ハイジ「おじいさん！　あたし、どうしてもクララを倒したいの！」

ハイジ「お願い、あたしがクララに勝てるように特訓して！」

おじいさん「う～む、しかしワシももう年じゃ」

おじいさん「激しい特訓はしてやれんし、勝たせてやることは難しいかもしれん……」

トライさん「そんな時は家庭教師のトライにお任せ下さい」

おじいさん「トライさん、あんた勉強だけでなく、格闘技の教師もするようになったのかね？」

トライさん「そのとおりです」

トライさん「家庭教師のトライはこのたび格闘技コースも開設いたしました」

トライさん「マンツーマンの個別指導で、鮮やかなＫＯ勝利を約束します」

ハイジ「まあ、すごい！」

おじいさん「さすがトライさんじゃ！」

トライさん「私の指導で、必ずやハイジさんをクララさんに勝たせてみせます」

ハイジ「だけど、どうすればクララに勝てるの？」

トライさん「これからハイジさんには、徹底的にローキックと左フックの練習をしてもらいます」

ハイジ「ローキックと左フック？　どうして？」

トライさん「まず、足を攻撃するローキックは長年車椅子生活を送っていたクララさんに非常に有効だからです」

トライさん「何発かローを当てれば、クララさんは立っていることも辛くなるはずです」

おじいさん「なるほど、理にかなっておる」

トライさん「そして、左フック」

トライさん「ボクシングでもっともＫＯ率が高いパンチは左フックといわれています」

トライさん「ローキックで意識が下に向いているクララさんの顎に左フックを命中させれば」

トライさん「ハイジさんの必勝間違いなしです！」

おじいさん「うむ、トライさんの理論は完璧じゃ！」

ハイジ「あたし……クララに勝てそうな気がしてきたわ！」

ハイジ「たあっ！　たあっ！　たあっ！」ﾊﾞｼｯ ﾊﾞｼｯ ﾊﾞｼｯ

トライさん「いいですよ、ハイジさん！」

トライさん「そのローキックなら、人間の足はおろか、バットだってヘシ折れます！」



ハイジ「でやっ！　でやっ！　でやっ！」ｼｭｯ ｼｭｯ ｼｭｯ

トライさん「そうです、そのタイミングです！」

トライさん「顎に正確なフックをクリーンヒットさせれば、クララさんは必ずダウンします！」

――

――――



ハイジ「クララ、勝負よ！」

クララ「あらハイジ、また懲りずにやられにきたの？」

ハイジ「あいにく今日はやられるつもりはないわ！」

クララ「ふふふ……どっちが真のアルプスの少女か、改めて思い知らせてあげるわ！」



ペーター「アルプス最強決定戦が始まる……！」ｺﾞｸｯ

クララ「いくわよっ！」ﾀﾞｯ

ハイジ（ここでローを合わせる！）

バシィッ！

クララ「ぐっ……！？」

ハイジ「もういっちょ！」

ベチィッ！



ペーター「すごいローキックだ！　ぼくだったら一発で倒れてる！」

バシッ！　ベシィッ！　ドシィッ！

クララ「ぐうっ……！」

ハイジ（クララの視線がだんだん下を向いてきた！　あたしのローキックを嫌がってる証拠！）

ハイジ（クララの顎が……ガラ空きだわ！）

ハイジ「――今よっ！！！」ｼｭｯ



ドカァッ！

クララ「がっ……！？」

クララ「あうっ……」ｸﾞﾗｯ…

ドサァッ……

ハイジ「や、やった……！　やったわ！」



ペーター「左フックが完璧に顎に入った……！　ハイジの勝利だァ！」

ハイジ「これで……これであたしがアルプス最強の少女なのね！」

クララ「ふふ……」

ハイジ「え！？」ﾋﾞｸｯ

クララ「やるじゃない、ハイジ」ﾑｸｯ

ハイジ「そ、そんな……ッ！」



ペーター「クララが……クララが立った……ッ！」

クララ「今のハイジなら、少しくらい本気を出しても大丈夫そうね」ﾆｺｯ

ハイジ「ウソ……！　今までは本気じゃなかったの……！？」

ペーター「クララの奴、全然ダメージを受けてない……！　ピンピンしてる……！」

クララ「じゃ、今度は私の番ね」ｻﾞｯｻﾞｯ

ハイジ「あ……あ……！」ｶﾞﾀｶﾞﾀ…

ハイジ（どんなに大きいヤギだってブランコだって怖くないあたしが……震えてる！？）ｶﾞﾀｶﾞﾀ…

ハイジ（あたし……クララに恐怖しているというの！？）ｶﾞﾀｶﾞﾀ…

ハイジ（誰か……助け……）

トライさん「お待ち下さい！」ﾊﾞﾊﾞｯ

クララ「あなたは……！　たしか家庭教師の……」

トライさん「ハイジさんにあなたとの対決をそそのかしたのは私です」

トライさん「よって、ここからはこの私があなたと戦います」

ハイジ「トライさん！？　どうして！？」

トライさん「家庭教師のトライは、万一の時のアフターケアも万全なんです」

クララ「ふうん……じゃあたっぷり楽しませてちょうだいね」