八幡「一色いろはを本気で口説く」 (157)
いろは「せんぱ~い♪」
八幡「ん?」
いろは「先輩って身長いくつぐらいなんですか?」
八幡「175ないぐらいだけど」
いろは「葉山先輩ってどれぐらいなんですかね?」
八幡「さぁな・・・興味ないから知らねー。195ぐらいじゃねえねの?」
いろは「先輩と一緒ぐらいじゃないですか?」
八幡「確かに近いかもな・・・」
いろは「まあ、わたし的には180とかなくても、175ぐらいがベストなんですよ~」
八幡「・・・へぇ」
いろは「あ!先輩今、"俺もストライクゾーンど真ん中"とか思いませんでしたか?!」
八幡「・・・」
いろは「身長よりも大事なのは優しさとかカリスマ性だと思うんで、ちょっと誤解させてしまったら申し訳ないですむりです」
八幡「いや、お前さぁ・・・」
いろは「はい・・・?」
八幡「なんつーか、何にも口説いてないのに俺がフれれるこの流れもう飽きたわ」
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いろは「え~。結構楽しいじゃないですか~!」
八幡「今度からは俺がせめて口説いてからフってくれ」
いろは「先輩女子を口説いたことなんかないくせに」
八幡「だいたいな。お前が俺にちょっかい出してくるのって、葉山にアタックする練習みたいなところあるだろ?」
いろは「・・・んー」
八幡「それだと俺は練習台になるだけだから、うまみが無いんだよな」
いろは「うまみならあるじゃないですか!私とおしゃべり出来るっていう」
八幡「まあ確かにな。お前と喋ってる時って正直めっちゃ楽しいし、癒される。手のひらで転がされるのも悪くないんだけどな」
いろは「早速口説いてきた・・・///」
八幡「だけどな。俺も女を口説くテクニックをそろそろ磨くべきだと思うんだ」
いろは「・・・なんか先輩らしからぬ発言ですね。恋愛脳とか言ってリア充目の敵にしてる癖に・・・」
八幡「ほら。俺って専業主夫志望だろ。だから、生涯俺を養ってくれそうな女に出会った時に、チャンスを逃さずハートを掴まなきゃいけないわけ」
いろは「はぁ・・・」
八幡「じゃないと路頭に迷うことになる。人生かかってるんだよ」
いろは「いや働いてくださいよ・・・」
八幡「まあ、という訳でこれからは俺もお前を実験台にさせてもらうからな。お前に恋愛感情とかこれっぽっちもないけど」
いろは「・・・いいですよ。わかりました」
八幡「お前に恋愛感情とかこれっぽっちもないけど!!!」
いろは「何で2回言ったんですか・・・ツンデレのつもりなら下手すぎますよ・・・」
八幡「ところで、お前、身長175前後が好みなんだろ?」
いろは「そうですね」
八幡「何で?」
いろは「何でって・・・大きいと若干威圧感があるんですよ。周りには自慢できるけど」
八幡「なるほどな」
いろは「何というか身長差とかがちょうどいいんですよ、キスする時にちょっと背伸びすると届くぐらいっていうか///」
八幡「お前、ちょっと俺の前に立ってみろ」
いろは「え、こうですか」チョコン
八幡「いや、遠いよ。もうちょっと前来い」
いろは「え~。これちょっと近すぎじゃないですか?」
八幡「確かにな・・・俺とお前だとちょうどいい身長差だよな」
いろは「・・・でしょ?」
八幡「お前、いい匂いするな」クンクン
いろは「そ、そうですか?」
八幡「・・・」クンクン
いろは「ちょっと、いつまで嗅いでるんですか///」
八幡「マジでいいにおいだわ。いろはすの香りの柔軟剤とか売ってねーかな」
いろは「売ってませんよ!商標的にめんどくさそうですし」
八幡「売ってたら毎日使っちゃうわ。そうしたら洗濯捗って毎日家事頑張れるわ」
いろは「結局専業主夫じゃないですか!!!」
八幡「お前と結婚したら、柔軟剤なんか買わなくても、嗅ぎ放題だけどな」
いろは「・・・あの、もう座っていいですか///」
八幡「ダメ」
いろは「えー・・・」
八幡「なあ」
いろは「なんですか?」
八幡「このまま抱きしめてもいいか?」
いろは「・・・だめです」
八幡「ダメ?」
いろは「だめですよ」
八幡「・・・じゃあ逃げればいいだろ?」
いろは「先輩こそそんな勇気ないくせに」
八幡「お。言ったな?」
ギュー
いろは「むぐっ?!」
八幡「かわいいよ。いろは」ナデナデ
いろは「ちょ、!ちょっと!」モゾモゾ
ギュー
八幡「・・・どうだった?」
いろは「・・・!」プイ
八幡「イヤだったか?」
いろは「普通にビックリしましたよ!!!」
八幡「お前ビクってなってたもんな。かわいかったぞ」
いろは「もう・・・なんなんですか・・・」
その夜・いろはの部屋
いろは「・・・はぁ」
いろは「何だったんだろう・・・あれ・・・」
いろは「先輩・・・あたしのこと本当に好きになちゃったのかな・・・///」
いろは「っていうよりも、あたしがちょっかいばっかりかけるからやり返したくなっただけだよね絶対、あれは」
いろは「あたしのことをからかって遊んでるんだきっと」
いろは「まあ、しばらく付き合ってあげてもいっか」
『かわいいよ。いろはす』
いろは「・・・かぁ。抱きしめられたとき、ちょっと先輩の匂いがしたなぁ」
いろは「あたしはあれぐらいじゃ本気にならないけどね!」
後日・バスの中
ブロロロロロ
いろは「・・・」
八幡「よっ」
いろは「?!、先輩?!」
八幡「ビビリすぎだろ」
いろは「だってゾンビが立ってるかと思ったんですもん」
八幡「誰がゾンビだ」
いろは「ていうか、先輩チャリ通でしたよね?何でバス乗ってるんですか?」
八幡「朝からお前に会えたら最高だなと思って」
いろは「はいはい。あざといあざとい」プイ
八幡「お前が言うな」
八幡「・・・そのあれだ」
いろは「はい?」
八幡「昨日は悪かったな。いきなりあんなことして」
いろは「いやホントですよ。ビックリしたんですからねっ!」
八幡「これからは紳士的に口説くことにするわ」
いろは「やっぱりまだ続ける感じなんですか」
八幡「ほら。昨日は俺様系だっただろ?だから今度は趣向を変えてお前の喜ぶ口説き方を探っていこうかと思ってな」
いろは「いや、私俺様系嫌いじゃないんですけど、如何せん先輩のキャラに合ってないと言うか」
八幡「・・・ほう。つまり、俺にもっと頑張って欲しいって期待してるわけだな」
いろは「グイグイ来ますね。先輩やっぱり私のことホントに好きなんですか?」
八幡「・・・」
八幡「好きだぞ」
いろは「・・・間を開ければ本気っぽく聞こえると思ってますか///ごめんなさいまだむりです」
八幡「むりか。でも俺は諦めないぞ。お前が振り向いてくれるまで」
いろは「いつまで続きますかね。先輩も無理してイタリア人みたいな演技してるんじゃないですか?」
八幡「ぐっ・・・///」
いろは「図星かぁ」
いろは(よかったぁ・・・やっぱり演技だったんだ)
いろは(先輩おかしくなっちゃったわけじゃなかったんだ)
いろは(捻デレじゃない先輩って先輩じゃないみたいだもん)
ガタン!
いろは「?!」フラ
いろは(バスが揺れた、倒れそう・・・!)
ガシ
八幡「大丈夫か?」
いろは「あ、ありがとうございます」
いろは(もう・・・昨日の今日で二回も密着するなんて・・・///)
八幡「シャンプー変えたか?」
いろは「えっ。何でわかるんですか?」
八幡「昨日と匂いがちょっと違う。てか前髪ちょっと切ったな?」
いろは「先輩私のこと見すぎですよ。何というかストーカーみたいでストレートにキモいです!」
八幡「・・・」ガーン
いろは「・・・///」
昼休み
いろは「・・・」テクテク
戸部「いよ~う、いろはす~」
いろは「あ、戸部だ」
戸部「今、呼び捨てにしなかった?!」
いろは「してないです♪」
戸部「それよかさー。今自販機見てきたらいろはすのサイダー味入ってたわ」
いろは「そうなんですか?」
戸部「いろはすの汗は何味なのかなー?なんつって!」
いろは「もー!セクハラですよ!」
八幡「普通に塩味だと思うぞ?」
いろは「先輩?!」
戸部「ヒキタニ君?!」
八幡「塩味って言ってもイタリアの白トリュフ塩みたいな上品で芳醇なフレーバーだったぞ。お前みたいな庶民には勿体無い味だ」
いろは「何言ってんだこの先輩」
戸部「ヒキタニ君マジっべーわ・・・」
八幡「それより戸部、葉山が呼んでたぞ?」
戸部「マジで?」
八幡「なんか知らんけど滅茶苦茶キレてたぞ?」
戸部「マジか・・・教室戻るわ、じゃあないろはすー!」ドッヒューン
いろは「・・・葉山先輩が怒るなんて珍しいですね?なんかあったんですか?」
八幡「普通に嘘だぞ?」
いろは「なんだ嘘ですか・・・戸部先輩になんか恨みでもあるんですか?」
八幡「一色」
いろは「はい」
八幡「お前は俺にだけ口説かれてればいいんだよ」
いろは「つ、付き合ってもないのに独占欲見せられても厚かましいいですごめんなさい///」
八幡「お前は俺だけを見てればいいんだよ」
いろは「そんな少女漫画から丸パクしたセリフ言われても、きゅんってしませんからね///」
いろは「って言うか先輩!」
八幡「ん?」
いろは「そんなに私をゲットしたいなら私の好きなところみっつ言ってください。私のこと好きならスラスラ出てきますよね?」
八幡「みっつだけでいいの?」
いろは「あざとい・・・///」
八幡「まず見た目だろ。俺が今まで生きてきて見てきた女の子の中で1番か2番ぐらいに顔が綺麗だと思う」
いろは「う、嘘ですね。雪ノ下姉妹がいますもん。その二人でワンツーフィニッシュでしょ」
八幡「お前、ちょっとこっち向いてみろ」
いろは「・・・」
八幡「・・・」ジー
いろは「・・・」
八幡「ほら。やっぱりお前が1番かわいい」
いろは「すげえこの人!力技じゃないですか///」
八幡「それから、声がかわいい。甘ったるい声で愛想振りまいてる時も、気だるげにサボタージュしてる時も、はしゃいでる時も・・・」
八幡「拗ねて悪態をついてる時も、ベッドで愛をささやきあった時も、全部がかわいい。脳がトロけちまうよ」
いろは「ちょっと!いつ私が先輩とベッドを共にしたんですか!本当に脳が蕩けてるんじゃないですか///」
八幡「それから、俺のことを"先輩"って呼ぶところ」
いろは「?」
八幡「それはもはや名前を呼ぶ必要のない、私にとっての先輩はあなただけですよってことなんだろ。俺にとってもお前が1番のかわいい後輩だぞ?」
いろは「拡大解釈が凄い!!!先輩は他に仲いい後輩いないだけでしょ///」
八幡「お前だけいればそれでいい」
いろは「くっ・・・しぶといなこの人・・・全部口説き文句で返してくる・・・///」
八幡「四つ目は・・・」
いろは「三つでいいって言ったじゃないですか!///もういいですって!」
八幡「何かと人を利用しようとするけど、本当は頑張り屋さんなところ」
いろは「ちょっと、マジっぽいのやめてもらっていいですか///」
八幡「まあでも、いろはすの好きなところ168個ぐらいあるけど、1番好きなところは・・・」
いろは「・・・」
八幡「内緒///」
いろは「うっぜぇぇぇぇぇぇえええ!!!別に全然聞きたくないのになんかもったいぶってきた!!!」
八幡「本当は聞きたいんだろ?」
いろは「・・・聞きたくないですからっ」
いろは(めっちゃ聞きたいわバーカ!!!)
放課後
八幡「好きな男性のタイプは?」
いろは「いきなりですね」
八幡「お前こういうの好きだろ。おしゃれイズムみたいにチヤホヤされながらプライベートなこと聞かれるの」
いろは「私のことなんだと思ってるんですか・・・まあチヤホヤされたくて生徒会長になったみたいなところありますけどね」
八幡「もうヤメちまえ!!!」
いろは「上田さんですか?おしゃれイズムは別にいいんで」
八幡「で、好きなタイプは?」
いろは「そりゃもちろん葉山先輩みたいな人ですよ」
八幡「具体的には?」
いろは「何ていうか、誰にでも優しいのに、なんか影があって、隣で支えたてあげたくなるって言うか」
八幡「・・・ふ~ん」ボヨーン
いろは「自分で聞いといて何ですかその興味なさそうな態度・・・」
八幡「影なら俺もあるだろ」
いろは「先輩は影しかないじゃないですか」
八幡「・・・それから?」
いろは「葉山先輩は何やっててもカッコイイですからね。王子様って感じが好きなんです♪」
八幡「やっぱり顔か。子供だな」
いろは「うるさいな。・・・先輩も顔はかっこいいんですよ?」
八幡「だよな?」
いろは「でも、そういういろいろ残念なのがちょっと無理なんです」
八幡「むぐっ、八幡ショック~とほほ~」
いろは「ウザっ・・・」
八幡「全く、どいつもこいつも葉山葉山ってな。あんな奴のどこがいいんだよ」
八幡「葉山のいいところなんてな。さわやかで頭が良くてスポーツ万能でギター弾けてイケメンで優しいところだけだ」
いろは「滅茶苦茶褒めてるじゃないですか!」
八幡「しかもゲイだ」
いろは「ちょっと!どさくさに紛れて嘘つかないでください!」
八幡「だけどな。俺も一つだけ葉山が羨ましいと思うところがある」
いろは「・・・へぇ。何ですか?」
八幡「お前に好きって言って貰えることだよ」
いろは「もう。隙あらばって感じですね///」
八幡「なぁ。俺のことももっと見てくれよ」
いろは「・・・直球すぎてむりです」
八幡「俺だったらお前を幸せにしてやれるぞ。毎日炊事洗濯掃除はもちろん、お弁当も作っちゃうぜ」
いろは「はいアウト!!!専業主夫は諦めて働いて下さい!!!」
いろは(正直、さっきのグっときちゃったかも・・・///あたしじゃなかったら落ちてるかもね)
いろは(必死さとか好きって気持ちが伝わるって言うか・・・)
いろは(葉山先輩に嫉妬する演技だとしたらなかなかですよ・・・)
いろは(・・・先輩が本当にあたしのこと好きだったらどうしよう♪)
いろは(あたしの本性知ってて好きって言ってくれてるなら・・・先輩が始めてかも知れないなぁ)
奉仕部
雪ノ下「・・・」ペラペラ
由比ヶ浜「~♪」ポチポチ
八幡「・・・」ペラペラ
いろは「・・・」
雪ノ下「一色さん。あなた、生徒会の方はいいのかしら?こんなところで油を売ってて」コトリ
いろは「と言いつつ紅茶ありがとうございます。まあイベントもないんで今は暇ですね~」
由比ヶ浜「サッカー部はいいの?あ、別にここにいちゃいけないってわけじゃないからね?」
いろは「うちの部マネいっぱいいるから多いと逆に邪魔なんですって。だからあたしはこうしてここでスケジュールをチェックしてるんです~」ペラペラ
由比ヶ浜「へぇ~。デスワークかぁ」
八幡「デスクワークな。デスワークって殺し屋的な何かなの?」
由比ヶ浜「デスクワークぐらい知ってるし!ちょっとクが抜けちゃっただけだし!」
八幡「材木座がザイモザになっちゃうなそれ」
雪ノ下「もううっとおしいからザも抜いてしまいましょう」
いろは「イモ・・・」
雪ノ下「・・・プクク」フルフル
由比ヶ浜「ゆきのんがウケてる~」ポカポカ
八幡「なあ一色ー?」
いろは「はーい?」
八幡「お前、今週末暇か?」
由比ヶ浜「?!」
雪ノ下「?!」
いろは「えっ。何でですか?!」
八幡「実は俺もなんか運動ってか、体動かそうかと思ってな。それでランニングシューズ買いに行こうと思って。つい来てくんねえか?」
いろは「なんで私なんですか?」
八幡「一応お前も運動部のマネジャーだろ?前マリンピアで買い出しとかしてたみたいだから詳しいかと思って」
いろは「・・・えーと」
いろは(どうしよう・・・これって平たく言えばデートのお誘いだよね・・・?)
いろは(にしても結衣先輩もいるところで誘うのはいろいろややこしいことになるってわかってるのかな・・・?)
いろは(そもそもこれも練習のための演技なら、二人きりの時にそう言って誘えばいいのに)
いろは「先輩、あの、本気ですか?」
八幡「ぼっちが運動しちゃダメか?」
雪ノ下「あら、いい心がけじゃない。運動ならサッカー、バスケ、卓球、それからシンクロナイズドスイミングがおすすめよ」
八幡「全部一人で出来ない奴じゃねーか・・・暗に外出るなって言ってるだろお前・・・」
八幡「で、どうなんだ一色?予定空いてる?」
由比ヶ浜「・・・」オロオロ
いろは(結衣先輩は空気読んで割り込んでは来ないし・・・)
いろは(ここは断っとくのが無難かな・・・)
いろは「あ!土日はどっちもクラスの友達と遊ぶ約束してたんでした」
八幡「・・・じゃあ仕方がねーな」
後日・学校
いろは「~♪」テクテク
戸塚「あ、一色さんだ!やっはろー!!!」
いろは「や、やっはろーでーす・・・」
いろは(戸塚さん・・・この人も城廻先輩と同じで本物の天然だからちょっとニガテなんだよなぁ・・・)
戸塚「いろはす~」
いろは「・・・?!」
戸塚「今のは八幡の真似だよー!似てたかな///」
いろは(似てるかどうかはわかんないけど、かわいいなこのひと・・・肌キレイだし本当に男の子とは思えないな・・・なんか嫉妬しちゃう・・)
いろは「って言うか先輩そんなアホそうなこというんですか?」
戸塚「えー。僕と話してる時はこうなんだけどな・・・」
いろは「そうなんですか」
戸塚「いろはす~っていうのはね、八幡最近一色さんの話ばっかりしてるんだよ」
いろは「マジですか?」
戸塚「なんかずっとかわいいかわいい言ってるよ!」
いろは「へぇ・・・///」
いろは(先輩どんだけあたしのこと好きなんですか・・・///)
戸塚「なんかほっぺをツンツンしたいとか、膝に乗せてもふもふしたいとか言ってるよ!」
いろは「私を動物かなにかだと思ってますね先輩」
戸塚「でもね、昨日あたりから八幡なんか落ち込んでるみたいでね」
いろは「そうなんですか?」
戸塚「一色さん、八幡が買い物に誘ったけど行けないんでしょ?それで目が暗い感じなんだよ」
いろは「ああ。それはちょっと予定が入ってまして」
いろは(この人に嘘つくの罪悪感が凄い・・・)
戸塚「そっかー。僕も今週末は部活の練習試合だから付き合ってあげられないからなあ・・・まあなんとか慰めてみるよー」
いろは「なんかすいません」
戸塚「いいよいいよ~」
その夜・いろはの部屋
いろは「・・・」
いろは(今から電話するのは、戸塚先輩に対する罪悪感からなんですからね・・・)
いろは(別に先輩とデートしたいとかそういうわけでは・・・)
いろは(・・・って言うか先輩とは一回デートしたのに、何であたしちょっと緊張してるんだろう)
いろは「・・・よし!」
ポチポチ
八幡『もしもし』
いろは「あ、こんばんわ~。先輩の大好きな一色いろはですけど♪」
八幡『おぅ・・・俺のかわいいいろはす。どうした?』
いろは(電話だとちょっと先輩の声が変わって不思議な感じ・・・)
いろは「あの、今週末なんですけど、友達と遊ぶ約束がなくなっちゃいましてね」
八幡『うん』
いろは「それでですね。・・・お買い物、やっぱり先輩と行きたいなぁーって♪だめ、ですか・・・?」
八幡『・・・』
いろは「先輩?」
八幡『いろはす~~~~!あざとさ100点満点!』
いろは「ちょっと!うるさい!音割れてます」
八幡『え?ホントに?いいの?お前女友達いないし約束とか嘘っぱちなんじゃなかったの?』
いろは「せっかく人がオブラートに包んで断ったんだから空気読んでくださいよ!」
八幡『よし。じゃあ日曜日10時半に海浜幕張な』
いろは「わかりましたー」
八幡『しかし、お前の方から電話かけてくるとはな。先輩嬉しい』
いろは「いやおちこんだ先輩の相手させられる戸塚さんがかわいそうだからですからね」
八幡『戸塚はあれだな。愛の天使だな。色々な意味で』
いろは「戸塚さんとあたし、どっちが好きですかぁ?」
八幡『お前、その質問は・・・神とキリストどっちが好きかって聞いてるようなもんだぞ・・・?』
いろは「・・・まあいいです。そろそろ切りますか?」
八幡『いや待て。もっとお前の声が聞きたい』
いろは「あざといなー///」
八幡『お前が言うな』
いろは「って言うか、何で部室で全員揃ってる時に誘ったんですか?二人きりの時の方が何かとスムーズじゃなかったですか?」
八幡『それは敢えてだよ』
いろは「どういうことですか?」
八幡『一言で言うなら意思表示だよ。事情を知らないあいつらの前で誘うっていうことは誤解を招くリスクも厭わないというアピール』
いろは「男らしいんだか、ずる賢いんだか・・・」
いろは「・・・ん?つまり先輩、練習とかじゃなく純粋ににあたしとデートしたいってことになりますよそれ」
八幡『最初からそのつもりだけど?』
いろは「あざとい・・・///」
八幡『ところで、今何してた?もう寝るとこだったなら言ってくれよ?』
いろは「もうっ。言わせないでくださいよ。先輩のこと考えてたに決まってるじゃないですかー♪」
八幡「あざとい・・・///」
いろは(結局その後30分ぐらい"あざとさ大喜利"みたいなことをしてしまった・・・)
いろは(結構楽しかったなー♪)
いろは(先輩も喜んでくれたみたいですし♪)
いろは(そんなことを考えながら窓の外を見ると)
いろは(物凄くニヤニヤした私の顔が夜のガラスに映っていた・・・)
いろは(私ってこんな気持ち悪い笑い方するんだ・・・ちょっとショック・・・)
日曜日・海浜幕張駅
いろは「・・・」ソワソワ
いろは(服選びとメイクで時間かかってちょっと時間過ぎちゃった)アセアセ
八幡「・・・」ソワソワ
いろは「せんぱーい!おはようございます!」
八幡「おう。来たな」
いろは「すみません」
八幡「ドタキャンされたかと思ったぞ」
いろは「2分遅れただけで・・・どんだけ暗い過去を持ってるんですか」
八幡「その服、似合ってるぞ」
いろは「はいでましたデートの待ち合わせのテンプレ!義務感で言ってる感じがするのでマイナス5点!」
八幡「うわ厳しいな」
いろは「今日も辛口採点で行きますからね。気合い入れてくださいよ」
八幡「臨むところだ小娘」
アディダスショップ
いろは「てか先輩本当にランニングシューズ買うつもりだったんですね。てっきり私を誘うための口実かと」
八幡「失礼なやつめ・・・家でゴロゴロしてたら小町がうるさくてな。リードつけて散歩させるとか言うんだぞ」
いろは「完全に運動不足の犬扱いじゃないですか」
八幡「おっこれとかどうだ?デザインも無難だし」
いろは「無難っていうか真っ黒じゃないですか。しかも値段で選んでるでしょ」
八幡「だって結構高いんですもん・・・」
いろは「安いやつはクッションが薄くてガチのランニングには微妙ですよ」
八幡「なるほどな。じゃあこれは?」
いろは「だから何で真っ黒ばっか選ぶんですか。せっかくなんだから色とか柄のにしましょうよ」
八幡「オタクにとっちゃ黒以外は冒険なんだよ」
いろは「私がついてきたからには黒はなしです!それに普段着で履くときもランシューはハズしとかで使えるんで思い切ったデザインの方がいいですよ」
八幡「女子が付いてると心強いな。いろいろチャレンジしてみるか」
いろは「サイズは基本ジャストフィットでつま先に少しだけ余裕があるのがいいらしいですよ♪」
八幡「いい買い物だった」
いろは「本当にそう思ってます?」
八幡「まあ一番の収穫はお前と一緒にいられる時間だけどな」
いろは「しかもプライスレスですしね♪」
八幡「しかし、他人の買い物に付き合わされるのって、退屈じゃなかったか?」
いろは「そんなことないですよ!私も彼氏ができたら服選んであげるのとか夢でしたし、ちょっとそんな気分味わえましたし」
いろは「何より先輩が楽しんでくれてるの見てたら、それが嬉しいんです♪」
八幡「はいはいあざとい。お前あれだな。結構サービス精神旺盛だよな」
いろは「先輩はあたしと遊びに行ったとき退屈だったんですか・・・?」
八幡「いや、あんな時間がずっと続けばいいなと思ってたぞ」
いろは「えへへ///」
八幡「お。今デレた?デレはす?」
いろは「デレたフリしてあげただけですよーだ!」プイ
八幡「そろそろ昼だな。どうする?」
いろは「この辺でお昼食べてきましょうか」
八幡「昼飯なら任せろ」
いろは「ちなみにどこに行くつもりですか?」
八幡「サイゼ」
いろは「この前から全く進歩してない・・・!むしろなりたけの方がマシ・・・!」
八幡「どいつもこいつもサイゼをディスりやがって・・・それでも千葉県民か!」
いろは「先輩サイゼ好きですもんね」
八幡「前に訳あって葉山と俺と海浜総合の女子2人で飯を食う展開があったんだが」
いろは「あぁマリンピアの・・・」
八幡「俺がサイゼを提案したら即却下された挙句ボロクソ言われたもんだぜ。"サイゼはないわー"ってな」
八幡「だけどよく考えてみろ。サイゼは学生が行く店なのに学生が入って何がおかしい!!!」
いろは「いやぁでも、ほぼ初対面のダブルデートって状況なら色気がない感じは否めませんね」
八幡「サイゼはイタリアンだぞ・・・?どう考えてもお洒落だろ・・・?」
いろは「何ですかその昭和みたいな価値観・・・」
八幡「まあいい。・・・逆に聞くけど、俺が夜景の見える展望レストランに誘ったらどうする」
いろは「引きますね」
八幡「そうだろ?そもそも俺たちは高校生だ。基本食事代は親に払っている身で、洒落た高級店に入ろうなんてのはロマンチックじゃないしむしろダサい」
八幡「男が女に奢るなんてのは以ての外だ」
いろは「確かにそうですね」
八幡「つまり高校生のデートってのは少ない予算でいかに楽しめるかってのを努力して考えるべきものだ。夕暮れの海辺を歩くのはタダだし乙なもんだろ?よくわからんが」
八幡「なんなら家で二人でゲームするだけってのが1番楽しいような気もする。よくわからんが」
いろは「それはわかりますけど、飲食店なら安くておいしい店はサイゼじゃなくても探せばいくらでもありますよ!」
八幡「だからこそ俺はサイゼに行き着いたんだ。なんといっても俺はサイゼマニアだからメニューを知り尽くしている。この知識が俺が持っている最大のアドバンテージだ。絶対にうまいもんを食わしてやる」
いろは「そこまで言うなら期待していいんですね?」
八幡「ああ。葉山とデートしてもサイゼには連れてってもらえないぜ?」キリ
いろは「最高にダサいセリフなのにこのドヤ顔・・・」
サイゼ
八幡「どうだった?」
いろは「確かに料理は満足でしたけど、女子はやっぱり都会的でおしゃれなものが好きなんで。インスタとかにアップしたいじゃないですか」
八幡「すればいいじゃん」
いろは「インスタにミラノ風ドリアをアップしろと?滅茶苦茶ダサいわ!」
八幡「ダメか・・・」
いろは「でも、背伸びしてお洒落な店に連れてかれるより先輩らしくて良かったですよ」
八幡「まじ?ジャンク路線の楽しさわかってくれた?」
いろは「何より先輩がいろいろ考えてくれてるのがわかってよかったです。15点です」
八幡「ひっくいなオイ。のび太のテストかよ」
いろは「いや、これから伸びるんですよね?」
八幡「え・・・?」
いろは「今日これから、お金のかからない楽しい場所にあたしを連れてってくれるんですよね?」
八幡「マジか・・・昼食ったら帰るって言われるのかと思ったけど付き合ってくれるの?」
いろは「はい♪」
八幡「まずは、お前がお洒落なものが好きだと分かったなら、この際ジャンク路線は捨ててお洒落な場所に連れて行けばいい。千葉マニアを舐めるなよ」
千葉駅からほど近い某所・・・
八幡「という訳で、ここだ」
いろは「アンティークショップかぁ・・・このへん来るの初めてだなぁ」
八幡「どうだ?都内みたいな派手さはないが結構お洒落な店多いだろ?」
いろは「そうですね・・・なんかアンティークって買わなくても見てるだけで異国情緒とかノスタルジーとかに浸れて私好きかも♪」
八幡「古着とか着る?」
いろは「あんまりですね。ちょっと難易度高いですし」
八幡「俺は着るぞ。小学生の頃からI LOVE 千葉T着てるし」
いろは「それ古着っていうかただの古い服ですよね?」
八幡「アイラブいろはすTも売ってないかな」
いろは「それただ水が好きな人みたいになりません?」
いろは「あ、このブラウスかわいいー♪」
八幡「ちょっと合わせて見ろよ」
いろは「どうですか?」フリフリ
八幡「いいな」
いろは「もっと褒めてください」
八幡「かわいい。お前細いし何でも似合うんだな」
いろは「♪」
八幡「それ気に入った?」
いろは「でも値段が恐ろしく高いんですよねこれ」
八幡「そうか。代わりに俺のアイラブ千葉Tやるから。な?」
いろは「いらないですっ♪」
ペットショップ
八幡「・・・ペットショップの犬とか猫って人間に全然反応しないよな。毎日構われて飽きてんだろうな」
いろは「えー。かわいいじゃないですかー。無愛想な感じとか先輩に似てますし」
八幡「俺も誰かに飼ってもらって毎日食っちゃ寝したいわ」
いろは「ねえねえ先輩♪」
八幡「ん?」
いろは「私って、犬か猫に例えるとどっちですか?」
八幡「お前は・・・ウサギだろ」
いろは「何でですか?私が小動物みたいでかわいいって事ですか」
八幡「そう。守ってあげたいから」
いろは「え、理由本当にそれですか///」
八幡「それと、構ってあげないと寂しくて死ぬから」
いろは「私を何だと思ってるんですか!」
八幡「逆に俺は動物に例えると何なんだ?」
いろは「・・・うーん」
八幡「やっぱいいや。どうせ魚とか言われる。しかも死んでる魚だろ?」
いろは「先輩もウサギじゃないですかね?」
八幡「何で?」
いろは「先輩も構ってあげないと寂しくて死んじゃうでしょ?」
八幡「じゃあ、これからもいっぱい構ってくれよ。俺も構ってやるから」
いろは「はい♪」
いろは(・・・これじゃあ普通にラブラブのカップルじゃないですか///)
なんだかんだいろいろ遊んで・・・
八幡「そろそろ陽も落ちるし、最後だな」
いろは「今度はどこ行くんですか?」ワクワク
八幡「海辺で花火でもやるか」
いろは「・・・いい考えだとは思うんですけど、今の季節花火なんて売ってなくないですか?」
八幡「安心しろ。俺に秘策がある」
いろは「ほう」
八幡「普通はシーズン過ぎると花火は玩具屋の店頭から姿を消すが在庫は残ってる。だから店の人に聞いてみれば安く売ってもらえるらしいぜ」
いろは「そうなんだ」
八幡「という訳でザラす行くぞ」
稲毛海浜公園
いろは「花火、ゲットできて良かったですね♪」シュボボボボ
八幡「だな」シュボボボ
いろは「流石に冬は人いなくて貸切状態ですね」
八幡「ちょっと寒いけどな」
いろは「じゃあ私があっためてあげます♪」
八幡「・・・えっ///」
いろは「おりゃー!」シュボボボ
八幡「おいおい花火を人に向けるなー!」
いろは「変な期待した先輩が悪いんですよーだ!!!」
いろは「線香花火なんてホント久しぶりだな・・・」ジジジ
八幡「お前、その座り方パンツ見えるぞ・・・///」
いろは「・・・見ましたか?」ササ
八幡「いや暗くて見えなかったわ」
いろは「先輩のエロ」
八幡「・・・えー」
いろは「卓球してた時も、ずっと足見てたでしょ。女の子はそういう視線に敏感なんですからね?そういうのが1番幻滅しますからね?」
八幡「わかるもんなのか・・・女子ってこえーな」
ザザァン・・・
八幡「・・・」
いろは(波の音・・・人気のない夕暮れの海辺・・・なんだか世界に先輩と二人っきり取り残されたみたいで・・・)
いろは(でも寂しくはなくて・・・暗いけど花火の明かりがなんだか眩しくて・・・ちょっと切なくて・・・)
いろは(狙ってこのシチュエーション作り出したならあざとすぎますよ先輩・・・///)
いろは(こんなの・・・今から告白されると勘違いしちゃうじゃないですか)ドキドキ
八幡「・・・今日、楽しかったか?」
いろは(きたきた。この流れは・・・)
いろは「はい。楽しかったですよ♪」
八幡「・・・そうか。よかった」
いろは「先輩、最近なんか変わりましたよね」
八幡「そうか?」
いろは「だって、ドが付くヘタレだったくせに、デートに誘ったり、正面切って口説いてきたり・・・」
八幡「まあな。自分でもどうかしてると思う」
いろは「・・・ほんとですよ」
八幡「でもな、俺が今まで逃げてきた恋愛とかそういうものにぶつかっていこう思ったのは・・・お前のおかげだよ」
いろは「・・・わたしですか?」
八幡「お前は、葉山にこっぴどく振られて、泣いてただろ」
いろは「そうですね・・・恥ずかしい・・・」
八幡「でも、諦めなかっただろ?」
いろは「・・・」
八幡「俺はな・・・自分よりも年下のお前のそんな姿をみて、俺も変わろうと思った」
八幡「俺には好きな人がいるんだ」
いろは「・・・!」
八幡「俺は葉山を必死に追っかけてるお前の横顔、魅力的だと思う。それが俺のお前の1番好きなところだ」
いろは「・・・それって」
八幡「だから、お前が葉山を好きなら、もう邪魔はしねーよ」
いろは「え・・・」
八幡「・・・俺はもうこれ以上お前を練習台にはしない。今まで付き合ってくれてありがとうな」
いろは「・・・先輩のバカ・・・!」
いろは(・・・それから、あたしは先輩を置き去りにして、一人で帰ってきてしまった)
いろは(何であんなに怒ったんだろう。・・・今でも気持ちの整理がつかない・・・)
いろは(怒りが収まると、今度は、悲しくなる)
いろは(何で悲しいのかもわからないのに、胸が痛くて、うまく息ができなくて)
いろは(心がバラバラになってしまいそう・・・)
週明け
いろは(眠れなくて遅刻ギリギリの時間に家を出ることになってしまった・・・)
いろは(バスもいつものより遅いの。・・・もし先輩に会っても気まずいし、丁度いいや)
いろは(と思っていた矢先・・・)
八幡「・・・おう」
いろは「・・・あ」
八幡「お前今、何でいるんだって思っただろ?」
いろは「はい」
八幡「今日雨降るからな。チャリだと帰り濡れちまう。プラス寝坊でズレてこの時間ってわけだ」
いろは「そうなんですか」
八幡「・・・」
いろは「・・・」
一年教室
いろは(それから会話もなく、学校に到着した)
いろは(授業も頭に入らず、ずっと昨日のことを考えてる・・・)
いろは(あたしは、昨日先輩に好きって言われてたら・・・)
いろは(多分・・・)
いろは(でも、先輩には好きな人がいるって・・・)
いろは(私には、別の人を追いかけてろって)
いろは(あんなに楽しそうにしてたのに・・・)
いろは(考えてみれば、あたしって、先輩の好みのタイプじゃないのかも)
いろは(顔は綺麗だと自分でも思うけど、あたしが男の人にモテるのって、要するに、小悪魔だから。色んな人に愛想を振りまいてるから)
いろは(先輩はそんなあたしの本性を知ってる。性悪女なんだって)
いろは(胸もないし、結衣先輩みたいなスタイル良くて健気な人とまともにやりあったら勝てる気がしない)
いろは(これは都合のいい妄想かもしれないけど・・・もし先輩が私を好きで、肝心なところでヘタレて、身を引いたんだとしたら)
いろは(やっぱり先輩はめんどくさい人だと思う。それで納得できちゃうかも)
いろは(そもそも、先輩は全然理想のタイプじゃないし!全然爽やかじゃないし、笑い方とか気持ちわるいし!)
いろは(あーもうっ。先輩のことなんか考えるのやめようっ)
いろは(当たり前だけど、私と先輩は学年が違うから基本的に学校で顔を合わせる機会はない)
いろは(あたしが奉仕部の部室に行かない限りは)
いろは(私も暇じゃない。生徒会長の肩書きもあるし、サッカー部のマネジャーもこなしている身だ)
いろは(今日は生徒会室で副会長でもネチネチいじめようかな・・・)
放課後
いろは「生徒会室で仕事してたら遅くなっちゃったな・・・」
いろは(クリスマスイベントで幼稚園児に着火マン持たせたのはやっぱりまずかったよね)
いろは(親御さんからのクレームに生徒代表で対応してたら遅くなっちゃった)
いろは(今はいろいろめんどくさい時代だからなぁ・・・)
いろは(すっごく疲れたけど、何も考えることがないとまた昨日のことを考えちゃうよね・・・)
いろは(さ。帰ろ。今日は一人で帰らなきゃ)
いろは(一人で・・・)
ザァァァァ
いろは(うっわ、めっちゃ雨降ってる・・・)
いろは(どうしよう傘持ってくるの忘れちゃった・・・この時間もう学校には友達いないし)
いろは(お母さんに電話して送ってもらおうかな)
いろは(と思ったけど、お母さん今日いないんだった・・・)
八幡「おう」
いろは(先輩・・・?!)
八幡「お前も今帰りか?」
いろは「何言ってんですか。もう最終下校時刻過ぎてますよ。待ち伏せしてたでしょ」
八幡「・・・いやお前、今朝、傘持ってなかっただろ」
いろは「持ってませんけど?」
八幡「ほら、使えよ」
いろは「・・・先輩はどうするんですか?」
八幡「俺は雨を全部避けて家まで帰れる」
いろは「そういうのいいですから」
八幡「でもほら、相合傘しちゃうと、いろいろ噂が立ってマズイだろ?葉山の耳にでも入りでもしたら・・・」
いろは「なんなんですか先輩」
八幡「・・・?」
いろは「昨日、あんなこと言っといて、何で私に優しくするんですか」
いろは「下心があるのかないのかハッキリしてください」
いろは「もう私を練習台にしないんじゃなかったんですか?!鬱陶しいですよ」
八幡「いや、好きとか嫌いとか関係なく、傘ないって知ってて見て見ぬフリすんのも後味悪いだろ」
いろは「・・・もうっ。ほんとなんなんですか」
八幡「・・・」
いろは「それで自分は濡れて帰るつもりだったんですか?!」
八幡「・・・」
いろは(そっか。先輩はこういう人だったよね・・・)
いろは(私じゃなくても、濡れるのがかわいそうって思ったら自分の傘をあげちゃうような人・・・)
いろは「・・・はぁ。もういいですよ。二人で相合傘して行きましょう?死ぬほど嫌で嫌で仕方がないですけどしょうがないですよね?」
八幡「いや俺はいいって」
いろは「先輩が入らないんだったら、私も傘いらないです!」
八幡「・・・あーもう。わかったよ」
テクテク
いろは「正直あたし、先輩が待っててくれたのは嬉しかったですよ。ちゃんとあたしのこと見てくれてたんだなって」
八幡「そうか」
いろは「でも、傘の渡し方が最悪ですね。トトロのカンタ以下です。恩着せがましいんですよ。平塚先生経由とかで間接的に渡せばいいんですよ」
八幡「そんなにダメだった?」
いろは「先輩は、普段無愛想なのにふとした瞬間に優しいのがいいんですよ」
八幡「・・・それってお前」
いろは「今、先輩あたしがデレたとか思いました?ごめんなさい先輩なんて大大大きっらいです!!!豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえバーカ!!!」
八幡「今までの誘い受けの中でもで1番酷い振られ方だな・・・」
いろは「・・・♪」
いろは(なんか、スッキリしたかも・・・)
八幡「なあ、一色」
いろは「はい」
八幡「昨日お前が何でいきなり帰っちまったか俺なりに考えてみたんだ」
いろは「先輩にはわかるはずないですよ」
八幡「お前、俺のこと好きだろ?」
いろは「・・・ハァ?!///」
いろは(言われてしまったぁぁぁぁ・・・///)
いろは(自分でも考えないようにしてたのにぃぃぃぃぃぃぃ!!!!)
いろは(せんぱいのアホーーーーーーーーーー!!!)
いろは(でもちゃんとわかってくれる先輩が・・・やっぱりすき///)
いろは(はあ・・・つらいけど、今すっごく救われた気分・・・あたしこんなに先輩のことが好きだったんだ)
八幡「俺はもうそういうことからもう目を逸らさないことにした」
八幡「・・・だからな。そういうことならな――」
いろは「ちょっと待ってください!!!その先は言っちゃダメです!!!」
八幡「・・・おお・・・?」
いろは「私も負けず嫌いなんです!!!先輩なんかに思い通りにされたくないんです!!!」
八幡「ええ・・・なんかお前テンションおかしいぞ」
いろは「じゃあ・・・こうしましょう。先輩、明後日ホワイトデーですよね?」
八幡「そうだな」
いろは「先輩はその日にその好きな人に告白してください!」
八幡「また急だな・・・」
いろは「その代わり、私は当日、先輩のお菓子作りを手伝ってあげますから、それを渡すんです」
いろは「先輩寂しいと死んじゃう私をいっぱい構ってくれるって言いましたよね」
八幡「・・・」
いろは「そうしないといろいろ言いふらしちゃうかもしれませんよ!その人に!」
八幡「・・・よし・・・わかったよ。言っとくけど振られることはまずないと思うぞ」
いろは「臨むところですよ」
八幡「それで、お前は俺が告白するのを指をくわえて見てるのか?」
いろは「そんなわけないですよ。その日までに、先輩に猛アピールして、メロメロにしちゃいますから!!!」
いろは「私に目移りした先輩はそのお菓子を私にリリースするって流れですよ!!!」
いろは「どうですか!!!完璧な作戦でしょう!!!」フンス
八幡「お前やっぱメチャポジティブだな」
いろは「私をこんなに本気にしておいて・・・絶対責任とってもらうんですから。覚悟してくださいよ先輩!!!」
八幡「・・・おう」
いろは「さてと。雨に濡れちゃうからもっとくっついてください♪」ムギュ
八幡「・・・あざとい///」
それから・・・
翌日
いろは「せんぱ~い♪」
八幡「ん?」
いろは「先輩って身長いくつぐらいなんですか?」
八幡「175ないぐらいだけど」
いろは「葉山先輩ってどれぐらいなんですかね?」
八幡「さぁな・・・興味ないから知らねー。195ぐらいじゃねえねの?」
いろは「先輩と一緒ぐらいじゃないですか?」
八幡「確かに近いかもな・・・」
いろは「まあ、わたし的には180とかなくても、175ぐらいがベストなんですよ~」
八幡「・・・へぇ」
八幡「・・・ってこのやりとり前もやったような」
いろは「あ!先輩今、"俺もストライクゾーンど真ん中"とか思いませんでしたか?!」
八幡「・・・」
いろは「大正解です!!!あたし先輩のこと大好きですよ♪」
いろは「前みたいに、先輩に抱きしめて欲しくて、そんな妄想昨日はいっぱいしちゃいました///」
八幡「そ、そうか・・・///」
いろは「ほら、先輩♪ぎゅーってしてもいいんですよ///」バンザーイ
八幡「しないよ///」
いろは「ほら。こんな感じでガンガンアピールしてくんで!!!」
八幡「んん。なかなかアグレッシブ///」
いろは「放課後、生徒会室に来てください。待ってますから」
八幡「おう・・・」
放課後
八幡「一色に生徒会室に呼び出されたけど・・・、絶対なんか企んでるよなアイツ」
八幡「取り敢えず入ってみるか、失礼しまーす」コンコン
ガララ
いろは「いらっしゃいませ先輩♪」ピョコピョコ
八幡「うわっ、何だその頭につけてるの」
いろは「見てわかるでしょ。ウサ耳ですよ。先輩が私のことウサギみたいでかわいいって言ってくれたからつけてみました♪」
いろは「どうですか?似合いますか?ふりふり♪」フリフリ
八幡「あざとさの平常運転だな」
いろは「まあいいです。中入ってください。一名様ごあんなーい!」
八幡「え、何今度は、イメクラ?」
いろは「イメクラって言うなぁ!!!喫茶店ですよ」
八幡「喫茶店かぁ、うさみみつうけたお前がやるとなんかこころがぴょんぴょんしてくるな」
いろは「でしょ♪で、今日は先輩の胃袋を掴もうと思って。先輩MAXコーヒー好きですよね」
八幡「好きだけど?」
いろは「マックスコーヒーと同じで世界には練乳を入れて飲むコーヒーがあるんですよ」
八幡「へえ・・・マックスコーヒーは練乳にコーヒーを入れた飲み物だけどな」
いろは「で、それがベトナムコーヒーなんです。という訳で、私が先輩にコーヒーをご馳走しながら精一杯サービスします♪」
八幡「へー」
いろは「あ!先輩今もしかしてサービスって言葉聞いてえっちなこと思い浮かべませんでしたか?」
八幡「いや別に」
いろは「・・・ちょっとだけならいいですよ」ボソ
八幡「・・・///」
いろは「なんてね。直接的なハニートラップは私のポリシーに反するんで。そもそもあたし胸ないから効果今ひとつでしょうし」
八幡「全然ないわけでもないだろ」チラ
いろは「今見た!チラ見したでしょ///」
八幡「はいはいメンゴメンゴ~」
いろは「とにかく、そういうことなんで、コーヒー淹れますね♪」
コポポポ
フワー
八幡「おお。いい香り」
いろは「美味しくなーれ、美味しくなーれ♪」
八幡「ならねえよ」
いろは「はいどうぞ。召し上がれ♪」コトリ
八幡「おっ。うまい。てかあまい」ズズズ
いろは「どうですか?私を選んでくれたらベトナムコーヒーも好きな時に淹れてあげる特典付きですよ?」
八幡「なんかコーヒーメーカー付いてくるって電気屋の特典みたいだな」
いろは「私も必死なんですよ!先輩に好きになって欲しいんですっ!」
八幡「・・・」
いろは「だって大好きなんだもん」
いろは「先輩のこともっと知りたい」
いろは「先輩とまだまだ千葉のB級スポットめぐりしたいし、おうちで二人でゲームしたりしたいんです」
いろは「先輩にもっとかわいいって言って欲しい」
いろは「あたし先輩にふられたら泣いちゃいますよ?」
八幡「・・・///」
いろは「あ、デレましたね今!!!」ホクホク
いろは「さて、後輩喫茶の定番と言えば、やっぱり後輩と楽しむゲームですよね!」
八幡「後輩喫茶って何だよ」
いろは「というわけでせんぱい!」
八幡「なに?」
いろは「あっち向いてホイやりましょうよ!」
八幡「・・・いいぞ」
いろは「じゃんけーん、ぽん!」パー
八幡「・・・」グー
いろは「あっち向いてー・・・」ジー
八幡「・・・」ジー
いろは「・・・」ジー
八幡「・・・」ジー
いろは「・・・」ジー
八幡「いや、早くホイしろや!!!」
いろは「ひっかかりましたね先輩。今、5秒ぐらい見つめ合っちゃいましたよ♪」
八幡「もうなんなのこの子///」プイ
いろは「すっごくドキドキしましたよ///」
八幡「あっそ///」
いろは「先輩と、もっとずっと見つめ合ってたいです。できればお布団の中とかで///お互いの息がかかるくらいの距離で///」
八幡「・・・///」
いろは「オプションメニューもありますよ」
八幡「ほう」
いろは「耳マッサージです♪」
八幡「耳かぁ・・・。耳で感じる女子もいるって言うけど、流石になぁ・・・」
いろは「さわさわ」サワサワ
八幡「ひゃぅっ?!///」
いろは(こうやって耳たぶのフチを親指でなぞるのがいいんだよね、確か・・・)
八幡「・・・~!」
いろは「髪もわしゃわしゃ♪」
八幡「・・・///」
いろは「気持いいですか先輩?」
八幡「気持ちよくなんかないもんっ」
いろは「もう、素直じゃないんですから。かわいいっ♪」サワサワ
八幡「・・・っ」
いろは(先輩かわいい・・・そうだ、ちょっといたずらしちゃおう♪)
いろは「ふー」フーッ
八幡「あんっ・・・」ゾクゾク
いろは(ピクってなった・・・先輩かわいい♪もっといじめちゃおうっと♪)
いろは「あれあれ、先輩ゾクゾクしちゃいましたかー?」
八幡「耳に息を吹きかけるないきなり!変な声出ちゃっただろうが///」
いろは「先輩、前々から思ってましたけど、ドМですよね?年下に罵られるのとか好きですよね?」サワサワ
八幡「好きじゃないもん!」
いろは「年下大好きなんじゃないですかぁ?このロリコン!!!」サワサワ
八幡「ロリコンじゃないもん。小町とルミルミがかわいいって思うだけだもん!!!」
いろは「小町ちゃんと留美ちゃんだけですかぁ・・・?いい加減素直になったらどうなんですかぁ?先輩?んー?」サワサワ
八幡「お前のことは、べ、別に年下とか関係なく・・・でもわがまま聞いてくれる年下は好きって言うか・・・///」
いろは「ほら。ドSっぽく責めたらガード激甘じゃないですか///」
八幡「だいたいいろはちゃんはロリじゃないもん。ウエストもちゃんとキュッてなってるし、おつまみの趣味も渋いし、時々リアルで夢のない発言するもん!ババアだもん!」
いろは「ババアって何だこら!!!」
いろは「まぁ・・・あたしも、甘えさせてくれる年上が好きですよ?先輩は年上とか関係なく大好きですからね?」
八幡「ふぇえ///」
いろは「よし・・・耳マッサージは成功♪」グッ
いろは(こんな感じで私は天才的な好き好きアピールの数々を繰り広げた・・・)
いろは(そして、これが私の最後のとっておきのアピール。これで勝負が決まる・・・!)
いろは「せんぱ~~~~~い♪」
八幡「おう。今度は何だ?」
いろは「手押し相撲で勝負です!」
八幡「手押し相撲ってあれか。坂本君と8823先輩がやってたやつか。・・・どうせ罰ゲームとかあるんだろ?」
いろは「ないですよ。あれ?先輩もしかして負けるのが怖いんですか?」
八幡「やっすい挑発だな」
いろは「いいですよ。この勝負受けて立ちます!」
八幡「言いだしたのお前だろ・・・よしやるか」
いろは「じゃあ・・・はっけよーい、のこった!」
八幡「なんか懐かしいな・・・友達いないからやったことないけど」
いろは「えいっ、えいっ」ブンブン
八幡「・・・」シュッシュ
いろは「えいっ、捕まえたっ♪」ニギニギ
八幡「手をニギニギすな」
いろは「じゃあ、先輩、次は私の全身全霊の攻撃を仕掛けます。受け止めてくださいね?そうじゃないとあたし倒れちゃいますから」
八幡「っておま・・・」
ギュー
八幡「抱きつかれた・・・今回は随分強引だな」
いろは「・・・」ギュー
八幡「・・・おい」
いろは「・・・」ギュー
八幡「おい、一色?」
いろは「もう少し、このままでいさせてください」
八幡「・・・いやちょっと」
いろは「だってあたし、明日先輩にふられちゃかも知れないんですよ?」
八幡「・・・」
いろは「だからせめて最後に、こうして先輩の温もりを、感じていたいんです」
八幡「・・・」
いろは「明日になったら、もう先輩にちょっかい、出せなくなっちゃうからっ」
八幡「・・・ちょっとだけな」
パッ
いろは「はいおしまい。・・・どうでしたか?あざとかったでしょ?」
八幡「泣くなよ・・・」
いろは「泣いてないですっ」
ホワイトデー当日・・・
放課後・八幡の家
いろは「という訳で、今日はポッキーを作ります!!!」
八幡「ポッキーならわざわざ作らんでも買えばいいだろ・・・」
いろは「市販のポッキーなんてせいぜい200円ですよ。そんなんで先輩の気持ちは伝わるんですか?」
八幡「そもそも何でポッキーなんだよ」
いろは「クッキーとかマシュマロとかチョコは古いんですよ。ポッキーなら独創性をアピールできるし何より素人が簡単に美味しく作れるからです!」
八幡「そう言えばお前女子力も高かったな・・・納得だわ」
いろは「まずは薄力粉と砂糖と塩をフードプロセッサーで混ぜてください」
八幡「オッケー」ガァァァァ
しばらくして
いろは「生地の形を整えたら冷蔵庫で30分ぐらい冷まします」
八幡「おう・・・結構手間かかるなこれ、全然手軽じゃねーじゃねーか」バタン
いろは「・・・」
八幡「・・・」
いろは「こうしてお菓子作りしてると、バレンタインの時を思い出しますね」
八幡「そうだな。あの時は大変だったな」
いろは「思えば私先輩に助けられてばかりですね。クリスマスもバレンタインもフリーペーパーも」
八幡「感謝しろよ」
いろは「今思えば、あの時から、クリスマスの後ぐらいから既に先輩のことが気になり始めてたのかもしれないです」
八幡「そうなのか・・・」
いろは「部室の扉越しに聞いたあの言葉・・・あれのせいで私はすごく傷つきやすい子になっちゃったんですからね?」
八幡「おぉぉぉ・・・俺の黒歴史掘り返してくれるなよ・・・」
いろは「あの一言で、先輩の本質がわかった気がします。本当は寂しがりやなんだなって。私と同じなんだなって」
いろは「今は、これからは先輩に甘えるだけじゃなくて、そばで支えてあげたいって、そう思ってますよ」
八幡「おう・・・」
いろは「私、生徒会長になって本当に良かったと思ってます」
八幡「そうか?俺の事好きなら、もう葉山はいいんじゃないのか?」
いろは「そうですね。何より、生徒会長にならなかったらこうして先輩を好きになることもなかったですし・・・楽しい、思い出も、いっぱい」
いろは(だめ・・・また泣きそうになってるあたし・・・)
八幡「・・・」
いろは「なんかしんみりしちゃいましたね。・・・続き、作りましょっか?」
八幡「そうだな」
いろは「チョコを湯煎するので、お湯沸かしてください」
八幡「はいよ」
いろは(それから生地を伸ばして細長く切って、オーブンで焼く)
いろは(こんがりいい匂いが広がって、生地が焼きあがるのを黙って二人で眺めていた。先輩もちょっと楽しそう)
いろは(でも、あたしはつらい)
いろは(工程をひとつこなすごとに、完成がどんどん近づいてるから)
いろは(12時を過ぎるとシンデレラの魔法は解けてしまうけど、先輩が探しているガラスの靴の持ち主は・・・多分あたしじゃない)
いろは(とってもつらいけど、あたしが泣くと先輩はきっと、自分の本物の気持ちを諦めてしまう。先輩は優しいから)
いろは(でも、甘えてるだけじゃ、きっと先輩にふさわしい女の子になれない)
いろは(焼きあがった生地に湯煎で溶かしたチョコを塗っていく)
いろは(ミルクチョコレート、ストロベリーをマニキュアみたいに塗って、かわいいアラザンを散りばめていく)
いろは(どれも綺麗だけど、このポッキーの花束は、あたしのためのものじゃないんだ)
いろは(先輩が好きな人に送る贈り物を、私が自分の手で作ってる。私ってバカだよね)
いろは(そんな風に考えながら、最後の一本もあたしが丁寧に仕上げてあげた)
いろは(ほら。これで先輩との楽しい時間は終わり)
いろは(でも最後に少しだけ神様が味方してくれたらいいな。先輩があたしを選んでくれたら)
いろは(嬉しいだろうな)
いろは(最後にとびっきりの笑顔で、あたしらしく、先輩に・・・)
いろは「先輩♪」
八幡「おう」
いろは「どうですか?あたしに惚れましたよね?このポッキー、あたしにくれる気になりましたか?」
八幡「・・・」
八幡「いや」
いろは「そう、ですか・・・じゃあ、お幸せに、もうあたし帰るんでさようなら・・・」
いろは(ほらね、やっぱり・・・)
八幡「いや待て待て待て待て待てって!!!」
いろは「何ですか・・・」
八幡「お前にあげる気になったっていうか、最初からお前にあげるつもりだったみたいな!!!」
いろは「・・・は?」
八幡「だから」
八幡「俺が好きなのは最初からお前だから!!」
いろは「・・・」
いろは「~~~~~~~~!!!!!!」
八幡「あー泣いちゃった、ごめんな」ナデナデ
いろは「ひどいですせんぱい!!!バーカぁ!!!あたしをもてあそんでたんですかぁ!!!」ゲシゲシ
八幡「いてて、ごめんごめん。必死になって猛アピールしてくるお前があまりにかわいかったらお預けしちまった」
いろは「さいてー!あたしがどんだけ不安で、つらかったと思ってるんですかぁ!!!」ゲシゲシ
八幡「ごめんな」
いろは「だいたいなんで花火したときあんな紛らわしい言い方したんですかぁ!!!」
八幡「ほら、冷静に俺と葉山どっちが好きか考えて欲しかったから、クールダウンの期間を設けてだな・・・」
いろは「せんぱいがすきにきまってるじゃないですかばかあああああああああああああああ」
八幡「ごめん。俺もお前が好きだから。な?」
いろは「えへへ///」
八幡「おっ。機嫌治った?」
いろは「絶対ゆるさないですよーだ!!!」ゲシゲシ
八幡「いててて、割と本気で殴ってきやがるなこいつ」
いろは「罰として、傷ついたあたしを全力で慰めてもらいますからねっ!!!」
八幡「いいぞ。なんでも言え」
いろは「じゃあ、ぎゅーって、抱きしめてください♡」
八幡「ほら、ギュー」ギュー
いろは「~~~♡」
八幡「相変わらずいい匂い」ナデナデ
いろは「せんぱい♪」
八幡「はい」
いろは「だいすき♡」ムギュー
八幡「俺もだよ」
いろは「ふふふ。先輩これでやっと両思いですね♡」
八幡「そうだな」
いろは「まあ分かってましたけどね。先輩は私の魅力には抗えないって。私を選んでくれるって」
八幡「嘘つけ、お前さっきギャン泣きしてただろ」
いろは「ふふふ~。先輩、なんであたしがポッキーを選んだかわかってないみたいですね?」
八幡「まさかお前」
いろは「そうです!!!無事両思いになった時にラブラブポッキーゲームができるようにです♡」
八幡「まじかよ。あざとーっ!」
いろは「ほら、夢中でぎゅー♡しててだいぶ時間が経ちましたし、そろそろチョコが固まってる頃です。早速ポッキーゲームしましょう」
八幡「ポッキーゲームって、リア充みたいで恥ずかしい///」
いろは「何言ってんですか。私と両思いなんだから超リア充じゃないですか♪」
八幡「確かに・・・!」
いろは「ほらやりますよ♪ん~♡」パク
八幡「おう、いくぞ」パク
サクサク
いろは「♡」
八幡「///」
サクサク
ポキッ
いろは「あー!先輩今わざと折った!!!」プンスカ
八幡「いやだって、本当にキスしそうになっただろ///」
いろは「そういうゲームじゃないですか!!!あたしとちゅーするの嫌なんですか?」ウルウル
八幡「めっちゃしたい」
いろは「~~~♡ですよねですよねっ!!!」ジタバタ
八幡「てか、お前、チューしたいなら普通にすればいいだろ」
いろは「じゃあ♡ふつうにしましょう♪」
八幡「・・・」
いろは「・・・?」
八幡「ねえいろはす。ふつうにチューするのってどうやんの?先輩わからないんだけど」
いろは「私もわからないです///」
八幡「お前、さてはお前、初キス?」
いろは「はい・・・///」
八幡「・・・目ェつぶっとけ」
いろは「やん♡先輩男らしい♡」
八幡「いくぞ」
いろは「ん~♡」ドキドキ
チュ
八幡「・・・///」
いろは「・・・///」
いろは(先輩と、キスしちゃった~~~~~!!!)
いろは(しかも、好きって言われたその日のうちに///)
いろは(今顔見られたらあたし死んじゃうよ~~~~~~///)ジタバタ
八幡「・・・お前、唇柔らかいな///」
いろは「・・・先輩あたしのはじめて奪っちゃいましたねっ」
八幡「言い方がエロいよいろはす///」
いろは「次は、お姫様抱っこで先輩の部屋まで連れてってください♪」
八幡「できるかな・・・よいしょっ」スク
いろは「きゃー♡」
八幡「お前ほっそいなー」テクテク
いろは「先輩の部屋にれっつごー!!!」
八幡の部屋
八幡「よいしょ」ボフ
いろは「先輩のべっど~♡」クンカクンカスリスリ
八幡「いろはす変態っぽい」
いろは「ここが先輩の部屋かぁ~。・・・こんなに綺麗に片付けして、最初から私を連れ込む気だったんですね?」
八幡「まあな///」
いろは「ほらほら。先輩の連れ込みたかったかわいい後輩がベッドで無防備に寝転んでますよ。ちょっかい出さなくていいんですかー?」
八幡「なんてわかりやすい誘い受け・・・!」
いろは「ほっぺをつんつんしたり、お膝に乗せてモフモフしたかったんじゃなかったんですかー?」
八幡「何で知ってるんだよ」
いろは「ほらー♡はやくー♡」パタパタ
八幡「つんつん」ツンツン
いろは「つんつんされちゃったー♪」
八幡「ほら。膝の上座れ」ポンポン
いろは「よいしょっ」ストン
八幡「もふもふ」モフモフ
いろは(ふおおおおぉ♡うしろから抱きしめられたり、なでなでされたり~!!!先輩の匂いで包まれちゃってるよぉ///)
八幡「髪さわさわ」
いろは(ツインテにしたりポニテにしたりして遊んでる・・・楽しいのかなぁ♪)
八幡「うなじぺろぺろ」ペロ
いろは「ひぅっ・・・///」ゾクゾク
八幡「耳カミカミ」アム
いろは「だめぇっ・・・みみよわいんですからぁ♡」ゾクゾク
八幡「かわいい・・・」
いろは「♪」
いろは(せんぱいにいっぱいかわいがられて、幸せすぎてあたしもうすぐ死んじゃうかも・・・///)
略さずちゃんと書くよね?
>>98
えっちなの書くと別のところに飛ばされるんだよね?
八幡「なあ」
いろは「なんですかー♪」パタパタ
八幡「一回しか言わないからよく聞けよ」
いろは「・・・はい」
八幡「俺はお前が心底好きだ。世界中の誰よりも。ずっとお前が欲しかった」
いろは「はい」
いろは(先輩の俺様スイッチ入っちゃってるよねこれ・・・///これからいっぱい嬉しいこと言われちゃうんだろうな・・・こまっちゃうよぉ///)
八幡「お前が俺をそばで支えてくれるって言うなら、俺はなんでもできる気がする。どんなことでも」
八幡「昨日もな。必死に俺の気を引こうとしてくるお前がかわいくてかわいくて。一生こいつにパンツ洗ってもらいたいと思った」
いろは「それって、働くって事ですか♪」
八幡「途中から押し倒してやろうとも思ったんだぞ」
いろは(・・・押し倒してどうするつもりだったんですかぁ///)
飛ばされる前に書ききればええんや
>>101
ありがとう。とりあえず期待に答えられるように頑張ってはみます
今日はここまでで~す!!!
八幡「お前はかわいいから、他の男も血眼になってお前を口説こうとするだろうな」
いろは(・・・私が好きなのは先輩だけです!浮気なんて絶対しません♡)
八幡「まあ、だからな。これから、お前が俺のことしか考えられないように、すごいことをするぞ」
いろは「な、なんですかすごいことって///」ドキドキ
八幡「キスして、舌と舌を濃厚に絡ませ合ったり、涎を交換したりするとってもすごいこと、なーんだ?」
いろは「大人のちゅーです///」
八幡「ほら、舌出せ」
いろは「待ってくださいよ、本当に今日するんですか///」
八幡「ベーってしてみろ。気持ちよくしてやるから」
いろは「えっ本当に今するの???///」
八幡「ほら。はやく」サワ・・・
いろは(そんな、ほっぺに手添えられてまじまじと見つめられたらにげられないよぉ///)
いろは「べ、べー♡」ペロ
八幡「いくぞ」チュ
にゅるんにゅるん!
にゅるんにゅるん!
いろは「んっ♡」
いろは「~~~~~~~~~~~♡」
いろは(先輩の舌がぁ///・・・あたしの中ですっごい暴れてるよぉ///)
いろは(すごいよぉっ・・・だめこれ♡、頭がとろける♡)
れろんれろん!
れろんれろん!
いろは(なんか・・・お腹の奥が熱くなって・・・好きって気持ちが溢れてきちゃってる・・・///)
いろは(せんぱいにおしっこおもらししてるって思われちゃってるかも・・・///)
いろは(身体が全身で先輩を求めてて、もっとすごいことする準備ができてきちゃってるみたい///)
いろは(先輩も・・・なんかすごいことになってる♡)
いろは(あたし先輩にえっちな子にされちゃうよ~♡)
八幡「はぁっ・・・はぁっ・・・」
いろは「はぁーっ・・・初めてなのに激しすぎます///こんなの今日絶対寝られませんよぉ///」
八幡「寝ないで何するのかな?いろはす?」
いろは「・・・秘密///」
八幡「うさぎは滅茶苦茶性欲が強いらしいぞ?」
いろは「もうっ///」
八幡「まだまだ物足りないみたいだし、もう一回するか?」
いろは「先輩こそ、ハマっちゃったんじゃないですかー?」
八幡「お前みたいなクソ生意気な後輩の口は塞いでやらなきゃな」チュー
いろは「ん~~///」
いろは(それから、顎が疲れるまで先輩と大人のちゅーをいっぱいしちゃった・・・///)
いろは(小町ちゃんが帰って来たから、三人でマリオカートして遊んで・・・)
いろは(もっといっぱい一緒にいたかったけど、流石に夜も遅くなっちゃったし、今日はもうお別れ)
いろは(二人で手を繋いで私のおうちまで送ってもらっちゃった♡)
いろは(家に帰っても、あたしの萌え袖カーデからは先輩の匂いがして、すっごく幸せ・・・)
いろは(お風呂に入ってる時も、ベッドに入った後も、今日先輩に言われたたくさんのことが頭から離れなくって・・・///)
いろは(明日からどんな風に先輩に甘えたりしようか、どんどんアイディアが溢れてくる)
いろは(私のあざとさは、生まれもっての才能だけど、先輩にどこまで通用するかはわからない)
いろは(やっぱりあざといって言われるよりも、素直にかわいいって言って欲しいんだもん)
いろは(だから、あたしの戦いはまだまだ始まったばかり♪)
後日・生徒会室
八幡「おーぅ。来たぞー」ガララ
いろは「後輩喫茶へようこそ先輩♪、一名様ごあんなーい」
八幡「ベトナムコーヒー一杯」
いろは「かしこまりましたー」
コポポ・・・
フワー
八幡「・・・」ペラペラ
いろは「って言うか入ってくるなりいきなり注文して本読み始めるとか・・・それじゃあ本当にただの喫茶店じゃないですか先輩!」
八幡「え?だってここ後輩喫茶なんだろ?」
いろは「もっと構ってくださいよ!今日はオプションメニューに新しいの追加しましたから!」
八幡「そうなんだ」
いろは「ほら、これです。名づけていろはすスイッチです♪」コロコロ
八幡「なんだこれ。押すと光彦が爆発するの?」
いろは「違います!それは押すと私のキャラが変わる不思議なスイッチなんでですよ」
八幡「ペットボトルのフタじゃねーか」
いろは「それは、ドSスイッチです。年下に罵られるのが大好きな先輩のために開発しました♪」
八幡「こっちは?」
いろは「それは妹スイッチです。押すと私が先輩の妹になっちゃいます。シスコンの先輩のために開発しました」
八幡「んじゃこれは?」
いろは「お。それ見つけちゃいましたか。それはスーパー甘えんぼスイッチです。オススメですよ♪」
八幡「だいたいわかった。ありがとな。持って帰ってプラゴミの日に出しとくわ」
いろは「ちょっと!押してくださいよ!せっかく準備したんですから!」
八幡「じゃあドSスイッチ、ポチー」ポチ
いろは「あ。ヒキガヤじゃん。アンタまた来たの?そんなにあたしに罵られたいんだ。キモーイ」
八幡「先輩に向かって何だその口の利き方はコラ!」
いろは「アンタさー。春休みにわざわざこんなところまで来るなんてヒマなの?友達いないの?」
八幡「うるせーブス!」
いろは「ちょっと!反撃しないで大人しく罵られてくださいよ!やりづらいです!」
八幡「わかった」
いろは「あ。ヒキガヤじゃん。アンタまた来たの?そんなにあたしに罵られたいんだ。キモーイ」
八幡「そっからやるのかよ」
いろは「アンタさー。春休みにわざわざこんなところまで来るなんてヒマなの?友達いないの?」
八幡「お前が呼んだんだろ」
いろは「まあしょうがないわよねー。アンタみたいに目が腐ってて、ひねくれてる奴、誰も相手してくれないわよね?」
八幡「・・・」
いろは「アンタはあたしにイジめられてるのがお似合いよね?ふふ♪」
いろは「え?何?"お前だってわざわざ春休みに俺に会うために学校来たんじゃないのかって"」
いろは「う、うるさいわね、別にアンタのためなんか――」
八幡「妹スイッチポチー」ポチ
いろは「まだ途中なのに!」
八幡「妹スイッチポチー」ポチ
いろは「あ、お兄ちゃん!学校で会うなんて珍しいね!」
いろは「でも、家じゃなくて学校で合うとなんか雰囲気違って変な感じだね・・・えへへ///」
いろは「お兄ちゃん、今日はさ、久しぶりに同じおふとんで寝てみない?」
いろは「・・・だって。最近ね、夜お兄ちゃんのことばっか考えちゃって、よく寝れないんだ・・・」
いろは「ねえ、兄妹なのに、お兄ちゃんのことこんなにも好きになっちゃうって変なことかな・・・?」
八幡「ここでドSスイッチと妹スイッチ同時押しポチ」ポチ
いろは「えっ・・・」
八幡「ここでドSスイッチと妹スイッチ同時押しポチ」ポチ
いろは「・・・だけどさ。お兄ちゃんの洗濯ものあたしのと一緒にされるの嫌なんだよね。なんかキモイし」
いろは「・・・っていうかさ。お前あたしの石鹸とかシャンプーたまに勝手に使ってるだろ。やめろよ」
八幡「うわ、ただの機嫌が悪い時の小町じゃねーかこれ」
いろは「ちょっと!!!折角先輩に喜んでもらおうと思ったのにコントみたいになっちゃったじゃないですか!!!」
八幡「だってなぁ。いきなりスイッチとか言われてもな」
いろは「って言うかスーパー甘えんぼスイッチ押さないんですか・・・?」ウズウズ
八幡「こんなもんポイーだ」ポイ
いろは「あー!ちょっと!精密機械なんですから優しく扱ってください!!!」
八幡「いやだからペットボトルのフタだろ」
八幡「あのな。甘えたいなら最初っからそう言えよ」
いろは「だって・・・///」
八幡「お前はもう俺の彼女なんだから。好きなだけ甘えていいんだぞ?ほらこっち来いよ?」
いろは「・・・///」ギュー
八幡「なんで体張って演技までしてんだよお前?」ナデナデ
いろは「だって、先輩に飽きられたくないんだもん///」
八幡「飽きねえよ。それにな、一色いろはが気を引こうとして空回りするなんて、お前のキャラじゃない」
八幡「お前はやっぱり、クソ生意気で、腹黒くて、あざとくなくちゃだめだ」
いろは「・・・」
いろは「・・・先輩もしかしてそのセリフずっと言おうと思ってスタンバってたんですか?」
いろは「狙いすぎですよ。というか、なんだかんだあざといの好きなんじゃないですか。チョロ・・・扱いやすいですね♪」
いろは「まあでも、先輩がそう言うなら・・・これからもいっぱい、騙してあげますよ♡」
おしまい
このSSまとめへのコメント
とけりゅぅぅ
胸が張り裂けそうだ
なかなか。
原作読んだことないのか?
とりあえずにやけた
最高だぜ