ツバサ「UTX、その後……」 (27)
都内某所
ツバサ「はーいっ、どーもどーも! A-RISEの綺羅ツバサでぇーすっ!」
あんじゅ「同じくぅ、A-RISEの優木あんじゅでぇす! んふっ♪」
英玲奈「…待て待て、なんだそのテンションの高さは……二人とも」
ツバサ「いやぁ、大人ぶってコイツらカッコいいー! みたいな雰囲気出してても私らまだまだ十代だしー?」
あんじゅ「まだまだウキウキで遊びたい花盛りだしぃ? はいはい、そんなことよりも英玲奈も早く自己紹介自己紹介」
英玲奈「ここで、誰に? と問うのも野暮な問題なのだろうな……まぁいいか、統堂英玲奈。この二人と同じA-RISEだ」
ツバサ「はいっ、てことで私ら3人でA-RISEでぇーっす!」
あんじゅ「いぇーい♪ なんだか楽しくなってきちゃったぁ!」
英玲奈「なんなんだ……」
ツバサ「まぁ私たちA-RISEって去年までスクールアイドルとして活動してきたじゃない?」
英玲奈「そうだな」
あんじゅ「そしてUTXを卒業した私たちはスクールアイドルではなくなったけど、この3人で引き続きA-RISEとして今度は本物のアイドルになるべく芸能事務所に所属した」
ツバサ「スクールアイドル時代の私たちA-RISEの人気は自分でいうのもあれだけど相当なものだったわ……たとえば」
ツバサ「街を歩けば、きゃー!ツバサ様ツバサ様ぁー!……学院に設置されているカフェテリアでティータイムしていても、きゃー!ツバサ様ツバサ様ぁぁ! とまぁ、校内校外問わず私たちは超人気者だったってわけ」
あんじゅ「人気だけじゃなくて実力だってぇ、どこのスクールアイドルにも劣ってなんかいなかったしぃ」
英玲奈「……」
あんじゅ「でもぉ、そんな超スーパースターの私たちに唯一土をつけたスクールアイドルがいた」
ツバサ「そう……それは、μ's」
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英玲奈「あぁ…、そういえば負けたな」
あんじゅ「ねー、負けちゃったねぇ」
ツバサ「いやぁ、残念残念」
ツバサ「ほんとは絶対的な王者のまま伝説になってスクールアイドル引退したかった願望はあったけど、まぁしゃーなしだよねー」
あんじゅ「ん…、あの子たち実際すごかったし、超可愛かったし、若干チート入ってたし」
英玲奈「敗北を喫してしまったが不思議と清々しい気持ちになれたな」
ツバサ「そう、それ」
あんじゅ「どれ?」
ツバサ「私たちは全力でぶつかって、そして負けた。事実、納得のいく結果であった」
ツバサ「でもそれはあくまで私たちからすれば、の話」
ツバサ「耳に入ってくることもあったでしょ? どうしてA-RISEが負けたんだ、μ'sよりもA-RISEの方が優れている、ってファンの声」
英玲奈「まぁな。そう言ってもらえるのは有り難いことでもある」
ツバサ「あと不満を漏らしていたのはなにもファンの人たちだけじゃない」
あんじゅ「…というと?」
ツバサ「私たちの後輩」
英玲奈「ああ……アイツか……」
ツバサ「私たちが敗北したことについての不満というよりは、どっちかっていうと私たちへの不満と言った方が適切かも」
あんじゅ「あの子たまにキツいこと言うからねぇ……ふふっ。もしかしてツバサ、いじめられちゃったの? かわいそぅー」
英玲奈「後輩にナメられるとは情けないやつめ…」
ツバサ「あ、そういえば英玲奈の悪口も言ってたような」
英玲奈「殺す」
ツバサ「まぁ私としてはそれくらい生意気な方がむしろ安心するけどね」
ツバサ「だって彼女は私たちがいなくなった後の…これからの学院を背負って立つ身……UTXの頂点となる存在だから」
数週間前
UTX学院15階 専用レッスン場
「……」
ガチャ
ツバサ「おめでとう。明日からここは貴女たちの場所になるのね」
「……」
ツバサ(反応なし、か。私が入ってきた時も振り向きもしないで外ばっか眺めて…)
ツバサ(くすっ、この子らしいといえばそうなるのかな)
ツバサ(この場所……学院15階の専用レッスン場はUTXに数多く存在するアイドルのなかのトップに位置するグループのみに使用を許可されている)
ツバサ(自信は無いけどたしか私たちがいた時点で26グループ……そのすべては明確に順位付けされている……今まで序列一位に君臨していたのは勿論私たちA-RISEだ)
ツバサ(表舞台で、UTXの名前を背負ってステージに立てるのはそのトップのグループのみ)
ツバサ(A-RISEがすごいすごいと評価されてはいるがなにもUTXは私たちだけではない……陽の目を見ることが出来ないだけで才能ある子だってたくさんいる)
ツバサ(だからUTXに在籍しているアイドル志望の人間は誰もがステージに立ちたいという想いを抱えてこの場所を目指すのだ)
ツバサ(目の前にいるこの子だって同じ)
ツバサ(序列一位だったA-RISEに次ぐ二位…B-RIGHTのリーダーである彼女)
ツバサ(名は、瀬名初雪)
瀬名「…… あぁ、いたんですか。綺羅先輩」
ツバサ「絶対気付いてたでしょ…」
瀬名「……で、何か私に?」
ツバサ「相変わらず口が減らない子ね。わざわざ先輩が激励しに来てあげたってのに」
瀬名「……」
ムスーッ
ツバサ(うわっ、すんごい不満そう……まぁそれもそっか)
ツバサ(私たちA-RISEが退いたことによって自動的に繰り上がった序列一位なんてこの子のプライドが許さないんでしょうね)
ツバサ(普通なら実力で勝ち取る序列……それをこんな形で手に入れてもたぶん素直に喜べない。私でもそうかも…)
ツバサ(実力、か…)
ツバサ(実力でいえば初雪はA-RISEにも劣ってはいない。個の能力だけなら私よりも上なのかもしれない)
ツバサ(それでも、A-RISEという私とあんじゅと英玲奈、この3人と張り合えるだけの力があるかとなればこの子一人では届かないものだった)
ツバサ(初雪のいるグループ、B-RIGHTには他に4人のメンバーがいるが……そのなかで瀬名初雪だけが突出している)
ツバサ(その4人だって才能が無いわけではないし日々努力もしている…が、それ以上に瀬名初雪はUTXの誰よりも数段上を走っているから、孤立してしまっているんだろう)
瀬名「……綺羅先輩」
ツバサ「ん?」
瀬名「私は最後まで貴女に勝つことが出来ませんでした」
瀬名「いつか貴女を追い抜いてやるつもりだったのに……卒業なんて理由で逃げるなんて卑怯です」
ツバサ「いや、そんなこと言われてもね…」
瀬名「…だから、私は負けません」
瀬名「綺羅先輩が…A-RISEが勝てなかった相手、μ'sに私は必ず勝ちます」
瀬名「そして証明してみせます。私の方が先輩よりも上だということを」
ツバサ「貴女も相当負けず嫌いね……でもまぁそれもいいんじゃない?」
ツバサ「あ、でもμ'sって三年生のメンバーが抜けたからμ'sじゃなくなるとかなんとかって…」
瀬名「…それでも元μ'sに勝てばいいじゃないですか。高坂穂乃果もまだ残っているんでしょうし」
ツバサ「…そうね。三年生がいなくなって弱体化したμ'sを完膚無きまで叩きのめして鬼の首を取ったように勝ち誇る初雪ちゃんをその時はすっごく褒めてあげる」
瀬名「……」
瀬名「……さっさと帰ってください」
ツバサ「冗談だってばーもー! すーぐ怒るんだから」
瀬名「…誰のせいですか」
ツバサ「はいはい、言われなくても帰りますよーだ」
ツバサ「……じゃあよろしくね。UTXを」
ツバサ「貴女ならきっと大丈夫だから」
瀬名「……はい」
ツバサ「μ'sに勝って、高坂穂乃果をぎゃふんと言わせて……んでさっさと追い付いてきなさい」
ツバサ「いつまでもは待ってないからね」
瀬名「言われなくてもわかってます」
ツバサ「そう、なら安心。期待してるわ」
ツバサ「じゃあねぇ、ばいばーい」
瀬名「…綺羅先輩」
ツバサ「なに?」
瀬名「卒業おめでとうございます」
ツバサ「…うん、ありがと」
ツバサ「あっ、お土産送られてくると思うから楽しみにしてて」
瀬名「は……? お土産?」
都内某所
ツバサ「さぁてどうなることやら」
英玲奈「…というかだな、実力主義なのはわかるが……瀬名にリーダーは向いてないと思うのだが」
あんじゅ「そう? 私は初雪ちゃんまぁまぁ気に入ってたけど」
英玲奈「いや、気に入ってるとか気に入らないとかの問題ではなく…」
ツバサ「UTXは常に進化を続けていくもの。それなのに主柱となる人間が平凡だったらおもしろくないでしょ?」
英玲奈「お前もお前で相変わらずだな。まったく……真剣に言っているのかそうでないのかわかりづらくて困る」
あんじゅ「ツバサっていつもこうじゃん?」
英玲奈「ふふ、そうだな」
ツバサ「さて、そろそろ行きましょうか」
あんじゅ「どこに…? ショッピングとか?」
英玲奈「事務所に決まっているだろ」
ツバサ「私たちもあの子に負けないようにもっと頑張らないとね」
ツバサ「いくらスクールアイドル時代、超人気者だったからってプロの世界じゃ私たち完全にド新人なんだから気合入れていくわよ!」
あんじゅ「もちろん!」
英玲奈「当然だ」
ツバサ「目指すはトップアイドル!」
英玲奈「我々はっ、」
ツバサ「アライ──」
A-RISE「「「ズーーッ!!!!」」」
短いけど眠いのでここまで
見ての通りオリキャラです。瀬名初雪のビジュアルは真剣恋の小雪をイメージ(性格は全然違うけど)
とまぁ主にこの子が中心となる構成なので無理な人はさよなら。
同時にありゆき入学後の音ノ木Sideも書いていきます
それじゃまた
UTX学院
4月某日 入学式
「──であるからして、新入生はUTX学院生としての自覚をもってなんとかかんとか」
「上級生はその新入生の模範となる行動をうんたらかんたら……」
瀬名(ねむい……寝そう……)
瀬名(私も今日から三年生……やっと表舞台に立つことができる……)
瀬名(やっと……やっとだ)
瀬名(どれほどこの時を待ちわびただろう。去年と一昨年…綺羅ツバサたちA-RISEがいたおかげで私はただの一度もステージに立つことは叶わなかった)
瀬名(……勿体ないよね、と言われることも多々あった。瀬名さんUTXじゃなかったら絶対もっと有名になってたのに……って)
瀬名(…違う。それは私の力が足りなかった、それだけ。だってA-RISEは二年生の時に既にUTXの序列一位に登り詰めていたから)
「──続いて、……新入生代表挨拶。1年Aクラス……──スさん……」
瀬名(単純に自分の実力不足……向こうが3人だろうが10人だろうがそんなの関係無い……私が、もっと……)
瀬名(……でも、)
瀬名(やっぱムカつく……綺羅ツバサ……A-RISE……。私より上にいながら王座から転がり落ちるなんて)
瀬名(結成して一年にも満たないスクールアイドルに負けるなんて……)
瀬名(そのくせ翌日くらいには悔しがりもせずにヘラヘラしてて……ムカつく)
瀬名(だから私は、もう一度UTXに最強の座を取り戻さなくてはいけない)
瀬名(それだけが私が綺羅ツバサに勝っているという唯一の証明…)
瀬名(μ's……必ず、私がこの手で……)
瀬名(…なんて恨み辛みを廻らせている間に式は終わっていた)
クラスメイト「瀬名さん? 私らも早く退場しなきゃ」
瀬名「わかってる」
専用レッスン場
メンバーA「ねぇねぇ、今年は何人くらい入ってくると思う?」
メンバーB「つーか何百人の間違いじゃない?」
メンバーC「ねー! 今年はほんとすごそう。去年のA-RISE神かがってたしねー。ラブライブも開催されたわけだし、今年の新入生ってほぼ全員ここ来るんじゃない?」
メンバーD「全員はさすがに言い過ぎでしょ」
メンバーB「あ、瀬名さんはどのくらい来ると思う?」
瀬名「……興味ない」
瀬名「…そんな無駄口叩いてる暇があるならもっと練習したら?」
瀬名「貴女たちがナメられるのは勝手だけど、そのせいで恥をかくのは私なんだがらもっと真剣にやってほしい」
メンバーC「うっわ…相変わらず瀬名っちキツいねぇ…あはは…」
メンバーA「……なにあの言い方」
メンバーD「まぁまぁ…」
メンバーC「瀬名っちのおかげで私らもこうして序列一位になれたわけだし、多少はね…」
メンバーB「そうだとしても私らのこと見下し過ぎでしょ……眼中に無いって感じ?」
メンバーB「…前から思ってたけどマジあいつムカつく…」
メンバーA「綺羅さんのお気に入りだったからって調子乗ってんじゃない…?」
瀬名(聞こえてるんだけど……まぁ別にどうでもいいか)
瀬名(…なんで私、この人たちも同じグループ組んじゃったんだろ……一人じゃA-RISEに勝てなかったから?)
瀬名(組んだとしても結果は同じだったけど……じゃあ今は?)
瀬名(私一人でμ'sに勝てるのか…)
瀬名(……いや、勝たなくてはいけない)
瀬名(……王座奪還に意地になっているのは私だけ、ってことか)
瀬名(それでもまぁ、いいけど……だったら……)
瀬名(んー……よくわかんない……まぁとりあえず今は、)
瀬名「……そろそろ全員で合わせたいんだけど、いい?」
瀬名「それと、さっきはごめん。言い過ぎたってとても反省してる」
メンバーA(ものすごく感情込もってない棒読み…)
メンバーがB(絶対反省ねぇだろコイツ…)
瀬名「ふっ…、ふっ……はっ……」
タタンッ
瀬名「ふぅ……はい、15分休憩」
メンバーC「はぁぁ、疲れたぁ…」
メンバーA「はぁ…はぁ……一時間近くほぼ踊りっぱなしって私らのこと殺す気かよ…」
メンバーB「マジキツすぎ……限界……」
メンバーD「でも瀬名さんすごいね……あれだけ動いても涼しい顔してるし、やっぱ私らとはレベル違うっていうか」
メンバーB「チッ……」
瀬名「…休憩終わった後も全員が揃うまでさっきの箇所やっていくから喋ってないで体力回復にあてた方が賢明だと思うけど」
メンバーD「うへぇ…」
メンバーA「え…またやるの? 同じところを…?」
瀬名「だってみんなバラバラ。これくらいは完璧にしてくれないと話にならない」
メンバーC「あはは……瀬名っちスパルタ……」
メンバーB「はぁ…あんたがすごいのはわかってるよ…わかってるからこそ求める基準が高いのも理解出来るよ」
メンバーB「でもさ、うちらのこともちょっとは考えてくんないとさぁ……全員があんたと一緒じゃないんだよ…」
メンバーA「そうそう、オーバーワークがたたってケガしちゃったなんて話よく聞くじゃん」
瀬名「…別に私と同じまでは要求してない」
メンバーD「そういうんじゃなくてさ、もっと…んー、なんていうか」
メンバーB「要するにうちらは瀬名さんのオマケなんでしょ? だからうちらが途中で潰れたってコイツはなんとも思わない…」
瀬名「…そうは言ってない」
メンバーA「……せっかくUTXの序列一位の座を掴んだのに」
メンバーD「ケガなんかしてそれが台無しになるのは、ちょっと、ね…」
瀬名(…掴んだ? 転がり込んできたの間違いでしょ)
瀬名「練習を軽くしろってこと?」
瀬名「一位にいるからってそれに甘んじてるとすぐに越されてしまう。わかるでしょ?」
メンバーB「そんなことわかってる…うちらだってそうやって登り詰めてきたわけだし」
瀬名「…だったら」
瀬名(私が間違ってるの? 自分自身リーダーに向いてるとは思ったこともないけど…)
瀬名(だからこういう時、どうするのが正しいのかわからない。頼る人もいないし……頼りたくもない)
瀬名(このUTXは序列一位と二位以下では環境がまったく違う…)
瀬名(一位には専属の指導者なんて付かず、自分たちでスケジュールを組んで更に上を目指せ…と)
瀬名(それまでいた厳しい環境から投げ出された私たちは…謂わば自由。何をしても構わない……サボろうが手を抜こうがそれはすべて自己責任)
瀬名(しかし、そこで怠けてしまえばすぐさま下へ落とされてしまう……だから甘えなんて微塵も持っていてはいけない)
瀬名(気持ちの弛みなんてあってはならない…)
瀬名(……なのに、どうしてこの人たちはわかってくれないんだろ)
瀬名(実力主義のこの場所なんだから私に文句を言う前に力が足りない己自身を責めればいいのに…)
瀬名(嫌われてるんだろうな、私……まぁ別にどうでもいいけど)
瀬名(……綺羅ツバサなら…こういう時、どうしていたのかな)
瀬名「…休憩終わり」
瀬名「続きやるから準備して」
メンバーD「えっ…も、もう!?」
メンバーC「せめてあと5分だけ…」
瀬名「無理。早く立って」
メンバーA「きっつぅ…」
メンバーB「はいはい……わかりましたよ、リーダー様」
瀬名「……じゃあ始める」
瀬名(…もう限界だと薄々感じ始めていた)
瀬名(この人たちと私では何をどうしたって噛み合わない…)
瀬名(この4人だって元は実力者だったし……それに、“B-RIGHT”の名前だって最初は私以外の4人のものであった)
瀬名(一年生の秋、同学年で最も可能性を感じたから私はこの4人のグループに加わることにした…)
瀬名(当時から序列一位に名を馳せていた“A-RISE”を越える為に)
瀬名(皆、私の実力を評価してくれていたから快く参入を受け入れてくれた)
瀬名(あの時の私の選択は間違っていたんだろうか…)
瀬名(そうは思いたくはないけど、結局は他人の力を少しでもあてにしてしまった私の弱さ……そのせいもきっとある)
瀬名(グループとしてだったら私を抜いた元の4人のみの方が纏まりはあるように思える…)
瀬名(それくらい、今のこの状況には不調和な音が聴こえている感じがした…)
瀬名(このままでは駄目だ……いっそのこと何もかもを壊してくれる何かがあれば…)
瀬名(……そんなことを私は心の何処かで望んでいたのかもしれない)
瀬名(……また自分以外の何かに頼ろうとしている弱さ……消さなくては…)
瀬名(…とは思っていても、今のままじゃ…という気持ちもあり、その葛藤は私の胸の奥にモヤモヤとしたものを残していった)
瀬名(…驚くことにその“何か”は私のすぐ側まで近付いていたことにこの時はまだ何も知らないままだった)
1週間後
専用レッスン場
瀬名(いつの通り私を含むB-RIGHTのメンバーはレッスンに励んでいた)
瀬名(…今日も私に対する愚痴は聞こえてきていたけど)
瀬名「……っ、そこ、また遅れてる」
瀬名「もっと呼吸合わせて」
メンバーA「はぁっ……はぁっ……」
メンバーB「わかって、るよっ……はぁっ……」
ガチャ…
瀬名(…誰か入ってきた…?)
瀬名(コーチ…? ここに来るなんて珍しい……それに、もう一人……)
瀬名(私以外は気が付いてないみたいだけど…)
瀬名(まぁいいか……今は集中しなきゃ…)
瀬名「今のところターンの入り出しが全員遅い」
瀬名「それに指先まで意識してっ……それじゃ綺麗に見えない」
メンバーD「……っ」
メンバーC「はぁ……はぁ……っ」
瀬名「…疲れを表情に出さないで」
瀬名「あと振りもだんだん小さくなってきているからもっと」
「アハハハハハッ」
瀬名「……?」
瀬名(誰…?)
瀬名「……一旦止め」
メンバーA「はぁっ、はぁっ……しんど……ていうか誰あの子…?」
メンバーD「コーチと一緒にいるって…」
メンバーB「…なんで、コーチここに来てんの…?」
メンバーC「さ、さぁ……」
「アハハハッ、あーおもしろ」
コーチ「おい、いい加減にしろ…」
「あ、すみませーん。でもUTXの序列一位っていうからどんなものかと楽しみにしてたのに、まさかこんな程度なんてねー」
「あー、おかしすぎてお腹痛い」
瀬名「…コーチ」
コーチ「悪いな、瀬名。練習の邪魔をしてしまって」
瀬名「…いえ」
瀬名「……一年生、ですか?」
コーチ「そうだ」
瀬名「ここに足を踏み入れていい生徒は序列一位の私たちだけ……ましてやついこの間入学したばかりの一年生なんか」
コーチ「そう目くじらを立てるな、瀬名。…こいつは特例だから少し多目に見てやってほしい」
瀬名「…特例?」
「へぇ、あなたが噂の瀬名さん? 瀬名、えーと……瀬名初雪ちゃんだっけ?
あってる?」
瀬名「……」
「さすがに瀬名ちゃんはまぁまぁだったけどー、他の4人は酷いねぇ。あははっ」
コーチ「おい」
ゴツンッ
「痛っ! あたしはホントのこと言っただけなのにー!」
瀬名(…なんなの、この子)
メンバーC「なにあれ…」
メンバーA「私らのこと馬鹿にしてんの…? 一年のくせして」
メンバーB「あの瀬名が可愛く思えるほどムカつくんだけど…」
メンバーD「コーチもコーチでなんであんな子ここに連れてきてんの…?」
瀬名「……先程、特例と仰っていましたがそれはどういう意味でしょうか?」
コーチ「そのままの意味だ。私はこいつを序列一位に価すると見込んだまで」
コーチ「…まぁ今すぐどうこうというわけではないが、お前たちに紹介だけはしておこうと思ってな」
瀬名「……」
コーチ「綺羅、さっさと挨拶しろ。今見た通りこの5人がUTX現序列一位のB-RIGHTだ」
瀬名「綺羅……?」
「はーい、えーとっ、綺羅アリスです。よろしくー」
メンバーC「え…? 綺羅って、もしかして…」
メンバーA「うそ……まじで…」
コーチ「綺羅アリス。お前たちもよく知っているあのA-RISE綺羅ツバサの妹だ」
瀬名(……あ)
ツバサ『あっ、お土産送られてくると思うから楽しみにしてて』
瀬名(お土産って……これのこと)
綺羅アリスのビシュアルはこれまた真剣恋から燕ちゃんに近い感じ
背丈はツバサよりも高い。158cmくらいにしよう。ついでに瀬名は160cmにしようかしら
んじゃ寝るからもしも読んでくれてる奇特な人いたらまたよろしく
次からは音ノ木パート入っていきます
都内某所
英玲奈「……雰囲気悪いな。やはり瀬名ではグループを纏めるのは難しいのではないか?」
あんじゅ「んー、でも初雪ちゃんだって今までB-RIGHTで活動してきたんでしょ? 一年の秋って言ってたからえーと…1年と何ヵ月かくらい?」
ツバサ「…環境が変わったこと、そして目標が変わったことが少なからず影響してるんじゃない? まぁこれまでも正直あのグループは良い雰囲気とは言えなかったけれど」
ツバサ「私たちへの対抗意識とμ'sに勝つという野望……今のあの子はこれらしか見えてないみたいだからねぇ」
英玲奈「それでよく序列二位まで上ってきたな…」
あんじゅ「まぁ初雪ちゃん才能あるし黙々と努力も欠かさない子だし」
ツバサ「個人として100点でもグループとしては30点ね」
英玲奈「…いや15点だな」
あんじゅ「全然関係ないけど初雪って名前けっこうDQNネームな気がしない?」
ツバサ「…せめてキラキラネームって言いなさいよ。でもまぁ、小雪とか白雪とかもどっかで聞くしギリセーフってことにしましょう」
英玲奈「そのキラキラネームといえば…」
ツバサ「ん?」
英玲奈「お前の妹もそうだろ。アリスとかいったか?」
ツバサ「かわいいでしょ?」
あんじゅ「可愛いっ!」
英玲奈「どうしてアリスになったんだ…?」
ツバサ「んー…まぁあの子の生みの親から聞いた話によれば」
あんじゅ「…生みの親って、それツバサのお父様とお母様でしょ」
ツバサ「やっぱ私の妹ってことだから、カタカナ3文字にしようってなったらしいのよ」
ツバサ「んで、最終候補に残ったのがアリスとアリア。…でもアリアだとバトル物になっちゃいそうだからアリスになったんだってー」
英玲奈「意味がわからない……。で、お前はそのアリスにどんな教育してるんだ……なんだあの登場シーンは…」
英玲奈「先輩への言葉遣いというか礼儀がまるで」
あんじゅ「アリスちゃんってどういう子なの?」
ツバサ「……それについては私からはノーコメント」
ツバサ「わざわざここで明かす必要もないし本編での活躍を待ちましょう」
英玲奈「本編でって……ならここは一体何だというのだ?」
ツバサ「おまけコーナーみたいな? ほら、コメンタリーってあるじゃない? 本編で上手く伝えきれなかった部分なんかをさりげなく補足していくのが目的」
あんじゅ「あぁ、なるほどねぇ」
ツバサ「そうそう、伝えきれなかったといえば私たちの母校…UTXについて軽く触れておきましょうか」
あんじゅ「スクールアイドルについてってこと?」
ツバサ「そう…、この学校はかなり特殊なものでね、簡単に説明すると半分専門学校みたいな感じになるのかな?」
ツバサ「勿論、学生として普通科目の授業もこなすけれどそれ以外の分野…主に芸能関連にかなり力を入れている」
英玲奈「スクールアイドルもその一つだな」
あんじゅ「他にも演劇だったり声優だったり…とにかくホントたくさんあるのよねぇ」
英玲奈「基本的には午前に普通科目の授業を受け、午後は各々が志望した専門分野を学ぶといった流れだったか」
ツバサ「…で、アイドル志望者については何人ものUTX専属指導者によるレッスンが行われている」
ツバサ「しかしその指導が受けられるのは序列二位以下の者だけ」
あんじゅ「一位になったらあとは勝手にやってくださいねー状態なのは最初ビックリしたけどね」
英玲奈「放任主義……まぁこれこそが最大の罠なのだが」
ツバサ「さっきも説明した通り当然序列が二位以下の者は指導を受けられるから日々成長していく…そこで一位になった者もそれと同じ…いえ、それ以上に努力しなくてはあっという間に転落してしまう…」
英玲奈「優秀なグループを育て上げ序列一位に押し上げようとする指導者と頂点の座を誰にも譲り渡したくない一位との戦いのようなものだ」
あんじゅ「専用レッスン場も与えられるし他にも何かと優遇はしてもらえるのよね」
英玲奈「なんといっても一室まるまる使えるのだから練習効率は格段に差が出るな……まぁ怠けなければの話になるが…」
ツバサ「一度あんな快適な空間を味わってしまえば誰にも渡したくなくなる……その一心で私たちも頑張ってきた」
あんじゅ「うんうん」
英玲奈「…そうだったな」
ツバサ「…と、うーん、あー……説明以上! とりあえず初雪たちも落ちないようにがんばってねーってこと」
英玲奈「おい…」
あんじゅ「うわっ、一気に適当になった…」
ツバサ「なんか途中から何喋ってるのかよくわかんなくなったし。まぁなんとなーく伝わったでしょ」
ツバサ「というわけで解散! じゃあねぇー!」
音ノ木坂学院
1年生教室
亜里沙「雪穂ー!」
雪穂「あっ、亜里沙」
亜里沙「やったー! 雪穂と同じクラスだー!」
雪穂「だねー。…といっても今年も一年生は1クラスしかないんだから当然っちゃ当然なんだけど」
亜里沙「それでもうれしい!」
雪穂「うんっ、私もだよ。これから頑張ろうね!」
雪穂(…廃校の話は見送りになったとはいえ一気に何百人もの生徒がこの音ノ木に集まる、というわけには至らず)
雪穂(まだまだ安心できる状態ではないらしい……それでもこうして私と亜里沙が音ノ木坂に入学できたのはお姉ちゃんたちμ'sの活躍があったから)
雪穂(その姿に憧れた私と亜里沙もこの学校でスクールアイドルを始める…)
雪穂(…そうずっと前から亜里沙と二人で話していた)
雪穂「じゃあさっそく放課後にでも先輩たちのところに挨拶いこっか」
亜里沙「うん! 今からいく!」
雪穂「…私の話聞いてた? 放課後って言ったでしょ、放課後」
雪穂「これから入学式あるんだから…」
亜里沙「あ、そっかそっか。えへへー」
音ノ木坂 講堂
入学式
理事長「──新入生の皆様、入学おめでとうございます」
亜里沙「すぅ……すぅ……Zzz」
雪穂「ちょ、ちょっと、亜里沙…起きて起きて」
亜里沙「むにゃむにゃ……おねぇちゃ……おでんはたべものじゃなくて…のみもの……」
雪穂「こら、起きろ」
亜里沙「んみゅ……すやすや……Zzz」
雪穂「はぁ……まったく…」
理事長「──生徒会長挨拶」
穂乃果「はい!」
穂乃果「新入生のみなさん、こんにちわ。生徒会長の高坂穂乃果です!」
雪穂「おぉ……そういや昨日家で練習してたなぁ…」
亜里沙「んんっ……ふわぁ……あっ!」
雪穂「…亜里沙、やっと起き」
亜里沙「みゅーず!」
雪穂「へ?」
亜里沙「穂乃果さんだ! 見て、雪穂! μ'sの穂乃果さんがいる!」
雪穂「し、しーっ! 声が大きいってば!」
穂乃果「あ…、亜里沙ちゃん。それに雪穂も」
穂乃果「おーい! おーい!」
亜里沙「わぁ…手振ってくれてる! ほらっ、雪穂」
雪穂「え、えぇ…恥ずかしすぎる……」
雪穂「……あとで海未さんに超怒られてそう…」
雪穂「しーらない…」
このSSまとめへのコメント
ネーミングセンスねーな