人心操作と5人の傭兵 (3)
「おーい! 勉強の時間だよー? アル? いないの? アルー!?」
少女がドンドンと扉を叩く。
が、返事は返ってこなかった。
今日はアルフレッドの勉強を見てあげる日であり、彼はこの時間、家にいなければならないことになっている。
しかし彼がちゃんと家にいたのは初回だけ。
いつも近所の悪ガキどもとつるんで森や川へと遊びに出かけてしまうのだ。
「……まーた逃げたな?」
怒りで持っていたバスケットがブルブルと震える。
少しでも楽しく勉強させてあげようとご褒美のクッキーまで焼いてきたというのに、向こうはこちらの気持ちを全く汲みとってくれない。
本当に、これっぽっちも。
そしてまた少々手荒い真似をしなければならないのだろう。
……懲りない奴め。
「とりあえず警告1。帰ってくるなら許します」
少女は森に向かって2本指を指した。
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***
「お、おいアル! イヴのやつ怒ってんぞ!?」
森でチャンバラごっこをしている最中に、少年たちはアルフレッドを見て青ざめた。
彼の首から下げられたガラスのペンダントが黄色く光っているのだ。
この黄色は警告を表す。
今すぐ自らの行いを反省するならば、危害は加えないことを表している。
「さっさと戻れ! 今ならまだ間に合うから!」
「大丈夫大丈夫! この森は家から2km以上も離れてんだぜ? あいつの魔法が届く範囲はせいぜい1kmほどだって」
「ほんとだろうな!? こないだみたいに俺たちまで巻き添え食うのはゴメンだかんな!?」
「ホントホント。それより次は俺がロビン・フッドな」
そう言ってアルフレッドは棒切れを構えなおす。
今日は1日遊ぶためにわざわざこんな遠くまで来たのだ。
女の子と2人で勉強なんてなんだかカッコ悪い。
イヴを怒らせるのは怖かったが、彼は警告を無視することにした……。
***
「で……警告を無視するわけね?」
引きつる頬。
警告を発してから30分待ったが、アルフレッドはまだ帰らない。
待っている間、彼のために焼いたクッキーは全てイヴの胃袋に入ってしまった。
「……警告2。……比較的軽い罰で許します」
今にも沸騰しそうな怒りを鎮め、イヴは静かにそう呟いた。
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