―――――事務所―――――


ｶﾞﾁｬ
橘ありす「おはようございます」

兵藤レナ「あら、ありすちゃんじゃない、おはよう～」

ありす「橘です。……ってもしかしてそれ、ビールですか？まだ朝なのに……」

レナ「ファンタグレープよ」

ありす「バカにしてます？」

レナ「まあまあ、いいじゃないの！百薬の長とも言うんだし」

ありす「私にとっては百厄の長ですけど」

レナ「つれないのね……誰のせいかしら」

ありす「確かに断定できないくらい容疑者だらけではありますね」

レナ「それより私も聞きたいな～、ヤカンの話！」

ありす「いつからこの事務所ではヤカンがホットワードになってしまったんですか」

レナ「あれ？でも、『ありすちゃんがヤカンについて何時間も熱く語ってくれて……』って志乃さんが」

ありす「ほら早速もう厄を呼んでるじゃないですか」

ありす「別に語ってませんから」

レナ「残念ね……昨日の夜からずっと楽しみにしてたのに……」

ありす「そんなにレナさんの人生は娯楽に欠けてるんですか？」

レナ「そういえばありすちゃん、スワヒリ語が得意ってホント？」

ありす「根も葉もないってレベルじゃないですね」

レナ「ええ？確かに聞いたんだけど……」

ありす「火のない所に煙どころか大爆発を起こされた気分です」

レナ「でも外国語を使いこなせるとカッコいいと思わない？」

ありす「思わないわけではないですが、確かレナさんは英語が得意じゃないんですか」

レナ「そうね、とりあえず『Hello』『Yes』『FuckYou』の3つが言えれば大丈夫よ」

ありす「さらっと暴言混ぜましたよね」

レナ「カジノではこの3つしか使わなかったわね」

ありす「よく生きてますね」

レナ「照れるわ」

ありす「褒めてはいないです。断じて」

ありす「少し時間がありますね」

レナ「じゃあありすちゃん！このトランプでポーカーしない？」

ありす「橘です。ポーカー……ですか、いいですよ。トランプが胸の谷間から出てきたことは見なかったことにします」

レナ「それじゃあ配るわね。いや～UNOって言うのを忘れないようにしなきゃ！」

ありす「待ってください、認識の齟齬が起きてます。重大な」

レナ「あれ？やったことない？ババ抜き。合計値が21になるようにするゲームなんだけど」

ありす「もうすでに4つのゲームが闇鍋状態なんですが」

レナ「1度めくったカードを忘れないことがコツよね」

ありす「わかりました、バカなんですね？」

レナ「冗談に決まってるでしょ？」

ありす「決まってないから困っているんです」

レナ「あらあら、もっと信頼してくれていいのに」

ありす「『行けたら行くわ』くらいには信頼してますよ」

レナ「よっしゃ！！！」

ありす「口調を崩すほど？」

レナ「じゃあマジックしてあげる！私に見えないように1枚カードを取って！」

ありす「メンタル強度だけは称賛に値しますね」ﾋｮｲ

ありす（ハートのキング……）

レナ「見た？」

ありす「はい」

レナ「じゃあ今からそのカードを、一瞬でオシリスの天空竜に変えてみせます！」

ありす「待ってください」

城之内「すげぇや！遊戯！」

ありす「誰」

ありす「隠して見た意味なかったですよね、しかもカードゲームの種類が違いますし、あと今いた人は誰ですか」

レナ「ありすちゃん、花札しない？」

ありす「放り投げるにしてももう少しあるでしょう」

レナ「花札といえば、プロデューサーさん強いわよね～」

ありす「そうですね」

レナ「なぜか負けそうになるとどこかに消えちゃうし……」

ありす「仕様の問題ですね。本当に謎です」

レナ「仕様の問題ならしようがないわね」

ありす「まさかまた言うことになるとは思いませんでしたが、実は楓さんが化けてたりします？」

レナ「じゃあ108回戦で大丈夫かしら？」

ありす「何で大丈夫と思ったんですか？」

レナ「賭けるのはお互いの“命”よ」ﾌﾌﾌ･･･

ありす「まさかアイドル事務所で闇のゲームに巻き込まれるとは夢にも思いませんでした」

レナ「そして私は菜々ちゃんの魂も賭けるわ！」

ありす「みなさん菜々さんに恨みでもあるんですか？」

レナ「お金はいくら賭ける？」

ありす「早苗さん呼びましょうか？」

レナ「早苗さんの魂を賭けるのね？」

ありす「会話が通じないってこんなにも苦痛なんですね」

ありす「そういえば、花札にもイカサマってあるんですか？」

レナ「もちろんあるわよ、代表的なやつだと『目潰し』とか」

ありす「私の知っている花札よりだいぶ民度が落ちましたね」

レナ「あと『待った！』とか」

ありす「明日から勝負師を名乗らないでもらっていいですか」

ありす「ってあれ、花札が机の上にあるってことは、誰かとやってたんですか？」

レナ「そうよ、さっきまで加蓮ちゃんがいたの」

ありす「デジャヴ」

レナ「ありすちゃんが来る3秒前にレッスンに行っちゃったけどね」

ありす「加蓮さんは私のことが嫌いなんですか」

ありす「……でもすれ違ってないんですが」

レナ「窓から」

ありす「そこまで」

ありす「まあこの部屋は1階ですが、だからと言って……」

レナ「その際に足を負傷して病院に行ったわ」

ありす「そんなだからファミコンゲームみたいなニックネームが付くんですよ」

レナ「ストリートファイター？」

ありす「対極」

レナ「でも、それを見こした奈緒ちゃんがクッションを敷いといてくれたから、大事には至らなかったらしいわ」

ありす「奈緒さんの方がよっぽどサイキックじゃないですか」

レナ「せいぜい全治15か月かしら」

ありす「逆にあの人にとっての大事に至るってなんなんですか。死ですか」

ありす「あ、そろそろレッスンなので行きますね」

レナ「窓から？」

ありす「ドアからです」

レナ「か～ら～の～？」

ありす「この酔っ払い本当にCute属性ですか？」

レナ「ちなみにこれビールじゃなくて発泡酒よ」

ありす「だからセーフみたいな顔しないでください、アウトです」


おわり