prophetic dream【ごちうさ百合ココチノ】 (43)

「チノちゃん、大好き」

本当にしょうがない私の自称姉は、いっつもそんなことを言ってくる。

ココアさんの部屋で駄弁っていた今も、性懲りもなくまた言ってきた。

だから私は、いつもみたいに、こなれた様子で「はいはい」何て言って、流すつもりだった。

なのに。

ちゅ。

額に触れる初めての柔らかさと温かさが、そんな予定調和を破った。

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ほんのちょっとしか書き溜めてなくて思い付いたまま書くので遅いかも



あまりに突然の出来事におろおろして、

「な、なにするんですか!」

なんて言うはずだった。

でも、あろうことか私は彼女に、

「私も好きです。…だから、おでこなんかじゃやです」

なんて言い出した。

「えー、じゃあどこがいいのー?」

いたずらっぽく笑う自称姉。

「もう、言わせないでください…///くちびるに、してください///」

「よしよし、よく言えたね。チノちゃんえらいえらい♪」

なでなで。

「むー」

「んー?」

「焦らさないでくださいっ」

ちゅ。

わ、わわわわたしはなにを。

ていうかこれ、まるで、自称姉なんかじゃなくて、彼女じゃ———

「こっここココアさんっ!!///」

がばっ。

あれ。

ココアさんがいない。

…私の部屋だ。

「ゆ…ゆめ…」

…わたしはなんてゆめを…

こんな夢、ただの一度も見たことなかったのに。

って、夢について考えてる場合じゃない。今日もお仕事しなきゃ。

そう思って時計を見ると、

「じゅ、じゅうにじ!?!?」

あまりの驚きに声が裏返った。

とにかく、早く支度しなくちゃ。

ドアを開ける。

がちゃごん。

何かに当たった。

「うっ…いたた」

「わっ、ココアさん」

ドアにぶつかった自称姉、もといココアさんは、

「チノちゃん、起きてたんだ…よく寝れた?昨日チノちゃん疲れてたみたいだから、起こさなかったんだけど」

両手で頭を押さえながら、ほわほわした笑顔でそんなことを言う。

全く、誰のせいですか。

それに、今は自分の心配をしてください。

と、言いそうになった。けど、まずは謝らなきゃ。

「ごめんなさいココアさん、大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ、お姉ちゃんに任せなさい♪」

「何をですか」

よかった。

いい音した割には、強くは当たってないみたい。

「それとココアさん、寝坊して本当にごめんなさい。すぐに支度しますので先に開店準備しててもらえますか」

洗面所へ向かおうとする。

ぎゅ。

「わっ…こ、ココアさん?///」

う、後ろから抱き締められた。

どきどき。

こんなの慣れっこなはずなのに、なぜだか心臓がうるさい。

「チノちゃん、あのね…」

とりあえず今日はここまで

「今日は、ラビットハウス休みだよ?」

え。

まさか…

「やすみって…」

「もー、今日は定休日でしょー?」

自分の余裕のなさにもう、言葉がでない。

「チノちゃん、今日はうっかりさん?」

「そう…みたいです」

恥ずかしさのあまり、顔を覆う。

「えへへ…私もうっかりするから、うっかり姉妹だね?」

「違いますなんですかうっかり姉妹って」

ココアさんはお姉ちゃんじゃありませんから。

あれ。

お姉ちゃん。

思い出してしまった…今朝の夢。

目の前には私の自称姉。

「どしたのチノちゃん、顔赤いよ?はっ、もしかして熱!?」

ぴとっ。

こ、ココアさんが…ちかい…

「うーん、熱はないみたいだねー?気分悪くない?」

「ち、ちかいです、離れてください…」

「えーいつもこのくらいだよー」

距離、10cmくらいしかない。

まつげ、ながい。

どきどきする。

ココアさんって、こんなにかわいかったかな…

「と、とにかく私は大丈夫なので、離れてくださいっ」

さもないと、ほんとに大丈夫じゃなくなってしまいます。

「ほんと?それならいいんだけど」

離れるココアさん。

なんだか、胸がきゅってした。

離れてほしかったのに、離れてほしくなかったかのような。

「じゃあチノちゃん、あーそーぼ♪」

…私は今まともにあなたの顔も見れないのに、遊ぼうと言うのですか。

「わ、私、用事あるので…」

「またまたー、チノちゃん定休日ってことも忘れてたくらいなんだから、ないでしょー?」

うぐっ。

こういう時だけ鋭いなんて。

「と、とにかく、だめなんですっ…」

「…私、チノちゃんに何かしたかな」

ずきっ。

そんな傷ついたような顔されると思わなかった。

私、自分のことばかりで…

「そんなこと…ないですけど」

「ちょっと、すごい夢を見ちゃって…心の整理をしたいので、少し一人にしてくれませんか?」

ごめんなさい、ココアさん。

でも嘘はついてない。

「…そっか、わかった。じゃあ、待ってるね」

今日はここまでです
スローペースで申し訳ない

遅くなってごめんなさい
少しだけ投下します

————自室。

ココアさんの顔、まともに見れなかった。

なんでかな。お姉ちゃんじゃないです、何て言うけど、もしかしてそれは、違う意味で本心なんじゃ——

なんて考えが浮かぶけど、すぐに払拭する。

…そんなわけない。だって、私たちは女の子同士なんだから。

でも、もし、そうだったら——そんなの、耐えられない。

だってきっと、さっき話したココアさんは、現実のココアさんは、そういう目で私をみていないから。

「すき」のベクトルが違うことほど、つらいことなんてない。

「チノ、どうしたんじゃ、なにかあったのか」

おじいちゃんにまで心配かけちゃった。

「おじいちゃん…私、どうしたらいいのかわからないんです」

「…ゆっくりでいいんじゃ。自分のペースで自分の気持ちを見つめ直しなさい」

「おじいちゃん…」

確かに、夢を見ただけなのに、余りに落ち着きが無さすぎたかもしれません。

ココアちゃん誕生日おめでとう

————ココアさんの部屋の前。

あんな態度とっちゃった後だから、緊張する。

それに、最初何て言えばいいんだろう。

…ううん、考えてばっかりじゃ不安になるだけ。

とにかく、謝ろう。

こんこん。

どきどき。

鼓動が早くなるのを感じて、思わず胸を押さえる。

がちゃ。

「チノちゃん…落ち着いた?」

保守ありです

「お、落ち着きました。ココアさん、ごめんなさい…」

なんだか今日はものすごく謝ってる気がする。

「ううん、大丈夫。それより、どうしたの?お姉ちゃんに話してごらん♪」

うう…そんな優しい顔、反則です。

甘えたくなっちゃうじゃないですか。

「夢を、見たんです」

「ゆめ?」

目をぱちくり。

「はい、えっと、ココアさんが出てくる夢で、それで…」

何て言おう。

夢であんなことしたから意識しちゃったんです、なんてとても言えない。

どうしよう…

とにかく、誤魔化しちゃえ。

「あ、そうです、ココアさんが、ゾンビだったんです」

…苦しい言い訳になっちゃった。

「それで…怖くなっちゃって」

「チノちゃん、それさ…」

ココアさんは優しい表情から一瞬、真剣な表情になって、

「すごく怖がりさんだね、チノちゃんかわいいー♪」

抱きついてきた。

ほっ。

思わず安堵のため息が出る。

「ほ、ほんとに怖かったんですからね…」

…棒読みすぎる、かな。

「大丈夫だよチノちゃん、よしよーし♪お姉ちゃんがついてるからね!!ちゃんと人間の!!」

大丈夫そう。

「ふふ、分かってますよ」

ココアさん、いい匂い。

安心する匂い…

やっぱり、この気持ちはまだしまっておこう。

だって、この暖かさが、たまらなく好きだから。

とりあえずここまでかな

あのあと、二人で遊んで、そのままいつも通りの休日になりました。

チノちゃん、実は私、チノちゃんが嘘ついてること気付いてたんだよ?

でもきっと、チノちゃんにも何か事情があるんだよね?

だから私、チノちゃんがホントのこと言ってくれるまで待ってます。お姉ちゃんだもん♪

夜。

夜は怖い。

元々そんなに得意な方ではないけれど、あんな夢を見てしまった次の日の夜は、違う意味ですごく怖い。

今日はなんとかやり過ごせた。

でも、あんな夢を見るのが毎日だったら?

嫌でも意識、してしまう。

「はぁ…」

でも、寝なくちゃ。明日は学校。

夜更かしはしてられない。

…きっと大丈夫。

そう信じて寝ることにした。

―――支度をして、リゼさん、シャロさん、千夜さん、マヤさん、メグさんと合流。

…家の外に出ると、道路に列車が待機していた。

ど、道路に列車…。

「よし、そろったな!じゃあ出発だ!」

「「「「「「おー!」」」」」」

「だんだん夢らしくなってきましたね…」

「チノちゃん、何言ってるの?」

シャロさんに聞かれてました。

「いえ、こっちの話です」

―――車内。

「ねー、王様ゲームしようよ!!」

「おっ、いいじゃん、さんせー!」

「王様ゲーム?この前もしたじゃない、またするの?」

「いいじゃないシャロちゃん、リゼちゃんとあんなことこんなことするチャンスよ?」

「そ、それはいいかも…じゃなくて!なんでリゼ先輩が出てくるのよ!///」

不思議そうな顔をするリゼさん。

「よし、じゃあやるのは決定ね!実はもう道具は作ってあるのです!」

「用意周到なやつだ…」

「はいみんな引いて引いて!」

みんなが引く。

「「「「「「「王様だーれだ」」」」」」」

「あっ、私王様だよ!」

ココアさんが王様。

どきっとする。

心臓がうるさいのは、なんでだろう。

もし、命令が変なのだったら。

もし、もし、命令が王様と、き、キスとかだったら。

…私は、なんてこと考えてるんだろう。

「んー、じゃあねぇ…三番の人私とキス!」

…本当に来た。

時間が止まったかのようだった。


きっと数秒にも満たなかったはずなのに、世界が遠ざかるような感覚に襲われた。

…三番は、私じゃない。

心臓が、もっとうるさくなった。

胸が痛い。くるしい。

「あ、三番、私だ。ココアも無茶な注文するなあ…///」

リゼさん、ですか。

なんでリゼさん、顔赤いんですか。

「三番、リゼちゃんなの?えへへ、そっかぁ…///」

くるしい…。

「リゼ先輩とココアがキス、リゼ先輩とココアが…!!!」

シャロさんがすごいことになってます。

でもきっと、私の気持ちもおんなじ。

「王様の命令は絶対なんだよな…///」

「うん、そうだよ…キスしなきゃ、だね///」

「しなくてもいいんじゃないですか?無茶な命令すぎますよね?」

食い気味に口を挟んでしまった。

気持ち悪い。

胃が上がって来てるような。

「いや、でも…ルールだしな?///」

「そうだよ、ルールだよ、ルールは守らなきゃだよ、チノちゃん///」

「いいじゃないですか、そんなの知りませんよ」

すごくむちゃくちゃなこと言ってる。

それはわかってる。頭がまわらない。

「ダメだってば…ほらリゼちゃん、しよ?///」

「あ、ああ、そうだな…///」

ふたりがかおをちかづける。

ばくばくどくどく。

きもちわるい。にげだしたい。

「だめです、だめです…」

もっとむねがくるしくなる。

「…だめー!!!」



――――――――――――

「はぁっ、はぁっ…」

…また、夢。

私、きっと夢に嫌われてる。

いやいや、夢に嫌われてるってなんですか。

今私は、自分で自分にツッコむくらいには動揺している。

落ち着かなきゃ…。

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