まど神「戦いなさい。100年間、戦いつづけなさい」(91)

これは世界の危機に立ち向かった女神と不死なる魔法少女、そしてなもなき勇者たちの戦いの記録である。
http://www.youtube.com/watch?v=cjl8pkevzqw


999の年

闇の眷属の、最も邪悪なる魔が目覚める。

彼は南の地に目覚め、時をさかのぼる。

次第に世界に絶望の種を撒くだろう。


オリコ=ミコクの予言

時はアクラル西暦999年

オリコ=ミクニの予言によればこの年、

世にも禍々しき魔物が現れるという

しかし一年は残りわずかということもあり、

町の人々は紙に書かれた魔物の心配より暮れの現実的な忙しさにかまけていた

なにしろ開けて1000年には街をあげての千年祭が催されることになっていたのだ

ほむら…

ほむら…

?「ほむら!」

ほむら「わたしは…死んだの?」

?「ほむら! 起きてちょうだい」

リリー「ほむら! 大変なの」

ほむら「私が…死ぬわけないわね…」

リリー「ほむらってば、寝ぼけないでよ! 預言書の魔物が現れて街を襲っているのよ!?」

ほむら「街を?」

リリー「そうなの! どうしよう、町の人すごく怖がってる。どうしよう、ねぇほむら街のみんなをたすけてあげようよ!」

ほむら「リリー落ち着きなさい、あなたまで取り乱してどうするの?」

リリー「そ、そうよねほむら。ごめんなさい」

ほむら「団員のみんなは?」

リリー「外で団長の号令を待っているわ」

ほむら「さすがゴーレム山賊団だわ。よし、いくわよ!」

りりー「うん!」

宿泊施設を抜けると、街は魔物の襲撃で炎に包まれた。

ほむら「魔物が街にこんなにも…。急いで魔物を倒すわよ!」

他団員「おう!」ジャキーン

訂正
×炎に包まれた
○炎に包まれていた

魔物はほむらを筆頭にゴーレム山賊団の手によって、次々になぎ倒されていく。

特に団長のほむらは、まるで時を止めたかのような人間離れした卓越な動きで魔物に迫っては大剣を振るう。

その動きは武闘というより、舞踏であった。

少女は可憐に華麗に魔物を切り裂く。

団員たちは自分たちも遅れをとるまいと団長に続いた。

ほむら「みんな、無事か?」

ウィッペル「任せてよ! ほむら団長。かすり傷ひとつおってないさ」

リリー「ウィッペルたら…こっちはあなたを守るためにきずだらけになっているのよ?」

ウィッペル「えへへ、ごめんなさぁい」

ウィッペル「あぁ、助かったら安心したな。マミさん、お菓子かなんかない?」

ウィッペルは軽くおどけた様子でリリーに謝ると、他の団員にお菓子をねだりにいった。

リリー「まったくもう…」

リリーはあきれた表情でウィッペルの背中を見送った。

ガレフ「傷はきちんと消毒して置け、膿んでしまうと後がひどい」

リリー「えぇ? こんなのなめておけば大丈夫よ」

ガレフ「膿んでしまうと後がひどい」

リリー「はいはい、わかったわよ」

リリーは観念した様子で傷の手当をした。

ガレフ「ほむら、そうそうゆっくりもしてられないぞ。街にはまだ魔物が残っている」

ほむら「そうね。マミ! みんなの武器の具合はどう?」

マミ「ぬかりはないわ、アケミさん。あなたの剣の刃こぼれもほら! 新品のようでしょ?」

ほむら「さすがねマミ。戦いに関することすべてが頼りになるわ」

マミ「あなたへの恩にくらべればこんなこと」

ほむら「……」

リリー「ほむら…? どうかした?」

ほむら「いや、誰かに見られているような気がして。きっと気のせいね」

ほむら「さぁ、急ぎましょう!」

ほむらは残りの団員を呼びかけると、他の魔物の討伐に駆け出した。

そんなほむらの背中をリリーは静かにみつめる

リリー「もう、あなたを見てる子。いつもここにいるってば」

街の中まで魔物がやってくることは前代未聞の惨事であった。

それだけに街の人たちの動揺は激しく、とても戦力にならない。

そのとき、立ち上がったのはいつも昼行灯といわれてバカにされてるゴーレム山賊団であった。

ガレフ「はやいとこかたをつけないと街がめちゃくちゃになっちまうぜ!」

リリー「どうしよう、ほむら!」

ほむら「一気に片付けるわ。ついてこられるかしら?」

ガレフ「みくびるな! 地の果てまでお供するぜ!」

ガレフ「リリー安心しろ。ゴーレム山賊団がついてるんだ。魔物の好きにはさせん」

リリー「…うん」

ゴーレム山賊団は武器を手に取ると再び魔物たちのいる街へともどった

魔物「グァァァぁあッ!!!」

ほむら「まったく、しつこい敵ね…」

ほむらに魔物の猛攻が襲い掛かるもそれをもろともせず、次々と倒していくほむら。

きづけば、魔物の死屍累々が築かれていた。

マミ「さすが、アケミさんね。惚れ惚れするわ」

マミのマスケット銃もほむらに負けず劣らず魔物をほふっていた。

ほむら「あなたも。伊達に何年も私と付き添っているわけじゃないわね」

マミ「ふふ…。それでもあなたの方がはるかうえね。これでも毎日修行は行っていないのだけど」

ほむら「それでも、私についていけるのはあなただけよ」

マミ「ありがとう…。でも油断はしていられないわね。あなたの教えは常に忘れていないわ」

ほむら「そう…。さすがは私の一番弟子ね」

マミ「それじゃ、残りも一気にかたをつけましょ!」

ほむら「ええ!」

市民「うわぁぁ! 助けてくれー」

マミ「危ない!」

逃げ遅れていた市民の一人が魔物ているところをマミはとっさの判断でかばう。

マミ「くっ!」

マミは魔物からの一撃をもらうもとっさの判断でダメージを軽減させる。

一撃を放った魔物は大きく隙を見せ、そのわき腹をマミはマスケット銃で次々に銃を取り替えては1発、2発と打ち込む。

4発打ち込んだところで、魔物の体は大きく揺らぐ。その瞬間をマミは逃さなかった。

マミは高く飛び上がると、魔物の頭部に全体重を乗せた踵落としをお見舞いする。

魔物「グアァァァl!」

魔物はひときわ大きな声を上げると、糸の切れた人形のように倒れ、それきり動かなくなった。

マミ「なにしてるの!? はやくここから避難しなさい」

市民「あ、ああ助かったよ。それにしても、予言は本当にあるんだなぁ…」

市民は予言に怯えながら、避難区域へと駆けた。

chapter 1

「the nightmare begins」

マミ「ふぅ。まだ傷が浅いようで助かったわ。ん? はぁ、また傷をおくことになりそうね」

マミがふと視線を上げた先には魔物に苦戦しているウィッペルの姿。それも相手はジャイアントだ。

マミやほむら、ガレフなどといった屈強な戦士ならまだしもウィッペルにはすこしばかり骨が折れる相手だ

マミ「これでも一応女の子なのにね…」

マミはそうつぶやくと、食い意地の張ってるがなぜか憎めない仲間の元へ駆け出した。

マミ「ウィッペル、大丈夫!?」

ウィッペル「あ、マミさん! ぼくもゴーレム山賊団なんだから。これくらいすぐに肩つけるよ」

マミ「! ウィッペル前を見なさい!」

ウィッペル「え? う、うわぁあ」

自分も誇りある山賊団の一員として、なんとかいいところを見せたかったウィッペルだったが、マミの方へ目を放した隙にジャイアントの太い腕がウィッペルの眼前まで迫っていた!

マミ「ばか…!」ボソっ


マミはウィッペルの前に立ちふさがり、マスケット銃の銃身でジャイアントの攻撃を受け止めた。

マミ「ぐっ!」

ジャイアントの体重がのった攻撃は重く、女子の小柄な矮躯ではきつい。あさかった傷から、血が流れ出し、悪化する。

魔物「グォォォ1!!!!11」

なんとかジャイアントの攻撃を耐え切ると、今度は手に持っていた棍棒を空高く振り上げる。

マミはその攻撃を見るために棍棒をみつめる。

そのとき太陽が逆光となって、マミの視界を焼いた。

マミ「視界が…」

絶体絶命か!?ウィッペルは反射的に顔を隠してしまう。

しかしマミは冷静であった。

伊達に百戦錬磨の地獄をほむらとともに生き抜いてきたわけではない。

マミは焼かれた視界から視線をそらし、視界を閉ざす。

マミ(大事なのは間合い、そして退かぬ心…)

心の中で、そうつぶやくと、マミはマスケット銃を構える。

そして棍棒はたてに振りかぶられる。

重力と体重ののった棍棒は超速度でマミをたたきつけようとしていた。

マミは棍棒が自分に当たる瞬間だった、

マミは自分の体をひねり、棍棒を回避する。

視界はすでに回復している。マミは大きく目を見開くと、魔法で取り出してるマスケット銃のギミックを大きくかえ、ひときわ大きな大砲を取り出し、ジャイアントに放った。

マミ「ティロ・フィナーレ!」

ほむら「マミ、血が!」

ほむらは傷ついたマミのところへ駆け込むと、自分の団員が大事無いかあわてながら尋ねる。」

マミ「えぇ、心配ないわ」

ウィッペル「ごめんなさい。ごめんなさい。ぼくのせいでマミさんは怪我を!」

ウィッペルは自分のせいでマミが怪我をしたのだと、重く反省し、繰り返し謝る。

マミ「うるさい男の子は嫌われるわよ。ほら、ウィッペルまだ敵が残っているわ」

マミは苦痛を表情に出さず、再び魔物のいる街を駆け出した。

ウィッペル「あぁ! 待ってよぼくも!」

魔物を倒してなんとか借りを返そうとウィッペルは思い、マミの後をついていく

ほむら「!?(この視線)…」

ほむらはいつのまにか自分に向けられている視線を感じ取ると、その正体であろうものの元へむかった。

ほむらはその視線に慨視感を覚えていた。

???「……」

ほむら「あなた…、この街の者じゃないわね? こんなところでなにをしているの? はやくしないと魔物が…」

ほむらが視線の主に近づくや否や、そのものは街の影へと去っていった。

ほむら「なんなの?」

避難所


バルクウェイの若者「ちきしょう! 千年祭まであとちょっとだってのによ」

「やっぱ預言書ってのはあたるんだなぁ」

???「そうですね…」

若者「山賊団のやつらががんばってくれねぇと、この町はおしめぇだぁ」

若者は頭を抱えた。

???「彼らはどこにいきました?」

若者に尋ねる。それはさきほどの視線の主であった。

若者「? さっきこの道をまっすぐ下っていったが?」

そう聞くと、視線の主は教えてもらった道を進んでいく。

若者「おい、ネエチャン! 魔物に食われてぇのか? おい!」

若者は注意を喚起したが、視線の主は振り向きもせずにそのまま奥へ消えていった

若者「なにもんだぁ?」

ゴーレム山賊団の活躍により、街を襲った魔物はすべて退治されていた。

若者「たすかったぁ! あんたら本当は強かったんだな!」

それは山賊団がはじめてあびる感謝と賞賛の言葉であった。

ウィッペル「えへへ。これくらい軽い軽い。ゴーレム山賊団をなめんなよ!」

ウィッペル「これでこころおきなく千年祭のごちそうつくりに励めるだろ? なぁコモリガエルのパテをつたのむよ。な?」

リリー「ゴーレム山賊団のこと、もうばかにしないでよね!」

若者「あ、あぁもちろんさ」

リリー「ほむらたちの功績を街のみんなにもひろめてよね! ちゃんと」

若者「わかってるよ」

ほむら「リリー…いまのはちょっと恩着せがましかったんじゃないかしら?」

リリー「だって…街の人たちが山賊団のことをなんてうわさしていたか、わかってるの?」

リリーはいままで自分が誇りに思う山賊団が馬鹿にされ続けてきたことを思い返し、少し怒気をはらんだ口調で迫った。

ほむら「まぁ、だいたいは」

リリー「ちょっとはみなおしてもらいたいじゃない?」

ほむら「いいのよ。他人の評価なんて気にしなくて」

ほむら「団長がそれじゃ困るの!」

ガレフ「やれやれ、あれじゃリリーがかわいそうだぜ」

ほむら「なんでかしら?」

ガレフ「…そりゃ、おまえのためをおもって…街の人に」

ほむら「ゴーレム山賊団のために…でしょ?」

ガレフ「…わかってねぇな…」

ガレフはあきれた様子でほむらに言い返す。

???「剣の腕はたしかなようですね。ほむら・暁美・ボアル」

戦闘後の談義を団員たちと話していると、例の視線の主がほむらにちかづいてきた

ほむら「!! なぜわたしのなを」

???「あそこの黄色ドリルの少女はなかなかいい腕をしているね。あの男の人の体力もなかなかだね」

ほむら「? 何のようかしら?」

???「女の子の方は技術と体力が劣りますが解除で補っている分、合格かな」

ほむら「なにをいってるの? わたしの質問に答えなさい!」

???「ただ、これは使えないね」

彼女はそういうと、千年祭のごちそうをつまみ食いしていたウィッペルを指差していった。

コレ「え? ぼ、ぼく? なんてこというんだよ!」

自分のことを言われていることに気づき、ウィッペルは憤りを彼女にぶつけた

???「じぶんでわかっているよね? あらゆる意味で足手まといなの。おまけに初心者マークみたいな服着て…。ほむらちゃんの邪魔しないでよね」

彼女は一蹴すると、ウィッペルをにらんだ。

ウィッペルは蛇ににらまれたかえるのように萎縮してしまう。

ほむら「あなたには関係のないことよ!」

???「その温情はどこからくるの? 赤ん坊のときから育ててきた責任感?」

コレ「うう、ほむら団長…」

???「必要のないものをかこっておけるほど、ほむらちゃんの部隊には余裕はないはずだよ」

必要のないもの「うわわぁぁん!」

???「いますぐコレを部隊からはずして」

ほむら「うるさい!」

確かに彼女の言ってることは正論である。それゆえにいいかえせないことにほむらは怒鳴りつけることしかできなかった。

自分の話を聞かないほむらに彼女はあきれかえった。

???「魔物の恐怖は去ったわけじゃないの。このままじゃ街が滅びるよ。人類もね」

ほむら「!? あなた何者?」

若者「たいへんだぁ! 魔物がまた街を襲ってるぞ」

マミ「またきたのね? それとも、別の魔物かしら」

ほむら「わからないわ…とにかく急ぎましょう」

マミ「ほら、ウィッペル。いつまでべそべそしてるの? あなたの力をみせつけるときよ

マミ「それは私たちの恩返しよ…育て親へのね」

ウィッペル「う、うん。ぼくがんばるよ! がんばるんだ!」

山賊団は魔物のいる広場へたどりつく。

そこには、一匹のドラゴンがいた。

ガレフ「あれが魔物!? なんか、やばいにおいがぷんぷんするぜ」

ほむら「ええ、気を引き締めていくわよ」

ただのドラゴンではない、ただならぬものであるということは団員全員がわかっていた。

禍々しく、重苦しいプレッシャーがゴーレム山賊団にのしかかる。

???「”ただ”の人間どもが、俺様の相手を? キキキキキ! 笑わせやがる」

ドラゴンは山賊団の姿を見るや、甲高い響いた声で彼らをあざ笑った。

ほむらはドラゴンの強い殺気にひるむが、いま退いてしまってはなにもかもが終わりだ、自分がやらねばと自分を勇気つけるとドラゴンの前へ飛び出した。

先手必勝。

ほむらは地面を大きく踏みしめ、空高く飛び上がり、ドラゴンへと立ち向かう。

大剣に自分の体重をかけ、重い一撃を放つ。常人ならば対応できないスピードだった。

しかし、相手は人間ではない。生態系の頂上に存在するドラゴンであった。

剣はドラゴンの強靭なうろこで跳ね返されてしまった。ほむらは剣が返されるとはねるように距離をとった。
???「あまい!」

しかし、ドラゴンは大気を大きく吸い込むと、口から灼熱のブレスを吐き出す。

ほむら「! きゃぁああ」

とっさの判断で剣をたてに炎を防ぐが、防ぎきれず吹き飛ばされてしまう。

ほむら「くっ! つよすぎる…!」

なんとか体制を立て直すも先ほどの一撃だけでだいぶ団員の志気がそがれてしまった

???「なにやってるんだ、ディー」

ほむらの心がくじけそうになったとき、街のおくからもうひとつ別の影がやってくる。

長い白髪に黒い邪悪な甲冑。それは人であった。だが、あふれ出す魔力、殺気、プレッシャーは明らかに人のそれとは異質であり、異常なものであった。

ディー「…すみません。馬鹿な人間どもがたてつきましてね」

???「この街での予定はこなした。遊んでいる暇はない。ゆくぞ」

ディー「はっ」

どうやら、ドラゴンよりも上の存在に当たるのか、あの強靭、凶悪なドラゴンでさえ彼の前にひれ伏していた。

ほむら「まち…なさい!」

ほむらは立ち上がるも、満身創痍でいまにもたおれそうだった。

???「ほぉ? まだ抵抗するか」

男はほむらをにらむと、魔力をこめた一撃をほむらに放つ。

ほむら「ぐ!」

ほむらは防ぐ隙もなく攻撃をくらい、吹き飛ばされ、瓦礫に埋もれる

ほむら「…くっ!」

ディー「俺たちの行く手をさえぎるとは命知らずだな! この場で食い殺してやる!」

ドラゴンは凄むと、再び大気を肺いっぱいに吸い込み、炎を吐き出そうとする。

???「待てディー。いっただろう? われわれは急がねばならんのだ」

ディー「しかし!」

???「ほうっておけ。人間の命などやわすぎるわ。何かを成し遂げるだけの時間を持たぬ」

男の制止により、ドラゴンはしぶしぶ攻撃を中断した。

ほむら「……」

???「弱きものよ! わずかな寿命を全うして、ささっと死ぬがよい!」

男はほむらたちゴーレム山賊団をごみを見るような目で見下すと、ドラゴンの背に乗り、かなたへと飛び去った。

薄れ掛けていく意識の中、ほむらは団員たちが自分の名を呼ぶ声を聞き、危険が去ったことを知る。

普通なら、ドラゴンの一撃の時点で死は決定的なものだが、あいにくと不老不死は自分を簡単には死なせてくれない。

ほむらはまた死ぬことができなかったと心の中でつぶやくと、戦いの疲労によって訪れた眠気に身をゆだねた。

こうして、魔物が去ったバルクウェイの街に無事新年がやってきた。

勝利の美酒に酔いしれた人々はいやがうえにも盛り上がり、大人も子供も七日七晩、寝ずに歌い、踊り明かしたという。

そしてその祭りの主役は、いまや街の英雄、ゴーレム山賊団に他ならなかった。

ウィッペル「おいしい! 記録しなきゃ! 祭りのごちそうはやっぱりバルクウェイが一番だよ!」

ウィッペルは両手に持ったご馳走をほおばりにながら、彼が記録している料理日記を取り出すとすぐにいきいきとしながらそのごちそうについてを書き込んだ。

ほむら「ウィッペル…、たべるか記録するかどっちかになさい。よそ見してるとこぼすわよ」

ほむらはその光景をほほえましくみていた。まるでお母さんのようである。

ウィッペル「あ! ほむら団長! たべるかい? もも肉もう一本もらってこようか?」

ほむら「遠慮するわ。握手のしすぎで手が痛いの。少しやすませて頂戴」

ウィッペル「わかった! じゃあほむら団長の分まで食べてくるよ」

ほむら「……」

ほむらはウィッペルのことを見送ると、ぼんやりとさっきのことを考えていた

すると、奥からマミがやってきて、ほむらの隣に座った。

マミ「あの男のことをかんがえているのかしら?」

ほむら「えぇ。まんまと逃がしてしまったわ。…いや、相手にすらさせてもらえなかったわね。あんなに強いやつが存在するなんて」

マミ「このままでは人類が危ない、かしら?」

ほむら「!?」

マミ「わたしは魔物たちの行方も気になるけど。わたしはあのピンクの髪の女の子の言ったことが耳から離れないの…。単なる脅しにしては冷静すぎるわ」

ほむら「あの女のいってたことが事実だと?」

マミ「少なくとも、私たちのちからの見立ては正しいわ」

マミそういうと、奥の方でごちそうを食べているウィッペルに視線を向けた。

ほむら「…」


あの女の子の言うことがほむらの頭の中を残響する。

?「必要のないものを囲っておけるほど、あなたの部隊には余裕がないはずだよ」

ウィッペルの戦力を考えると、どうにも否定できない自分がたしかにいたのだ。

その思いと彼の育ての親である自分としては彼とともにいたいという思いがほむらをせめぎあっている。

リリー「あ、ふたりともこんなところにいた! ほむらもマミさんもきて!」

ほむらが頭を悩ませていると、リリーがやってくる。

ほむら「どうしたの? また魔物でもやってきたのかしら?」

リリー「ちがうちがう! ガレフがぶどう酒のたるに頭を突っ込んだまま抜けなくなってるの! もう傑作」

リリーは腹を抱えて笑っていた。

リリーたちゴーレム山賊団の陽気な宴をみて、ほむらの悩みは少し晴れた。

マミ「ふふ、それは見ものね」

リリー「こっちこっち!」

そして夜は更けていく。

宴はまだはじまったばかり、ほむらはくすりとわらいながら彼らの宴の円に混じっていった

ほむら・暁美・ボアル率いるゴーレム山賊団。

彼女たちの長い長い物語はここからはじまる。

中世アクラル100年史考~11世紀アクラル大陸の奇跡とその功労者~

これは、世界の危機に立ち向かった魔法少女、そして名もなき勇者たちの戦いの記録である。

http://www.youtube.com/watch?v=svv3jjkg8hu


第一章 the nightmare begins 完

次章へ続く

chapter 2 sword of the guardians
and
フリー最強伝説の幕開け

リリー「ほむら! また昼寝?」

ほむらがあの事件のことについて頭を悩ましていると、リリーがやってきた。

ほむら「…おきてるわ。町へ行ってきたの?」

リリー「うん。ウィッペルと買出しにね。あと、ほむら、何か気づかない?」

ほむら「服にしみでもつけたのかしら?」

リリー「…聞いたのが間違いだった…」

ほむらの鈍感さにリりーはあきれたように深く嘆息をつく。

ほむら「? そういえば、ウィッペルは?」

リリー「町で買った干しなしが気に入ったらしくて記録中」

ほむら「もう、あの料理日記は10冊目のはずよ…」

ほむら「あの情熱をすこしでも、戦闘に傾けてくれないかしら」

リリー「あはは! そしたらウィッペルじゃなくなるわよ」

ほむら「ふふ、そうね」

リリー「そうそう! 町で百合エルさんに赤ちゃん見させてもらってきたんだ!」

リリー「フウリちゃんっていってね。名前のとおり、ふわふわした感じの子だったわ」

町での出来事を嬉々として話すリリー。

ほむら「へぇ…」

リリー「わたしだったら、なんて名前つけるかなぁ」

リリー(でも、女の子同士ではこどもはつくれないんだよね…)ポツリ

ほむら「ふふ、気の早い話ね」

リリー「ほむらはなにがいいとおもう?」

ほむら「なんでわたしに決めさせるのよ!?」

いくらほむらが女の子とはいえ、300年もの間、その身に不釣合いな無骨な大剣を振ってきたのだ。あいにくほむらには疎い話だった。

リリー「いいじゃない。ほら選んで?」

>>57

1.中沢
2.ショウ
3.アレフ
4.ゲフャッハー



リリー「ゲフャッハーか…。うん! これが一番いいね!」

ほむら(あれ…冗談でいったつもりなのに…。ほんとうにdqnネームをつけそうな勢いね)

リリーとホムラが歓談をしていると、ガレフが街の見回りから帰ってきた。

ガレフ「やれやれ…街の見回りやっと終わったぞ」

ほむら「お疲れ様、今日も何もなかったかしら?」

ガレフ「あぁ。魔物のいる様子はない。変わり者ならいたがな」

リリー「あ! わたしも見た! <ネルゴーの案内人>の集会でしょ?」

ガレフ「オリコ=ミクニの予言を聞く! って逆立ちしてたぜ」

ほむら「芸人にでもなったほうがいいんじゃないかしら」

リリー「いたってまじめみたいだけどね」

ガレフ「ん? リリー、お前顔に何か塗っているのか?」

ガレフはいつもとは違うリリーの様子に気がつき、リリーにたずねる。

リリー「町までの道に姫キンギョ草があったの。顔料にも使えるからちょっとね」

ほむら「ふーん」

興味をもったほむらがリリーを凝視していると、リリーは見る見るうちに赤面になっていった。

リリー「やだな! あんまりじっくり見ないで。わ、わたし夕飯の支度してくるね」

リリーは逃げるように厨房へ向かった。

ほむら「よく気づいたわね」

ガレフ「むしろ気づかなかったのか?」

ほむら「まったく」

ガレフ「わかってねぇな…。女同士ってのもわかんねぇが」

ほむら「? ちょっと夕飯まで町を散歩してくるわ」

ガレフ「ああ」

街を散策していると、マミの姿を見かけたのでほむらはマミに近寄った。

マミ「あ、暁美さん。ちょうどいいところにきたわね。…ほら、この人が団長よ」

マミがそういうと、奥にいた人影をほむらの前に立たせた。

高身長な若者で、若い血潮を肌で感じ取れる。

フリー「あの、はじめまして! おれ、フリーといいます。あの、999年のたたかいで、その」

フリー「”ゴーレフ”山賊団の”ご活躍”をみて”ご覧になって”、その…すっかりあこがれちまったのであります1」

ほむら「…ゴーレフ…? で、何のようかしら」

マミ「新しい入団希望者よ。…ちょっと緊張しているみたいだけど」

フリー「はい! よろしくお願いします!」

ほむら「あなたはなにができるの?」

フリー「はいっ! 弓にはちょっとした自身が。あ、あれ…?あれ?」

マミ「あらあら、肝心の弓をわすれたの? ふふふ」

フリー「す、すみません出直してきます!!」

そういうと、フリーは街の喧騒へきえていった。


マミ「ふふ…面白い子ね」

ほむら「逆に不安よ…」

マミ「彼の目を見たでしょ? あの力強さ! 本物よ」

軽くおどけた様子でマミはいった。

ほむら「…じゃあつぎあったら、ゴーレフ山賊団じゃなくてゴーレム山賊団だって伝えてくれるかしら?」

マミ「くす…」

ほむら「ふふ…」

二人「あはははは!」

しばらくの間、二人はわらいあった。
しかし、このフリーと呼ばれる男。

二人は後に山賊団の守護神ストライク「フリー」ダムといわれることをいまはまだ知らない。

ほむら・暁美・ボアルの脚は自然と人気のない街のはずれにむかっていた。

ほむら「ほーむほむほむ、雨の日は。ほーむほむほむほむほむほー」

???「なにをぐずぐずしてるの?」

ほむら「あなたは…! …わるいけど話しかけないでくれるかしら。いまはかんがえごとをしてるの」

???「団員一人切れずになにが団長なの」

ほむら「聞こえないのかしら? これはゴーレム山賊団の問題よ」

???「ひいては世界の問題だよ」

ほむら「なんだって!」

???「対局をよくみて。ほむら・暁美・ボアル。あなたの部隊はこれからもっと強く並んないと来るべく魔物に太刀打ちできないよ?」

???「だったら部隊の戦力を半分をする枷なんてまっさきに外して、新しい戦力をいれるべきだよ」

ほむら「だめよ!」

???「? なんで? あなたも私と同じ結論に達しているはずだよ」

ほむら「わたしは違うわ! 私は戦力にならないからあの子をはずそうとしているわけじゃないわ!」

???「…人間っていうのはめんどくさい考えをもつんだね」

???「けど、ほむら・暁美・ボアル。最優先事項は忘れちゃいけないよ。あなたは他の人とは違うの…。あなたしかできない大きな仕事があるの」

ほむら「! …みんなとはちがう…。」

その晩、団員たちがしびれを切らしてさがしにくるまで、ほむら・暁美・ボアルはその場にいた。

動けずにいた。

そしてその日、眠りにつくまでの間、ベッドの上でいつの間にか眠りにつくまで今日のことを反芻していた。

rule of the braves "戦いの掟"

1000年 42日 鉱山の街バルクウェイ ゴーレム山賊団アジト

町外れで謎の女にあったことを、ほむら・暁美・ボアルには言わなかった。

日常が平和であればあるほど、考える時間は増え、その秘密が彼を締め付ける。

ウィッペル「ほむら団長、ついに僕はやったよ! 7尾のトカゲを手に入れたんだよ!」

ほむら「七尾の…トカゲ?」

ウィッペル「幻の三大珍味のひとつだよ! 今日街の市場へ行ったら売られてたんだよ! さっそくシチューを作ってみたんだよ。えへへ、食べてみる?」

ガレフ「ウィッペル! 幻の珍味が街で売ってるはずがないだろ! そんなのより、マミさんのお菓子をたべようぜ! それにそんなの偽物に決まってるだろ? 腹壊すに決まってる」

ウィッペル「あ! ひどいな! なんてこというんだ」

ほむら「わたしはシチューを食べないわ。ウィッペル、あなたもたべないで」

ほむらは得たいのしれないものの入ったシチューが団員たちの腹を壊すことを危惧し、シチューを食さないように促す。

ウィッペル「え?」

ほむら「山賊団は戦いが仕事なの。体調管理は万全を期すに越したほうがいいわ」

ほむら「……あなたも、団員なら自覚を持ちなさい」

ウィッペル「ご、ごめんなさい」

ガレフ「ほむら…?」

リリー「ほむら!」

ほむら「リリー! どうしたの?」

ほむらがウィッペルを叱りつけていると、街で買出しに出ていたリリーが戻ってくる。

その声色には焦りが含まれており、何事かとほむらは訪ねた。

リリー「大変なの! 坑道に魔物が現れて」

ほむら「魔物!? もしかしてドラゴン?」

リリー「わからないわ。とにかくはやく!」

クリス坑道、坑道入口

坑道にはターコイズドラゴンが待ち構えていた。

タコドラ「がぁぁぁぁ!!!」

猛々とした咆哮が地鳴りとなって坑道全体を揺さぶるように響き、団員たちを威嚇する。

ほむら「いくわよ!」

山賊団「おうっ!」

山賊団は武器を構えると、威嚇にも怯まずに立ち向かった。

ウィッペル「うわぁ! いてて」

ほむら「どうしたの?」

ウィッペル「えっと…えっとね……、僕、お腹がいたくて」

ほむら「ウィッペル、あなたまさか…。くっ、ひとまず退却よ!」

ウィッペルの身を案じ、ほむらは山賊団を速やかに退却させる。

ターコイズドラゴンは威嚇を続けたが、幸いなことに追ってくる気配はなかった。

バルクウェイの街に着き、ウィッペルを含むゴーレム山賊団が無事なことを確認すると、ほむらはほっと胸をんなでおろし、すぐに走ったためか肩で呼吸を繰り返しているウィッペルをきっ、とにらんだ。

ほむら「ウィッペル…あなた7尾のトカゲを食べたのね?」

ほむら「なぜ食べたりなんかしたの? 私はやめなさいといったはずでしょ!?」

ほむらは先ほどの忠告を受けなかったウィッペルに対し、いつもとは違う剣幕でしかりつけた。

普段はめったに見せない表情を見せたほむらにウィッペルは親にしかりつけられる子供のように萎縮し、目に涙をためた。

ウィッペル「…ご、ご、ごめんなさい。ボクね、あの…その…あの」

ウィッペルは忠告を破ったことに素直に謝ることしかできず、言葉もしどろもどろになる。

ほむら「だまりなさい! あなた一人の怠慢がゴーレム山賊団全員を危険にさらしたのよ!」

うぃっぺる「うぅ…ごめんなさい、ごめんなさい」

リリー「まぁまぁ……ブラッド。ウィッペルも謝ってることだし」

ガレフ「幸い、俺たちにも怪我はない。ウィッペルの回復を待って再挑戦と行こうぜ」

怯えるウィッペルをみかねて、ほむらを鎮めようとリリーは二人の間を割って入った。

マミ「取り込み中のところ悪いけど、暁美さん…お客さんよ」

ほむら「客?」

剣呑な雰囲気のなか、マミは客を招いた。

フリー「は、はじめまして…じゃなくて。その…こんにちは。フリーです! 今日こそ入団させてください! 弓だってちゃんと持ってきました!」

その客とは以前、街で出会った若者、フリーであった。

マミ「…暁美さん、あなたが決めて。ゴーレム山賊団の団長はあなたなのだから」

ほむら「……」

リリー「…ほむら? まさか?」

ガレフ「なに悩んでいるんだよ! ウィッペルをはかりにかけるつもりか!」

ウィッペル「ほむら団長? 僕、がんばるよ!」

ウィッペルは自分が山賊団を抜けさせられるの危惧し、ほむらが決断を下す前に必死に訴えかける。

ウィッペル「もう買い食いはやめるよ! 料理日記だってつけない! 毎日団員の自覚を持って訓練に励むから…だから!」

ウィッペル「ぼくを…僕をゴーレム山賊団にいさせてください!」

ぽつ…ぽつ…と、瞳にたまった涙は重力に引かれて玉となって床に落ち、砕ける。気づけば、床一面に涙のしみをつくっていた。

ほむら「>>83

1「ウィッペルを山賊団に残す」
2「山賊団から抜けさせる」

2

ほむら「残念だけど、ウィッペル…これ以上、あなたに山賊団は無理よ。おいておくわけには行かない」

ウィッペル「う…ぅ、僕のうちはここだよ? だってほむら団長といられるのはここしかないじゃないか!」

ほむら「…悪いけど、戦力にならないものにねぐらを提供できるほど余裕はないわ」

それは、残酷な宣告であった。ウィッペルにとって、ゴーレム山賊団…そしてほむらは育ての親のようなものである。そんな自分の居場所である山賊団からいられなくなるのだ。家族から捨てられたようなものである。

ウィッペル「うぅ、うぅぅ…わかったよ!」

ウィッペルは自暴自棄になったかのように乱雑に自分の荷物を取って、山賊団アジトから団員たちを縫うように出て行く。

あわてていたためか、ウィッペルの荷物から料理日記が零れ落ちた。

リリー「あ! ウィッペル!! 料理日記が……」

リリーは落ちた料理日記を拾い上げる。

ウィッペル「それ…あげる! 僕、もういらないから…えへへ、結構いい料理のってるんだよ。もし邪魔だったら…火にでもくべて」

ウィッペルは自分のすべてとも言える思い出の詰まった料理日記に一瞥くれると、無理をした笑顔でそういった。目の端には涙が絶える事はなかった。

リリー「そんな、だめよ…」

ほむら「ウィッペル!」

ほむらはウィッペルに歩み寄り、10冊にのぼる料理日記を無理やり持たせた。

どこに行くときも手放さなかったため表紙は黒ずみ、過度は擦り切れている。

ほむら「コレはあなたが持ち続けなさい。そして書き続けるのよ! わかってる? こんなすごい料理日記あなたにしかかけないのよ」

ウィッペル「……」

ほむら「買い食いもやめることはないわ! 食いしん坊なところも泣き虫なところも全部!あなたの長所よ」

ウィッペル「うそだ…こんな僕だから…ゴーレム山賊団にいられなくなったんだ」

ほむら「ウィッペル…わたしはあなたがあなたのままでいてほしいのよ」

ウィッペル「何だよ、それ! わかんない! ほむら団長、わかんないよ!うわわぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」


ウィッペルは堰を切ったように泣き出すと、アジトから出て行った。

ゴーレム山賊団から、騎士ウィッペルが脱退しました。

去っていく、ウィッペルの姿が見えなくなっても団員たちは消えていった地平線を見続けていた。

しばらく、気まずい沈黙が山賊団をただよった。

ほむら「……」

ほむら「フリー!」

そんな沈黙を切り裂いたのは、他でもないほむらだった。

フリー「は、はい!」

ほむら「初めての実戦はなれないだろうから、巴マミからいろいろ教えてもらいなさい」

フリー「あ、はい! わかりました」

ゴーレム山賊団に、アーチャーのフリーが入りました

ほむら「……よし、みんないくわよ」

リリー「ほむら…」

ガレフ「……」

ウィッペルの別れを誰よりも悲しんでいたのはほむらに他ならなかった。いつも屈託のない笑顔を見せていたのがもうそこにはない…。育て親として、団員たちよりも深い嘆きに陥っていた。

ほむらの悲しみの隠し切れない表情と手の振るえをリリーとガレフはそのことを理解した。

マミ「季節がめぐれば、人は育つわ。あなたの気持ちはいつかきっと、ウィッペルや他の団員たちにも伝わるわ」

ほむら「…みんなの季節は、短すぎるわ…」

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