<城>
王「おぬしをワシの息子に……!?」
ミノタウロス「はい、養子にして下さい」
王「なぜだ? まさか、将来的には王位を継ぎたいとか……」
ミノタウロス「いえ、そういった野心はございません」
ミノタウロス「王様の息子にしていただければ、私は満足なのでございます」
王「ふぅ~む」
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ミノタウロス「もちろん、なんの見返りもなく息子になろうとは思いません」
ミノタウロス「力仕事はもちろん、城の警備や掃除、雑用もなんだってやります!」
ミノタウロス「――ぜひともあなたの養子に!」
王「えぇと、召使いではダメなのか? 働き次第では給金は弾むが」
ミノタウロス「ダメなのです!」
王「ふぅ~む」
王「どうだ、息子よ、娘よ」
王子「ハッ、冗談じゃない。牛の魔物が義弟になるだなんてゴメンだよ」
王女「まったくですわ」
王(まあ……二人の気持ちも分かる)
王「う~む、今の段階ではおぬしを息子にするのは厳しいのう」
王「他になにか特技はないのか?」
ミノタウロス「ございます」
王「ほう」
ミノタウロス「私は卓越したギャグセンスを持っております」
ミノタウロス「ギャグのためならば、どんな努力も惜しみません!」
王「ほう……ギャグセンス。ならば、一つ披露してはもらえんか?」
ミノタウロス「はいっ! 喜んで!」
ミノタウロス「牛がウシシと笑った!」
どっ!
王「ぷっ、クククッ……ヒヒヒッ……なんたる面白さ……! 革命的ユーモア……!」
王子「アハハハハハッ! アーッハッハッハッハッハ!」
王女「は、はらいたい……」ヒーヒー
王「……コホン」
王「なるほど、いうだけのことはあるようだ」
ミノタウロス「ありがとうございます」
王「しかし、一国の王が養子を迎えるなど、一大事中の一大事」
王「今のギャグだけは決められぬ……が、おぬしの才能は惜しい」
王「そこでどうだろう?」
王「しばし、おぬしにこの城で働いてもらい、その仕事ぶりによって養子にするかを決めたいと思う」
王「それでよいか?」
ミノタウロス「はいっ!」
――
――
ミノタウロス「ふんふ~ん」キュッキュッ
メイド「ミノさんは背が高いから、あたしが届かないところまで掃除してくれて助かりますよ」
ミノタウロス「いえいえ、私は狭い場所は掃除できませんから、お互い様ですよ」
盗賊「い、いでえ……」ピクピク
ミノタウロス「城に忍び込んでいた盗賊をやっつけました!」
近衛兵「おおっ、かたじけない! ありがとう、ミノタウロス殿!」
ミノタウロス「この木を引っこ抜いて、そちらに植えればいいんですね?」
ミノタウロス「ふんっ!」ズボッ
ミノタウロス「よっ!」ボズッ
庭師「いよっ、さすが! 力持ちだねぇ~」
ミノタウロス「お役に立てて嬉しいです!」
ミノタウロス「本日は狂牛病について、講義いたしましょう」
王子「ミノの授業って、普通の家庭教師よりもずっと分かりやすいし、面白いな!」
王女「ホントですわね、お兄様!」
ミノタウロス「これは……亡き王妃様の写真ですか」
王「うむ、美しい妃だった」
ミノタウロス「……」ホロッ
王「おお、泣いてくれるのか……ミノタウロス……」
――
――
半年後――
王「ミノタウロスよ、おぬしの精力的な働きぶりは、今や城中の人間が認めるところである」
王「よって、ワシの養子になることを正式に認めよう!」
ミノタウロス「ありがとうございますっ!」
ミノタウロス「ではさっそく、私が王様の息子になったことを国中に伝えるべく」
ミノタウロス「城下町にて市民に向けて挨拶をしたいのですが、よろしいでしょうか?」
王「もちろんだとも」
王「さっそく、兵士達に命じて、会場をセッティングさせよう」
ミノタウロス(やっと……やっとこの時がきた!)
<城下町>
ザワザワ… ガヤガヤ…
市民A「王様がミノタウロスを養子にするんだってさ」
市民B「すでに実の息子がいるのに、いったいなにを考えてるんだ、王様は?」
市民C「だけどそのミノタウロス、かなり優秀らしいぞ」
市民D「な~んか裏があるんじゃねえか? 国を乗っ取るつもりだとかさ」
市民E「みんな、静かにしろ。ミノタウロスのお出ましだ!」
ミノタウロス「市民の皆さま、私はミノタウロスと申します」
ミノタウロス「今回は私の口から皆さまにぜひ伝えたいことがあり、このような機会を頂きました」
ミノタウロス「えぇ、私はこのたび王様から、正式に養子になることを認められました」
ミノタウロス「すなわち、王子になりました」
ミノタウロス「つまり――」
ミノタウロス「これがホントの……オージービーフ」
どっ!!!
<おわり>
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