喜多見柚「ハローグッバイ!」 (15)
モバマスSSです。
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「わったしがみてーきたーすっべーてのーことー♪」
「むーだーじゃないよーってキミーにフフンフフンフフーン♪」
真昼の事務所、喜多見柚はソファで足をばたつかせて鼻歌を歌う。
今から10年以上も前に流れていたその歌をどうして今頃彼女が歌っているのなんか知る由もない。
広い事務所には無垢な彼女と彼女のプロデューサーの2人だけ。
ひとしきり鼻歌を歌い終えた彼女はパソコンとにらめっこを続けるプロデューサーをちらりと見遣り、いたずらっぽく笑う。
「私の生歌の感想はどう? プロデューサーサン」
「またえらく懐かしいチョイスだな」
キーボードをたたく手をとめ、プロデューサーは柚を見つめる。
「俺が学生の頃に流れてた歌だぞ」
「じゃあ大昔の曲じゃん!」
「おい」
くすくすと笑いあいながら、いたずらのように言葉を投げる。
「んで、なんでいまさらになってそんな歌を?」
「んー、なんていうんだろ。最近はどこを歩いてもおんなじ音楽ばっかり流れるからつまんなくなったの。それで、ちょっと前の音楽CDとかを聴くようにしてるんだー」
ぼふぼふとソファを足でたたきながら柚は言う。プロデューサーは「はしたないぞ」と声をかけるだけだ。
「フリスクのみんな――忍チャンやあずきチャンや穂乃果チャンにおすすめの歌を聞いたりして、『あの頃はあんな歌あったよねー』とか『あのテレビでこんな歌流れてたよねー』とかわいわいダべるのが最近の楽しみなの」
「おばさんくさいことを……」
あきれたようにプロデューサーが言う。
「プロデューサーの俺がこんなことを言うのもどうかと思が、最近の曲はわからんよ」
「あー! オッサンくさいこといった! オッサンだオッサン!!」
指をさして笑う柚をあしらいながら、プロデューサーは大きく伸びをする。
「もっと柚の歌声、聞かせてくれよ。好きだから」
なんともなしに言ったその言葉に、少しだけ間をおいて柚の顔面が真っ赤に染まる。
「ふぇっ……?」
「ん?」
乙女とオッサンの思考がすれ違う中、唐突に事務所の扉が開く。
「おはようごさいます……って」
扉の開く音に柚とプロデューサーが同時に音の主を見つめる。その正体はフリルドスクエアの1人、綾瀬穂乃果であった。
「おぉ、おはよう」
「ほほほほほ穂乃果チャン!? おおおおおっはよー!!」
「どうしたんですか? 顔がリンゴみたいに真っ赤になって――柚なのにリンゴ……」
穂乃果が自分で何気なくつぶやいたセリフに小笑いしているうちに、柚は真っ赤な顔であわてながら目まぐるしく動き回り、様々な言葉を投げている。
「違うよ穂乃果チャン!? これは決してラブラブ大作戦とかのやつじゃないよ?!」
「何も言ってないですけど……」
「穂乃果はコーヒーでいいか?」
「なんでプロデューサーさんはそんなに落ち着いてるの?!」
目をぐるぐるに回して慌てる柚に、プロデューサーは不思議そうに問う。
「なんでお前、そんなに慌ててるの?」
「だってだってだって! プロデューサーサン柚のこと好きって!!」
「歌声な」
「ふぇっ」
プロデューサーの言葉に柚はぴたりと固まり、そして大きく胸をなでおろす。
「よかったあー。あやうくスキャンダルでアイドルやめなきゃならないかと思ったよ」
「高校卒業したらそういうこと考えてやるよ。柚もコーヒーでいいな?」
「アイスコーヒーで!」
「あ、私もアイスのほうで」
「はいよ」
いつも通りの空気が流れる。
ゆっくりと時間が流れる。
このあと穂乃果に柚がめちゃくちゃからかわれ、ぴにゃこら太がぐさぁー!されたのもいつものこと。
以上でおしまいです。柚といっしょにダべりたいだけの人生だった。
少ししたらHTML依頼してきます。
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