南条光「自転車でお使い?」 (57)


事務所前

たったったったった……

光「到っ……着っ!」キキーッ!

光「やっぱ走るのっていいなぁ。……欲を言うなら、もっと明るい日に走りたかったけど」

光「……あれ、なんだろ、この自転車」ジロジロ

光「蛍光緑って不思議な色だなぁ。ま、なんでもいいか! 失礼しまーすっ!」ガチャ


事務所

P「ん? あ、おはよう光」カタカタ

光「おはようP! 今日も一緒に、ファンの平穏な日々を守ろう!」

P「意欲に溢れてるんだな。といっても、今日の仕事は午後からだろ」カタカタ

光「それまでは、作詞やマーケティング? とかいうのの資料を読ませてもらうとするさ。お勉強お勉強っ♪」

P「なら、そこのイスを持ってくといい。立ちっぱでパソコンを使うのは疲れるだろ」カタカタ

光「サンキュっ! ……あ、そうだ。事務所の前に自転車があったんだけど、誰のか知ってるか?」


P「自転車……? なら、ちひろさんが用意した物だな」カタカタ

光「どういうこと?」

P「『近場の買い物は、自動車じゃなくそれで済ませてください』だと」カタカタ

光「エコでいいじゃないか。地球と健康を守れてちょうどいい!」

P「タフだ……。なら、頼まれごとをお願いしていいか」カタカタ


光「何をすればいいんだ?」

P「バンソーコーと消毒用アルコールを買い足してほしい。薬局への経路は今プリントを」カタカタ

光「事務所から直進して、坂道を登り切ったところだろ? 知ってるから大丈夫だし、事務所の役に立てるなら光栄だぜっ!」

P「助かる。資料読みたかったろうに、いきなりすまないな」カタカタ

光「うーん、資料のコピーをしてくれたりしたら嬉しかったりして」

P「それはダメだ。はい、メモ」

光「うん! じゃあ早速、自転車を借りてくるね!」

P「坂あるのに。……鍵は入り口の棚だ。自転車の色と鍵の色は対応してるから、好きなのを持ってってくれ」カタカタ

光「なら、この緑の鍵で……南条光っ、いっきまーっす!」

バタン


P「怪我には気を付けてー」カタカタ

P「……緑なんて、置いてたか?」

P「……なんでもいいか」カタカタ

ちひろ「…………」ニヤッ


事務所前

光「鍵をはずして……これでよし!」がちゃこっ

光「えへへ……アタシにサイズがぴったりのマシンがあるなんて、こんなに嬉しいことはない……よっと!」きぃっ!



きこきこきこきこ……



光「うんっ! ナイス走り心地っ! もっと加速ーーっ!」


きこきこきこきこ!


光「飛ばせ~~飛ばせ~~~!!」



しゃーーーーーっっ!


――――――
――――
――

事務所


P「……うぅーーんっ」

ちひろ「一段落、つきました?」カタカタ

P「ええ、ちょうど良く。紅茶飲みます? ドーナッツもありますよ」

ちひろ「じゃあ、置いといてもらえますか?」

P「手こずってるんです? 画面と睨めっこなんかして」

ちひろ「すぐ終わりますよ、すぐに。濃いめでお願いしますね、十分ぐらいで」

P「苦いですよ」

ちひろ「ミルクティーならそれぐらいが好きなんです」

P「じゃあ、給湯室にいるんで」てくてく

ちひろ「はーい」

ちひろ「…………」ニヤァ


カタカタ


――――――
――――
――


きこきこきこきこきこきこきこ……!


ういぃぃーーん……


光「ん……?」ピク

光(気のせいか? サドル、出っ張ってきてる?)


きこきこきこきこきこきこきこ!

……ヴヴヴ



光「っ!」ぴくっ!


ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!


光「いいいいいぃぃぃーーーっっ!?」びくんっ!

ききーっ!

ヴヴヴヴヴヴヴ……ピタッ


光「……はーっ、はーっ……//////」

光「な、なんだったんだ、今の……電気がビリってして、腰の付け根がだるくなって……」

光(い、いや、それより! 変な声が出ちゃった!)アセアセ

光「……『ダメージを受けて苦しんでるヒーロー』ごっこじゃ、通らない、かな……!?」キョロキョロ



光「せ、せーふ……////」ホッ

光(急に目の前が白黒して……何があったんだ。おでこがじんじんするっていうか……)

光「……風邪かな。お使いついでに、風邪薬とスタドリを買わないとだな……」


きこきこきこきこ……


……ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ……



光「っ……んっ……♡」

光(う、腕に力込めなきゃ……直進出来ない……!)グッ


ふらふら……

    きこきこ……

          ふらふら……

       きこきこ……


……ヴヴヴヴヴ……

         ぐちゅちぃ………… ♡


光「はっ、早く買い物してぇ……お仕事して、はやねしな、きゃなあっ……っ♡」プルプル


きこきこ……


光「よっ……と」スタッ

ヴヴヴヴヴ……ピタッ

光「この坂、結構急だな。んしょ、んしょ」カラカラ

光(……サドルに出っ張りなんかない)サワサワ

光「走ってるとき、スピードに比例して出たり震えたりするのか……?」

光「まさか、な」

カラカラカラカラカラ……




ゴロゴロゴロゴロ……


――――――
――――
――

事務所

P「はい、10分蒸らしのミルクティー、それからドーナツも」コトッ

ちひろ「わっ! ……もう、一言言ってくださいよ」カチッ

P「ん、すみません。牛乳でいっぱい割りましたけど、これ、すっごく苦いですよ」

ちひろ「それが好きなんです。……それにしても、いやな天気ですねぇ」

P「はい? ……あ、本当だ」

ちひろ「光ちゃん、早く戻ってもらった方がいいかもしれませんね」

P「一応、電話します」ペポパプ

P「もしもし光? ああ、買えたのか。天気が崩れるといけないから、そろそろ━━━」


――――――
――――
――

薬局前

光「━━━うん、うん、わかった。それじゃ」ぴっ


カラカラカラカラカラ……

光「……確かに、空模様がかなり怪しいなぁ。早めに帰るのが一番だな」

光「…………」チラッ






自転車「…………」

光「…………////////」ボシュッ!

光「……う、う、うぅぅ~~~……!」カァァァア


光「やっぱりこの自転車、絶対変だ! 走ってるとき……何だかこう、ぞくぞくってして、ほわぁってして、ヘンな気持ちになる……!」

光(……そうだ、これはきっといけない気持ちだ。そう思うのに、そう思うのに……)


……とろぉ……♡

光「……バンソーコー、濡らしちゃまずいもんな……♡」ドキドキ

光(心のどっかで、またうっとりしたいって、思っちゃってる……////)

光(さっき一番ぶるぶるってしたとこ、ここ、だよな)イソイソ


……ぴりっ


光「ひっ……♡」ぴくんっ♥

光「あは、あはは……なんかすっごくビンカンになってるな、アタシ……♡」


きこきこ……


ヴヴヴヴヴ……


光「んっ……♡ んぅ……っ♡」プルプル

光(ゆーっくり漕ぐと、甘さがじわっと広がる感じがして……)



きこきこきこきこきこきこ!


ヴヴヴヴヴヴヴヴ!!


光「ぁぁぁあぁんっ♡」ビクンッ!

光(一気だとっ♡ こしのぜぇんぶに 、ずきぃって砂糖の矢が刺さったみたいっ♡)


きこきこきこきこ……


     じわぁ…… ♡


光「はぁんっ♡ あっ、あンッ♡ あっ、あっ♡」


きこきこきこきこ!

        ぐちゅちゅちゅちゅぐぅっ ♥


光「んっ♡ あはぁ~~~……♡」


光(あはは、あたし、みっともないかおしてるんだろーなー……くちとじるのつらいし、あたまぼぉっとだし、おほしさまばちばちぃってすぱーくすぱーくいっぱいすぱーくしてるし……)ゾクゾク♥




きこきこきこきこ……ぴたっ



光「……坂、降りなきゃいけないんだよな」

光(きっと、すっごいスピードで走ることになるんだよな)

光「……なっちゃう、よなぁ……♡」ゾワァッ

光(……走るのがキモチイイのは、当たり前、だよね)


きこきこきこきこ……

ヴヴヴヴ……


光「うーっ……♡ うーっ……♡」ヘフッ♥


きこきこきこきこ!


        ヴヴヴヴヴヴヴヴ!


くちゅくちゅくちゅくちゅ ♥


光「ああっ! あひっ、んぇぇっ♡」ビクビクッ♥



キコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコ!!


ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッッッ!!!


    ぢゅぢゅるうるううう♥


光「ひぁぁぁっぁぁああああああっ!!!」びっくんっ♡


      シャーーーーーーッ!


ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッッッ!!!ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッッッ!!!ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴッ!!!

光「ひぃぃぃっっ♡ あひぃっ♡ あう、あうぅんっ♡」


光(や、やばい……からだのおくからなんかスゴいのくる、これ、オちるっ、いしきおちうぅっ♡)ピクピク


キコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコキコ!!!!


シャーーーーーーーーーーーーーッッッ……………………





ずどどどどどどどどどどどどどどどどどどおおおおおおおッッッ♡♡♡♡


光「くるっ♡ くりゅうっ♡ あ゛ァぁあ゛ああァあぁッッ♡♡♡♡♡」ビクビクビクビクビク♥♥♥♥




しゃーーー……


    からからから



        ゴロゴロゴロゴロ……

   …………ぷしゅ、ぷしゅっ ♥

……ポツ,ポツポツポツ



      ザァァァァァァァァァァァァァ…………


――――――
――――
――

事務所

P「━━━はい、ええ、承りました、大丈夫です、ええ、お気をつけて。予定はこちらも調整しております。では」カチャッ

P「光、遅いな……事故に遭ってないといいんだが……」ソワソワ

ちひろ「あ、それなら大丈夫ですよ?」

P「なぜわかるんです?」

ちひろ「えっ! えーと、それは……」ドキドキ

P「いやまぁ、光のことだし、ちゃんと帰ってくるとは思いますが……」チラッ


ザァァァァァァァァァァァァァ………………


P「……もう一回電話をかけて、こっちから迎えに……」



ぎぃ……ばたんっ


光「ただ……いま……////」ハァハァ

ちひろ「あ、おかえりなさい、光ちゃん♪」

P「おお、よかった、無事だったか! シャワー室が空いてるから、すぐに暖まってきて欲しい」

光「う、うん……。はい、バンソーコーと消毒アルコール……」フラフラ

ちひろ「光ちゃん、大丈夫? 足取りがバンビみたいだけど」

P(バンビ光……お蔵入りになったセクシーでかわいいどうぶつコスプレショー……いや、今は仕事の話はよすか)

P「そんなにハードな運動だったのか? 坂を逆走したりとか」

光「まぁ、たいへんだった……かな……?」


……とろっ ♥

ちひろ「……後処理とかは私たちに任せて、ね?」

光「お、おふろ、お先失礼するぜっ……!」

ふらふらふらふら……ばたん

P「ええと、タオルは用意済みだし、着替えは衣装部屋ので見繕うとして、ココアでもいれてあげないと……」イソイソ

ちひろ「あ、お洋服は私が用意しておきますね♪」

P「助かります」


………………
…………
……

数日後

ゴロゴロゴロゴロ………………

光「最近、空がぐずつくこと、増えたなぁ」タッタッタッタ

光(……あの日みたいな天気だ)カァッ

??「よ、避けて! 逃げてぇぇ!」

光「はい? ━━━わ、わぁぁぁっ!?」


ききぃぃぃぃぃ……っ!


まゆ「う、うう……やっと、止まれるようになりましたぁ……」ボロボロ

光「ま、まゆさんっ、大丈夫なのか!?」

まゆ「だ、だいじょうぶ、です……!」

光「なら良かった……。……ところで、やっとって? 自転車の練習中とか?」

まゆ「……このこと、みんなには秘密にしてくださいね?」

光「あ、ああ、勿論。けど何で自転車の練習なんか」

まゆ「……夕暮れの河川敷に自転車でふたり……なんて、ロマンチックじゃないかなぁ、って……♪」うっとり

光「く、詳しくは聞かないけどだいたいわかった! もし助けが必要なときは、いつでも呼んでね!」

まゆ「ありがとうございます♪ じゃあ、まゆはこれで……」キコッ

光「っ!」ゾクッ!



きこきこきこきこきこきこ……


光「……っはぁーっ……はぁーっ……♡」ゾクゾク

光「……こういうときこそ、元気よく!」ギィ


事務所

光「こんにちはー!」

ちひろ「こんにちは、光ちゃん♪」

光「ちひろさんか! そっちのお仕事は順調?」

ちひろ「えへへ……光ちゃんにいっぱい元気をもらってますからね!」

光「んっ、ちひろさんの力になれてるなら光栄だぜ!」

ちひろ「うふふ、光ちゃんはいつも元気ね」

光「あははは……褒めたって必殺技しか出ないのに……!」テレテレ

ちひろ「そんな光ちゃんにお願いがあるんだけど、いいかしら?」

光「お安いご用!」ポン!

ちひろ「聞く前に返事はだめよ? 安請け合いはほどほどにね、ほらほら♪」コチョコチョ
光「んははっ♪ なにをするんだぁーっ♪」キャッキャッ

ちひろ「お使いをお願いしたいんだけど、いいかしら?」

光「何処で、何を?」

ちひろ「薬局で、バンソーコーと薬用アルコール、お願いできるかしら」

光「……っ! よ、よろこんで。すぐに行くねっ!」タッ

ちひろ「ありがとうございますね♪」ニコニコ


バタン


ちひろ「…………」イソイソ

P「あれ、光は?」

ちひろ「ああ、今お使いに行きました。入れ違いになっちゃいましたね」

P「入れ違いになっちゃったか……ま、打ち合わせは戻ってきてからでも出来るからいいけど……」

ちひろ「何のお話を?」

P「インタビューについて。雰囲気変わったけど何か理由でも? とか、向こうの記者から幾つか━━━」

おわり

習作でした。例の自転車、いいですよね。
……ところで、光っていきなり他人を悪人呼ばわりするような失礼な娘だったかな……依頼出してきます。

誤字修正

×

P「インタビューについて。雰囲気変わったけど何か理由でも? とか、向こうの記者から幾つか━━━」



P「インタビューについて。『最近雰囲気変わりましたけど、何か始めたんですか』とか、向こうの記者から幾つか言われていて━━━」

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