物の見方 (10)
私が、仲間とこの国に連れてこられたのいつだろう。
まだ青く、これからの未来を夢見てすくすくと育っていたあの頃が懐かしい。
太陽がギラギラと眩しいあの昼下がり、私と仲間は拉致された。
冷たい。
見たこともない機械や、鼻をつく赤い激物。
私と仲間は乱暴に、一枚、また一枚と纏いを剥ぎ取られ丸裸にされていく。
「誰か、誰か……助けて……」
その声は誰の心にも届くことはない。室内に虚しく響いて消えた。
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白い服に白いマスクをしていた。
監視役が時間を変えて見回りに来る。
逃げられるわけもなく、激物の影響だろうか、私達は日に日に1人また1人と弱っていった。
私はまだ幼かった。
淡い希望を描いて、心が負けてしまわないように頑張っていた。
ひと月。ふた月。
もう限界だった。
気を失った。
気がつくと、暗い闇の中で体に伝う、わずかな振動を感じた。
私まだ生きてるんだ……。
その安堵からまた気を失った。
(……ここは?)
愕然とした。
私が全く知らない物があった。
私を含む仲間が丸裸のまま箱に押し込まれていた。
「新しい、珍しい、いかがですか!?安いよ」
目の前にいる巨人の声だった。
その声に気づいた違う巨人が、
「新しいたべもの?」
何を言ってるの……。
「そうですよ!とびっきり珍しい食べ物です」
そう言うと巨人は、仲間を刺した。
「ぐげぇ」
木の杭で体を突き刺された仲間が死んだ。
私は、頭がおかしくなりそうなこの状況を冷静に分析しようとしたが無理だった。
「どうぞ」
巨人が巨人に仲間の死体を渡す。
渡された巨人は顔を歪めていた。
「騙されたと思って」
口に入れた巨人の咀嚼が始まり喉が揺れた。
満足気に巨人は私達を催促した。
「ありがとうございます!」
(えっ……嫌だ。死ぬのは嫌だ。死ぬのはいや……)
無駄だった。半透明で巨大な袋に入れられると出口は閉じられた。
(私死ぬんだ……食べられて死ぬんだ……)
それから私は考えることをやめた。
巨人はもの凄い速度で歩き、その身体よりもさらに巨大な根城に入っていく。
そして、巨人は準備を済ませると死にそうなほど冷たい牢獄に私達を閉じ込めた。
そこには、同様に巨人が喰うことが目的と思われる知らない人たちがいた。
「お嬢ちゃん達凄いニオイだな……」
「本当……臭い。迷惑」
私達をみんなが避けた。
それは仕方ない。
あんな激物にさらされて居たのだから。
すみません……すみません……ただひたすら謝った。
そんな中、一人だけは優しかった。
「君たち、僕のそばにおいで」
「でも私達ニオイが……」
「大丈夫だから。僕は気にしない」
私達は、その優しさに吸い寄せられるように彼の側へと集まっていた」
「君たち名前は?」
「僕は芭」
「私は紅」
「僕は西」
「そうなんだ。僕は楕・秋斎だ。よろしくね」
彼の隣は不思議と落ち着いた。全てを包んでくれるような。悪い物を、彼が吸い取って消し去ってくれるような安堵感が彼にはあった。
それから、私達は三日程この冷たい牢獄に監禁されていた。
何度か扉が開いては、誰かが消えたり新しい人たちが入ったりした。
私の番はいつだろう。
また開いた。
違う巨人が私たちを引きずり出した。
楕さんさようなら……。
「紅……紅……うわああああああ」
楕さんの声を掻き消すよう扉は閉められた。
巨人は芭を捕まえると、
ぱく……ぐちゃぐちゃ
西を捕まえると、
ぱく……ぐちゃぐちゃ
巨人に私達は食べられていく。
次は私だ。
しかし、巨人は入れ物掴むとまた冷たい牢獄に放り込んだ。
(私助かったんだ)
放心状態の私を、楕さんが抱きしめてくれた
「良かった……本当に良かった」
ただ強く抱きしめてくれた。
私も抱きしめた。
それから私達は一週間程共に生きた。
私はもう身体が保たなかったのだ。
楕さんは最後まで弱ってく私に優しかった。
こんな出会いじゃなかったら幸せになれていたのだろうか。
今はわからないけど、楕さんは初恋の相手で、そして最初で最後の……。
私の愛した人だった。
完
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