シャチ「おまえうまそうだな」アザラシ「おいしくないです」(38)


アザラシ「……」ゴロゴロ

シャチ「お、氷の上にまるまるとしたアザラシが」ザババババ

アザラシ「!?」

シャチ「おーい、ちょっとそこのおいしそうなおねえさん」

アザラシ「て、天敵だ!」

シャチ「くわせろ」ガパァ

アザラシ「ひぃぃ」

シャチ「」ガリガリ

アザラシ「く、くわれ……」

シャチ「」ガリガリ

アザラシ「……?」

シャチ「くそう、氷の上に口がとどかない」ガリ

アザラシ「た……たすかった……氷に乗っかっててよかった……」

シャチ「おい、おまえ!」

アザラシ「ひゃ、はい!」

シャチ「おりてこい! ずるいぞ!」ザババババ

アザラシ「いやだ! 海氷バリアー!」

シャチ「氷うまうま」ガリガリ


~一時間後~


シャチ「」ガリガリ

アザラシ「……ま、まだ氷食べてる……」

アザラシ「……」

シャチ「」ガリガリ

アザラシ「……ハッ!?」

シャチ「」ガリガリ

アザラシ「ま、まさか! 氷を食べて、こちらの足場をなくそうとしているのか!」

シャチ「」ガリガリガリガリ

アザラシ「ひいいいいいいいい」

シャチ「」ガリガリガリガリガリガリガリガリ

アザラシ「ひいいいいいいいい」

シャチ「氷をくいすぎてからだが重い」スブスブ

アザラシ「し、沈んでいったんだけど……」

アザラシ「な、なにがしたかったんだろうあのシャチ……」




シャチ「うおおおおおおお」ズブズブ

シャチ「沈むぞおおおおお沈むぞおおおお」ズブズブ




マッコウクジラ「おまえなにしてんの」

シャチ「うぉっ!? なんだ、お前か。ちーーーっす!」ズブズブ

マッコウクジラ「すごい勢いで沈んでるけど深海に何か用事あんの?」

シャチ「いや、単に胃が重いだけ」ズブズブ

マッコウクジラ「なんだ、餌をたらふく喰ったのか。うらやましいやつめ」

シャチ「いや、おれがくったの氷だよ」

マッコウクジラ「おまえなにしてんの」

シャチ「ちげーし! 氷の上に雌のアザラシがいたんだよ! うまそうだったのに!」

マッコウクジラ「アザラシかあ。大王イカの方がうまいしなあ」

シャチ「うまいんだよ! アザラシ!」

マッコウクジラ「うまいの?」

シャチ「うまいんだよ!」

マッコウクジラ「うまいんだ」

シャチ「おうよ!」




アザラシ「~♪」ゴロゴロ

シャチ・マッコウクジラ「hey you!」ザバァー

アザラシ「う、うわあああああああああああああ増えたあああああああああ」

アザラシ「ひいいいいいいいい」

シャチ「おいしいごはん! おいしいごはん!」ジャブジャブ

マッコウクジラ「アザラシがおいしいと聞いて」

アザラシ「マッコウクジラってアザラシ食べるの!? お腹壊すよ!?」

シャチ「おねーさんおねーさん」

アザラシ「な……なんでしょう……」

シャチ「あなたおいしそうですね」

アザラシ「……」




カモメたち「おこぼれにあずかりに来ました」

アザラシ「ひいいいいいいいいいいい」

カモメa「残飯処理は任せろ」キリッ

カモメb「任せろ」

アザラシ「ひいいいいいいいいい」

シャチ「諦めろ、これが弱肉強食だ」

マッコウクジラ「そうだそうだ」

カモメc「なあ、もう諦めな、お嬢ちゃん……」

カモメd「はやくしね」

シャチ「おれらは準備万端だ! 後は、お前を待つだけだ!」

アザラシ「くわせないよ!? いやだよ!」

シャチ「と見せかけて!」ポーン

アザラシ「わっ、と、とんだー!」

マッコウクジラ「おお」

カモメa「おおおお! こっちに来るぞおお!」

カモメc「お?」

シャチ「ばくっ」

カモメc「つかまったー!」ジタバタ

シャチ「バリッボリ……ガッガリ、ボリ、けっ、まずいな」ザブーン

カモメc「」ボタボタ

アザラシ「く、くわれたー!」

カモメたち「う、うわー!」

シャチ「羽がのどに詰まった」ザバザバ

アザラシ「……ああはなるまい」

マッコウクジラ「なあ」

シャチ「なによ」

マッコウクジラ「カモメって……うまいの?」

アザラシ「ま、まさか……!」




マッコウクジラ「鶏肉!」ぼーん

マッコウクジラ「とりにk」ジャブーン

アザラシ「と、とべてない」

シャチ「あたまでかっちが無理するから」

マッコウクジラ「くそう! くそう!」

シャチ「そんなに自分を責めるな……ほら、アザラシくってげんきだそうぜ」

アザラシ「いや、食べさせないよ!?」

シャチ「くわせてくれ! おなかへったんだ!」

マッコウクジラ「へったんだ!」

シャチ・マッコウクジラ「おなかへったんだ!」ザバババババ

カモメd「はやくしね」

アザラシ「さっきから一羽だけ何なの!?」

カモメたち「我々は残飯を漁ることに命をかけてます」

シャチ「くそう、おりてこい! ひきょうもの!」ガリガリ

マッコウクジラ「氷が邪魔だな……」

アザラシ「ひいいいいいいいい」

シャチ「お、いいこと思いついた」ジャブジャブ

マッコウクジラ「ほう……?」





シャチ「たてろ波! 打ち寄せる波! これであの氷は沈む!」ザブザブザブ

マッコウクジラ「お前頭いいな」ザブーンザブーン

アザラシ「わっ、うわわわわわ沈む! 沈む!」グラグラ

氷「グラグラ」

アザラシ「お」グラッ

シャチ「お」

マッコウクジラ「お」

カモメd「よし」

アザラシ「おちr」ザパーン

シャチ「いけええええええええええええ」ザバババババババ

マッコウクジラ「あそれええええええええええええ」ザババババババババ

アザラシ「ひいいいいいいいいいいいい」ジャババババ

アザラシ「つかまってしまった……」ガクガクブルブル

シャチ「もふもふ」

アザラシ「ひいいいいいいいいいいおくちに咥えられてるよおおおおおおお」

マッコウクジラ「もふもふ」

アザラシ「こっちも咥えられてるよおおおおおおおおおおお」

シャチ「おい、尻尾の方よこせよ。頭の方あげるから」

マッコウクジラ「頭うまい?」

シャチ「でりしゃす」

アザラシ「おいしくないです! おいしくないです!」

カモメ「呼んだ?」

アザラシ「お呼びじゃないです」

ご愛読ありがとうございました!!>>1先生の次回作にご期待下さい!!

後は任せた

アザラシ「ひいいいいいいい食べないでええええええええええ」ジタバタ

シャチ「ぺろぺろ」

アザラシ「ひいいいいいい味見されてるうううううううう」

マッコウクジラ「な……っ!」

シャチ「どうした」

マッコウクジラ「こ、こいつ、雌じゃないか!」

シャチ「雌の方が脂肪がのってうまい」

アザラシ「お、雄の方がおいしいよ!」

シャチ「ガリ」

アザラシ「ぎゃあああああ齧られてるうううううううううう」

シャチ「な、雌の方がうまいだろ?」

マッコウクジラ「なるほど……雌か」

シャチ「雌です」

マッコウクジラ「ようし交尾だ!」

アザラシ「このクジラあたまおかしい!」

マッコウクジラ「スーハースーハーメスノニオイクンカクンカ」

アザラシ「へ、へんたいだ! クジラの皮を被ったへんたいだった!」

マッコウクジラ「よく考えろ、お嬢さん。今は発情期だ」

アザラシ「みさかいなさすぎるよ! 種が違うよ!」

マッコウクジラ「え……?」

アザラシ「今気がついたの!?」

シャチ「そんなことよりはやくくおうぜ!」モグモグ

マッコウクジラ「そんなこととはなんだっ!!!!!!!!」

シャチ・アザラシ「」ビクッ

マッコウクジラ「俺たち生物の本質はなぁ……繁殖! 子孫を増やす!」

アザラシ「ま、まあ……そうですけど……」

シャチ「まあ、そうだけど」

マッコウクジラ「だから、なあ……すけべしようや……」ガシッ

アザラシ「ひいいいいいいいいいまじで交尾しようとしてるよおおおお」ジタバタ

シャチ「なあ」

マッコウクジラ「なんだ。今いいところなんだ」

アザラシ「種が違うよおおおおおおおお」ジタバタ

シャチ「おまえって、他のコロニーの雌どうしたん」

マッコウクジラ「……」

アザラシ「そもそもまだ性的に未成熟個体なんだよおおおおおおおお」ジタバタ

シャチ「なあ。なあ。他の仲間は?」

マッコウクジラ「うるせええええええええええええ!!!!!!」

シャチ・アザラシ「」ビクッ

マッコウクジラ「いいんだ、そんなことはどうでも。なあ? なあ? どうでもいいんとちゃう?」

アザラシ「は……はい……うん」

シャチ「……」

マッコウクジラ「俺さ……別に交尾するのは同種じゃなくてもいいと思うんだ……なあ?」

アザラシ「は……いやよくないよくないよくないです」

シャチ「……」ピコーン

マッコウクジラ「大丈夫、おねーさんが別種でも俺は興奮した。興奮した」ハァハァ

アザラシ「ひいいいいいいいいいいいいいいい」

シャチ「なあ」

マッコウクジラ「なんや」

アザラシ「」ヘンタイダヨオオオオオオオオ

シャチ「おまえ、雌の争いで負けたんか」

マッコウクジラ「……」

シャチ「それで群れ追い出されたんか」

マッコウクジラ「……」

シャチ「……プッ」

マッコウクジラ「……」カチンッ

シャチ「ははははははださいなおまえ弱小雄め」

マッコウクジラ「うるせえええええええええええええええええ!」

シャチ「雌の取り合いにまけ、挙句他の雄にとられて群れを追い出されたとか……ぷぷぷっ」

マッコウクジラ「笑うな! 笑うなああああああ!」

アザラシ「諦めなさい、これが弱肉強食だよ」キリッ

マッコウクジラ「ああ!? てめえ咥えて深海まで持ってくぞこのアマ!!!」

アザラシ「潰れてしまいます」

シャチ「ひひひひひひ……ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」チラッチラッ

マッコウクジラ「このくそ野郎! お前も群れから追い出されて離れてんじゃねえか! お前も同じだろうが!」

シャチ「な、てめえー!」

アザラシ「弱小雄……」チラッ

シャチ「」ガリッ

アザラシ「ひぎぃ!?」

マッコウクジラ「ふ、図星か」

シャチ「うるさいやい!」

アザラシ「ちょ、喧嘩しながら引っ張り合いしないでちぎれる、ちぎれる」

マッコウクジラ「ふんぬーっ」

シャチ「ふんぬーっ」

アザラシ「の、のびるうううううううううううう」ニョーン




アザラシ「のびた」ニョーン

アザラシ「そして二匹はこちらをそっちのけで喧嘩を始めてしまった……」ニョーン

シャチ「ごちそうさま」ゲップ

アザラシ「え」

マッコウクジラの死骸「」プカーッ

アザラシ「ひいいいいいいいいいいいいいいい」

カモメたち「出番だ! かかれーっ!」バサバサ

アザラシ「地獄絵図だーっ!」

カモメa「うまい! うまいぞお!」バクバク

カモメb「残飯処理隊!」バクバク

カモメd「任せろ」

サメ「血の臭い! 血の臭い!」

サカナ「えさえさえさえさえさえさえさえさえさえさえさえさえさ」

死骸「」チーン




アザラシ「自然ってすごいのね」ニョーン

シャチ「おなかいっぱい」ゲプ

アザラシ「……」ニョーン

シャチ「お、アザラシだ!」

アザラシ「いや、さっきからいたよね!? 喰われる寸前だったよね!?」ニョーン

シャチ「アザラシ……?」

アザラシ「縦に伸びてるけど確かにアザラシです」ニョーン

シャチ「ふーん。まずそうだな」

アザラシ「おいしくないです」ニョーン

シャチ「おなかいっぱいだからもういくね」ザババババババ

アザラシ「うん」ニョーン




アザラシ「た、たすかった……」

シロクマ「やあ! おいしそうなおねーさん! ちょっと胃の中においで!」ドドドドドド

アザラシ「ひいいいいいいいいいいいいい」


生きている限り、食物連鎖は終わらない!
がんばれアザラシ!
完!

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