モバP「飛鳥を探せ?」 (30)
P「なんです、いきなり」
ちひろ「今日は飛鳥ちゃんの誕生日です」
P「ええ。だからこれからプレゼントを渡そうと」
ちひろ「そう。プロデューサーさんはこれから愛のこもったプレゼントを届けにいきます」
ちひろ「しかし、愛には越えるべき障害が必要なのです!」
ちひろ「でっかいでっかい障害が! 山が!」
愛海「でっかいお山が!」
P「なんなの、この人達……?」
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ちひろ「というわけで、カモン晶葉ちゃん」
晶葉「うむ。まずはこれを見てくれ」
晶葉「これは私が節分用に開発した『鬼変身スーツ』だ。これを着ると本物の鬼のような姿に変身できる」
P「あ、さっき俺が着たやつだな。みんなに豆をぶつけられたが、楽しんでもらえてよかった」
晶葉「そしてこっちが、開発段階でついでに作った『飛鳥変身スーツ』だ。これを着ると本物の飛鳥のような姿に変身できる」
P「ついでになんて物を作ってるんだ君は」
晶葉「どんな背丈の人間が着ても、154cm、42kg、75-55-78の体型になる優れものだ」
P「訴えられても文句言えんぞ」
ちひろ「とにかく、現在このスーツをうちの14歳アイドルに着てもらっています」
愛海「その変装メンバーと飛鳥ちゃん本人が、事務所周辺の半径1キロの場所に散らばっているんだよ」
晶葉「助手にはこの中から本物の二宮飛鳥を見破ってもらう。ま、私のスーツの完成度と君のプロデューサーとしての眼力を競うテストと思ってくれ」
晶葉「ちなみにボイスチェンジャーも使っているから声もそっくりだぞ」
ちひろ「一度でも偽物を本物と間違えた時点で失格です。1時間半以内に本物の飛鳥ちゃんにたどり着けたら、豪華賞品をプレゼント!」
愛海「わー、ぱちぱち」
P「なんすかこれ」
P「よくこんな企画にみんな付き合ってくれましたね」
愛海「ウチはみんなノリがいいからねえ」
P「俺は正直乗りたくないんだけど」
ちひろ「欲しくないんですか? 豪華賞品。スタドリ大量ですよ? ゲットできたら相当お金に余裕できますよ?」
ちひろ「そして飛鳥ちゃんの愛もゲットです」
P「愛ってね……それ、愛情じゃなくて親愛の話ですよね?」
P「それに、お金お金と言われましても。愛はお金で買えませんよ」
ちひろ「なるほど、確かに愛はお金では買えません」
ちひろ「しかしお金があったほうが愛は潤います。どこかの誰かが言っていました」
P「うぐっ」
P「結局流されてゲームを受けてしまった」
P「1時間30分か……そもそも半径1キロって普通に範囲が広いぞ」
P「飛鳥の行きそうなところからしらみつぶしに……ん?」
飛鳥?「………」
P「見た目は完全に飛鳥だけど……とりあえず声かけてみるか」
P「こんにちは」
飛鳥?「………」
飛鳥?「帰りたい……なんでこんなことに……」
P「………」
P「この身体中からあふれるネガティブオーラ。すでに察しがついてしまった」
飛鳥?「もりくぼは……あ、間違えた、にのみやはお家に帰りたいんですけど……」
P「よくこんな遊びに付き合ってくれたな、乃々。家に帰って漫画読んでていいぞ」ポン
乃々「ありがとうございます……優しいプロデューサーさんはすきです……」トコトコ
P「あいつ、さっさと見つけてもらうために事務所の近くにいたんだろうな……」
P「さて、急がないと制限時間に間に合わないな。走るか」
P「お、あそこにいるのは」
飛鳥?「………」
P「こんにちは」
飛鳥?「……やあ。Pじゃないか」
P「(お、結構本物っぽい)」
飛鳥?「今日は一段と冷えるね。ほら、吐く息がこんなに白い」
P「そうだな」
飛鳥?「そう、まるで……」
飛鳥?「まるで氷の女神がボクらに試練を与えているかのようだ」
P「………」
P「まったくだ。そのうち大雪でも降るんじゃないかな」
飛鳥?「そうだね、天より魔の氷槍が降り注ぐ時が来るだろう」
P「………」
P「闇に飲まれよ」
飛鳥?「闇に飲まれよ! ……はっ」
P「なかなか上手なモノマネだったぞ、蘭子」
蘭子「うぅ、ばれちゃった」
P「ちょっと表現がファンタジーすぎたな。飛鳥のポエマーぶりとはちょっとベクトルが違う」
蘭子「難しいなあ……」
P「でも、途中までは雰囲気とかも本物そっくりだった。普段から飛鳥のことを見ている証拠だな」
蘭子「えへへ、友達だから……」
P「(飛鳥の皮を被っているからか、えらく素直な言葉づかいがすらすら出てくるな。熊本弁じゃないし)」
蘭子「では我が友よ! また煩わしい太陽が昇る刻に会おうぞ!」フリフリ
P「気をつけて帰るんだぞー」
P「さて、どんどんいこう」
飛鳥?A「今日は誕生日! めでたいね!」
飛鳥?B「めでたいと!」
飛鳥?A「鯛だけに!」
P「君ら、同じ場所に2人固まって鯛の着ぐるみ着てるって、変装する気ないよな」
P「なあ、美羽に鈴帆」
美羽「うそっ! なんでバレたの!?」
P「お決まりのギャグ飛ばしてる時点でだいたいわかるわ」
鈴帆「ウチの隠しきれんオーラが思わず伝わってしまったけんね」
P「オーラというか着ぐるみが隠れてないんだよなぁ」
飛鳥?「プロデューサー! スシ、スシ食べにいくゾ!」
P「ナターリア……このゲームのルール、理解してるか?」
ナターリア「アチャー、ばれちゃったネ!」
ナターリア「このスーツ、胸元がきつくて」ベリッ
ナターリア「お、スッキリしたゾ~」ボヨン
P「胸だけナターリアサイズになっただと……!」
ナターリア「? プロデューサー、どうかしたカ?」
P「いや……巨乳の飛鳥っていうのは、新鮮でな」
ナターリア「?」
飛鳥?「プロデューサーさん! またカニが送られてきたから、ボクと一緒に食べよ?」
飛鳥?「あと、いつもありがとう!」
P「よしよし。一人称しか変わってないけど、よく頑張ったな。美由紀」
美由紀「えへへ」
P「いただいた蟹は鍋に使おう」
美由紀「わーい!」
飛鳥?「フフーン、カワイイボクを見つけてくれたプロデューサーさんにはご褒美を」
P「もうちょっと頑張れ幸子」
幸子「さっきの美由紀さんの時と全然態度が違いますよ!?」
P「だって、幸子と飛鳥はもともと一人称同じだからな。そのぶんモノマネは頑張ってしかるべきだろう」
幸子「正論なようですけど納得がいきません……」
P「そういうな。幸子も一緒に鍋食べよう」
幸子「鍋! しょ、しょうがないですね。今回は許してあげます」
P「カワイイなぁ」
飛鳥?「ふんふーん♪」
P「あそこの飛鳥はサバオリくん持ってるから七海だな」
P「おーい、ナターリアが寿司食べたがってたぞー!」
七海「そうなんれすか~? それなら、一緒にお寿司屋さんに行ってきます~♪」
P「おう、いっといで」
飛鳥?「………」ピコピコ
P「こんな時にもゲームか、紗南?」
飛鳥?「あ、見つかっちゃった。いやあ、どうしてもやらなきゃいけないクエストがあってさー」
P「別に、そこまで真面目に取り組む必要のない遊びだからいいけどな」
紗南「Pさんも今度一緒にやろうよ。手取り足取り教えてあげるよ」
P「そうだな。面白いゲームならやってもいいぞ」
紗南「じゃあ問題なしだね!」
飛鳥?「………」
P「今度は眼帯つけてるから美玲だな。というか七海もそうだが見た目でわかるようにしてどうするんだ」
P「おーい、もうちょっと頑張れ!」タタタッ
『大きなお世話だーっ!』
P「お、後ろから返事かえってきた」
飛鳥?「あっ、プロデューサー!」
P「うん?」
飛鳥?「見てくれ! このスーツ、どうやら身体能力向上機能もついてるみたいなんだ」
飛鳥?「おかげで、ほらっ!」
P「おっ、華麗な回し蹴り」
飛鳥?「だろっ?」
飛鳥?「いいなー、博士にライダー変身スーツも頼んでみようかなー!」
P「そうだな」
P「あ、そうだ。光、鍋は好きか?」
光「鍋? もちろん!」
P「そうか。じゃあ、また明日」
光「うん、また明日……ってあれ? アタシだってばれてる!?」
P「ははは」
飛鳥?「………」
飛鳥?「……しかし、改めて見ても飛鳥ちゃんそっくり」
飛鳥?「………」
飛鳥?「じ、自分のだし、別にいいよね」
飛鳥?「………」モミモミ
飛鳥?「あんっ♪ こ、これは……たまらん!」
飛鳥?「自分のなのに自分のじゃないみたい! このワンダフルマジックな新感覚!」モミモミ
飛鳥?「あっ……ほ、ほんとに気持ちよくなってきちゃった……んん♪」
飛鳥?「お、お山……あたしのお山……飛鳥ちゃんのお山……あぁん♪」フー、フー
P「やめろ愛海! それ以上はいけない!」
P「さて、残り人数も少なくなってきたが」
飛鳥?「ね、ねえ」
P「うん?」
飛鳥?「あの……その」モジモジ
飛鳥?「い、いつもありがとう……!」
P「えっ」
飛鳥?「Pさんのおかげで、私、少しずつ変わることができている……自分の笑顔が、好きになれた気がするんだ」
飛鳥?「だから、本当にありがとう」
P「………」
飛鳥?「面と向かって言うのは恥ずかしいから、こうして変身スーツで顔を隠していないと、Pさんに向けてしゃべれなくて……いきなりで、ごめんね」
飛鳥?「これなら、私が誰なのかわからないと思うから……ゲームを利用させてもらっちゃった」
P「………」
飛鳥?「それじゃあ、また明日――」
P「ああ、ありがとう。うれしいよ、裕美」
裕美「………えっ?」
P「なんか感動だな。裕美の口からそんなことを言ってもらえるなんて」
裕美「え、ちょ……えっ?」
裕美「ど、どうして私だって」
P「いや、そりゃ話の内容で考えればな。あと顔は違っても表情が裕美のものだったし」
P「というか晶葉の発明すごいな。なんでスーツの表情までここまで正確に再現できるんだろう」
裕美「………」ボンッ
P「あれ、どうしたんだ?」
裕美「………」
裕美「い、以上、二宮飛鳥の言葉でした」
P「いやいや、さすがに今さらなすりつけてもごまかせな」
裕美「二宮飛鳥でしたっ!!」
裕美「そういうことにしておいてーっ!」ダダダダ
P「あ、おい……行ってしまった」
P「………」
P「あと10分……疲れた」
P「ちひろさん、変装してるのは14歳アイドルって言ってたよな……晶葉は事務所で待ってるって言ってたから、もう飛鳥本人以外は全員見つけたことになるぞ」
P「あいつ、どこに隠れてるんだ……?」
P「うーん……」
P「………」
P「……待てよ?」
P「確かこのあたりで……いたいた」
P「ずっとここから動いてなかったんだな。ありがたい」
P「いやあ、すっかり騙されるところだった」
P「このゲームは、飛鳥変身スーツを着たみんなが、飛鳥の真似をどれだけうまくできるかが肝だと思っていた」
P「でも実際は、まともに真似していない子のほうが多かった」
P「……だからこそ、逆転の発想が出てくる」
P「飛鳥以外が飛鳥に合わせるんじゃなくて、本物の飛鳥が他の誰かの真似をする……その手が完全に頭から抜け落ちていた」
P「つまり、本物は」
P「ずっと事務所の正面で俺の帰りを待っているフリして、晶葉に化けていた君だ」
晶葉?「………」
晶葉?「根拠は?」
P「俺の知っている二宮飛鳥は、とんでもなくひねくれているということ」
P「あとは、俺の勘だな」
晶葉?「なるほど」
飛鳥「……たいした勘だね。正解だ」ベリベリ
P「あっぶな……ギリギリセーフだったな」
P「晶葉のやつ、自分に変身するスーツも作ってたんだな」
飛鳥「そういうこと。反則スレスレの手だが、ルールには反していないはずだよ」
P「確かに、飛鳥本人が変装しないとは一言も言ってなかったか」
飛鳥「そこそこに、晶葉のペルソナを被ることには自信があったんだけどね」
飛鳥「ただ、同時に……キミなら、ボクを見つけられるとも思っていた」
飛鳥「ちょっとした自己矛盾だよ、これは」
飛鳥「今回のゲーム」
P「ん?」
飛鳥「発案はちひろさんと晶葉だけれど、実を言うとボク自身も少し乗り気だった」
飛鳥「キミという人間が、どれだけアイドルのことを……ボクのことを理解しているのか、興味があったんだ」
飛鳥「試すような真似をして、すまない」
P「いいよ、別に。このくらいのこと」
P「やってるうちに、俺も結構楽しくなってたし。かくれんぼは小さい頃から好きなんだ」
飛鳥「そう言ってもらえると、ボクも救われる」
P「あ、そうそう。忘れないうちに」
P「誕生日おめでとう、飛鳥」
飛鳥「……ありがとう」
飛鳥「けど、キミが祝ったボクはもういない」
飛鳥「存在は常に移ろいゆく……キミも、ボクも」
飛鳥「そんな中で、変わらず残り続ける糸があればいいなとボクは思う」
P「相変わらずの返事だなぁ」
飛鳥「ボクを面倒だと思うかい?」
P「いや?」
P「むしろ、それだけ言葉を考えてから俺に話してくれるんだから、気持ちをこめてくれてるんだなーとうれしく思う」
飛鳥「……ふふ、そうか」
飛鳥「でもボクは卑しい人間だよ」
P「どうして」
飛鳥「キミがそう答えるとなんとなく理解(わか)っていて、今みたいな問いを投げるんだから」
P「いいじゃないか。それだけお互いわかりあえてるってことで」
飛鳥「……Pはポジティブだな」
P「飛鳥がネガティブ気味だから、つり合いはちょうどとれるだろう?」
飛鳥「……綺麗な夕日だ」
P「だな」
飛鳥「いつもよりもずっと美しく見えるのは、なぜだろう」
P「誕生日だからじゃないか?」
飛鳥「そうだね。それもあるけど」
飛鳥「きっと、キミが隣にいるから……なんだろう」
P「………」
P「さっ、みんなで寿司食いに行こう! ナターリアや七海とそういう話してたんだ」
飛鳥「……ぷっ」
P「どうした」
飛鳥「いいや、なんでも」
飛鳥「行こうか、寿司」
P「ああ」
飛鳥「回らないほう?」
P「もちろん回るほう」
飛鳥「だと思ったよ」
P「ちひろさんにスタドリもらえるから、今後しばらくのスタドリ代が浮いて、そのぶんを寿司代にまわして――」ブツブツ
飛鳥「……P」
P「ん?」
飛鳥「キミに出会えて、よかった」ニコッ
P「……俺もだ」
P「あ、そうだ。プレゼント、事務所の中に置いてるからあとで渡すよ」
飛鳥「あぁ」
P「結構自信はあるつもりだけど、期待はしすぎないように――」
飛鳥「………」
飛鳥「ボクを見つけてくれて、ありがとう」
おしまい
おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
そしてお誕生日おめでとう飛鳥。デレステでSSR来た時にはガンバリマス
書いてて思ったけどやっぱり14歳組はキャラ濃いなあ
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