【ミリマス】風来のお姉さんリオ (100)

ミリマスSSです。
劇中劇という体なので、キャラ設定に一部捏造があります。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1463409973

[公園]


中谷育「ねぇ、知ってる? お宝屋敷の話」

周防桃子「何それ?」

育「この辺におっきなお屋敷があって、そこに金ピカのお宝がいっぱいあるんだって!」

桃子「ふーん……どうせ、よくある都市伝せ――」

「ねぇ、ちょっといい?」

育「へ?」



百瀬莉緒「その話、お姉さんにも聞かせてくれないかな?」



桃子「…………誰?」

莉緒「――なるほどね。そういうことか」

育「ね、お姉さんはどう思う? 桃子ちゃん、告白した方がいいよね?」

桃子「ねぇ、なんで途中から恋バナになってるの?」

莉緒「そうねぇ、悩さ……必勝法は無くもないけど、アナタ達にはちょっと早いかしら」

育「えーー! ずるいよそんなの! 教えて教えて!」

莉緒「チッ、チッ、チッ」

桃子「ねぇ誰なの? この痛い人」

莉緒「それはね、人に教わるものじゃないわ。自分で見つけるものなのよ」

育「自分で……?」

莉緒「そう。だから今は悩みなさい? いっぱい悩める時間がある内に……ね」ポン

警官「その人生相談、続きは署でやってもらってもいいかな?」ポン

莉緒「そうそ……えっ?」

莉緒「い、いやいやいやいや! 誤解よお巡りさん! 誤解! ノー不審者!」

桃子「変態です。間違いありません」

警官「小学生狙い? 困るんだよね、ただでさえこの辺は……」

莉緒「……この辺は?」

警官「あー、とにかく、いいですか? 任意同行ってことで」

「悪い、ちょっと待ってくれ」

育「!」

ジュリア「ウチのもんが迷惑かけてるみたいだな。すまねぇが、放してくれるか」

警官「なんだ、おま……ッ!?」ビクッ

ジュリア「一応言っとくが、あたしは素手だぜ。調べてみるか?」

警官「……」

桃子「……だから誰?」

ジュリア「悪かったな、手間かけて。マル暴の××によろしく」

警官「は、はは……」


育「お姉さん、行っちゃうの?」

莉緒「ええ。でも、きっとまた会えるわ」

桃子「桃子、面会とか行かないからね」

莉緒「逮捕はされてないわよ!」

ジュリア「おいお前、早く行くぞ。こっちだ」

莉緒「あ、はいはーい!」

莉緒(この人、助けてくれた……のよね? 誰だか知らないけど……)

[商店街]


莉緒「ありがとう、もうこの辺で……」

ジュリア「百瀬莉緒、だな」

莉緒「へ?」

ジュリア「あたしは魅梨音組のジュリア。よろしく、新人くん?」

莉緒「ミリオン……組…………ああああああああ!!!」

莉緒「お、おっお見苦しいところお見せしました!! えっと、その」

ジュリア「いいよ、そんなの。それより仕事だ」

莉緒「え? 面接は……」

ジュリア「やってる時間がねえ。緊急で探してるヤツがいるんだ、出来るか?」

莉緒「えっ、えぇっ?」

北沢志保「……」

ぬいぐるみ「……」

志保「……」ギュッ

志保「……ふふ」


ウィ---ン

最上静香「……」キョロキョロ

志保「……」

静香「…………あ、あの」

志保「……何?」

静香「う、うどん……は、どちらでしょう?」

志保「………………うどん?」

静香「うどん」

志保「……」

志保「……少なくとも、この店には無いわね」

静香「えっ」

志保「ここを出て、駅の方……左に行けば、交差点の手前にうどん屋があるわ」

静香「……! ありがとうございます!」バッ


志保「……?」

篠宮可憐「北沢さん、気に入りました? それ」

志保「っ!?」ビクッ

可憐「ああっ、ごめんなさい……えっと、硝煙のニオイが微かにするので、近くに誰か来ている……のかなと……」

志保「……」

可憐「なので、念のためここは早めに出ます……北沢さんは、組長の警護を……」

志保「了解」

莉緒「えーっと、うどん屋うどん屋……」


莉緒(向こうの人に見つかるとは思わなかったわ……即切られなかっただけラッキーね)

莉緒(でも、人探しってどういうこと? ミリオン組、土建屋のはずだけど……)


莉緒「……おっ、ここね。結構美味しそうなとこじゃない」

莉緒(それにしても……この商店街、なんか……寂れてる?)

莉緒「……まぁ、気のせいよね。お金が貰えればそれでよし。イイ出会い……までは望まない!」

莉緒「うどんが大好きな家出美少女……っと」ガララッ


静香「替え玉、お願いします」

店主「はいよ!」

莉緒「……」

莉緒(絶対この子だ……)

莉緒「ハーイ、お嬢ちゃん」

静香「!」

莉緒「あ、かけうどん。ちく天つけて」

店主「はいよ!」

莉緒「ここって、ちく天も美味しいのかしら?」

静香「……」ズルズル

莉緒「あぁっ、いや、別に私不審者って訳じゃないのよ? 110の必要は無いのよ? ホントにね?」

静香「……」ズルズル

莉緒「…………家出、したんだって?」

静香「……」

莉緒「ジュリアちゃんって子、すごい探してたわよ。私を面接ナシで雇っちゃうぐらいに」

静香「……」ズルズル

店主「はい、かけうどんお待ち」

莉緒「ありがと♪ うーん、美味しそ……」

静香「……ご馳走様でした」ガタッ

莉緒「ちょ、ちょっと! 出てっちゃうの!?」

静香「……わざわざ、ジュリアを手伝ってくれてありがとうございます」

静香「ですが、私は……あの家には」


ガララッ


可憐「し、失礼します……」

静香「!」

木下ひなた「や、どうもどうも。繁盛してるみたいだねぇ」

店主「……木下組…………!」

莉緒「木下組?」

莉緒(また土建屋かしら……)


ひなた「おじさん、この間の話、考えてくれたかい?」

店主「だから何度も言ってんだろ! お前らなんぞにこの店は……」

ひなた「そっかぁ。そうだよねぇ。おじさんのおじいちゃんの代からのお店だもんねぇ」

ひなた「したっけ、選んでくれるかい」


ひなた「今、ここさ明け渡すか……うちに、無理矢理潰されるか」


ひなた「2番目はイヤでしょや? おじさんも、おじさんの家族も、無事じゃいらんないんだから」

店主「…………っ」

静香「……」

莉緒(何? 潰す? やけに物騒な……)

ひなた「明日、また聞きにくるからねぇ。考えといてね」

可憐「あの、組長……」ボソッ

ひなた「……あぁー! そうなんかぁ! ほんと鼻がいいねぇ、可憐ちゃん」

可憐「い、いえ、そんな……」

ひなた「したっけ、よろしくねぇ、魅梨音組長さんも」

静香「……」

莉緒(組長?)

可憐「……それでは、失礼します」

ガララッ


志保「……」


ひなた「志保ちゃんもありがとねぇ、見張っててくれて」

志保「……いえ。何も起きていませんから」


ジュリア「……」

ジュリア「……うちのシマで、何やってやがる」

ひなた「おや、ジュリアちゃん。1人かい?」

可憐「……行きましょう、組長」

ジュリア「いつまでも好き勝手できると思ってんじゃねぇぞ……木下組……!」

志保「どうしますか」

ひなた「いいよいいよ、何もせんで。早く帰らねば、のり子ちゃんも待ちくたびれるべさ」

志保「……了解」


ジュリア「………………」


ガララッ

莉緒「ね、ねぇ、ジュリア……ちゃん?」

ジュリア「……帰るぞ。いるんだろ、お嬢」

静香「……」

[魅梨音組屋敷]


チョロロロロロ カッ コ-ン


ジュリア「なぁ、分かってんのか? お嬢」

ジュリア「今のこの街に、何も持たずに飛び出すってのがどれだけ危険か」

静香「……分かってるわよ」

ジュリア「いーや、分かってねえ! お嬢は顔を知られてないとはいえ、万が一が起こってみろ。うちは終わりだ」

静香「っ……」

ジュリア「まだ気持ちの整理がつかないのも分かるが……ん、まぁいい。後で話す。それより――」

莉緒「ね、ねぇ、ジュリアちゃん」

ジュリア「ん?」



莉緒「……なんなの? これ」

ジュリア「……」

莉緒「何よその顔。なんなの? さっきからお嬢が家出しただの、木下組だの、挙句に何よこの豪邸!」

静香「……」

莉緒「分かった、アレでしょ! モ○タリング! 一般人が突然ヤクザの抗争に巻き込まれたらどうする!? って、そういう……」

ジュリア「……」

莉緒「……そう……いう…………」

静香「……」

ジュリア「……すまねえ」

ジュリア「素性を隠してカタギを引き込むなんてのは、極道としてやっちゃいけねえことだ」

莉緒「ご、極道」

ジュリア「だから、お前はすぐに帰ってもいい。それならあたしはさっきの分の給料を出して、お前を忘れる」

ジュリア「……その上で、聞いてくれ」



ジュリア「お前に……お嬢の、目付役をやってほしい」

莉緒「……え?」

莉緒「え……ちょっ、待って、やめてよ」

莉緒「ほらっ、顔上げてよ、ねぇ……お、お嬢ちゃん? 何か……」

静香「……こうなったときのジュリアは、梃子でも動きません」

莉緒「何それ!?」

ジュリア「……」

莉緒「…………大体、お目付役って……ダメよ、ジュリアちゃん言ってたじゃない」

莉緒「お嬢ちゃんに何かがあったら終わり……なんでしょう? そんな大事な仕事、よそ者の私に……」

ジュリア「だからこそ、だ」

莉緒「!」

ジュリア「静香……お嬢は、先代に厳しく育てられた。厳しすぎた」

ジュリア「世間のことを何も知らないんだ……お前みたいなのと触れることが、お嬢の世界を広げることになる」

莉緒(褒められてるのかしら……?)

ジュリア「それに、別にボディガードって訳じゃない。屋敷から出ないように見張ってもらうだけだ」

静香「……」

莉緒「…………なんで?」

ジュリア「……」

莉緒「私は……さっき会ったばっかりじゃない。なんで……? なんで私を、そんなに信じて……」

ジュリア「……『ティンと来た』。うちを立ち上げた、初代組長の口癖だったそうだ」

莉緒「!」

ジュリア「改めて、頼む」



ジュリア「あたしたちに……魅梨音組に、力を貸してくれ」

莉緒「…………莉緒」

ジュリア「えっ?」

莉緒「百瀬莉緒。私の名前……これから、ずっとお前じゃ堅苦しいでしょ」

ジュリア「! じゃあ……」

莉緒「乗ったわ、あなたの話。たまには、アブナイ仕事も悪くないかもね♪」

ジュリア「……交渉成立、だな。ほらお嬢、挨拶」

静香「えっ? あぁ……コホン」


静香「……魅梨音組組長、最上静香。今日をもって百瀬莉緒、貴女を魅梨音組の客分とします」


静香「よろしくね、莉緒」

莉緒「……よろしく、組長ちゃん♪」

今日はここまでです。
好みで配役決めた結果キャストが5人に収まってませんが、こういうifということでお願いします…

ミリマス任侠ssって初めてかも、期待
一旦乙です

キャスト
>>2
百瀬莉緒(23)Da
http://i.imgur.com/WyI7gcq.jpg
http://i.imgur.com/CwjvsCr.jpg

周防桃子(11)Vi
http://i.imgur.com/WeLiMZ0.jpg
http://i.imgur.com/Na71QA7.jpg

中谷育(10)Vi
http://i.imgur.com/rhoZm3h.jpg
http://i.imgur.com/gMBetJe.jpg

>>4
ジュリア(16)Vo
http://i.imgur.com/8AwNBt7.jpg
http://i.imgur.com/KsxqAYF.jpg

>>7
北沢志保(14)Vi
http://i.imgur.com/92hrHgZ.jpg
http://i.imgur.com/HVDGRXD.jpg

最上静香(14)Vo
http://i.imgur.com/occfRrP.jpg
http://i.imgur.com/BE1XQSj.jpg

>>8
篠宮可憐(16)Vi
http://i.imgur.com/gmDlPEC.jpg
http://i.imgur.com/iQ7g8bQ.jpg

>>11
木下ひなた(14)Vo
http://i.imgur.com/wemdvc5.jpg
http://i.imgur.com/X5cTOVe.jpg

[魅梨音組屋敷]


莉緒「……」パンッ パンッ パンッ

ジュリア「うん、結構マシになってきたな」

莉緒「…………ねぇ、ジュリアちゃん」

ジュリア「うん?」

莉緒「私の仕事、組長ちゃんの見張りって言ってたわよね……?」

ジュリア「……お嬢なら、そこにいるだろ」

静香「……」ブンッ ブンッ

莉緒「そうだけど……! そうなんだけど! 銃の練習もやるなんて聞いてないわよ!」

ジュリア「必要な研修ってヤツだよ。万が一に備えての」

莉緒「……銃刀法に引っかかるブラックは初めてよ、私……」

静香「……」ブンッ ブンッ

[屋敷・夜]


莉緒「あー帰りた~~い」

莉緒「帰ってエッグイ肴取り寄せて姉さんとお酒飲みた~~いシュールストレミングとか食べてみた~~~~い」

馬場このみ『何言ってんのよ急に……もう帰ってるでしょうが』

莉緒「それがね姉さん、帰れてないのよ……はぁ……」

このみ『えっ、どういうこと?』

莉緒「ごめんなさい……これ以上は、ちょっと守秘義務が」

このみ『守秘義務ぅ? 何よ、土建じゃなかったの? というかそれ、打ってて平気なの?』

莉緒「うん……多分……」

静香「莉緒、何をしているの?」

莉緒「ネト麻。と、スカイプ」

静香「ねと……すか……??」

莉緒「あー、そっか。分かんないわよね」

莉緒「このみ姉さーん、ごめんなさい、通話の方切るわね。あと、今から4人目入るから」

このみ『ええっ? いいけど……何か、困ったこととかあったら言ってよね?』

莉緒「ありがとう姉さん愛してる!」プツン

静香「……えっと」

莉緒「組ちょ……静香ちゃんでいっか。麻雀は打ったことある?」

静香「花札のようなもの?」

莉緒「無いのね……意外だわ、この手の人って打ってばっかりのイメージ」

ジュリア「偏見もいいとこだな」

莉緒「わっ、ジュリアちゃん!? いつの間に……」

ジュリア「別に、麻雀くらい好きにやっていいけどさ……早めに寝ろよ。そんじゃ、おやすみ」

静香「おやすみなさい」

莉緒(……お母さんみたい)

――――

――


静香「ね、ねぇ莉緒、次はどうしたらいいの?」

莉緒「んー、そうねぇ……とりあえずこれ切って、役牌作りたいから……」


静香「え、えっ? なにこれ?」

莉緒「ああ、ロンって言って……まっちゃん、初心者にも容赦ないわね……」


静香「……えいっ! ツモ!」

莉緒「おぉー、すごいじゃない! 今頃びっくりしてるわよ、このみ姉さん」


静香「…………」

莉緒「ふあぁ……あら、もうこんな時間。これで最後にしときましょうか、静香ちゃん」

静香「……ねぇ、莉緒」

莉緒「なーに?」

静香「莉緒は、いつもこうやってネットで麻雀をやっているの?」

莉緒「んー……まぁ、そうね。後は姉さんちでとか……雀荘行くほどじゃないし」

静香「雀荘?」キラッ

莉緒(あ、ヤバいかも、これ)

莉緒「打ちたい人が集まってるのよ。でも、静香ちゃんが行くようなとこじゃないわよ?」

静香「……どういうこと?」

莉緒「えぇ? それは、お金賭けてたりするし……タバコ臭いし……すっごく悪くて怖い人たちが……」

静香「……」キラキラ

莉緒(ひ、瞳が……澄んでる……)

静香「……莉緒、明日は5時に起こしてちょうだい」

莉緒「な、なんで?」

静香「ジュリアは、いつも6時に起きるの。だから……」

莉緒「ちょっとちょっと! 私の仕事が何なのか分かってるの!?」

静香「問題ないわ、これは組長命令よ」

莉緒「割と気軽に権限使うのね……」

[商店街・朝]


莉緒「あぁ……クビになったらどうしよう……お金にならないし前科だけが残る……」

静香「大丈夫、捕まらなければ前科にはならないわ。それに今日は竹刀もあるし」フンス

莉緒「あなた昨日からポジティブすぎない?」

静香「……ところで、その、雀荘はどこにあるの?」

莉緒「探してるとこよ……というか、魅梨音組でやってるとことか知らないの?」

静香「ごめんなさい、そういう仕事はジュリアが……」

莉緒「でしょうね。そもそも、朝に行ったって入れな…………あっ」

静香「? ……あ、ここって」

莉緒「こないだのうどん屋じゃない。朝は何時から空いてるのかしら……」



『本日をもって休業します。長らくのご愛顧――』



莉緒「……え」

莉緒「な、何よこれ。休業? 今日?」

静香「……木下組ね」

莉緒「えっ?」

静香「一昨日、貴女も見たでしょう? 地上げよ、このお店はそれに屈した」

莉緒「そ、そういう事情には詳しいのね……」

静香「……木下組は、最近勢力を伸ばしているの。うちも、黙って見ているわけにはいかないんだけど……」

莉緒「……や、やっぱり、ケンカすることになる?」

静香「銃の訓練、役に立つかもしれないわね」

莉緒「……」ゴクリ



莉緒(あれ? そういえば……うどん屋に来てた木下組の人たち、女の子だったような)

莉緒(最近のヤクザって、そういうのが流行りなのかしら……)

[木下組屋敷]


ひなた「くちゅん!」

可憐「……風邪ですか?」

ひなた「ううん、大丈夫さぁ。ありがとねぇ、可憐ちゃん」

ひなた「それに、のり子ちゃんに志保ちゃんも。昨日の交渉がうまくいったのは、2人のおかげだべさ」

志保「……どうも」

福田のり子「いやー、アタシ何にもしてないけどね!」

ひなた「2人が睨んでてくれたっけ、余計なことせんで済んだんよ。本当、あんがとねぇ」

可憐「……今回の報酬です」スッ

のり子「おお……!」

可憐「屋敷の警護ですが、これまで通り続けて貰います。いつ外部と抗争が起こるか分からないので」

ひなた「よろしくねぇ」

のり子「はーい!」

志保「……」

のり子「はーっ、スゴいね木下組。ちょっとした用心棒に払う額じゃないよ、これ」

志保「……そうですね」

のり子「なになに、浮かない顔じゃん。どうしたの、今日は非番じゃなかったっけ?」

志保「いえ、そうですけど……」

のり子「……まだ、こういう仕事に抵抗ある感じ?」

志保「別に、そういう訳じゃ」

のり子「…………アタシもね、昔は迷ってた。こんなことやってていいのかなー、って」

のり子「でも、いつからかな。割り切るようにしたんだ。これはアタシが生きるためなんだ、これしか無いんだ……って」

のり子「志保にもさ、あるよね? そういう理由」

志保「……」

[商店街]


志保(まだ、スーパーが空く時間じゃないわね。今帰ったら、起こしちゃうかな)

志保「……」

志保(理由、か。私は……私の理由は……)


「あ、あの!」


志保「……?」

静香「この間の人……ですよね」

志保「……あぁ、うどんの」

静香「このあたりで、この時間から営業している飲食店はありませんか?」

莉緒「それと、雀荘知らない? ヤクザが絡んでないとこで」

志保「…………」

莉緒「……ねぇ、よかったの? 静香ちゃん」ボソッ

静香「?」

莉緒「いきなり話しかけちゃって……通報されない? またお巡りさん来ない?」

静香「知らない他人じゃないわ、大丈夫」

莉緒「その自信はどこから来るのよ……あと『うどんの』って何?」

静香「さぁ……?」


志保「……少なくとも、うどんが食べられるところは無いわ。コンビニで弁当を買うなら別だけれど」

志保「この辺りの雀荘は2軒。でも、両方とも木下組の息がかかっていたはず」

莉緒「き、木下組……」

静香「……そう。わざわざありがとうございます」

志保「……」


志保「でも、もう1軒あるわ。麻雀が打てて、ご飯も食べられるところ」

莉緒「え?」

[アパート]


ガチャッ

志保「ただいまー」

北沢弟「あ、お姉ちゃんおかえり! ……あれ?」

志保「……友達よ。えっと……」

静香「最上静香です。よろしくね」

莉緒「百瀬莉緒よ。えっと、志保ちゃんにはいつもお世話に」

静香「余計なこと言わない方が……」ボソッ

莉緒「それもそうね」

北沢弟「そっか、友達かぁ……えへへ」

静香「? 何かおかしい?」

北沢弟「だって、お姉ちゃんが友達連れてくるなんて初めt」

志保「こ、こら! 余計なこと言わないの!」

北沢弟「ねえ、普段のお姉ちゃんってどんな感じなの?」

静香「んー? そうね、優しいわよ。困ってた私を助けてくれたの」

北沢弟「そっかあ」

志保「出来たわよ、ご飯。早く準備しなさい」

北沢弟「はーい!」パタパタ

静香「……うどんじゃないのね」

志保「朝から作らないわよ。麺もないし」

莉緒「ちく天は?」

志保「朝から揚げませんよ」

北沢弟「じゃ、行ってきまーす!」ガチャッ

志保「行ってらっしゃい」


莉緒「ふぅ……ホントありがとね、えっと……」

志保「志保です。北沢志保」

莉緒「志保ちゃん。助かったわ、あのままだと腹ペコで炊き出しに並ぶことになってたから」

静香「あるいは見つかって強制送還……本当に、何度も助けて下さりありがとうございます」

志保(強制送還……?)

志保「……別に、敬語じゃなくていいわ。見た感じ年も近いし」

志保「麻雀がしたい、だったわね。三麻でもいいなら雀卓があるわ、ちょっと待ってて」

志保「……」パチッ

莉緒(志保ちゃん、結構手慣れてるわね……)パチッ

静香「……」パチッ

志保「ツモ」パチッ

莉緒「わ!? えーっと、パーワンがドラだから――」

静香「……」

莉緒(2人とも真剣ね……麻雀にあるまじき空気感だわ。ここはお姉さんの私から何か話題を)


莉緒「そういえば、2人は行かなくていいの? 学校」


静香「……」

志保「……」

莉緒「……」

莉緒(……あ、あれ?)

静香「……私は、今日行ってもジュリアに見つかるだけだもの。休むわ」

莉緒「それもそうね……志保ちゃんは? 打ってて大丈夫なの?」

志保「……学校には、通っていません」

莉緒「!」

志保「うちにいるのは私と弟だけ。仕事も不安定ですから、そんな暇は無い。それだけです」

莉緒「え、と」

莉緒(重い……思いのほか重い……!)

志保「別に、憐れんでもらっても構いません。……それじゃ、2局いきましょう」ジャラジャラ

静香「……」

莉緒「……そ、そうね! 勉強なんてクソ食らえ! 私たちは朝から三麻、こんなに楽しいことってあるかしら! ねぇ静香ちゃ――



静香「…………少し、羨ましいわ」

莉緒「へぇっ?」

志保「羨ましい? 私が?」

静香「ええ」

志保「……理由、教えてくれるかしら」

莉緒(ちょ、ちょっとぉ! せっかく楽しい雰囲気に向かいかけたのに!)


静香「……私の父は、頑固な人だったの。ああしろ、こうやれ、そんなことはするな……『理想の娘』を押し付けてきた」

静香「母は、私に理解を示してくれることもあったけれど……結局、父には逆らえなかった」

志保「……それで? 両親がいない私は自由で、羨ましい?」

静香「いいえ」


静香「死んだわ、2人は。5日前にね」


莉緒「……!?」

静香「おかしな話よね。父なんて死んでしまえ、そうすれば私は自由だ……そう、ずっと、思ってたのに」

静香「分からないの。父から解き放たれて、私がどうしたいか、何をしたいのか……」

莉緒「……静香ちゃん」

静香「……結局、私は父の描いた『娘』から逃げたいだけ。そこには『娘』を反転させた像があって、『私』はない」

志保「……」

静香「貴女のことが羨ましいのは、『自分』があるから。家族を守る、っていう確かなものが」

志保「…………そう」

静香「……ごめんなさい、長々と。再開しましょう、莉緒」

莉緒「っそ、そう来なくっちゃ! よぉーっし、お姉さんが引っ張っちゃうわよ~!」

静香「……」

志保「……」

莉緒(ああっ、胃が痛い……!)

[アパート・夕]


ガチャッ

北沢弟「ただいまー! ……あれ?」

志保「おかえりなさい」

北沢弟「お姉ちゃんの友達、もう帰っちゃったの?」

志保「ええ、あの後すぐ。学校があったもの」

北沢弟「そっか。……あれ、お姉ちゃん何読んでるの?」

志保「宿題よ。ほら、早くうがいしてきて」

北沢弟「はーい!」パタパタ

志保「……」


志保(最上静香……現魅梨音組組長、か)

志保(どうして私は、彼女を助けたんだろう……『いい人』にでも、なりたかったのかな)


プルルルルル プルルルルル

志保「!」

[魅梨音組屋敷]


莉緒「……」コソッ

莉緒「どう? 静香ちゃん」ボソッ

静香「……ジュリアの気配は、無いわね」

莉緒「外で探してるのかしら、この間みたいに……心が痛むわ……」

静香「大丈夫、話せば分かってくれるわ。入りましょう」

莉緒「裏口からだけど、ね」ッコ--ン

莉緒(あ、やば、何か蹴った)

「おい、そこのテメー!」

静香「……!」

組員「見ない顔だな。ここがどこか分かってんのか、あァ?」

莉緒「あれ、私のこと知らない? 一昨日客分になったんだk」

静香「」グイッ

莉緒「っどどどど!?」

莉緒「ちょ、静香ちゃん!? 別に逃げなくても、話せば分かって――」

静香「――違う!」


静香「今の……魅梨音の人間じゃない……!」


莉緒「!? それってどういう……」

静香「……とにかく、逃げるわよ!」

莉緒「逃げるってどこに!?」

静香「知らないわよ! どこか隠れられる場所!」

莉緒「私も知らないんだけど!? とりあえず公園行きましょ公園!」

静香「知ってるんじゃない!」



静香(ジュリア……まさか……)

[木下組屋敷]


志保「おはようございます」

ひなた「あぁ、志保ちゃん。ありがとねぇ、お休みだったトコ来てくれて」

志保「いえ……」

可憐「北沢さんには、緊急ですが屋敷の警護に回って貰います。しばらく休みは無いかもしれません」

志保「……どういう、ことですか」

ひなた「んー、のり子ちゃんがねぇ、『勝手に』カチコミかけちゃったんだわ。魅梨音組に」

志保「!」

ひなた「でも、組長ちゃんが居なかったんさぁ。とりあえずその場は制圧できたんだけども」

可憐「福田さんは今、実質No.2のジュリアを尋問しています」

可憐「また、最上静香がここへ報復に来る可能性は非常に高く……こうして、北沢さんをお呼びしました」

ひなた「志保ちゃん、お家のこともあるべ? したっけ一回帰って、色々準備して、また来てくれるかい」

志保「…………はい」

今日はここまでです。
ドラマCDの体なのに志保弟を出してたことに今気付きました

一旦乙です

>>27
馬場このみ(24)Da
http://i.imgur.com/nvVe5ru.jpg
http://i.imgur.com/hFOZYMI.jpg

>>33
福田のり子(18)Da
http://i.imgur.com/owmvpgX.jpg
http://i.imgur.com/wPpps1I.jpg

[公園]


莉緒「――つまり、木下組が、その、カチコミに来たかも……ってこと?」

静香「……恐らく、ね」

莉緒「……」

静香「さっきの話、覚えてる? 私の両親は5日前に……って」

莉緒「ええ」

静香「暗殺されたの。……ジュリアは、それも木下組の仕業じゃないかと睨んでた」

莉緒「……そんな」

静香「木下組は、冷徹さと行動の早さで勢力を広げてきたの……今ここで、魅梨音組を完全に潰しにきても、不思議じゃない……」

莉緒(静香ちゃん、震えて……)

静香「……莉緒、貴女はこの街を離れなさい。今すぐに」

莉緒「え……?」

静香「貴女が魅梨音の客分となったことは、まだ知られていない……今なら、貴女は助かる」

莉緒「あなたは、って……! で、でもジュリアちゃんこの前、『お嬢は顔を知られてない』って」

静香「……うどん屋で、金髪の女に会ったでしょう? 篠宮可憐……彼女は、ニオイで人を判別できるの。きっと、私から硝煙が匂ったのね」

静香「だから、私はもう顔が割れてる……逃げられないのよ……せめて、貴女だけでも……」

莉緒「静香ちゃ」

静香「もう嫌! 嫌なの! 私の、私の大切な人が死ぬのは……もう、そんなの……」

莉緒「……」

静香「それなら……まだ、私が…………ねえ莉緒……お願い……」

莉緒「…………静香ちゃん、落ち着いて聞いてね」

莉緒「まず、ジュリアちゃんは多分生きてる。静香ちゃんの行方が知れない以上、簡単に情報源を捨てるとは思えないわ」

莉緒「次に、あなたが逃げられない、なんてことは無い。どこか遠い街……海外でもいい、どこにだって行けるわ。世界は広いの」

静香「……でも」

莉緒「あなたが逃げたいって言うなら、引っ張ってあげる。死にたいなら、どこかに埋めるぐらいはしてあげるわ」

莉緒「でもね」

静香「……」

莉緒「ジュリアちゃんや、魅梨音組のみんなは……きっと、あなたの為に戦った」

莉緒「静香ちゃん、言ってたわよね。確かなものが、『自分』がある志保ちゃんが羨ましいって」

莉緒「あなたにもあるわ、確かなもの。それはきっと、静香ちゃんが気付いてないか、気付きたくないもの」

静香「……私……は…………」

莉緒「だけど、それは背負うには重いもの。だから決めなさい。私はそれに従うわ」

静香「……」

莉緒「……」

静香「……ひとつ、聞かせて」

莉緒「なあに?」

静香「莉緒、貴女は……いや、ジュリアも、みんなも……どうして、そこまで私について来てくれるの?」

莉緒「決まってるじゃない。私がそうできると思ったから、だから魅梨音組にいるのよ」

静香「…………」


静香「……ありがとう、莉緒」

莉緒「決まった?」

静香「ええ。『私』は最上静香、魅梨音組組長。組のみんなの命、背負ってるんだもの」

静香「戦うわ……! 莉緒、力を貸して!」

莉緒「そう来なくっちゃ!」パチン

このみ『はぁ~~~? あなたね、自分が何言ってるか分かってるの?』

莉緒「だってこのみ姉さん言ってたじゃない、困ってたらなんでもしてあげるって」

このみ『そこまで言ってないわよ! ……あーーもう、今回だけだからね!』

莉緒「ありがとう姉さん愛してる!」ブツン

静香「……」

莉緒「姉さんとまっちゃんにも協力してもらえそうだし……後もう一押し、何か欲しいところね」

静香「随分アバウトな計画ね……」

莉緒「しょうがないじゃない、2人だけで木下組どうにかするっていうのは流石に無理よ」

静香「……そもそも、武器も私の竹刀しかないような……」


「おい、そこの2人」


莉緒「へ?」

警官「ここで何を……って、お前は!」

莉緒「あー! あなた、あの時の……」

警官「またこんな少女を……2度目だ、今度こそブタ箱だぞ! オラッ来い!」ガシッ

莉緒「きゃあっ! ちょ、だから誤解よそれは!」

静香「あの、その人は、そのっ……!」

莉緒「ボキャ貧! いざって時に!」

静香「……」

静香(こうなったら……無理矢理にでも――)


ズンッ


静香「……え?」

警官「…………ぁ……が」ドサッ

「騒がしいわね」

静香「貴女は……!」



志保「何をしているの……? こんなところで、こんな時間に」



莉緒「……役者が揃った、ってやつかしら」

[木下組屋敷・朝]


のり子「ふあぁ~あ……」

ジュリア「……」

のり子「いやー、美味しいよねーここのパン。わざわざ取り寄せてくれるんだもん、いいとこだよ木下組」

ジュリア「……」

のり子「それでさあ、結局最上静香はどこなの? 水ばっかりだと栄養偏るよ?」

ジュリア「……知らねーよ」

のり子「ふーん……」

ドゴォ!

ジュリア「っが…………!」

バシャァ

のり子「飲めよ」

ジュリア「……」ポタポタ

のり子「……」


プルルルルル プルルルルル


のり子「……もしもし。はい。はい…………徳川組ぃ?」

ジュリア「……」

のり子「え、なんで……あーもう、分かった今行く!」ダッ

ジュリア「……」


ジュリア「…………徳川組?」

[小学校]


莉緒『まっちゃん、やってくれてるみたい。ここまでは予定通りね……このみ姉さんもよろしく』

このみ「はいはい」

静香『……ねえ。徳川組を動かせる、って……何者なの……?』

莉緒『ネト麻友達……よね?』

このみ「私に聞かないでよ……あ、そろそろ時間ね」

莉緒『姉さん。……ごめんなさい、こんなことに巻き込んじゃって』

このみ「まったくよ。差し入れと1日欠勤ぐらいなら、とか思ってたら普通に犯罪なんだけど」

莉緒『えっと、本当に、その……』

このみ「……まぁ、理屈は後でいくらでもつけてあげるわ。今は楽しくやりましょ?」

莉緒『……ありがとう、姉さん』プツン

このみ「…………さて、と」



大神環「たまき、いっちばー……あれ!?」

このみ「あなた、この学校の子?」

環「へ? そうだけど……」

このみ「ちょうどよかった。私、今日ここに転校してきたんだけど――――

ワイワイ ガヤガヤ


桃子「……」

育「おはよう、桃子ちゃん! ……桃子ちゃん?」

大神環「いく、すごいぞ! あの転校生、見つけたんだって! お宝屋敷!!」

育「転こ……えぇ!?」


このみ「そう。でも、私は中に入れなかった……お宝を守る悪いオトナがいて、怒られちゃったの」

桃子「そりゃね」

このみ「だから、みんなに協力してほしい! 私と一緒にお屋敷に行って、悪い大人たちからお宝を奪い返すのよ!」

環「おおー!」

桃子「待って、それっていつ? 今日の放課後?」

このみ「今よ!!!」バンッ

桃子「はぁ!?」

環「おおおーーー!!!」

[木下組屋敷]


のり子「来たよ! ねぇ、どうなってんの!?」

可憐「福田さん……電話で伝えた通りです。組員同士で諍いがあった、そうで……」

のり子「……あれ、そういえば志保は?」

可憐「それが、先ほどから連絡がつかなくて……」

のり子「えぇ!?」

可憐「何にせよ、もう抗争は始まっています。徳川と言っても一部ですから、総員で出る必要はありません……が………………」スン

のり子「……篠宮さん?」

可憐「……誰か来ます。大勢です」

のり子「うっそ、徳川は一部なんじゃなかったの!?」

可憐「い、いえ、これは……カタギというか……」


ドドドドドドドド


このみ「さぁみんな! こっちよ!!」

可憐「しょ、小学生…………?」

のり子「えぇ……?」

環「おぉー! でっかいお屋敷だぞ! ここがお宝屋敷!?」

このみ「えぇそうよ! 悪いオトナたちがいるでしょう!?」

のり子「ちょ、何してんの!? ここがどこか分かって……」

環「わるいオトナだ! くふふ、たまき逃げちゃうぞー!」

可憐「わっ、ちょっ……」


桃子「……何これ。みんなしてバカなんじゃないの? 学校は?」

育「ふふっ、たまにはいいじゃん、楽しいし。それに、このチャンスにあの子と近付けるかもよ?」

桃子「はぁ!?」


このみ(こんな感じでよかったのかしら……この子たちに万が一があったら、普通に私がヤバいんだけど)

このみ(いや、アレ、なんかもう色々麻痺してるわ……とりあえず頑張って莉緒ちゃん……!)

莉緒「……時間ね。行きましょ」

静香「ええ」

志保「……」



組員「……」

莉緒「きゃあああーーっ!!!」ドンガラガッシャ-ン

組員「おおぅ!?」

莉緒「」ビクンビクン

組員「な、なんだこいつ……? サムスばりに回転して飛んできたが……おい、生きてるk」ズンッ

組員「」ドサッ

志保「……」

静香「……莉緒、大丈夫?」

莉緒「大丈夫。ねえ、今の私セクシーだった?」

志保「……なにか、特殊な訓練でも?」

莉緒「何言ってんの、ヨガの賜物よ」

静香(ヨガ……?)

志保「……」ザッ

志保「問題ありません。入りましょう」

莉緒「了解♪ いやー助かるわ、志保ちゃんがいて」

静香「……よかったの? 本当に」

志保「……私は、私の守るもののために戦う。それだけよ」

静香「……」

志保「ここを左に曲がった奥に、地下牢への階段があるわ。恐らくそこに……」

莉緒「ジュリアちゃんね。じゃあ、地下は私が引き受けるわ」

静香「でも、莉緒1人で」

莉緒「大丈夫よ、装備も色々あるし。それに、静香ちゃんには案内人が付いてる方が……ね?」

静香「……」

タッタッタッタッタッ


志保「……百瀬莉緒は、何者なの?」

静香「うちの客分よ。新入りだけどね」

志保「……そう」

静香「1人にさせちゃったのは心配だけど、彼女ならきっと……そう思わせる何かが、莉緒にはあるわ」

志保「随分買ってるのね。良かったわ、分断できて」

静香「え?」

志保「……」ガララ ピシャッ

静香「……何を」

志保「ごめんなさい。色々考えたのだけど……やっぱり、あなたにはここで消えてもらう」


志保「……私の、守るもののために」


静香「…………志保」

莉緒「あ、いたいた! ジュリアちゃーん!」

ジュリア「!」

莉緒「……ジュリアちゃん、よね?」

ジュリア「……確信持てよ」

莉緒「いやだって、心なしか……カワイイ、ような……」

ジュリア「うっせ。……お嬢は無事か?」

莉緒「多分ね。ねえ、こういう鍵って」


ズガァアアアアアン!!!


莉緒「!?」

「あちゃー、やり過ぎた。鎖まで壊しちゃったよ」

莉緒「っな……」

ジュリア「……お前」



のり子「まぁ、ここは正々堂々ってことで……よろしく」

今日はここまでです。
一応、金曜あたりに終わる予定です

莉緒「……」パンッ

のり子「!」ヒュン

莉緒「……ッ!」パンッ パンッ

莉緒(嘘でしょ……銃弾躱すの……!?)

のり子「ちょ、いきなり撃つ!? 分かってないなー、ワビサビとかあるじゃん!」

莉緒(ジュリアちゃんも動けるようになったけど手錠はまだ……ここは……)

のり子「じゃ、容赦なくこっちも……反撃のぉーー……」


のり子「ドロップッッキーーーーック!!!」ズドォン!


のり子「……ふぅ。決まっ……あれ?」

莉緒「……」ダッ

のり子「あっ、ちょっとぉ! 逃げるの!?」

莉緒(お巡りさんのニューナンブはあと2発、残りの武器は姉さんの差し入れ、警棒と手錠は静香ちゃんが――)

ジュリア「――待てって、自分で走れるよ! おい莉緒!」

莉緒「あぁ、うんオッケーオッケー……っと」

ジュリア「お嬢は来てるのか? どこにいる?」

莉緒「……多分、志保ちゃんと戦ってる」

ジュリア「志保……木下組の用心棒か」

莉緒「協力してくれてたハズなんだけど……待ってね、スカイプ繋がってるかr――


ドォオオオオン!!


のり子「あー、いたいた」

ジュリア「……その前にコイツだな」

莉緒「…………」

プルルルル

可憐『福田さん、聞こえますか』

のり子「今いいとこなんだけど! ちびっ子はどうしたの!?」

可憐『拘束しました。私もそちらに合流します』

のり子「オッケー、邪魔しないでよ!」

可憐『……ぜ、善処します』



莉緒「――で、どうする? あの強化版毛利蘭みたいな子」

ジュリア「正面から戦っても勝算は無い、コソコソやるしかねえだろ」

莉緒「じゃ、逃げつつ待ち伏せて奇襲って感じで……囮よろしく、ジュリアちゃん」

ジュリア「了解。結構重いんだけどな、この手錠……」

静香「……」

志保「……」ザッ

静香(中下段の構え……やっぱり、何かの武術……)

志保「……いいの? そんな竹刀で。見たところ、剣術はできるみたいだけど」

静香「あら、あなたこそ素手でいいのかしら?」

志保「……」

静香(さっきの警官やここの見張りを沈めたのも、志保の一撃だった……注意しないと)

志保「……先に言っておくけど」


志保「どこの流派とか、無いから」ビュオン!


静香(速――ッ!?)ヒュン

志保「……」タッ

静香(無の状態から、いきなりこの速度……!)

志保「道場に通っていたこともあったわ。でも――」

静香「どうでもいい」

志保「!」

静香「貴女の不幸話に興味は無いわ……それとも、そういう戦法?」

志保「……羨ましいんじゃなかったの? 守るものがある、私が」

静香「そうね。でも、私にもあるの。守るものが、背負うものが」

志保「……」

静香「来なさい。貴女の話を聞けば、信念の戦いになってしまうから」

のり子「あーーーもう逃げんなぁ!!」

莉緒「止まれって言われて止まるバカはいませんよーだ!」

ジュリア「喋んなバカ!」

のり子「また曲がり角、っていうかこの屋敷広すぎない!?」

ジュリア「お前もうっせ……っどわぁ!?」ズサァ

のり子「死に体! ラッキー、ロープ際からの――」

莉緒「フライングなんちゃら、ね」チャキッ



パァン!



ジュリア「……」

のり子「……甘い」

莉緒「」ドサッ

のり子「アタシが銃持ってないと思った? 反応できないと思った? っていうか――」

ジュリア「ッ!」バッ

のり子「あーまた逃げる!」

志保「……あなたの言う通りね」

静香「……」

志保「結局のところ、私たちは利害がぶつかって戦う。それだけ」

志保「理由なんて……どうでもいい!」ビュオッ!

静香「………………」

静香(ここッ!)フッ

志保「!」

志保(竹刀、投げ――――


ガキィン!!


静香「!?」

静香(防がれ……小太刀……!?)

志保「で、警棒でしょう? 知ってたわ」

静香(しまっ、ゼロ距離――)



ドォオオオオオオン!!!

志保「!?」

のり子「あれっ? ここじゃな……志保!?」

志保「っな――」ガチャン

静香「……とりあえず、逮捕ね」

のり子「あああ最上静香! ここは――

パンッ パンッ

のり子「――れっ?」ドサッ

莉緒「……ふぅ」

ジュリア「お嬢、竹刀袋貸してくれ。縛る」

静香「え、ええ」


志保「……」

莉緒「説明しなさい、って顔ね」

志保「…………えぇ、まぁ」

ジュリア「……うん、こんだけやりゃ大丈夫か」

のり子「んぐぐ……ねえ、なんで生きてるの? アンタ……」

莉緒「防弾衣ぐらい着るわよ……それと、可憐ちゃん?の援護なら来ないからね」

のり子「え」

莉緒「このみ姉さんの差し入れ、胸あたりにしまってたの。シュールストレミングって知ってる? アレの缶ね」

志保「……」

莉緒「多分あの子、生きてるか確認しに来たのね。あなた達はすぐ行っちゃったけど、地獄絵図だったんだから……うっぷ」

ジュリア「……そういや莉緒、臭うな」

莉緒「やめて! 距離取らないで!」

莉緒「ま、志保ちゃんに貰ってた見取り図のおかげよね。スカイプで位置情報共有してたのもあるけど」

のり子「志保、やっぱり裏切って……!」

静香「どうかしら。彼女は私を[ピーーー]気だったわ」

志保「……」

ジュリア「……もういい、そろそろ行くぞ。まだ目的は達成してねえんだ」

莉緒「それもそうね」


志保「……」

静香「……貴女は、1人だった。だから迷った」

志保「!」

静香「私には莉緒とジュリアと、皆がいた。それだけ」

志保「………………」

ジュリア「お嬢」

静香「……ええ、今行くわ」

ひなた「……」グビッ

ひなた「んー……」

ひなた「やっぱし、お天道様は見てる、ってやつなのかねぇ……」

莉緒「あれ、あなたお酒飲める歳だったの?」

ひなた「……おや」

莉緒「随分辛気臭く飲んでるじゃない、組長さん」

ひなた「これはお酒じゃないよぉ、りんごジュースだべさ」

ジュリア「組長レベルが1人か。他の面子はどうした?」

ひなた「徳川さんとこにほとんど、子守にちょっこし。志保ちゃんにのり子ちゃん、可憐ちゃんも連絡付かなくなっちまったべさ」

静香「……」

ひなた「思ってるかい? 拍子抜けだぁ、こんなものかい木下組……って」

ひなた「こんなものだよぉ。こんなものだったんさぁ、最初から」

ひなた「あたしの代になって、ハッタリと度胸で大っきくしてきたけんども……結局、張りぼてなんだわ」

ジュリア「……」

ひなた「強い用心棒さんにしっかり払うから、お金の余裕も無くてねぇ。ちょっと揺さぶられればこの有様さぁ」

莉緒「……」

ひなた「……あたしが憎いかい、静香ちゃん。魅梨音の先代を、親を殺したあたしが」

ひなた「でもね」

ひなた「うちの父ちゃんと母ちゃんもね、殺されたんよ。魅梨音組にね」

静香「……!?」

ひなた「やっぱり知らんかぁ。ちっこい組だったからねぇ」

ジュリア「お嬢、聞くな。ハッタリだ」

ひなた「……あたしだって、やくざの端くれ。みんなは無理でも、1人ぐらいは刺し違えられるよぉ」

莉緒「……」

ひなた「どうするかい? 静香ちゃん」

静香「………………」

静香「木下ひなた。貴女にも戦う理由があることは分かりました」

ジュリア「……」

静香「ですが。私も、父や母のことを……許すことはできません」

莉緒「!」

ひなた「……そっかぁ」チャキッ

静香「だから……」


静香「水に流しましょう」


ひなた「へっ?」

静香「魅梨音や木下組のような小さな組で削りあっても、消耗するだけです。徳川や、大きなところにいずれ潰されてしまう」

ひなた「……見逃してくれるってんなら、私は嬉しいけんども。そっちは何を得するんだい?」

静香「私は、あなたと盃を交わしたいと考えています」

ひなた「!」

ひなた「……それは、魅梨音の下につけってことかい?」

静香「いいえ。対等な立場、いわば同盟です」

ジュリア「……お嬢」

静香「ですが、魅梨音の内部でも話していないことです。なので、正式な提案ではありません」

ひなた「……」

静香「戦うか、手を組むか。条件面も含め、考えておいて下さい。……それでは」

莉緒「え、もう帰るの? 静香ちゃん」

静香「ええ。話すことは終わ――」

ガララッ

可憐「……く、組長…………」

莉緒「!?」

可憐「に、逃げ……早く……おぶぇっ」チャキッ

莉緒「待って待って! まだ完治してないの!?」

ひなた「いいんだよ、可憐ちゃん」

可憐「!」

ひなた「その人たちは、大事なお客様さぁ。したっけ、子供たちと一緒にお見送りしてくれるかい?」

可憐「……は、はい……」

ジュリア「いいのか、お嬢」

静香「何が?」

ジュリア「同盟だよ。木下組、今潰すことだってできたんだぜ」

静香「……そんなことをしても、意味はないわ」

ジュリア「!」

静香「私が魅梨音を守らなくちゃいけないように、あの子にも守るものがある」

静香「もしそれを壊さなくてもいい道があるなら、私はそれを選びたいの。……綺麗事かもしれないけれど、ね」

ジュリア「…………は~っ」

莉緒「どしたの?」

ジュリア「分からねえもんだな……リオともども家出しやがったと思ったら、こんな感じになってんだからさ」

莉緒「君子3日会わざれば、ってやつね」

静香「べ、別に君子じゃないわよ……」

今日はここまでです。
明日はエピローグ的なアレです

[公園]


育「ねぇ、今日あの子としゃべった?」

桃子「なんで?」

育「だって、あんな楽しいこと一緒にやったんだよ! 話題のきっかけにしないと!」

桃子「だからなんで…………あっ」


このみ「……」


桃子「この前の転校生……と、誰?」

育「おーい! このみちゃーん!」

このみ「あぁ、育ちゃん、桃子ちゃん。元気だった?」

育「うんっ! すっごい楽しかったよ、また遊ぼ!」

このみ「そ、そうね、あはは……」

「ごめんなさい、このみはこれから習い事なのです。また今度よろしく、ね?」

育「あっ、はーい!」


桃子「……お姉ちゃん?」

[商店街]


このみ「ごめんなさいね。ちょっと知り合いで」

徳川まつり「この前の襲撃のときの子、なのです?」

このみ「……ええ」

まつり「あんな子供たちを利用したのですね。びゅーてぃほーな作戦です」

このみ「ホントにね。まっちゃんと赤髪の子が色々してくれてなかったら今頃勾留決定よ、私……」

このみ「……ありがとう、で、いいのかしら」

まつり「ほ?」

このみ「私も、莉緒ちゃんも、あなたに助けられた。だけど……」

まつり「やりすぎ、ですか?」

このみ「……」

まつり「まつりは、いつも2人に感謝していたのです。遊んでくれて」

このみ「ネト麻しかしてないけど?」

まつり「それでもです。だから、2人が困っていたから、出来るだけのことをした。それだけなのです」

このみ「……そうすることで、まっちゃんにも得があった?」

まつり「知りたいですか?」

このみ「別に。そうだ、そこでうどん食べてく? 美味しいらしいわよ」

まつり「ごめんなさい。まつりは、これから別の用事があるのです」

このみ「そっか。じゃ、私も帰ろうかな……会社になんて言おうかしら……」

まつり「莉緒ちゃんに会っていかないのですか?」

このみ「んー、なんかもう別のとこ行っちゃったんだって」

[うどん屋]


店主「はい、かけうどん2つお待ち」

志保「どうも」

静香「いただきます」パキッ

志保「……」

静香「……」ズルズル

志保「……そんなに、ここのうどんが好き?」

静香「ええ。あのまま畳むには勿体無いお店よ」

志保「ふうん」

静香「……」ズルズル

志保「お人好しね。理想主義もいいけど、後ろから刺されても知らないわよ」

静香「……それは、貴女のこと?」

志保「……」

静香「貴女は仁義の人、筋が通っていれば迷うことはない。違う?」

志保「……裏切る意味が生まれるとしたら?」

静香「どうかしら。またあのアパートに戻りたい、ってことなら聞いてあげるけど」

志保「……」

静香「それに、麻雀相手もほしいしね……」ズルズル

志保「…………そういえば、百瀬莉緒は今どこにいるの?」

静香「さあ? どこかで仕事を見つけたんじゃないかしら」

志保「……」

静香「志保、早く食べなさい。伸びるわよ」

志保「はいはい……」パキッ

[公園]


桃子「……結局、何者だったんだろ。あの転校生」

育「なんか、誰もどこのクラスなのか知らないらしいよ?」

桃子「はぁ? 何それ」

育「……もしかして、ユウレイだったりして!」

桃子「はぁ!!?」



莉緒「……」ザッ

ジュリア「何やってんだ、ロリコン」ポンッ

莉緒「わああ!? いや違うのよこれは! ホントに…………なんだ、ジュリアちゃん」

ジュリア「お前な……まぁいいや、ちょっと面貸せよ」

[商店街]


ジュリア「今日はどうしたよ、また面接か?」

莉緒「んー……私はね、アレよ、街コン? 的な? アレがね?」

ジュリア「……」

莉緒「嘘よ嘘! 仕事! 仕事で来たの! その顔やめて!」

ジュリア「仕事か。それでわざわざこの町に?」

莉緒「そ。まっちゃんが木下さんとこで会議っていうから、その立会人にね」

ジュリア「よく言うぜ。私が仕向けたんです、っつー証人だろうが」

莉緒「そういう言い方もあるわね。割と穏便に終わったわよ、ひなたちゃんは大物ね」

ジュリア「ふーん……」

莉緒「そこで聞いたんだけど、のり子ちゃんSPの面接通ったんだって。まぁ、あの腕っぷしなら――」

ジュリア「……」

莉緒「ジュリアちゃん?」

ジュリア「……なぁ、莉緒。また魅梨音で仕事する気はねえか?」

莉緒「……」

ジュリア「木下組との抗争は終わったが、まだうちは不安定だ。人材も少ねえ。今の魅梨音組には、お前が必要だ」

莉緒「……」

ジュリア「……」

莉緒「……ジュリアちゃん、四天王ってやったことある?」

ジュリア「…………は?」

莉緒「今度オーディション受けることになったのよ、いや私はいきなり無理よって言ったんだけどね?」

ジュリア「待て、何の仕事してんだお前」

莉緒「女優さん? スカウトされたばっかりでよく分かんないんだけど……」

ジュリア「……」

莉緒「……もう、そんな顔しないの」

莉緒「今の静香ちゃんとジュリアちゃん、志保ちゃんもいれば、魅梨音組は大丈夫よ。私が保証する」

ジュリア「……」

莉緒「それに、私は風来坊。同じところにずっとは居られないの」

ジュリア「……そうか」

莉緒「……あ、もうこんな時間!? やっば、私もう行くわね! 電車がヤバい!」

ジュリア「あ、おい莉緒! ……ったく」



ガララッ

志保「……どうも」

ジュリア「……ああ、志保」

静香「ジュリア。どうしたの? わざわざ出迎え?」

ジュリア「ん、まぁな。帰るぞ」





ジュリア「…………風、強いな」





以上で完結です。
最後まで読んで下さった方、ありがとうございました。
キャスト投票、第二回があったらいいなあ…

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