姫宮千歌音「聖杯戦争?」 (9)

 月には誰も知らない社がある。そこにはオロチによって壊れた世界を再生する為、贄に捧げられた巫女の魂が眠っている。

 次にオロチが復活の兆しを見せた時に、また世界に生まれ、その身命を供物に世界を浄化する。それは終わりなき輪廻の運命として永劫に続き、決して逃れることはできない。

 それが剣の巫女の宿命だと理解していた。いや、理解しているつもりだった。だけど、その心の奥底では、月の巫女の魂は今なおその残酷な運命を呪っていた。最愛の女性に刃を突き立てる己の存在を憎み、嫌悪していた。

 そして、その想いに誘われるようにそれは現れた。それに姿形はない。ただ、何も見えない暗闇の世界に、一筋の光となって膨れ上がり、そこに奉納された月の巫女の魂ごと包み込んだ。

 月の巫女の魂はーーー姫宮千歌音の魂は、その輝きに取り込まれ、彼女は目を覚ました。
 
 

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