宇宙空間を飛行する巨大戦艦――
オペレーター「ヒマですね……」
艦長「ああ……」
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オペレーター「やっと念願だった戦艦のオペレーターになれたのはよかったんですが……」
オペレーター「なんかこう、想像してた仕事と違いますね」
艦長「どういう仕事を想像していたんだね?」
オペレーター「たとえば……」
オペレーター「7時の方向より、正体不明の質量が接近しています! なんだこれは!?」
オペレーター「は、速いっ! レーダーで捉えきれない!」
オペレーター「左舷被弾! 艦の30%が損傷!」
オペレーター「ダ、ダメですっ! もう持ちません! うわぁぁぁぁぁっ……!」
オペレーター「――みたいな」
艦長「ハハハ、君もかね」
オペレーター「君も、ということは、まさか艦長も?」
艦長「ああ、艦長に任命された当時は、色々と期待したものさ」
艦長「たとえば……」
艦長「なぜ、奴らが攻撃してくるのだ……!? まさか条約を破棄するつもりかっ!?」
艦長「バリアーを展開しろ! なにぃ!? 破られただと!?」
艦長「くっ、もはやこれまで……! 総員退避! 艦に残るのは私だけでいい!」
艦長「妻よ子よ……すまない……私は帰れそうもない……ピカッ!」
艦長「ドゴォォォォォン! ズガガァァァン! バリバリバリ!」
艦長「――みたいな」
オペレーター「さすが艦長、爆発音まで再現なさるとは」
艦長「そりゃあ、私の妄想は年季が入ってるからね」
オペレーター「恐れ入ります」
オペレーター「ですが、宇宙空間で爆発音はするんでしょうか?」
艦長「そこは男のロマンというやつだよ、君ィ」
オペレーター「ごもっともです」
オペレーター「しかし……近頃は本当に平和ですよねえ」
艦長「ああ、銀河中で和平条約が締結されてからというもの……」
艦長「宇宙戦争などというものは、まるでおとぎ話のような存在になってしまった」
オペレーター「この戦艦も、今や戦うための兵器というより」
オペレーター「宇宙の遭難者を救うための救助船やパトロール船のようなものですしね」
艦長「その遭難者すら、航宙技術の進歩で最近はめったに現れなくなってしまったしなぁ……」
オペレーター「…………」
艦長「…………」
オペレーター「――って、これはもしかしてなにかの予兆では?」
艦長「うむ、危機というのは、得てしてこうやって平和ボケしてる時にこそやってくる」
艦長「戦争なんて起こりっこないさ……ドゴォォォン! ってな具合にね」
オペレーター「で、ですよねぇ!」
艦長「こりゃあ、そろそろなにか起こるかもしれんぞ……!」
オペレーター2「艦長」
艦長「うわ、ビックリした! な、なんだね!?」
オペレーター2「レーダーの3時の方向に、奇妙な影が映っております」
艦長「おおおっ!? これはまさか!?」
オペレーター「ついに来るべき時が来てしまったのかもしれませんね!」
艦長「全砲門、開けぇ!」
オペレーター「了解!」
艦長「総員、B式緊急配備につけ!」
オペレーター「了解っ!」
艦長「万一に備え、巨大砲のエネルギー充填スタンバイ!」
オペレーター「了解ィッ!」
艦長「…………」ワクワクワクワク
オペレーター「…………」ドキドキドキドキ
オペレーター2「艦長」
オペレーター2「奇妙な影の正体は、小型のスペースデブリでした」
艦長「あ、そう……」
オペレーター2「念の為、小出力レーザーで排除しておきますか?」
艦長「あ……どうぞ」
オペレーター2「排除終了しました」
艦長「ご、ご苦労」
艦長「えー……総員、元に戻ってよし」
艦長「…………」
オペレーター「…………」
オペレーター「ヒマですね……」
艦長「ああ……」
今日も宇宙は平和であった――
おわり
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