【R-18】 ラブアロー魔法少女ウーミン 【ラブライブ!】 (123)

音ノ木坂上空を二羽の鳥がぶつかり合いながら落下していく。一羽は白く輝き、もう一羽は黒く妖しく光っている。両者は最後に一度激しく衝突して、そのまま真っ逆さまに落ちる ―音ノ木坂学院へと。



第一話 『魔法少女ウーミン誕生』




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 ―音ノ木坂学院・一年生教室


凛(勉強しないと勉強しないと。赤点だけは避けないと……海未ちゃん怖いもんね)

??(凛……凛、聞こえますか?)

凛(……? なんだろ? 空耳かな……)

??(凛、聞こえていますか? 聞こえているなら「にゃー」と返事をしてください)

凛(おかしいなあ、まだ聞こえる……凛、疲れてるのかな)

??(お・へ・ん・じ・ください~♪ りんりんりんがべ~♪)

凛(!?)

凛(えっ? えっ!? 頭の中から声がする!)

??(うふふ、ようやく気づきましたね)

凛(だ、誰なの!?)

??(私ですか? 私の名は、白鳥 ≪ホワイトバード≫)

凛(ホワイトバード……外人さんなの?)

白鳥(まあ、そんなところかしら……それで、凛に頼みたいことがあるのだけれど)

凛(頼み事? 凛はいっぱいお勉強しなくちゃいけないのに……)

白鳥(まあ、話を聞いてみて。凛に頼みたいこと、それは……魔法少女よ!!)

凛「えっ? 魔法少女!?」


真姫「……!」ビクッ

花陽「凛ちゃん!?」

先生「星空さん、魔法少女がどうしたのかしら?」

凛「う、あ……何でもありません///」

白鳥(ふふっ授業中は静かにしてなきゃダメよ)

凛(うぅ、恥ずかしかったよ……///)

白鳥(詳しい話はあとでしてあげるから。お昼休みに理事長室にいらっしゃい)

凛(理事長室? もしかしてホワイトバードさんってことりちゃんのお母さんの知り合い? )

凛(……)

凛(おーい! ホワイトバードさぁん!)

凛(……返事来なくなっちゃった)


 ―昼休み・理事長室前


凛「星空凛です。ホワイトバードさんに呼ばれて来ました」コンコン

理事長「あら、星空さんね。待ってたわよ、入ってらっしゃい」

凛「失礼します」ガチャ

凛「……あの、ホワイトバードさんは?」キョロキョロ

理事長「ホワイトバードさんならここにいるわよ」

凛「??」


理事長「私の頭にね」ペカー


凛「わわっ!! とさかが光った!」

とさか「こんにちは、さっきぶりね」

凛「ひぇぇ……とさかが喋ってる。理事長先生って妖怪だったの!?」

理事長「違うわよ!突然光る鳥が私の頭にぶつかって来たと思ったら、髪が急に話し出したのよ」

凛「え~? そんなわけ……」チラリ

とさか「何かしら?」

凛「……あるみたい」

理事長「飲み込みが早くて助かるわ。それでね、このホワイトバードさんが星空さんに話したいことがあるんですって」

凛「話したいこと……あっ! さっき言ってた魔法少女のこと?」

白鳥「ええ、あなたには才能があるわ」

凛「才能って、もしかして……」

白鳥「そう、魔法少女……」

凛「……」ゴクリ



白鳥「……のマスコットの才能よ!」


凛「えっ……?」

白鳥「聞こえなかったかしら? 凛、あなたにはマスコットの才能があるのよ!」

理事長「そういうことみたいなの」

凛「……はい」

白鳥「あら? どうしてしょぼくれた顔をしてるの? マスコットの才能を有する者は魔法少女に適した人間よりも少ないのよ」

凛「そう言われても……」

理事長「その気持ちはわかるわ」

白鳥「ええい! マスコットになれるのは名誉なことなのよ! 凛には早速働いてもらわないとなりません」

凛「でも、凛はお勉強をしないと……」

理事長「星空さん、本当にまずい事態になってるみたいなの。ホワイトバードさんの話を聞いてあげて」

白鳥「その通りです。黒鳥 ≪ブラックバード≫を退治しなくてはなりません」

凛「ぶらっくばーど?」

白鳥「ええ。ブラックバードとは怒りや憎しみといった、人間たちの負の感情が集まって意思を持ち形を成したものなの。世界に災厄をまき散らす恐ろしい存在なのよ。そして、今日ブラックバードが出現した……百年ぶりにね」

凛「それを退治するのが……」

白鳥「そう。そのブラックバードを退治するため、地球の意志により生み出されたのがこの私、ホワイトバードなの。凛、あなたの役目は魔法少女のスカウトとサポートよ」

凛「そんなこと言われても、赤点取っちゃったら……ホワイトバードさんがやったらいいと思うなー」

白鳥「私だって自分でスカウトしたいわよ! マスコットキャラになってみたかったわよ! でも私に与えられた権限はマスコットのスカウトだけ……一度、地球の意志に頼んだのだけど『ブラックバードを倒すには魔法少女一人だけじゃ心もとない。お前はマスコットを増やすのに専念しろ』の一点張り……」グチグチ

凛「あはは……ホワイトバードさんも大変なんだね」

白鳥「だから! 凛には魔法少女のスカウトをしてほしいのです」

凛「で、でも……テストが……」

理事長「試験については星空さんに限って延期することにします。ホワイトバードさんの頼みを聞いてくれないかしら?」

凛「魔法少女のマスコットなんて、凛にはちょっと難しいかなー。他の人に……」

理事長「えぇい! あんまりぐちぐち言わないの! 留年にしちゃうわよ!」

凛「うわぁ……大人の汚いやり口だ」

理事長「何とでも言いなさい。マスコットと留年、どちらをするの?」

凛「うぅ……マスコットをやります」

理事長「ふふっ、それでいいのよ♪」

白鳥「やる気になってくれたようですね。じゃあ私に手を載せなさい。マスコットの力を授けてあげるわ」

凛「はい……理事長、失礼します」ポンッ

白鳥「それじゃあ、行くわよ!」ピカー!

凛「わわっ、まぶしい!」メツムリ

凛「……」

凛「……?」

白鳥「いつまで目をつぶってるの? もう終わったわよ」

凛「あの、特に変わった感じがしないんですけど。姿が変わるとか……」

白鳥「ああ、マスコット化のことね。それはね、魔法少女が変身したときにあなたも一緒に姿が変わるようになってるの。まずは魔法少女の素質を持つ者を探すのが先ね」

凛「でもどうやって探せばいいのかな……」

白鳥「今の凛には魔法少女の適性を見抜く能力が備わっているわ。試しに南理事長を見つめてみなさい」

凛「あれ? 頭の上に数字が……」ジトー

理事長「私の値はどれくらいかしら」ワクワク ≪0%≫

凛「……0パーセントです」

理事長「そう……」シュン

白鳥「少女って年じゃないんだから当たり前だわ」

理事長「はうっ!」グサリ

凛「あはは……」

白鳥「注意しとくけど、あなたが契約できるのは一人だけだからなるべく数字が大きい子を見つけるのよ」

白鳥「さあ、凛! 魔法少女の適合者を探しに行くのです。まずはこの音ノ木坂学院から!」

凛「は、はい! 行ってきます」

理事長「授業はちゃんと受けるのよー」

凛「わかりました! 失礼しました」バタン




理事長「……」

理事長「凛ちゃん大丈夫かしら」

白鳥「あら? 自分の生徒を信じられないの?」

理事長「いえ、そういうわけではないけれど……やっぱり心配だわ」

白鳥「大丈夫よ! 凛のマスコット適性値は100パーセントよ。場合によっては魔法少女一人だけで黒鳥を倒せるわ」

白鳥「それにあと二人マスコットの才能を持つ子がこの学院内にいるわ。この学院は凄いわよぉ!」

理事長「そうなの? それならお昼休みが終わる前にすぐ呼び出さないと」

白鳥「そうしたいのはやまやまなんだけど、マスコット化にも魔力を使うから。私の魔力が回復しないと……」

理事長「回復するのってどれくらいかかるの?」

白鳥「一週間日よ」

理事長「その間に黒鳥が襲ってきたらどうするの!?」

白鳥「黒鳥が地上で力を蓄えるには時間がかかるの。逆に、一週間日以内に黒鳥が憑依している人間を見つけられれば楽に退治できるわ……そんなことはめったにないけど」

理事長「黒鳥を見つけるレーダーみたいのはないのかしら?」

白鳥「そんなのがあったら苦労しないわよ!」

理事長「役に立たないわね」

白鳥「……」

白鳥「わっ私だって頑張ってるのに……ひどい! ひどいわ!! ほんとはマスコットやりたかったのにぃ!!」ギャーギャー

理事長「わ、わかったから落ち着いて! 頭の上でぎゃんぎゃんわめかないで!! ああっもう!!」


………………


凛「たっだいまー!」

花陽「あ、凛ちゃん帰って来たよ」 ≪65%≫

真姫「理事長室に呼ばれたって、また悪さでもしたの?」 ≪55%≫

凛「違うにゃー! 理事長先生から大事なお仕事をもらったんだよ」

花陽「大事なお仕事って……?」

凛「それは……」

真姫「何よ?」

凛「凛と理事長先生だけの秘密!」

真姫「何それ? 胡散臭いわね。変なことでも頼まれたんじゃないの?」

花陽「ことりちゃんのお母さんだから大丈夫だと思うなぁ……凛ちゃん、頑張ってね!」

凛「うん! 頑張るよ!」

真姫「困ったことがあったらいつでも私たちを頼りなさい」

凛「真姫ちゃん、優しいにゃー」スリスリ

真姫「ああ、もう! くっつかないで!」

花陽「ふふ♪」


………………………………


 ―放課後・校庭


海未「……」ソワソワ

海未「呼ばれたのは校舎裏でしたよね。まだ帰って来ないのですか?」

穂乃果「もうっ、そわそわしたって仕方ないじゃん」

海未「穂乃果は気にならないのですか!? ことりが告白を受け入れたら……」

穂乃果「穂乃果は海未ちゃんと違って、ことりちゃんのことが恋愛的に好きってわけじゃないから、ちゃんと祝福するよ」

海未「う……」

穂乃果「ことりちゃんを取られるのが嫌だったら、もう自分から告白しちゃえばいいのに」

海未「ことりはとても可愛く優しくて、それでいて芯の強いところもあって……私なんかとは釣り合いませんよ」

穂乃果「え~そうかなぁ? 海未ちゃんだって後輩の子からモテモテじゃん」

海未「私なんかよりことりの方が皆さんから好意を持たれています!ことりは一年生だけでなく三年生の方々からも人気があるではないですか。弓道部の先輩もことりの大ファンで、いつも可愛い可愛いと……そんなことは言われなくてもわかってます!!」

穂乃果「お、落ち着いて……あっ、ことりちゃん帰って来た! おおーい!!」

海未「……!」ピクッ

ことり「二人ともお外で待ってたの? 中で待っててくれればよかったのに」

穂乃果「海未ちゃんが『気になりますどうしましょう』ってうるさいから外に出たんだよ」

海未「ほ、穂乃果! 余計なことは言わなくていいです!」

穂乃果「へへ~ん、ほんとのことだもんね~」

ことり「ふふっ♪ 海未ちゃん、そんなに気になってたんだ。ちょっと嬉しいかも♪」

海未「そっ、それより! ことりはどう返事をしたのですか!?」

ことり「え~、そんなこと聞くのぉ? ことりにだってプライバシーがあるんだよっ♪」

海未「それはそうですが……」

ことり「お断りしたよ」

海未「え? あ、ああ。そうですか……」

ことり「海未ちゃん、ことりのお返事がとっても気になってたみたいだけど、何でかなぁ?」ニコニコ

海未「それはもちろん……幼馴染だからですよ。穂乃果だって気になっていたのでしょう?」

穂乃果「そりゃあそうだけど」

ことり「……そうだよね、幼馴染だもんね」

ことり「あ! もうこんな時間、早く練習に行かないと遅刻しちゃうよ!」タタタッ

海未「そうですね、急ぎましょう」タタッ

穂乃果「わわっ、待って! 置いてかないで」


………………


 ―下駄箱前


穂乃果「あれ? まだ時間たっぷり残ってる」

ことり「ごめんねっ! ことり、見間違いしちゃったかも」

海未「ことりにしては珍しいですね。でもまあ、早めに着いて悪くはないですから」カパッ

海未(ん? 下駄箱の中に手紙が。ハートのシールで封をしてありますね)

ことり「……」ジー

穂乃果「こ、ことりちゃん、なんだか怖い顔になってるよ」アセアセ

ことり「えっ!? ナンデモナイノヨナンデモ」

穂乃果「そ、それならいいけど」

穂乃果(ことりちゃんのあんな顔、初めて見たかも)



< ホノカチャーン! ウミチャーン! コトリチャーン!



海未「おや? この声は」

穂乃果「凛ちゃんだ!」

凛「おーい!」ダダダッ

凛(一年生で一番はかよちんの65%……他の学年の人はどうなんだろう)

穂乃果「どうしたの?」 ≪60%≫

ことり「何かご用かな?」 ≪52%≫

海未「凛! 廊下を走ってはいけませんよ」 ≪100%≫

凛「……!!」

凛「海未ちゃん!!」

海未「何ですか? そのような大声で」

凛「ちょっとこっち来て来て!」グイグイ

海未「わわっ! いきなりぐいぐい引っ張らないでください。穂乃果、ことり、先に行っていてください」



<ドコニイクノデスカ?

<リジチョウシツニャ!



穂乃果「海未ちゃんと凛ちゃん行っちゃったね」

ことり「うん……」

穂乃果「先に部室行ってよっか」

ことり「……」

ことり「うん、そうしよっか♪」ニコッ

穂乃果(ことりちゃん、笑顔がぎこちない……)


………………


 ―理事長室

白鳥「カクカクシカジカ……」

理事長「……ってことなのよ」

海未「わ、私が魔法少女に!?」

凛「海未ちゃんは魔法少女100%なんだよ」

海未「そんなこと言われましても、いきなり過ぎます。それに魔法少女って、あの、そういう可愛らしい格好で……恥ずかしいです///」

理事長「あら? 海未ちゃんならとっても似合うと思うわよ」

凛「そうにゃそうにゃ! みんなの注目の的だよ」

海未「皆さんに見られるなんて……/// すみません、この話はなかったことに」

白鳥「凛、何やってるのよ、逆効果じゃないの! 適性値100%の子なんてめったにいないのよ、なんとか説得なさい!」

凛「ううっ、人使いの荒いとさかだなぁ」

凛「ねえ、海未ちゃん」

海未「な、何ですか? たとえことりにお願いされたとしても魔法少女は嫌ですからね」

凛「ブラックバードをほっといたら大変なことになるんだよ? 早くやっつけないと。それには海未ちゃんが魔法少女になって……」

海未「……他の方に頼んでください」

凛「海未ちゃんみたいに適性が高い人なんてめったにいないんだよ。他の人を見つけるのに時間がかかっちゃってブラックバードがどんどん強くなってちゃうかもしれないんだよ」

白鳥「そうよそうよ!」

海未「それは……」

凛「それに海未ちゃんは適性が高いだけじゃなくって、弓道とか剣道とかもできるんでしょ。そんな海未ちゃんが魔法少女になったら絶対かっこいいと思うな~」

海未「……」

海未「……わかりましたよ。魔法少女、受けましょう。私が断ったら他の方がその危険なことをしなければなりませんからね」

凛「海未ちゃん!!」パァァ

理事長「ふふっ♪ 海未ちゃんの魔法少女姿、私も気になるわ」

海未「やめてください、おば様///」



白鳥「むっ! むむむっ!」ピョンッピョンッ

理事長「ちょっとホワイトバードさん、頭の上で暴れないで」

凛「理事長先生のとさかが跳ね回ってて、なんかすごい変……」

白鳥「大変よ! 出たわよ!」

海未「出たとは? まさか!」

凛「ブラックバード!」

白鳥「いえ、これは……怪人の気配がするわ。ブラックバードは怪人を生み出せる能力があるのよ」

理事長「凛ちゃん、魔法少女の契約を!」

凛「はい!」

海未「け、契約って、何を!?」

凛「海未ちゃん! 『ラブアロー魔法少女ウーミン誕生!』って言って!!」

海未「ええっ!?」

理事長「その言葉を唱えることによって契約が完了するの」

海未「え、えと……ラブアローまほう///」ボソボソ

白鳥「もっと大きな声で!」

海未「うぅ……ラ、ラブアロー魔法少女ウーミン誕生!!」


シーン…


海未「……?」

白鳥「はい! これで契約完了よ」

海未「あの、特に何も変わってないのですが」

白鳥「そりゃそうよ。契約をしただけですもの。魔法少女に変身するには呪文を唱えないと」

海未「その呪文とは?」

白鳥「『魔法少女ウーミン参上!』よ」

海未「他の言葉ではダメですか?」

白鳥「何よ! 不満があるの!?」

凛「変身呪文はホワイトバードさんの趣味で決めてるんだって。変える気はないみたいだから、海未ちゃんあきらめるしかないにゃ」

海未「ううぅ……」チラリ

理事長「さんざん説得したのだけれど、ホワイトバードさんすごい頑固で……」

白鳥「何ぐずぐずしてるの! 早く変身なさい!!」

理事長「ここは我慢して。ねっ?」

海未「……はい」

海未「……」スゥ…



海未「ラ、ラブアロー魔法少女ウーミン参上!!///」


ピカー!!!


海未「わわっ! 急に光って!?」


スパーン!!


海未「……!? 服が脱げて!? ちょっ、ちょっと!!」


シャキーン!!


理事長「これが……」

白鳥「魔法少女ウーミンよ!」

リン「魔女っ子海未ちゃん、可愛いニャー☆ でもこの衣装どっかで見たことあるかも」


ウーミン「……」ムスー

白鳥「どうしたの? 不満そうな顔して。似合ってて、とても可愛いらしいわよ」

ウーミン「聞いてませんよ……変身するときに裸になるなんて!!」

白鳥「魔法少女に変身するときは光がピカーってなって裸のシルエットが映るものでしょ?」

ウーミン「そんなの知りません!」

理事長「あら? 知らないなんて言っちゃって。海未ちゃんが子どもの頃、ことりや穂乃果ちゃんと一緒に魔法少女のアニメに夢中になってたじゃない♪」

ウーミン「……!! む、夢中になってたわけでは///」

リン「謎の光で全然見えてなかったから大丈夫ニャ! それにホワイトバードさんに何を言っても無駄だと思うニャア☆」

ウーミン「ええ……そうですね。人がいないところで変身すればいいだけですからね」

理事長「それに、後輩のみんなからモテモテの海未ちゃんが魔法少女だってばれたら大騒ぎになっちゃうから、そうしたほうが賢明ね♪」

ウーミン「うぐっ……からかわないでください、おば様」

理事長「うふふ♪」

リン「あー!! ウーミン、顔真っ赤ニャー☆」

ウーミン「もう、凛まで一緒になって……って、あれ? 声はするのに凛の姿が見えません」

リン「リンはこっちだニャ☆ 下を向くニャー!」

ウーミン「下って……おや? 猫が……いつの間に入り込んだのでしょう」

リン「ウーミンの目の前にいるのがリンニャ☆」

白鳥「凛はマスコット化すると猫になるみたいね」

ウーミン「なかなか愛らしい姿ですね。凛が猫になったら本当にこんな感じなのでしょうね」

リン「褒められると照れるニャー/// ……んん?」



リン「んにゃお!!」


ウーミン「どうしたのです? 突然変な声を出して」

リン「感じる……感じるニャ! 怪人の気配を!」

ウーミン「気配?」

白鳥「マスコットは怪人の居場所を察知することができるのよ」

リン「ウーミン! 怪人がどこにいるかわかったニャ! 案内するから肩に乗っかるニャー」ヒョイ

ウーミン「わっ……! 猫といえども肩に乗っかられたら……あれ? 重くない」

リン「普通の猫ちゃんと違って今のリンはとっても軽いんだニャ」

白鳥「ぬいぐるみくらいの重さしかないのよ。肩に乗せたままでも疲れないわ。すごいでしょ!」エッヘン

リン「案内するニャー☆ 魔法少女ウーミン出撃ニャ!」

理事長「魔法少女海未ちゃんの初舞台ね♪ 窓を開けるわね」カラカラ

ウーミン「窓って……そこから飛び降りるのですか!?」

リン「ニャー! 大丈夫ニャ、魔法少女の能力ですすいのすいニャ!」

理事長「ふふ、玄関から出てってもいいのよ♪」

ウーミン「う……覚悟を決めます! 魔法少女ウーミン出陣です!」ピョン


ウーミン「……」フワッ


ウーミン「わぁ♪ 浮いてます浮いてますよ! 凛!」

リン「やっぱり海未ちゃんは魔法少女の才能かあるんだニャ! よーし今度は飛んでみてニャ☆ 怪人はあっちにいるよ」ユビサシ

ウーミン「はい!」ススー

白鳥「やるじゃない。なかなかさまになってるわよ」

理事長「ほんとに、ことりにも見せてあげたいわ。あの子きっと大喜びするわ」

ウーミン「それではおば様、ホワイトーバードさん。この園田海未、初陣を切らせていただきます!」

白鳥「ええ、期待してるわよ! 怪人なんてけっちょんけっちょんにやっつけてやりなさい!」

理事長「行ってらっしゃい、気を付けてね」

ウーミン「行ってきます!」

リン「行っくニャー!!」


………………


ウーミン「そういえばこの衣装、ことりが前に作ってくれたのとそっくりなのですが……」

リン「あー! どこかで見たことあるって思ったら、ホームページに写真を載せるからってことりちゃんが海未ちゃんに無理矢理着せたやつだニャア」

ウーミン「なぜこの衣装に……」

リン「コスチュームは魔法少女の記憶の中を参考にして決められるんだって」

ウーミン「確かに、魔法少女みたいな衣装は他に着たことがありませんが」

リン「やっぱり、ことりちゃんが作っただけあってとっても似合ってて可愛いニャ☆」

ウーミン「ことりの衣装に包まれて戦う……いいかもしれません」

リン「ウーミン、顔がにやけてるけど、どうしたの?」

ウーミン「……!!/// な、何でもないです///」

ウーミン「と、ところで! さっきから私のことを『ウーミン』と呼んでいますが、なぜですか?」

リン「『ウーミン』っていうのは海未ちゃんの魔女っ子ネームだニャ。いつも通りに『海未ちゃん』って呼んだら正体がばれちゃうでしょ? 凛のこともマスコットキャラっぽく『リン』って呼んでニャ☆」

ウーミン「『リン』ですか? 『凛』との発音の違いがいまいちわからないのですが……」

リン「そこらへんはテキトーでいいニャー☆ おっと、そろそろ目的地に到着ニャ!」

ウーミン「ん? あれは……雪穂に亜里沙!」

リン「鳥っぽい怪人にからまれてるニャ。急ぐニャ、ウーミン!」

ウーミン「はい!」


………………


 ―ウーミンとリンがまだ理事長室にいた頃


ハト怪人「カラスの兄貴、どこを襲いやしょう」

カラス怪人「そうだなあ、総統にはどこを襲えと特に命令されてるわけじゃあないが……おっ、ここなんかいいんじゃないか」

ハト怪人「学校……校門には音ノ木坂中学校と書いてあるっすね」

カラス怪人「ふははっ! 善良な中学生を恐怖のどん底の落としてやるって寸法よっ!」

ハト怪人「さすが兄貴! 悪行にかけては天下一品……ん? 向こうから誰か走って来ますぜ」

カラス怪人「ちょうどいい、まずはそいつを人質にしよう。おいハト、校門の影に隠れるぞ」サッ

ハト怪人「へいっ!」ササッ


………………


亜里沙「雪穂ー! 遅いよー!」タタタッ

雪穂「ちょっと亜里沙、待ってよ!」タタッ

亜里沙「今日はμ'sの見学に行くんでしょ。早くしないと遅れちゃう!」タタタッ

雪穂「まだ、時間大丈夫だから。歩いてこうよ」タタタッ

亜里沙「えっ、そうなの? じやあそうする」テクテク


………………


ハト怪人「むっ! あいつら走るのをやめましたぜ」

カラス怪人「相手は二人か……よしハト、お前は金髪の小娘を捕まえろ。俺はもう一人の方だ」

ハト怪人「へい、兄貴」


………………


亜里沙「お姉ちゃんと海未さんの練習見るの楽しみだな~♪」

ハト怪人「……」スススッ

雪穂「……!!」

雪穂「亜里沙!! 変なのが近づいて……

ハト怪人「……」ニヤリ


ガシィ!!


亜里沙「は、ハラショー」


亜里沙を片手で抱きかかえる、二メートルはあろうかという筋肉隆々の大男。しかし頭はハトの形をしており背中には二本の翼、体全体も灰色の羽毛に覆われている……ハトと人間が混ざり合った異様な姿。


雪穂「うっ……何こいつ」

亜里沙「ねえねえ雪穂、この人って怪人さん役なんでしょ! 日本の文化のヒーローショーを学校でやるなんて聞いてなかったよ!」キラキラ

雪穂(そうなの? でも着ぐるみにしてはリアル過ぎ……)

ハト怪人「おいおい、ヒーローショーなんかじゃないぞ」

雪穂(いやいや、そもそもヒーローショーやるなんて連絡なかったでしょ。着ぐるみだとしても変質者には違いないんだから……)

雪穂「亜里沙、離れて! そいつは変質者!」

亜里沙「えっ!?」

ハト怪人「そうはいかねえな。逃がさないぞ」ギュー

亜里沙「うぅ……痛いよ」

雪穂「くっ……亜里沙を離せえ!!」ダッ

カラス怪人「おおっと、人のことばかりじゃなくて自分の心配をしろよ、嬢ちゃん」ガシッ

雪穂「うっ……! 変態がまだいたなんて!」


先生A「この変質者! 高坂さんと絢瀬さんから離れなさい!」


雪穂「先生!」


先生B「A先生、刺股持って来ました!」

先生C「三人ががりで行きましょう!」


ハト怪人「ちょっと待ちな。この娘がどうなってもいいのか?」チャキッ


先生A「あれは!?」

先生B「拳銃!」

先生C「ハトの分際で!」


亜里沙「雪穂ぉ……」ブルブル

雪穂「ぐっ……」ギリリッ

ハト怪人「手出しするなよぉ」

カラス怪人「ふっはっはっ!」


………………


―音ノ木坂中学校・校庭の隅


リン「亜里沙ちゃんが危ないニャ!」

ウーミン「くっ、どうすれば……」

リン「リンにまかせるニャ☆」


…………


先生A「これじゃうかつに手を出せない」

先生B「卑怯者!」

先生C「そだそだ!」


カラス怪人「怪人に卑怯者もヘチマもねえよ。せいぜいわめいてろ!」

ハト怪人「兄貴の言う通り……ん?」


リン「ニャー」テクテク


ハト怪人「うわおぉぉぉ!! ね、ねねね、猫ぉお!?」

カラス怪人「う、うう、うろたえるな! たかが猫一匹、ただの鳥だったときならともかく今なら怖くなんぞ、ね、ねえだろ!」

ハト怪人「そうは言っても兄貴。本能が、本能が逃げろと警報をならしてやす!」


リン「ニャー」ピョンッ


ハト怪人「ひえっ!! 飛びついて……! もう無理だぁ!!」ダダッ

カラス怪人「おい! 人質放ったらかしてどこ行くんだよ!」

先生A「絢瀬さん、今のうちにこっちへ!」

亜里沙「は、はい!」タタッ


カラス怪人「あっ、小娘! 逃げるんじゃねぇ! ハト戻って来い! おい聞いてんのか!?」


リン「ニャー」テクテク


カラス怪人「おまえはこっち来んな! 止まれ、止まりやがれ!!」


リン「ニャー?」ピタッ


カラス怪人「そうだそうだ、話せばわかるじゃねえか。ほらあっち行けっ! しっしっ!」


リン「……」

リン「しゃーー!!!」


カラス怪人「ひえぇっ……!! 怖っ! 怒った顔すげえ怖っ!」

雪穂「……!」(力が緩んだ!? 今がチャンス!)

雪穂「くっ!」タタッ

カラス怪人「あっ、おい、待ちやがれ!」


リン「ウーミン、もう大丈夫だよ!」


カラス怪人「こいつ……!? 猫がしゃべりやがった、ネコマタか!?」」

ハト怪人「兄貴、違うっすよ。そいつたぶんマスコットです。近くに魔法少女がいるはずです」

カラス怪人「おっハト、今までどこに行ってた?」

ハト怪人「あっちの木の影に……ぐげっ!!

鈍い音がして、ハト怪人の巨大な体躯が数メートルも吹き飛ばされる。カラス怪人が音の出所に目を向けると、そこには右脚を蹴り上げた魔法少女ウーミンの姿。


ウーミン「魔法少女ウーミン見参。観念なさい悪党ども!」

カラス怪人「出たな! 魔法少女!」ブンッ!


カラス怪人が拳を振り上げてウーミンへと叩きつける。しかし、身を反らしてそれを難なくかわし、逆にカラス怪人のアゴへと拳骨を穿つ。


カラス怪人「うぐあっ!! 星が……星が見える」クラクラ


休むことなく第二の拳撃……カラス怪人のみぞおちに見事な正拳突きが決まる。


カラス怪人「ぐげっごげげっ……!!」バタンッ


急所を撃ち抜かれその場に倒れ込む。さらに追撃の踵落としを喰らわせようとウーミンが足を振り上げ……


ハト怪人「このっ、兄貴から離れろ!バイオレンス魔法少女!」パンッパンッ


ウーミンに狙いを定めて、ハト怪人の拳銃が火を吹く。


ウーミン「むっ……!」ババッ


迫る二発の弾丸をやすやすと手のひらで叩き落とす。


ハト怪人「くっ……! 俺のビーン・ショットじゃ魔法少女には歯がたたないか……!」

※『ビーン・ショット』(炒った豆を拳銃から発射する。自動リロード機能付き。豆の弾は食べることができる。美味しい)


カラス怪人「おぉい……ハト。一旦距離を取って態勢を立て直すぞ」ヨロヨロ

ハト怪人「へい、肩をお貸ししやす!」


ウーミン「こら、待ちなさい!」

リン「ウーミン、ちょっと待ってニャ」

ウーミン「何です?トドメをささないといけませんのに」

リン「校舎を見るニャー!」



< 何あれ? 鳥頭の変なのがいる!?

< 何かの撮影じゃないの?

< 先生に聞いたら違うって

< 見て見て! 魔法少女もいるよ!

< 可愛いー♪

< よくわからないけど魔法少女ちゃん頑張れー!!



リン「ウーミン大人気ニャー!」

ウーミン「……! こ、こんなに注目されて……ちょっと恥ずかしいです///」

リン「魔法少女は受けた声援を魔力に変えることができるニャ。何か感じないかニャ?」

ウーミン「そういえば……心なしか力が湧いてきます」

リン「よーし、もっと声援を集めて一気に決めるニャー! ウーミン、これ受け取って!」ポイッ

ウーミン「わっと、これは……もしや」

リン「そう、魔法のステッキニャ。ウーミン、『ラブ・ブレード』って唱えてみてニャ!」

ウーミン「はい! ラブ・ブレード!」

※『ラブ・ブレード』(魔力を帯びた日本刀。悪しき力を祓う力を持つ。ダイヤモンドでさえ両断できるが生物を傷つけることはない、という安全安心設計)


ウーミンの言葉に応じてステッキが光り輝き、形を変えていく。そして現れたのは……


ハト怪人「日本刀じゃねえか!!」

カラス怪人「なんつー血なまぐさい魔法少女だ」



< 魔法少女ちゃんが刀持ってるー! ちょっとミスマッチだけど似合ってるかも

< むっ、構えた! あの構えは只者じゃないわね

< 構えただけなのに、雰囲気が凄い張りつめてる……

< 可愛いのに、カッコいい……

< いけー! 魔法少女ちゃん! そんな奴らなんてやっつけちゃえー!

< あの魔法少女ちゃん、ウーミンっていうんだって。おともの猫ちゃんがさっきからそう呼んでるよ

< ウーミン、頑張ってー!



リン「反応は上々ニャー! バッサバッサって切って、さっさとやっつけちゃうニャ☆」

ウーミン「はい!」チャキッ


ハト怪人「どうしやしょう兄貴! あいつこっちに来やすぜ!」

カラス怪人「ただでさえ近接戦じゃ敵わんのに、これじゃ魔法少女にポン刀……ならぬ鬼に金棒だ。二人がかりでも勝てる気がしねえ……よし、飛び道具で攻めるぞ!」

ハト怪人「へい! ビーン・ショット!」

カラス怪人「フェザー・カッター!」

※『フェザー・カッター』(体に生えている羽毛を硬化させ、刃と化したそれを敵へと飛ばす)


リン「何かいっぱい飛んでくるニャー!」

ウーミン「大丈夫ですよ、リン」


言い終えると同時に走り出す。真っしぐらに突き進み、豆鉄砲と羽刀の雨あられに臆することなく突っ込む。


ハト怪人「自分から飛び込んでくるとは馬鹿な奴め!」

ウーミン「はっ!」ピョンッ


ぶつかる直前、地面を蹴り上げ空高く舞い上がる。


ハト怪人「ちくしょう、飛んで避けやがった!」

カラス怪人「ええい、焦るな!上だ! 上を狙え!」


ウーミンは空中で方向転換。怪人たちに向かって急降下する。
迫り来る敵の猛攻。しかし、顔色一つ変えることなく刀を振るい……


ウーミン「ふっ! はっ!」カキンッカキンッ


弾と羽刀を瞬く間にはじき落とす。


ハト怪人「ああぁっ……! なんて奴だ!」

カラス怪人「怯むな! 撃て! 撃てっー!!」


ウーミン「なんの!」カキッカキンッ


怪人どもの乱れ撃ちを苦もなくいなし、ハト怪人へと真っ直ぐ攻め進む。


ハト怪人「ひい!! 来るな! 来るな~!!!」




  ザシュ!!



一閃。ウーミンの一太刀がハト怪人を切り裂く。


カラス怪人「ハトおぉぉぉ!!!」


ハト「くるっぽ~」


カラス怪人「なんてこった、ハトの野郎がただのハトに戻っちまった」

ウーミン「次はあなたです。雪穂と亜里沙に手を出したことを後悔させて差し上げます」ギロリ

カラス怪人「ひっ……!!」ガクガク


リン「ウーミンウーミン! ちょっと待つニャー☆」

ウーミン「……って、またですか。もう決着がつくところでしたのに。 今度は何です?」


カラス怪人(何だか知らんが助かった。今のうちに離れておくか……)コソコソ


リン「ウーミンにはもう一個武器があるからそっちも使ってみるニャ☆ 実戦練習ニャー!」」

ウーミン「え? でも慣れない武器をいきなり使うのは……」

リン「初めてなのにラブ・ブレードをあんなに使いこなしてたのに何言ってるニャ。それにあの怪人弱っちいから心配ないニャ☆」

ウーミン「それもそうですね」


カラス怪人(あいつら俺を舐めやがって、こうなったらあの技を使ってやる。奴らが目を離してる隙に魔力を溜めてと……)シュゥゥ!!


リン「ラブ・アローって唱えるニャー☆」

ウーミン「わかりました……! ラブ・アロー!」


ラブ・ブレードが光を放ち、今度は長弓の形になる。


リン「それで敵を撃つんだニャー!」

ウーミン「それ言われましても……あの、矢がないのですが」

リン「それは魔力を変換して作るんだニャ。矢が実際にそこにあるって風にイメージしてみてニャ☆」

ウーミン「はい!」


精神を集中させて矢の形を思い浮かべる。脳裏で矢を想像した途端、右手に形を成した矢が実際に現れる。


ウーミン「これが……」

リン「それであいつを撃つニャー!」


カラス怪人「はんっ!てめえら、その余裕もここまでだ! 俺の取って置きを喰らえ!」


カラス怪人「フェザー・ストーム!!」

※『フェザー・ストーム』(全身の羽毛を刃に変えて一斉に放つ。撃った後は丸坊主になるので、再び羽が生えてくるまでは技が使えなくなる)


舞い散る何十何百もの黒き羽刀。斬撃の嵐がウーミンを襲う。


ウーミン「くっ……! これではさすがに避け切れない……!」

リン「ウーミン、撃つニャー! 『ラブ・アロー・シュート』って叫びながら撃つニャ!!」

ウーミン「ええっ!? なぜそれを!? なぜ叫ぶ必要が!?」

リン「掛け声をかけると矢の威力がアップするニャ!早くしないとこっち来ちゃうニャ!」

ウーミン「は、はい!」

ウーミン「……」コホンッ




ウーミン「ラブ・アロォー・シュゥゥーート!!」



光り輝く矢が放たれる。濃密な魔力のオーラをまとい唸りをあけながら突き進む。いとも容易く黒い嵐をかき消し、残りは丸裸の敵のみ。


カラス怪人「なんだとっ!? 俺の切り札がっ……ぐぎゃぁぁぁああ!!!」


怪人に突き刺さり爆発、轟音。立ち昇る砂煙がゆらめく。


カラス「ガァガァ!」


リン「やったニャー☆ ラブアロー魔法少女ウーミン、初勝利ニャ!」



< わぁー! 簡単にやっつけちゃった!

< 可愛いだけじゃなくって、とっても強い!

< ウーミン! ウーミン!



リン「みんなウーミンに歓声を送ってるニャー☆」

ウーミン「あぅ……/// こんなに皆に見られて///」

リン「さっきまでノリノリで魔法少女やってたのに何言ってるニャ☆」

ウーミン「それは、気分が高揚して……もうっ、敵を倒したんですから行きますよ!」

リン「あっ、待ってニャー。肩に乗せてってニャー」ピョンッ


………………


雪穂「亜里沙、大丈夫だった!? ケガはない!?」

亜里沙「……」ボケー

雪穂「亜里沙?」


亜里沙「ハラショー!!」


雪穂「わわっ!」ビクッ

亜里沙「ねえねえ、見た見た? バッーってやっつけちゃった!」

雪穂「う、うん。見てたよ。凄かったよね、助けてくれた魔法少女さん」

亜里沙「綺麗でカッコよかったなぁ……」キラキラ

雪穂「ははん……亜里沙、あの魔法少女さんのファンになっちゃったな。海未さんがいるのに」

亜里沙「むむっ、スクールアイドルと魔法少女は別だよ! それに魔法少女さんじゃなくて魔法少女ウーミンだよ!」

雪穂「はいはい」


雪穂(でも何だかあの魔法少女さん、海未ちゃんに似てたかも。亜里沙が好きになるわけだ)


………………


―音ノ木坂学院へと帰る道中


リン「空を飛ぶのって気持ちいいニャー☆」

ウーミン「あの……あのことをどうして知ってるのですか?」

リン「あのことって?」

ウーミン「ラブアローシュートのことです……」

リン「それはね、マスコットは契約した魔法少女の能力を知ることができるんだけど、その中に『ラブ・アロー・シュート』っていうのがあったんたニャ」

ウーミン「あっ……そうですか」ホッ

リン「それがどうかしたの?」

ウーミン「いっ、いえ、何でもありませんよ!」アセアセ

リン(ほんとは海未ちゃんがいつもラブアローシュートやってるの知ってるけど黙っとこ)


………………


―音ノ木坂学院・屋上


絵里「はい、今日の練習はこれでおしまい」

穂乃果「海未ちゃんと凛ちゃん、理事長室に行ったまま帰って来ないね」

ことり「うん……」

真姫「凛はともかく海未まで呼び出しなんて珍しいわね」

花陽「凛ちゃんだって、そんなには呼ばれてないよぉ……」

にこ「練習の直前に理事長から連絡があったわ。用があるならもっと早く言ってほしいわね」

ことり「ごめんね、にこちゃん」

にこ「いやっ、ことりのせいじゃないわ! ほらほら、そんな顔しないで! にっこにっこにー♪」

ことり「うん、ありがとう。にこちゃん♪」


ことり(そうだよね……お母さんが呼び出したんだから、海未ちゃんと凛ちゃんの間に何にもないよね)


希「おっ、さすがにこっち。ことりちゃんがあっという間に笑顔になったやん♪」

にこ「にこはスーパーアイドルなんだから、これくらい当たり前にこっ♡」

絵里「ふふっ、亜里沙も『にっこにっこにー』が大好きだって言ってたわ」

にこ「そうなの!? 亜里沙ちゃんにありがとって伝えてにこ♡」


ことり「……」


希(ことりちゃんの様子がおかしい……嫌な予感がするんよ)




次回予告!



見事、初陣を制した魔法少女ウーミン。次の敵は怪人……じゃなくてアンチ魔法少女!? かしこくてかわいい電撃がウーミンを襲う! 窮地に陥るウーミン、一体どうなってしまうのか!?


 第二話 『苦痛と快楽のビリビリ』に続く!


ウーミン「次回もラブアローシュートです!」

今回はここまでです。続きは、でき次第あげていきます。


………………


??「絵里ちゃん、マカロン作ってみたんだけど、食べてみてくれないかな」

絵里「ええ、もちろん。あなたが作るお菓子はどれも美味しいもの♪」

??「はい、どうぞ」

絵里「いただきます」パクッ

絵里「……」モグモグ

絵里「……!?」

??「ふふふ……梅入りマカロン美味しい?」

絵里「ん……!くっ……! 何でこんなこと……!?」

??「絵里ちゃん、私のためにアンチ魔法少女になって♪ おねがぁい♡」

絵里「あっ……! いやっ! いやぁぁあ……!!」


………………




第三話 『苦痛と快楽のビリビリ』




………………

 ―音ノ木坂学院・二年生教室、昼休み


ことり「あれ、海未ちゃんは?」

穂乃果「海未ちゃんならさっき出てったよ。どこ行くのって聞いてみたら『凛に用事があるので、そちらへ』だって」

ことり「……」

穂乃果「ことりちゃん?」


希「どうしたん、ことりちゃん? 元気出すやん♪」ワシワシ


ことり「ひゃんっ!!」

穂乃果「あっ、希ちゃんだー!」

希「おっ、穂乃果ちゃん」ワシワシ

ことり「の、希ちゃん/// ワシワシやめて///」

希「おおっと、ごめんごめん」パッ

ことり「うぅ……///」

穂乃果「二年生の教室に何か用事でもあるの?」

希「ちょっと人に会いになー」

穂乃果「もしかしてリリーホワイトのことで? 海未ちゃんなら凛ちゃんのとこに行ったけど……」

ことり「……」

希「いや、うちが会いに来たのはことりちゃんやん。なーんか調子が悪そうやったから」

穂乃果「そういえば、ことりちゃん昨日からちょっと様子が……」

ことり「えっ? そ、そうかなぁ。いつも通りだと思う、よ……」フラッ

穂乃果「わわっ、ことりちゃん危ない」ガシッ

ことり「ご、ごめんね。やっぱり調子が悪いのかな。ちょっと保健室に行って来るね」

希「うちらも一緒に行こか?」

ことり「ううん、大丈夫。そんなにはひどくないから」

ことり「じゃぁ、行って来るね」ガラッ



穂乃果「ことりちゃん、何だか無理してる気がする……」

希「そうやなぁ……穂乃果ちゃん、ことりちゃんに何かあったら教えてな」

穂乃果「うん!」


………………

 ―空き教室


海未「この部屋を自由に使っていいと許可を貰いました。魔法少女のこととか、人に聞かれるとまずい話はここでしましょう」

凛「魔法少女ウーミンの秘密基地だね」

海未「ええ、そんなところです。凛にも部屋の鍵を渡しておきますね。ただし、魔法少女にも学業にも関係ないものをここに持ち込んではダメですよ」

凛「大丈夫だよ!カップラーメンなんか持ち込まないよ!」

海未「……もし万が一見つけたら罰として40kmマラソンですからね」

凛「わ、わかってるよ!」

凛(絶対に持って来ないようにしよう)


海未「では、お喋りはここまでにして前回の戦いについての反省会をしましょう」

凛「反省会って言っても……前の戦いはウーミンの圧勝だったよ」

海未「いえ、ちょっと気になることが。ラブアローシュートを放ったときのことなのですが……」

凛「どうかしたの?」

海未「あれを撃ったとき、私の魔力が目に見えて減ったのです」

凛「ああ、それはね。ラブアローシュートの矢は自分の魔力から作るんだ。だから撃てる数に制限があるの」

海未「なるほど……無闇に撃たずに、ここぞというときに使う技なのですね」

凛「ラブアローシュートって凄く強いんだけどね。おいしい話はないってことかにゃ」

海未「ふむ……基本的にはラブ・ブレードによる接近戦で、それでは刃が立たない相手にはラブアローシュート、という風に戦いますか。実践的な剣術の鍛錬もしなくてはなりませんね。お父様に教えを乞いましょう」

凛「恥ずかしがらないで声援をたくさん受ける練習もねー」

海未「むぐっ……善処します」


………………

 ―廊下


??『何を悩むことがある。お前の望みを叶えてやるというのに』

ことり(そんなので恋を叶えるなんて、やだよ……)

??『さっきから当てもなく歩き続けて、そんなことをしてもどうにもならないぞ。魔法少女さえ倒せば思いを実らせてやる。やるべきことは一つだ』

ことり(うるさい! お願い黙って!)

??『おや? あれを見てみろ』



海未「では今日はこれくらいにしておきましょうか」

凛「何だか関係ないお喋りばっかりしてた気がするにゃ」

海未「戦いに関してはあまり話すこともなかったですからね。それに凛と二人だけで話すなんて珍しいですからついつい話し込んでしまいました」

凛「海未ちゃんのこといっぱい聞けて楽しかったなぁ。それにしても海未ちゃんがことりちゃんのこと好

海未「りっ、凛! やめてください///」ドンッ

海未「あっ、ぶつけてしまいすみま……



ことり「……」


海未「って、ことり!! 今の話聞いてなかったですよね!?」

ことり「二人とも中で何してたの?」

海未「へ?」

ことり「何してたの?」

海未「あっ、はい、凛と話をしてただけですよ」

ことり「何の話?」

海未「大した話ではないですよ」

ことり「大した話じゃないのにそんなとこに隠れてコソコソ話してたの?」

海未「え、えと……」

凛(ことりちゃんがこんな怖い顔するなんて……でも、何だか辛そう)

ことり「言えないようなことしてたの!?」

海未「こ、ことり、落ち着いてください」

ことり「うっ……」クラッ

海未「ことり! 大丈夫ですか!?」

ことり「ちょっとめまいがしただけだから……心配しなくても大丈夫だよ」

海未「大丈夫って……保健室に行きましょう。私も一緒に行きます」

ことり「ううん、一人で行けるから」

海未「いえ、心配ですから」スッ


ことり「触らないで!」


凛「……!」ビクッ

海未「えっ……」

ことり「大丈夫だから、ついて来ないで」

海未「……はい」

??(これは好都合、利用できるな)


…………


凛「ことりちゃん行っちゃったね」

海未「……」

凛「海未ちゃん?」

海未「うっ、うぅ……ことりに嫌われてしまいました」

凛「そ、そんなことないよ! たまたまことりちゃんの調子が悪かっただけだよ」

海未「そうですか……?」

凛「そうだよ! ことりちゃんが落ち着いたときに話し合ってみよう。きっと仲直りできるよ!」

海未「はい……」

凛(海未ちゃんとっても落ち込んでる。穂乃果ちゃんにも協力してもらった方がいいよね……)


………………


??『どこへ行っている。お前が向かうべきはそちらではなないぞ』

ことり(ことりは気分が悪いだけだもん)

??『保健室などとやらに行ってもどうにもならないぞ。あの二人、海未と凛と言ったか』

ことり(……)

??『私にかかればあの二人の仲を引き裂くのも簡単なことだ』

ことり(まだ二人が付き合ってるって決まったわけじゃないもん。それに恋人同士だったとしても、無理矢理仲を引き裂くなんて絶対に嫌)


??(くくくっ、だいぶ弱っているな。一時的なら体を操ることもできそうだ)


??『ほう、殊勝なことを言う。だがお前の本心は違うみたいだぞ』

ことり(えっ? どうして足がこっちに動いて……)

??『そうだ、お前が進むべき道はこちらだ。このままアンチ魔法少女の元に向かうぞ』

ことり(あなたことりに何かしたの!?)

??『お前の体が欲望に素直に従うようにしただけだ』

ことり(じゃ、じゃぁ……私の本当の気持ちは)

??『そうだ、それがお前の本当の姿だ』

ことり(やだ、やだよぉ)

??『認めろ、お前は自分のためなら仲間を利用する醜い人間だ』

ことり(いやっ! 止まって、止まってよ!)

??『お前には何もない。お前のことなんか誰も好きにならない。お前は私の力に頼ることしかできない』

ことり(や、やだ……あなたになんて頼らない)ググッ


??(こいつ……まだ抵抗する気か)


ことり(私が進むのはこっちじゃない)グググッ


??(仕方がない、魔力を使うしかないか)ズズズッ


ことり(うっ……足が、また動いて……)

??『それがお前の本心だと言ったろう? いくら否定しても醜悪な性根がなくなるわけではない』

ことり(そんな、やだっ、止まって!)


………………

 ―三年生教室


絵里「あら、ことりじゃないの。誰かに用事でもあるの?」

ことり「……」 (やだっ!絵里ちゃんを巻き込みたくない!)

絵里「ことり……?」

ことり「うん、絵里ちゃんに用があって来たんだ。ちょっとこっちに来て」 (用事なんてない! 絵里ちゃん、私の言うことを聞かないで)

絵里「ええ、いいわよ」


……


絵里「そういえば……朝練の後にもことりに呼ばれなかったけ?」

ことり「そうだったかな?」 (あのときも、こんな風に自由がきかなくて……)

絵里「私の思い違いかしら……?」


絵里「……」


絵里「ええと……だいぶ校舎の奥まで来ちゃったけど、まだかしら?」

ことり「うん、ここまで来ればいいかな」 (ダメ、絵里ちゃん逃げて!)クルッ

絵里「ことり……どうしたのよ、その顔。今にも泣き出しそうな……」

ことり「絵里ちゃん、お願いがあるの♪」 (逃げて逃げて!)




ことり「アンチ魔法少女に変身して、魔法少女をやっつけて♪ おねがぁい♡」


今回はここまでです。


………………

 ―空き教室

凛「ねっ、海未ちゃん元気出して!」

海未「はい……そうですよね! いつまでもくよくよしてても仕方ありません。案ずるより産むが易し、という言葉もありますし」

凛「その調子だよ!……ん? にゃにゃ!?」

海未「どうしました?」

凛「怪人の気配がするよ。あれ? でもこの感じ、ちょっと違うような……」


白鳥『二人とも聞こえる!?』


凛「わわっ!? いきなり大声でテレパシーしないでほしいにゃ」

海未「突然どうしたのですか? これから怪人退治をしますのに」


白鳥『その怪人のことよ! いや、実はあれは怪人ではないのよ』


凛「確かに、魔力の感じが怪人のとは違うみたい」


白鳥『今回現れたのはアンチ魔法少女よ!』


凛「えっ!?」

海未「アンチ魔法少女?」


白鳥『アンチ魔法少女っていうのは、魔法少女と対になる存在。わかりやすく言うと《ブラックバード版魔法少女》ってとこかしら。魔力が強大なブラックバードだけが生み出せるのよ』


凛「でも、まだ一日しか経ってないのに」


白鳥『ええ、本来ならありえない。今回のブラックバードはおそらく、今までの中で最も手強いわ』


凛「そんなのが相手なんて……」

海未「腕がなりますね!」

凛「えっ?」

海未「くよくよしたってしょうがない。そうでしょう?」ニコリ

凛「海未ちゃん……」

凛「うん!」


白鳥『まあ、例えアンチ魔法少女相手でも適正値100%の魔法少女なら負けることはないわ。でもブラックバード本人が出て来るかもしれないから用心はしといてね』


海未「はい! さっさとアンチ魔法少女をやっつけて、ことりとも仲直りです!」

凛「魔法少女ウーミン出撃にゃー!」


………………

 ― 一年生教室

真姫「あら、凛は?」

花陽「海未ちゃんのとこに行くって言ってたよ」

真姫「また? あの二人こそこそ何してるのかしら」

花陽「理事長先生から頼まれてるお仕事が長引きそうなんだって。海未ちゃんも一緒だから大丈夫だと思うけど……」

真姫「海未もたまにおかしなこと言い出すから安心できないわよ」

花陽「あはは……」


 『ピンポンパーン♪ 理事長室より緊急の連絡です』


真姫「緊急の?」

花陽「何だろう……?」


 『秋葉原大通りにてアンチ魔法少女が出現しました。午後からの授業は休講にします。皆さんの声援が魔法少女の活力の源です。ぜひぜひ応援に行きましょう!』


真姫「理事長、何言ってるのよ。意味わかんない」

花陽「魔法少女……!!」ガタッ

真姫「……!」ビクッ

真姫「急に大声出して、どうしたのよ」




にこ「花陽!! 今の聞いた!?」ドアバーン



花陽「はい!」

真姫「って、にこちゃん!? もっと静かに入ってきなさいよ、恥ずかしいじゃない!」

にこ「何よ!? 魔法少女よ、魔法少女!」

真姫「魔法少女がどうしたのよ?」

花陽「魔法少女はみんなの声援を受けながら敵に立ち向かうんです」

にこ「その姿はアイドルに通じるものがあるわ。前の戦いは見逃しちゃったけど、今度はちゃんと応援できそうね!」

花陽「真姫ちゃんも一緒に行く?」

真姫「私はどっちでも……」


ことり「真姫ちゃん、ちょっといい?」


花陽「あっ、ことりちゃん」

にこ「ことりも魔法少女のことで来たの?」

ことり「う~ん、ちょっと違うかな」

真姫「そりゃそうでしょ。花陽やにこちゃんじゃないんだから」

花陽「じゃ、じゃあ、にこちゃんと二人で行ってくるね」

ことり「ごめんね、花陽ちゃん、にこちゃん」

にこ「いいのよ、用事があるんだったら仕方ないもの。それじゃ行くわよ、花陽!」

花陽「はい!」




ことり「ごめんね、真姫ちゃんも一緒に行きたかったよね」

真姫「私は別に……そりゃ少しは興味があるけど」

ことり「ふふっ♪」

真姫「って! それより、用事があるんでしょ? さっさと済ましちゃいましょ」

ことり「うん、こっちに来て……うふふ♪」


………………

 ―秋葉原大通り


エリチカ「ハラショー! エリチカ公爵のお通りよ!」

マトリョシカ怪人「ズドラーストヴィチェ」


< あれって噂になってる魔法少女じゃない?

< おとものマスコットキャラってあんなだっけ? なんかいっぱいいるし……

< 猫って聞いてたんだけど……あれじゃマトリョシカに手足が生えた化け物じゃない

< 私が見た魔法少女ちゃんと違う……


エリチカ「違ーう! 魔法少女なんかじゃないわ。私はアンチ魔法少女、エリチカ公爵よ!」


< アンチ魔法少女? 何それ?

< 魔法少女の敵ってことなのかな?


エリチカ「そのとーり!総統に仇なす憎き魔法少女を倒すのが私の使命!」

マトリョシカ怪人「ニェットニェパニャートナ」

エリチカ「行きなさい、マトリョシカ怪人。秋葉原を地獄に変えて奴をおびき出すのよ!」

マトリョシカ怪人「ウラー!!」ババッ


< ひっ! こっち来る!?

< 手足がムキムキ!? こいつら気持ち悪い!

< に、逃げないと!


エリチカ公爵「ほらほら、もっと必死になって逃げないと捕まっちゃうわよ」

マトリョシカ怪人「ウーラー!!」ダダッ


< きゃー!!

< 足めっちゃ速い!?

< 捕まりたくない!




??「待ちなさい悪党ども! 狼藉はそこまでです!」



< ビルの上に誰かいるよ!

< あっ、あれって!?

< 魔法少女ウーミン!!



にこ「ぜぇ……はぁ……間に合ったみたいね」

花陽「ふぅ……はぁ……前の戦いは見逃しちゃったから、よかったです」



エリチカ「出たわね、魔法少女! マトリョシカたち、やってしまいなさい!」

マトリョシカ怪人「ハラショー」ビョィン


鍛えあげられた脚から繰り出される跳躍力。マトリョシカ怪人たちがウーミンへと襲いかかる。


ウーミン「いざっ!」


ビルから飛び降り、臆することなく怪人たちに正面からぶつかっていく。


ウーミン「ラブ・ブレード!」

マトリョシカ怪人「ダスヴィダーニャ!」ズバッ


ラブ・ブレードで一刀両断。斬り捨てられた怪人は断末魔をあげ、鈍い音を立てて地面に激突する。


ウーミン「はっ! せいっ!」

マトリョシカ怪人「ヤラーニェン!」バサリッ

マトリョシカ怪人「パカー!」ズバッ


エリチカ「ちょっとちょっと! もう少し頑張りなさいよ!」

リン「弱っちいニャ☆」

エリチカ「うるさいわよ! マスコットは黙ってなさい!」



< もっとやっちゃえー!

< かっこいい♡

< ハラショー!


花陽「これが魔法少女……凄い人気です!」

にこ「立ち回りが美しいわ。まるで踊ってるみたい」

花陽「かっこいい系の魔法少女だねっ!」

にこ「私たちも声援を送るわよー!」

花陽「はい!」

ウーミン「邪魔です! 退かぬば斬ります!」

マトリョシカ怪人「パマギーチェ!」ズシュ


行く手を遮る怪人どもをバッサバッサとなぎ倒す。ウーミンが狙うはただ一人、アンチ魔法少女!


ウーミン「次はあなたです」ギロリ

エリチカ「ひっ……! マトリョシカたち、あいつを止めなさい! 鉄壁戦法よ!」


マトリョシカ怪人「パニャートナ!」


ウーミンの目の前に怪人が集まり、マトリョシカの壁となって立ち塞がる。


ウーミン「無駄ですっ!」

マトリョシカ怪人「パマギーチェ!」バサッ 「ヤラーニェン!」ザシュ 「ダスヴィダーニャ!」ズバッ


目にも留まらぬ速さで怪人を払い斬る。怒涛の猛攻にマトリョシカの壁はあっという間に崩れさる。跡には倒れ込んだ怪人の死屍累々。


マトリョシカ怪人「パカー!」ザシュッ

ウーミン「今ので最後です。あなたを守るものはもうありません、覚悟なさい!」チャキッ

エリチカ「くっ……あまり私を舐めない方がいいわよ。喰らいなさい、『KKサンダー』!」

※『KKサンダー』(指先から電撃を射出する。その電撃は術者の思い通りに動かせる。主人の言うことをよく聞く愛犬のような、まさに『かしこいかわいいサンダー』である)


真っ直ぐに飛んで来る電撃。ウーミンを苦もなくそれを捉えて刀を振りかざすが……


ウーミン「むっ……!」

エリチカ「ふふっ」ニヤリ


突如、雷光はその軌道を変えてウーミンの側面に回り込む。


ウーミン「なんのっ……!」


手首を回転させ、横払いに電撃を斬り落とす。


エリチカ「ふんっ、なかなかやるじゃない。でも、これならどうかしら!」


両手から放たれる十もの雷撃。ぐにゃりぐにゃりと生き物のように曲がりくねりウーミンに襲いかかる。


ウーミン「そんな単純な動きでは……はっ!」


ひと振りで三つの雷をかき消す。数度刀を振るうだけで雷の嵐は消え去ってしまう。


ウーミン「私を捕らえることなどできません」


エリチカ「な、何よそれ! あなた魔法少女でしょ!」

リン「魔法少女(物理)だニャ☆




< つ、強い! 相手を圧倒してる!

< ウーミンさん、かっこいい♡

< ハラショー!!


花陽「バン! バン! バーン!ってあっという間に……!」

にこ「凄い……凄いわ! これが魔法少女……!」ゴクリ



エリチカ「くぅぅっ……! こうなったらもうやけよ! KKサンダー!」


乱れ飛ぶ雷。だがそんなものは何の障害にもならない。


ウーミン「くどいっ!」


勢いよく踏み込み、猪突猛進。雷の束に飛び込む。


ウーミン「はっ……!」


電撃を斬り捨てながら、速度を落とすことなく突き進む。


エリチカ「KKサンダー! KKサンダー!」


雷を放ち続けても悪あがきにしかならない。二人の距離はぐんぐん詰まる。
もはや勝負あり、誰もがそう思ったとき、




パキィ



ウーミン「……!」


雷を斬り払った瞬間、刀身が真中からぽきりと折れる。


エリチカ「今よ……! KKサンダー!」

ウーミン「くっ……!」


無防備になってしまい、横に跳んで避けようとするが、


マトリョシカ怪人「ウラー!」ガシィ

ウーミン「……っ!」


倒れていたはずの怪人が跳び起き、ウーミンに掴みかかる。動きを封じられたウーミンを容赦なく敵の猛攻が襲う。


ウーミン「うぐっっ……!!」ビリビリ

エリチカ「もういっちょ、KKサンダー!」

ウーミン「あぅぅうっ……!!」ビリビリ


リン「ウーミン!」

エリチカ「マトリョシカ、ハラショーよ!」

マトリョシカ怪人「ハラショー!」

リン「なんで!? 怪人は倒したはずなのに!」

エリチカ「ふふっ♪ マトリョシカたちは体が小さくなる代わりに、五回までやられても大丈夫なのよ。倒れてから回復するのに時間がかかるのがちょっと難なのだけれどね」

リン「ふにゃ!? そういえばさっきよりもちっちゃくなってるニャ!」

マトリョシカ怪人「ドーブラエウートラ」

ウーミン「くっ……ラ、ラブ……」

エリチカ「おっと、そうはさせないわよ。KKサンダー!」

ウーミン「あぐぅぅう……!」ビリビリ

エリチカ「あの程度の数を受け止めただけで武器が壊れちゃうなんて、あなた身体能力は化け物級だけど魔力は大したことないわね」

ウーミン「うっ……かはっ、ラブ……」

エリチカ「KKサンダー!」

ウーミン「あぁぁぁっ……!」ビリビリ

エリチカ「あきらめが悪いわね。しゃべれなくなるまで痛めつけてあげるわ。たっぷりと味わいなさい、KKサンダー!」

ウーミン「ぐっ……あぐっ……!」ビリビリ


全身を電流でいたぶられる。痛みのあまり溢れ出す悲痛な声。


ウーミン「がっ……! あぁっ……!」ビリビリ


なんとかしてその場を逃れようとするが、体が痺れ手足をただ震わすことしかできない。

エリチカ「ほらほら、どんどん行くわよ。KKサンダー!」

ウーミン「うっ……あっ……」ビリビリ


呻き声さえ弱々しくなる。体を支えることができなくなりその場に崩れ落ちる。だが追撃の手は緩まない。


エリチカ「KKサンダー!」

ウーミン「かはっ……」


筋肉が痙攣し、ろくに呼吸もできない。力なくその場にへたり込み、その表情にはもう戦う意志など見えない。

エリチカ「ふふっ、これぐらいで十分かしらね。マトリョシカ、ショーを始めるわよ」

マトリョシカ「ハラショー!」グイッ

ウーミン「ぐっ……」


ウーミンの髪を掴んで強引に立ち上がらせる。さらに後ろから羽交い締めにして、がっちりと拘束する。


エリチカ「ふふっ♪」サスリ


エリチカ公爵が近寄って来て、愛でるようにウーミンの頬を撫でる。


エリチカ「よく見ると綺麗な顔してるじゃない……今からその顔をたっぷりと歪めてあげるわ♪」

ウーミン「くっ……」



エリチカ「魔法少女公開陵辱ショーの始まりよ!」



今回はここまでです

マトリョシカ怪人「ハラショー!」 「ハラショー!」 「ハラショー!」


いつの間にやら復活していた怪人たちが一斉に歓声をあげる。



< 魔法少女公開陵辱ショー!?

< 見たいけど、見たくない!

< 公衆の目前で何てことを!


花陽「あわわ……どうしましょう」

にこ「これも魔法少女の宿命……最後まで見届けるわよ

エリチカ「ふふっ♪ まずは、と……」


ウーミンの前襟に手をかけて一気に引きちぎる。無惨にも衣装の前が破り取られる。


ウーミン「くっ……よくも……この衣装はことりの」

エリチカ「ふんっ!」


エリチカ公爵の拳が腹部にめり込む。


ウーミン「かはっ……!」


エリチカ「衣装なんかより自分の心配をした方がいいんじゃないかしら?」

エリチカ「それにしても……体も引き締まってて、とても綺麗……」


ウーミンの脇腹を愛おしそうにさする。


ウーミン「うっ……や、やめなさい」

エリチカ「やめないわよ、ここからが本番ですもの」

エリチカ「そこのマトリョシカ二人、ちょっとこっちに来なさい」

マトリョシカ怪人「ダー」「

エリチカ「足を広げてあげなさいっ♪」


怪人たちがウーミンの足を一本ずつ抱えて担ぎ上げ、その両足を左右に開き広げる。


エリチカ「スカートが邪魔ね……取っちゃいましょう♪」


スカートが破り取られ、開脚されたままの姿でショーツが剥き出しになる。

ウーミン「うっ……こんなっ……!」


屈辱敵な姿に見る見る顔が赤らむ。逃れようと気力を振り絞りジタバタと暴れて抵抗する。だが、後ろからも羽交い締めにされガッチリと三人がかりで固定されているので、それは徒労にしかならない。


ウーミン「離してっ……離しなさい!」

エリチカ「暴れちゃダーメっ♡」ビリッ

ウーミン「あぁぁっ……!」ビリビリ

エリチカ「下も脱がしてあげるわね♪」

ウーミン「や、やめて……それだけは」


ショーツに手をかけて一息にもぎ取ろとした、その時……



リン「ウーミンをいじめるなー!!」


エリチカ公爵目がけてリンが飛びかかる。


エリチカ「KKサンダー」

リン「ふにゃぉぉん!!」ビリビリビリ

リン「ふにゃぁ……」バタンキュー


だが電撃で軽くいなされ、気を失って倒れ込む。


ウーミン「リン!」

ウーミン「くっ……! ラブブレ……

エリチカ「しつこいわよ」ビリッ

ウーミン「うぐっ……」ビリビリ

エリチカ「あら、まだ抵抗する気力が残ってたみたいね……もうちょっと痛めつけてあげる必要がありそうね」ビリッ

ウーミン「あぐっ……!」ビリビリ

エリチカ「ふふふっ♪」ビリ

ウーミン「あっ……うっ……」ビリビリ


何度も何度も放たれる電撃。雷鳴と苦悶の声が交互に響く。


ウーミン「もう……やめて……」


度重なる責め立てに、全身の力が抜けて四肢はブラリと垂れ下がり、目も虚ろに懇願の声を繰り返す。

エリチカ「逆らうからそうなるのよ。おとなしくしてればもうビリビリはやめてあげるわ……わかった?」

ウーミン「……」

エリチカ「返事はなし……まあいいわ、続きを始めましょう」

エリチカ「ブラも邪魔だから取っちゃいましょうね♪」


上の肌着を剥ぎ取られ、ウーミンの乳房が露わになる。


ウーミン「くっ……///」

エリチカ「ふふっ、胸は慎ましいのね♡」


エリチカ「さて……いい加減始めないとね。観衆の皆さんをあまりお待たせしちゃダメだわ」


そう言うと、指をバチバチと放電させる。



< 何をする気なの!?

<もしかして、魔法少女ちゃんの敏感なとこを電気責めにする気じゃ……



エリチカ「そう、その通りよ。そこの子正解、いちハラショーあげちゃうわ」

ウーミン「うぐっ……」

エリチカ「あら、そんな怯えた顔しなくても大丈夫よ。今度は痛いビリビリじゃなくて、気持ちいいピリピリをしてあげるんだから」


ポケットから小瓶を取り出す。その中には怪しげな液体。


エリチカ「口を開けなさい、飲ませてあげるわ」

ウーミン「嫌です……そんな得体の知れない物など」

エリチカ「嫌なの……?」


見る見る不満げな表情になり、両手をバチバチと鳴らして威圧する。


ウーミン「ひっ……!」


感電の痛みと恐怖が脳裏によぎり、思わず口が開いてしまう。


エリチカ「そうよ、いい子ね。素直に言うことを聞く子は好きだわ♪」


ウーミンのあごに手を添え上を向かせ、小瓶の中身を注ぎ入れる。


エリチカ「ちゃんと全部飲み込むのよ」

ウーミン「……」ゴクリ

エリチカ「えらいえらい♪ いい子のウーミンちゃんには、ご褒美をあげちゃうわ♡」

指先から二筋の光が発せられ、ウーミンの両胸の突起に達する。


ウーミン「うっ……」

エリチカ「ふふっ♪ 気持ちいいかしら?」

ウーミン「こんなの、全然気持ちよくなんてありません!」

エリチカ「その強がりも時間の問題よ」

ウーミン「いい加減なことを……」

ウーミン「んっ……」


突如ぞわぞわとした感覚が走り、無意識に身をよじる。


エリチカ「あら、さっき飲ませたのがもう効いてきたのね」

ウーミン「くっ……一体、何を飲ませて……」

エリチカ「媚薬よ、あなたがよがる姿を皆に見てもらおうってわけ♪」

ウーミン「そんな薬なんかに……私は負けません!」

エリチカ「うふふっ♡ その強がりもいつまで持つかしらね」


話している間にも昂奮が内から湧き出す。身体が熱を帯びて、肌がじわりと汗ばむ。


ウーミン「んっ……ふっ……」


甘い吐息が漏れる。ビリビリとした痺れが快感に変わり、それはますます大きくなっていく。胸の突端の、神経が集まった部分を責められ続け身をくねらせる。


ウーミン「くっ……んんっ!」


ついには声まで溢れ出る。凛とした表情はもう無くなり、顔が緩み目付きはとろけ始める。


エリチカ「あんな威勢のいいこと言ってたわりには、もうこんなになってるじゃない♡ ふふ、こっちにもあげるわね♪」


さらにもう一本光を放ち、ウーミンのクリトリスを刺激する。


ウーミン「ひゃんっ♡」


艶めかしい声が思わず口をついて出る。

エリチカ「あらあら♪ 可愛いらしい声……あの勇ましい魔法少女はどこ行っちゃったのかしら」

ウーミン「んっ♡ くっ……♡」


快楽がどんどん大きくなる。体の内が強く蠢く。


ウーミン「んんっ……あっ♡」


何とか湧き上がるものを抑えようとする。しかし、喘ぎ声が自然に漏れてしまう。


エリチカ「我慢しないで、快楽に身をゆだねなさい。それっ♪」ピリッ


ウーミンの両耳に電撃を走らせる。


ウーミン「ひっ♡ だめっ♡ ああっ……♡」


甲高い嬌声、悦楽が一気に押し寄せる。


エリチカ「ウーミンちゃんは耳が弱いのね、ふふっ♡」

ウーミン「あ……♡ う……♡」


理性のタガが緩み、悦楽の衝動にされるがままになる。とろけた表情で、湿った息を吐きながら、淫らに喘ぐ。


ウーミン「あっ♡ あ♡」

エリチカ「そんなに気持ちよさそうにしちゃって……みっともない顔ね♪ 薬なんかに負けないんじゃなかったの?」

ウーミン「まだ……んっ♡ 負けたわけ、ひゃん♡ あっ……♡ ああっ♡」

エリチカ「もう呂律もろくに回ってないじゃない。こんな大勢の人に見られてるっていうのに……ふしだらな子ね♡」




< ウーミンがあんな顔するなんて

< 辱しめにあってるウーミンさん……いいかも♡

< 魔法少女は凌辱される運命なの!?

< こんなの、ハラショーだけどハラショーじゃないよ!



ウーミン「やっ、やだ♡ 見ないで♡」

エリチカ「そんなとろけ切った顔で、何言ってるのかしら? ほんとは皆に見られて感じちゃってるんでしょ、淫乱魔法少女ちゃんっ♪」

ウーミン「ちがっ♡ ひゃっ♡ んんっ……♡ あ♡ ああっ♡」

エリチカ「もう限界ね……皆に見られながらそのままイッちゃいなさい♡」

ウーミン「やっ……♡ あっ♡ んっ♡ んん……♡♡」


衆人環視の中で絶頂を迎える。頭の中が真っ白になる。
焦点の定まっていない恍惚とした顔。快楽のよどみに浸かり切った痴態をさらけ出す。



< あの凛々しいウーミンがこんな姿になっちゃうなんて

< すごく気持ちよさそう……私も変な気分になっちゃう♡

< うぅ……ウーミンが、ウーミンがぁ……

< わっ!? 亜里沙が倒れた!



エリチカ「無様ね……でも、怖い顔して戦ってるよりも、こっちのあなたの方がずっと魅力的だわ♡」

ウーミン「あっ……♡ ん……♡」


ゆっくりと引いて行くオーガズムを味わうことで頭がいっぱいで、エリチカ公爵の言葉はもはや届いていない。


エリチカ「完全に出来上がっちゃったみたいね。もっと遊んでいたかったのだけれど、これじゃもういじめ甲斐がないわ……終わりにしましょう」


電を放つのを止めて、自身の両手に帯電し始める。パチパチと火花が散り、段々と大きな音を立て始める。


エリチカ公爵「フルチャージのKKサンダーを味わわせてあげる……そうね、敏感な部分に撃ったらどうなっちゃうのかしら? きっと変身が解けちゃうでしょうね♪」

ウーミン「う……♡ あ……♡」




< ウーミンの正体をバラす気なの!?

< そんなの魔法少女のルールに反するわ!

< そだそだ!



エリチカ「それがどうしたの? 私は“アンチ”魔法少女なのよ。魔法少女のルールに反する……? そんなの知ったこっちゃないわ!」



< くっ……なんて言いぐさなの

< アンチ魔法少女だか知らないけど、魔法少女を相手にしてるんだからルールを守れー!

< こんなに辱しめて、しかも正体までバラすなんて……鬼畜!


にこ「あいつ……」

花陽「にこちゃん!」

にこ「ええ、行くわよ!」



エリチカ「ふふん、文句があるんだったら止めてみなさい……マトリョシカたちがお相手するけどね♪」



< こらー! ウーミンから手を放しなさーい!

< そうですっ! ルール違反はダメです!



エリチカ「あら? 無謀な子たちがいたものね。一体どんな子なのかしらね」クルッ

にこ「あんたみたいな悪い魔法少女は、このにこにーにこちゃんが許さないわ!」タタタッ

花陽「私だって許せません!」タタタッ

エリチカ「……!」

エリチカ(あれって……にこと花陽? あれ?私、こんなところで何して……って、私? 私ってエリチカ公爵よね? ん……頭が、痛い……)

エリチカ「うぅ……」クラクラ

マトリョシカ怪人「?」オロオロ

ウーミン「うぅ……」ズルリ


にこ「マトリョシカたちの拘束が緩んだ!」タタタッ

花陽「今がチャンスですっ!」タタタッ


にこ「ウーミンを放しなさい」ドンッ

マトリョシカ怪人「バリートゥ!」ズテッ 「ハラショッ!」ドテンッ 「プローハ!」ステンッ

花陽「ウーミンさんこっちです!」グイッ

ウーミン「うっ……あっ……」フラフラ


エリチカ「うっ……私は……一体……誰?」クラクラ

マトリョシカ怪人「??」オロオロ



リン「ふにゃ!」ビョンッ


花陽「あっ……! 猫ちゃん起きたみたいだよ」

ウーミン「うっ……リン、大丈夫ですか?」

リン「にゃにゃ!? ウーミンの方が大変なことになってるニャ!」

にこ「ほとんど裸だものねぇ」

リン「取りあえず服を元通りにするニャー!」


ウーミン「はいっ」ピカー


花陽「ウーミンさんが光って……!?」

にこ「まぶしくて何にも見えないわ。これって、変身シーンでよくあるやつよね。初めて生で見たわ!」

リン「これでばっちりニャ☆」

ウーミン「ありがとうございます。ところで、敵は……?」クルッ


エリチカ「私は……私は……」クラクラ

マトリョシカ怪人「シトースヴァーミ?」オロオロ


ウーミン「あれは……一体?」

リン「よくわかんないけど、チャンスみたいだニャ! ウーミン、ラブアローシュート!」

ウーミン「はい! 二人とも危ないの離れてくださいね」

花陽「はいっ!」タタッ

にこ「わかったわ!」タタッ


ウーミン「ラブ・アロー!」


弓が具現化する。さらに左手に意識を集中させて魔法の矢を形作る。


ウーミン「敵は……」


弦を引き絞り、アンチ魔法少女に狙いを定める。


マトリョシカ怪人「!」


ウーミンの射抜くような視線に怪人の一人が気づく。慌ててエリチカ公爵を背に担いで猛ダッシュ、一目散に逃げ出す。


ウーミン「……」ススッ


動じることなく、再度目標を補足する。統制を失ったマトリョシカたちはオロオロするばかりで、守りに付こうとする者は誰もいない。




ウーミン「ラブ・アロォ・シューート!!」



閃光と共に放たれる一撃。轟音を響かせながら激進する魔力の塊が敵を撃ち抜こうと……その時!


??「……」バッ


目にも留まらぬ速さで、射線に割り込む人の影。


??「ナイト・ヘロン」


何者かの右手より撃ち出される光束。それによりウーミン渾身の一撃はあっけなくかき消されてしまう。


ウーミン「何者っ……!?」

リン「あ、あれは……!」

??「ふふふっ♪」




リン「ブラックバード!!」



??「それはちょっと違うかな。ブラックバードさんは私のとさかに憑いてる人だよ。私はコトリーヌって言うんだっ♪」

コトリーヌ「今日はご挨拶だけにしておくね。エリちゃんを送らないといけないしね」クルッ

コトリーヌ「エリちゃん、帰るよ♪」スタスタ

ウーミン「あっ、待ちなさい! 逃げるのですか!?」

コトリーヌ「逃げる……?」ピタッ

コトリーヌ「逃げるんじゃなくて見逃してあげるんだよ♪ ねぇ、ウーミンちゃん……私に勝てるって本気で思ってるの?」

ウーミン「……!」ゾクッ

ウーミン(くっ……気圧されてどうするのです!?)

ウーミン「ラブ・ブレード!」


気を取り直して武器の名を叫ぶも刀は出てこない。


ウーミン「どうして……?」

リン「ウーミン、魔力切れニャ。ここは敵の言うことを聞くしかないみたいニャ」

ウーミン「むぐっ……」

コトリーヌ「じゃぁね♪ またすぐ会えるから楽しみに待っててね♡」


そう言い残し、エリチカ公爵をおぶった怪人と共に戦いの場を後にする。おろおろと戸惑っていたマトリョシカ怪人たちもその後に付いていく。
後に残されたのはウーミン、リン、そして観衆たち。



< 敵っぽいのどっか行っちゃったね

< つまり、撃退したってこと!?

< 魔法少女ちゃん、よく頑張ったよー!

< ハラショー! ウーミン、ハラショー!

< 亜里沙、意識が戻ったばっかなんだから、そんなに動いちゃダメ!



リン「みんなもウーミンの健闘を讃えてるニャー! こんなにたくさんの人が応援してくれたんだニャ☆」

ウーミン「本当に凄い人の数……あっ/// さっき私、あんな淫らな姿をこんなに大勢の人の前で……/// 破廉恥ですっ……!」シュバッ

リン「にゃ!? ちょ、ちょっと、置いてかにゃいでニャー!!」タタタッ


花陽「にこちゃん……」

にこ「言いたいことはわかるわ、花陽。ウーミンはコトリーヌって奴の足元にも及んでなかった……」

花陽「アンチ魔法少女にも……」

にこ「ええ、たぶんウーミンよりエリチカとかいう方が強い」

花陽「私たちがウーミンさんにできることは……」

にこ「……精いっぱいの応援よ!」

花陽「はいっ! あっ……でも、今日は戦いに割り込んじゃったね」

にこ「ルールを破る方が悪いのよ。でも正直、怖かったわ……今頃になって震えが来たわ」

花陽「体が勝手に動いちゃったもんね……アンチ魔法少女の様子がおかしくなっちゃったおかげで助かりました」

にこ「急にどうしたのかしらね? まっ、おかげでウーミンを助けられたんだし、結果オーライってとこね」

花陽「それにしても、生で見る魔法少女、カッコよかったです……次も応援に行こうね!」

にこ「もちろん!」

………………

…………

……


エリチカ「うっ、うぅ……ここは?」

コトリーヌ「あっ、エリちゃん正気に戻ったんだ♪」

エリチカ「コ、コトリーヌ総統!? すみません、お手をわずらわせてしまって……」

コトリーヌ「うぅん、気にしないで。私の大切なアンチ魔法少女ちゃんのためだったら、こんなの何てことないよ」

エリチカ「総統……!」ジーン

コトリーヌ「あそこまで追い詰めたんだから、エリちゃんはよくやったよ♪」

エリチカ「でも、今回はしくじってしまって……次こそは必ず!」

コトリーヌ「う~んとね……今度は私がお相手してみようと思うんだ」

エリチカ「総統みずからっ!?」

コトリーヌ「ごめんね、エリちゃんももっと魔法少女ちゃんと遊んでみたいんだろうけど……」

エリチカ「いえいえ、そんな! 総統の手にかかればあの魔法少女もおしまいですね」

コトリーヌ「あとね、新しくマキちゃんって子を仲間にしたんだ。頭脳派のアンチ魔法少女ちゃんだよ♪ お暇なときでいいから、マトリョシカ怪人さんたちを改造しにもらいに行ってね」

エリチカ「はい! 善は急げと言うますし、早速行って来ますね」タタッ

コトリーヌ「行ってらっしゃーい♪」フリフリ


コトリーヌ(ふふっ♪ ウーミンちゃんかぁ……いっぱい苦しめてあげるからね♡ 今から楽しみだなぁ♡)



次回予告!



辛くもアンチ魔法少女を撃退したウーミン! しかし休む暇はない! 悪の親玉、コトリーヌ総統との一騎打ち! 力の差は歴然、ウーミンはどう立ち向かう!?


第三話 『血みどろ陵辱ショー』へ続く!


コトリーヌ「次回も魔法少女マケミンちゃんをお楽しみにねっ♪」

今回はここまでです。次の更新は少し遅くなりますがご了承くださいませ

 ―理事長室


コンコン


理事長「入ってらっしゃい」

凛「失礼します」ガチャリ

理事長「ホワイトバードさんからお話があるみたいなの」

白鳥「昨日の戦いについてよ」

凛「あぁ……あのアンチ魔法少女のことですね。もうちょっとでやっつけられたのにブラックバード本人が来るなんて、惜しかったなぁ」

白鳥「凛……気づいているんでしょう?」

凛「……」

白鳥「ウーミンは魔力が低すぎるわ。あそこまで追い込めたのは元々の身体能力が高かったから……魔法による身体強化が弱くても大丈夫だったってだけ」

凛「でも……ラブ・ブレードが壊れる前にやっつけてれば勝てたよ!」

白鳥「その武器が弱すぎるのよ、魔力不足のせいでね。今度は相手も対策をしてくるはず……勝てる見込みはゼロに近いわ。ましてや、ブラックバード相手なら手も足も出ないでしょうね」

凛「……」

白鳥「適正値100パーセントの魔法少女にしては弱すぎるのよ」

白鳥「ねえ、凛……本当に100パーセントだったの? 見間違いじゃなかったんじゃないの? 次の魔法少女を増援できるようになるまでは時間がかかるのよ。あんな弱い魔法少女じゃ……」

理事長「ちよ、ちょっと! あなたね……」


凛「違うもんっ!!」


白鳥・理事長「……!」ビクッ


凛「見間違いなんかじゃない! 海未ちゃんは強いだもん! あんなに頑張ってる海未ちゃんが弱いはずなんてないよ!」


理事長「り、凛ちゃん、落ち着いてね?」

凛「……すみません。失礼します」


ガチャン


理事長「……」

白鳥「……」

理事長「あなたねぇ……焦る気持ちはわかるけど、言い方ってものがあるでしょう」

白鳥「反省するわ……」シュン


理事長(ウーミンの魔力が低いのは確か。でも、凛ちゃんは意外としっかりしてるから見間違えたとは思えない……本来の力を発揮できない、何らかの理由があるのかしら?)




第三話 『血みどろ陵辱ショー』



……話は、ホワイトバードとブラックバードが地上に降りて来たときまで遡る


 ―音ノ木坂学院・二年生教室


先生「えーと、サヨナキ鳥は英名でナイチンゲールと言い……」


海未「……」カキカキ

ことり「……」チラチラ


穂乃果(ことりちゃん、さっきから前の海未ちゃんの席、覗き見してる……何だろう?)


ことり(真剣な顔して授業受けてる海未ちゃんもカッコいい♪)ヤンヤンッ♡


シュンッ


ことり「……!?」ビクッ

ことり「う……」クラッ

穂乃果「どうしたの、ことりちゃん? 気分でも悪い?」

ことり「ううん……大丈夫だよ」

海未「ことり」クルリ

海未「無理しない方がいいですよ、声が弱々しいです。顔も少し青ざめて……穂乃果」

穂乃果「うんっ」


穂乃果「せんせーい! ことりちゃんが調子悪いみたい」

先生「ん? おーい保健委員! って、それは南か」

穂乃果「海未ちゃんが一緒に行くみたいです」


海未(ちょっ、穂乃果……)ヒソヒソ


先生「うん、園田なら適役だな。付き添い頼んだよ」


海未「えっ、あっ……はい!」

 ―保健室


海未「調子はどうですか? 落ち着きましたか?」

ことり「うん……だいぶよくなったみたい。私はもう大丈夫だから、海未ちゃんは先に戻ってて」

海未「はい……そうですね。何かありましたら、私か穂乃果の携帯に連絡をください」

ことり「うん」

海未「それでは……きちんとお休みになってくださいね」


ガラガラ ピシャン


ことり「ふぅ……」

ことり(さっき何かが体の中に入ってくる感じがして……何だったんだろう)


ことり「……!」ドクンッ


ことり(えっ? 何? うぐっ……頭が!)

??『思うままに成せ。欲望を閉じ込めるな』

ことり(うっ……あなた……誰?)

??『我が名は黒鳥 ≪ブラックバード≫、お前の望みを叶えてやる』

ことり(頭の中が、ぐるぐるして……あっ……)


『海未ちゃんを私だけのものしたい』 『誰にも渡さない』 『あなたたちと違ってずっと一緒にいたのに』 『許さない』 『これからもずっと一緒』 『心も体も私のもの』


ことり(何これ……おかしな考えが、どんどん湧き上がって……)

黒鳥『おかしな考え? いいや、違うね。それがお前の本心だ』

ことり(そんなっ! いやっ……! うぅ……)

黒鳥『認めてしまえば楽になれるものを』

ことり(うぐ……私は、私は……)



ガラガラ


穂乃果「海未ちゃんってば授業中もぼんやりしてて……ことりちゃんのことそんなに心配だったんだー」ウシシ

海未「もうっ! また穂乃果はからかって……ことりが寝てるベッドはこちらですよ」

穂乃果「はーい♪」



ことり(この声……穂乃果ちゃん……海未ちゃん!)

黒鳥(ちっ、邪魔が入ったか。まあよい、じっくりと精神を蝕んでいってやろう)

………………

後輩「南先輩、好きです……付き合ってください!」

ことり「えと……お付き合いはできないかな」

ことり「……ごめんね」

後輩「……」

後輩「園田先輩……ですか?」

ことり「……」ピクッ


黒鳥(ほほぅ……)


後輩「園田先輩と一緒にいるときの南先輩、本当に楽しそうで……でもたまに寂しそうな顔して」

ことり「……」


黒鳥(あちらの小娘、心がだいぶ不安定になっているな。どれ、精神干渉ができそうだ)ジジジ……


後輩「……」

後輩「ねえ、知ってますか? 園田先輩って一年生からとっても人気があるですよ」

ことり「うん……」

後輩「みんな園田先輩のことを狙ってます。南先輩が出る幕なんてないですよ」

ことり「っ……!」ビクッ

後輩「だから私と……って、あれ? 私、何てことを、言って……」チラリ

ことり「……」ブルブル

後輩「ごめんなさい! 私、どうかしてました! あ、あの……失礼します!」ペコリ


ダダダッ


黒鳥(ふふふ、さてどうかな。お前には何色の感情が湧く? 『怒り』か、『憎しみ』か?)


ことり(やっぱり……私なんかじゃ、海未ちゃんとは……)


黒鳥(なるほど、『自己卑下』か……これは使える)

………………

黒鳥『おい、長髪女の下駄箱を覗いてみろ』

ことり「……」チラリ


海未「……」コレ ハ ラブレター?


黒鳥『あれは、恋文というものか……先の娘が言っていた通り、海未とやらは後輩たちから慕われているようだな』

ことり「……」ジー


穂乃果「こ、ことりちゃん、なんだか怖い顔になってるよ」アセアセ

ことり「えっ!? ナンデモナイノヨナンデモ」

穂乃果「そ、それならいいけど」


黒鳥(くくっ、感じるぞ……お前の心がかき混ぜられるのを。負の感情がふつふつと湧き上がって来るのを!)

………………

凛「海未ちゃん!!」



黒鳥(あの小娘は……)


海未「何ですか? そのような大声で」

凛「ちょっとこっち来て来て!」グイグイ

海未「わわっ! いきなりぐいぐい引っ張らないでください。穂乃果、ことり、先に行っていてください」



<ドコニイクノデスカ?

<リジチョウシツニャ!




穂乃果「海未ちゃんと凛ちゃん、行っちゃったね」


黒鳥『凛、と言ったか……あの二人、随分と仲がよさそうだな』


ことり「うん……」


黒鳥『同じμ'sのメンバーで、liliy whiteとやらにも共に所属している。どうりで仲がよいわけだな』


ことり「……」



黒鳥『一体、何の用で連れてったのだろうな?』

ことり(やめてっ! さっきからずっと、うるさいよ!)

黒鳥『ふふふっ』


穂乃果「先に部室行ってよっか」

ことり「うん、そうしよっか♪」ニコッ



黒鳥(今のうちにたっぷりと笑っておくがよい。精神への侵食は着々と進んでいる)


穂乃果(ことりちゃん、笑顔がぎこちない……)

………………

海未「はい、朝の練習はここまでです。お疲れ様でした」


黒鳥『さあ、アンチ魔法少女を作り出すのだ。絵里とやらにその梅入りマカロンを食べさせ、弱ったところに『セイレーン・ソング』を聞かせてやれ』

ことり(やだよ……絵里ちゃんまで巻き込むなんて。いい加減にしてっ!)

黒鳥『それが本心でないことくらいわかっているぞ。もしそうなら、なぜそれを作った? なぜ捨てずにここまで持って来た?)

ことり(う……こんなものっ!)バッ

黒鳥『無駄だ。お前はそれを捨て去ることなどできない』

ことり(うぐぐっ……! 腕が、動かない……!)グググ

黒鳥『自分のためなら仲間を利用することも厭わない……それがお前の本性だ!』

ことり(何で……動いてよ! こんなのやだよ……)ググッ


黒鳥(だいぶ侵食も進んだな。精神が不安定になっているときならば、体をちょっと操るくらいなら可能になった)

ことり(うぅ……)グググッ


絵里「あら、ことり。その手に持ってるのって……ふふっ♪ またお菓子を作ってきてくれたの?」


ことり(ダメッ! 絵里ちゃん、こっちに来ちゃ……)

黒鳥『獲物が向こうから来たぞ。さあ、言え! 言うのだ!』


ことり「……!」ピクッ

絵里「ことり……?」

ことり「うん♪ 絵里ちゃんに試食してほしいんだ。こっちに来てっ♪」(何で……口が、勝手に…)

絵里「ええ、いいわよ♪」

………………


エリチカ「はい! 善は急げと言うますし、早速行って来ますね」タタッ

コトリーヌ「行ってらっしゃーい♪」フリフリ


コトリーヌ(ふふっ♪ ウーミンちゃんかぁ……いっぱい苦しめてあげるからね? 今から楽しみだなぁ?)


コトリーヌ「うっ……!」フラッ

コトリーヌ「あれ……? 私、私は何を……して? 私? 私は……誰?」

コトリーヌ「んぐっ……!」シュン


ことり「うぅ……」ガクリ


黒鳥(もう変身が解けたか……まだこんなものだな。そのうち、完全に乗っ取ってやる)


ことり「あ、あっ……! 私、絵里ちゃんに、何てことして……!」


黒鳥(そうだ、もっと苦しめ。お前の心が弱まっていくのを感じるぞ! くくっ、完全支配も近いな)

今回はここまでです


………………

 ―ウーミンとエリチカ公爵との激闘から翌日の朝、登校中のことり


ことり「……」テクテク

海未「ことり、おはようございます。あの、昨日は……」

ことり「あっ、おはよう海未ちゃ……」クルリ


ことり「……!」ドクン


海未「ことり?」

ことり「あ……う……」


『海未ちゃんがほしい』 『誰にも渡さない』 『私なんかじゃ』 『取らないで』 『苦しい』


ことり(海未ちゃんを、見ただけで……心が、かき乱されて……)


ことり「うぅ……」フラッ

海未「ことり!」ガシッ

海未「大丈夫ですか? 体調がすぐれないのでしたら、今日は休んだ方が……」

ことり「ううん、ちょっと立ちくらみしただけだから……先に学校行ってるから、穂乃果ちゃんに伝えといて」

海未「いえ、私も一緒に行きます。『ことりと先に行っている』と、穂乃果に携帯で連絡して……」

ことり「ん……いいから、私は一人で大丈夫だから」

海未「そんな……心配ですから」



ことり「来ないで!」



海未「……!」ビクッ

ことり「あっ……ごめんね」

ことり「先に行ってるね。ことりは大丈夫だから、心配しないで」タタタッ

海未「ことり……」


海未「……」


穂乃果「あっ! 海未ちゃん、おはよー!」

海未「……」

穂乃果「あれ? 海未ちゃん、どうしたの?」

海未「ほのかぁ……」ウルウル

穂乃果「わわっ、どうしたの!?」


……

海未「……ってわけなんです」

穂乃果「う~ん、ことりちゃん最近調子悪そうだから、気にしなくてもいいと思うけどなぁ。たまたまだよっ!」

海未「でも、私の顔を見て突然、様子が変に……あんな大きな声を出すなんて、ことりが、昨日も!」

穂乃果「海未ちゃん、何言ってるかわからないから……」

海未「ことりぃ……」

穂乃果「ほらほら、落ち着いて。学校に着いたら、ことりちゃんにどうかしたのか聞いてみよう?」

海未「はい……」


穂乃果(ことりちゃんの事になると海未ちゃん、情けなくなっちゃうんだから……でも、ことりちゃんの様子がずっとおかしいのは気になる。希ちゃんに伝えとこうっと)


………………

 ―音ノ木坂学院・二年生教室 ≪一限目後の中休み≫


海未「あ、あの、ことり?」

ことり「ごめんね、海未ちゃん。ちょっと……」ササッ

海未「あっ……」


海未「ほのかぁ……」クルリ


穂乃果「うっ、うん! ねえ、ことりちゃん!」

ことり「えと……何かな?」

穂乃果「海未ちゃんと何かあったのかな?って、ホームルームのときも避けてるみたいだったし」

海未「私に悪いところがあったら直しますからぁ……」

ことり「ううん、海未ちゃんは全然悪くないよ。全部ことりのせいだから」メソラシ

海未「昨日の事ですか? 空き教室で凛と不純同性交遊なんてしてませんからぁ……」

ことり「わかってる……わかってるよ、凛ちゃんとは何もないって」ウツムキ

海未「ことり……こちらを向いてください。目を合わせてください」

ことり「ごめんね……私、用事があるから」タタッ

海未「あっ、ことり……」


海未「ほのかぁ……」ウルウル


穂乃果(わっ、海未ちゃん今にも泣き出しそう。ほんとにショックを受けてるみたい……)

穂乃果「私からもことりちゃんに聞いてみるから。ほらそんな顔しないで、落ち着こうっ!」

海未「うぅ……ことりぃ」


穂乃果(一昨日からことりちゃんの様子がおかしい。絶対何か原因があるはずなんだけど、一体なんなんだろう? 海未ちゃんに関係があるのは間違いないと思うんだけど……)


………………


ことり「……」テクテク


黒鳥『“わかってる”だと? 思ってもない事を口にする。本当は猜疑心でいっぱいだというのに』

ことり(お願い、静かにして……お願いだから)

黒鳥『私が黙ったところで、お前の心の中が変わるわけではないぞ。それがお前の深意だ。認めてしまえ』

ことり(海未ちゃんは、嘘なんて……私は、信じて……)


黒鳥(ふふっ、その疑念は私が膨らましたのだがな。このまま、じわじわと負の感情で満たしていってやろう)



希「おーい! ことりちゃん、そんな深刻そうな顔してどうしたん?」


ことり「あっ……希ちゃん」


希(穂乃果ちゃんから連絡があったから来てみたけど……ことりちゃん、声も弱々しいし段々やつれてってるみたい。このままだと……思い切って聞き出してみよか)


希「ことりちゃん最近辛そうだけど、何かあったん?」

ことり「……」

希「ウチじゃ力になれないかもしれへんけど、悩みを吐き出すだけでも気が楽になるで」

ことり「うん……」

希「二限目は休むって、ウチから穂乃果ちゃんに連絡しとくから、じっくり話し合おう?」


………


ことり「……って事なの」

希「う~ん、ユニット練習のときとかも、そんな素振りなんて全然ないんやけど……そもそもあの二人がそういう事を隠すなんて器用な真似できるかなぁ?」

ことり「そうかも……」

希「特に海未ちゃんなんて、ババ抜きのときでさえあんなに表情がコロコロ変わるくらいやからね」ウシシッ

ことり「ふふっ、笑ったら悪いよぉ」クスクス


希(おっ! 笑顔が戻った。このまま、ことりちゃんの心をほぐしていってと)


黒鳥(ちっ、余計な事を。また無駄に魔力を使うはめになるとはな)ズズズッ


ことり「……!」ビクッ

希「ことりちゃん?」

ことり「あっ……ダメっ! また……なんで!? うぐっ……!」ヨロッ

希「ちょ、ちょっと! どうしたの!?」ガシッ

ことり「私は……信じて、でも、なんで……疑う気持ちが、止まらなくて……」

希「ことりちゃん! 肩かすから、保健室行こな? 大丈夫? 歩ける?」

ことり「あ……うぅ……」フラフラ


………………

 ―保健室


海未「ことりっ!」ガラッ


保険医「園田さん、心配なのはわかるけど保健室ではお静かにね」


海未「あっ……すみません」


希「海未ちゃん、こっちやで」


海未「はい」スタスタ

希「あれ? 穂乃果ちゃんにも連絡しといたはずなんやけど」

海未「穂乃果でしたら、そろそろ……」


穂乃果「失礼します」ガラッ


海未「……来ましたね」

穂乃果「もうっ! 海未ちゃんってば、授業中なのに何も言わないで、いきなり走って教室を出て行くんだもん。先生びっくりしてたよ」

海未「すみません……」

穂乃果「穂乃果がちゃんと説明しておいてあげたからね」

海未「ありがとうございます、面目ないです……」

穂乃果「それで、ことりちゃんは……」


ことり「……」スヤスヤ


希「今は落ち着いて、寝付いてるよ」

穂乃果「取りあえず、一安心ってとこかな」

海未「ええ……」

希「じゃあ、ウチは教室に戻ってるよ。穂乃果ちゃんと海未ちゃんがいれば安心やしね」

海未「はい、今は授業中ですものね」

希「それに、ウチがいなくてえりちが寂しがってるかもしれへんしね♪」

海未「ふふっ……希、ことりを介抱していただき、ありがとうございました」

穂乃果「希ちゃん、ありがとう」

希「じゃあなー♪」



ガラガラ ピシャン


海未「……」

海未「では、私も教室に戻っていますね」

穂乃果「えっ!?」

海未「ことりは……私の顔を見ると辛そうにするんです。それではかえって体調を崩してしまうでしょうから」

穂乃果「海未ちゃん……」

海未「ことりの事、よろしくお願いしますね」ニコリ


ガラガラ


海未「……」チラリ


ことり「……」スヤスヤ


海未「ことり……」


ピシャン


………………

 ―二年生教室 ≪二限目後の中休み≫


穂乃果「ことりちゃん、無理してない? まだ休んでた方が……」

ことり「ううん、もう大丈夫。私は元気いっぱいだよ」ニコリ

穂乃果「また体調が悪くなったら言ってね」

ことり「うん。海未ちゃんにも心配かけちゃって、ごめんね」

海未「いえ……ことりの身に何もなければ、私はそれで……」メソラシ


黒鳥『お前と目を合わそうとしないな。あれだけ露骨に避けられたら愛想も尽きるというものだな』


海未「それでは、私はちょっと外に出ていますね」

ことり「う、うん……」

穂乃果「ちょっとちょっと! 海未ちゃん、ちゃんと説明しないと」

海未「え……あっ! これは、ことりを避けてるわけではないんです。あの、その、ことりは……私と顔を合わすと調子が悪くなってしまうので」

ことり「うん、わかってるよ……」

海未「では……」スタスタ


黒鳥『顔を合わせると調子が悪くなる? 海未とやらもそんな事を本気で信じているわけではあるまい。さぞかし不快に感じているだろう。まあ向こうも、お前を相手にしなくもよい理由ができて好都合だと思っているかもしれないがな』


ことり「……」

穂乃果「ことりちゃん……」


………………

 ―空き教室 ≪昼休み≫


海未「それでは、前回の戦いの反省会を始めましょうか」

凛「その前に聞きたい事があるんだけど」

海未「何です?」

凛「海未ちゃんがなんで『空き教室に入るのは時間をずらして別々に入るように』って言ったのかなって」

海未「あぁ、それはですね。昨日ここを出るとき、ことりと鉢合わせしたでしょう?」

凛「まだ、凛と海未ちゃんが『破廉恥です!』な関係だって疑われてるの?」

海未「いえ、そんな関係ではないとわかってる、と言ってくれているんですが……でも、何だかことりの様子がおかしくて」

海未「あと、何ですかその『破廉恥です』の言い方。私の声真似ですか? どうやら凛はもっとたくさん練習がしたいようですね」

凛「にゃっ!? ご、ごめんなさい!海未ちゃんなんか元気なかったら笑わそうと、許してっ!」

海未「ふふっ、冗談ですよ。後輩に気を使わせてしまって……でも、その気持ちは嬉しいです。ありがとうございます」

凛「にゃー!μ'sは先輩後輩は無しだよ!」

海未「ふふふっ、そうでしたね」

……

海未「では雑談はここまでにして、反省会を始めましょうか」

凛「そうするにゃー」

海未「昨日の対アンチ魔法少女戦……はっきり言って私の完敗でした」

凛「えっ……そんなことないと思うけど。もうちょっとで、エリチカなんとかってのをやっつけられそうだったよ」

海未「いえ……凛も本当はわかっているのでしょう? にこと花陽の助けがなければ、衆目の中で正体をばらされていました」

凛「でも、途中までは勝ってたもん」

海未「確かにそうでしたが、私の魔力の低さが露呈した今、相手も戦い方を変えてくるでしょう……例えば、雷をひたすら連発するとか。そうなったら勝ち目はありません」

凛「でもでもっ!」

海未「凛が気にやむ事ではありません。すべては私の弱さのせいです」

凛「そんな……」

海未「私にできるのは、次の魔法少女が生まれるまで精いっぱい役目をまっとうする事です。そこまで耐え切れば二人がかりで敵に立ち向かう事ができますから」

凛「海未ちゃん……」

海未「ほら、そんな悲しそうな顔をしないでください。笑顔の凛に応援された方が私も嬉しいですから」ニコリ

凛「そうだよね……」

凛「うん! 凛も元気いっぱいでサポートするからねっ! 海未ちゃんを勇気りんりんにしてあげるよ!」

海未「ふふっ、頼もしいです」


………………

 ―その頃、廊下を進み歩くことり


ことり「……」テクテク

黒鳥『こっちの方向は……やはり、あの二人が気になるか』

ことり「……」

黒鳥『口先では信じていると言いながら、本当は猜疑心にまみれている。うわべをつくろった、実に姑息な事だ』

ことり「……」ピタッ

黒鳥『着いたか。さてさてどうなるか、見物させてもらおうか』


………………

 ―再び、空き教室

海未「それでは、今日はここまでにしましょうか」

凛「じゃっ、出よっか」

海未「あっ、凛が先に出てください。私はその後に退出しますので」

凛「あー、わかったにゃー! じゃあ、お先に」


ガラガラ ピシャン


海未「ふぅ……」

海未(あと五分ほど経ったら私も出ましょう)


………………


凛「♪」ガラガラ ピシャン



ことり「……!」

黒鳥『ほう、例の小娘が出て来たな』

ことり「……」サッ


凛「……♪」スタスタ


ことり(行っちゃった。海未ちゃんは……)チラリ


シーン……


ことり(……いないみたい)ホッ

黒鳥『何を安心している。お前は人間の小ずるさというものをわかってないな』

ことり(どういうこと?)

黒鳥『いいからそこで待っていろ』


黒鳥(人間の生体反応が一つ……おそらく、あの娘であろうな。実際に何をしていたのかはどうでもよいが、この機会をしっかりと利用させてもらおうか)


……

 ―五分後

ことり「……」ソワソワ


黒鳥(時が経つごとに不安がどんどん大きくなっていくのを感じるぞ。だが、その中に微かな期待も残っている。その期待さえ砕かれたとき、お前の心はどうなるかな?)


ガラガラ


ことり「……!」ピクッ


海未「……」ススッ


ことり「あ……」

黒鳥『想い人のご登場だ』


ピシャン

海未「……」テクテク


ことり「あ……ああっ……」ペタンッ

黒鳥『わざわざ教室を出る時間をずらして、念の入ったことだ。余程お前にばれるのが嫌だと見える』

ことり「うぅ……」

黒鳥『これでもまだ、奴の言い分を信じるか?』

ことり「あっ……う……」


『どうして?』 『わざわざそんなことして』 『やっぱり……』 『嘘つき』 『信じてたのに』 『悲しい』 『苦しい』


黒鳥『さえ使えるようになれば、奴の心も自由にすることができるぞ。そのためには、より魔力を蓄えて成長する必要がある。魔法少女を倒し、魔力を吸収するのだ! さすれば貴様の望みは達せられる!』


『私なんかじゃ』 『それでも』 『海未ちゃんが私だけのものに?』 『本当に叶うの?』 『ダメ』 『そんなので』 『心を操るなんて』 『でも』 『辛い』 『苦しい』 『楽になれるなら』


黒鳥『お前はもう充分苦しんだ。これ以上我慢する必要がどこにある? 自己の欲求のままに振る舞え! さあ!』



 ……私の意識はここで途切れた。

今回はここまでです。

 ―二年生教室


海未「ただ今戻りました」

穂乃果「あっ、海未ちゃん、おかえりー」

海未「ことりは……?」キョロキョロ

穂乃果「ことりちゃんなら、ちょっと前に出てったよ」

海未「そうですか……ことりの様子は相変わらずですか?」

穂乃果「う~ん、やっぱり調子が悪いみたい」

海未「心配ですね……」

穂乃果「ことりちゃんはもちろん。穂乃果は海未ちゃんの事も心配かなぁ」

海未「私が、ですか?」

穂乃果「うん。だって海未ちゃん、いつもより元気がないもん」

海未「……うわべに出ていましたか。私もまだまだ修練が足りませんね」

穂乃果「いやいや! 海未ちゃん、けっこう感情が表に出てるから!」

海未「えっ……! そうだったのですか!?」ガーン

穂乃果「やっぱり気づいてなかったんだ。海未ちゃんって抜けてるとこもあるもんね」

海未「むぐぐ、穂乃果に言われるとは」

穂乃果「ちょっと海未ちゃん、それどういう……」



< ウミチャアァァン!! ダダダダッ



穂乃果「んん? この声……」

海未「凛、ですね」


< タイヘンダヨッ!! ダダダッ


穂乃果「大変って、何かあったのかな?」

海未「おそらく、理事長先生から頼まれている仕事関連のことでしょう。ちょっと行って来ますね」

穂乃果「行ってらっしゃーい」フリフリ


……

凛「た、大変だよっ!」

海未「また出たのですね。怪人ですか? それともアンチ魔法少女?」

凛「違うよ! 今度のは!」


白鳥『ブラックバードよ!』


凛「またホワイトバードさんが割り込んで来たにゃ」

海未「敵の本丸のご登場ですか……早速駆けつけましょう。凛、相手の居場所はどこです?」

凛「え、えと、それは……」

海未「凛、私の事はいいですから。先ほど、応援すると言ってくれたじゃないですか」

凛「でも、やっぱり……」


白鳥『海未、今のあなたじゃ、とてもじゃないけどブラックバードには勝てないわよ。それでも行くの?』


海未「ええ。ホワイトバードさんが止めたとしても行きますから」


白鳥『あなたがそう言うんなら私は止める気はないけど、南理事長がちょっとね……今替わるわ』


理事長『海未ちゃん、本当に行く気なの? いいのよ、ホワイトバードさんなんかに気を使わなくても。ここで止めたとしても誰も文句は言わないわ』

白鳥『なんかってひどいわ! 私だって頑張ってるのに!』

理事長『言葉の綾ってやつよ』

海未「お気遣い頂きありがとうございます。それでも、魔法少女の役目をまっとうしたいのです。私が役目を放棄する事によって、もし誰かが被害を受けるなら、そちらの方が嫌ですから」


理事長『そう……わかったわ。ちゃんと考えた上での決心なら私も止めない。凛ちゃん、ブラックバードが居る場所を教えてあげて』


凛「うん……」

海未「ほら、凛も元気を出して。あなたは優しい子ですから心配になるのはわかりますが……私を励まして勇気りんりんにするのでしょう? そんな顔では私の気分まで沈んでしまいます。いつもみたいに元気に笑っていてください」

凛「……」

凛「魔法少女をサポートするのがマスコットの役目だもんね。海未ちゃんが『戦う』って言ってるんだから、凛だってしっかりしないと……うん! 凛も応援するから! 頑張って、ウーミン!」

海未「はい! 頑張ります」ニコリ

凛「それじゃあ、ブラックバードのとこに出発にゃー!」


……

 ―二年生教室


穂乃果「あっ、希ちゃん! 何か、ご用?」

希「うーんと、ことりちゃんの様子を見にな」

穂乃果「ことりちゃんは出て行ってて、今はいないよー。それと、やっぱり調子は悪いみたい。笑ったりとかも全然しないで……」


希(う~ん、風向きは悪いままか)


希「あれ? 海未ちゃんもいないんだ」

穂乃果「さっき凛ちゃんがやって来て、一緒に出てっちゃったよ。たぶん理事長先生の仕事のことでじゃないかなぁ?」

希「ふーん、一体どんな仕事を頼まれてるんやろ?」

穂乃果「わかんない。海未ちゃんってば『秘密です』って言って教えてくれないんだもん」

希「おっ、海未ちゃんのモノマネ似てるなぁ。その言い方、本人そっくりやん!」

穂乃果「えへへ、海未ちゃんの真似には自信があるんだ! でも、目の前でやると『やめてください///』って怒るんだけどね」

希「あはは、照れた感じもそっくり……」


 『ピンポンパーン♪ 理事長室より緊急の連絡です』


穂乃果「あれ? 昨日のお昼も緊急放送なかったっけ?」

希「もしかして、またアンチ魔法少女ってのが現れたんかな?」


 『秋葉原大通りにて敵の親玉……ブラックバード! が出現しました。午後からの授業は休講にします。皆さんの声援が魔法少女の活力の源です。そして今度の敵は強大です!ぜひぜひ、応援に行きましょう! 声が枯れるまで声援を送り続けましょう!』


穂乃果「理事長先生……今日の放送はずいぶんと気合いが入ってるね」アハハ

希「理事長がここまで言ってるんやから応援しに行ってもいいんやけど……今はことりちゃんと話したいかな。それでな、穂乃果ちゃんも一緒に来てくれる?」

穂乃果「うん、もちろん! それじゃ、ことりちゃんに連絡しとくね」

希「返事来るまで、なんか話でもしてよっか」

穂乃果「いいね! リリホワでの海未ちゃんとか気になるし」

希「おっ! 幼馴染としてはやっぱり気になる? そうそう、この前こんな事が……」


 ―秋葉原大通り


コトリーヌ「うふふ♡」


< あれが……ブラックバード!?

< 凄まじい気迫を感じるっ……!

コトリーヌ「みなさん、こんにちは♪ 私はブラックバードさんの宿主で、コトリーヌって言います。アンチ魔法少女ちゃん達からはコトリーヌ総統って呼ばれてるんだぁ♡」


< うっ!? 何て、ふわふわした甘い声なの!

< 脳がとろけそうだわ!

< 恐るべしコトリーヌ……! さすがはブラックバードの宿主だけあるわね



花陽「なんだか、声も見た目も優しい感じだけど……」

にこ「ああいうのに限ってほんとは恐ろしいやつだったりするのよ」



コトリーヌ「う~ん、ウーミンちゃんなかなか来ないなぁ、退屈だなぁ……よーし♡ ここにいる可愛い女の子をおやつにして時間を潰してよっと♪」ギラリ


< ひっ! 今、目が光った!

< 残忍な猛禽類の目だわ!

< ハラショォ……雪穂ぉ……

< 亜里沙、狙われちゃう! 逃げないと!




 「待ちなさい!!」



コトリーヌ「あれぇ? このお声って♪」


ウーミン「罪無き人々に対する悪行は、この魔法少女ウーミンが許しません!」


コトリーヌ「ふふっ♪ 待ってたよ、ウーミンちゃん♡ 凛々しくて綺麗で可愛いなぁ♪ コトリーヌのおやつにしてあげますっ♡」


ウーミン「ラブ・ブレード!」


魔法の剣を現出させ、勢いよくコトリーヌへと斬りかかる。


コトリーヌ「やんやんっ♡ ウーミンちゃんはせっかちさんだね♪」


しかしコトリーヌが身をそらすだけで、ウーミンの猛攻は容易にかわされてしまう。


ウーミン「何の!」


すかさず二撃目。


コトリーヌ「当たらないよー♪」


刃先が空を斬る。またもや易々と回避される。


ウーミン「それならもう一度です!」

ウーミン「はっ……!」

コトリーヌ「ふふっ♡」


だが、三撃目、四撃目もコトリーヌを捉える事はできない。


コトリーヌ「ほらほら、頑張って♪」

ウーミン「くっ……!」


何度も何度も刀を振るうが、かすりさえしない。只々、もて遊ばられるだけのウーミン。


コトリーヌ「もう避けるのも飽きちゃったかな。よーし……えいっ♪」

ウーミン「……!」


バシンと両手を打って、ラブ・ブレードを白刃取りにする。


ウーミン「くっ、この……!」


刀を引き抜こうとするがびくともしない。


コトリーヌ「ウーミンちゃんって元々の身体能力が高いんだね。貧弱な強化魔法しかかかってないのに、そんなに動けるんだもん」

ウーミン「ぐっ……! 抜けない……!」

コトリーヌ「でもね……」




ボキンッ!!



鈍い音。コトリーヌが少し力を込めただけで、ラブ・ブレードはいとも容易く折られてしまう。


コトリーヌ「強力な身体強化の魔法をかけちゃえば、ウーミンちゃんなんて敵じゃないんだよっ♪」

ウーミン「ならば!」


拳をきつく握り、正拳突き。だがコトリーヌは他愛もなくそれを制し、手首をつかむ。


コトリーヌ「だからムダだってば」

ウーミン「この……!」グイグイ

コトリーヌ「わわっ、暴れちゃダメだよ♪ そんな悪い事しちゃう子にはお仕置きですっ♡」グイッ


コトリーヌが腕を引き上げる。


ウーミン「えっ……?」フワッ


宙に浮くウーミンの体。勢いよく腕を振り切り、そのまま投げ捨てる。


ウーミン(何て腕力……!?)


放り上げられたウーミンは空中で姿勢を立て直し、難なく足裏から着地する。


ウーミン「さすがに……強いですね」


リン「ウーミン!」タタッ

リン「ラブ・アロー・シュートを使うニャ! それしか勝ち目はないニャ!」

ウーミン「ええ、それしか勝つ手段はないでしょう。しかし、無闇に射つ事はできません。射ててもせいぜい二発まででしょうから。何とか隙を作る事ができれば……」

リン「それじゃ、これを使うニャ」ヒソヒソ

ウーミン「それは……ブラックバード相手に効きますかね?」ヒソヒソ

リン「他に方法もないんだし、取りあえずやってみるニャ」ヒソヒソ


コトリーヌ「いつまでお話してるのかな? もう攻撃しちゃうよ♪」


コトリーヌの背中から突如生える天使の様な、しかし漆黒の一対の翼。


コトリーヌ「頑張って避けてね♡ フェザー・カッター♪」


二つの翼から一斉に羽根が飛び散り、黒い雲となってウーミンへと襲いかかる。



リン「来たニャ!」

ウーミン「やってみるしかなさそうですね」ダッ


前斜めへと走り出すウーミン。


コトリーヌ「回り道して避けようとしてもダメだよ。それっ♡」


斬撃の嵐が左右に広がる。さらに上からも覆い被さり、行く手を完全に遮る。


ウーミン(弾雨がだいぶ薄くなりましたね……これならば!)


ウーミン「ラブ・ブレード!」


剣を片手に嵐の中へと突っ込む。


コトリーヌ「さぁて♡ ウーミンちゃんはコトリーヌのもとまで無事にたどり着けるのでしょうか♪」


走りつつ身を反らし、四方八方から飛ぶ羽の刃を紙一重でかわしていく。


ウーミン「むっ……!」ガキンッ


避け切れない攻撃は刀で斬り落とし、足を止めることなく進み続ける。


ウーミン(敵のもとに到着するのが先か、刀身が壊れるのが先か……あまり多用はできませんね)


コトリーヌ「ふふ~ん♪」チョイチョイ


コトリーヌが指先を動かすと、それにつられて刃の雲は形を変え、一気にウーミンへと押し寄せる。


ウーミン「くっ……」ガキッ


弾幕は濃密さを増し、もはや体をずらす程度では対応しきれない。やむを得ずに刀を振るう。


コトリーヌ「そんな魔力不足の武器で、どこまで耐えられるかな?」

ウーミン「あなたを一刀両断するまで!」

コトリーヌ「へぇ……」クイッ



勢いを増して迫る猛撃。回避できずに二度目、三度目の剣撃を行う。


コトリーヌ「ふふふ♡ そんなに使っちゃって大丈夫?」


ウーミン(多少のケガは覚悟しなくてはなりませんね)


コトリーヌ「そぉれ♪」

ウーミン「ぐっ……」


羽刀が太ももをかする。肌に赤い線が引かれ、血がにじみ出す。


コトリーヌ「やんやん♡ 綺麗なお肌に傷が付いちゃったね。もっといっぱい付けてあげるね♪」


ウーミン「うっ……!」


今度は二の腕をかすめる。


ウーミン「うぐっ……!」

コトリーヌ「あぁっ♡ 白いお肌に赤のアクセント、最高だよ♡」


さらに脇腹を切られる。だが少しも怯む事なく突き進む。


ウーミン(直撃さえしなければ構う事などありません。しかし……)


ウーミン「ちぃっ!」ガキンッ


四度目の剣撃。


ウーミン(回避するだけで全ての攻撃をいなすのは無理がありますね。剣は、もって後一振りというところでしょうか)


コトリーヌとの距離をグングン詰める。残り十メートル。


ウーミン(もう少し……!)


コトリーヌ「このままだとウーミンちゃんに斬られちゃう♪ 困ったなぁ、そうだ! えいっ♡」シュッ

ウーミン「……!」


手の中に隠し持っていた羽刀が飛ばされる。


ウーミン(かわし切れない!)


ウーミン「くっ……!」ブンッ



バキリッ!!



斬って落としたと同時に刀身が砕け散る。残り二メートル。



ウーミン「ラブ……」


右手を掲げて武器の名を唱える。


コトリーヌ「ムダだよ。剣を作った瞬間にすぐ壊しちゃうんだから♪」クイッ


舞い飛ぶ羽の軌道を変えて、ウーミンの右手へと集中砲火。
だがウーミンはにやりと笑い、右手を引っ込める。


ウーミン「グレネード!」ブンッ


服に隠していた物を取り出し、左手でコトリーヌ目がけて放り投げる。


コトリーヌ「他にも武器があったんだ。でもムダだよ♪」

飛び交う羽に、投擲物はあっけなく真っ二つにされる。
嘲りの笑みを浮かべるコトリーヌ。しかしウーミンはそれを意に介することなく、指先に魔力を込める。


ウーミン(今です!)クイッ



ボフンッ



中から粉塵が飛び出し、コトリーヌを包み込む。


コトリーヌ「うっ……! こ、これって!?」


リン「『ケホケホ爆弾』ニャ!」

※『ケホケホ爆弾』 (お手玉の中に、ウーミンの魔力を込めたコショウと唐辛子パウダーを詰めて封をした物。リンが手作りした特製品)



コトリーヌ「あぅ……目が! うぐっ……」ケホケホ


両手で顔を覆い、苦しそうによろめき歩く。
縦横無尽に飛び交っていた羽刀も魔力を失い、ただの羽毛と化して舞い落ちる。


リン「効いてるニャ! ウーミン、今ニャ!」


ウーミン「はい! ラブ・アロー!」

コトリーヌ「うぅ……魔力を、早く、痛っ!」ゲホゲホ


弓を引き絞る。的はふらふらとよろめくコトリーヌ。



ウーミン「ラブ・アロォ・シュゥゥート!!」



怒濤のごとく射出される轟音と閃光。コトリーヌを光と熱の爆発が包み込む。


リン「やったかニャ!?」

ウーミン「……!」


光の霧が晴れると……そこにあるはずの人影がまったく見えない。


ウーミン「くっ……どこに!?」


リン「ウーミン後ろニャー!」


振り向くと、加虐の笑みを浮かべたコトリーヌの姿。


コトリーヌ「ナイト・ヘロン♪」

※『ナイト・ヘロン』 (青白く輝くレーザー光線を手から放出する。威力を調整すればレーザーポインターにもなって便利)


コトリーヌ「一応魔力を込めてたんだね。ちょっと目が痛いかな」

ウーミン「う……」

コトリーヌ「あんな弱いエンチャントでもこうなっちゃうなんて、私もまだまだ成長が足りてないみたいだね。早く魔力を蓄えないと♪」


自然治癒の魔法により負傷した部分が回復する。意識もはっきりとして来る。
戦意はまだ失われていない。コトリーヌを見据えて武器の名を唱える。


ウーミン「ラブ……」

コトリーヌ「ダーメ♡」シュッ

ウーミン「がっ……!」


羽刀がウーミンの右手のひらを貫く。
砕ける骨、流れる鮮血。突き刺す激痛。


ウーミン「んぐっ……!」


唇を噛んで耐える。魔力を使い、必死に痛みを打ち消す。


コトリーヌ「ふふっ……左手でも武器を握れるよね」シュッ

ウーミン「あがっ……!」


左手も貫かれる。
疼く手の平。神経が焼け切る。両手が震える。


ウーミン(痛みが、抑えないと、はやく、痛い)


コトリーヌ「苦しそうに悶えるウーミンちゃんのお顔、とっても可愛いよ♡ もっと見てみたいなぁ」

ウーミン「あ……! ぐっ……!」

コトリーヌ「戦いの真似っ子はここまでにして、今度はウーミンちゃんをいじめて遊んじゃいますっ♪」

今回はここまでです

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