからしっかり胸に留めておきなさい」

提督「はいはい、ふふふ」

五十鈴「これ、こんなに乱れてるのって寝癖じゃないでしょ?」

提督「うん、なんでわかったの?」

五十鈴「寝癖ならもっと先の方まで巻くじゃない」

提督「それもそうか…」

五十鈴「おおかた誰かに撫でられたとかそんなところでしょうね…」ムニ

提督(当たってる…二つの意味で…)

五十鈴「しかし珍しいわね、あなたが簡単に髪を触らせるなんて」

提督「それ、さっきも言われたんだけど…そんなに触らせないイメージある?」

五十鈴「髪をっていうか、どこを触ろうとしても恥ずかしがって逃げるじゃない。軽いスキンシップでも顔赤くするし」

提督「そ、そうかな…」

五十鈴「でも今私に触られるのは嫌じゃないの?」

提督「嫌っていうか……こう、手を握られたりとか肩に手を乗せられたりするのはまだ恥ずかしくないんだけど…ほら、胸とかお尻とか露骨に邪な気持ちを抱いて触ろうとしてくる子がいるからさ…」

五十鈴「へえ、例えば?」

提督「衣笠とか…早霜とか…」

五十鈴「ああ…セクハラも大変ね…」

提督「まあ、根本的には嫌じゃないんだけどね…ただ周りの目もあるからさ…」

五十鈴「…そういえばこの前酔っ払ったイクに襲われてたわね」

提督「あはは…あの時は久々に護身術を披露したよ…」

五十鈴「一撃でオチてたものね」

提督「ああでもしないとほんと組み伏せられそうだったから…」

五十鈴「そういえばあなたってかなり力強いわよね」

提督「どうなんだろ。それはよく分かんないや」

五十鈴「どうって…じゃあ大和さんを投げてた件は?」

提督「あれは力の入れ方の問題だよ。技術の話」

五十鈴「そうなの?」

提督「うん。だから私自身重いものが持てるわけでもないし、腕っ節が強いわけでもないからね」

五十鈴「ふーん…」

提督「まあ、鎮守府全体腕相撲大会で空母級の四位にランクインしたんだけど…」

五十鈴「やっぱり強いじゃないの…」

提督「仮にも軍人だから…これくらいはね」

五十鈴「でもやっぱりあれでしょ?艤装を付けるとさすがに敵わないんじゃない?」

提督「うん、駆逐艦にも負けるよ。この前は睦月型全員に順番こでお姫様抱っこされた」

五十鈴「そ、そう…」

提督「いやあ、あれは恥ずかしかったなあ…他の子達にも笑われるし…」

五十鈴「はあ…じゃあもう戦艦とかだったら確実に負けるわけね」

提督「そうだね、たぶん一対一でも組み伏せられると思う」

五十鈴「投げられないの?」

提督「投げようとしてもそもそも持ち上げられないんじゃないかな…仮に肩とか背中に乗ったとしても艤装の重さで私が潰されちゃう」

五十鈴「なら大人しく受け入れるしかないってこと?」

提督「そうなるかな…今のところ誰にもされてないけど」

五十鈴「信頼されてる証でしょうね」

提督「あはは、だとすると嬉しいな」

五十鈴「ところで…この首輪、どうしたの?」グイ

提督「ぐぇ…こ、これは首輪じゃなくて、チョーカーっていうアクセサリーだよ」

五十鈴「ふーん…どう見ても首輪だけどねえ…」

提督「そ、そんなに?」

五十鈴「……ああ、なるほど!ペットみたいだから撫で回されたのね!」パン

提督「う……」

五十鈴「ふふん、図星って顔ね」

提督「…そうなんだよね。実はこれ、外れなくてさ…」

五十鈴「えっ、なんでよ?」

提督「あのね………」

~~~

提督「……ってことがあって…」

五十鈴「へー…そりゃ災難ね」

提督「明日、業者のところに行って外してもらうんだけどね…まさかこんなことになるとは」

五十鈴「いいんじゃない?似合ってるし」

提督「…それはどういう意味で?」

五十鈴「ペ………アクセサリーとして」

提督「ペットって言いそうになったよね」

五十鈴「あら、ぜーんぜんそんなことないわ」

提督「…むう…不服…」

五十鈴「そう膨れないの」プス

提督「ぶふ……」

五十鈴「…はい、終わったわよ」

提督「ああ…ありがとう」

五十鈴「ちょっとこっち向いてみて?」

提督「ん?うん」クル

五十鈴「……ふむ……」ジー

提督「…………?」

五十鈴「…………」ガシ

提督「!」ビク

五十鈴「動かないで」

提督「は、はい…」

五十鈴「…………」

提督「………?あ、あの…」

五十鈴「……うーん…」グイ

提督「…………///」ポッ

提督「えっと……髪、後ろに下げてた方が似合う?」

五十鈴「ん?ええ、そうね」

提督「そ、そっか。じゃあこのままにしておこうかな///」

五十鈴「あら、別に気にしなくていいのよ?」

提督「いやいや、せっかく整えてくれたんだから…せめてもの恩返しだよ」

五十鈴「そう…あなた、本当にお人好しね」ナデナデ

提督「ん…ほ、褒めてくれてる?」

五十鈴「そうね、そう思ってくれていいわ」

提督「えへへ…」

五十鈴(…ま、いつか痛い目見るでしょうけど…)

提督「よいしょっと…それじゃ、そろそろ行くね」

五十鈴「ええ、私もすぐ出るからドアは開けたままでいいわよ」

提督「はーい」

ガチャ

その日の夜




最上「はー…明日でこれも外れるのかぁ…」

提督「喜ばしいことなのになんで嫌そうなのさ」

最上「いや、今日で撫で納めだと思ってさ」ワキワキ

提督「なんで撫でる前提なの!」ジリ

最上「いやー、提督を撫でないと落ち着かない身体になっちゃったんだよねー」ケラケラ

提督「もう…嘘にしてももっとまともなのにしてよ…」

最上「で、撫でていい?」

提督「はぁ……もう寝る前だし別にいいけどさ…」

最上「さっすが!」

最上「ん」スッ

提督「…………」カク

最上「よしよし」ナデナデ

最上(自分から頭を差し出すようになった…ふふふ)

提督「ん……」

最上「あはは、かわいいね」ワシャワシャ

提督「そういうのは他の子に言ってあげなよ…」

最上「提督がかわいいから言ってるんだけどなぁ」

提督「はいはい…」

最上「ちぇっ、連れないな」

最上「ん」スッ

提督「…………」クイ

最上「よーしよしよし」コシュコシュ

提督「んぁ……」ポー

最上「……喉撫でられるの、そんなに気持ちいい?」

提督「…え?なんで?」

最上「いや、喉触ったら目を細めてるからさ」

提督「…ほんと?」

最上「ほんとほんと」

提督「……いや、うん…なんていうか…不思議な感じっていうか、触られても嫌じゃないっていうか…」

最上「ふーん?」コシュコシュ

提督「くぅん…まだ話の途中なんだけど…」

最上「あはははは!くぅん…だって!あははは!」ケラケラ

提督「もう!いちいち言わなくていいの!」グニー

最上「いひゃひゃひゃ、あふぁふぁ!」

翌日




提督「ふぅ……ただいまー」

金剛「Oh!テートクゥ、Welcome backネー!」ガバッ

提督「あはは……出迎えてくれるのは嬉しいけど、抱き付くのはやめようか…」

霧島「ほら、姉様!司令が困っています!」グイ

金剛「むぅ…なら仕方ないデース…」

提督「とりあえず荷物を置いてくるから…またあとで紅茶の時間に呼んでよ」

金剛「! イエース!」

霧島「荷物、持ちましょうか?」

提督「ああいや、これくらいなら私一人で大丈夫だよ」

ドサッ

提督「ふー、結局色んなもの買っちゃったなぁ…」

ガチャ

最上「や、おかえり」

提督「ノックしなさい」

最上「ああ、ごめんごめん。…で、外してもらった?」

提督「うん、ばっちり。はい、鍵」

最上「あ、鍵は提督が持っててよ。またボクがどこかやっても困るだろうし」

提督「あー…まあ、確かに…」

最上「さてと」スッ

提督「あ……」

クイ

最上「…………」コシュコシュ

提督「んん……」

最上「…………」スッ

提督「…ん」カク

最上「ふふ…」

最上(調教完了…)ナデナデ

提督「ん…ふふ、えへ……」

最上編おわり
開幕なので比較的緩めの病みからと
次からは本格的♂黒百合になる予定です

レ語録ナイスでーす♀

「私は五十鈴のことを大切な人だと思ってるよ」

彼女はそう言った。
もちろんそのことは嬉しかったし、私だって提督のことは大切だと思っている。が、なぜか私は苛立っていた。

表には出さないけど、私はあの人のことを好いている。愛してるまと言ってもいい。
でも提督と違うのは、この感情が恋慕のそれということだった。いつからかは覚えていないが、私はあの人をそういう目線で見ていた。

けど、この恋に諦めが付くのはそう遅くなかった。提督のことを考えていると胸が苦しくなったし、眠れない夜もあった。
どうしてかって言えば、女が女を好きになるなんてまず気持ち悪がられると思ったから。いくらお人好しの彼女と言えど同性からの告白ーーーそれも恋人となることを望んでのものなんて受け入れられないに決まってる。
もしこの想いを打ち明ければ自分が傷付くのは分かりきったことだし、百歩譲ってそれはいいとして私からの告白を断った提督がそれを気負ってしまうのが何より怖かった。

だからこれまで何も言わず自分の気持ちを押し殺してきたのに、大切な人だなんて。勘違いしそうになったじゃない。どうせ、他の子にもそんなことを言ってるくせに。

……いや、よくよく考えてみればあの人は過去に何かあったんだ。だからああやって誰にでもそういうことを言うし、自覚も何もないんだろう。でもそれは決して悪い癖ではなくて、上手く人との距離感を掴めなかったりするのは周りの環境が原因のはずで提督は何も悪くない。
ああ、そうだ。少し考えれば分かることだった。ただ私が変なこと考えてイライラしてただけね…反省しなきゃ。

………でも、一度考えてしまうと辛いものね。どうにかして今のなんでもない関係から発展させられないかしら。

………………

……ああ。
なんだ、簡単なことじゃない。
少し気が引けるけど、提督のお人好しな部分に付け込めばいいんだ。絶対に断らないようなことを頼んで、そこからずぶずぶと沈ませて断ち切れない関係を作ればいい。
あの人がいなければ私は生きていない……そんな関係にすればいい。





「五十鈴…?どうしたの?」

「……ちょっとね…疲れちゃった」

「え…だ、大丈夫?お茶でも淹れようか?」

「いいえ…少しだけ、甘えさせてちょうだい…」

「え?あ、うん…私でいいなら…」



「提督……いや」

「お母さん…♪」

五十鈴編おわり
確か萩風って前作ちょっとしか出してないですよね

提督「…げほっ、けほ…んんっ、こほ…」

鳳翔「大丈夫ですか?」

提督「ああ、うん…心配しないで」

鳳翔「あの、提督…もうお手伝いは十分なので、そろそろお休みになられた方が…」

提督「ううん、鳳翔さんだけに任せるのは」

鳳翔「そう言うと思っていました…が、ダメです。もう無理はしないでください」

提督「ええ…?これくらいなんとも…」

鳳翔「提督はそう思っているかもしれませんが、体調が優れないようにしか見えません。ずっと咳をしてますし、顔も赤いです」

提督「そ、そう?」

鳳翔「はい…このままだと本当に倒れてしまいますから、どうか…」

提督「そ、そこまで言うなら…うん、向こうに行ってるよ」

鳳翔「はい、ありがとうございます」

提督(そんなに体調悪そうに見えたかなあ…)

提督(言われてみれば今朝からずっと咳は出るし頭は痛いし、なんだかぼーっとするし…)

隼鷹「お、提督。もうそろそろできそうかい?」

飛鷹「座って待ってなさい、行儀悪いわよ」

提督(あはは、まさか…風邪なんて…こんな時期にあるわけ…)

隼鷹「ん?提督、ふらふらしてるけど…もしかしてもう酒飲んじゃった?」

飛鷹「そんな、あんたじゃないんだから…」

提督(ある……わけ…)フラッ

ドサッ

飛鷹「!」ガタッ

隼鷹「て、提督…!?冗談にしては気合入りすぎなんじゃ…」グイ

提督「う………///」ポー

飛鷹「冗談じゃ済まなさそうね…」

隼鷹「おい、誰か!大変だ!提督が倒れた!人を呼んでくれ!」

ザワザワ

提督「はぁ……はぁ…」

ーーーーー
ーーー

提督「………ぁ…」パチ

「お……司令、目が覚めたか?」

提督「……あら、し…?」

嵐「そうそう、嵐だよ。無事に気が付いたみたいでよかった」

提督「…私…確か……」

嵐「覚えてないか?夕飯の時に食堂で倒れてたんだ。大変だったんだぜ、みんな大騒ぎしてさ」

提督「……ああ…」

嵐「思い出してきたみたいだな。あれからしばらくして今は…あー、マルヒトマルマルくらいか。体調はどうだ?」

提督「…熱くて、全身がだるい…あと頭も…」

嵐「痛むか?」

提督「うん…」

嵐「そっか…うん、風邪だな」

提督「…げほっ」

嵐「えぇと…とりあえず、今日はもう遅いから寝た方がいいってさ。鳳翔さんが言ってた」

提督「……うん…」

嵐「何かあったら呼んでくれ。一応交代で世話してくれる役が決まってるから」

提督「…もう行くの…?」

嵐「ああ、俺もそろそろ寝なきゃ明日に響くからな」

提督「……そっか…」

嵐「…………」

提督「…………」ウルッ

嵐「…わかったわかった、そんな寂しそうな顔するなって」

提督「えへへ…よかったぁ…」

嵐「寝付くまでだからなー?」

提督「うん…手、握ってもらっていい…?」

嵐「はいはい」ギュ

提督「……そういえば、萩風は…?」

嵐「ん?ああ、遠征から帰ってきたらすぐ寝たよ。半日行ってたから疲れたんだろうな」

提督「そうなんだ……」

嵐「はは、司令が倒れたって聞いたらどんな反応するかな。もしかしたら気絶なんかしちゃったり…」

提督「洒落にならないね…ごほ」

嵐「辛いなら無理はしなくていいからな?」

提督「うん…早く治さないとね…」

嵐「ああ、ゆっくり休んで元気な顔を見せてくれ」

提督「ありがと……嵐の手、おっきくて…柔らかいね…」ニギ

嵐「ん?おお」

提督「なんだか…母さんみたいで……なつか…し……」

嵐「そっか…ふふ」

提督「……すぅ…」

嵐「……おやすみ、司令」ナデ

~~~

チュンチュン チュン

提督「……………」パチ

「あ……」

提督「…はぎ…かぜ…?」ボー

萩風「……司令っ!」ギュウウ

提督「わっぷ……」

萩風「よかった…生きてる…」ムギュ

提督「は、萩風…苦しいよ…」

萩風「心配してたんですから…司令が倒れたって聞いて…」

嵐「はは、ただの風邪なんだから…さすがに死にはしないだろ」

萩風「それでも心配なの!」

嵐「あー…とりあえず放してあげた方がいいんじゃないか?」

萩風「え?」

提督「」キュウ

萩風「ああっ!?し、司令!?」

萩風「ご、ごめんなさい…嬉しくて、つい…」

提督「あはは…だ、大丈夫だよ…」

萩風「あ、お、お腹空いてませんか?おかゆ、作りましょうか?」

提督「あー…うん…あんまり食欲はないけど、食べた方がいいよね…」

萩風「はい、栄養を摂らないと治るものも治りませんから…待っててください」

提督「うん、ありがと…」

パタパタ

提督「げほっ…」

嵐「萩ってば、起きて俺から話を聞いてすぐ飛び出してさ。司令が起きるまでずっとここにいたんだ」

提督「そう、なんだ…ごほ」

~~~

嵐「……司令、辛そうだな」

提督「頭…痛い…」

嵐「昨日熱が出たばっかりだからな…これからよくなっていくよ」

提督「うん…」

嵐「ちょっと失礼するぜ」クイ

コツン

提督「…………///」

嵐「んー…やっぱりこれは風邪だな…ってあれ、司令?さっきより顔赤くなってるけどそんなにしんどい?」

提督「…いや…」

「嵐?」

嵐「!」ビクッ

萩風「……何してるの?」

嵐「え…い、いや…熱を測ってただけだぜ、うん」

萩風「……そう。ならいいけど」

提督「………?」

萩風「司令、おかゆです」

提督「ああ…ありがと…」

萩風「身体、起こせますか?手を貸しますね」グイ

提督「あはは…悪いね、こんなことまで…」ムク

萩風「いえいえ…自分で食べられますか?」

提督「うん…スプーン、貸してくれるかな…」

萩風「はい、どうぞ」

提督「どうも…」

提督「…………うー…」カチャ プルプル

嵐「…ダメそうだな」

萩風「私が食べさせてあげますね」

提督「うう…情けない…」

萩風「こんな時くらい誰かを頼るものですよ、はい」スッ

提督「うん…」パク

モグモグ

萩風「美味しいですか?」

提督「……ごめん…味、分からない…」

萩風「なら尚更すぐに治さないといけませんね」クス

提督「そうだね…」

提督「ふぅ…」

萩風「もういっぱいですか?」

提督「うん…ごめんね、食欲なくて…」

萩風「風邪の時は仕方ないです、ほらっ、もう寝ていましょう」グイ

提督「って言っても…起きたばかりだから眠くないんだよね…」ボフ

嵐「なら他の子も見舞いに来るだろうし、少しおしゃべりでもしてたらいいんじゃないか?その方が気も楽になるだろうし」

提督「そう…だね」

萩風「ほんとはずっと司令についていてあげたいんですけど…私たちも遠征がありますから、これで…」

提督「うん……風邪、移すのも悪いし…そろそろ行った方がいいよ…」

萩風「はい…お薬、置いていきますから。飲んでおいてくださいね」

提督「ありがと…」

萩風「それと、何かあった時はすぐに誰かを呼んで…」

嵐「萩!時間だって!」

萩風「えっ!?あ、で、では行ってきますね!安静にしててくださいね!?」

バタバタ

提督「あはは…行ってらっしゃい…」

提督「はぁ……」

提督(風邪引いたの、いつぶりだろう…)

提督(…思えばここ最近、ちょっと頑張りすぎだったかも…)

提督「…………」

提督(……苦しい…)

提督(風邪って、こんなに辛いものだっけ…全身が熱くて、頭痛が治らなくて…とにかく気分が悪い……)

提督(…目を閉じたら、底なしの闇に落ちて…身体を蝕まれてるみたいに現実感がなくなっていく…)

提督(……このまま闇に飲まれたらどうなるんだろう…)

提督(死ぬ……のかな…)

提督「…………」

「司令」

提督「っ!?」ビクッ

秋月「あ…も、もしかして驚かせてしまいましたか…?す、すみません…」

提督「あ、いや…ううん、音がなかったから…びっくりしちゃって…」

秋月「すみません、寝ていたら起こしてしまいそうだったので…」

提督「あ…気にしないで、少し話し相手が欲しかったところだから」

照月「ほんとですか!?」キラキラ

初月「寝てなくてもいいのか?」

提督「あ、二人ともいたんだ…うん、お薬も飲んだから今は楽になってる」

初月「そうか…」

初月「それにしても、眼鏡を掛けていないお前は新鮮だな」

提督「ん…そうかな」

初月「ああ。可愛いぞ」

提督「…………///」カァ

秋月「…………」シラー

照月「…………」シラー

初月「姉さん達もそう思……な、なんだその顔は…」

秋月「いや…ねえ?」

照月「第二の女たらしになりそうよねえ…」

初月(僕も女なのに女たらしってなんなんだ…)

提督(第一の女たらしは誰なんだろう…)

提督「そういえば…みんな、お腹空いてない…?」

秋月「いえ、先ほど朝ご飯を食べてきたので今はいっぱいです」

提督「そっか…」

照月「あはは、提督ってばいつも照月達がお腹空かせてないか聞いてくるんですね」

提督「だって…しっかり栄養を摂って不自由なく暮らしてほしいから…」

秋月「私たちのことなら心配ありません。飢えになら慣れているつもりですから…今は司令、あなたの身を案じています」キュ

提督「はは…それもそうだね…」

初月「元気になったらまた美味しいご飯を作ってくれるか?」

提督「うん……なんでも、好きなものを作ってあげる…」

初月「ああ、約束だ。早く良くなるように僕も祈っている」

照月「僕達も、でしょ?」

初月「…はは、そうだな」

初月「お前の料理は本当に美味しいからな。きっといいお嫁さんになるぞ」

提督「そう……かな…」

初月「ああ、なんなら僕が貰いたいくらいだ」

照月「」ブッッ

提督「////」カァ

秋月「は~つ~づ~き~?」スッ

初月「ん?なんだ、姉さ……うぐっ!?な、何をするんだ!?離してくれぇ!」パンパン

秋月「またそうやって司令を口説こうとする!失礼だと思いなさい!」ギリギリ

初月「そ、そんなつもりは…」

秋月「わかった!?」グググ

初月「ぐえ……は、はい…!」

照月「た、たぶん天然で言ったことなので…気にしないでね…」

提督「あはは…」

提督「……そういえば…」

秋月「?」

提督「今日のお仕事って、誰が…」

秋月「ああ、それなら加賀さんが処理してくれるそうです」

提督「そう…なんだ。なんていうか…ちょっと申し訳ないな…」

秋月「…いいんですよ、今は休んでて。司令は頑張り屋さんですから」ナデ

提督「でも…」

秋月「また無理をして体調を崩せばみんなが心配しますよ?」

提督「……それは、まあ…確かに…」

秋月「秋月達を気にかけてくれるのは嬉しいですが、自分の体も大事にしてあげてください…ね?」キュ

提督「…うん……」

照月(秋月姉もたらしの才能あるよねぇ…)

初月(提督の見舞いに来ようと色んな子達が業務をサボろうとしてたのは黙っておこう…)

バンッ

金剛「テーーートクゥーーーーーーーーー!!!!!」ドドドド ガバッ

提督「!?」

ボフッ

金剛「テイトクゥ!無事デスカー!?ワタシがいない間泣いてませんでしたカー!?」ギュウウウ スリスリ

提督「っちょ、こ、金剛!く、くっつかないで!私今、汗かいてるから!」グイ

金剛「ン?ンー……good smellネー♪」スンスン

提督「きゃあっ!?こ、こらっ、ダメだってば!///」カアア

グイ

金剛「Oh!?」

霧島「はいはい…相手は病人なんですから、大人しくしててください」

金剛「うー…」

提督「あ、霧島…ありがとう」

霧島「いえいえ。お見舞いに来ましたよ、ほら」スッ

提督「あ、プリン!」

霧島「ふふ、喜んでいただけたようで何よりです」

秋月「私たちはお邪魔のようですね…それでは、失礼しますね」ペコ

提督「あ、うん…ありがとね…」

初月「早く良くなるんだぞ」

提督「…うん」

パタン

提督「榛名と比叡は…?」

霧島「演習です。昨日言っていたことも忘れているなんて…よほど体調が優れないのでしょうか?」

提督「そうだっけ…」

霧島「汗をかいて身体から塩分が失われてるはずですから、スポーツドリンクをどうぞ」

提督「ああ、ありがとう…」

霧島「それと体を拭くタオルです。自分でするのが辛いようなら誰かを呼んでくださいね」

提督「うん……何から何までごめんね…」

霧島「いえ、司令の身を思えばこそですよ」

提督「……霧島はいいお嫁さんになるよ、きっと…」

霧島「…はいはい、冗談は元気になってから言ってください//」

金剛「!?」

提督(初月の受け売りはダメだったかな…)

提督「……………」ゴシゴシ

霧島「…眠そうですね、司令」

提督「うん……少し話してたら、また…」

霧島「まだ体が良くなっていない証拠ですよ。しばらくの間、おやすみしていましょう」クイ

金剛「もう寝ちゃうデスカー…?」

提督「ごめんね、金剛……せっかく来てくれたのに…」

金剛「……テイトクがHealthyになるまでの我慢デース!これくらいなんともないデスから、早く元気になるのを祈ってるネー!」

提督「うん…良くなったらまた一緒に紅茶を飲もうね…」

金剛「Yes!」

霧島「さ、司令…布団を」スッ

提督「…………ふぁ…」

提督「……すぅ……」

金剛「テイトクの寝顔、cuteネー…」ナデ

霧島「見ていたいのは分かりますけど、そろそろ時間ですよ?」

金剛「ン…仕方ないデース」

霧島「…滅多に体調を崩さない人ですからね…心配でしょうけど、司令ならきっと大丈夫です」

金剛「霧島は心配性ネー」

霧島「へっ…!?そ、それは…」

金剛「テイトクが強い人ってことくらい分かってマース、ワタシへの心配はnot needデース!」

霧島「は、はあ…そんなこと言って、真っ先に司令の部屋に駆け込んだのは…」

金剛「…………」

霧島「…………」

金剛「……霧島は一週間比叡curryネ」

霧島「えっ!?」

~~~

ペタ…

「ん…やっぱそう簡単には下がらねーか…」

提督「ぅ……?」パチ

「あ…起こしちまったか?悪い、司令」

提督「嵐…帰ってきてたんだね…」

嵐「ああ、ついさっきな」

提督「……萩風は…」

嵐「食堂の方に行ったよ。うどん茹でてくれるってさ」

提督「…そっか……お疲れ様、嵐…」

嵐「ははっ、お疲れなのは司令の方だろ」ポンポン

提督「…………」

提督「ねえ、嵐…」

嵐「うん?」

提督「冷蔵庫にプリンが入ってると思うの…」

嵐「食べたいのか?」

提督「うん……」

嵐「わかった、ちょっと待ってな」

パタパタ

ガチャ

嵐「お、これか……ん…スポドリもあるな」スッ

バタン

嵐「司令、持ってきたぜ」

提督「ん……ありがと…」

嵐「一人で食べられそうか?」

提督「うん…だいじょぶ…」

嵐「そっか。身体起こすの手伝うよ、ほら」グイ

提督「ああ、ありがと……なんだか、おばあちゃんみたいだね…」

嵐「はは、確かに今の司令はそう見えるかもな」

提督「…やっぱり、あと何十年も経てば…私もこうなるのかな…」

嵐「さあ…どうだろうな…でも、司令がそうなっても俺はずっと司令のそばにいるぜ」

提督「嵐…」

嵐「ほら、スプーン」スッ

提督「……うん、ありがとう」ニコ

嵐(やっぱ笑ってると可愛いな、司令…)

提督「……………」パク

嵐「美味いか?」

提督「うん……冷たくて美味しい…」

嵐「あー…まだ味はよく分からないんだっけ」

提督「ちょっと甘い感じはする…」

嵐「はは、そっか」

ガチャ

嵐「お、来たんじゃないか?」

萩風「司令!おうどんを……」

提督「ああ…萩風、ありg

萩風「………嵐」

嵐「」ビクッ

萩風「…私、勝手なことはしないでって言ったよね?」

嵐「え…あ、ああ…」

ガッ

嵐「うおっ!?」

提督「ちょっ…!」

萩風「どうして勝手なことをするの!?司令の看病は私がするって言ったのに!ねえ!!」ユサユサ

嵐「な、なんだよ萩!?なんでそんなに怒って…い、痛いって!」

萩風「余計なものを食べたら栄養バランスが乱れるでしょ!?司令の健康を損なったらどうするの!?」

提督「ま……待って、萩風…!これは私が食べたいって…げほっ!ごほ、ごほっ…」

萩風「!」

バッ

萩風「司令、大丈夫ですか!?」

提督「う……けほ、くっ…」

嵐「っち…な、なんなんだ一体…」

萩風「すぐにお薬を持ってきます!」ダッ

提督「っく…はぁ…」

嵐「司令、大丈夫か?」

提督「っ……うん、大丈夫…ありがとう」

嵐「ちょっと横になってた方がいいぜ、ほら」

提督「うん…」

嵐「……なあ」

提督「…萩風のこと?」

嵐「ああ、どう見ても普通じゃなかったぜ…」

提督「だね……どうしちゃったんだろ、いきなり…」

嵐「…よく分からないけど、気を付けろよ…何かおかしい」

提督「え…う、うん…」

そして、看病の甲斐あって………




提督「んんん………っはぁ~…!んっ、んんー」グググ コキコキ

嵐「お?おおっ?司令、もう復活した?」

提督「うん、元気いっぱいだよ!」

嵐「おぉー良かったなぁ!司令ッ復活ッ!司令ッ復活ッ!!」

提督「私ッ復活ッ!私ッ復活ッ!あははは!」

萩風「う、ううぅ……司令…よがっだぁ~…!」ポロポロ

提督「っうわ!?ちょ、は、萩風!?そんな泣くこと…」

萩風「だっでぇ…司令が元気に……わああぁぁん!!」ヒシッ

提督「ああ、はいはい…面倒見てくれてありがとうねー、よしよーし」ナデナデ

嵐「お、俺も看病してたぜ!」ソワソワ

提督「うんうん、嵐もありがとう」ナデナデ

嵐「あっ、へ、へへへ…///」テレテレ

提督「で……二人とも、そろそろ遠征の時間じゃないかな?」

嵐「へ?っうわ、ホントだ!おい萩、急ごうぜ!」

萩風「あ、うん!」クルッ

提督「ん、じゃあまた後でね」

萩風「はい!……あ、司令!」

提督「うん?」

萩風「食堂の冷蔵庫に病み上がりのための食事を用意しているので、今日はそれを食べてくださいね!」

提督「ああ…わざわざありがとう」

萩風「それでは!」タタッ

提督「うん、気を付けてねー」

~~~

提督「ふー…今日もいい天気…」

提督「後で洗濯物干さなきゃ…夕飯の支度もしなきゃいけないし…」

「提督さん♪」サワッ

提督「ひゃあっ!?」ビクゥ

間宮「ふふっ、可愛い反応」クスクス

提督「もう…いきなりお尻触られるとびっくりするでしょ…」

間宮「いきなりじゃないならいいんですか?」ワキワキ

提督「…………」ジリッ

間宮「ふふふ、冗談です」

提督「セクハラで訴えたら負けるの間宮さんだからねー?」

間宮「あら、怖いですねぇ」

提督「まあしないけどさ…」

間宮「ところで提督さん、今洗濯物だとか夕飯だとか呟いてましたよね?」

提督「あ、聞こえてた?」ポリポリ

間宮「ダメですよ?病み上がりなんですから、ゆっくりしないと」

提督「ええと…でも、間宮さんや鳳翔さんにばかり任せるのも悪いし…」

間宮「ダーメーでーすー!」

提督「でも…」

間宮「でもじゃありません!また身体を壊して寝込んだらどうするんですか!」

提督「むう…それはそうだけど…」

間宮「私のところで少し休憩した方がいいですよ、甘味も出しますから」

提督「えっ、そんな、いいよ申し訳ないし」

間宮「普段提督さんにしてもらっていることを思えばこんなのまだまだ足りないくらいです。さあ行きましょう、ねっ?」ギュ

提督「あ、あぁ……うん、そういうことなら…」

間宮「やった♪」

ガラッ

伊良湖「……あ!いらっしゃいませ、提督さん!」

提督「こんにちは、伊良湖ちゃん」

伊良湖「待ってたんですよ、こちらの席へどうぞ!」サッ

提督「うん、ありがと」

間宮「ふふ、提督さんがここに来るのは久しぶりですね」

提督「そう?」

伊良湖「はい、伊良湖がたまに執務室に最中やアイスを持っていくことはありますけど提督さんが直接こちらに来るのは一ヶ月ぶりくらいですよ」

提督「そんなに…」

間宮「お忙しいのは分かりますが、たまにはリラックスしてくださいね?私たちもお待ちしてますので」

提督「あはは…考えておくね」

隼鷹「お?提督がこんなところにいるなんて珍しいじゃん?」

提督「あ、隼鷹」

隼鷹「隣、いいかい?」

提督「うん、座って座って」ガガ

隼鷹「へへー、悪いね」

間宮「…………」

伊良湖「…………」

提督「それにしても珍しいね、隼鷹が甘味なんて」

隼鷹「なにさ、あたしが甘いもん食べるのがそんなにおかしい?」

提督「いや、いつもお酒ばっかりだから」

隼鷹「いやいや、そんなことないでしょ」

提督「よ、よく言えたねそれ…」

伊良湖「提督さん、実は新作スイーツがあるんです」

間宮「いかがですか?お代は結構ですので」

提督「ええと…いいの?」

間宮「はい、さっきも言いましたが日頃の恩返しです」

提督「…じゃあ、お言葉に甘えて」

伊良湖「はいっ、準備してきますね♪」パタパタ

隼鷹「やー、太っ腹だねぇ」

間宮「隼鷹さんは自腹ですよ?」

隼鷹「なにぃ!?」ガーン

提督「あはは…」

パク

提督「……んん!美味しい!」

隼鷹「おぉー…これはなかなか…」

伊良湖「ふふっ、お口に合ったみたいでなによりです♪」

提督「これ…抹茶アイスの中に練乳が入ってるんだ」

間宮「ええ、結構苦労したんですよ?」

伊良湖「提督さんが喜んでくれるかなって二人で頑張ったんです」

提督「そうなんだ…!」キラキラ

伊良湖「わっ、て、提督さんがキラキラしてる…」

隼鷹「艦娘じゃなくてもキラキラするのか…」キラキラ

間宮「甘味は女の子の燃料ですよ、ふふ」

提督「むう…こんなに美味しいスイーツがあるなら通い詰めちゃうかも…」

間宮「ふふ、提督さんなら大歓迎ですよ」

隼鷹「さすが、好かれてんねえ」

間宮「……ところで、提督さん」

提督「?」

間宮「…すみません隼鷹さん、少し席を外してもらっても構いませんか…?」

隼鷹「お、あたしはお邪魔ってことかい?」

間宮「大事な話ですので…」

隼鷹「なら仕方ないか…ご馳走さん、また来るよ」ガタッ

間宮「ええ、お待ちしてます」

スタスタ…

提督「…で、大事な話って?」

間宮「ええ…」

間宮「……ここのところ、皆さんの様子…おかしいと思いませんか?」

提督「おかしい?…みんなが?」

間宮「はい…スキンシップが過剰だったり、視線に熱が篭っていたり…提督さん自身からどう見えているのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」

提督「………ふむむ……」

間宮「…………」

提督「……そう言われてみればそうかもしれない…けど、さすがに自意識過剰かも…」

間宮「それに越したことはないんですが…もしも、もしものことがあれば私…」

提督「もしものことって…?」

間宮「……艦娘の誰かが、提督さんを連れ去ったり…殺したり、とか…」

提督「…あはは…まさか、そんなことあるはずーーー」

キイィィン

提督「ーーっ!?」ズキッ

間宮「!」

伊良湖「提督さん!?」

提督「……だ、大丈夫…ちょっとめまいがしただけ…」

間宮「あの、体調が優れないようなら医務室に…」

提督「ううん、ほんとに平気。心配かけてごめんね」

伊良湖「もし何かあったらすぐに言ってくださいね…?」

提督「うん、ありがとう」

間宮「……とにかく、気を付けてくださいね。思い過ごしならいいんですが…」

提督「でも…あまりみんなを疑うような真似は…」

伊良湖「優しい、ですね…」

提督「…せっかく忠告してくれたんだし、私も少し様子を見てみる」

間宮「はい。…私たちで良ければ、いつでもお力になりますので…困った時はぜひ頼ってくださいね」

提督「ふふ、わかった」

提督(…なんだったんだろう…さっきの、変な感じ…)

ガララ

提督「ご馳走様でしたー」

バタン

萩風「司令」

提督「うわっ!?び、びっくりした…」ドキドキ

萩風「何を食べていたんですか?」

提督「え…お、お菓子だけど…」

萩風「健康に良くないですよ?」

提督「それは、そうだけど…でもすぐに影響なんて出ないよ」

萩風「ダメです、司令は病み上がりなんですから」

提督「まあ…確かに、冷たいものはお腹壊すかもしれないけど…」

萩風「そうです、少し自覚してください」

提督「…そこまで言わなくても…大人なんだから自己管理くらい」

萩風「ダメなんです!!」

提督「」ビク

萩風「自己管理ができていないからあんな風に寝込んだんですよ!?自分では大丈夫だと思っていてもいつどこから健康は崩れるか分からないんです!」

提督「あ…と、とりあえず落ち着いて…」

萩風「……司令のことだから心配してるんですよ?」

提督「そ、その気持ちはありがたいけど…」

萩風「って言って逃げるんですよね?」

提督「う…」

萩風「…これからは私が司令の健康を管理します。勝手な真似はしないでくださいね」

提督「え?」

萩風「それでは」

提督「あ、ちょっと!」

スタスタ…

提督「……なんなの、もう…」

皐月「うりゃ!」ガバッ

提督「わおっ…皐月か」

皐月「司令官の背中もーらいっ!」

提督「はいはい…」

皐月「いやー、司令官って意外と身長あるよねー」

提督「そう?」

皐月「うん、こうしてると普段より高い景色だから面白いよ」

提督「そっか」

電「あ、司令官さん!」

提督「あ。電、お疲れ様」

皐月「やっほ!」

電「…皐月ちゃんも、こんにちはなのです」

提督「遠征終わったところ?よかったら艤装運ぼうか?」

電「あ、いえ。司令官さんはもう持ってるものがあるみたいなので…」

皐月「へっへーん、司令官専用の艤装だよ」ギュ

提督「あはは…」

電「…………」

~~~

提督「ふー……」

提督(なかなか仕事が片付かない…)

提督「……ふあぁ」

提督(お腹いっぱいになって眠くなってきたし…ちょっとだけ仮眠しようかな…)

カチャ

提督「んー……」

提督「…………」


………………



提督「……………?」

提督「あれ…ここ、は……?」キョロキョロ

ゴポポ…

提督「海の中……?」

提督「…でも、息はできるし…夢…?」

「ーーーーーー」

提督「え?」

「ーーーーーーーー」

提督「声…?誰かいるの…?」

「ーーーーーーーー」

提督「なに…?何か伝えようとしてる…?」

シーン…

提督「……何も聞こえない……」

提督「………あ………」

ゴポポ…

提督「意識、がーーー

提督「!」バッ

青葉「おわぁ!?」ビクゥ

提督「あ、あれ……?青葉…?」

青葉「はは、はい!どうしました?」

提督「………? さっきのって、やっぱり夢…?」

青葉「へ?変な夢でも見たんですか?」

提督「ええと…うん、まあ…そんなところかな…」

青葉「はあ。まあ、まだ病み上がりですし少し頭が疲れてるのかもしれませんね」

提督「そう、なのかな……って青葉、そのカメラは何?」

青葉「え?あっ、ああ!な、なんでもないですよ??」バッ

提督「人の寝顔を撮ろうとするなんて…悪趣味」

青葉「あ、あはは…す、すみません…」

提督「もー…別にいいけど新聞とかに載せるのはやめてよ?」

青葉「ああはい、心得てます…」

提督(……夢…にしては妙に現実感があったような…)

このスレの存在忘れてました本当に申し訳ないです…

提督「はぁ、ちょっと眠気覚ましに歩いてこようかな」

青葉「サボりもほどほどにしなきゃダメですよー?」

提督「分かってるって」

ガチャ

提督「う~ん…なーんか、ふわふわして気持ち悪いというか…なんだろう、この変な感じ…」

大鯨「あ、提督…お疲れ様です…」

提督「ああ、大鯨…って、大丈夫?なんだか顔色が悪いけど…」

大鯨「…ふふ。実は吐き気がすごくて…」

提督「そうなの!?しばらく非番にするから、すぐにでも休んだ方が…」

大鯨「ありがとう、ございます…やっぱり提督は優しいですね…///」

提督「ほんとに無理しちゃダメだからね?何かあったらすぐに呼んでね?」

大鯨「はい、了解です…それでは…」フラフラ

提督「大鯨…」

提督(……ん?吐き気がするって言ってた割にお腹を押さえてるような…いや、あれは…さすってる?なんでだろ……)




大鯨「う、ふふふ……やっと、できた…提督との……ふふ…」

フラフラ…

提督「…そういえば、大鯨以外にも体調が良くないっていうか…少し様子がおかしい子がちらほら居たような…」

提督「…もしかして風邪、移しちゃったかな…」

「お?おーっす、司令!」

提督「ん?ああ、嵐」

嵐「なんだ、考え事か?」

提督「まあ、そんなところかな…」

嵐「ふ~ん、やっぱ司令の立場だと悩むことも色々あるんだな」

提督「…………」

嵐「…あれ?結構真面目な話?俺で良ければ相談乗るぜ?」

提督「…嵐、最近何か変わったこととかない?」

嵐「変わったこと?うーん……」






嵐「ある」

提督「!…たとえば?」

嵐「まず、最近萩の様子がおかしいのは司令も知ってるだろ?」

提督「…うん。私が目を覚ましてから明らかにおかしくなってる」

嵐「で…萩以外にもなんかちょっと引っかかるやつがちらほらいるんだよ」

提督「たとえば?」

嵐「金剛さんとか…一見いつも通りに見えるけど、よく見ると何かがおかしいんだよ」

提督「…他は?」

嵐「そうだな……木曾さんもおかしいっちゃおかしいんだけど、いつも司令を気にかけてるような…すごく心配そうにしてるっていうか…」

提督「そっか…うん、ありがとう」

嵐「まあただの杞憂かもしれないから、そんなに深く考えなくてもいいぜ」

提督「あはは…そうだといいんだけど」

嵐「…ところで司令、私が目を覚ましてからって…ずいぶん変な言い方だな」

提督「え?そう?」

嵐「や、間違ってるわけじゃないんだけど、なんだろ……あーもう!なんか混乱するなぁ!」

提督「うーん、ちょっといっぺんに考えさせちゃったかな。ごめんね」

嵐「いいっていいって!それより俺、身体動かしたくなってきたからさ。一緒に走るとかどうだ?」

提督「あ、いいね!行こう!」

嵐「へへっ、そうこなくっちゃな!」パチン

嵐「はーっ、はーっ…司令、すごいな…どんだけスタミナ…あるんだ…」ゼェゼェ

提督「あはは、学生の頃は毎日これくらい走ってたからね」

嵐「司令って見かけによらず体動かすの得意なんだな…」

提督「よく言われるよ…」

嵐「んー…でもまぁ、司令と走るの楽しかったぜ!またやろうな!」

提督「うん、時間がある時にね」

嵐「……へへ」

提督「どうしたの、急に笑って」

嵐「いやあ、司令はいい人だなって思ってさ」

提督「っふふ、褒めても何も出ないよ?」

嵐「笑顔が出てるだろ、俺は司令のその顔好きだぜ」

提督「あれ、もしかして口説かれてる?」

嵐「そんなんじゃないって!ただ、なんていうか…司令は特別に思えるっていうか…」

提督「特別…?」

パリッ

提督「つっ……!?」

嵐「!? お、おい、司令!?どうした!?」

提督「……大丈夫だよ。少し、目眩がしただけ…」

嵐「ほ、ほんとに大丈夫か…?なんなら明石さんに見てもらった方が…」

提督「ううん…ほら、もうしっかり立てるから。心配しないで」

嵐「…なら、いいけどさ…一応あんまり動き回らないようにしてくれよ…?」

提督「うん…ありがと」

嵐「執務室までは送っていくからな、お節介かもしれないけど」

提督「いや、助かるよ…」

提督「…………」

提督(まただ…また、変な頭痛が…)

提督(……なんだったんだろう…もしかして私の周りで何か異変が起こり始めてる…?)

提督「…………」

提督「……あ、そうだ。装備の改修をしなきゃいけないんだった…明石、いるかな…」

~~~

ガチャッ

提督「明石、いるー?」

明石「あ、提督。正面の扉から入ってきてくださいって言ってるじゃないですか。裏口は私専用ですよ?」

提督「や、正面の扉重すぎて開かないし…どう考えても艦娘用でしょあれ…」

明石「裏口から入ると仮とはいえ私の寝床を経由するじゃないですか」

提督「見られて困る物でもあるの?」

明石「まあ別にないですけど…」

ガチャ

吹雪「明石さん、持ってきまし……あ、司令官。こんにちは」ビシッ

提督「ん、吹雪…何か用事?」

明石「用事というか、ついさっき話してたところで」

吹雪「はい…」

提督「?」

提督「もしかして怪我か何かしたんじゃ…」

吹雪「あ、そ、そうじゃないんです。ただ…」

明石「はい、実は……」



・・・・・・・・・・

提督「……足が痛む?」

吹雪「はい、時々…締め付けられるような痛みが走るんです…」

提督「…ちょっと失礼するね」スッ

吹雪「は、はい///」

提督「どのあたりが痛むの?」

吹雪「えっと、付け根のあたりが特に…」

提督「……見たところ、外傷はないみたいだけど…」

明石「そうなんですよ、原因が分からないんです」

提督「成長痛……とは思えないか…」

吹雪「つい最近から、なぜか痛むようになって…耐えられないってほどではないんですけど…」

明石「うーん…とりあえず、対処のしようがないから…効くかは分からないけど、持ってきてもらった袋の中に鎮痛剤が入ってるから。どうしようもなく痛む時はそれを使って」

吹雪「はい…」

提督「何かあったらすぐに言ってね」

吹雪「了解、です」

明石「それで、提督はなんの用事で?」

提督「ん…ああ、装備の改修をね」

吹雪「あ、手伝います!」

~~~

~~~

提督「ふぅ、疲れた…」ボフッ

提督「…………」

提督(……一人になって、何もしていないと分かる…)

提督(何か…具体的には分からないけど、何かおかしいような…じわじわと湧き出すような、違和感のようなもの…)

提督(どこからってわけじゃないけど…なぜかそれを感じてしまう…)

提督「………!」バサッ

提督(あのぬいぐるみの位置、変わって……)

提督(……いや、さすがに考えすぎだよね…明日も早いし、もう寝よう…)

「……………」

「ヒトフタマルサン、就寝…」

「………毎日こんなに遅くまで…司令は頑張り屋さんね…」

「…………」

「……ふふっ」

「可愛い寝顔……」

「…………」

「…………」

「…………」

「……もう少しだけ……」

「…………」

「……ふふ」

「ふふっ……うふふっ、ふふふふ…」

提督「……っは…!」バッ

提督「はぁ…はぁ…?ゆ、夢…?」

提督「…………」

提督(なんだろう…誰かにじっと見つめられる夢だった…あんなの初めて見た…)

提督「……うぅ、寝汗が…」

提督「…この時間なら誰もいないだろうし、シャワーでも浴びようかな…」



提督「うん、そうしよう…着替え着替え…」

ガチャ

バタン

シャアアア

提督「ふあー…気持ちい…」

提督「…………」

「…………」

提督「………!?」ゾクッ

提督「っ」バッ

シャアアア…

提督「…………」

提督(き、気のせい…だよ、ね…)

提督(……いや、でも…視線を感じるなんて…誰もいないはずなのに…)

提督(…幽霊の方が気が楽かも……)

提督(……早めに上がろう)

~~~

提督「はぁ……」

飛龍「どしたの、ため息なんて吐いて」

蒼龍「悩み事?」

提督「うーん…そうかも…」

飛龍「あれ、珍しい…」

蒼龍「よかったら相談に乗ろうか?」

提督「……うん、実はね…」

嵐「なんだなんだ、司令に悩み事だって?」

飛龍「ん、そうみたい。嵐ちゃんも聞いてあげて?」

嵐「おう、任せとけ!」

提督「…最近、身の回りで変なことが起きてるっていうか…考えすぎかもしれないんだけど…」

蒼龍「うんうん」

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