藍子「山での遭難と、『幸せを拾う冒険』」 (102)
このSSはシンデレラガールズの二次創作です
登場人物:高森藍子 , プロデューサー , 他
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1454555940
P「大変なことになった」
P「まさか・・・・」
P「山の真ん中で遭難しちゃうなんて」
藍子「ど、どうしましょう、プロデューサーさん」アタフタ
P「・・・・藍子と二人で」
―――数日前・事務所にて―――
ちひろ『△△日、プロデューサーさんと藍子ちゃんには』
ちひろ『京都でお仕事してもらいます』
藍子『わかりましたっ』
P『わかってます』
莉嘉『えー! Pくん京都いくの!?』ササッ
P『莉嘉? うん、そうだけど』
莉嘉『じゃあじゃあ~! 八つ橋、お願いね☆』
P『八つ橋? もちろん、いいけど』
莉嘉『ワーイ☆』
アーズルーイ!
ワイワイ…アタシモー…
P『わかった、わかった。メモとるから順番に頼むよー』
ガヤガヤ…
ちひろ『プロデューサーさん、大忙しですね~』
藍子『お土産買うときは、私もお手伝いします』
ちひろ『藍子ちゃんは自分用のお土産とか決めてるんですか?』
藍子『えーっと』
藍子『・・・・』
藍子『そのときに、見て決めますっ』フフッ
ちひろ『私のお土産もよろしくお願いしますね』フフッ
……
…………
P「京都に着き、お仕事も無事に終わって、」
P「一泊した後、夕方の新幹線で戻る・・・・」
P「はず、だったんだけど・・・・」
スタッフ『知ってますか? あの山を登った先に、社とすっごく美味しい水があるんですよ』
P「・・・・」
P「多分、教えてくれた場所が間違ってたと思う」
P「登ってみたら何もなさそうで、戻ろうとすると複雑かつ分岐多し」
P「気づけば遭難、圏外ピンチ」
P「・・・・」
P「藍子・・・・ほんと、ごめん」ズーン
P「迂闊だった・・・・」
藍子「お、落ち込まないでください!」
藍子「登ろうと決めたのは、私もですからっ」
藍子「・・・・」
藍子「私も、歩いた道をしっかり覚えるべきでした・・・・」ズーン
藍子「・・・・」
P「・・・・」
…………
…………
P「・・・・過ぎたことは後にしよう」
藍子「・・・・はい」
P「この状況を何とかしよう!」
藍子「・・・・はい!」
藍子「でも、どうするんですか?」
P「・・・・」
藍子「"遭難したときは、じっとしたほうがいい"」
藍子「そう聞いたことが、ありますけど・・・・」
P「いや、まだ明るいし天候も悪くないから」
P「見晴らしのいいところまで登っていこう」
藍子「・・・・!」
藍子「登るんですね」
P「下りたい気持ちになるけど・・・・」
P「向かうべき先がわかれば、何とかなると思うんだ」
P「それに、電波が通じない場所にじっとするのも危険だからね」
P「それじゃあ、行こう」
藍子「はいっ」
P「緩やかな斜道だけど、足場や滑りには気をつけて」
藍子「わかってます」
ザッザ…
ザッザ…
ザッザ…
P「・・・・」
ザッザ…
藍子「・・・・♪」
……
…………
ザッザ…
藍子「あのっ」
藍子「ちょっとした好奇心ですけど」
P「うん?」
藍子「下っていたら、どうだったんでしょう」
P「うーん。俺もくわしくないから・・・・」
藍子「川っぽいのが流れていましたから、それに沿っていったら・・・・」
P「出口に着くなんてことも?」
藍子「はい」
P「たしかに着ける気もするんだけど」
藍子「あっ、でも! 登るほうが、正しいと思いますっ」
藍子「もしかしたら山の中の湖に繋がっていて」
藍子「山の真ん中に到着・・・・なんてこともありえますから」
P「・・・・!」ハッ
藍子「プロデューサーさん?」
P「藍子・・・・」
P「えらい!」
藍子「ええっ!?」
P「そこまで考えが回るなんて、スゴい!」
P「さっすが藍子! あっははは!!」アハハハ
藍子「プロデューサーさん・・・・?」キョトン
P「・・・・」
P「いや、まあ・・・・」
P「じつは登るのが正しいか半信半疑だったんだ」
P「でも、決心がついた」
P「見晴らしのいい所まで登って、出られる場所を見つけよう!」
P「・・・・湖か、考えもしなかった」ボソッ
P「ありがとう、藍子」
藍子「い、いえっ、たいしたことないですっ」
藍子「・・・・」
藍子「私だけだったら、登ろうとするかな・・・・」
藍子「・・・・」
藍子「プロデューサーさんの方が、すごいですっ」
ザッザ…
ザッザ…
P「それにしても、山がこんなに静かなんて」
藍子「プロデューサーさんは、どのようなのと思ってたんですか?」
P「蝉の音がイヤほど鳴り響いて」
藍子「いま、夏じゃないですから」フフッ
藍子「それに、静かですけど・・・・」スッ
チュン……チュン…
チョロチョロチョロ……
―――……-……
藍子「鳥さんの鳴き声、聴こえます」
藍子「水の音も、風の音も」
P「自然の音、か」
藍子「プロデューサーさんも聴いてみてください」
藍子「ゆったりした気持ちになれますよ」
P「・・・・そうだね」
P「歩いているだけじゃ、気も滅入ってきちゃう」
P「道中、気持ちラクにいこう」
藍子「はいっ」
ザッザ…
ザッザ…
藍子「プロデューサーさん、後ろ見てくださいっ」
P「山というより、森の中って感じだ」
藍子「・・・・」パシャリ
藍子「せっかくですから、撮っておきますっ」
P「それじゃ、藍子が映ってるのも撮っていい?」
藍子「プロデューサーさんのも撮らせてくださいね?」スッ
パシャリ
ザッザ…
P「・・・・♪」
ザッザ…
藍子「・・・・♪」
P「あっ」ピタッ
藍子「どうかしました?」
P「あそこ、足場が崩れてる」
藍子「踏み外したりしたら・・・・」
P「急だから、下まで転がり落ちるね」
P「念のため、あそこまでも慎重に」
藍子「は、はい」
ススッ
ススッ
…………
藍子「ここから、どうするんですか?」チラッ
P「・・・・」
P「・・・・」
P「よっと」ヒョイ
藍子「プロデューサーさん!?」
スタッ
トトッ…
P「・・・・よし」グッ
藍子「よし、じゃないです!」
藍子「い、い、いきなり『ヒョイ』って飛ばないでください!!」
P「足を伸ばすだけじゃ無理かなって思って」
藍子「あぶないですっ」ムッ
P「うっ・・・・」
P「・・・・ごめん」
藍子「・・・・」
藍子「何事もなくてよかった・・・・」ボソッ
スッ
P「さ、次は藍子だ」
P「手を伸ばして。掴んで、勇気を出して飛んで」
P「引っ張って、抱き止めるから」
藍子「わ、わかりましたっ・・・・」
…………
藍子「・・・・」
藍子「すこし・・・・待ってください」
P「うん」
藍子「・・・・」スー…ハー…
藍子「プロデューサーさん」
藍子「ぜったいに、離さないでください」
P「腕がなくなっても、離さない」
藍子「それ、ヘンです」フフッ
P「それくらいってこと。安心して」
藍子「・・・・」
藍子「藍子、いきますっ」
スッ(Pの手)
P「・・・・」
藍子「・・・・」
スッ(藍子の手)
藍子「・・・・」
P「・・・・」
ギュッ
藍子「・・・・っ!!」ピョンッ
P「!!!」グイッ
ダキッ!!
P「・・・・」
藍子「・・・・」
…………
…………
藍子「・・・・ぁ」ハッ
P「よかった。何事もなかった」
藍子「は、はい・・・・」
スッ
藍子「あ・・・・ありがとうございます・・・・」
藍子「・・・・」
ザッザ…
P「藍子、疲れた?」
藍子「大丈夫ですよ」
P「疲れたらいつでも言って。危なくない場所なら、背負うから」
藍子「背負う・・・・?」
P「? おんぶのことだけど」
藍子「・・・・」
藍子「だ、大丈夫ですっ」
P「ダメなときは、遠慮せず言うんだよ」
ザッザ…
P「・・・・♪」
ザッザ…
藍子「・・・・」
ザッザ…
藍子「あっ!」
P「道路が見える!」
藍子「あそこから、道路に出れますよね?」
P「うん」
P「道路があるということは、あの道路に従っていけば・・・・」
藍子「下山できるかもしれないです」
P「・・・・よし」
P「ちょっと危ないけど、少し下りて真っ直ぐ向かおう」
藍子「はいっ」
……
…………
………………
スタッ
P「アスファルトの感触、なんだか懐かしい」ハハッ
藍子「さっきよりは、安心ですね」
P「あ、そうだ」ピッ
P「・・・・」
P「うん、電波もつながってる。位置情報も・・・・うん」
P「それじゃ、この道路を下りていこう」
藍子「はいっ」
トテトテ…
藍子「・・・・」
トテトテ…
藍子「・・・・っ」
P「・・・・」
P「藍子」
藍子「な、なんですか・・・・?」
スッ
P「はい」しゃがむ
藍子「えっ・・・・」
P「足、痛いんだろ?」
藍子「・・・・」
P「遠慮しない」
藍子「・・・・」
藍子「・・・・すみません、プロデューサーさん」
P「気にしないでいいよ。こっちこそ、すぐ気づけなくてゴメン」
ヒョイッ
藍子「重い、ですか?」
P「翼を得た感じ」
P「それより、しっかり捕まって」
藍子「はい」ギュッ
テクテク…
テクテク…
P「揺れてない?」
藍子「快適です♪ プロデューサーさん」
テクテク…
P「・・・・」
テクテク…
藍子「・・・・」
テクテク…
P「だいぶ暗くなってきた」
藍子「そうですね」
テクテク…
テクテク…
テクテク…
テクテク…
藍子「・・・・」
藍子「・・・・アツい・・・・です」ボソッ
P「まさか熱!?」ビクッ
藍子「あっ、そうじゃないです。頭も痛くありません」
P「ほんとう?」
藍子「ほんとうです」
P「ほっ・・・・」テクテク
藍子「・・・・」ギュッ
テクテク…
P「・・・・」
テクテク…
藍子「・・・・」
テクテク…
テクテク…
藍子「・・・・」
藍子「あの、プロデューサーさん」
P「なに?」
藍子「ヘンなこと・・・・聞いてもいいですか?」
P「遠慮なく」
テクテク…
藍子「私、お仕事ちゃんとできてますか?」
P「今日の仕事は大成功だったよ」
藍子「今日だけじゃなくて・・・・」
藍子「・・・・」
藍子「・・・・ときどき、不安になるんです」
P「不安?」
テクテク…
藍子「まだアイドルとした始まったばかりですけど・・・・」
藍子「これから、上手くやっていけるかどうか・・・・」
藍子「・・・・私は、プロデューサーさんの・・・・」
藍子「・・・・」
藍子「私、普通の子です・・・・」ギュッ
P「・・・・」
テクテク…
P「・・・・」
P「前、スカウトした時にも言ったけど・・・・」
P「普通、普通じゃない。そういうのは、どうでもいいんだ」
P「藍子は、アイドルとしての可能性に満ちている」
P「初めて会ったとき、スカウトしたい衝動に駆られるほど」
テクテク…
P「確信に満ちた、何かだった」
P「お仕事もしっかりできている。藍子は、これからもっともっと輝いていく」
P「・・・・確信は続いてるよ」
P「それに・・・・」ピタッ
P「もし、藍子が躓いてしまうことがあっても」
P「俺が支える。必要なら、背負って歩いてあげられる」
藍子「・・・・」
P「だから・・・・」
P「一緒に、頑張ろう」テクテク
藍子「・・・・」
藍子「・・・・はいっ」ギュッ
テクテク…
テクテク…
P「・・・・」
テクテク…
藍子「・・・・」ウトウト
テクテク…
テクテク…
…………
P「けっこう長いな、この道路・・・・」
P「藍子、もうちょっとの辛抱―――」
P「―――藍子?」
藍子「・・・・すー・・・・すー・・・・」
P「・・・・寝ちゃったか」
テクテク…
P「いよいよ夜だ・・・・」
テクテク…
テクテク…
P「・・・・」
テクテク…
藍子「すー・・・・すー・・・・」
テクテク…
P「・・・ぼーくはー・・・」
P「どうしてー・・・おとなにーなるんだろうー・・・♪」
テクテク…
P「ああ・・・ぼくはー・・・」
P「いつごろー・・・」
P「おとなにー・・・なるんだろうー・・・♪」
テクテク…
藍子「・・・・」
……
…………
P「・・・・あ」
P「あそこの家、明かりがついてる・・・・!」
―――木造の民家―――
コンコン
ガラッ
P「失礼します!」
爺「ん?」
P「ああ、よかった」
P「あの、じつは山で遭難してしまい・・・・」
爺「遭難?」
P「そうなんです」
爺「・・・・」ジー
爺「それは災難だったね」ハハハ
爺「事情はわかった。ひとまず、お嬢さんを座らせてあげなさい」
P「ありがとうございます」
P「藍子ー」ユサユサ
藍子「起きてますよ、プロデューサーさん」
P「あっ、そうだったんだ」
P「・・・・降ろすよ?」
藍子「どうぞっ」
スタッ
藍子「おじいちゃん、ありがとうございます」ペコリ
爺「なんの、なんの」
トットットッ…
婆「アンタ、どうしたんだい?」
爺「遭難者だと。バーサン、地図どこにやったっけか」
婆「アンタに預けたじゃない」
爺「そうだっけ?」
婆「たしか二階じゃなかった?」
爺「探してくる」トットットット
スタスタ…
婆「災難だったわねー。お茶淹れてあげる」
藍子「えっ、お、おかまいなくっ」アタフタ
婆「遠慮しないの。その遠慮は幸せが逃げるよ」
藍子「・・・・」
藍子「いただきますっ」ペコッ
…………
婆「アンタ、どっから来たんだい?」ズズッ
藍子「えっと、山で遭難して・・」
婆「そうじゃなくて、元々の」
藍子「あっ。それなら・・・・」
…………
婆「へぇ~アイドル! たしかに可愛いもんねー」
藍子「そんな、私なんて全然」
婆「まあハッと驚くような感じじゃないね」
藍子「あはは・・・・はい」ズズッ
婆「驚かないけど、可愛い。可愛いよ、アンタ」
藍子「・・・・!」
藍子「て、照れますっ・・・」ズズッ
爺「地図あったぞー」トットット
P「藍子はそのまま休んでて」スタスタ
藍子「はいっ」
…………
爺「うちは・・・・ここだね・・・・」
P「なるほど、わかりました・・・・それじゃあ・・・・」
…………
婆「サイン頂戴!」
藍子「わ、私のですかっ?」
…………
…………
爺「せっかくだ。ウチの車で送ってあげるよ」
P「よろしいのですか?」
爺「ここに行きたいんだろ? 車で行ったほうがダンゼンいい」
爺「近くのバスも、今日は終わっているんだ」
…………
藍子「いつか放送されると思うので、よろしくお願いします」
婆「その番組、予約しなきゃ」メモメモ
…………
―――民家・入口―――
P「助かります。ありがとうございます!!」ペコリ
爺「こんな場所にいると退屈なもんでね。こっちとしても、楽しい!」
藍子「おばあちゃん、ありがとうございましたっ」
婆「いーのよ! とっても楽しかったし、もうファンになっちゃった」
藍子「私も楽しかったですっ」ニコッ
婆「はぁん、可愛いわ~」ウットリ
爺「ほれ、乗った乗った」
バタンッ
爺「よーし、行くぞー」
ブロロロロロロロ…
……
…………
…………
藍子(こうして・・・・)
藍子(私とプロデューサーさんは、無事に宿へ戻ることができました)
…………
…………
…………
―――翌日―――
―――民家―――
コンコン
ガラッ
P「失礼します」
藍子「失礼しますっ」
爺「おやおや、昨日の!」
P「昨晩は、本当にありがとうございました」ペコリ
P「本日は、あらためてお礼に伺いに来ました」
婆「まあまあ私のキューティーハニー!」ニコニコ
藍子「おばあちゃん、こんにちはっ」ニコッ
…………
―――道路―――
テクテク…
テクテク…
P「足の方は大丈夫?」
藍子「はいっ、全然、へっちゃらですっ」
P「しかし、言われたときは驚いたよ。お礼に行くのは考えていたけど」
P「昨日の道路をお散歩したいなんて」
藍子「昨日は災難でしたね」
藍子「終わって、無事だったから、もう思い出になってますけど」フフッ
P「川沿いに下ると危険って、おじいさんに教えてもらったときは背筋が凍ったよ」
藍子「私もですっ」
P「何も知らない人は、焦って下りそうだ」
P「山の遭難とは、恐ろしい・・・・」
藍子「お互い、無事でよかったです」
P「まったく。もう二度とこんな事にならないよう、肝に銘じます」
テクテク…
テクテク…
P「足場のときは、正直かなり怖かった」
藍子「私も怖かったです。足なんて、震えてました」
P「何か起きるんじゃないかと心配で仕方なかった」
P「でも絶対に何事も起こさない。その気持ちだったよ」
藍子「あのときは、思いっきり抱きついちゃって・・・・」
藍子「・・・・」
藍子「い、いま思い出すと、恥ずかしいですね・・・・」
P「? そうかな」
P「無事に渡れたー! って安心が大きかったけど」
藍子「・・・・あはは」
藍子「そうですね。私も、ほっとしました」
P「道路が見つかったのは本当によかった。あとは下るだけだったから」
藍子「背負ってくださって、ありがとうございます」
P「お礼されることじゃないよ」
P「あのまま藍子を歩かせる方が、ツライ」
テクテク…
P「・・・・」
テクテク…
藍子「・・・・」
P「あの山の音も、昨日のことなのに恋しくなる」
藍子「また山に登る機会があれば、聴けますよ」
P「そうだね。今度は、遭難しない形で」
藍子「そうですね」
テクテク…
テクテク…
藍子「あっ、ここから山に入れますね」
P「俺たちが出たのは、もっと先だった気がする」
藍子「いろんなところから道路に出られるんですね」
P「おかげで、俺たちは助かった」
……
…………
………………
…………
P「よし、そろそろ戻ろうか」
藍子「はいっ」
藍子「・・・・」
藍子「あの、プロデューサーさんっ」
P「ん?」
藍子「昨日、歌っていたのって・・・・」
藍子「何の、歌ですか?」
P「起きてたんだ」
藍子「ご、ごめんなさい」
P「気にしないで。聴かれてもよかったし」
P「・・・・まあ、聴くに堪える歌声じゃないけど」
藍子「ふしぎな歌詞でした」
P「昔アニメで主題歌になった曲で、有名だよ」
P「・・・・」
P「・・・~♪」
P「ぼーくはー・・・♪」
P「どうしてー・・・おとなにーなるんだろうー・・・♪」
…………
…………
P「子供の頃、同じように山で遭難してことがあってね」
P「滑り落ちて、川沿いに下って、真っ暗になる直前に脱出できた」
P「いま思えば、奇跡としかいいようがない」
P「でも・・・・遭難してる間、まったく焦ってなかったんだ」
P「それどころか、ワクワクしていた」
P「冒険している気分だった」
P「自分が死ぬかもなんてカケラも思わず、絶対に出られると決めつけて」
P「昨日と同じように、歌をうたいながら下っていった」
P「歌詞の意味なんて、まったくわかってなかったけど」
P「すごく好きだった歌を、うろ覚えで」
藍子「・・・・」
P「昨日、藍子を背負いながら下りている時、それを思い出してね」
P「つい、歌っちゃった」
P「でも歌ってるときの気分はまるで違ったよ」
P「昔みたいに考えなしの無敵じゃない。大切なものも背負っていたから」
藍子「大切・・・・」
P「・・・・」
P「・・・・ごめん、昔話をベラベラしゃべって」
P「つまらなかったよね」
藍子「そんなことないですっ」
藍子「初めて聞きました、プロデューサーさんの過去」
P「知ってるの、家族と同級生の親友と藍子だけじゃないかな」
P「社長やちひろさんにも、話したことないから」
藍子「私だけ・・・・」
藍子「・・・・」
P「・・・・藍子、どうかした?」
藍子「・・・・」
藍子「なんでもありませんっ」フフッ
藍子「戻りましょう、プロデューサーさん♪」
―――民家―――
婆「よかったら、また来てね」
爺「歓迎するぞ!」
藍子「おじいちゃんも、おばあちゃんも、お元気で!」
婆「お礼は藍子ちゃんのサインで十二分よ」
婆「大事にするわね」ニコニコ
P「おばあさん、そのサインは、いずれ誰にとってもすっごい価値のあるものになりますよ」
P「自分が保証します」
テクテク…
P「・・・・♪」
テクテク…
藍子「・・・・♪」
―――バス亭―――
藍子「バス・・・・まだ来てませんね」
P「来る時間調べるから、そこで座ってて」
藍子「はいっ」ストン
P「・・・・」スタスタスタ…
……エート、アトナンプンデ……
藍子「・・・・」
藍子「ああ・・・ぼーくはー・・・」
藍子「いつごろー・・・」
藍子「おとなにー・・・なるんだろうー・・・」
藍子「・・・・」
藍子「ふふっ」
……
…………
………………
藍子(・・・・これで、)
藍子(これで、私とプロデューサーさんの二日間はおしまいです)
藍子(あの出来事は、きっと、もう二度と体験することはないと思います)
藍子(あったとしても、それは別の出来事で、同じ体験ではないはず)
藍子(だから、とても大切な思い出ですっ)
藍子(・・・・)
藍子(あの日の、道路のお散歩は・・・・)
藍子(その大切な思い出を、落し物にしないための時間でした)
藍子(災難の中で感じたモノを、忘れず拾っておくため)
藍子(プロデューサーさんと一緒に、てくてく歩いていって・・・・)
藍子(幸せを拾う、冒険の後の冒険・・・・です)
……
…………
………………
藍子(あっ、そうそう)
―――事務所―――
ガチャリ
藍子(あの出来事は忘れませんけど)
P「ただいま戻りました!」
藍子「ただいまですっ」
ちひろ「二人とも、おかえりなさい!」
みんな「おかえりー!」
藍子(お土産だって、忘れてませんよっ)
P&藍子「はい! お土産っ!!」ジャーン
みんな「やったー!!」ワー
藍子(みんな、幸せな気持ちです♪)
これでおわりです。
読んでくださった方には感謝しかありません。
ありがとうございます!!
おつおつ
川下っていくと危険ってのはなんでなんだろう
>>100
場所次第ではありますが、川の先が滝(崖)だったり、出口につながってなくて森の中で迷う危険もあるのが大きいです
行き止まりだったり迷い続けると精神に余裕がなくなって、無理して事故るケースが目立っているみたいです
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