穂乃香「もう生きていけません…」
忍「そんな大げさな」
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穂乃香「大げさなものですか、死活問題ですよ」
忍「穂乃香ちゃんの生死軽くない?」
穂乃香「物の例えというやつです」
忍「例えにしたってあのブサイク相手でそれはどうなの」
穂乃香「忍ちゃんは相手を外見で判断するんですか…」
忍「無機物相手に外見以外でどう推し量れと」
忍「それで?」
穂乃香「それで、とは?」
忍「いや、嫌ったなんて断言してるんだから何か理由があるんでしょ?」
穂乃香「うーん…」
忍「無いの?」
穂乃香「強いて言うなら…雰囲気、でしょうか」
忍「いきなり難しいこと言い出したね…」
穂乃香「愛情を感じられなくなったというか」
忍「そんな、熟年の夫婦じゃないんだからさ」
穂乃香「それに最近ご無沙汰で…」
忍「そういうのは聞きたくなかったかな」
穂乃香「冗談はさておき」
忍「冗談でよかったよ、ホントに」
穂乃香「実は理由があってですね」
忍「はぁ」
穂乃香「この間ゲームセンターに行ったんですが」
忍「この間も何も最近通いつめてるよね?」
穂乃香「別に通いつめてませんよ。週に4回程度です」
忍「世間じゃそれを通いつめるって言うんだよ」
穂乃香「あ、このゲーセンは毎週金曜に立ち寄るゲーセンでして」
忍「ローテまで組んでる」
穂乃香「それでいつものようにぴにゃこら太のプライズのところに向かったんですね」
忍「いつものようにって何」
穂乃香「ゲームセンターに行った時には必ずぴにゃをお迎えして帰るんです」
忍「あー…だいたい話のオチが見えてきた」
穂乃香「そしていつものように新顔がいないか確認しようとしたらですね…!」
忍「凄まなくていいよ、大体分かるから」
穂乃香「ぴにゃこら太がいなかったんですよ!!」
忍「うん、知ってた」
穂乃香「知ってたんですか!忍ちゃんエスパーだったんですか!?」
忍「いや話の流れ的に誰でも分かるでしょ」
穂乃香「ユッコちゃんは分からなかったのに!!」
忍「その一言は余計だったかな」
穂乃香「それで、続きなんですけど」
忍「ほぼ予想がつくけどね」
穂乃香「いつもの場所にぴにゃがいなかったので私は慌てました」
忍「はい」
穂乃香「他の場所に移ったのでは?と全てのプライズを見て回ったんです」
忍「どうでもいいけどクレーンゲームじゃなくてプライズっていうんだね」
穂乃香「正式名称はどうやらそうらしいので」
忍「ゲーセン通っぽいね」
穂乃香「いえいえ私なんてまだまだですよ」
忍「またまた謙遜しちゃって」
穂乃香「台バンもリアルファイトもしたことないですし」
忍「そういうのは極めなくていいと思う」
穂乃香「見当たらなかったので店員さんに尋ねました、ちょっと引かれましたが」
忍「多分鬼気迫ってたんだろうね」
穂乃香「『私のぴにゃは何処!?』と尋ねたのがまずかったんでしょうか…」
忍「逃げなかっただけその店員さん偉いよ」
穂乃香「店員さん曰く、在庫切れとのことで」
忍「そりゃ、そのペースで取ってればあるものも無くなるって」
穂乃香「困った私は、とりあえず近場のゲームセンターをしらみつぶしに捜索しました」
忍「穂乃香ちゃんぴにゃが絡むと恐るべきバイタリティ発揮するよね」
穂乃香「ですがどこも品切れの一点張りでして…」
忍「多分その一帯のぴにゃ穂乃香ちゃんが占有してると思うよ」
穂乃香「しかし、天は私を見放してはいませんでした!」
忍「見放してあげた方がよかったんじゃないかなー神様」
穂乃香「実に11件目のゲーセンでの話です」
忍「半径何kmしらみつぶしたんだか…」
穂乃香「曰く、次の仕入れにぴにゃが入っているそうで」
忍「餌撒いちゃったかー」
穂乃香「当然仕入れ日を聞き、仕入れのお手伝いを打診しました」
忍「物怖じしなさ過ぎて怖いよ」
穂乃香「しかし部外者に商品を触らせるわけにはいかないと断られました…」
忍「当たり前だけどね」
穂乃香「そこで私は考えました」
忍「それでまたよからぬことを思いついたの?」
穂乃香「失礼な、ただ部外者で無くなればいいと思っただけです」
忍「どう考えてもまともな案が出てくる気がしないんだけど」
穂乃香「私は変装を解き、綾瀬穂乃香であることをバラしました」
忍「ちゃんと変装はしてたんだね」
穂乃香「慌てる店員さん」
忍「そりゃビックリするね」
穂乃香「サインの列を形成する皆様」
忍「そりゃ訓練されてるね」
穂乃香「一日店長を提案する私」
忍「そりゃ頭おかしいね」
穂乃香「快く受け入れてもらえました」
忍「もうダメかも分からないね」
穂乃香「もちろんこれだけではいけません」
穂乃香「すぐにプロデューサーさんに連絡を取って仔細をまとめました」
忍「ホントにぴにゃ絡みだとオーバースペック発揮するね」
穂乃香「結果、ちょうど仕入れの日に一日店長をやらせて頂けることに」
忍「結果だけ見ると自分で仕事取ってきた有能っぽいのがまた…」
穂乃香「その日は別のゲーセンでぴにゃを取って帰りました」
忍「あ、ノルマは達成したのね」
穂乃香「そして待ちに待った当日…」
忍「遠足前の小学生か」
穂乃香「その日は楽しみすぎて一睡も出来ませんでした」
忍「小学生越えてた」
穂乃香「それでもプロとして仕事はこなさなければなりません」
忍「心持ちは立派だけど行動理念ぴにゃこら太なんだよね」
穂乃香「品出しの準備をしつつ開店を待つ私」
忍「仕事はちゃんとしてたんだね」
穂乃香「どさくさに紛れてぴにゃに頬擦りする私」
忍「ファンが見たら憤死モノだね」
穂乃香「さて開店となった時に気付きました」
忍「何に?」
穂乃香「店長になっていてはぴにゃこら太のプライズが出来ません!」
忍「その時気付いたの?」
穂乃香「一気に消沈しましたね、ええ」
忍「穂乃香ちゃんぴにゃ絡むとポンコツになるからね」
穂乃香「それでもぴにゃを死守せねばと私は奮闘したのです」
忍「嫌な予感しかしないけど一応聞こうか」
穂乃香「まずぴにゃのプライズまでの道に清掃中の看板を置きました」
忍「初っ端から迷惑極まりないね」
穂乃香「万一突破された時の為にコイン投入口にセロテープを貼りました」
忍「営業妨害だよねそれ」
穂乃香「さすがにこれはプロデューサーさんに叱られましたが」
忍「当たり前だよ」
穂乃香「最後にぴにゃのクレーンのアームを最弱設定にしておきました」
忍「何かこれだけ妙にリアルで嫌だ」
穂乃香「しかし何故かその日に限ってぴにゃの筐体の近くに人が集まったんですが…」
忍「それ多分穂乃香ちゃんがずっと近くにいたからだと思うよ」
穂乃香「そういえば握手会もついでに行ってましたね」
忍「イベントとしては間違いなくそっちが本命だからね」
穂乃香「ともあれ、努力の甲斐あってぴにゃが攫われることはありませんでした」
忍「まあそもそもあれ欲しがる人の方が珍しいと思うし…」
穂乃香「お金入れてる人は結構多かったですけどね」
忍「あれ?案外人気なのかな」
穂乃香「取れなくて消沈したまま待機列に並んでましたが」
忍「それ穂乃香ちゃんにプレゼントする為とかじゃなかったのかな?」
穂乃香「」
忍「ハイライト戻して戻して」
穂乃香「私はなんて罪深いことをしてしまったんでしょう…」
忍「悪いことは出来ないね」
穂乃香「ああ神様ぴにゃ様…この罪深き私をお許し下さい…」
忍「神様と同列でいいのかそいつは」
穂乃香「昼過ぎには握手会も滞りなく終了、閉店を待つのみとなりました」
忍「もうすでに閉店待ちなんだ…」
穂乃香「途中で現金泥棒やら動物園でリアルファイトが発生しましたが些細なことです」
忍「ゲーセン慣れしてるってレベルじゃ無いよね」
穂乃香「その余波でトマトを投げ合う祭りが開催されましたがぴにゃは無事でした」
忍「ホントぴにゃのこと以外眼中に無いね」
穂乃香「そして待ちに待った閉店時間!」
忍「それでいいのか一日店長」
穂乃香「スタッフさん達とお疲れ様をしながらも心はぴにゃでいっぱいでした」
忍「ぞんざいな挨拶になってなかったことを切に願うよ」
穂乃香「許可を頂き、ぴにゃのプライズの前へ。震える手で100円を入れます」
穂乃香「ちゃ~ららら~ちゃ~らららら~」
忍「そういうのいいから続けて」
穂乃香「狙いを定めて、正確にボタンを操作していきます…!」
忍「臨場感とかもいいから」
穂乃香「ガシッとアームがぴにゃを挟み、私は勝利を確信しました」
忍「清々しいほどにフラグだね」
穂乃香「アームが持ち上がった、その刹那―――――――」
ポロッ
穂乃香「ぴにゃが、堕ちました」
穂乃香「私の目からは涙がぽろっ…」
忍「ちょっと上手いこと言ったみたいな顔しないでよ上手くないよ」
穂乃香「ともあれ私にとっては初めての経験でした」
忍「初めてって…えっ?」
穂乃香「はい?」
忍「いや…何が初めてだって?」
穂乃香「ぴにゃこら太をこぼしたことです」
忍「じゃあ何?今まで取って来たのは全て一発ゲットと?」
穂乃香「そうですけど」
忍「いやいやいやあり得ないと思うんだけど」
穂乃香「プライズって普通一発で取るものじゃないんですか?」
忍「普通じゃないから、少なくともあたしの常識では」
穂乃香「ではこれはぴにゃこら太への溢れる愛が為せる技なんでしょう…」
忍「どうしよう、否定材料がない」
忍「じゃあなに?穂乃香ちゃんは一発ゲット出来なかったからぴにゃへの愛が薄れたと思ったの?」
穂乃香「そういうことになりますね」
忍「ああ…あたしはなんて無駄な時間を過ごしてしまったんだ…」
穂乃香「無駄とはなんですか、こっちは死活問題だと言ったでしょう」
忍「いや…だってさ」
忍「穂乃香ちゃん自分でクレーンの設定弄ってたじゃん」
穂乃香「あっ」
忍「あーもーあほらしー」
穂乃香「言われてみればそうですね…納得です」
忍「そもそも愛情で動く動かないとか無いって」
穂乃香「そうなんでしょうか…」
忍「多分穂乃香ちゃんが上手いだけだと思うよ」
穂乃香「じゃあ今うちで晩御飯作ってるぴにゃは…」
忍「ちょっと待って、いきなりあたしの常識越えてくの止めて」
穂乃香「まあ冗談ですけどね」
忍「そうじゃなきゃ困るよ…」
穂乃香「ところで晩御飯どうしましょう」
忍「えらく唐突だね…」
穂乃香「そろそろオチの時間ですから」
忍「急にメタんの止めよ?」
穂乃香「要望が無いならぴにゃパンなんてどうでしょう?」
忍「好きなものだけど食べれるの?」
穂乃香「美味しいから大丈夫ですよ」
忍「また適当なこという」
穂乃香「それでなければぴにゃベーゼとか」
忍「…ジェノベーゼ?色しか合ってないよ」
穂乃香「ぴにゃからのベーゼ…興奮しますね」
忍「ないから」
穂乃香「正直何でもいいのでよろしくお願いします」
忍「もう青りんごとかでも喜べそうだよね」
穂乃香「私を何だと思ってるんですか」
忍「ぴにゃキチ」
穂乃香「そんな褒められても」
忍「パスタでも茹でるか」
穂乃香「スルーはキツいです」
穂乃香「イカスミパスタって作れるものなんですね」ハコビハコビ
忍「明日オフだし良いかなと」ハコビハコビ
穂乃香「ぴにゃベーゼにしてはくれなかったんですね」
忍「作れるものなら作ってみなよ」
忍「というか確かぴにゃの仲間に黒いのいたよね」
穂乃香「いましたね、あの渋い声の」
忍「アイツのパスタと考えればそれっぽいんじゃない?」
穂乃香「はぁ~甘いですね忍ちゃん、ぴにゃパスタというのはですね」
忍「文句あるなら食べなくていいよ」
穂乃香「ごめんなさい」
忍「それじゃ早速」
忍・穂乃香「いただきまーす」
おわり
終わらせ方に困ったのは内緒だ
依頼出してきます
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