ギフテッド少女の憂鬱[暗殺教室ss] (11)
暗殺教室18巻のネタバレを多大に含むssです。
内容をご存知なく、自身で原作を読み知りたいという方はご遠慮ください。
また、登場人物が悲しい目に遭うのがダメだ、という方もご遠慮ください。
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__私の自慢の演技の刃で__
__最高の笑顔で応援するよ__
最初はやたらと渚にくっついて回る金魚のフンで、そのくせ頭も回るからこの上なく怪しい、と思っていた。
そもそも、その頃からわりと気に入っていた渚に、害を及ぼされては気分が悪いだろうしなんて考えていたのだろう。
嫌な奴だったら、上手く渚から引き離してやんないと、なんて。
お互いをよく知ってから……と言っても、彼女の演じていたキャラをよく知ってから、というのが正しいか……それからは、すっかり警戒も解けていた。
たしかにこの子は聡明な子ではある。だけど、この子にも私と同じような"何か"があるのだろう。
根は悪い子ではないのだし、大丈夫。
今思えば、私もこの子に……茅野ちゃんの武器である演技に、あっさりと殺されていたのだ。
渚こそがウチのクラスにおける最強の殺し屋であるのは間違いないだろう。
だけど茅野ちゃんは、その渚に勝るとも劣らない程の殺し屋だった。
この子は大丈夫だと、すんなりと思わされていた。
だから、その正体を表した時は本当にショックだったんだ。
__騙された……?
でも、改めて話を聞いて。
茅野ちゃんのことを。雪村あかりとしての茅野のことを知って。
何より、渚に"射殺された"のを見て。
__そうか、茅野ちゃんもただの女の子だったんだ
そうわかって、安心して。嬉しくて。
前よりもっと仲良くなろうって。
前よりもっと話をしようって。
そう、心から思った。
だけど、それと同時に変な気分で。
胸がざわついて。
そして、この感情は多分独占欲なんだ、と思った。
だって、そうじゃなきゃおかしいよ
渚が茅野ちゃんと変に仲良くしてると嫌な気持ちになるなんて
渚の隣に、自分じゃない誰かがいる事を考えると、凄く嫌な気分になるなんて
こんなのは汚い感情なんだ。だから、独占欲に違いない。
渚のことをからかってると楽しくて、幸せな気分になって。
だけど、渚が茅野ちゃんにキスをした時、またイジれるなんて思いながらもイライラしてて。
我ながら、嫌な感情に支配されてしまったなんて思った。
だから、上手く隠していた。
誰から隠していたんだろう
渚から?それとも茅野ちゃんから?
少なくとも、クラスの誰かに気取られていないのは間違いなかった。
「なんだ、私茅野ちゃんの次に演技力あるかも」
しっかし、まぁ__
「健気だわねー」
「あんな健気じゃ……私が横取りできないじゃん」
「なんて?」
「なーんでも」
「それより、殺せんせーは何をあんなに夢中で見てんの?」
「あー……茅野ちゃんに写真と一筆頼んで目立つ場所に置いただけだよ」
「あんなに効くなら暗殺に組み込んどきゃよかったな」
ケタケタと笑うこいつ……カルマは、どうして茅野ちゃんをあそこまで応援するのか、ふと気になった。
だけど、聞いてしまったらこの醜い感情がバレてしまいそうで、怖い。
誰からも上手く隠し通したこの汚い感情を見破られてしまうのが怖い。
「しかし……中村も渚のこと好きだったんだねー?」
ニヤニヤしながら、いきなりそう言われ私は驚いた。
「何、それ 」
「渚が好き?私が渚に、恋してるってこと?」
ありえない。この醜い感情が、恋?
恋ってのは、もっと……茅野ちゃんのような。
ああいう純粋で綺麗な気持ちだろ?
「……そうだよ。嫉妬するのも、恋。当たり前だろ」
ニヤニヤを消し、真面目くさったカルマの顔が私を見据える。
「醜い感情だから恋じゃない、なんて思った?ざーんねん、それも恋のうちだよ」
「中村は……真面目過ぎるんだよ」
「醜い感情なんて、人間にはつきもの。どんな崇高で綺麗な感情だと信じていても、結局は醜い感情と裏表。それは切り離せないよ」
「……あぁ、なんからしくないこと語っちゃったよ。殺せんせーじゃないけど恥ずかしいわ」
私が、真面目?
なんだよ、寺坂みたいなこと言いやがって。
でも……そうか。そうなのか。
私は、渚が好きだったのか。
「はは……くだんないね」
天才なんて言われてたガキは、自分の抱いた感情が何かもわからないただのバカだったんだ。
「……中村、悪いけど俺は中村を手伝えないし、応援もできないよ」
「渚も茅野ちゃんが好きだから。……違う?」
「……俺はそうだって判断したよ。はっきりとわからない、なんて渚は言ってたけど」
「俺は、渚を応援することにしてるからさ。友達として」
「ただ……中村にも友だちとして忠告するけど……諦めた方がいいと思うよ、俺は」
「ククッ、酷いこと言ってくれるじゃん」
「……わかってる。茅野ちゃんにはきっと、敵わない」
「せーぜー、渚より男らしい男でも見つけるよ」
「……そんな冗談が言えるなんてさ。中村はホント、真面目だよ」
なぜだか涙が出た。
止められなくて目元を拭うけれど、次から次へと新しい雫がこぼれ、何度も袖を濡らした。
それから、結構長いこと泣いていた気がする。カルマはその間中ずっと、黙って殺せんせーを眺めていた。
「……中村、ベソかくのは終わった?なんなら今度はワンワン泣いてもいーよ?」
またニヤニヤと笑うこいつの真意は伺い知れないけれど、どこぞの超生物のせいで丸くなったこいつのことだ。
きっと、こんなんでも一応慰めてるつもりなのだろう。
「うっさい! そんなことばっかいって、奥田さんに愛想つかされても私は知らんよー」
「……はぁ? 奥田さんは中村と違って割と俺の味方だし、愛想尽かすとか意味わかんねー」
「……ほら、さっさと帰るよ」
私を急かしたこいつの耳が少し赤くなっているのは黙っていてやろう。
慰めてくれた分へのお返しだ。
この汚い感情が恋だとわかった今、私は妙に清々しい気分だった。
それは、疑問の答えを得た故の感覚か
はたまた告げるまでもなく砕けた恋故の感覚か
どちらでもいいやと思い直し、前を歩く意地の悪いクラスメイトの背を引っぱたいてやったのだった。
これにて終わりです。こんなに短くするつもりは無かったですが……
題材が題材なだけに短くなるのは必然だししょうがないよね!
もう依頼出しちゃったし、カルマと奥田のエピソードや、その他千葉と速水や単に渚と茅野、烏丸とイリーナなど、その辺は近いうちに新しくスレ立ててやらせて頂きたいと思います。
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