王様「勇……者?」
霧吹勇者「またの名を『ミストお兄さん』、霧吹勇者とでも呼んでくれたまえ」
王様「なんだお前は……」
王様「おい、どういうことだ」チラッ
召喚士「召喚は成功しています、となれば恐らくこの者が異世界より招かれた勇者ということに」
王様「……この、全裸で顔に珍妙なマスクをした、筋骨隆々の如雨露を持った男が?」
霧吹勇者「失敬な、この面はひまわりだ」
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霧吹勇者「それで? 召喚される時に聞いた話じゃ魔王ってのに困らされてるんだって?」
王様「なんと、既にこちらの事はご存知か」
召喚士「そのように術式を編みました」
霧吹勇者「場所さえ分かれば俺が話をつけてくるぜ?」
王様「いや、もはや魔族とは和解など出来ぬ……殲滅して欲しい」
霧吹勇者「それはできねえな」
王様「!…なぜだ?」
霧吹勇者「俺にできるのは熱中症を防ぐためにミストを撒き散らすことだけだからだ」
王様「……なんだそれは」
王様「ふ、ふざけるな! 何のために貴重な資源を使って召喚したと思っている!」
霧吹勇者「そりゃそっちの事情だしなぁ」
王様「ええい! どういうことだ召喚士!!」
召喚士「……異世界の勇者よ、伝承では確かにこの召喚に応じた者は世界を救っている」
召喚士「貴方は戦いで勝利を掴むタイプの勇者ではないだけで、それなりの能力があるのでは?」
霧吹勇者「ミスト出しまくる以外は力任せに殴るしか出来ないんだが」
召喚士(やばい、召喚ミスったなこれ)
● ● ●
召喚士「半ば追い出される形で出発させられてしまった……」
霧吹勇者「さてさてどこに向かうんだね」
召喚士「魔王のいる島までは軍艦で向かいます」
霧吹勇者「おー、本格的だなぁ」
召喚士「呑気ですね」
霧吹勇者「何だかんだ平和みたいだからな」
召喚士「そう見えますか」
霧吹勇者「定期的に世界の危機が発生するうちの世界よりかはマシだわな」
召喚士(どんな世界から来てるんだこの人)
霧吹勇者「む? 何故に馬を買いに来たんだ」
召喚士「軍艦は東の港まで行かないと無いんですよ、この王都は大陸中央にありますからね」
霧吹勇者「遠いのか」
召喚士「二ヶ月はかかりますが……な、なにか問題が?」
霧吹勇者「ささっと終わらせて帰りたいんでね、必要な物がなければこのまま連れていく」
召喚士「はい?」
霧吹勇者「乗りたまえ」ズシッ
召喚士「……え、あの」
霧吹勇者「なんだ」
召喚士「なぜに如雨露を股間に挟んでブリッジを・・・」
霧吹勇者「飛ぶのだ」
召喚士「!?」
召喚士「ぁ、ぁぁあ…あの? の、乗りましたが……」
霧吹勇者「道案内、頼んだぞ」
召喚士「本当に飛ぶんですか!?」
霧吹勇者「『ミストフラッシュ』!!」
〈 ブシャアァアアアアアアアアアアアアアアア!!!
召喚士(ひいいいいい!? 浮いてる!? え!? ただの如雨露じゃないんですかあれ!?)
霧吹勇者「股間のレバーで進行方向を変えられる、舵取りも頼んだぞ」
召喚士「え!? 股間の、なに!?」
霧吹勇者「my、sunだ!!」
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