アイギス「あの人の手紙」【ペルソナ3】 (29)

書き溜めあります。

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-厳戸台分寮 ロビー-

男「お届けものです。天田さん、いらっしゃいますか?」

天田「はーい!誰からだろう?差出人は・・・!!ちょっと、あの、すいませんこの荷物は・・・あれ、もういない」


-ベルベットルーム-

エリザベス「お力になれましたでしょうか」

キタロー「ああ、本当に助かった」

エリザベス「確実に皆様のお手元に届くように、私手ずからそれぞれを配達してもよかったのですが」

キタロー「そこまでエリザベスに頼むのは悪い。
こうやって僕を、ベルベットルームに来られるようにしてくれただけでもありがたいんだ。
それに、天田は頼みを無視することなんてない。ちゃんと、やってくれるさ」

エリザベス「今もなお、お仲間を信頼していらっしゃる。絆の力、でございますか?」

キタロー「絆、か。そうかもしれない。エリザベスはいい言葉を使うね」

エリザベス「ありがとうございます」

-巌戸台分寮 4F-

わたしは、対シャドウ特別制圧兵装七式アイギスと申します。
みなさんからは、簡単に「アイギス」とか、「アイちゃん」と呼ばれています。
今日は、天田さんに呼ばれて、久々に厳戸台の学生寮に来ています。
シャドウワーカーとして一緒に活動している、というか私の上司にあたる美鶴さんと共に。
天田さんが人払いをしたのか、寮には天田さんしかいないそうです。

美鶴「この作戦室に入るのも久しぶりだな」

そう。この作戦室に入るのは、大規模シャドウ制圧作戦に明け暮れたあの日以来です。

ガチャ
ゆかり「先輩おそーい!」

風花「桐条先輩、アイギス、こんばんわ」

順平「遅いっすよー!」

天田「すいません、美鶴さん、アイギスさんも急に」

美鶴「かまわないさ。しかし、待たせてしまったか?約束の時間には間に合っているはずだが」

ゆかり「もー、変わってないなあ先輩は。早く来て、一緒に女子トークとかするんだっていいじゃないですかー」

順平「みんなそろわないと、話を進めないって天田少年が強情はるんで、もう待ちきれなかったんすよ!」

風花「順平くん、1時間も前から来てたって言ってたもんね」

この作戦室で和気あいあいと話をする雰囲気、あの頃に戻ったようで懐かしいです。

美鶴「それは済まなかったな。しかし全員、か。明彦は日本にいないんじゃないのか?」

天田「いや、メールをしたら、すぐ帰国するから、って…聞いてないんですか?」

美鶴「ああ、連絡なんて滅多に寄越さないからな。全く明彦のやつめ…」


美鶴さんは、真田さんに怒り口調ですが、口調とは裏腹に、口角が上がり微笑んでいるようです。いつもながら不思議だなー。

ガチャ
コロマル「ワンワン!」

明彦「すまない、遅れてしまったか」

天田「真田先輩!」

ゆかり「うわー、真田先輩、なんというか…」

風花「ワイルド、だね…上半身裸にマントって」

順平「どこの世界で戦ってきたんだあの人は」

コロマルさんは、真田さんを玄関で待っていたそうです。
そういえばコロマルさん、今やこの寮に最も長く住んでいる住人になるんですね。

みんなが揃いましたが…天田さんに緊張の反応がみられます。


天田「えーっと、皆さん、本日は急にお呼びして申し訳ありません」

順平「んだよー天田少年!どうした急に改まってー!宿題か?わからないところでもあるのか?」

ゆかり「だったら順平は呼ばれないでしょ?まあ私もビミョーだけどさ」

天田「えっと、まあ勉強だったらそうかもですが」

ゆかり「え、やっぱ私もそうなんだ、ちょっとショックなんだけど」

風花「まあまあゆかりちゃん」

明彦「で、用件はなんだ?天田が突然にみんなを呼び出すなんてことは尋常じゃないからな。タイミング良く、帰りの飛行機がとれてよかったが」

天田「ちょっと、ある手紙をいただいたんで、読みます」

美鶴「手紙?」

「天田乾様

突然にみんなと別れてしまったことをとても残念に戻っている。

君には面倒をかけてしまうが、特別課外活動部の先輩の最後の我が儘と思って、協力して欲しい。

きっと、厳戸台分寮に住み続けているのは、君だけだろうから、君に頼むのが一番適切だと思う。

この封筒の中に、みんなに宛てた手紙が入っている。

すまないが、この手紙をみんなに渡してほしい。

キタロー」

「「「「「!!!!!」」」」」


美鶴「な、なんだと!?」
ゆかり「ちょっと、天田くんホント?」
風花「リーダー・・・」
明彦「信じられん」
順平「アイツ、まじかよ!?」

信じられません。そして次の瞬間、咄嗟に声と手が出てしまいました。
「天田さん、その便箋、貸していただけますか?」

美鶴「アイギス?」

微かに、便箋に染みる皮脂。確かに、彼の指紋と一致します。信じられない。
一体、これは!?

天田「と、とりあえず、皆さんへの手紙、お配りします!」


皆さん、天田さんからそれぞれ自分宛の封筒を受け取ると、早速開いています。

私も早速・・・。

「アイギスへ

君がずっと僕のそばにいてくれて、心強かったし嬉しかった。

ありがとう。


君と離れることになってとても残念だ。

ただ、僕の命は目に見えるものではないけど、まだ存在しているんだ。

アイギスだけに伝える。僕は、ずっと君を見守っているよ」

気がつくと、涙が出ていました。
涙を流しているのは私だけでなく、ここにいる全員でしたが。

ここにいるみんなは、特別課外活動部の大切な仲間です。
そのリーダーであるキタローさんは-仲間、以上の感情を持った方もいましたが-
私たちの太陽であり星であり・・・、まさにワイルドカードでした。


「最後の戦い」を終えたしばらく後、学校の屋上で、キタローさんは私の膝の上で、眠りにつきました。
永遠の、眠りに。

そのキタローさんが「まだ存在して、見守ってくれている」!
キタローさんはなぜ、そのことを私だけに教えてくれたのでしょう。

この寮で、キタローさんを一番慕っていたのが、私だったから?
それとも、キタローさんが私に好意を寄せていたから?
「人間」の理解を超えた事を言っているから?

うーん、考えたって、わかることではないのです。
でも、私だけに教えてくれる、ということが嬉しい。
この記憶は、プロテクトをかけて、最もセキュリティの高い層に保存することにします。

「皆さんの手紙にはどんなことが」

と声を出してみましたが、誰からも反応がありません。
感動的な内容の手紙に夢中で、私の声が耳に入らない、ということかと思ったのですが、
よくよく部屋を見渡すと、時間がとまり、静寂と、動かない、動けない皆さんがいます。
影時間?とも思いましたが、ここにいる皆さんは影時間の適性があるから、そんな筈はありません。

もう一度部屋を見渡すと、青白く光るドアがあります。
明らかに、本来はこの部屋に無い筈のドア。何者かの悪意によって作られたギミックだったら危険ですが、
意を決して、ドアを開きました。この雰囲気には覚えがありました。
そして私は行かなければならない、そんな気がしたのです。

ギィーッ

エリザベス「あら、イレギュラーなお客人。私、驚きを隠し切れません」

キタロー「アイギス!?」


信じられません。キタローさん!?

キタローさんは、「最後の戦い」でニュクスを封印するために体を擲ち、結果的には命を落としてしまいました。、
エリザベスさんのご尽力で、こちらの世界で、多少の時間であれば、活動できるようなったそうです。
この部屋、この世界における時間の概念は、私には理解できませんでしたが。

キタロー「しかし、驚いた。アイギスがここに来るとは」

エリザベス「ベルベットルームにいらっしゃるお客人は、必ず、故あってここにいらっしゃいます。
・・・これも絆の成せる技、でございましょうか」

絆・・・私と、キタローさんの、絆・・・
本当はずっとずっと、離れないで一緒にいたかった、私とキタローさんの絆。
寸断されてしまった、と思いましたが、繋がっていたんですね。

キタロー「そうだね。ずっと、繋がっていた。そしてこれからも」

エリザベス「えー、宴もたけなわではございますが、キタロー様、そろそろニュクスのところに戻っていただかないといけません」

キタロー「ああ、そうだね。アイギス、逢えて嬉しかった」

エリザベス「あの、お客人もそろそろお戻りになられてはいかがでしょうか。
無理にとは申しませんが、あなたの世界も、そろそろ動き出す頃合いかと存じます」


確かに。寮の皆さんからしたら、私は瞬間的に消えている、失踪しているような状態で、
ご心配をかけてしまう。名残惜しいが、寮に戻らなくては。

エリザベス「ドアから出れば、あなたの帰るべきところに繋がっている筈です。
もし次にあなたがいらっしゃる時があれば、私ではなく、きょうだいがご対応させていただくかもしれません。
出来の悪いきょうだいですが、その際にはどうぞよろしくお願いいたします」

こちらこそ、と軽く一礼し、私はドアを開きました。

-再び、厳戸台分寮 4F-

ガチャッ

美鶴「アイギス、どこへ行っていたんだ?」

順平「アイちゃん、気がついたらいないから心配したぜ!」

明彦「せっかくみんな集まったから、一緒に晩飯でもどうかと話していたんだ、アイギスはどうだ?」

ゆかり「真田先輩発案だから、残念ながらうみうしのテイクアウトなんだけどね・・・」

風花「ゆかりちゃん、残念ってことはないよ。アイギスもうみうしは行ったことあるし」

天田「へー、そうなんですか?でもアイギスさん固形物って食べれないんじゃ」

順平「アイちゃんは、牛丼、つゆだけで、だからな!」
アッハッハ

皆さん、きっとさっきまで、手紙を読んで涙していた筈です。
しかし、キタローさんを思えばこそ、泣いていても仕方ない、ということにもすぐ気付かれたのでしょう。
その気持ちを吹き飛ばすように、気丈に振舞っているのは一目瞭然です。

キタローさんとの絆が繋がっているのは、私だけではないようです。
そして、キタローさんと一緒に紡いだ、皆さんとの絆。これからも大切にしていきます。

エピローグ
-ベルベットルーム-

エリザベス「しかし、あのお客人はいったいどうやって・・・」

テオドア「姉上、只今戻りました」

エリザベス「テオ、遅いではありませんか。して、復刻版のおでんジュースは入手したのですか?」

テオドア「いえ、天田様への配達の後、あちらこちら探し回ったのですが、おでん缶しか見つからず」

エリザベス「全く、だらしのない。もう結構です」

テオドア「すいません、姉上。・・・・あの、姉上、ところでベルベットルームにお客人はいらっしゃいませんでしたか?」

エリザベス「ええ、いかにもいらっしゃいましたが、どうしてそれを知っているのです?」

テオドア「お恥ずかしいのですが」

エリザベス「ええ。あなたのような愚弟を持って、私は日ごろから恥ずかしく感じています」

テオドア「ええー・・・、あ、いえ。実は慌てて街に行った際に、ドアを消し忘れまして、
うっかり、来るべきでないお客人が来ていないかなー、なんて思ったのですが、いらっしゃいましたか・・・」

エリザベス「成程、あなたの仕業でしたか。まぁ、あの方がここに来るのも必然だったのでしょう」

テオドア「そうでしたか、それはよかっ
エリザベス「しかしドアを消し忘れるとは言語道断、別問題、許されることではありません。
覚悟なさい。メギドラオン!」

テオドア「ひぃぃぃっ!」

エリザベス「これが私とテオ、あなたの絆です!」

以上になります。

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