【ミリマス】 踏み出す一歩と胸の高鳴り (15)

建物の外はしとしとと雨が降っている。梅雨の季節とはいえ、前々日からずっと降り続いているこの雨には少々うんざりと感じている。
パソコンを操作していた手を離し、目頭を押さえたりしていると奥から女性が歩いてきた。

「お疲れ様、プロデューサー。そろそろ休憩したら?」

「いや、まだまだ大丈夫ですよ、このみさん」

「またそんなこと言って・・・。目を押さえてたじゃない。お茶、飲むでしょ?」

「見られてたんですね・・・。じゃあ、いただきます」

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「・・・にしても雨、降りますねえ」

「そうね。もう梅雨のシーズンだもの」

このみさんに貰ったお茶を飲みながら、なんでもない話をする。彼女とのこんな何気ない会話が心地よくて好きだったりするのだ。

「・・・あら?これって?」

「ああ、それはプロフィールの紙ですね。所属する時に出してもらった奴だと思います。資料の束の中から発掘したのであとで整理しようかと」

「発掘って・・・。そういえば、もう何年も経つのよね。私が来たばかりの時の撮影のことも最近みたいに感じるわね」

「公園での撮影のやつですよね」

「・・・もしかしてあの時のことまだ気にしてます?」

「さあ、どうかしらね?」

「えーと・・・。あっ、さっきちょうど海水浴シーズンに向けて水着の撮影の話が来てましたよ!」

「本当!?どういうやつなの?」

「えっと、スクールみ・・・。怖いです冗談ですから落ち着いてください」

「まったく・・・。そういえば私がここでアイドルをやることになった経緯は話したことあったわよね?」

「ええ。事務員志望だったところを書類が取り違えられてたんでしたよね」

「そう。でも今は偶然じゃなかったのかなって思うようになったの」

「それは・・・運命ってことですか?」

「そう言ってもいいかもしれないわね」

「私が子供のころ、よくテレビに映るアイドルをみてたの。華やかで、美希ちゃんの言葉を借りるなら”キラキラしてた”」

「でもその時アイドルになろうとは思わなかったわ。自分になんてとてもなれっこない、こっちの方が近いかしら」

「前の職場に不満はなかったけど、ここの事務員の求人を見たときすごく惹かれたのよ」

「今思い返してみれば、アイドルへの憧れが心のどこかにあったのかもね。アイドルは無理でも近くで応援できる立場なら、って」

「実際は、本当にアイドルになるって話で進んでたわけだけどね」

「そうだったんですか・・・」

「本当に自分がアイドルとしてやっていけるのか、っていうのに不安はあったわ」

「そんな時に声をかけてくれたのがプロデューサーだったの。初めて会った時の事、覚えてるわよね?」

「もちろんです。何か深く悩んでる様子のこど・・・女性がいて、小鳥さんに聞いたらアイドル志望生って言うじゃないですか」

「それでその日の夜、劇場に来るようにって言ったんでしたね」

「まさか舞台袖でライブを見せてもらえるなんて思ってなかったけどね・・・」

「私に足りなかったのは踏み出す一歩と胸の高鳴り。あの時気づかせてくれて、ここまで導いてくれて本当にありがとう」

「こちらこそ、このみさんと出会えて本当によかったです。これからもよろしくお願いします」

「ん、雨、あがったみたい」

「あれ、本当ですね。少し早いですが、また振り出さないうちに現場に向かいますか」

「そうね。準備してくるわね」

「・・・ねぇ、プロデューサー。プロデューサーは運命って信じてる?」

「そうですね。このみさんとこうして今過ごせているんですから、感謝しなくちゃいけませんね」

「フフ、私もそう思うわ。さあ、行きましょうか」

「ええ。二人でてっぺんめざしましょう!」


おわり

短いですが以上です。読んでくださった方ありがとうございます。
こんな話があったらいいなと妄想してたのを書いてみました。


このみさん、誕生日おめでとうございます!!!!
これからも、ずっとよろしくお願いします!!

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