長波「島風、突然だけどこの鎮守府に艦娘は何人いると思う？」

島風「えっと……百人くらい？」

長波「少なめに見積もってもそれくらいだろうね。考えてもみなよ」

長波「バレンタイン当日に一気に百を超えるチョコレートを貰ってみろ。食いきれるか？」

島風「……チョコが好きな私でも辛いかな」

長波「だろう？ だからあたしは提督が辛くないようにチョコを渡さないんだ」

島風「な、成る程ね……」

島風（でも提督からすれば貰えなかったほうが辛いかもしれないんだよね。私に興味が無いのかって思って落ち込みそう）

長波「ところで島風は渡すのか？」

島風「うん。提督と天津風達に」

長波「そうかー。頑張れよ」

島風（……あまり興味が無さそうだからちょっと心配になってきたかな）

――――――

バレンタイン当日


長波（島風の前ではああ言ったけど、提督には渡さないけど艦娘に渡さないとは言ってない）

長波（夕雲型の分と子日の分とその他諸々と……よし、足りてるな）

長波「さーて、まずは夕雲から探すか」

――――
――

長波「夕雲、ハッピーバレンタイン」

夕雲「ありがとう。はい、私からも長波さんにプレゼントです」

長波「サンキュー」


長波「巻雲、ハッピーバレンタイン」

巻雲「ありがとー。お返しに、巻雲が作ったチョコレートですよ！」

長波「あんがと」

～～～～～～～～～～

子日「今日は何の日？」

長波「バレンタイン」

子日「そこはバレンタインの日～でしょ？」

長波「……ハッピーバレンタイン、子日」

子日「ちょっと、スルーしないでよ！」

長波（と言いながらも、しっかりチョコは受け取るんだな）

秋雲「ハッピーバレンタイン！　秋雲さんがチョコレートをいただきに来たよー」

長波「あっ、秋雲の分忘れてた」

秋雲「そんなっ！？」ｶﾞﾋﾞｰﾝ

長波「……冗談だ。はいよ」

秋雲「もう、落として上げるなんて長波は意地悪だなー」ﾆﾔﾆﾔ

長波「……やっぱ返してもらおうかな」

秋雲「さっきの発言取り消すからそれだけはやめて！」

――――
――

長波「これで夕雲型全員と子日には渡せたな。探すので疲れたな……」

長波（後はアイツだけ何だが見つからないんだよな……でも、いざ渡すとなると少し不安だな）

島風「長波ー」ｶﾞﾁｬ

長波（いいタイミングで現れたな）

長波「なにー？」

島風「バレンタインだから長波にプレゼントがあるの」

長波「あたしに？」

島風「うん。これだよ」ｺﾄｯ

長波（……箱？）

長波「開けてみてもいいか？」

島風「うん！」

長波「どれどれ……」ｶﾞｻｺﾞｿ

長波（包装を取り、箱を開けると中にはチョコレートケーキが入っていた。大きさはホールケーキを8頭分したくらいだ）

長波「こ、これ……島風が作ったのか？」

島風「う、うん。でも一人じゃなくて手伝ってくれた人はいたけどね」

長波「……食べてみてもいいか？」

島風「うん。長波のために作ったんだし」

長波「……フォークを持ってくるからちょっと待ってて」

――――
――

長波「……いただきます」ﾊﾟｸｯ

長波「……」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

島風「……」

長波「……美味しい」

島風「良かったー」

長波「……さっきあたしのために作ったって言ってたよな？ 他の艦娘や提督には作ってないのか？」

島風「うん。このチョコレートケーキは長波のためだけに作ったんだ。いつも私から長波のところへ遊びに来ても付き合ってくれるし、我侭を言っても付き合ってくれたから……長波には感謝してるの」

長波（そこまであたしの事を思っていたなんて、全く思わなかった）

長波（……こんなもので釣り合う気がしないな。でも、渡さないよりはいいのかな？）

長波「島風、ありがとう。一応……あたしも用意してはいるんだ」

島風「私に？」

長波「そう。でも島風ほどいいものじゃなくて、これだけど」ｺﾞｿｺﾞｿ

島風「これは……チョコレートクッキーだね」

長波「そうだ……不格好だけどな」

島風「えへへ、長波から貰えるなんて思わなかったな。食べてもいい？」

長波「……別に、いいけど」

島風「じゃ、いっただっきまーす」ﾊﾟｸｯ

長波（なんか緊張してきた。頑張って食べられる味にはなってるけど喜んでくれるかな）

島風「…………おいしい」ﾆｺｯ

長波「ほ、本当に？」

島風「うん。美味しい」

長波「……そ、そうか。なら良かった」

島風「そんなに心配しなくても良かったのに。私は長波から貰えたらそれだけで嬉しかったし」

長波「そうなのか？」

島風「うん。だってバレンタインなんて興味ないって感じだったから、貰えるなんて思わなかったもん」

長波「うっ……」

島風「でも、来年も今回みたいにくれるんだよね？」

長波「……そのつもりだけど」

島風「良かった。それなら私も今年以上にいいものを作れるように頑張ろっと」

長波（今以上にいいものって何が出来るんだ……）

長波「……あたしも今年の不格好なクッキーよりはいいものを作れるよう、頑張る」

島風「うん、お互い頑張ろう！」ﾆｺｯ

長波「……ああ、頑張ろう」ﾆｺｯ

――――――

ｵﾀｶﾞｲｶﾞﾝﾊﾞﾛｳ
ｱｱ､ｶﾞﾝﾊﾞﾛｳ

天津風（……ちゃんと渡せて、良かったわね。島風）

天津風（これ以上、ここで盗み聞きするのは良くないわね。そろそろ退散しましょう）

天津風（……島風からもらった、特別な贈り物が楽しみね。ふふふ）


終わり