―――――事務所―――――

五十嵐響子（今晩のご飯、何にしようかなー……）

響子（お仕事上手くいったし、ちょっと奮発しちゃうのもいいかも……）

響子（この台本に一通り目を通したら、スーパーに寄って帰ろう……）

ｶﾞﾁｬ
島村卯月「こんにちは！」

緒方智絵里「こんにちはっ」

小日向美穂「こんにちは」

響子「あっ！　3人共、こんにちは！」

卯月「響子ちゃん1人ですか？」

響子「はい、そうですよ！　どうかしましたか？」

智絵里「ここ、ちょっと使ってもいいかな……？」

響子「この部屋ですか？　大丈夫ですよ！　そういえば、3人でユニットを組むんでしたっけ？」

卯月「そうなんです！　でも、会議室が全部埋まっちゃってて……」

響子「なるほど……。席を外した方がいいですか？」

美穂「ううん！　平気だよ。ちょっとうるさくしちゃうかもだけど……」

響子「構いませんよ！　じゃあ、あっちで台本読んでますね」ﾄｺﾄｺ

卯月「ありがとうございます！　この御恩は一生忘れませんね！」

響子「そこまでではないですけど」

智絵里「明日1日、絶対服従するねっ！」

響子「そこまでではないですけど！？」

美穂「そうだよね、24時間じゃ短いよね……」

響子「そういう人間に見えてるんですか！？」

響子（ちょっと離れたけど……、あの3人、ちゃんと会議になるのかな……）


卯月「はい！　それでは第83回、ピンキーキュート会議を始めます！」

響子（デビュー前なのに83回もやってるの！！？？）

美穂「う、卯月ちゃん！　回数が違うよっ！」

響子（美穂ちゃんはちゃんとしてるのかな……？）

美穂「まだ82回目でしょっ！」

響子（まだ？？？？？）

智絵里「2人共！　第79回がベトナム戦争で中止になったから、実質81回目ですよっ！」

響子「そんなに歴史があるの！！？？」

卯月「え？」ﾁﾗｯ

智絵里「え？」ﾁﾗｯ

美穂「え？」ﾁﾗｯ

響子「あっ！　い、いや、だ、台本のことなんです！　気にしないでください！」

響子（お、思わず声に出ちゃった……！）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

響子（台本に集中しなきゃ……）

卯月「では、今回の議題を、智絵里ちゃん！　お願いします！」

智絵里「パス！」

響子（智絵里ちゃん！？）

卯月「では美穂ちゃん！」

美穂「えっと……、どんなお仕事をしたいか、とかをまとめておくのはどうかな？」

智絵里「ようやくまともなセリフが出てきましたねっ！」

響子（ブーメランなんじゃ……）

美穂「智絵里ちゃんっ！　ブメーランだよ！」

響子（惜しい！）

卯月「美穂ちゃんはどんなお仕事がしたいですか？」

美穂「えっと……、テレビとかは緊張しちゃうから、ラジオとかやってみたいな」

智絵里「さて、始まりました、ピンキーキュートのピンキーrrrrrrrrrｪｨﾃﾞｨｵ！！！」

響子（何か始まった！？　あと巻き舌すごっ！！！）

智絵里「全国のヒマ人に送るこの番組の司会は、わたし、緒方智絵里と」

響子（ちょっと毒があったような）

卯月「ラジオ・音響技能検定１級や第一級陸上無線技術士の資格を持つ島村卯月がお送りします！」

響子（セリフの半分くらい自慢でしたけど！？）

智絵里「今回はゲストに、何の資格も持たないあの人をお呼びしていますっ」

響子（別にいいんじゃ！？）

美穂「こ、こんにちは！　小日向美穂ですっ！」

卯月「美穂ちゃん、3年間の世界ツアー、お疲れさまでした！」

響子（設定が大それてる！）

美穂「違いますっ、2年と9か月ですっ」

響子（ツッコミがちょっとズレてる……）

卯月「最初のコーナーはこちら！」

響子（ラジオ、続くんだ……）

智絵里「“昨日の天気予報”～！」

響子（需要がない！！！！！　誰が得するんですか！！！！！）

智絵里「昨日予想した今日の天気は曇りでしたが、実際のお天気は晴れでしたっ！　
気象予報士の方は、罰として……」

響子（罰があるの！？　智絵里ちゃん、すごいの用意しそう……）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

智絵里「明日のお弁当のおかずが一品減ります」

響子（罰がかわいい！！！）

卯月「減ったおかずで事務所の恵まれないライラさん1人が助かります！」

響子（アフリカの恵まれない子供みたいに言わないで！！！）

美穂「ライラちゃんはアフリカじゃなくてドバイだよっ！」

響子（そこのツッコミはいいですから！　……あれ！？　心読まれてる！？）

卯月「美穂ちゃん、ラジオ、どうでしたか？」

響子（あ、終わったのかな……）

美穂「うん！　楽しかった気がしなくもないような気もするよっ」

響子（オブラート）

智絵里「まああんなコーナーをやってるようじゃ１回で打ち切りでしょうけどねっ」

響子（智絵里ちゃんがそれを言っちゃうの！？）

美穂「２回くらいは平気だと思うけどな……」

響子（だからそこはどうでもいいんですって！）

卯月「私、食レポとかやってみたいんです！」

美穂「いいねっ　そういう機会もきっと増えていくよね」

智絵里「というわけで、今日は行列ができるラーメン屋へやってきました！」

響子（始まるのが唐突すぎませんか！？）

美穂「楽しみだね～」

卯月「へいらっしゃい！！！」

響子（なんで店主なの！？　食レポしたいって言ったのは卯月ちゃんでしょ！！？？）

智絵里「カツ丼１つ！」

響子（邪道！）

美穂「ら、ラーメン頼もうよ！」

響子（そうですよ！）

智絵里「おすすめはどれですか？」

卯月「チャーハンです」

響子（邪道！！！！！）

響子（ラーメンどこ行ったんですか！！！）

美穂「じゃあチャーハンを」

響子（さっき“ラーメン頼もうよ”って言ってた美穂さんはどこへ！？）

智絵里「明日、またここに来てください。本当の冷やし中華をお見せしますっ」

響子（品目が増えてく……）

卯月「ごめんなさい、今日で閉店なんです！」

響子（行列ができてるのに！？！？！？）

智絵里「前向いていきましょう！　明日があるさ！です！」

響子（明日は（お店が）ないんですよ！？　煽ってる場合ですか！？）

美穂「チャーハン、まだですか……？」

響子（空気読んで！！！）

響子（食レポの話題なのに料理が出てこない……）

卯月「へいお待ち！　シーザーサラダです！」

響子（オーダーミス！！！）

美穂「ち、ちょっと！　違いますっ！　私が頼んだのはシーザーサrrrrrrrrrrrァダ　ですっ」

響子（そっち！？　巻き舌は必修科目なんですか！？）

卯月「失礼いたしまむらっ！」ﾄﾞﾔｧ

響子（それ言いたかっただけですよね！？）

卯月「もうっ！　ラーメン屋さんなんですから、素直にラーメン頼んでください！」ﾌﾟﾝﾌﾟﾝ

響子（シーザーサラダを出さなければよかったのでは……）

智絵里「チャーシューメン、肉抜きでっ！」

響子（邪道！！！　……というか何をしたいんですか！？）

美穂「もうボケが浮かばないよ……」

響子（なんでボケる必要があるんですか！？　美穂さんがしっかりしないと！）

卯月「へいお待ち！　ラーヌソです！」

響子（な、なんて！？）

智絵里「わぁ……　ヌンとヌープが絶妙に混ざりあってる……。あっさりした中にコクもあり、呑み込んだ後に至るまでお互いが引き立てあってます……」

響子（急に食レポっぽくなったけど何を食べてるか全然わからなくて怖い！！！）

美穂「宝石箱やー」

響子（美穂さんはボキャブラリーがゼロなんですか！？）

卯月「星いくつですかっ！？」

智絵里「０」

響子（絶賛してたのに！！！）

美穂「6.5：全体的にはよい動きであり、序盤は個人技から得点をアシストした。しかし後半は存在感が薄くなってしまい、フル出場ならず。サイドにも目を向けるべきだった」

響子（サッカー！？）

卯月「智絵里ちゃんは、どんなお仕事がしたいですか？」

智絵里「はいっ！　わたしは、お金が欲しいですっ」

響子（全然かみ合ってない！）

卯月「じゃあ、何か賞金の出る大会に出ましょう！」

響子（お金儲けの話し合いになっちゃった……）

智絵里「漫才やコントの大会がお似合いですっ！」

響子（アイドルなのに最初にそこに目を向けるのはどうかと……）

卯月「でも、私たち、全然面白いことなんて言えません……」

響子（いやいやいやいや）

智絵里「そうですね……」

響子（え？　自覚ないんですか？）

智絵里「わたしたちじゃ、準決勝敗退がいいとこですよね……」

響子（自信満々じゃないですか！！！）

美穂「クイズ大会とかどうかな？」

卯月「クイズ王を目指す流れは、もう凛ちゃんと未央ちゃんとやってしまったのでパスです！」

響子（いや知りませんけど！？）

智絵里「第1問！」ﾊﾞﾊﾞﾝ

響子（強行突破だ！！！）

智絵里「京都の三大祭りといえば、葵祭、ぎ」ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

卯月「時代祭！」

智絵里「正解！」

響子（普通にすごい！！！）

卯月「今のは、少し早めに押して“ぎ”まで言わせて、祇園祭か時代祭を判断する『読ませ押し』っていうテクニックです！」

響子（どこでそういうの覚えるの！？）

卯月「まあ、私たちはアイドルですから。ちゃんとお仕事で稼ぎましょう！」

智絵里「そうですねっ！　お金を使いたくなるアイドルになりましょう！」

響子（智絵里ちゃん！！！）

美穂「せめて“使ってあげたくなる”でしょっ！」

響子（そういう問題ではないんですってば！！！）

卯月「では、第92回、ピンキーキュートミーティングを終わりにします！」

響子「増えてるじゃないですか！！！！！」

響子「あっ」

卯月「タ？」ﾁﾗｯ

智絵里「ニ？」ﾁﾗｯ

美穂「タ？」ﾁﾗｯ

響子「タニタは関係ないです！！！」



おわり