佐竹美奈子「ずっと一緒がいいな」 (18)
鳴り響くスマホのコール音に、私の意識は覚醒した。
聴き馴染んだシンセサイザーの音色は、私の持ち歌『スマイルいちばん』のイントロだ。
私をアイドルにしてくれたこの歌は、私にとっても大事な歌だ。
この曲が私の携帯から鳴るということは、原因はひとつしかない。
「もしもしお待たせしました! おはようございますプロデューサーさん!」
私をアイドルにしてくれたプロデューサーさん専用の着信音。それが、この曲が私の携帯で担っている重要な役割だ。
自慢じゃないけど、この曲を着信音にして私がプロデューサーさんからの電話に出なかったことはない。
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「おはよう美奈子。起きてたか?」
「もちろんですよ。任せてください」
大嘘だ。意識こそはっきりしているものの、身体はまだまだ寝起き直後のまま。
髪はボサボサだし化粧だってしてない。服装だって奈緒ちゃんが置いていったTシャツとスウェットだ。
今プロデューサーさんに部屋にはいられたら、私はもう二度と顔を合わせられなくなる。
「はは。流石美奈子だな……えーっと。まずはだな……その。ごめん」
「え? ごめんって何がですか?」
電話の向こうで頭を下げているプロデューサーさんが簡単に想像出来る心底申し訳なさそうな声色。普段はいつもあっけらかんとしているプロデューサーさんだから、思わず聞き返してしまう。
「……その。この前のオーディションの結果がでてさ。その報告をしたいと思ったんだが。今日、美奈子オフだったよな。オフの日に仕事の話をすることになるからさ」
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