亜美「ねーねーりっちゃん」 (23)
亜美(12)「ねーねーりっちゃん」
律子「んー?」
亜美「なんでアイドルやめちゃうの?」
律子「なんでって、私元々アイドル志望で入ってきたわけじゃないのよ?」
亜美「そーなの?」
律子「そう。最初はプロデューサーや経営者を目指してこの事務所に来たの」
律子「だから、これからはそういう勉強もしていかないと……」
亜美「ふーん」ニコニコ
律子「……なによニヤニヤして」
亜美「よかったなー、って安心しちゃった」
律子「何が?」
亜美「……りっちゃん、アイドルするのを嫌になっちゃったのかなって、亜美思ってたから」
律子「……まったく」ナデナデ
亜美「んっ……」
律子「亜美に心配かけるなんて、私もまだまだね」
亜美「ううん!全然問題ないよ!ドンドンかけちゃってよ律子隊員!」
律子「調子に乗らないの!」
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亜美(13)「ねーねーりっちゃん」
律子「んー?」
亜美「この衣装すっごいキレイだね!」
律子「当たり前よ!竜宮小町の晴れ舞台よ!気合い入れてデザインしてもらったわ!」
亜美「すっごいよね!テレビだよテレビ!真美に自慢しちゃおーっと!」
亜美「へへーん!りっちゃんは大船になったつもりで見ててくれたまえ!」
律子「それを言うなら大船に乗った、でしょ」
亜美「あり?まあそうとも言うね!」
律子「……頼んだわよ、亜美」ナデナデ
亜美「まかせて!りっちゃんと我々の夢の第一歩だかんね!絶対成功させてくるよ!」
亜美(14)「ねーねーりっちゃん」
律子「んー?」
亜美「クラスの男子から告白されちゃった」
律子「はぁ!?」
亜美「真美が」
律子「あ、真美がか……よかった……いや、よくないわね……」
亜美「……なんで……」
律子「?」
亜美「なんで、亜美じゃなかったんだろ?」
律子「亜美……どっちにしろあなたたちはアイドルなんだから、断らないといけないのよ?」
亜美「わかってるけど……」
律子「……あなたと真美は双子で、とっても仲良しで、すごくよく似てるわ」
律子「でも、2人は別の人間で、それぞれ良いところと悪いところがあって、どっちが上とかそういうことじゃないのよ」
律子「たまたま今回の男の子のタイプが真美だっただけで、あなただって真美と同じくらいたくさんいいところがあるわ」
律子「……私は亜美のいいところ、たくさん知ってるから」
亜美「りっちゃん……」
律子「それに、もし亜美が告白されたとしても、私が認めた相手じゃないと交際は許さないわよ!」
亜美「ふふっ……。りっちゃん、お母さんみたい……」
亜美「……ありがと、りっちゃん」
律子「……ん、どういたしまして」
亜美「ところで、りっちゃんは彼氏いるの?」
律子「余計なお世話!」ポカッ
亜美(15)「ねーねーりっちゃん」
律子「んー?」
亜美「勉強おしえてー!このままじゃ卒業できないよー!」
律子「どれどれ……うわっ、亜美あんたこれ……」
亜美「このままじゃ亜美、おバカアイドルで売っていくことになっちゃうよ!」
律子「アホなこと言ってないで勉強するわよ!ほら!ペン持って!」
亜美「あっそうだ、授業中にペン回しの新技考えたんだ。りっちゃんに見せたげるね!」
律子「真面目に授業を受けなさい!本当にバカキャラで売り出すわよ!」ポカッ
亜美「ヒイ~!それだけはカンベン~!」
律子(中学は勉強できなくても卒業できるってのは、教えないでおこう……)
亜美(16)「ねーねーりっちゃん」
律子「んー?」
亜美「りっちゃんってさ、高校のころ部活してた?」
律子「なによいきなり」
亜美「クラスの友達はさ、けっこーみんな部活しててさ」
亜美「でも私はアイドルやってるし、部活入れないからさー、りっちゃんはどうだったのかなーって」
律子「高校かぁ……あんま覚えてないわね」
亜美「ええー?高校生活楽しくなかったの?」
律子「うーん、楽しかったのは楽しかったんだけど」
律子「部活もやってなかったし、後半はアイドルや事務員との兼業みたいになってたし」
律子「なんて言うか、忙しかった記憶ばっかり残ってるわね」
亜美「ふーん……大変だったんだね」
律子「他人事じゃないのよ?あんたもこれから女子高生とアイドルの二足のわらじなんだから」
亜美「あっ、そっか……でもヘーキヘーキ!」
律子「なんでよ?」
亜美「だって私には、我らが無敵のプロデューサー、りっちゃん様がついてるからね!!」
亜美「アシストよろしくね!りっちゃんプロデューサー!」
律子「……やれやれ、調子いいんだから……」
亜美(17)「ねーねーりっちゃん」
律子「んー?」
亜美「私17歳だね」
律子「そうね」
亜美「結婚できちゃうね」
律子「まあ、法律上はね」
亜美「……私、大人になったかな?」
律子「……どうしたの?」
亜美「はるるんや千早お姉ちゃんやミキミキを見てたけど、17歳ってもっと大人だと思ってた」
律子「今はどう?」
亜美「……わかんないや」
律子「そう。ま、そんなものよ」
亜美「りっちゃんはどう思う?」
亜美「私、大人かな?子供かな?」
律子「……どうかしら?」
亜美「えー」
律子「ふふっ、心配しないでも、私から見たらいつまで経っても子供よ」
亜美「なにそれー?」
亜美(18)「ねーねーりっちゃん」
律子「んー?」
亜美「勉強おしえてー!このままじゃ卒業できないよー!」
律子「……この光景、前にもあったような……」
律子「まあでも今回は本当に卒業できないかもしれないし、面倒見てやるかな……。ほら、見せてみなさい」
亜美「わーい!ありがとりっちゃん!」
律子「……あれ?そんなに悪くない……っていうかむしろ良いじゃない、これ」
亜美「前にりっちゃんに『授業を真面目に受けろ』って言われたからね!頑張ったよ私!」
律子「……正直見直したわ、亜美」ナデナデ
亜美「んっふっふ~!」
律子「でも、じゃあなんで私に教わりにきたのよ?」
亜美「えーっと……それは、その……」
律子「それは?」
亜美「……最後にりっちゃんに、いつもみたいに勉強教えてもらいたくって……」
亜美「……高校卒業したらもう勉強なんてしないだろうから、もうこういうことも無いんだなって思うとなんだか寂しくって……最後の思い出にって思って……」
律子「……」
亜美「……ダメ?」
律子「……ダメじゃないわよ。このくらい、いつでもしてあげるわ」ナデナデ
亜美「……うん!ありがと、りっちゃん!」
律子「でも、やる以上は手は抜かないわよ!早くペンを持ちなさい!」
亜美「了解であります律子教官!」
亜美(19)「ねーねーりっちゃん」
律子「んー?」
亜美「私高校卒業しちゃったね」
律子「もう2ヶ月になるわよ?いまさら何言ってるの」
亜美「……私、これからどうなるのかな?」
律子「……何かあったの?」
亜美「何かあったっていうか、何もないっていうか……」
律子「……言ってみなさい」
亜美「……私、今アイドルすっごく楽しいよ」
亜美「人気もあるし、後輩もたくさんいるし……」
亜美「でも、このままでいいのかなって……」
律子「……よくわからないわ」
亜美「アイドル生活に満足してるし、飽きたとかそんなことはもちろんないし、まだまだ続けたいと思ってる……」
亜美「でも、他にやりたいことがあるような、やるべきことがあるような気がするんだ……」
律子「やりたいこと?」
亜美「うん。なんなのかは全然わかんない、すっごくバクゼンとした感覚なんだけど……」
律子「そう……」
亜美「うーん、自分でもよくわかんないや」
律子「まあ、相談にはいつでものるわよ」
亜美「うん。ありがとね、りっちゃん」
律子「それと」
亜美「?」
律子「あなたがアイドル以外にやりたいことができたなら、私はそれを応援するわ」
律子「プロデューサーとしてじゃなくって、1人の友人としてね」
亜美(20)「ねーねーりっちゃん」
律子「んー?」
亜美「お酒っておいしーね」
律子「まあね」
亜美「んっふっふ~、これで私も大人の仲間入りだね!」
律子「……亜美も大人になったわね……。昔はこーんなにちっちゃかったのに……」
亜美「えー?なにもー感傷に浸っちゃってぇ。そもそも中学入ったくらいにはりっちゃん追い抜いてたよ?」
律子「あら、そうだったかしら?」
律子「でも、なんか亜美はずーっと子供って感じなのよね、私の中では」
亜美「もう!私だってもうハタチだよ!出会った頃のりっちゃんより年上だもんね!」
律子「ふふっ……そうね。ごめんごめん」
亜美「もおー……」
亜美「……」
亜美「ねーねーりっちゃん」
律子「んー?」
亜美「プロデューサーってたのしい?」
律子「えー?なによいきなり……」
亜美「いいからいいから」
律子「……どうかしら」
律子「仕事は大変で毎日残業だし、あちこち営業してまわるから足は痛いし、業界にはセクハラおやじも多いし……」
亜美「……」
律子「……でも、楽しいわ」
律子「自分がプロデュースしたアイドルがステージを成功させたり……」
律子「ドラマやバラエティで活躍したり……」
律子「CDが売れたり、曲が流行ったり、歌番組に出たり……」
律子「アイドルとプロデューサーは二人三脚ってよく言うけど、まさにその通りで、本当に自分のことのようにうれしいの」
律子「辛いことや苦しいことも多いけど、それと同じくらい、ううん、それよりもっとたくさんの楽しいことや嬉しいことがある」
律子「笑顔も涙もアイドルたちと分かち合える」
律子「誇りを持てる、すばらしい仕事だと思うわ」
亜美「りっちゃん……」
律子「それに……」ギュッ
亜美「あっ……」
律子「こうやって亜美や、伊織や、あずささんと出会えたんだもの」
律子「とっても素敵な仕事だわ」
亜美「……ありがと、りっちゃん」
律子「こちらこそありがとう、亜美」
亜美「……」
亜美「ねーねーりっちゃん」
律子「んー?」
亜美「私ね、やりたいこと、見つけたよ!」
数年後……
亜美(2X)「みんな準備できたー?そろそろ車乗ってー!」
A「待ってよ亜美ちゃーん!」
亜美「こら!プロデューサーをちゃん付けで呼ばない!」
B「ちょっと!あんたを探してたせいで私まで遅刻ギリギリじゃないの!」
C「あら~、今日はいつもより早起きしたはずなのにおかしいわ~」
亜美「やれやれ……いつもギリギリなんだから……」
A「ヤバい終わんないよ~!亜美ちゃん助けてぇー!」
B「そうよ!あんたプロデューサーならちょっとくらい手伝いなさい!」
亜美「自分のことは自分でやる!できないなら置いてくからね!」
A.B「ヒィー!鬼教官!」
亜美「誰が鬼教官よ!まったく……先が思いやられるわね……」
律子「あら、あなたも昔はあんなものだったでしょう?」
亜美「うぇっ!?しゃ、社長!?」
律子「あら、昔みたいにりっちゃんって呼んでくれないの?」
亜美「そ、それはみんなの前だから……」
A「あー!社長さんだ!」
C「社長おはようございます~」
律子「はい、おはようございますCさん」
B「『昔は』って?社長、昔の亜美を知ってるの?」
律子「そりゃもちろん。なにせ、亜美のプロデューサーをしていたのは私なのよ?」
A「えー!?そうだったの!?」
律子「そうだったのよ。デビューしたての頃の亜美は、それはもうへなちょこで……」
B「ふーん……」
C「あらあら……」
亜美「あーもー!それは言わないでいいからりっちゃん!!」
B「あっ!今りっちゃんって呼んだわよ!」
亜美「あんたらも!準備しないとマジで遅れるわよ!」
A「本当だぁ!二人とも~!助けて~!」
ドタバタドタバタ……
亜美「ふぅ……」
律子「どう?初の担当ユニットは?」
亜美「まだわかんないけど……大変だね、これ……」
律子「まあね」
律子「……でも、楽しいでしょ?」
亜美「……うん!すっごく!」
亜美「ねーねーりっちゃん」
律子「んー?」
亜美「これからもよろしくね!!」
律子「ええ、もちろん!」
おしまい
これにておしまいです。
律子の「元アイドル」という経歴を眺めていて、他に同じルートを辿りそうなアイドルはいるかなぁ?と考えてみたら、1番近くでその姿を見ているであろう亜美かなぁと思いまして、書きました。
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