オペレーター「ヒマですね……」艦長「ああ……」 (16)


宇宙空間を飛行する巨大戦艦――





オペレーター「ヒマですね……」

艦長「ああ……」


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オペレーター「やっと念願だった戦艦のオペレーターになれたのはよかったんですが……」

オペレーター「なんかこう、想像してた仕事と違いますね」

艦長「どういう仕事を想像していたんだね?」

オペレーター「たとえば……」


オペレーター「7時の方向より、正体不明の質量が接近しています! なんだこれは!?」

オペレーター「は、速いっ! レーダーで捉えきれない!」

オペレーター「左舷被弾! 艦の30%が損傷!」

オペレーター「ダ、ダメですっ! もう持ちません! うわぁぁぁぁぁっ……!」


オペレーター「――みたいな」

艦長「ハハハ、君もかね」

オペレーター「君も、ということは、まさか艦長も?」

艦長「ああ、艦長に任命された当時は、色々と期待したものさ」

艦長「たとえば……」


艦長「なぜ、奴らが攻撃してくるのだ……!? まさか条約を破棄するつもりかっ!?」

艦長「バリアーを展開しろ! なにぃ!? 破られただと!?」

艦長「くっ、もはやこれまで……! 総員退避! 艦に残るのは私だけでいい!」

艦長「妻よ子よ……すまない……私は帰れそうもない……ピカッ!」

艦長「ドゴォォォォォン! ズガガァァァン! バリバリバリ!」


艦長「――みたいな」

オペレーター「さすが艦長、爆発音まで再現なさるとは」

艦長「そりゃあ、私の妄想は年季が入ってるからね」

オペレーター「恐れ入ります」

オペレーター「ですが、宇宙空間で爆発音はするんでしょうか?」

艦長「そこは男のロマンというやつだよ、君ィ」

オペレーター「ごもっともです」


オペレーター「しかし……近頃は本当に平和ですよねえ」

艦長「ああ、銀河中で和平条約が締結されてからというもの……」

艦長「宇宙戦争などというものは、まるでおとぎ話のような存在になってしまった」

オペレーター「この戦艦も、今や戦うための兵器というより」

オペレーター「宇宙の遭難者を救うための救助船やパトロール船のようなものですしね」

艦長「その遭難者すら、航宙技術の進歩で最近はめったに現れなくなってしまったしなぁ……」

オペレーター「…………」

艦長「…………」


オペレーター「――って、これはもしかしてなにかの予兆では?」

艦長「うむ、危機というのは、得てしてこうやって平和ボケしてる時にこそやってくる」

艦長「戦争なんて起こりっこないさ……ドゴォォォン! ってな具合にね」

オペレーター「で、ですよねぇ!」

艦長「こりゃあ、そろそろなにか起こるかもしれんぞ……!」


オペレーター2「艦長」

艦長「うわ、ビックリした! な、なんだね!?」

オペレーター2「レーダーの3時の方向に、奇妙な影が映っております」

艦長「おおおっ!? これはまさか!?」

オペレーター「ついに来るべき時が来てしまったのかもしれませんね!」


艦長「全砲門、開けぇ!」

オペレーター「了解!」

艦長「総員、B式緊急配備につけ!」

オペレーター「了解っ!」

艦長「万一に備え、巨大砲のエネルギー充填スタンバイ!」

オペレーター「了解ィッ!」


艦長「…………」ワクワクワクワク

オペレーター「…………」ドキドキドキドキ



オペレーター2「艦長」


オペレーター2「奇妙な影の正体は、小型のスペースデブリでした」

艦長「あ、そう……」

オペレーター2「念の為、小出力レーザーで排除しておきますか?」

艦長「あ……どうぞ」

オペレーター2「排除終了しました」

艦長「ご、ご苦労」

艦長「えー……総員、元に戻ってよし」



艦長「…………」

オペレーター「…………」


オペレーター「ヒマですね……」

艦長「ああ……」



今日も宇宙は平和であった――





おわり

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