吉岡沙紀「Conceal」 (33)


沙紀「ねえ、プロデューサー」

P「ん、なんだ?」

沙紀「アタシが…… 実は男だ、って言ったら驚くっすか」

P「……は?」


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ーーー

P「女だろ?」

沙紀「男っす」

P「むむむ……」


沙紀「あ、やっぱりそこをまず見るっすよねえ男なら」

P「そこに胸があるから見る、のが男だ。悪いか」

沙紀「詐胸っすけどね」

P「しっかり86あるじゃないか」

沙紀「それ、アタシが女ならセクハラっすよ?」


P「プロデューサー権限でギリギリセーフだな、沙紀は女だけど」

沙紀「こんなもの、盛ろうと思えばいくらでもできるっすよ、男っすけどね」

P「無から86は作れんだろう?」

沙紀「数字のインパクトっすよね。86、って言っておくと取り敢えず『そんなに大きいか?』ってサイズの方に意識が行くのでそうすりゃ勝ちっす」

P「なるほど、とは言え目で見りゃ本物かどうかぐらいはわかるだろ」


沙紀「……触ったことも無い癖に」

P「うっさい、誰が担当アイドルの胸を触るかよ」

沙紀「プロデューサーならしかねないっすけどね」

P「俺をなんだと思ってやがる」

沙紀「アタシのプロデューサー、っすかね?」

P「……そう言う切り返し、ずるいな」

沙紀「ふふふっ」


ーーー

沙紀「言っておきますけど、『心はオトコ』とかそういう話じゃないっすよ?」

P「お、おう」

沙紀「ちゃんとウチとソトとは一致してるつもりっすから」

P「そうか…」

沙紀「心身ともにれっきとしたオト……コ、っす」

P「おい、今一瞬言い澱んだろ?」

沙紀「さ、さあ?」


ーーー

P「むむ……」

沙紀「で、今度はどこ見てるっすか……膝?もも?」

P「脚を全体的にだな。沙紀の武器の1つだし」

沙紀「武器……確かに、アピールポイントかなぁとは自分でも思うっすけど」

P「でもまあ、女の子の脚だなぁ……」

沙紀「なにをもって?」


P「まず、すね毛全く生えてないじゃないか」

沙紀「そりゃー、脱毛したからっすよ」

P「だって男なんだろ?嘘だろうけど」

沙紀「男でも脱毛ぐらい、当たり前っすよ?」

P「それも嘘だろ…」


沙紀「Jupit○r」

P「あっ」

沙紀「FL○ME」

P「えっと」

沙紀「B○it」

P「確かに…」


沙紀「ね?」

P「それ“は”本当なんだな」

沙紀「それ“も”、っす。今じゃあ男子の間でも結構流行ってるっすよ、全身脱毛」

P「し、知らなかった」

沙紀「プロデューサーもどうっすか?男でも気軽にいけるとこ、紹介しますよ」

P「いや、流石に遠慮するよ」


ーーー

沙紀「ていうか、そんなことも知らなかったっすか? プロデューサーの癖に……」

P「生憎、男性アイドルにはそんなに興味無くてね」

沙紀「つまりアタシにも興味ないってことっすよね」

P「バカ言え、沙紀は女の子だろうが。それに、興味無い子のプロデュースなんかするわけないだろ」

沙紀「……」

P「なんだよ」

沙紀「別に、なんでもないっす」


ーーー

P「ふむむ。なんだか、不毛な話だな」

沙紀「そうっすね」

P「沙紀が頑固だから」

沙紀「プロデューサーこそ」

P「……なあ、どうして急にそんなこと言い出したんだ?」

沙紀「別に。ただ、長い付き合いだしそろそろ隠し事はナシにしとこうかな、って思っただけっす」


P「嘘なんだろうけどな」

沙紀「ははっ、どうっすかね?」

P「まあ、沙紀が隠し事が上手い、って事は良くわかってるよ」

沙紀「それって、褒められてるんすかねぇ……」


P「得意だもんな」

沙紀「はぁ」

P「薄塗り上塗りは完璧だし」

沙紀「?……どうもっす」

P「今日だって、ばっちり塗ってきてるしな」

沙紀「(……化粧?)やだなぁ、いつもと同じ薄化粧っすよ?」


P「どうせ露光でトぶから、って適当に塗ってる奴らとは大違いだ」

沙紀「! ……なんの、話っすかね」

P「言ってもいいのか?いや、俺としてはいつか指摘しようとは思ってたんだが」

沙紀「……えっと、その、はい」


ーーー

P「ちょっと昔の話になるんだが、最初の撮影の仕事覚えてるか?」

沙紀「スポーツシューズの広告でしたっけ」

P「あの撮影の直前に、メイクさんに脚用のコンシーラー渡されたろ」

沙紀「ええ。たしか、急いでスタジオのはじっこで塗ったの覚えてるっす」

P「あのコンシーラー、買ってきたの俺だぞ」


沙紀「え”っ? ……マジっすか」

P「マジマジ。お前の脚に痣が残ってたの気づいてたから、急いで薬局に走ったんだよ」

沙紀「アレ、ちょっとアタシの肌の色とは微妙に合わなくって別の色も買っちゃって…… 今は数種類使い分けてるっすけど」

P「悪かったな。そんなに繊細な色彩感覚持ってなかったんだ。それでも紫色の跡よりましだったろ」

沙紀「……まあ」


P「そこで言わなかった俺も悪かったんだろうけどさ……」

沙紀「えっと」

P「その後も、度々同じようなことあったよな。小さな怪我が治らないまま、繰り返す度少しずつ隠すのが上手くなって」

沙紀「……」


P「別に、お前の趣味にとやかく言う筋合いは無いし、それこそもっと大事にしていきたいとは思ってる。
  けどな…… 頼むから、自分の身体を、粗雑に粗末に扱うのだけは、やめてくれないか」

沙紀「ご、ごめんなさい」

P「ちょっとした怪我だからいい、って思ってるのかも知れないが、いつか大きな事故になるんじゃないかって心配なんだよ」

沙紀「……でも」


P「気持ちは分かる。好きなことを、気ままにやりたいって。
  だけど、たとえばさ。こないだ、脚立から落ちたって言ってたのとか」

沙紀「アレは、ちょっとお尻を打って膝に擦り傷が出来ただけっす、だから」

P「怖いんだよ。……いつか、そうやって隠して誤魔化していくうちに、消せないような傷が残ったら、って思うと」

沙紀「それは、アタシが背負うだけで」

P「アイドルとしての、沙紀が背負うってことは。沙紀だけが背負うってことじゃないんだよ」

沙紀「……」

P「アイドルとして、いや、1人の女の子としても。
  お願いだから、もっと自分を大事にしてくれ」


ーーー

沙紀「アタシ、アイドルって自覚まだまだ足りて無いっすね」

P「言わずにいた俺にだって責任はある。プロデューサー失格だよ」

沙紀「そんなこと、」

P「いや、俺がもっと普段から」

沙紀「いや、アタシが……」


ーーー

沙紀「……んふっ、ははっ」

P「……なんだよ、急に」

沙紀「心配してくれるのは嬉しいし、その…… アタシに至らないところがあったのは反省しないといけないっすけど」

P「けど?」


沙紀「プロデューサー、そんなにアタシのこと隅々まで見てたなんて……」

P「なんだよ、プロデューサーとしては当然のことだろ」

沙紀「プロデューサーの、えっち」

P「な”っ」


ーーー

P「……で、結局、嘘なんだよな?」

沙紀「ムキになっちゃったけど、やっぱりプロデューサーのえっちな目はごまかせなかったっすね」

P「人聞きの悪いこと言うなってば。誰だって、こんなに可愛い子が女の子だってことぐらい分かるさ」

沙紀「どうなんすかね?結構、男っぽさで売ってる面もあるし」

P「あのなぁ、どんなにカッコよく男っぽくを売りにしたって、沙紀そのものが可愛い女の子だってことは大事にしてるつもりだぞ?」

沙紀「……あの、そんなに可愛い可愛いって連呼されると、その…… 照れるっす」


P「照れるところもまた可愛いじゃないか」

沙紀「……ばかっ」

P「お、おう、悪かったよ」

沙紀「ふん、だ」

P「ごめんってば」


沙紀「(ったく。この人は…… ただの鈍感のくせに、こういう時だけ)」

P「ん、なんだ」

沙紀「別に。なんでもないっす」

P「……」

沙紀「……」


ーーー

P「んん。で、だ」

沙紀「はい?」

P「それで、なんだが。さっきまでのは置いておいても」

沙紀「はあ」

P「沙紀。……もう一つだけ、聞いておきたいんだが」

沙紀「まあ、なんでもどうぞ」


P「本当に隠してるのは、なんだ?」

沙紀「……え”っ」


<fin>


“小さなキズに気づいてくれた人は、あなたのことをきっと好きだ。 (オロナインH軟膏/大塚製薬工場/沢辺香)”



誕生日おめでとう。というわけで

沙紀のお話です、お納め下さい
どうか皆様方の心に豆粒ほどでも良いので彼女の素敵さが伝わりますように


前作

肇「土を食べるとその質がわかるんです」みちる「なるほど!」モッシャモッシャ
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