テマリ「し、シカマル……。起きろシカマル……///」 (103)

奈良シカマルが寝苦しさを感じて目を開けると、パジャマ姿の女房が上にのしかかっていた。

フンフンと荒い鼻息が顔にかかってこそばゆい。

何があったのだろうか?

昨日の遊郭の件がバレて俺は今から殺されるのだろうか?

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1452250455

テマリ「久しぶりにその……どうだ? ///」


目を伏せながらたどたどしく呟くテマリ。

何だ、夜のお誘いか……。

良かった……。

まだバレてねえようだ。


シカマル「良かった……。まだバレてねえようだ……」zzz

テマリ「何がだおい。っていうか寝るな! かわいい妻が誘ってんだぞ! ///」

シカマル「悪い……昨日の今日で少しちんこが痛い……」zzz

テマリ「昨日何したんだおい! 里の相談役が何で性器痛めてんだ!」


ペチペチと頬を叩かれて無理やり起こされる。

少しずつだが目が覚めてきた。

今俺は寝ぼけながら物凄い失言をしてしまった気がする。

シカマル「ん……」ゴシゴシ

テマリ「眠たいとこ悪いな……///」


そう言いながら手を取って上半身を起こす。

暗闇に目が慣れたおかげで表情が割とはっきりしてきた。

紅潮した頬。

少し濡れてほのかに光る唇。

いつもきつい角度を保っている眉も、今夜は少し優しく下がっているように見えた。


シカマル「……」ジーッ

テマリ「ちょ、そんなに見つめるな……。照るだろ? ///」


照れる妻の姿を最後に見たのはもう何年前だろうか。

今日のテマリはなんと言えばいいのか……妙に女っぽい気がする。

シカマル「……突然誘ってくるなんてどうしたんだ? シカダイ生まれてからはずっとしてなかったのによ」

テマリ「いや……なんか寝付けなくて……。適当に家にあったラブロマンス映画観てたら羨ましくなってな……///」

シカマル「ラブロマンス? ああ、『凌辱応援団2~恐怖の早朝肛門指導~』か……」

テマリ「違う! ってかそんなの持ってんのかお前! 没収だ没収! ///」

シカマル「うーん……ロマンスねえ……」

テマリ「ああ、あたしらにもこんな風にこっ恥ずかしい青春してた時期があったな……って///」

シカマル「お前との思い出は鉄扇で殴られてたのが9割だからな……」

テマリ「それはお前が風俗に狂ってた頃の記憶だろ! ほら思い出せ! つき合ったばっかの頃を! ///」


言われて懸命に思い出そうとするシカマル。


確かに自分たちは恋愛結婚をした。

共に死線を乗り越え、背中を預けても大丈夫という安心感はいつしか護りたいという想いへ。

里を越えた遠距離恋愛は決して楽な道のりではなかったが、それでもテマリのためなら何でもしようと思えた。

あの頃のドキドキ感はやっぱり楽しかったのだ。

たとえオナニー狂いの傀儡師に執拗な嫌がらせをされようとも――。

シカマル「……」


多由也に殺されそうだった時、助けてくれたテマリの笑顔が輝いていたっけ……。

そのあとも中忍試験の打ち合わせを口実に少しずつ近づいていったな……。

そのうち一緒に温泉旅行もしたりして。

で、そこで初めて……。


シカマル「……///」

テマリ「ど、どうだ? ///」

シカマル「今思うとアンタ、未成年の俺に手ェ出してたんだな///」

テマリ「い、いいだろ別にッ! 結婚したんだし! ///」

シカマル「まぁいいんだけどよ……///」



振り返ればナルホド、俺はコイツを愛していたんだなと思い知らされる。

テマリの観た映画がどんなものなのかはよく分からないが、自分たちも結構甘酸っぱい思い出を持ってるじゃないか。


シカマル「……///」


シカマルは言いようもない気恥ずかしさを覚えた。

そうだ、この感覚だ……。

心臓が高鳴る感覚。

その鼓動に合わせて腕とか足といった体の末端がジンジンするような、そんな感覚。


テマリ「す、少しはあの頃の気持ちを思い出したか? ///」

シカマル「ああ……なんか今、年甲斐もなくドキドキしてる……///」


心からそう思う。

長年連れ添ってきた相手を見て、まさかこんな風に感じる日が再び来るとは思ってもみなかった。

テマリ「そ、そこでだ……。きょ、今日は丁度シカダイもイノジンの家に泊めてもらって明日の昼まで帰ってこないし……その……たまには2人っきりでイチャつくのもいいんじゃないかと……その……///」モジモジ

シカマル「……い、いいアイディアなんじゃないすか? ///」


気づけば二人は恥ずかしさのあまり、正座でかしこまっていた。



***


シカマル「……///」

テマリ「……///」

シカマル「え、えと……まず……何すりゃいいんだ? ///」


正座で向かい合ってからしばらくの沈黙があり、ようやく開かれた口から出たのはこんな情けない言葉だった。

もう何度も体を重ねた仲なのに、久しぶり過ぎて勝手が分からない。

行為自体は昨日も遊郭で元気にやったのだが、心から愛するものを抱くと言うのは全く別物なのだろう。

何せひどく緊張しているのだ。

相手を傷つけないように、自分が嫌われないように恐る恐る出方を伺うしかなかった。


テマリ「と、とりあえず脱がせたらいいと……その……思うんだが……///」

シカマル「あ、そっか……///」


言われるがままに相手のパジャマのボタンに手をかける。

が、指が震えてうまくボタンが外せない。

テマリ「……///」


テマリもまた緊張と興奮で、ボタンと格闘しているシカマルを見つめることが出来なかった。

第三ボタンを外した辺りで、普通は先にキスをすべきだったかと焦リ出す。

本当は年上の余裕を見せつけたい所なのだが、今のテマリはそんなもの、これっぽっちも持ち合わせていなかった。


心臓が痛いくらいにハイスピードでビートを刻み、下手したらこのまま死んじゃうんじゃないかとすら思えてくる。

しかしそれもまあ、息子には悪いが幸せなのではないだろうか。

溢れる愛の中で死ねるなら正直言って本望なのだ。

どうかこの息苦しい幸福の時間がいつまでも続いてほしい……。


シカマル「ちょ、ちょっと腰上げてくれるか? ///」

テマリ「あ、ああ……///」


ボタンを外し終えてシカマルの手がズボンに伸びる。

ヤバい、顔から火が出そうだ。

スルスルと脱がされていくこの格好に身もだえし、思わず顔を手で覆ってしまう。

何だコレ……。

コイツとは何回もやったし、子供だって産んだじゃないか……。

何だってこんなにどぎまぎするのだろう?

シカマル「……じゃ、じゃあブラを外すから///」

テマリ「い、いちいち言うな……///」


シカマルはテマリを抱きながら背中に手を回した。

沈み込むような柔らかな肌。

……ではない。

徹底的に絞り込まれた筋肉質かつ傷だらけの体。

もし俺がこの女の親ならば、忍なんかにはさせなかったろう。

だが忍であったからこそ俺たちは出会え、今この愛しい腹筋の割れた体を抱いているのだ。


テマリ「ぶ、不器用だなお前……///」


ホック一つ外すのにも、今日はえらく手間取る。

ブラはずしのシカマルで名を馳せているこの俺が……。


シカマル「く、くそ……いつもは2秒もかからないのに……///」

テマリ「いつもって何だ……? まさかお前……」

シカマル「大丈夫だ。やましいことは何もしてない」

テマリ「ならいいが……///」


……シカマルは既に、遊郭如きではうしろめたさを感じない境地に達していた。

シカマル「よし……外れた」カチャッ

テマリ「……///」


遂にホックまで外され、後は為すがまま。

テマリは夫に身を任せるべく目を瞑る。

いや……今は夫というよりも奈良シカマルであってほしい。

愛しくてたまらなかったあの頃の彼でいてほしい。



シカマルもテマリも、興奮はMAXに達していた……。






ピンポーン。





シカマル「」ビクッ

テマリ「」ビクッ




AM0:10。

あり得ない時間帯に鳴ったチャイムに、二人はビクリと反応する。

驚きのあまり、シカマルは目にも止まらぬスピードでテマリのブラのホックを留めた。

流石はブラはずしのシカマルといったところか。



シカマル「だ、誰か来たぞ……」ヒソヒソ

テマリ「無視だ無視! こんな時間に非常識にもほどがあるだろ!」ヒソヒソ




ピンポンピンポーン。




シカマル「」

テマリ「」



ピンポンピンポンピンポンピンポーン。



執拗なピンポン。

正直言ってこんな真夜中に呼び鈴を連打する姿を想像するとえらく怖い。


シカマル「もしかしてシカダイがホームシックになって帰って来たとか……」

テマリ「まさか……」

シカマル「まぁ急な用事かもしれねーから見てくる……」


せっかく気分が盛り上がっていたのに邪魔をされた二人。

シカマルは渋々と立ち上がった。




ピンポーン。


シカマル「はいはい、今開けるって」


……これでもしシカダイとかだったら今夜はテマリと出来ないことになる。

どうかシカダイじゃありませんように……。

そんな淡い願いを抱きながら玄関へ向かう。


しかし経験上、こういう時は大抵残酷な現実が待ち受けてるのだ。

ああ、なんかシカダイのような気がしてきた。

……絶対そうだろ……くそ……。


シカマル「ん?」


格子戸から見える来客のシルエットは大きかった。

少なくとも自分たちの息子でないことは確かなようだ。

良かった……最悪の事態は免れたか……。



シカマル「まったくこんな時間に何すか……?」


シカマルは鍵を開け、ガラガラと引き戸を引いた。

一体誰なんだよホント……。




























カンクロウ「夜分遅くにすまねえじゃん?」






シカマル「」













シカマルの目の前に立っていたのは、漆黒の闇に紛れて迷い込んだ厄災(オナニスト)。


カンクロウであった――。

シカマル「な……なんでここに……?」

カンクロウ「それについては中で話す。……とりあえずお茶の準備だ」




そう言うが早いか履いてきた草履を乱雑に放り、ズケズケと中に入っていくカンクロウ。

家の間取りは完璧に記憶しているようで、勝手に台所で茶葉とテマリの好物である甘栗(常備)を探している。



シカマル「ちょ、ちょっと……」


テマリ「だ、誰が来たんだ?」

カンクロウ「よう、テマリ。久しぶりじゃん」

テマリ「」



テマリが何だか騒々しいのを聞きつけて、服を着てやって来た。

そしてすぐに実弟であるカンクロウと目が合う。




テマリ「出てけえええええええええッ!」ブオン

カンクロウ「危ねッ!?」ヒュンッ



台所の隅に立てかけてあった鉄扇を掴み、流れるような動作でカンクロウに殴りかかる。

カンクロウはそれをギリギリでかわした。

因みにこの鉄扇は修業や任務に使っている物の予備であり、主にゴキブリ退治と夫への制裁に用いられている。

シカマル「お、落ち着けって……」

カンクロウ「お、怒るとしわが増えるじゃん?」ビクビク

テマリ「帰れッ! 何時だと思ってんだッ!」

カンクロウ「まだ12時だぜ……?」モグモグ

テマリ「私の甘栗食うなッ!」バッ


夫との激甘空間を邪魔されただけでも怒り心頭だったテマリだが、それが親族の恥部ともいえる存在であれば尚更だった。

あの手この手で自分の恋路の障害であり続けたカンクロウ。

なんやかんやで木の葉と砂の二つの里を救った英雄として死んだ筈がいとも簡単に甦り、忍界大戦を邪魔して延々と長引かせた張本人である。

おまけにこの前シカダイに自慰を教え、奈良家家族会議まで引き起こしている。

テマリ「前にお前は出禁だと言ったはずだ……」ガルルルル

カンクロウ「た、確かに夜中に突然やって来たのは謝るじゃん。でもちゃんと訳が……」

テマリ「知るか! 出禁と言ったら出禁なんだ! シカマル、塩だ! 清めの塩を!」

シカマル「ま、まあ話だけでも聞こうぜ……? カンクロウだって砂隠れの里の相談役なんだ。緊急の話があるのかもしれねえじゃねえか……」

テマリ「く……」


確かにカンクロウは里の超重要なポストにいる。

何故里の全員からゴキブリ扱いされ、五代目風影も死ぬほど毛嫌いしているこの男がそんな地位を手に入れたのかは誰も知らない。

知っているのは多重心転身の術という最悪な禁術を開発したカンクロウだけなのだ。


カンクロウ「流石シカマルは話が分かるじゃん」バリッ

テマリ「あー! 勝手に新しい甘栗開けるなッ!」



***



テマリ「お茶が入ったぞ……」ブスッ

シカマル「わ、悪いな……」


居間に移った一同だが、カンクロウはトイレを借りると言って出ていってしまった。

見るからに不機嫌なテマリを見て、シカマルは再び奈良家が荒れるんじゃないかとヒヤヒヤする。


テマリ「とにかく話を聞いたらすぐに帰ってもらうんだぞ……。もし帰るように言っても『宿が無いじゃん』とか抜かしたら私を呼べ。分かったな?」ズイッ

シカマル「りょ、了解……」

テマリ「帰ったらさっきの続きだ……。明日は休みだからな。足腰立たなくしてやる……」ゴゴゴ

シカマル「か、顔が怖いっすテマリさん……」ビクビク

カンクロウ「ふぅ……スッキリしたぜ」スッ

テマリ「じゃあ私は台所にいる……」スタスタ


カンクロウがトイレから戻ってくると同時に居間を離れるテマリ。

もちろんすれ違いざまの舌打ちだって忘れない。

シカマル「遅かったじゃねえか」

カンクロウ「和式でシコるのは久しぶりだからな」

シカマル「人待たせといてオナニーかよッ!」

カンクロウ「違う違う、メインの任務は勿論うんこ。オナニーはサブ任務じゃん」


何が違うのか知らんが、このふてぶてしい態度はおいそれと真似できるようなものではなさそうだ。

シカマル「……まあいい。とりあえずさっさと本題に移ろうぜ」

カンクロウ「宿が無いじゃん」

シカマル「テマリいいいいッ! ……むぐッ!?」


まさかの本題がストレートで来たので、妻の名前を叫ぶシカマル。

慌ててカンクロウはシカマルの口を手のひらで押える。

かすかにイカの臭いがした。


テマリ「呼んだかッ!?」スチャッ


ドデカイ鉄扇を抱えてテマリ登場。

もう殺る気満々といった風だ。


カンクロウ「呼んでないぜ」

シカマル「むぐぐぐぐ……」

テマリ「でも今テマリって……」

カンクロウ「多分、手マンと聞き間違えたんじゃねーか?」

テマリ「なんで手マンの話をする必要があんだい……」イライラ

カンクロウ「下ネタは外交上のテクニックの一つじゃん」

テマリ「下らないこと話してないで、さっさと用件を済ませて帰りな……」シャッ! ピシャンッ!


そう言ってテマリは再び部屋を出ていった。

それを確認してからカンクロウはシカマルを開放する。

シカマル「ぶはッ! 何すんだッ!」

カンクロウ「だって俺を追いだす気だったじゃん」

シカマル「当たり前だ! っていうかお前ここに居たらアイツに殺されるぞ!? 悪いこと言わねえから適当に宿屋に泊って明日砂隠れに帰れ」


シカマルとしてもカンクロウを泊めるのは勿論嫌なのだが、それ以上に自分の家で死人が出るのは御免だ。

もう、テマリとの夜の営みなんかどうだっていい。

とにかく穏便に事が過ぎてくれればそれ以上何も望まない。


カンクロウ「でも本当に泊まる場所がねえんだ」

シカマル「なんだよ金か? 貸してやるから気にすんな。義理とはいえ兄弟じゃねーか」

カンクロウ「俺は五大国全ての宿屋で出禁じゃん……」

シカマル「……」


オーバーな言い方のようで、実はオーバーでも何でもない。

むしろ波の国や渦の国といった小国でさえも例外なくカンクロウを出禁にしているため鯖を読んでいるくらいなのだ。

それだけ第四次忍界大戦で広まったカンクロウの悪名は物凄かった。

それまでの里を救った功績を差し引いてもカンクロウヘイトが圧倒的であり、カンクロウ嫌いが過ぎるあまりオナニーによるティッシュの消費と環境問題を結びつけるものまで現れた。

カンクロウ「それに三日前に我愛羅を本気で怒らせちまってな……帰ろうにも帰れねえんだ」

シカマル「な、何したんだよ……」

カンクロウ「そ、それは言えないじゃん……」ガタガタ

シカマル「……」


あれだけカンカンのテマリを見ていながらここに泊まりたいと言うくらいなのだから、よっぽど怖いのだろう。

シカマルは人間の歯が恐怖でカチカチなるのを初めて見た。


シカマル「……だがよ、この家で殺されるくらいなら野宿でもした方がいいと思うぜ?」

カンクロウ「嫌じゃん。せめて暖かい寝床に三食がついて、自由にティッシュが使える環境がいい」

シカマル「我がまま過ぎるだろお前! 無理だって! あいつが泊めるのを許す訳がねえ!」

カンクロウ「大丈夫、ちゃんと秘策があるじゃん」

シカマル「はぁ?」


どんなに考えたって、そんな方法は見当たらないのだ。

頼むのがカンクロウで、許すかどうかの最終決定権がテマリにある限り、この結果は覆らない。

秘策なんかあるわけが……。

カンクロウ「この写真を見てくれ」ピラリ

シカマル「」



カンクロウが提示した写真を見て、シカマルは戦慄した。

そこには鼻の下を伸ばしながら遊郭で戯れている男の姿が写っていた。

後ろでまとめた髪。

伸びた顎鬚。

これはまさしく……。




シカマル「」ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

カンクロウ「不思議なことに、この写真には妻子持ちの知り合いが写ってるじゃん?」ニタア

シカマル「ど、どうしてこれを……?」

カンクロウ「知ったところでどうにもなんねえだろ」



確かにどうやって手に入れたなんかどうでもいい。

自分の生き死にはカンクロウの所有する写真にかかっている。

言い換えるならば睾丸を常に鷲掴み……否、ウォーターポンププライヤで強めに挟まれているような状態なのだ。

カンクロウ「テマリが知ったらここの畳全部、お前の血で染まるじゃん……」

シカマル「お、脅す気か……?」

カンクロウ「我愛羅の怒りが収まるまででいい。それまではここに住まわせてもらう」

シカマル「どれくらいだ……どれくらいで風影の怒りは収まる……?」

カンクロウ「早くて一年だな」

シカマル「本当に何したんだよお前ッ!?」

カンクロウ「さあな?」


カンクロウはお茶をズズズと啜りながら、手持無沙汰な左手で股間を揉みしだいている。


カンクロウ「勿論、お前はテマリに手を出させないように見張ってろ。体を挺してでも俺を護れ。俺とお前は運命共同体。どちらかが死んだらもう一方もお陀仏じゃん……」

シカマル「……」


快楽の獣による、最悪な脅迫。

カンクロウが証拠写真を突きつける前に葬り去ることが出来ればそれに越したことはないのだが、残念ながらそんなことは不可能だ。

忍としての実力でいけば間違いなく最高峰。

チート忍術をいくつも体得し、誰も知らない禁術を日夜開発しまくっているこの傀儡師には、あのナルトでさえ到底敵わないだろう。

そんな生ける伝説みたいな奴が何で我愛羅やテマリに毎度のようにボコボコにされるのかは分からないが、とにかくめっちゃくちゃに強いのだ。

カンクロウ「おーいテマリ!」


用件を伝えたカンクロウは自分の姉を大声で呼びつけた。

ドドドと廊下を走る音と足でブレーキをかける音が聞こえ、勢いよくふすまが開かれる。


テマリ「終わったか! よし、すぐに帰れ!」ダダダダダダ


肩に鉄扇を担ぎ、左手には粗塩。

凄まじいスタンピングは彼女の急かす気持ちを如実に表している。


カンクロウ「布団の用意だ。ちなみに俺は小豆の枕じゃ寝れないじゃん」

テマリ「殺すぞ?」

その言葉はカンクロウではなく、シカマルに向けられた言葉だった。

「殺すぞ……」ではない。

「殺すぞ?」だ。

許可を求めるときの「殺すぞ?」なのだ。

もしここで殺すのが嫌なら外で殺るけど、ここで構わないだろうかと訊いているのだ。


シカマル「……」ガタガタ

カンクロウ「シ、シカマルッ! ほら、お前からも言うじゃんッ!」ビクビク

テマリ「帰れって言ってんのに帰らないんじゃあ仕方ないよな……」スチャッ


頭蓋骨くらい簡単に砕けそうな巨大な鉄扇を振りかぶる。


カンクロウ「い、いいのかシカマルッ! おいッ!」ガタガタ

テマリ「いいに決まってんだろ?」ゴゴゴゴ

カンクロウ「ひいいッ!?」スッ

シカマル「ッ!?」


カンクロウが懐に手を入れた瞬間、シカマルの表情は凍り付く。

家庭崩壊。

地獄の制裁。

死。


チョウジが自分の弔辞(チョウジ)を読むという笑えないジョークまで想像して、彼は遂に口を開いた。



シカマル「……し、しばらく、カンクロウが家に住むことになった。よろしく頼むぜ……」

テマリ「え?」

カンクロウ「……」ニヤア

シカマル「それからカンクロウには絶対手を上げないでくれ……。一生のお願いだ……」

テマリ「ちょちょちょッ!? どういうことだッ!? 説明しろッ!」

シカマル「里の極秘事項だ……。すまねえな……」

勝利を確信したカンクロウ。

不気味な隈取がより一層醜く歪んで微笑む。


カンクロウ「ま、そういうわけだ。あ、そうそう。箱ティッシュとトイレットペーパーは安売りの時に買いだめしとくんだな。俺からのアドバイスじゃん……」ニタアア



早速テマリは一生のお願いを無視してなぐり殺そうとしたが、旦那が必死に土下座する姿を見て思いとどまった。




***



シカマル「……すまねえ」

テマリ「勝手にしろ! お前なんかもう知らんッ!」グスッ

シカマル「……」



その夜、二人は背を向けて眠った。

このときシカマルは自分が何て馬鹿なことをしたのかを思い知った。

良心の呵責で泣きそうになる。

愛する人に裏切られるってのはどんなに辛いだろうか、悲しいだろうか、悔しいだろか。

自分がテマリを裏切りさえしなければ、こんなことにはならなかったのだ。

もう絶対にあんな真似はしないと今なら誓える。

愛しているのはテマリだけなのだと。

しかし後悔するには遅すぎた。

例え正直に話したとしても、もう元に戻ることは出来ないじゃないか。



シカマル(すまねえ……すまねえテマリ……。馬鹿な俺をどうか許してくれ……)ポロポロ



***



シカマル「お、おはよう……」

テマリ「……おはよ」


ご飯の炊ける匂い。

卵焼きの甘い香り。

それに混じって漂ってきた強烈な精液の臭いに叩き起こされ、シカマルは台所へ向かった。

着物姿のテマリが朝食の準備をしている。

もし昨日カンクロウの襲来が無ければ、今頃はまだ二人で布団の中で抱き合っていたのだろう。


カンクロウ「お、うまそうじゃ~ん?」


朝食の匂いを嗅ぎつけて、目ヤニやら涎の跡やらをつけた小汚い男が朝の挨拶もせずにやって来た。


カンクロウ「だけど俺の好きなハンバーグがないな……。どーゆーことじゃん?」


テメーがどーゆーことだよと突っ込みたいのを堪え、シカマルは朝刊を取りに行く。

新聞を読むのはシカマルの日課だ。

里の相談役として常に五大国の情勢に目を光らせる必要があるのだ。

もっともその国や里が抱える問題などは上手く隠ぺいしていたりするため、得られるのは上辺だけの情報。

きっとこれからの時代も諜報機関として忍の重要性は変わらな――。



シカマル「な、なんだこりゃ……」


新聞の三面に載っていたカンクロウの写真。

その首にとんでもない懸賞金がかかっている。

なぜ賞金首になっているのかは全く記載されていないのだが、その額からして今砂隠れの里がとんでもないことになっているのは分かる。

我愛羅のコメントが一応載ってはいるものの、内容は以下の調子だ。


――あの糞■■■を探し出せ! 見つけ次第奴の■■■を切り取って連れて来い! 例え世界中のどこに逃げようと必ず捕まえて■を裂き、砂を詰めて海に沈めt……すまない、取り乱した。とにかく情報を求む。(五代目風影)


冷静沈着な我愛羅がこんな伏字だらけのコメントをするのを、シカマルは初めて見る。

もしかしたら自分はとんでもない凶悪犯罪者をかくまっているのかもしれない……。

とりあえずこんなのをテマリが見たらどうなるか分からないので、ちぎってポケットにねじ込んでおいた。



***


テマリ「出来たぞー」


居間で適当に政治欄を見ていると、テマリが朝食をお盆に乗せて運んできた。

湯気が立つ白米にけんちん汁。

濃厚な黄色の卵焼きはふわふわとしてうまそうだ。

そしてメインは好物の鯖の味噌煮。

見るものの唾液腺を破壊しそうなメンバーがちゃぶ台に並び、思わず顔がほころんでしまう。



ドンッ!



カンクロウ「」

シカマル「」


突然巨大な丼がカンクロウの前に置かれた。

……モザイクがかかっている。

目の前にあるのに何故かモザイクがかかっていて、何が入っているのかよく見えない。

しかしこれはアレだ。

これは確か……。

カンクロウ「な、何じゃんコレ……」

テマリ「お前のために作ってやったテマリ丼だ……。食え……」

カンクロウ「て、テマリ丼……?」


そう、テマリ丼だ。

前に一度、食卓に出現したことがある。

結婚記念日に出かける約束をしていたのをすっかり忘れ、AVを借りてホクホク顔で帰宅したら出てきたのがコレだ。

思い出しただけでも腹が痛くなるような幻の一品。

ウ○コを食べたことがない人なんかは「これ、もしかしてウ○コ? 君、ウ○コ入れたよね?」と訊いてしまいそうなくらい不味いのだ。

確か生クリームやサンマのはらわた、マヨネーズにインスタントコーヒーなんかも入っていた気がする。

まさかもう一度お目にかかるとは思ってもみなかった。



カンクロウ「……」ウプッ

テマリ「これからお前に出される食事は全てテマリ丼だ。それが嫌だってんならとっとと帰るんだな……」


なるほど、暴力を使わずに追いだす作戦に出たか……。

三食寝床付+非暴力という条件をクリアしつつも栄養失調に追い込み、自分から退散させるという考えはなかなか賢い。

――しかしそれは俺が弱みを握られていなかったらの話だ。



カンクロウ「シカマル、飯を俺のと交換してほしいじゃん」

シカマル「!?」

テマリ「はんッ……誰がそんな要求飲むかっての」フフン

カンクロウ「交換してくれるよな? シカマル……」スッ

シカマル「……」ガタガタガタガタ

テマリ「しつこいなお前は! こっちは帰れって言ってんだ! 早く荷物まとめて出ていけ!」

シカマル「……」カチャッ

テマリ「ふぁッ!?」

カンクロウ「サンキューじゃん……」ニタア


無言で丼を持ち上げる旦那に驚愕するテマリ。

カンクロウはさも当然といった風に味噌煮に箸を伸ばす。


テマリ「お、おいやめろ! 何してんだシカマルッ!?」

シカマル「け、今朝はテマリ丼の気分だ……」ウプッ

テマリ「嘘つけ! 嘔吐いてるじゃないか!」

シカマル「いただきます……」ズババババババ モッチャモッチャモッチャモッチャ

テマリ「うわあああ! 食うな! 汚いぞ! 死ぬぞ!」

シカマル「……うヴぉえッ……だ、大丈夫だ……。ウ○コでも入ってんじゃねーかと疑いそうになるが、うぷっ……本当に入ってるわけじゃねえんだ……。……別々に食べたらおいしい食材たちがカメオ出演してくれただけなんだ……」オブッ!

テマリ「……」


……シカマルは知らないが、実は入っている。

相手がカンクロウだからと容赦ないテマリ丼を作ろうとした結果、どうしてもウ○コが入らざるを得なかった。

勿論テマリから産み落とされたモノではなく、口寄せしたカマタリに強制的に脱糞させたモノなのだが、誰のモノであれウ○コはウ○コ。

食べていいはずが無い。


シカマル「うぼろろろろろろろろろろろ……」

テマリ「し、シカマルッ!」


結局シカマルは盛大にゲロをぶち撒き、白目を剥いて倒れ伏した。


***




テマリ「なぁ……お前何かカンクロウに弱みを握られているんじゃないのか……?」


ゲロの後始末を終えてから数時間後。

もう時計の針はお昼を指している。

意識を取り戻したシカマルに、テマリは問い詰めた。

訊くならカンクロウがトイレに籠っている今しかないと思ったのだ。


シカマル「……いや、別に……」


テマリに目を合わせることが出来ないシカマル。

あれだけカンクロウに対して頭が上がらない姿勢を見せつけたら、疑われても何もおかしくない。


テマリ「本当か? そもそもカンクロウを家に泊めなきゃならん理由は何なんだ? 仕事関係なら里の経費で宿でも何でも取ってやればいいだろ?」

シカマル「……」

テマリ「どうなんだ?」

シカマル「……が、外部に漏れたらヤバいんだ。カンクロウが滞在していることを含めてな……」

テマリ「……」


嘘は言っていない。

もしカンクロウの存在が知れたら里は大騒ぎになり、回り回って結局は自分がヤバいことになる。

シカマルが真剣な表情でそう言ったので、テマリはとりあえず信じることにした。


テマリ「……分かった。なら今はこれ以上は訊かん」

シカマル「そうしてくれると助かるぜ……」

テマリ「だが、これだけは覚えておけ。私はお前の味方だ。お前が苦しんでいるならその重荷を共に背負う覚悟も出来ている」

シカマル「テマリ……」

テマリ「お前のためなら……自分の実弟を殺めることだってやぶさかじゃない……」キリッ

シカマル「」ガタガタ


本気で怒ると何をしでかすか分からないからこそ、本当のことを打ち明けられないのである。

シカマルは少しでも気分転換になればと、外に出かけた。


***



カンクロウ(遂に安住の地を手に入れたじゃん……)コスコスコスコス


家主を家に居られないほどに追い込んだカンクロウは、トイレに籠って悠悠自適なオナニーライフを満喫していた。

働かなくても飯が食え、朝から晩まで自慰三昧。

心配の種だったテマリも自分に手を出してこない。

シカマルへの脅しが上手くいった証拠だ。


カンクロウ(合成写真でも、前科のあるやつは疑おうとしねえもんだな)ククク


カンクロウの懐にしまってある写真……。

それはよくできた偽物であった。

砂隠れを出国する前に急いで作り上げた渾身の作。

タイトルは「溺れる男」。

テマリのアルバムの中から見つけ出して切り抜いたものと遊郭の写真を組み合わせただけなのだが、あれだけ慌てていたということは最近行ったばかりなのだろう。

自分が証拠写真なんかを手に入れられるわけがないのに……。


テマリ「カンクロウ! いつまで入ってんだ!」ダンダンダンダンッ!

カンクロウ「!」ビクッ


突然の借金取りのようなノックに思わず鳥肌が立つ。

カンクロウは今にも便器を詰まらせてしまいそうなほどの大量のペーパーを無理やり流して、AVを借りるためにビデオ屋に向かった。



***



シカマル「最近どうよ……」バクバク

チョウジ「どうって?」ハフハフ

シカマル「今の生活は楽しいか……?」モリモリ

チョウジ「うーん、まあこうやって美味しいもんいっぱい食べながら、チョウチョウの成長見守れるのは結構楽しいかな」ジュウジュウ

シカマル「いいよな……」ゴキュッゴキュッ

チョウチョウ「パパ、牛タン食べたい」ムシャムシャ

チョウジ「じゃあついでにクッパも頼もうか。すいませーん」


適当にブラブラしていたら、偶然お昼を食べに出ていた秋道親子に出くわした。

シカマルも先ほど吐いたために胃の中はからっぽ。

久しぶりに会ったんだし、たまには美味いモノ食おうってことでやって来たのが焼肉屋だった。


チョウチョウ「パパ、このお肉は食べ放題に含まれないって」

チョウジ「大丈夫、割り勘だし」

シカマル「2対1で割り勘とか卑怯だぞオイ」


豪快に食べまくる秋道親子。

医者ならストップをかけるかもしれないが、シカマルにとっては見慣れた光景だ。

美味しそうに頬張る姿は何だか微笑ましく映る。


チョウジ「シカマルは今の生活に満足してないの?」

シカマル「昨夜の途中までは最高に楽しい日々だった……」

チョウジ「な、何があったんだよ……」


親友が深い悩みを抱えた顔を見せたので、チョウジは箸を止めた。

離婚の話でも持ち上がったのだろうかと不安になってくる。


シカマル「例えばだ……。例えば自分の家から誰かを追いだすとして、お前なら何て声をかける? 勿論相手の機嫌を損ねずにだ……」

チョウジ「ええ……? 追い出したいの……?」

シカマル「ああ、すごく追い出したい。出来ることなら相手が何か一言でも喋る前に死んで欲しい」

チョウジ(滅茶苦茶深刻だぞこれ!)ビクビク

シカマル「思いつかねえか……?」フウ

チョウジ「え、ええと……僕なら実は多額の借金を抱えているとか言って、不安にさせて自分から出ていかせるかな……? 僕は追い出そうなんて思わないけどさ……」

シカマル「うーん……それだと『じゃあマグロ漁船にでも乗ればいいじゃん?』って言われそうなんだよな……」

チョウジ(すごい厳しい奥さんだ!)ブルブル

***


シカダイ「今帰ったぜ」ガララ


夕方ごろ、奈良家の長男シカダイは家に戻ってきた。

昼には帰るつもりだったのだが、イノジンとゲームをしてたら何だかんだでこんな時間になってしまった。


シカダイ「うわ、なんかイカ臭えな……」


玄関を開けたらいつもは畳の香りがするのだが、今日は何だか家全体が生臭い気がする。

おまけに靴箱の上には変な臭いのするティッシュが何気なく置いてある。

この家には男が自分と父ちゃんしかいない以上、犯人が誰かなんて考えるまでもない。

自分の兄弟になるかもしれなかったそのティッシュを憐れむような眼で見つめてから、シカダイは草履を脱いで上がった。

……本当は従兄になるかもしれなかったティッシュなのだが。




テマリ「シカダイッ! 帰って来たのか!?」


突如、便所の方から響く母親の声。

何だか疲れ切っているような声だ。


シカダイ「あ、ああ……。どうしたんだよ……」

テマリ「頼むからトイレットペーパーを買ってきてくれ! 出来るだけ沢山だ!」

シカダイ「トイレットペーパーって、昨日まで何ロールもその便所に置いてなかったか?」

テマリ「無いんだよ! あるのは山のように積まれた芯だけなんだよ!」ウワアアアアアアアアア

シカダイ「帰ったばっかなのにお使いかよ……めんどくせえな……」ハアー

テマリ「母ちゃん、もう5時間もトイレから出られないんだぞ! お前が早く帰って来ないから!」ウワアアアアアアアアア

シカダイ「わ、分かったから、いい歳して泣くな母ちゃん……」


シカダイは近くの店に走った。

***



その夜、夕飯の準備を作る気力も起こらなかったために4つのカップ麺が食卓に並んだ。

シカダイにとってそれは別に構わないのだが、目の前に見逃せない事件が胡坐をかいて麺をすすっている。


カンクロウ「俺はシーフードが一番うまいと思うじゃん」ズズズ

シカダイ「……」



……カンクロウである。

イノジンの家で見かけた新聞に多額の賞金を懸けられて載っていた叔父が、今自分の家でシーフードがどうのとのたまっている。



おそらく父ちゃんも母ちゃんもこのことは重々理解した上で匿っているんだろう……。


シカダイは両親が犯罪者に加担しているという事実にショックを覚え、俯きながらカレー味をすすった。


テマリ「……」ビキビキ

シカマル「……」


一方シカマルはテマリの怒りが今にも爆発しそうなのを見て取って、内心穏やかではなかった。

自分が絶対に手を上げるなと念を押している以上実力行使は無いだろうが、一日に10ロールも消費されてはたまったもんじゃない。

しかし当の本人はそんな二人の心境には全くお構いなしといったご様子。

勝手に楽しみに冷やしておいた缶ビールを開け、テレビを指さして馬鹿笑いしている。

因みに奈良家では食事中はテレビを見ずに極力家族の会話を楽しむというルールになのだが、それを伝えても「俺は奈良家じゃないじゃん」と言って全く取り合わない。

カンクロウの存在そのものが、今までの平穏無事な生活をかき乱しているのだった――。


***



カンクロウが来てからというもの、奈良家のお屋敷は地獄に変わった。

いたる所にガビガビになったオナティッシュが散乱し、風呂場の排水溝は固まった精液で詰まるのはもはや様式美。

気に入っていた掛け軸にはシミができ、テマリが生けた生け花は謎の白濁液をかけられて枯れた。

替えたばかりの畳の上で真っ裸の男が床オナをする状況を何度見ただろうか……。


勝手に金庫をこじ開けて賭博に行ったときは流石にテマリも殺しにかかったが、カンクロウの前に飛び込んで代わりに殴られるシカマルを見ると、もう何も出来なくなってしまう。

どんなに泣いて「帰ってくれ」と頼んでも「嫌じゃ~ん」の一点張り。

テマリは宇宙一頭を下げたくない相手に土下座までしたのだが、それをせせら笑いながら「早く飯を作ったらどうじゃん?」と言う。


突然やって来てその家の王となった男は、まさにやりたい放題の圧政を強いた。

気づけばカンクロウの命令に従わない場合はシカマルを脅すという図式が成り立っていたのだ……。


***



そんな最悪な生活が始まってから一週間が過ぎた頃、一人の訪問者がやって来た。


我愛羅「久しぶりだな」

シカマル「か、風影様ッ!?」


五代目風影、砂爆の我愛羅。

巨大なひょうたんを背中に担ぐ姿はいつ見ても様になっている。

とりあえずシカマルは我愛羅を居間に通した。


我愛羅「……」クンクン

シカマル「ど、どうかしました?」

我愛羅「いや、変に臭いと思ってな……。この前来た時はイグサの良い匂いがしたものだが……」

シカマル「……そ、それはその……」

我愛羅「まあそれはさておき、本題に入る。周知とは思うが、カンクロウを捜している。何か知っていることがあれば教えて欲しい……」

シカマル「!」


風影は自分がその首に賞金をかけた男を捜しだすべく、こうして直々に木の葉まで出向いたのだった。

シカマルにとっては地獄に仏のように感じられた。

今日は朝からテマリは外に出ているのだ。


シカマル(い、今しかねえッ! 今言ってしまえば俺の勝ちだッ!)


ここで全てを話せば万事解決。

テマリにあの写真を見られることなく、カンクロウは砂隠れの里に連行される。


シカマルは慌てて口を開く。

大丈夫、今カンクロウは二階の一室でオナニーをしているはずだ……。



シカマル「風影様ッ! 奴はッ! カンクロウはここに居……ないじゃん」

シカマル(!?)


自分の意志と無関係に発せられる言葉。

天井を見上げると、天井板の隙間からチャクラ糸が伸びて自分の唇に繋がっていた。

カンクロウの十八番、傀儡の術である。


我愛羅「……そうか」

シカマル「ああ。恐らく木の葉にはいねえだろうな。とりあえず雲隠れ辺りを捜してみるといいと思うじゃん」

我愛羅「……分かった。協力に感謝する」

シカマル「感謝なんかいらねーから、さっさと茶飲んで帰れ」ヒラヒラ

我愛羅「……」カチン スック 

シカマル(ああ……ッ!)

我愛羅「邪魔したな……」ガララッ ピシャッ



やっと顔を出した希望の芽も容赦なく摘み取られ、踏みにじられてしまう。

シカマルは悔しさのあまり、うっすらと涙を浮かべた……。





カンクロウ「おい……さっきのはどういうわけじゃん……?」

シカマル「ひッ!?」


我愛羅が帰ったのを確認してすぐ、カンクロウは二階から下りてきた。

オナニー中だったために下半身丸出しだ。

ナニをブラブラさせながら、怒りの形相でこちらを睨みつけている。


カンクロウ「シカマル、お前まだ自分の置かれている立場を理解していないようだな。てめえのちっぽけな命なんざ、俺の気まぐれでどうとでもなるってのによ……」

シカマル「うぐ……」

カンクロウ「どっちが偉いのかちゃんと分からせておく必要がありそうじゃん……」


目が深く沈み込んで完全にキレている。

大きな巻物を一つ開き、カンクロウは捕獲用の傀儡、黒蟻を口寄せした。


シカマル「な、何する気だッ!」

黒蟻「」カタカタカタカタカタカタカタカタ

カンクロウ「いけッ! 黒蟻ッ!」ヒュンッ

シカマル「う、うああああああああああ! 影真似のじゅッ……!」

黒蟻「」カパン



咄嗟に影真似の術で相手の動きを封じようとするも、一歩及ばず。

シカマルはオナティッシュがぎっしりと詰まった黒蟻に閉じこめられてしまった。


シカマル「くっさああああああああああああ!!!!!!! 出せッ! ここから出せええええええええええッ!」ドンドンドンドンッ

カンクロウ「しばらくそこで頭を冷やすじゃん……」


カンクロウはまた、勝手に自分で決めたカンクロウの部屋に籠ってオナニーを始めた……。



***



数時間後にテマリが帰宅すると、居間の隅には虚ろな目で膝を抱えながらブツブツ言っているシカマルの姿があった。

何があったのかと尋ねても何も答えない一家の主。

体の臭いから察するにカンクロウ絡みなのだろうが、「カンクロウだろ?」と訊くと「あいつにだけは手を出さないでくれ!」と泣いて懇願するのだ。



テマリ「……」



シカマルがカンクロウに何か弱みを握られているのは間違いない。


何故ここまで頑なにあの男を護ろうとするのだろうか……?



テマリ(まさか……)




テマリの脳裏に「不正」の文字がよぎった。

シカマルは今、里の相談役として大きな権力を握っている。

火影の最も近くにいる男の口添え一つで出来ることは数多いのである。


賄賂を持ち掛けられたって何もおかしくない……。

途方もない額に目が眩んだって不思議ではない……。


そしてそのことでカンクロウから脅されているのだとしたら……。




テマリ「な、なあ……シカマル……」

シカマル「頼゛むうううう! まだ終わりだぐないんだあああああああああ!」

テマリ「……」




必死に額を畳に擦り続ける様子を見ると、よほど知られたくないことを抱えているのだろう……。

テマリの中に芽生えた疑心は、次第に確信へと変わっていく。




テマリ「……シカマル」

シカマル「嫌だああああああ!」ウアアアアアアア

テマリ「いい加減にしろ、シカマルッ!」バキッ

シカマル「!」


胸ぐらを掴んで右ストレート。

シカマルの上の第一小臼歯が一本飛んでいった。

驚いてテマリを見ると、涙を一筋こぼしていた。




テマリ「前に私はお前の重荷を共に担ぐと言った! だが好き好んで担ぐわけじゃないッ! 今のお前は何だ! 自分から担いきれない重荷を担いでいるんじゃないかッ!」バキッ

シカマル「痛ッ! せめて平手打ちで頼むッ!」


転がる側切歯。

この短時間で二本の永久歯と永久にお別れすることになった。



テマリ「10年後、お前がどうなっているのかを考えろ! お前が抱えている悩みはさらに大きくなるはずだ!」

シカマル「う、うう……」

テマリ「10年後にお前はシカダイの前で胸を張っていられるのか!」

シカマル「……」


シカマルは10年後に「父ちゃんは昔、遊郭に行ったことがある……」と言う姿と、今晩「父ちゃん、先週遊郭で遊んできた///」と言う姿を想像してみた。

どう考えても前者の方がまだ胸を張っていられるような気がする。



テマリ「よく考えることだ……。何が本当にお前にとっての幸せなのかを……。このままお前がカンクロウの言いなりになっているようなら、私はお前を軽蔑する!」クルッ

シカマル「……テマリ」



テマリはグシグシと袖で目元をぬぐって踵を返した。



自分の言葉がシカマルを追い詰めていることは分かっている。

しかし自分の愛した男には正しい道を歩んでもらいたい。

「これが俺の忍道だ」と、強く言える男でいてほしい。

例えそれが自分たちの間を引き裂くことになろうとも――。




テマリはこんな風に勝手に壮大なドラマを思い描いていた。

実際は浮気がバレて嫁に半殺しにされるのを恐れている哀れな男の話なのだが。



***



カンクロウ「俺はホウレンソウがダメだって知ってんじゃん……?」ガシャン

テマリ「……」

シカダイ「……」アワアワ

シカマル「……」


その日のカンクロウの尊大な態度はこれまた一段と磨きがかかっていた。

昼にシカマルをやり込めたことが糧となり、このままテマリも言いなりにしてしまおうという腹であった。

誰も自分に逆らわないという自信。

立場が上の者を服従させる快感。

今のカンクロウには我愛羅以外、怖いものなど何も無かった。



テマリ「……」

カンクロウ「どした? 早く片づけないと、困るのはお前の旦那じゃん……?」スッ

シカマル「……」


無残に砕かれた小鉢と、埃まみれになったホウレンソウのおひたし。

テマリは何も言わずにそれらを拾い集めた。


カンクロウ「あー……なんかオナニーのし過ぎで肩が凝ったな……。テマリ、肩を揉め……」

テマリ「……」キッ

シカマル「か、肩なら俺が……」

カンクロウ「テマリに揉ませるからこそ意味があるじゃん……。昔から頭が上がらなかった存在に揉ませるからこそな……」

テマリ「……」モミモミ

カンクロウ「それでいい……」ニタア

シカマル「……」ウゥ


この一週間でつけ上がれるだけつけ上がった男は、さも気持ちよさそうに目を細める。


カンクロウ「あのテマリが俺の肩をもんでいるなんてよう……。散々俺のことをオナロウとか呼んで馬鹿にしやがった、クソ女がよう……? ククク……笑えるじゃん?」



カンクロウはただ安住の地を手に入れるだけでは満足しなかった。

人を支配する喜びを覚えたオナニストが目指したものは、今まで自分を虐げてきた人々への復讐であった。


今はまだ無理だが、いずれあの我愛羅にも自分の草履を舐めさせてやる……。

奴自身の弱みを握って……。


復讐心に取りつかれたカンクロウの隈取が邪悪にグニャリと曲がる。

カンクロウ「」ペッ

テマリ「」

シカマル「」


カンクロウが畳に唾を吐いた。

普通の唾のはずなのだが、カンクロウが吐いたと言うだけで物凄く汚い気がする。


カンクロウ「おら、拭くじゃんテマリ……」


テマリ「……」


カンクロウ「どーしたあああ? 旦那がまた哀れな姿で泣いちまうぞおおおおおお!」





カンクロウは大声で叫んで挑発した。






シカマル「いい加減にしやがれッ!」ゴキャッ!!!!!

テマリ「!」

カンクロウ「ぐへえッ!?」ズシャアアアアアアア!!!!!!!!!




シカマル、怒りのグーパン。

幼いころから忍として体を鍛えてきた男が本気で放る鉄拳が立てる音は、バキッ! とかそんな生易しいものでは無かった。

カンクロウの頬骨が少し欠けるような、そんな力強いパンチであった。





カンクロウ「い、痛えじゃん……」


鼻と口から血をドクドクと噴きながら、カンクロウは目を開ける。

完全に頭を垂れていた自分の奴隷ともいえる存在の、まさかの反乱。

まだこの俺に立てつこうというのか……。



カンクロウ「シカマルてめえ……俺に手を出したらどうなんのか分かってんだr……ヒッ!?」

テマリ「よくやったシカマル。それでこそお前は私の自慢の旦那だよ……」パキッ コキッ


カンクロウの目の前には、彼を見下ろすようにして立ちはだかり、クラッキングをするテマリがいた。

目に影が入っているが、口元は笑っている。


テマリ「さーて、コイツをどうしてやろうかな……。甘栗は全部食べられたし……家中を汚されたし……おまけに顎でこき使われたもんな……」ニタニタ

カンクロウ「ひぃ! いいのかテマリ!? 俺はシカマルの秘密を握っている! 俺が喋っちまったらシカマルは本当に死ぬことになるじゃん!?」

テマリ「その覚悟があったからシカマルはお前を殴ったんだろうが……」


まったく取りつく島のない状況。

カンクロウの顔は恐怖で強張る。


カンクロウ「し、シカマルぅううううう!!!!! 本当にいいのかああああああああああ!!!!!! あの写真を見せたらてめえは終わりなんだぞおおおおおおおおおおお!!!」

シカマル「や、やってみやがれ……」

カンクロウ「え……?」

シカマル「やってみやがれってんだあああああああああああああああ!!!!!」ガクガクガクガク


膝を震わせながら、シカマルは精一杯そう叫んだ。

正直言って滅茶苦茶に怖い。

あれだけラブラブしてた前日に他の女を抱いていたなんて知られたら、そりゃあこっ酷く痛めつけられるだろう。

痛いという感情すら沸かない肉塊に成り果てるかもしれない。


しかしこのままカンクロウの言いなりになっていては、テマリから軽蔑されたままだ……。


そんなの、死ぬよりもつらいことじゃないか……。






いや、待て……。





どうせ写真見られたら軽蔑されるんじゃなかろうか……?







シカマル「す、すいやせんカンクロウさん……やっぱ今の無しで……」ボソッ

テマリ「シカマルてめえ……」ギロッ

シカマル「やってみやがれカンクロウこらああああああ!!!!!!!」ウワアアアアアアアアア



シカマルは泣きながら叫んだ。




カンクロウ「ほ、ホントに見せるぞ! ホントに見せるからなッ!!」ヒイッヒイッ

テマリ「何をだよ……? 何か見せたいなら見せてみろよ……」

カンクロウ「見せるぞ! 見せるぞおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」ウワアアアアアアアアア

テマリ「だから見せろつってんだろ……?」



先ほどから「見せるぞ」しか言えないカンクロウ。

いざシカマルに反抗されたら後は道ずれにするしか手がないという単純な事実に、今更ながら気づいた。


シカマル「や、やれよ! さっさとやれよ!! やれええええええええええええええ!!!!!!!!」 

カンクロウ「ひ、ひいいいいいいいやあああああああああああああああああ!!」シュッ!!

テマリ「あん? なんだこりゃ……」



とうとう自分の生き延びる道を完全に見失ったカンクロウは、奇声を発しながら懐から切り札を取り出す。

遂に浮気の証拠写真が、テマリの前に姿を現した。


シカマル「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!!!!!!!!!!」


それがテマリの目に触れるか触れないかの内に、シカマルは土下座をした。

頭を何度もガンガンと畳にたたきつける動きはまるでミシンの針のよう。


カンクロウは気が振れたような眼でテマリを見つめながら、カカカと高笑いする。

上手く混乱を引き起こすことが出来れば、それに乗じてこの場を逃げ出せるかもしれない……。


カンクロウ「それはヒヒッ! シカマルがお前を裏切って遊郭で遊んでる写真じゃん……ふひッ!」


ブルブルと震える手で写真を指さし、涎を撒き散らす姿は見ているものに恐怖を与える。

食い入るように写真を見つめるテマリ。

シカマルは自分の最期を悟って小便を漏らす――。








テマリ「お、お義父さん……///」




シカマル「は?」


カンクロウ「へ?」



シカダイ「うわ、ホントに祖父ちゃんだ……最低だな」



予想外の展開に、シカマルとカンクロウは素っ頓狂な声をあげた。


二人でテマリの持っている写真をのぞき込む。



後ろでまとめた髪。

伸びた顎鬚。




そして生々しい、顔の傷跡……。



今現在のシカマルにあまりに顔が似すぎていて、傷が無ければ見分けがつかない。

しかし確かにその写真に写り込んでいたのはシカマルの父親、奈良シカクであった。


カンクロウ「」


つまりカンクロウは合成写真を作る段階で既に大きなミスを犯していたのである。

写真を切り抜いたテマリのアルバムは彼らが忍界大戦を経験した年のものだったのだ……。



テマリ「……シカマルお前、お義父さんのこの写真が広まるのを恐れて……?」

シカマル「え? あ、ああ! そうだ! こんなの出回ったら奈良家の恥だからな!」アセアセ

カンクロウ「嘘じゃん! 絶対それ今考えたじゃん! シカマルてめッ! ホントは最近行ったんだろ!」アワアワ

シカマル「遊郭ってなんだ? 美味いのかソレ?」

テマリ「……」



危機が去ったと知るや否や、すっとぼけ始めるシカマル。

昔遊女におぼれていたことを知るテマリは呆れたような目で彼を睨んだ。



テマリ「まぁ確かにこんなのが世間の目に触れるのは気持ちいいもんじゃないが……。まさかこれだけのネタで私らを脅してたとはね……」スチャッ

カンクロウ「」ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ


いつのまにか持っている鉄扇。

きっとこれから天井からぶら下げられて体中を殴打され、苦しんで苦しんで苦しんだ末に死ぬのだ。


テマリ「一応訊いといてやるよ。火葬でいいんだろ……?」

カンクロウ「ほ、葬らないでほしいじゃん……」ジョバババババババ


顔をクシャクシャにして頼むカンクロウ。

しかし同情する気には全くなれなかった。

カンクロウ「お、俺が間違ってたじゃん……。ほら、昔から俺ってすぐ調子に乗るところがあるから……。でもそこが可愛いってお袋も……」ビクビクビクビク

テマリ「そうか、良かったな。もうすぐ母様に会えるぞ?」ブンッ ブンッ

カンクロウ「シカマルッ! 悪かった! 心の底から反省してるッ! だからテマリを止めてくれ! 一生のお願いじゃんッ!」

シカマル「テマリ姐さん、殺っちまってください!」オネアイシャッス

カンクロウ「し、シカダイッ! シカダイはおじちゃんの味方をしてくれるよな? そ、そうだ、新しいオナニーのやり方を教えてやるじゃん!」アワアワ

シカダイ「おじちゃん、向こうへ行っても元気でな……」

カンクロウ「うぅ……ぐぎいッ……!」ポロポロ


完全に孤立した男は俯いて、ポロポロと涙をこぼした――。




カンクロウ「傀儡の術ッ!!」

シカマル「!?」


こぼしながら手を交差させる。

襖の中からいつの間にか隠してあった数体の傀儡が、勢いよく飛び出した。


カンクロウ「ハハハ! こんなこともあろうかと、戦闘態勢だけはいつもとっておいたj」


テマリ「フンッ!」ガキャッ!!

カンクロウ「」ペタン



自慢の傀儡たちは一撃で粉々になった。

カンクロウはもう何も喋る気力も沸かず、その場にへたり込んでしまった。



テマリ「シカダイ、ここから先は刺激が強すぎるから部屋にいな……」

シカダイ「」コクコク







鉄扇を振りかぶったテマリは、久しぶりに満面の笑みを見せた。








***



翌日、いたる所に血の染みがついた巨大なズタ袋が我愛羅に引き渡された。

「まだ息はあるか」と訊き、「ある」と答えると、我愛羅は邪悪に笑いながら「良かった……まだ楽しめそうだ……」と呟いた。

途中でズタ袋が「ぶもお!」と騒ぎ立てたが、我愛羅が巨大な砂の手で握りしめると静かになった。

砂隠れの里で何があったのかは謎のままだったが、この後もカンクロウは苦しみ続けなければならないのだろう。


テマリ「まだ殺さなくて良かった。結構金になったな」

シカマル「やってることがヤクザみたいだったけどな……」


貰った巨額の賞金はひとまず家の修繕に充て、残りは将来に備えて貯金しておくことにした。



テマリ「私はてっきり賄賂でも貰ってて、そのことで脅されているんじゃないかと思ってたんだぞ?」

シカマル「ははは……まさか……」

テマリ「だいたいお義父さんがそういう店に行ってたってだけであそこまで卑屈になるか、普通?」

シカマル「な、奈良家は由緒正しい名家だからな……」

テマリ「よく分からんな、名家の長男坊が考えることは……」




シカマルとテマリは我愛羅を里の門まで見送ってから帰路につく。

カンクロウから解放されて、やっと穏やかな気持ちになれた。

夕焼け空が本当に綺麗だ。



テマリ「分かってるとは思うが……///」


テマリの耳が赤い。

夕焼けのせいもあるのだろうが、照れているテマリの耳は本当に赤い。

そこが可愛いと思うし、愛しいと思う。


テマリ「帰ったら先週の続きだ。今夜こそ足腰立たなくしてやる///」

シカマル「で、でもシカダイが……///」

テマリ「今朝金を握らせて遊んで来いと言ったらすぐに仲間集めて温泉旅行に行ったぞ」

シカマル「最近の子供の行動力はすげえな……」

テマリ「あ、先に一緒にお風呂入っちゃうか? ヤバ、鼻血が……///」ポタポタ

シカマル「だ、大丈夫かよ……?」





シカマルは慌ててポケットからティッシュを取り出した……。

*EDテーマ『パレード』
 


♪ぷぅ――――――――ん      そいっ……そいっ……

 (テレテンテテ テンテテ テレテレ)

 
 ぷぅう―――――う――――――ん⤵  そいっ……そいっ……

 (テレテンテテ テンテテ テレテレ) 


 ぷぅ――――――――ん      そいっ……そいっ……

 (テレテンテテ テンテテ テレテレ)


 ぷぅう―――――ん―――――――――――⤴  

 (テレテンテテ テンテテ テテテテ!)


            ヽヽ!::::::::::::::::::::::::i
         _,,.. -‐'::::::::::::::::::::::::::::::''゙し,∧

          >‐-::::::::::::::::::::::::::::::::::::::!  iヽ,、.   ,
        , -ニ_::::::::::::::::::::::; ‐''二='''‐- 、 レ、  /.!
       i‐、,./ z'":::::::::::::::/,/::::::::::::::::::::::::\ ヽ'゙ !/i

          |  -'‐''"Z::::::://::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ    {,
       ,i   /"´ム7'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',   ,},ィ

     __i''"   ,'  / ,i::::::::::::::::::::ト、::ト;::::::::::::;::::::::i:、   /
   、‐-`'    i / / l::::::::::::::lヽ;:l ヽ! ゙、:|i::::i !:/!::!i   /iヽ
    ヽ'"~)   i r'  ii  ,へ::::rヾ、! '| '  リ V. l/ !:i、|  レ!Xi_
     .}V  '' | |  || |''ヽ`,::i`'          'i゙、|   /.!XX\_
   _,ノ    i! |  || !! i;{ i! , ,. =='''"    l i |  ,/| |XXX;!i  ``'7‐-
  ``''-、   、. ! |  !| |Xi,ヾ  〈/-.、,  , , _,.zr' !! `'il lXXXx!l  /
  ,.:i´,-‐'   i, l l  i !ヾXi!i''!〃 弋・ブ;'ノ .t゙・-/!! |  /i iXXX/,/  !
.,/ム‐-;ヽ_,.  ヾ、!  `、! ヽx!l !   ,  '"  i ` /, || |  /ム_,./'"   i─X─
  r' 、  \__ ヽ  `、 ヽ,ヾ゙、'"   、,_,.!,/,/ i ! ,.!,r=、'  `'''─---`---
  〉:、.\  > < ヽ   `、、ヽXヽ、-‐==/ / // ,ト,!ト' !
  iXX\ ヾ'-l  )  `、、  !l iXX ヽ;il!ilレ'X! //_/| ,! |


 風が吹いてっ あーあぁ……


 (痛い……)


 消えない想い……





 何をもっていこうか?


 (集めてひとつ……)


       ,、 _\;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:゛;:;:V l
       \~_`;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:! _,,,,,,,,,,_
        ヽ",`;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/"~;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:`ヽ.
          _~≧;:;:;:;:;:/;:;:;:;:;:;:;:,、、ヽヾ、`、ヽ`,
            彡/i;:;:;:;:;:;:;:ミ゛ `   ゛ ' i
               l;:;:;:;:;:≡  _      l
               l;:ヘミ"   、-゛ヽ-` ._,,,i
               i;:;:〉 ゛    ` ゜'  〈ェi
               ヽl.          ヽi
                リi`、        ' ,´i
            ________ソl__ヽ,     -‐‐ /
           l". . . . . . . 丶 ゛i、_    "/
           l. . . . . . . . i i l `-、_ , イ、 、
          _⊥_     ! ! l~"`‐'"l. . . i i゛l
      _,-‐'"~. . . . ~"‐-、._ノ i l;:;:;:;:;:;:;:l. . . ,' ; l
     i"/"""""ヽ. . . . . . . `‐‐i‐-、_;:;:;:;:\ ' ' ノ
     i/;:;:;:;:;:;:;:;:;:`、. . . . . 。. . . i. . ~"ヽ ;i;`‐i‐'\
     ル;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:`、. . . . . _, '. . . . . .  l;:o:;l l. . . `ヽ
     i`,;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:〉~""´. . . . . . . . . . 皿./`〉、 .,ノi

    ,‐ソ`,;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ノ  _ _ _ _ _ _ _, -‐'''"ヾ!`'´. . ヽ' l
    i;:;:ヽ',;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ノ. . i   l  / ヾ~"^"'il ,-、_  l
   ,‐";:;:;:;:;:ヽ;:;:;:;:;:シ. . . . .l - -+-/ ' ~ """'i .| | `i-、l
   i;:;:ヽ;:;:;:;:;:ヽ;:;:;:;:ソ. . . . l_ _ _l_/   '  ""','. . | | | `l
   〉;:;:ヽ;:;:;:;:;:ヽ_ノ  _ -‐"l"l   _, ':二‐'. . . | |ヾii、|

  i";:;:`;:;:;:;:-ー‐""/´xxxxxxヽヽ _-' l. . . l. . . | ト、iトl
  i;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ixxxxxxxx`‐`_~_l_ _l. . . l. . . l ,l l l
  i;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヽxxxx, -'. . . . . . . . . . . .. i. . └'‐-'-'l

二度とない! 二度とない! 


 捨てるなんて馬鹿みたい……




 無邪気になってっ あーあぁ……


 (イメージ……)


 
 トゥトゥーン……トゥトゥーントゥトゥ

 トゥルトゥルトゥルトゥトゥトゥン……


                          ,ィ
               |\/ヽ / |,.イ

              _j    `′  └―ァ     、
             ヘ               /   ト、/ ヽ__,
             、_」    ,. -='ニ" ̄ ̄``'┘、    └z__
            \     //´          >‐- 、   ∠._
            く_  , //´       ,ヘ. ,.ィ     |    >
             _ブ 〃        ん、V l       }   く
                 `ー|l        |  `'"´|     `、 ┌'^`
      _,. -‐、     _ |レ| i  ハハ ,ヘ!    l ,ィ     L..[`
  _, -_'"-''"´ ヘ   _> `Y入M lー-V、_    ノノ j    |
 f´r''"     ヘ. _/   { f |` レ''汜T7'   '右〒W  Ⅳ

 Vヘ       く     ヽヾj、    ̄    └-′h∧/
  Vヘ       /      `ーi、    _ }    ,:シ'' ̄¨フ
  Vヘ       Z__,     ,.-‐lヽ  ‐-、__   .イ   、>
   Vヘ       /   _,.-(   L.` 、     , <_    \
   Vヘ        ̄▽   `ー- ニー`ー '  ___j、  _[ ̄
    Vヘ      ,xく又^文>、  「:  ̄i三iー'-、 ヽ、「
    Vヘ    ,イヽ,へ,ヘ,へ.>、 L’_   L..」   |  皮ヽ、
     Vヘ  /`┴∠.Ⅹ X `X,X^,マャニ'_ー_―_''ニ’イ人,く,へ.
     Vヘ/      ̄`ー'-ニヽ△△_X X又,へ乂∧,.ヘ_>ヘ

      Vレ            |    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   j
      /´             r‐|             /  \
    /                 |[|            {    \
   ,/            _,.  └ |               l     i



 きーっとそれは終わらなーい……(テテテレテレテン……)
 

 きーっとそれは終わらなーい……(スタタタタタタタ)


 テテテンテン テテテテ!


 |/    ノ //iヾニ''''='-` ヽ  i              ∧
      `'' ー' ノ`ー""、 ̄   ∨i  /          ∧
        /∠二7 ノ      } /          ∧ ヾ
        二 =- < 二ニ=-  | イ           ∧
{ i                  .レ |            ∧
ヽ ヽ_     __         /  /         ∧
  , -    /  ̄ ̄ ̄` ヽ 、    {  /    |    |\∧
. /   /   , -‐- 、     ヾ、  .| /   |  |    |
   /    {     }     〃 i イ    |  |    |
  /      乂 __ ノ  , --、 〃   /    |  / }  |、 |
ー-`ー- __        {__ /´   / /   .| /` }  | ∨!
   `ーミ__ ̄ ̄   , } i彡  //l   イ /  i.  |  v
         `.       } i   ´  i  / ´}  i  |
                } i    / イ }  l  i∨ .|
                } i    レ / l  / /| ∨|
                i }     / / イ / |  v
               i }     / l/  イ  |
               じ    /   /   |

ぅ愛のっ胸っ 焦ぉがせぇ (ぴゅう)

 
 千のっ夢ぇ 渡れぇ (ぴゅう)



 縦横無尽っ かぁけて 手に掴む世界ぃ……




 雲がぁ ちぃぎれてぇ (ぴゅう)


 日が また 落ちてぇ (ぴゅう)

 
 一人ぃの パレードが 


 動き出すぅうううううううううううううう!


    |   v――――v'´      /
    /               /
   |                     |
   |   ┌―===―‐┐      |
   |   |:_}___{__:|       |
   | L_______」    ヽ

   |  |T.Uヽ}  レイUフ |     |_

   |  |  ̄`|   ´ ̄  |        ト、_
  / 〉 .|ニニニト、/ニニニ',      |
│ │ ∧// `-'  \\ハ.    /

│ │ | ∧ <ニ三ニ> | / |   /
│  \|/  \/\_/  .!  /



 冒険 吉日 心拍 上昇 明暗 遭遇 生命 相愛……

 (テッテッテッテッテッテッテッテッテ……)

 (テッテッテッテッテッテッテッテッテ……)


 フォ――――――ン……


                 _ ..ェェェェェェェェェュ。.

                ,。:i升圭圭圭圭圭圭圭℡:、
                ,:佳圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭|i:、
             ,佳圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭:、
                ,佳圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭|i.
           ,佳圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭!

             i圭圭圭圭圭圭圭圭王王王王王圭圭li   ,. -‐…・・・… 、
             |圭圭圭圭f。 ̄  c==,=┐   ゚ l圭圭ム__/         ヽ
             |圭圭圭圭|。     >く 〈ノ     ,.=ミ圭圭li〉           |
             |圭圭圭圭|。   ム ヽ竺ゥ,.=ミ,′ !尹ミlli   木   日  |
´ ̄ ̄ ̄`ヽ     |圭圭圭圭ゝ........../  :|   |'  |l|     ノ   向  |
         ヽ    |f¨等¨¨¨''_三-、_―‐┬….i   |   |   il|    葉   は   |
        ‘.   lll トヾ`ー弌! O`マぇ‐'  fl   |   |   llj    に       |
  .Eヨ     .> |ム バ ≠ `=彡ヲ′   ||   |   |、  / l    て       ,′
  耳又      |   |矣、ゝ′ 〃 》         |   |   |  { ゚.         /
            l   |圭鈊、 〃 〃      ,l ニ !ニ. |ニ. ト ゝ、_   __ . イ
  ,コム      |  :|㌢´≠¨∨ /'      ヾニ:'| 三 !三. |三 ‘.ニ ヘ  ̄
  フ 虫     :|  ;f  《 〈,'∧   ,   __ . ._| 三 |三=゚.三 ‘.ニ. ハ
           / ,'l|  ||  |//\ { ´二 ̄-.| 三=j 三=ヘ.三 〉三 i
        /  ムl!   ||  |////\    /   }≦三三三ニ≧キミミ ‘.



***


シカマル「ふぃー……」カポーン


テマリ「おい、シカマル! ジャケット裏返しのままで洗濯に出すなよな?」

シカマル「悪い悪い。それよりさっさと入ってこいよテマリ。体洗ってやるぜ? ///」

テマリ「ちょ、待て、心の準備が……。あ、ポケットにもなんか入れっぱなしだぞ! まったく! ///」ゴソゴソ

シカマル(なーに照れてんだか……///)





テマリ「何だこのマッチ……『遊郭・ヌけ忍』……?」







テマリ「」コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ





終劇

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom