【型月×AC】エミヤ「覚えておこう、お前の答えを」 (6)




[プロローグ]


英霊になれば、全てを救えると思っていた。

故に、私は世界と契約を交わした。

しかし、その後に私を待っていたのは、己の理想とは程遠い、「霊長の守護者」という現実だった。

私に課せられた使命は、「人を救う」ことではなく、「人類」の救済だ。

人類という種の滅亡を回避するためならば、その原因となりうる全てを抹殺し、起きた事をなかった事にさえする、言わば地球の掃除屋。

信じ続けた唯一の理想にすら裏切られ、拒絶する事も許されず殺戮を続けた末、私はかつての理想に絶望していた。

以来、過去の英霊になる以前の自分――、すなわち「衛宮士郎」を自らの手で殺すことで、自分は消滅できるのではないかという考えに至り、その希望だけを胸に抱きながら、守護者の役割に徹してきた。

そう思っていたある時、私は、とある一つの世界に思わぬ形で召喚された。

「エミヤ」ではなく、「マクシミリアン・テルミドール」、またの名を「オッツダルヴァ」という、仮初めの肉体を得て――。


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[Chapter 0] LAST DUTY ―最終任務― (エグザウィル破壊)



「総員退避、退避しろ! エグザウィルが崩壊するぞ!」


薄暗い脱出路を駆けながら、社員の一人が叫んだ。


「ちくしょう…相手はたった一機なのに」

「あいつだ、あのアスピナの傭兵の仕業か!」

「違う、あの機体は間違いない、アナトリアの…!」


レイレナード本社施設――、通称「エグザウィル」が一機のネクストによる攻撃を受けてから、およそ10分。

その10分間で、世界に名だたる新興エネルギー企業の牙城は、一気に崩れ去ろうとしている。


「アナトリアの傭兵……!」


男は、その姿も見たこともない者の名を、不意に口にした。

きっと忘れないであろう、まだ見ぬ敵の名を刻み込む。

この男こそ、後に「オッツダルヴァ」と呼ばれるリンクスだということは、まだ誰も知る者はいなかった。

[Chapter 1] 旧チャイニーズ・上海海域掃討


ミッションを説明しましょう

依頼主はオーメル・サイエンス社

目的は、旧チャイニーズ・上海海域に停泊中の、敵艦隊の排除となります

敵艦隊は、GA社とBFF社の混成となり
最新の半砲台型ノーマルの展開が確認されています
とはいえ、所詮は旧い発想の兵器にすぎませんが

また、依頼主は協力機との協働をご希望です
最終的にはそちらの判断ですが、無理はしない方がよいのでは?

説明は以上です

オーメル・サイエンス社との繋がりを強くする好機です
そちらにとっても、悪い話ではないと思いますが




本当の名前など、とうの昔に忘れている。

とは言え、自分が何者であるかはわかる。

カラードランク1、オッツダルヴァだ。


オッツダルヴァ「いけるな? 貴様」


回線を開き、僚機のネクストに呼びかけてみる。

返事はないが、先行する「ステイシス」よりも先に敵の艦船とノーマルACを撃破していくのが見えた。

新参のリンクスとは聞いていたが、思ったほど未熟でもないらしい。


オッツダルヴァ「まあ、せいぜい気張ることだな」


回線を切り、オーバードブーストで一気に敵艦隊へ接近、障害を排除していく。

ランク1の腕を必要とするほどの作戦内容には思えなかったが、先方の依頼なので致し方ない。

旧レイレナード出身者を取り込んだオーメル・サイエンスとの距離は置いているが、契約は守るのがカラードの一員としての務めだ。

ただそれだけを頭の中に念じ、オッツダルヴァは手足の如く己のネクストを動かしていた。


***


依頼は無事完遂した。

以前と変わらない、戦いに明け暮れる日々。

変わったことと言えば、戦う術が「アーマードコア(AC)・ネクスト」と呼ばれる機械仕掛けの人形へと変わっていたことぐらいだろう。

この世界に魔術という存在はなく、自分もまた、固有結界を使えない。

今の自分にあるのは、ネクストを動かせる才能のみ。

それも、ランク1の座に登りつめるほどの適性を携えて――。


オッツダルヴァ「……」


世界の設定がどうなろうと、自分に与えられた使命は今までと変わらない。

「人類」を破滅から救い、そのための清算を行う。

それが、私の役割――。


オッツダルヴァ「……私だ。メルツェルに繋いでくれ」


「守護者」としての使命と、「エミヤ」としての人格が、この男を企業への反逆へと突き動かしていた。


[Chapter 2] ホワイト・グリント撃破


ミッションを連絡します

ラインアークの主戦力、ホワイト・グリントを排除してください

ホワイト・グリントのランクは9ですが、実際には、その数字よりも遥かに強力なネクストです

そうでなければ、現状況は生まれていません

たとえあなたであっても、1対1の戦いは危険です

ランク1、ステイシスと協働して、ミッションにあたってください

唯一の拠りどころたるホワイト・グリントが失われれば、ラインアークの抵抗の意志は、脆くも崩れ去るでしょう

そうなれば、クレイドルの憂患は一気に解決されます

我々は、このミッションに最高の戦力を用意しました

あとはあなたにお任せします

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