レーベ「初めての耳掃除」 (30)

地の文
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クリスマスも終わり、今年もあと一週間を切っていた

そんな冬のある日、ビスマルク建造のためレーベを秘書艦に任命し、執務を手伝ってもらっていた。当然ビスマルクは今日も出てこない

黙々と書類の山を消化していると、ふとレーベの動きが目に入る

俺に負けじと書類を消化しているが、たまに耳元を指で掻いているのだ。気になったので訊くことにした



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1451542168


「さっきから耳をいじってるみたいだが、どうした?」

「ちょっと耳の中が痒いんだ。でも指を入れるわけにもいかないからこうして気を紛らしてるんだけど……」

「……ちょっと耳の中を見させてもらっていいか?」


そう言って俺は席を立ち、レーベの元に近づいてまず耳の外を見る。こちらは特に問題が無さそうだ

次に耳の中を見てみると、耳垢が外耳道の壁に張り付いているのが見えた


「なるほど、これは痒くて仕方がないかもな」

「どういう事?」

「レーベの耳の中に耳垢がたくさんあるんだ。穴を塞ぐほどではないが」

「そうなんだ。この痒みを何とかする方法はあるのかな?」

「手っ取り早い方法としては耳掃除だな」

「ミミソウジ? それはなんだい?」

俺はその発言に驚いた。まさか耳掃除を知らないとは


「耳の中に竹でできた耳かきを入れて、耳垢を取る事なんだが……」

「……それって、医者がやる事じゃないのかな?」

またも俺は驚く。これがカルチャーショックというやつか

「日本では自宅でも出来ることなんだが……ドイツじゃそんな事ないんだな」

「うん」

こうして、また一つ驚きの事実を知れたわけだが、実際どう思われているのか気になるので軽くスマホで調べてみた。そこにはこう書かれている


――それは医療行為と変わらない。医者の資格を持ってない人が耳の中に異物を入れるのは危険だ

――そんな棒を耳の中に入れて痛くないのか

こんな感じで、耳の中を自分で掃除することはなさそうなことが分かった。とは言え全員がそうだとは限らないと思うけど

別なページを調べてみると、他にもこんな事が書かれていた

――白人にはウェットタイプの人が多く、黒人はほとんどウェットタイプであり、ドライタイプのアジア系の人とは違いがある

どうやら海外の人は飴耳の人が多いらしい。日本人は少ないらしいから、そういう違いも関係しているのかもしれないな


「……もう一度、耳の中を見せてもらってもいいか?」

「うん」

許可を得られたのでまた耳たぶを軽く摘まんで中を覗く。見た感じでは飴耳ではなさそうだ

「レーベ、お前が良かったら耳掃除をしてもいいか?」

「提督がボクに?」

「そうだ」

すると、レーベは少し考えてから首を縦に振った

「分かった。ちょっと準備をするから待っててくれ」

俺は耳掃除の道具を取りに部屋まで向かった

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道具を用意した俺は執務室に戻り、鍵をかけた

「どうして鍵をかけるんだい?」

「耳掃除しているところを誰かに見られると面倒なことになりそうだからだ」

「?」

レーベは経験がないからよく分からないようだ

「まあすぐに分かると思う」

俺は休憩用のソファに座り、ティッシュを横に広げて置く。そして膝の上に薄いタオルを敷く


「ほら、膝の上に横向きで頭を乗せるんだ」

「う、うん」

レーベは帽子を脱いで恐る恐る頭を乗せる。足を左側に向け、左耳が上を向いている状態だ

「提督、本当にこんな体勢でするものなのかい?」

「自分でするとき以外は一般的だな」

「そうなんだ……少し恥ずかしいかな」

レーベの白い肌が少し赤みがかっている

「だろう? こんなところを見られたら恥ずかしいだろうから鍵を閉めたんだ」

今言ったことももちろん怖いが、青葉に撮られる危険性や、金剛辺りに見つかって騒がれる事が一番怖い


「じゃ、今から始めるが痛かったら言ってくれ」

「う、うん……」

そう言って耳かきをゆっくりと中に入れていく。するとレーベは目を閉じて歯を食いしばる

「……やっぱり怖いか?」

「うん……」

耳かきを一度耳の中から出して聞くと、弱々しい声でレーベは答える。さすがに怖がらせたまま耳掃除をするのは可哀想だと考えた俺はレーベの頭を右手でそっと撫でる


「て、提督?」

「耳掃除っていうのは別に怖いものじゃないんだ。よっぽど下手なやつがしない限りは耳を痛めることはほとんど無いし、溜まった耳垢が無くなると結構気持ちがいいんだぞ?」

「……本当かい?」

レーベはきょとんとしていた。興味を持ったらしいので話を続ける

「ああ。俺がレーベくらいに小さかった頃はお袋にやってもらったんだが、最初の頃はお前と同じで怖がっていたらしい。ぎゃんぎゃん喚いて煩かったらしいから今のお前より酷かったと言えるな」

「提督にもそんな事があったんだね」

「まあな。で、お袋はそんな俺に『これが終わったらデザート食べさせてあげるから我慢しなさい、男の子でしょ?』と言ったらすぐに落ち着いて耳掃除を受けたらしい」

「くすっ……あっ、ごめん」

レーベはその時の様子を思い浮かべたのだろう。俺だって元帥あたりがそんな話をしていたら面白くて笑ってしまうかもしれない


「大丈夫だ。それで、肝心の耳掃除の時についてだが、最初はやっぱり少し痛かったな。でも、段々と張り付いた耳垢が取れる度にちょっとした快感になっていたんだ」

レーベはまだ体験していないのでよく分からない様子だ。無理もないが

「段々とティッシュの上に溜まる耳垢の数々、そしてそれを取るために耳かきで耳垢と壁を擦られる感触、仕上げの梵天の感触……駄目だ、体験してもらわないと無理だな」

「ふふっ……提督の話を聞いていたら、怖くなくなったかもね」

頭を撫でながら話をしていると、レーベは目を細めてとてもリラックスしていた。これなら耳掃除に変なトラウマを持たれたりはしないだろう


「そうか。やってもいいんだな?」

「うん、提督に任せるよ」

「分かった。いくぞ」

俺は耳かきをもう一度レーベの耳の中に入れる。すると今度は怖がることはなかったのでそのまま始めることにした

俺は耳の中を傷つけないように弱い力で少し剥がれかけた耳垢を少しずつ剥がし、そっと耳の外へと運び、ティッシュに落とす。そしてまた耳の中に入れて先端を使って耳垢をはがしていく

「んっ……」

「おっと、痛かったか?」

「ううん。変な感じだけど痛いわけじゃないよ」

「そうか、痛かったら遠慮無く言ってくれ」

「うん」

こうして何度か耳垢を摘出していくわけだが、レーベは俺のズボンの布を指で摘みながら声を抑えている。その様子を見ているといけないことをしている気分になってきて、そんなわけ無いと自分に言い聞かせる事を繰り返す


「あっ、そこ……」

「ん、どうした?」

耳垢をティッシュに落としたタイミングで訊いてみる

「今耳垢を取ったところ……もう少し掻いてくれないかな?」

「……こうか?」

「うんっ……そこ、気持ちいい」

先ほど耳垢を取った部分の耳壁を軽い力で掻くと、満足気にしていた。きっとあまりにも痒かったのだろう。俺も痒いとよく掻いてしまうから分からなくもない

レーベからもう大丈夫と言われるまでその部分を掻きつづけ、奥側の方へ耳かきを進めて行く


「ふぅ、何とか成功した」

「お疲れ様……とても苦戦しているみたいだね」

「ああ、こんなにギリギリのところにあるとは思ってなくてな……」

「ボクも奥の方から音が聞こえて、ヒヤヒヤしたよ」

「だろうな。一歩間違えれば大惨事間違い無しだからな」

正直、あまり無理せずここからは耳鼻科医に何とかしてもらったほうがいい気もする。しかし――

「でも、提督ならきっと全部取ってくれると信じているよ」

――なんて言われたら、途中で諦めることなんか出来ないよな

「ありがとうな。じゃ、残りも取って終わらせるぞ」

「うん」

―――
――


それから時間が経ち、何とか奥の耳垢を取り終えた俺は梵天で仕上げに入った

「ボンテンだっけ? これ、いいね」

「だろう?」

梵天を耳の中で動かして、残りカスを絡めとっていく

「さて、左耳はこんなもんでいいかな。次は反対を――」

コンコン

言いかけたところでドアをノックする音が聞こえた

「――遠征から帰投したみたいだな。続きは後にしようか」

「そうだね」

レーベは立ち上がって席まで戻る。俺は片付けをして席に戻り、それを確認したレーベはドアの鍵を開けに立ち上がった

――――――――――


「Guten Tag. 私はビスマルク型戦艦のネームシップ、ビスマルク。よおく覚えておくのよ」

一ヶ月後、何連敗したかも分からない大型建造で、ついにうちにビスマルクが着任した

「よく来てくれた。俺はここの提督だ……これから宜しく」

と、落ち着いて話しているが内心では喜びの気持ちを叫びたくて仕方がない。けどここは我慢我慢

「ええ、よろしく」

ビスマルクが右手を差し出してきたので、俺も右手を出して握手を交わす


「それじゃ、まずは鎮守府に何があるのかを覚えてもらうために案内をしてやりたいが俺は書類仕事があるから手が出せないんだ」

「そうみたいね」

ちらっとビスマルクが俺の机の書類の山を見る

「だから、レーベが代わりに案内をしてくれることになっている」

「あれ? ボクは今初めて聞いたけど……」

「ビスマルクが来た時にはまずそうしようと決めていたんだ」

「そうなんだ……もう少し早く言って欲しかったよ」

「スマン」

俺がレーベに謝罪すると、俺達のやり取りを傍観していたビスマルクは口を開く


「それで、話は済んだかしら?」

「ああ、一応な」

「待たせてごめんね。ビスマルク……姉さん?」

「レーベの好きなように呼んでいいわよ。それより早く案内して頂戴」

「うん。それじゃ提督、行ってくるね」

「ああ」

レーベとビスマルクが執務室を去り、俺は席に戻ると書類を片付けていく

ところでビスマルクは建造自体は日本でしたわけだが、耳の方はどうなってるんだろうか

レーベみたいに遠征による邂逅でも飴耳じゃないし……いつかこっそりレーベに調べてもらうか? いや、さすがにダメだよな

少し気になりながらも書類を着々と片付けていった

―――
――


約一時間後、案内を済ませたのかレーベが執務室に戻ってきた

「おかえり、もう案内は済ませたのか?」

「うん」

「そうか、ご苦労だった」

「どういたしまして……次からは事前に話しておいてね?」

「分かってるさ」

ビスマルクが来たから次はマックスも建造するか。資材消費は少ないからそこまで苦労はしないだろう。多分

それに同じ国の艦娘はまだビスマルク一人しか居ない。きっと同型艦が増えるだけでもレーベにとっては喜ばしいだろう。そうなると、終わらせた後にマックスが来た時の話をしておかないといけないな

色々と今後のことを考えつつ、書類の山を片付けるのだった

―――
――


夜になり、執務がやっとすべて片付いた

「これで終わりだな。お疲れ」

「お疲れ様」

お互い労いの言葉をかけると、言おうとしたことを思い出したので口を開こうとする

「レーベ」

「提督」

ほぼ同時に言ってしまい、気まずくなってしまった


「……先にいいぞ」

「いや、提督が先に話すべきだと思うんだ」

このままだと埒があかないな。ならこうしよう

「じゃあ提督命令で秘書艦が先に要件を話せってことで」

「突っ込みどころはあるけど、命令なら仕方ないね。その……提督」

言い淀んでいるレーベが話すのを俺はじっと待つ


「……実はまた少し耳の中が痒いんだ」

「あれから一ヶ月も経っているからな。自分でやっていないのか?」

俺は前回の耳掃除の時、次は自分か他の艦娘にやってもらうようにと伝えているのだ

「その……自分でやろうとしたことはあるけど怖くて」

「それなら他に出来そうな人に声をかけたりはしなかったのか?」

「それは、その……また提督にしてもらいたかったから」

白い頬を赤らめながらレーベは話す。とりあえず耳掃除をしてもらう分には少しは好きになってもらえたらしい

なら、俺の答えは一つだ


「そ、そうか。俺にしてもらうのが良かったなら仕方がないか」

「……いいの?」

「ああ。ただ、その前に飯を食べてからな」

「そうだね。ボクもお腹が空いたよ」

レーベはお腹を押さえて空腹のアピールをしていた

「それじゃ、行くか」

机の上を片付け、俺達は執務室を出て食堂に向かった

さっきの話はまだしていないが、耳掃除しながらでも話すことにしよう


終わり

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以上です
耳かきSSはとても良い物がたくさん出ていますが逆パターンはまだほとんど見かけたことがないのでこんな形で書いて見ました

ではHTML依頼してきます

おつおつ

乙です

乙ー

おつ

新スレ乙です

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