―――事務所
P「…………」カタカタ…
凛「お願い」
李衣菜「だからなんでさ」
凛「やってみたいことがあって」
李衣菜「私が必要なの?」
凛「うん。李衣菜じゃないとダメ」
李衣菜「そう言われたら……まぁいいけど」テクテク…
李衣菜「……こうでいいの?」
凛「ん。それじゃあ――」
李衣菜「へ?」
どんっ
李衣菜「…………」
凛「どう? 壁ドン」
李衣菜「顔が近い」ペシ
凛「あうっ」
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凛「ひどいよ李衣菜……。普通はドキッとしてときめくものなのに」
李衣菜「なんの脈絡も無しにやられても困るだけなんだけど……」
凛「そう?」
李衣菜「状況によるよ、シチュエーションって言うの? そういうの」
凛「なら、李衣菜はどういうシチュエーションならドキッとする?」
李衣菜「え、ええっ? 言わなきゃダメ?」
凛「うん。演技力レッスンだと思って」
李衣菜「う、うーん……」
李衣菜「――たとえば、夕焼けが綺麗な放課後の廊下で」
凛「いいね」
李衣菜「同級生の男の子と他愛の無い会話中、不意にお互いはにかんで黙っちゃって……」
凛「なるほど、両方気があるんだね」
李衣菜「で、男の子は意を決した顔つきで迫ってきて……私は思わず後ずさる」
凛「うんうん」
李衣菜「壁に追い詰められる私、それでも彼は近づいてきて……!」
凛「くる……!」ゴクリ
とんっ……
李衣菜「優しく顔の横に手をついて、こう言う――」
『……好きだ。付き合ってくれ』
李衣菜『あ――は、はいっ。私も好きです……こちらこそ、よろしくお願いします――』
李衣菜『プロデューサー……!』
P「ぶへあっ!?」ブバッ
凛「男の子どこ行ったの?」
李衣菜「正直同級生じゃイメージしにくいし。てへっ」
P「とんでもない巻き込み事故を食らった……あああ、お茶がモニターに」フキフキ
李衣菜「実際問題、そんなシチュエーションなんてほぼないでしょ? 学園ドラマじゃあるまいし」
凛「ま、そうだね。そんなことされても私なら引く」
李衣菜「それをさっき凛にやられたんですけど」
凛「まぁまぁ。女の子同士ならセーフだよ」
李衣菜「なにがセーフなの……」
凛「私女子校だから、みんなそうやっていろんなことして遊んでるの見てるんだよね」
李衣菜「あー、分かる。うちの学校でも女子グループはそういう遊びしてるなぁ」
凛「李衣菜は混ざらないの?」
李衣菜「私はほら、ロックな一匹狼だから♪」
凛「……友だちいないんだね……」
李衣菜「いやいるよ!? 遊ぶときは遊ぶよ、時と場合によるの!」
凛「大丈夫、李衣菜には私という相棒がいるからね。1人じゃないよ」
李衣菜「そりゃどーも……」
凛「そんなわけで、2人でもっと壁ドンやってみよう」
李衣菜「実はやってみたいだけでしょ、引くとか言いながらさ。ねぇそうなんでしょ?」
凛「そそそそそんなわけないじゃんなに言ってるの李衣菜まったくもう冗談がうまいんだからふふふあはは」
李衣菜「あーはいはい。やりたいなら変にキャラ守ってないで、みんなに混ざればいいのに」
凛「私は李衣菜とやりたい」キリッ
李衣菜「プロデューサー、私を見る凛の目がたまに怖いんですけどどうしたら」
P「諦めろ」
凛「別に、プロデューサーでもいいんだけど……」
李衣菜「出番ですよプロデューサー! やったね!」
P「ターゲットから外れて嬉しそうだな李衣菜」
凛「プロデューサーはやりたい方? それともされたい?」
P「え、女の子からされるって男としてどうなんだ……?」
凛「されてみれば分かるよ。さぁプロデューサー、壁に寄って」グイグイ
P「ノリノリだなおい……分かった分かった」
凛「……背、高いね」
P「凛も高い方だろ?」
凛「プロデューサーに比べたら、だよ。ちょっと屈んでくれる?」
P「はいはい、っと」グ…
凛「ん。……じゃあ行くよ」
ぺたんっ
凛「…………」
P「……けっこう近いな」
凛「…………」
P「凛? どうした」
凛「……ぎゅー」ギュッ
P「待て待て待てなんか違うぞ凛、これはちょっと……!」
李衣菜「プロデューサーから離れろこのドアホりんんんんっ!!」バシーン!
凛「痛い!!?」
李衣菜「はぁ、はぁっ……黙って見てればいい気になってぇ!」
凛「李衣菜だってやってみれば分かるよ! あんな距離でプロデューサーと向き合ったらああなるに決まってるでしょ!」
李衣菜「お、……おぉ♪」
P「おい」
李衣菜「――プロデューサー! 壁!」ビシッ
P「プロデューサーは壁じゃありません」
李衣菜「さ、プロデューサー。屈んで屈んで」
P「あーもう……ほら、これでいいか?」
李衣菜「んー、あと少しお願いします」
P「き、きついな……背ぇ低いもんなぁ」ググ…
李衣菜「へへ、どもども。……行きますよっ」
ぺしんっ
李衣菜「…………おお」
P「やっぱ近い。そして腰がつらい」
李衣菜「で、ここから――」
P「え?」
李衣菜「――私の男になりなよ、プロデューサー」クイッ
P「お、おお……!」
凛(顎クイってした……!?)
李衣菜「と、まぁこんな感じですよ。本能のまま抱きつくような子とは違いますからねっ」
P「ちょっとドキッとしたぞ。案外かっこいいところあるじゃないか、李衣菜」
李衣菜「えへへへ♪ そうでしょそうでしょ、ロックでしょー♪」ニッコニコ
P「褒めたらすぐこれだ……ふふふ」
凛「…………」
凛「……むぅ」
李衣菜「へへー、プロデューサーに褒められたー♪ って凛? なんでむくれてるの」
凛「……プロデューサー、もう一回。今度はちゃんとやるから」
P「ま、またか? どうせすぐ……」
凛「大丈夫、慣れたから。……童顔李衣菜よりかっこよく、プロデューサーを魅了してみせる……!」メラメラ
P「不安なんだけど……」
李衣菜「童顔は余計だっ」
凛「次は……肘ドンを試すね」
P「肘ドンって」
李衣菜「手じゃなくて、肘使って壁をドンってするやつですよ。その分顔ももっと近づきますけど」
P「……いやな予感がする」
凛「ふふ、勢い余ってキスまでしちゃうかもね」
P「洒落になってないぞ!?」
李衣菜「そうなったらギターで頭かち割るから」ニッコリ
凛「ロックなアイドルだもんねさすが李衣菜意識が高いなぁ尊敬しちゃう心に李衣菜」ガクガクブルブル
P「意思弱いな」
凛「こ、こほん。やるにはやるよ、私にだってプライドが……!」
P「はいはい分かったよ……。どこからでも来いっ」
凛「よし――行くよ!」
だんっ
ごちんっ
P「ぬぁぁああああ……!!」
凛「~~~~~……ッ!!」プルプル…!
李衣菜「なにしてんの、おでこぶつけて……」
P「お、っま……ず、頭突きもらうとは思わんかったぞ……!」ズキズキ…
李衣菜「だ、大丈夫ですかプロデューサー? うわ、赤くなってますよ」サスサス
P「いてて、あ、あんまり触んないでくれ李衣菜……」
李衣菜「あ、すみません……冷やすの持ってきますか?」
P「いや、自分で持ってくる……李衣菜はあっちのケアを頼むよ」
凛「私はダメな子……私はダメな子ぉ……!」ガクー
李衣菜「ああ……こっちはこっちで落ち込みすぎだよ、まったく」
凛「私よりも李衣菜の方がプロデューサーに相応しい女だね……はは、あはは……」
李衣菜「ちょっと失敗したくらいでなに言ってんだか。今日はたまたまうまく行かなかっただけでしょ?」
凛「そう……? 毎日練習すればうまくなるかな……」
李衣菜「壁ドンの練習ってなんだろ……。しょうがないな、付き合ってあげるよ」
凛「……!」
李衣菜「ちょっと抜けてる相棒を助けるのも私の役目だしね。やっぱりさ、楽しいもん。凛と遊ぶのって!」
凛「!!」
凛「…………李衣菜 In The Mind……!」キラキラキラ…!
李衣菜「……プロデューサぁぁぁぁああああああ!! もうやだあああああああッ!!!」
P「おー李衣菜、頑張れよー。応援してるぞー」
凛「待ってよ李衣菜。壁ドン付き合ってくれるんでしょ、ねぇったら……♪」テテテッ
李衣菜「来るなぁああっ! その目で私を見るなぁぁあああ!!」ダダダッ!
おわり
というお話だったのさ
書くたびにしぶりんが残念になっていく
最初の頃のだりりんは一体どこへ
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