俺「SSで見る楽器たちの印象」(269)

とあるジャズ楽器専門店

俺「あー」

俺「今日もお客さん全然来ないなー」

俺「暇だし、楽器部屋にでも行くかー」


?「_______!」

??「__!__!」


俺「ん…?なんか向こうの部屋から口論が聞こえるような…」

扉の向こう

トランペット「だから!なんでここで盛り上げちゃいけないの!?」

ホルン「あんたはいつもぱーぱーぱーぱーうるさいの!」

トランペット「それをいうならトロンボーンちゃんだってうるさいじゃん」

トロンボーン「そんなことないぞ!」

トランペット「そんなことあるよ。いっつもブォンブォンうるさいもん」

トロンボーン「ないっていったらないぞ!」

トランペット「あるある!」

テナーサックス「二人とも…親戚同士で争うのは止めよう…?」

トランボーン『うるさい!!』

テナーサックス「はぅぅ…」

トロン「ていうか、ほるんだってうるさいぞ」

ホルン「なっ、私のどこがうるさいっていうのよ」

トロン「だってほるん、強く吹くとゾウみたいな音が出るぞ」

トラン「やーいやーいゾウさんハーモニーw」

ホルン「なんですってー!?」

ドラムス「はぁ…またやってるよ」

エレキベース「…楽器の神さまとしての、威厳が問われる」

ピアノ「彼女達には心底呆れましたっ」


俺(楽器の神様…なんてかぁいい少女たちなんだっ!)

ホルン「言っとくけど、私の楽器は上手い人が吹けばとっても柔らかい音になるんだからね!」

ピアノ「でも、下手な人が吹くと音程のはずれた老象になりますよねっ」

ホルン「」グサッ

ベース「………確かに」

テナー「い、言われてみれば、そうかもです……」

ホルン「なによ!テナーちゃんなんて吹奏楽じゃホルンとユーフォとボーンで間に合ってるわよ!」

テナー「がーん!」

____________

俺(ふむ。ここはあえて出ていかずに彼女達の様子を伺おう…)

俺「フヒヒ」

__楽器部屋___________

テナー「わたしって…いらない楽器なんでしょうか…」

トラン「そんなことないよ。テナーちゃんがいないと木管が困るよ」

テナー「と、とらんちゃん……」ジーン

ピアノ「でもテナーサックスってアンサンブル以外ほとんど目立つこと無いですよねっ」

ドラム「オーケストラになると外されるしな」

テナー「(´;ω;`)」

トロン「ピアノにドラム!そんなこというんじゃないぞっ」

トラン「今のは楽器の神さまが言われたくない言葉ベストスリーに入るよ!」

ベース「……!」こくこく

ピアノ「そいえば!オーケストラになるとトランちゃんとトロンちゃんも出番激減ですよねっ」

トランボーン「」ドスッ

ホルン「ふふん。私はオーケストラになっても出番があるほうだけれどね~♪」

ドラム「人がいない間に成り上がり華となる。まさに成り上がり楽器だな」

ホルン「なりっ…!?」

テナー「いいですよ、私たちみたいな新しい楽器はオーケストラに参加できないんですから……」カリカリ

ドラム「それはまぁ、仕方のない事さ」

ベース「…わたしは、コントラバスの神に転職すれば参加できる」ふんす

ドラム「私もだ。他の打楽器に移ればいいのだからな」

テナー「そんな……わたしひとり……?」

ホルン「とにかくペットはうるさい!もっと抑えなさい!」

トラン「ジャズになるとあたしは高音域の音を要求されんの、だから仕方ないの!」

ホルン「それにしても程度ってもんがあるでしょ程度ってもんが!」

トラン「ペットが高音域の音を吹くのがどれだけ辛く難しいかホルンちゃんは知らないんだよ!」

ホルン「ええ知りませんよ、私は音程と音色を保つだけで精一杯ですよ!」

トラン「そもそもホルンがジャズに参加してるなんて変だよ!」

ホルン「変じゃないわよ!」


ドラム「どうして管楽器ってこんなにうるさいんだろうな」

ベース「…わからない」

ピアノ「だからオーケストラでは騒音呼ばわりされるんですよふふっ」

トラン「第一、ジャズで柔らかい音が欲しい時はコルネットやフリューゲルで間に合うの」

ベース「…サックスでも、間に合う」

テナー「ほっ」

ホルン「で…でもホルンみたいな綺麗な音は再現できないわ!」

トロン「一種の表現としてのゾウさん音も、ホルンでしかできないぞ」

ホルン「そ、そうよ。勇ましいゾウさん音ができなくなっちゃうんだからね」

テナー「ホルン独特の、綺麗な音も聴けなくなっちゃいます……」

ベース「ホルンの音は、ホルンにしか出せない」

トラン「ぐぬぬ…そう言われると…」

ドラム「ん~。まぁ、あれだ」

ピアノ「みんなちがってみんないいってやつですねっ」

『テナーちゃんについて』

 -ある日-

トラン「わたしおもった」

テナー「? なにが…?」

トラン「テナーサックスって音でかい」

テナー「」

トロン「なんだぞ、とうとつに」

トラン「いや。テナーサックスってさ、思ったより音おっきいよな~って思って」

ベース「…いわれてみると、そうかもしれないね」

ドラム「だな」

ピアノ「ですねっ」


テナー「そんな…」

テナー「じ、自分の音が大きいことは、薄々わかってました…」

トラン「え、そうだったの?」

テナー「はい…。迷惑にならないよう、常に周りに配慮してましたし…」

ベース「…サックスって、音でかすぎって、よく注意されるもんね」

トラン「周りの音を聴けって言葉もよく聞くかも」

テナー「はい…」

トロン「そうか。だからテナーは、音でかいのに引っ込み思案なんだぞ」

トラン「ああなるほど!」

テナー「そ、そうかもです。否定はできません…」

トラン「でも、テナーは色んな音と合わせるからうらやましいな」

テナー「そ…そうでしょうか」

トラン「うん」

ベース「もっと、出てきたほうがいい。聴きたい」

テナー「や…やっぱりそう思いますか…!?」

ベース「うん」

テナー「そうなんです。テナーサックスは『聴こえない』ではだめなんです…!」

テナー「あくまで周りの音とどれだけきれいに溶け込めるかというところが課題であり、
    抑えて聴こえなくするというところに論点があるわけではなく、そもそもテナーサックスというものは」

ベース「…ふぁ」

ホルン「テナーっていつも他の音にきれいにとかしてるから、どこにいるのか分かりにくいのよね~」スタスタ

トラン「むっ…出たな、妖怪パオーン巻き貝!」

ホルン「巻き貝って何よこの騒音突撃ラッパ!」

トラン「突撃ラッパはかっこいいもん。でもホルンは巻き貝だもん、いつでもどこでも何度でも!」

ホルン「な、なんですって~」

トロン「あぁ…また二人の姦しい口論が発生したぞ…」

ベース「…はぁ」

ピアノ「まぁまぁ。ここは彼女達の楽しい茶番劇を見守るとしましょうよふふっ」

ドラム「お前さり気なく毒吐くよな」

トラン「ところでホルンちゃん、前から気になってたんだけど!」

ホルン「なによ!」

トラン「どうしてそのホルンって楽器はベルが後ろに向いてるのかな!」

ホルン「なんでそんな事聞くのよ!」

トラン「吹奏楽編成の時に、ベルがこっちに向いてて嫌なんだけど!」

ホルン「はぁ!?」

トラン「なんか、こっちに向かって音がぶつけられてるみたいでイヤなんだよね!」

ホルン「そんなの知らないわよ、楽器作った人に言いなさいよ!」

トラン「お客さんは前にいるのに、どうしてホルンちゃんだけはわざわざ私の方向に音をぶつけてくるのかな!」

ホルン「だから!そういう細かいことは専門家に言ってよ!」

トラン「ホルンちゃんはホルンの神さまじゃん、専門家じゃん」

ホルン「こればっかりは専門外。知りません」

トラン「ぬぬ~、わたし的には挑戦してきてるように思うんだけどー」

ホルン「頭上でぱーぱーうるさいラッパに挑戦するほど私は暇じゃないんです」

トラン「ラッパじゃなくてトランペットだよ!まったくこれだから素人は!」

ホルン「どれも同じようにぷーぱーうるさいけどね!」

トラン「なに~!」

ホルン「なによー!」

トラン「人間だよー!」

ドラム「いや、わたしら人間じゃないし」

ベース「……神さまだし」

『ベースについて』

次の日

トロン「おい、ベース」

ベース「…なあに?」

トロン「わたし、ベースの持ってるエレキベースがやってみたいぞ」

ベース「…とろん、エレキベースににゅうもんするの?」

トロン「入門はしない。けど、体験がしてみたい」

ベース「……わかった。ちょっとまってて」

トロン「おうっ」


ベース「よいしょ…っと」ドスン

トロン「おお…でっかいあんぷだな」

ベース「…これ値段高いから、いい音なるよ」

トロン「ふふふ、たのしみだぞ…」

ベース「とろんは、ピック、使う…?」

トロン「ぴっく?なんだそれ」

ベース「弦を弾く時に使う、爪みたいなやつのこと」


トロン「いい。つかわない」

ベース「どうして?」

トロン「だって、指で弾いてたほうがかっこいいもん」

ベース「…ほんとにいいの?」

トロン「うん」

ベース「…初めてだと、まだ指の皮がうすいから痛いおもいするよ?」

トロン「だいじょうぶ。わたし耐える」

ベース「そう、わかった」


ベース「じゃあ、まずは持ち方から教えるね」

トロン「おう」

ベース「えっと…まず、このベルトを肩からかけます」

トロン「うんしょ…っ」

ズシリ

トロン「お…思ったよりも重いぞ、このエレキベース」

ベース「…うん。最初は肩こりに悩まされるけど、なれると楽になるからね」

トロン「で、つぎはどうすればいい?」

ベース「これでおしまい」

トロン「え?チューニングとかはいいのか?」

ベース「だいじょうぶ。もうしてある」

トロン「ほぉぉ」

ベース「ほら、ここにねじがあるでしょ」

トロン「うん」

ベース「これはペグっていって、これを回すことによって弦の張力をかえて音程を変えるの」

トロン「へぇ」

ベース「今回はわたしがチューニングしたから、もうここはいじらなくていいよ」

トロン「わかったぞ」


トロン「ふーむ…」

ベース「…」

トロン「…」

トロン「ムフフ。なんだか、かっこいいぞ」ドヤッ

ベース「似合ってるよ、とろん」

トロン「ほんとか?わたしにあってるか?」

ベース「うん。似合ってる」


ベース「運指は、いじってれば規則性がなんとなくわかってくると思う」

ベース「だから、まずはやりたいようにやってみて」

トロン「そうか。ならさっそくやってみるぞ」

ベース「…どうぞ」


トロン「えっと…最初はこのへんを押さえて…」グッ

トロン「指で弾く」

ボーン

トロン「…」

トロン「おぉぉ、なんかいい感じだぞ…!」

ベース「ふふっ」


ドドドドドド…

ホルン「なっ、なに?この地鳴りみたいな音は…」

トラン「なんかね、トロンちゃんがベースちゃんに楽器体験させてもらってるんだって」ボリボリ

ホルン「へぇ。楽器体験ねぇ…」


トラン「ちょっとたのしそうだよね」ズズ

ホルン「そうねぇ。あたしもやらせてもらおうかしら」

トラン「えぇ~?ホルンちゃんに弦楽器みたいな、テクニックがいる楽器なんてできないよ~w」

ホルン「なんですって…?」


トラン「でもさ、試しに楽器体験やってきてみたら?面白いかもよ」

ホルン「ふん。いわれなくてもやってきますよ~だ」

トラン「ホルンちゃんがなにかしらの理由ですぐにやめるに5000ペリカ!」

ホルン「トランが5000ペリカを持っていないに6000ペリカ!」

トラン「ふふっ…勝負だね、ホルンちゃん」

ホルン「くく…臨むところよ」


ホルン「じゃあ行ってくる」

トラン「いってらっしゃ~い」ボリボリ

ホルン「ふふ…のんびりせんべいなんて食べてられるのは今のうちよ」

トラン「ゆってろ巻き貝め~」

ホルン「な…巻き貝って言うのはやめなさいってこのあいd」

『いだだだだ…!』

『とろん、だいじょうぶ…?』

トラン「んあ?」

ホルン「なにかしら、今の声」


ガチャ

トロン「あいだだだ…!乾燥してた指にヒビがはいったぁ~…!」

パックリ

トラン「ひえぇ……痛そう」

ホルン「……うわぁ」

ベース「あわわ…」

トロン「トラン!はやく絆創膏もってこいだぞ!このままじゃ死ぬ!」ブンブン

トラン「ちょっ!出血してる指を振り回すな~!」

ホルン「目がっ…目がぁっ…!」



俺(これから入門する人はピックを使いましょう。冬に使わないのは危険です)

寝る
また明日

ご教示ありがとうございます
自分はホルンが大好きです。幅広い域で活躍するその姿に多少の嫉妬を覚えているのかもしれません

アフリカン・シンフォニーは過呼吸起こすほど好きですよ




『バストについて』


次の日

ドラム「私は今、あることに気付いた」

トロン「お?」

トラン「え?」

ホルン「なによ突然」

ピアノ「下らないことだったら承知しませんよっ♪」

ドラム「うむ」


トラン「で、気づいたことってなあに?」

ドラム「うむ。実は、私は昨日ピアノの奴にむねがちいさいですねっと言われたのだ」

ホルン「はあ」

トロン「ほお」

トラン「ピアノちゃん、そんなことをドラちゃんに言ったの?」

ピアノ「ええ、たしかに言いましたねふふっ」


ドラム「で、悔しかった私はお前らを大きい奴と小さい奴にグループ分けしてみたんだ」

ホルン「バストの大きさで?」

ドラム「そうだ」

ピアノ「ふふ、実にくだらない愚かしい行為ですねっ」

ドラム「まぁまぁそう言うな」


ドラム「でだ。お前らをグループ分けしてみたところ、ある仮説が浮上した」

トロン「なんだぞ…?」

ドラム「管楽器を担当してる奴は胸が大きく、息を使わない楽器の奴は胸が小さい。ということだ」

トランボーン「はぁぁー?」

ホルン「うそ~?」


ドラム「ベース、どうだお前の胸は。客観的に見てでかいといえるか?」

ベース「………いえない」グス

ドラム「ではピアノ、お前はどうだ」

ピアノ「管楽器さんたちには劣りますね、悔しいですわ…っ」

トロン「ふぉぉ…」

ホルン「……マジなの?」

金管楽器担当なので木管については疎いんです
木管楽器も好きなので偏らないようにしていきたいと思います


ドラム「つまり!肺呼吸を大いに活用する管楽器奏者と、そうでないその他の楽器奏者には大きな違いがあるということなのだ!」

ホルン「そ…うなのかしらね?」

トラン「さぁ、どうだろ…」

トロン「わたしの胸、でかいか?」

ドラム「ああでかいとも、羨ましいほどに…!」

トロン「そうなのか…ありがとうだぞ」



(声楽やってる人の胸ってたいがいでかい気がする)



@@@

トラン「それぞれの楽器には、良いところと悪いところがあるよ」

ホルン「どの楽器が優れているとかいないとかは関係ないわ」

トロン「優れているかいないかは、奏者に左右されるぞ」

ベース「みんなちがってみんないい」

ベース「…」こくこく

ピアノ「楽しむことが最大の目的ですわっ」

テナー「ですから…、みんなで仲良く演奏してくださいね」




『マーチについて』



トラン「ねぇねぇホルンちゃん」

ホルン「なあに?」

トラン「ホルンちゃんはさ、マーチ系の曲をどう思う?」

ホルン「マーチ系の曲?」

トラン「うん」


ホルン「マーチねぇ…」

トラン「ホルンちゃんはマーチと聞いてどんな印象を持つの?」

ホルン「うーん。一言で言うと、」

トラン「言うと?」

ホルン「嫌い」

トラン「ぬほおぉ」


ホルン「ちょっとトラン聞いてよ。マーチってね、ほんとに退屈なのよ!」

トラン「ふぇ?」

ホルン「マーチになるとね、私は終始裏打ちしてるしかないのよ」

トラン「へぇぇ」

ホルン「しかもさ聞いてよ。あのね、マーチにおけるホルンてね、もうなんていうか打楽器みたいな扱いで」

トラン「う、うん」


トラン(なんか、おしゃべりスイッチが入ったみたい…)


ホルン「マーチって、大概の曲は後半に転調するでしょ?」

トラン「うん」

ホルン「で、転調した後は一時的に緩やかな曲調になるわよね」

トラン「うん。なるね」

ホルン「その時に、他の楽器は今までとは少し違うフレーズを吹くでしょ」

トラン「転調したから今までの感じとは少し異なってくるよね」


ホルン「そうなのよ!だけどホルンは相変わらず裏打ちばっかりなの!」カッ

トラン「わっ…!」

ホルン「他の人達はみんなみんな変わってるのに、私だけ後ろで未だにッパッパやってるのよ!」

トラン「へ、へぇー」

ホルン「許すまじ!許すまじマーチ!」

ホルン「確かにボーンだって裏打ちあるわよ」

ホルン「でもボーンは途中で別の旋律に逃げるじゃない!」

ホルン「見放されてもなお独り寂しく私は裏打ちをし続けるの!」

ホルン「前半はまあいいわよ。だけど後半もッパッパなんて気が狂うわ!」じだんだ

トラン(く、狂ってる狂ってる…)


トロン「逃げるって表現は気にくわないぞほるん!」ドーン

トラン「あっ、トロン。おはよー」

ホルン「むっ、出たわねそそくさ逃避の音割れ楽器!」

トロン「なっ…!トロンボーンは音割れ楽器なんかじゃないぞ!」

ホルン「いいえそんなことないわ、割れてるわよ!」

トロン「それはへたっぴな人だぞっ」

トラン「わたしの親戚を侮辱したねホルンちゃん…!」

トラン「いい?トロンボーンの魅力は力強さにあるの。それでいて、時として裏で広がりのある綺麗な音を
    出して全体を支えたりする、そういう重要な楽器なんだからね!」



ドラム(だから楽器はどれも重要で外すことができないって何度行ったら)


トロン「とらんのいう通りだぞ。ボーンは大事なんだぞ!」

ホルン「へたっぴじゃなくても割れてる時あるわよねっ」

トロン「ほるんの裏打ちエレファントエスカルゴ!金管は時としてそういう表現を使うんだぞ!」

トラン「そうだそうだー同じ金管ならわかるはずだー」

ホルン「なっ…巻き貝っていうのはやめなさいって何回いったら」

ギャーギャー ワーワー


ピアノ(金管はどれも同じような気がしますけどねふふっ)

ドラム(同じ穴のムジナだな)

ベース(……ケンカするほど仲が良いとはこのことだね)


『テナーの妹バリサキは、フルート以外の木管楽器が全て吹ける便利な娘だということについて』


テナー「あ、あの…みなさん」モジモジ

トラン「んあ?」

トロン「い?」

ホルン「う?」

ベース「……え」

ピアノ「なんですふふっ?」


テナー「えと…今日は、皆さんに報告することがあります」

トラン「報告?」

テナー「は、はい…」

ベース「?」

トロン「報告ってなんだぞ、てなー」

ピアノ「ふふふ。くだらないことであれば容赦はしませんよっ?」

テナー「ひ、ひぇぇ…」ガクガク


トロン「おいぴあの。あまりてなーに圧力を加えるなだぞ」

トラン「そうだよ。不安定な心はリードミスにつながるかもしれないんだからね」

トロン「このままだと、てなーは演奏破壊の神さまになってしまうぞ」

テナー「あわわ…」

ピアノ「少し出すぎたことを言いましたわ。ごめんなさい」ペコリ


トロン「ふふ、ぴあのも本当はいいやつなんだな。うりゃ~」ワシャワシャ

ピアノ「なっ…!やめるのですわっ、この騒音金管楽器っ!」///

ベース「…そういえば、コンクールとかになるとリードミスが多くなってる気がする」

ドラム「緊張するからだろうな」

トラン「私たち金管は、唇をほぐしておかないと音がガチガチになっちゃうんだよ?」

ドラム「ほお」

ホルン「マウスピースも、あっためておかないと馴染みにくくなるわ」

ベース「へぇぇ…」


テナー「…あのー、報告…してもよろしいでしょうか…?」


トラン「ああごめん。いいよ話して」

テナー「ええと…それじゃあ、話しますね」

トロン「おうっ」

ホルン「なにかしらね」

ドラム「テナー、早く放せ」

テナー「はい。…えと、実は今日、わたしの妹が来てるんです…」

ベース「……………」

>>48


修正

トラン「それぞれの楽器には、良いところと悪いところがあるよ」

ホルン「どの楽器が優れているとかいないとかは関係ないわ」

トロン「優れているかいないかは、奏者に左右されるんだぞ」

ベース「…みんなちがってみんないい」

ピアノ「楽しむことが最大の目的ですわっ」

ドラム「こいつらはしょっちゅう喧嘩してるが、本当は仲がいい」

トラホルン『なっ…///』

テナー「ですから…、みんなで仲良く演奏してくださいね」


一同「いもうちょ!!?」

テナー「はい…いもうとです」

トラン「嘘、テナーに妹なんていたの…?」

テナー「は、はい」

ホルン「どうしてもっと早く言ってくれなかったのよ」

ドラム「そうだぞ。水臭いやつだな」


テナー「えっと…実は、妹のバリトンサックスが暫くの間修理に出されてたんです」

俺(わしが育てた)

テナー「それが、昨日の晩に戻ってきたので…皆さんに紹介しようかな、と…」

ドラム「ああ、なるほど」

ホルン「そういうことか~」

テナー「は、はい。そういうことです」

ピアノ「ふふ、テナーさんの妹さんですか。実に興味深いですわっ」

ベース「……だね」

トロン「てなー、早くその妹ってやつを出せだぞ!わたしそいつと友達になりたいぞー!」グイグイ

テナー「あぅあぅあぅあぁバリサキ入ってきてぇぇぇぇ」ガクンガクン


ガラッ

バリサキ「はい!わたしが先程お姉ちゃんに紹介してもらった、バリサキでーすっ」ドーン

トラン「わーお」

トロン「おお…なんだか、いい感じに明るいやつだぞ!」

ドラム「ほお。テナーとは反対のお騒ぎ後輩タイプか」

ホルン「ふふっ、テナーに似て可愛いじゃない」

ピアノ「なかなかですわねー」

ベース「…だね」

バリサキ「エヘヘ、ありがとうございまーす」


テナー「あの…わたしの妹、フルート以外の木管楽器を全部吹くことができるんですよ…?」

トラン「ええ!」

ホルン「そ、それってマジなの…?」

バリサキ「はい。まじです」

トロン「おおぉ…こいつすごいぞ!万能だぞ!」

ピアノ「これは使い道が有りそうな人材ですわっ」

ドラム「こらこら。いくら後輩だからって酷使したりはするなよな」

トラン「ええ~。今からお茶入れてきてって頼もうかと思ったのにな~」ボリボリ

ピアノ「鬱陶しいファンファーレの如き考えですわねふふっ」

トラン「なっ、ファンファーレをばかにするなー!」


バリサキ「そんなわけですので、どうか末永くよろしくお願いしまーす」ペコリ

ドラム「ああ。こちらこそよろしく」

ベース「……宜しく」

ホルン「よろしくね」

バリサキ「はーい」

トラン「よーし、今日の夕食は鍋に決定だねー!」

ピアノ「ふふっ、いかにも体力の消費が激しいトランペットの考えそうなことですねっ」

トラン「バテやすいことは認める。けど食いしん坊だということは認めない!」



『フルートについて』


ドラム「ここでもうひとつ、重大な発表がある」

ベース「……、ある」

トロン「お?」

トラン「んあ?」

ホルン「はぁ。こんどはなによ」

トラン「…まさか、こんどはドラちゃんの妹がやってきて…」

ドラム「いんや、それはないし居ない。居たのはこいつだ」


フルート「はじめましゅて」


トラン「え!?」

ホルン「なっ」

フルート「やっほ~おねいちゃんたち」

ドラム「こらフルート、こいつらにきちんと自己紹介しなさい」

フルート「ふぁ、えっと…どうもこんにちわ。わたし、ふるーとっていいましゅ」ペコリ

ホルン「…」

トロン「…」


トロホルン『んほおおぉぉぉ!!』

フルート「!?」

ホルン「なにこの子すんごいかわいぃぃぁぁ!」

だきっ

フルート「ふぇ…!?」


トロン「あっ、ずるいぞほるん。わたしにも抱っこさせろ!」

ホルン「いやよ。トロンはボーンのケースにでも抱きついてなさいっ」

トロン「あんな固い箱、だきたくないぞ!」

ホルン「あ、ちょっと…!」

ワーキャー フェェ

トラン「ど…どうしたの、あの子」

ドラム「昨日の晩に準備室で物を漁ってたらな、こいつのフルートが出てきたんだ」

ベース「……」こくこく


トラン「てことは、この子は暫くのあいだ準備室におきっぱなしだったってこと?」

ドラム「ああ、そういうことになるな」

ベース「…うん」

トラン「そんな…。あたし全然気付かなかった…」

ベース「…同じく」

ドラム「私も同じく」


ガラッ

テナー「ふふふ……我らが木管楽器が、着実に勢力を拡大していっているようですね…」

バリサキ「このまま行けば議席の半分以上を獲得できるねお姉ちゃん!」

テナー「そうです…。もう肩身の狭い思いはせずに済むのですよ…」

テナバリ『ふふふふふふふふふ』

トラン「な…なななっ…!」


ピアノ「あら…、それは大変由々しき問題ですわ…」

ドラム「今までプーパーうるさかったのが、今度はキーキーうるさくなるんだからな」

ベース「…あぅ」

ピアノ「はあ。まったく、想像しただけで歯が浮く思いですっ」

ベース「…」

ベース(明日は、みみせん買ってこよう)

練る




『お気に入りな曲について』


次の日


トラン「やったやったやったー!」ドタドタ

フルート「やったやったぁー」トテテ

ホルン「は?」

トロン「い」


ドラム「んだよ…朝っぱらから狂喜乱舞しやがって」イライラ

ベース「…どらむは、朝不機嫌。いくない」

ドラム「はいはいすんません」


トラン「ねえみんな聞いて聞いてー!」カンカンカン

フルート「きいてきいてー」

ホルン「なによ」

トロン「なんだぞ」

トラン「ふふふ…いいか~、見て驚くなよおまえたち~」

フルート「おどろけー」

ホルン「はぁ…何だか知んないけど早く見せなさい」

トラン「フッフッフ。じゃーん!!」

つ楽譜


トロン「お?」

ホルン「これは…」

ベース「……楽譜だね」

ドラム「だな。何処でこんなモノ拾ったんだ」

フルート「えっとね、ひよったんじゃないの。ポストにはいってたの」

ホルン「ポストに入ってた?」

フルート「うん」


ホルン「ふーん。ポストに楽譜がねぇ」

ドラム「送ってきたのはどこのドイツだ」

トラン「えっと、送ってくれたのは吹奏楽団の指揮者ちゃん、だね」

フルート「だよー?」


トロン「……っ!?」

ホルン「指揮者…ちゃん?」

ベース「…………………」

ドラム「ということは、その楽譜は………」



トラン「んあ?」


トロン「おいみんな…とらんのやつが、今回の新しい曲を持ってるぞ!」ビシィ

ドラム「な……、ん…だと」

ホルン「今回の…」

ベース「新しい曲…?」


一同「……」ズゴゴゴ


トラン「は?」


ホルン「…」

トロン「…」

ドラム「…」

トラン「な、なによみんな。急に黙りこくっちゃっt…」

ベース「……………」

トロン「みんな…」


一同『なんとしてもあの楽譜を手に入れろ!!』バッ


トラン「なっ……がはっ!?」


ホルン「総譜、奪ったりー!」ドーン

    □
へ○ノ  
   |∧  
  /  ○| ̄|_

ドラム「よくやった、ホルン…!」

トロン「さあほるん、早く封を開けるんだぞっ」

ドラム「そして楽譜の曲名を叫べ!」

ホルン「あいあいさー」



トラン「」

フルート「……とらんおねいちゃん、らいじょうぶ?」サスサス

トラン「何故殺した」ゴフッ



ガサガサ

ホルン「おっ……」

ホルン「出ましたっ、出ましたよー!」

トロン「なんだぞ、なんだぞっ」

ドラム「……」

ベース「わくわく」

ホルン「…!」ニヤァ


ホルン「ムフフー。皆さーん。えーとぉ。今回演奏する曲名はぁー…」

ホルン「あ、ちなみにぃ。今回はぁ。二曲やるみたいなんでぇー…」ジラシ

トロン「二曲…!?」

ホルン「そぉ。だからぁ。まずは一曲目からぁ。発表しちゃったりぃ。なんなりしちゃうかも~」

ベース(……………)ウズウズ

ドラム(…ええい早く家この巻き貝!)


ホルン「では、発表しまーす」

ドラム「タララララララララララララ」ロール


ホルン「はい!まずは一曲目『アルヴァマー序曲』!」ジャン

ホルン「もう二曲目は、バンドとコーラスのための『ソーラン・ファンク』でーす!」ババーン

トロン「うぉぉ、いやったぞーー!」

フルート「わぁ…!」

ドラム「よし、よしっ、私が最高に活躍できるものだ…!」

ベース「…これなら、ベース、おいしいところもってける」

トロン「おいとらん。わたしとお前とふるーとにソロがあるぞこの曲!」


トラン「…っ!」ムクリ



バリサキ「で、これが今回演奏する曲目ですかぁー?」

ベース「…うん」

フルート「そおだよー?」

ドラム「どうだ、最高のショーになると思わんかね。特にこのソーランファンクあたりが!」

ホルン「あんた、ドラムが入ってる曲になると本当に幸せそうにするわね…」

ピアノ「まったく、私なんて出れもしないのに。露骨すぎですわっ」

ドラム「まあな!まあな!」ワシャワシャ

トラン「いだだだだ…!」

テナー「ふふ、嬉しそうで何よりです」


バリサキ「わたし的には大草原の歌もやりたいんですけどねー」

テナー「こら…。バリサキったらわがままを言うんじゃありません」

バリサキ「はーい…」

ベース「…わたしは、リードの『吹奏楽のための第二組曲』がやってみたいかも」

ドラム「第一楽章のソン・モントゥーノはbassがかっこいいもんな」

ベース「…うん。コントラバス、渋くてかっこいい」

ホルン「コントラバスのピッチカート音は、チューバではなかなか再現できないわよね」

ドラム「だな。跳ねるような音をチューバで吹くのは結構な実力が必要だ」

ベース「……えっへん」ふんす


トロン「ほるんは、お気に入りの曲とかはないのか?」

ホルン「私が気に入ってる曲?」

トロン「うん。そうだぞ」

ベース「…なにか、ないの?」

ホルン「そうねぇ~。私はぁ…」

トラン「ムフフ。ホルンちゃんが好きな曲はアフリカン・シンフォニーなんだよね~?」

ホルン「なっ…///」


トラン「あららぁ?ひょっとして図星かなぁ?」

ホルン「そ、そうよっ。なによ悪い!?」

トラン「いやぁ~べつにぃ~?」

ドラム「けっ。トランだってアフリカン・シンフォニー大好きだろうが」

ピアノ「練習中、暇さえあればピープー吹いてますわよねっ」


ベース「そして、ほるんに『一緒に吹こうよ』って、誘うんだよね」

トラン「なっ……///」

ドラム「で、二人仲良~く合奏するんだよなーいっつも」

ベース「うんうん」

ホルン「…///」

トラン「///」


ドラム「うわ暑いッ、暑いよこの部屋ァ!誰か暖房切ってよぉ!」パタパタ


とらホルン「/////」


ピアノ「それはいいとして、ホルンには他に気に入った曲はないんですの?」

ホルン「も、もちろん。他にもあるわよ?」

ドラム「ほぉぉ?」

トロン「もう一つはなんだぞ、ほるん」

ホルン「えっと。もう一つは、蒼の向こうへ」


トロン「おお!わたしもそれ大好きだぞ!」

トラン「あたしも!あれはいい曲だよね」

ホルン「わ、わかる!?」

トランボーン「わかる!」


ドラム「…わからんねまったく。そもそもドラムが入っていない曲など…」ブツブツ

ベース「あれもコントラバスが雄大でかっこいい」


トロン「蒼の向こうへは、金管には珍しい柔らかい曲なんだぞ」

トラン「そうそう。いつもとはちょっと違う感じだから、つい楽しんじゃう」

ピアノ「ふむ。あの曲はハープがあるので、私も退屈しませんわね」

トラン「あれ?ピアノちゃんハープなんてできるの?」

ピアノ「できますわ。皆さんには言ってませんでしたっけ?」

トラン「ない」

トロン「ないぞ」

ピアノ「あらあら、ふふっ」

ドラム「ピアノはもっぱら高級楽器担当だな」

ベース「…うん」

ねます

『補足』

ピアノについて

どことなく高級感があるピアノは、ジャズでは裏打ちによる軽快なステップ音を刻むことが多いので
語尾に「っ」をつけるお嬢様キャラクターが思いつきました

・バンドとコーラスのための『ソーラン・ファンク』は、東京佼成の演奏がyoutubeにあがっているようです



『バンドとコーラスのためのソーランファンクについて』


トラン「ぎぃやああぁぁぁあぁぁぁ!」

トロン「うをあぁぁぁああぁぁああ!」

フルート「わーぁ」


ホルン「はいはい今日はなんですか」

ベース「……本日も、イベント発生」


トラン「ちょっと、ホルンちゃんこれ見てよ」

トロン「わたしのも見てだぞ、ほるん!」

フルート「みてだぞ~」

ホルン「はぁー?なにをよ?」

トラン「あたしの楽譜!」

トロン「わたしの楽譜だぞ!」

フルート「ぞ!」

ホルン「はぁ…どれどれー?」

solo.

ホルン「あら。あんたとトロンにはソロがあるのね。いいなー」

トラン「違う、そこじゃない!」

ホルン「は?」

トラン「だから!見て欲しいのはそんなところじゃないの!」

ホルン「はぁ…じゃあどこ見ればいいのよ」

トラン「これだよこれ!五線譜からぶっ飛んだところにある、このおたまじゃくしだよ!」


ホルン「わ…なにこれ」

ドラム「ふむ。トランペットの楽譜なのに、おたまじゃくしがフルート並の場所にあるな」

テナー「ですね…」

ベース「……これ、音出すのつらいよね」

トラン「そう、そう!それ!あたしが言いたかったのはそれだよベースちゃん!」ユサユサ

ベース「あぅあぅあぁぁ」ガクンガクン


テナー「こ、こんなに高い音…トランペットは出せるのでしょうか…?」

トラン「だせる…」

ドラム「なんだ。出せるのなら別にいいじゃないか」

ホルン「そうよ。それならわざわざ絶叫するほどのことでもないわ」

ベース「…」こくこく


トラン「違う、違うの!そうじゃないのぉぉ…!」エンエン

ホルン「はぁぁー?」

ドラム「ふむ…音出しが問題ではない、か」

ベース「…もしかして、この音の高さでのソロ、というところに問題があるの?」

トラン「そうそうそう、それだよ!」ビシィ


トラン「この高さでも、同じパートの人がいるなら何の問題もないよ?」

トラン「だけど…これはソロ」

トラン「こんな高い音を、大勢の聴衆の前で独りで吹く…」

トラン「失敗したら絶対に誤魔化せないこの旋律…。考えただけで心臓が爆発するうわぁ!」ガクガクガク

フルート「はわわわわぁー…!」ドタドタ


ベース「…なるほど」

ドラム「くくく。意外と精神脆いんだな」

テナー「で、でも…難易度の高いフレーズを一人で吹くのは…」

ホルン「イメージしただけでも恐ろしいわよね」


トロン「わたしのなんか見てみろだぞホレ…!」ビラ

テナー「…これは?」

トラン「ぬ…」

ピアノ「トロンボーンには珍しい、音符の『のこぎり山脈』ができてますわね」

ベース「…ほんとだ」

ドラム「かつ音が高い。メロディーも長い。お前らふたりとも終わったな」

テストの結果を








トロン「こ、こんなにいっぱいの音…。スライドが大変だぞ……」

トラン「作曲者め…。呪ってやる……呪ってやるぅ…!」フラフラ

ドラム「私は終始ソロみたいなもんだから慣れているよ。あぁ気が楽だなぁ~」チラリ

トラン「ふぬぬ…!」

トロン「お、おのれだぞ~…」


ホルン「ていうか、あんたら神さまでしょ。これくらい何とかしなさいよ」

バリサキ「先輩達には悪いですけど、人間の方も吹けますよこれ」

ピアノ「ですよねーっ」

トランボーン「吹けるよ!!でも精神の話は別だ!」





『バンドとコーラスのためのソーランファンクについてのおまけ』

フルート「むふふ。じちゅはね、ふるーとにもそろがあるの!」

ホルン「え」

ドラム「なに…!どこにだ!?」

フルート「いちばんはじめの、アウフタクトからだよ?」

ホルン「じょ、序盤から……?」

フルート「へへ~ん!いいでしょぉ~?」どやっ


ドラム(…こいつは大丈夫そうだな)



『木管楽器奏者がリードを咥えていることについて』


ドラム「おらお前ら。楽譜が届いたんだからさっそく試演奏するぞ」

トラン「えっ、もう?」

トロン「ちょっと待て。わたし、まだ全体をしっかりと把握できてないぞ」

ドラム「こまけぇこたあいいんだよ。譜をその場で読みやがれ」

フルート「よみやがれぇー♪」

トロン「そ、そんな」

テナー「あわわわわ……」

。。。

ゴソゴソ プープー

ピアノ「ふぁあ……。暇ですわー」

ドラム「…………」


テナー「ゴソゴソ」

ベース「よいしょ…っ」ドスン


ドラム「…おーいまだかー。いい加減待ちくたびれたぞー」カンカンカン

ベース「ちょ…ちょっとまって、まだあんぷが」

しばらくして…


ホルン「ポーポー」

トロン「ブォーーー」

トラン「パーパーパーパパパ」

ドラム「……」

ピアノ「ドラムさん。わたくし暇ですので、ちょっとお茶を入れてきますわ」スッ

ドラム「…ああ」


テナー「ゴソゴソ」

バリサキ「…」カチャカチャ


ドラム「………」イライラ


ドラム「……ええいサックス姉妹、まだ準備できんのか!」

テナー「ふぁ…!も、もうひょっとまっへふらはいドラムさん…」ハムハム

ドラム「嫌だ。もう嫌だ。待たない待てない、そして許せない!」

バリサキ「ふぁわわ…すいまふぇんせんふぁい!れも、まふぁひゅんびれきてないんれすぅ…!」ハムム

ドラム「………………………」イライライラ


ドラム「……さっきから眺めていれば、揃いも揃ってリードをはむはむ咥えやがって…」

ドラム「貴様ら、私をおちょくっているのか!ああ!?」シンバルシャーン

バリサキ「す……すいまふぇんせんはい!でもこれはしかたないのでふ!」ビシッ

テナー「こ…こ、こうしてリードを咥えてないと……しっくりと馴染まないんです…」

ドラム「んなこととうに心得ておるわ私は貴様らののろのろとした準備が気にくわないんだー!」バスドラドンッ

姉妹『ふえぇぇ…!』


トラン「だめだドラちゃんわけわかんなくなってる」

ベース(…どらむは、待つのが苦手)


ドラム「トラン!言っとくが私は四次元から奇天烈な器類等を呼び寄せたりは一切しない!」

ドラム「いいかよく聞けトラン、私の名はドラムだ!」

トラン「ああはいはいわかってるよ~ドラちゃん」ヒラヒラ

ドラム「きっさまー!」

_______


バリサキ「はいっ、準備が出来ましたよ先輩方!」

テナー「こ、この度は皆さんに多大なるご迷惑をおかけしまして誠に申し訳ありませんでした」ペコペコ

ホルン「なになに。いいってこと」

トロン「元はといえば、ドラムが急に合奏するって言い出したのがよくなかったんだぞ」

フルート「うにゅうにゅ」




俺(どちらかと言うと打楽器の方が準備が遅い)

ここまで



『金管楽器奏者はすきあらば舌なめずりすることについて』


ジャーン

ベース「…ふぅ」

トロン「とりあえず、ひと通りとおしたぞ…」ペロ

トラン「だね。あぁ~疲れたぁ」ペロ

ホルン「こらっ。トランたら、地面で寝ないの!」ペロ

トラン「えへへ~ごめ~ん」ペロ


テナー「………」

バリサキ「………」

フルート「ふぁ?」


ピアノ「皆さん、初見にしては中々の演奏でしたわっ」

トラン「えへへーありがと。いや~楽しかったぁ」ペロ

トロン「曲は知ってたけど、やっぱ初見演奏は落ち着かないぞ…」ペロリ

バリサキ「ふふ、先輩って意外と慎重派なんですね。可愛いですっ」

トロン「なっ…、かっ、かわいくなんて…ないぞ……」///

バリサキ「またまたぁ~、これだからもぉ先輩はええのぉええのぉ!」ダキッ

トラン「わっわっ…やめろだぞバリサキ…」カァ


ピアノ「さてさて、ソーランファンクの試演奏は結構です。問題はアルヴァマー序曲ですわっ」

フルート「ふぁ」

ドラム「…ふむ」

ベース「……むむ」

ホルン「…」ペロ

トロン「……」ペロ

トラン「…なになに、どしたの。みんな黙り込んじゃってさ」ペロ


トロン「……アルヴァマー序曲は、意外と難しい南極なんだぞ」

ホルン「…ええ、そうね」

テナー「…」ソワソワ

トラン「えぇー?メロディーは覚えやすいし親しみやすいから、簡単な曲だと思うんだけど」

ドラム「甘い!!!」

トラン「っ!?」ペロッ!?


ドラム「この曲はな、楽器によっては地獄を見ることになる恐ろしい曲なんだぞ」

バリサキ「そうですよ、トラン先輩」

テナー「…っ」コクコク

トロン「それを『簡単』の一言であしらう今のとらんは…」

ホルン「油断大敵の文字を知らぬ愚者。まさに愚か者以外の何者でも無い!」ペロ


みんな『無い!』


トラン「な…なによみんなしてー!」プンスカ


ピアノ「いいでしょう。わたくしがトランさんに『ここが難しい』と言う所を教えてあげますわっ」

トラン「ぬぬ…。ピアノちゃんに管楽器のことが分かるの…?」

ピアノ「勿論です」

ドラム「コイツは、普段からお前たちの練習風景をそばで眺めているからな」

テナー「ピアノさんは…気になる事柄があったら、調べずにはいられない方です」

ベース「…勉強熱心なんだね」

フルート「だね~」

ピアノ「故に、管楽器の知識が自然と身に付いてしまったというわけですわ」

トラン「…なるほど」


ドラム「気になったことがあると、すぐ私らに質問するもんな」

ベース「…ぴあのは、音楽に対する熱意がすごい」

フルート「おねいちゃん、かっこいいー」

ピアノ「ふふふ、それほどでもなくって」キラキラ

バリサキ「…!」

バリサキ(ピアノ先輩…かっこいい…!)


バリサキ「先輩!」シュビッ

ピアノ「なんです?」

バリサキ「あの、わたしも先輩の姿勢を見習っていきたいです!弟子にしてください!」

テナー「へ……?」

ドラム「なに?」

ホルン「あら」

ピアノ「ふふっ、バリサキさんがどうしてもと言うのであれば。私には何の異存もありません」

テナー「な…」

バリサキ「えっ、じゃあ弟子にしてくれるんですか!?」キラキラ

ピアノ「構いませんわ」

バリサキ「や、ややや、やったぁー!」


ドラム「お、おいおいバリサキ。コイツの弟子とかやめとけやめとけ」

ベース「…いいことない」

トロン「きっと馬車馬の如く働かされるぞ!」

ホルン「そうね。そして最後には道端に掃き捨てられるんだわ…」

バリサキ「いえ、そんなことないです。ピアノ先輩は本当は素敵な方なんです!」

テナー「バリサキ…」


バリサキ「先輩っ、なにかやってほしいことがあったら遠慮なくわたしに申しつけて下さいね?」

ピアノ「あらあら、いいんですの?」

バリサキ「もちのろんろんです」

ピアノ「ふふ。では早速ですけど、紅茶を淹れてくださる?」

バリサキ「はい!先輩の為ならこの私、例え死ねとの命を受けても、それを完遂する所存にございます!」シュビ

ピアノ「あらあら、ふふっ」


ベース「……ばりさきちゃん、もの見事に利用されてるね」

トロン「おう…」

ホルン「あーあ。これはもうだめね」

ドラム「これからどんどんピアノの様に腹黒くなっていくんだな」

テナー「あぁ……、あぁぁぁ…………っ」ガクッ

トロン「さらば純白のばりさき」

ベース「…いい子だったばりさきちゃん、ずっと忘れない」


ドラム「つーかピアノ。純粋な後輩を染め上げるなよ。バリサキが可哀そうだろうが」

ピアノ「なんのことです?私は彼女に強制した覚えは一度たりとてないのですが?」フフ

フルート「おねいちゃん、わるいかおだぉ」ふるふる

ホルン「自分からは、極力動かないのね」

トロン「おそろしいやつだぞ…」

ピアノ「ふふふ、それはどうも」



バリサキ『センパーイ…!お茶っ葉の種類がいっぱい過ぎてどれがどれだかわかりませーん…!』


ドラム「…おい、なんだかバリサキが呼んでるぞ」

ホルン「お茶の葉がどれだかわからないって」

ピアノ「あらあら、まったく仕方のない娘ですわね」

ピアノ「みなさん、私は下僕の様子を見に行ってきますので。暫くの間席を外しますわ」

トラン「え?」

ピアノ「それではまた。ごきげんよう~」ガラ

トラン「ちょ…っ!ピアノちゃんアルヴァマー序曲の解説はぁ~!?」


『それについては後ほど~…』

ぴしゃん

トラン「………」

フルート「…」

トロン「…行っちゃったぞ」

ホルン「…行っちゃったわね」

ベース「…うん」

トラン「ピアノちゃんの裏切り者ー!」




『それぞれの楽器の印象について』


トラン トランペッターはお喋りで気さくな人が多いイメージがあるので妹要素導入。
    楽器といえばトランペット。ラッパじゃなくてトランペット



トロン トロンボーンの魅力は力強さと、時に広がりのある音色を出すところにあります
    スライドする姿も凛々しいです。なのでボーイッシュ娘要素を導入



ホルン 幅広い場面で活躍するホルン。フォローに回ったり、メインを任されたり。
    頼りになるイメージとして、姉的要素を導入


テナー テナーサックスはeupやhrnの柔らかい音に輪郭をつけたり、trbと、eup(or bass)の旋律に加わることによって、
    さらに厚みを生み出す等、様々な面での補佐的役割を任されます。きれいに溶けたt.saxの音は、何者にも勝る綺麗な音です。
    が、音量が大きい楽器なので少しでもずれると邪魔者扱いされてしまいます。故に周りを配慮するイメージを。
    


ベース bassには太った人のイメージがありますが、彼女はまったくもって違います標準体型です
    演奏構成のわかりやすい例えとしてピラミッドがよく使われます。彼女はそのピラミッドの一番下で
    皆をしっかり支えている良い子のイメージです。ベースは表立った動きはあまりしないので
    口数の少ないイメージを持ちました



ドラム 打楽器は吹奏楽器奏者にとって特別な存在です。旋律を奏でている時に、丁度いいタイミングで入ってくる
    音には気分を高揚させるものがあります。皆を引っ張っていく姿に、クールで大人な印象を受けました


ピアノ 高級感があるピアノは、ジャズでは裏打ちによる軽快なステップ音を刻むことが多いので
    語尾に「っ」をつけるお嬢様キャラクターが思いつきました


バリサキ サックスの中でもサイズが小さいs.saxの方が妹のイメージが強いのですが、s.saxよりもバリサキの方がメジャーなので。
     気の小さな臆病者の姉テナーをしっかり支える、出来る妹のバリサキちゃん。そこにシビれるあこがれる


フルート フルートと聞くと必ず女の子が思い浮かびます
     ピッコロなんかも小さくてかぁいいのでろりろり幼女を導入

『喇叭』とは

金管楽器の総称。または、ピストンのないナチュラルトランペット(突撃ラッパ等)のことを差す

『トランペット』とは

金管楽器の一つ。ピストンまたはロータリー式のバルブがついている


どちらで呼んでも問題なし。ただ、細かい人はつっかかってくる



『自分の楽器に愛称をつけることについて』


トラン「もぉー…。いろいろと解説してくれるんじゃなかったのー…?」

ドラム「いいじゃないか。話を聞くより実際に吹いて感じたほうが早いし」

トロン「おうおう。自分で体験して曲を知れ、だぞ」

トラン「うう…分かった」

フルート「とらんおねいちゃん、がんばれーぇ!」

トラン「おー!」

ホルン「それじゃあアルヴァマー序曲、練習しましょっか」ペロ

トラン「おう、頑張るぞ!」ペロ

トラン「よーし…」ペロ


ベース「あの…みんな。わたしコントラバス持ってくるから、ちょっとの間だけ待ってて」

トロン「うん。分かったぞベース」

ホルン「その間わたしたちは音出しでもしてましょ」ペロ

トラン「そうだね」

ベース「…ありがとう。じゃ、行ってくる」

トランボーン「いってらっしゃーい」


フルート「ふぁ、、しばらくおはなししてたから、ふるーとがさめちゃった」

トロン「おぉ…わたしのボーンも、なつき度が下がったぞ」

ホルン「なつき度ってなによw」

トロン「が、楽器を暫くほうっておくと、本当になつき度が下がったみたいになるんだぞっ…!」

ホルン「気持ちはわからなくはないけど、なつき度って」プププ

トロン「う…、 わらうなだぞ、ほるん!」





トラン「おおシャンゼリゼ(楽器の愛称)、あたしのいうことを聞いて~」プープー

ホルン「オーケアノス(愛称)、あったかくなって~」プープー

フルート「……おねいちゃんたちのがっき、へんななまえ~」

トラン「へ、変じゃないもん。立派だもん」

ホルン「オーケアノスってのは『大洋』を表す英語『ocean』の元になったとされるかっこ良くて綺麗かつ雄大な」

フルート「ふぁわわ…」


ドラム「こらこら、子供相手に本気になるな」

トランホルン「…はーい」

テナー「あ、あの…わたしのテナーサックスさんにも、ニュンペーという愛称があるんです……」

ドラム「そうか。知らん」

テナー「あぅぅ…」


ドラム「つーか、なんで楽器に愛称なんざ付けるんだよ」

フルート「だよー?」

トラン「えーいいじゃん愛称」

ホルン「そうよ。なんかペットみたいで可愛いじゃない」

トランホルン『ねー?』

ドラム「そうか?私には理解しかねる」

トラン「なんでよー」

ホルン「つけたほうが絶対いいのにー」


ガラッ

ベース「無関心を装っているけど、どらむもバチに愛称つけてるよね」

ドラム「な…、ベース!」

トラン「あ、ベースちゃんおかえりー」

フルート「りー!」

ベース「…ただいま。わたしのかわいいオレアードがやってきました」


トラン「とりあえず話を元に戻してー」

トロン「楽器の愛称についてだぞ」

ホルン「で?で?崇高かつ気高きドラム様はバチにどのような名前をつけてるんですか?w」

ドラム「わ、わ…わたしはバチに名前など付けていない!これは何かの間違いだ!」バスドラドンッ

ホルン「なにっ」

トロン「…どらむの言う通りなのか?べーす」

ベース「嘘だよ。どらむは、恥ずかしいが故に事実と異なる内容を供述している…」ビシィ

フルート「ふぁ…」

ドラム「う、ううう嘘ではない。本当だ!」


ホルン「なんか、あやしい~」

トラン「そして、疑わしい~」

トロン「かつ、わざとらしい~」

フルート「……」じとー

ドラム「何故そうなる!」

テナー「えっと…ほんとはドラムさんも、パートナーに愛称をつけているのではないのですか…?」

ドラム「そ、そんな事はない!」

ドラム「私はバチなんぞに愛称をつけて、ペットのように愛でたりなどは絶対にしない!」

ドラム「絶対にだ!!」


トラン「ぬぬ…それでもなんか、信用ならん」

ホルン「うんうん」

フルート「どらむおねいちゃん、まだまだあやしい~」

トロン「べーす。なんだか怪しいどらむに、一言言ってやれだぞ」

ベース「ひとこと?」

トロン「おう」

ベース「…分かった」スッ


ベース「…」スタスタ

ドラム「む…?」

ベース「………」ジッ

ドラム「………」


ベース「どらむ」

ドラム「な…、何だ」


ベース「どうして嘘をつくの」

   「…ほら。手元の『バッチー』も、そう言って泣いてる」




『バッチー』 『ばっちー』 『桴』 




ドラム「」グワングワン


トロン「ひゃーひゃひゃひゃひゃwwwwwwww」バンバン

ドラム「」

トロン「バッチーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

ドラム「…///」

ホルン「ドラちゃんのwwwwwバチのwwwww愛称wwwwがwwwwバッチーwwwwwwwww」ゴロンゴロン

ドラム「……//////」

トラン「バチwwwwwwwwバッチーwwwwwwwwそのまんまwwwwwwwwwwwwwwww」

ベース「………………クフッ」

テナー「え、えと、えとえと…!」アタフタ

ドラム「……」

ドラム「ばっきゃろー!」ダッ


バタン!

ホルン「あ、あら……?」

トラン「あ、あひゃ、ドラちゃん、怒って出て行っちゃった…」

トロン「くふっ、ふ、…こ、これはまずいぞ…」

ベース「……ちょっと、言いすぎたね」

テナー「もう…、皆さんがドラムさんの『バッチー』のことを笑うからですよ…」

トロン「やwwwwwwwwwwwめwwwろwwwwwwwwwwwww」

ホルン「その名を言うなwwwwwwwwwwwwっなwwwwwwwwwwww」

トラン「wwっうぇwwwwwwwwwwっうぇwwwwwwwwwwwww」


    _, ._
  ( ・ω・)
  ○={=}〇,
   |:::::::::\, ', ´ 
.wwし w`(.@)wwwwwwwwwwww


ねます

フルートほど別世界ではないだろうと思いリードで統一しました
バリサキちゃんは便利な娘なのでなんでもありです

楽器との対話はとても大切です。可愛がっていると一般の人には変人扱いされるかも知れませんが
楽器を大切にしない人のほうがよっぽど変人です
多分



『トランペット吹きの休日』


トラン「さぁ、今日も外で青春を謳歌するよ、みんな…っ!」

ホルン「は?」

トロン「ひ」

ベース「……ふ」

ドラム「へ」

フルート「ほ~!」


ドラム「よくできました」


ホルン「青春を謳歌って…まさか、こんなに寒いのに外で走ろうとか言うんじゃないわよね」

トラン「正にその通りだけど」

ホルン「はぁぁ~!?あんた正気ー!?」

トラン「えっ?なんかおかしい?あたし」

ホルン「えっなんかおかしいわよあんたっ」


ドラム「せっかくの週末だってのに外で走り回るねぇ」

ベース「……きが、くるっとる」

トロン「どうか、しとる」

トラン「ムフフ。なんとでも家!トランペット吹きの休日は忙しいのだ!」

フルート「野田!」


トロン「とらん。よく考えろだぞ」

トラン「んあ?なにを?」

トロン「いいか。犬もこたつで丸くなる今の季節に、外で走るなんて自殺行為なんだぞ」

ベース「…その通り」

トラン「ぬぬ、どうしてよ」

ドラム「少しでも外気に触れたら、肌が斬れ、血が噴き出す」

ホルン「ってくらい寒いから。だから嫌よ私は」

フルート「いやよ~」

トラン「ええ~!」


トラン「なんでよなんでよ、みんなで一緒に外で走ろうよー!」

ホルン「無理」

トラン「だからどうして!」

ホルン「だってこたつから出たくないんだもん」

トロン「だぞー…」

ベース「………」ぬくぬく


トラン「ぐぬぬぬ…」ワナワナ

ドラム「丁度いい。トラン、そこにあるリモコンを取ってくれ」

トラン「……………」

トラン「うがー!よくもそんな閉鎖的な場所で固まってられるよね!はいリモコン!」

ドラム「すまないなー」


トロン「というかみんなで一斉に出たら、あの俺とか言う奴に見つかってしまうぞ」

ホルン「そうよ。見つかったらどうすんのよ」

ドラム「見つかったらただでは済まされないぞ」

ベース「…きっと、身体が磨耗してなくなっちゃうまで撫でられるよ」

フルート「ふぁわわ…」ガクガク


トラン「ふふん、それについてはご心配なく」


ホルン「? なんでよ」

トラン「あの人は今、学校から頼まれたフルートの修理をしてるからだよ」


俺「おやおやフルートちゃん。君はこんな所に隠れたネジを持っていたんだねぇ」

俺「さっそくそのネジを、この硬い硬いドライバーで犯しまくってあげるよ…フヒヒ!」キコキコ

俺「ああんやめてぇぇ!フルートの秘密の場所をきこきこ緩めちゃだめえぇぇええぇぇ!」

俺「あはあぁあぁぁぁあああっ!!」ビクンビクン


ホルン「…うわぁ」


トラン「なので彼は今日一日修理部屋にこもりっきりです」

ホルン「ふーん」

フルート「おれさん、こもりっきり~?」

トラン「うん。こもこもり~の、こもこもりじゃ~♪」

フルート「やー♪」ja


ベース(優しく接してくれるのは嬉しい。…けど、彼の楽器との対話の仕方は…どうかと思うの)

ドラム(ふふ、愛があればいいのさ)


トラン「とにかく、彼は終始発狂中なんだよ!」

トラン「だから!走ろう!みんなで!」

トロン「うぬぬ。走るのは嫌だけど、買い物にはいきたいとおもうぞ」モゾモゾ

トラン「買い物?」

トロン「だぞ」

トラン「ふーん…。他のみんなは?」

ホルン「そうねぇ。私も買い物には行きたいかも」

フルート「かも~♪」

トラン「おお」

ドラム「買い物なら一向にかまわないが」

ベース「……わたしは、楽器屋に行きたいな」

フルート「いきたーい!」

トラン「よっしゃ、じゃあさっそく買い物しに外に出よう!」ガシッ

ホルン「ちょっ、襟元つかむn……げええ」ズルズル





ホルン「というわけで、引きずられてきました最寄り駅」

フルート「もよりえき~」

トラン「ほいさー」

ガヤガヤ ワヤワヤ

フルート「わぁぁ…!」

トロン「すごい、人がいっぱいだぞ!」

ドラム「そうだな」

ベース「……わたし、ここで路上アンサンブルやりたい」

フルート「やりたーい!」

トラン「いいね。あたしポケットトランペット持ってきてるよ?」

ドラム「なに…?」

トロン「ムフフ。わたしはボーンをケースに入れて持ってきたぞ」

ホルン「あ、あきれた…」

ホルン「と言いつつ、私もホルンケースを持ってきてたのでしたー」

トランボーン『おー』パチパチ

ドラム「おいおい。財布やバッグ感覚かよ」

ホルン「でも、やっぱり建物の中じゃ音が響きすぎてうるさいでしょ」

ドラム「そうだ。楽器の音は思ったよりも大きい。騒音以外の何者でもない」

ホルン「だから。ここで演奏するのは駄目。許しません」

トラン「えぇ~そんなぁぁ~!」

トロン「くぁwせdrftgyふじこlp!」

ベース「やだ…!演奏したいの…!」じだんだ

ホルン「ダメ!落ち着きなさい!」

ワイワイ ガヤガヤ

ベース「…無理、もう我慢ならない。ここで思いっきり演奏したい」

トロン「ぐぬぬ。わたしのワルキューレもケースの中でうなってるぞ…」

フルート「セイレーン、おちつくの~…!」

ドラム「あっはっは。まずはお前らが落ち着け」

ホルン「そうよ。冷静になりなさい」

フルート「うぬぬー…」

ベース「ほるんは、楽器が揃っているこの状況で、理性を保てるというの…?」

ホルン「えっと…私も、演奏はしてみたいとおもうけど」

ベース「なら…しようよ」がしっ

ホルン「で、でも、それとこれとは話が違うというか…」

ベース「……ぬぬ」

ドラム「つーかベース。お前アンプがないと音を出すことすらままならないじゃないか」

ホルン「そ、そうよ。どうするつもり?」

ベース「あんぷなら、ある」

ホルン「え?」

ドラム「どこにだ」

ベース「…この、キャリーバッグの中に」

ドラム「お前は一体何を考えている」ペチン

ベース「あう」

ホルン「とにかく。演奏は家に帰ってからにしましょう」

トラン「えー」

トロン「そんなぁ…。あんまりだぞ」

フルート「あんまりだーぁ…」

ベース「………うぅ」

ドラム「家に着くまでは我慢しろ。いいな」

みんな「…はーい」

ホルン「さてと、私はsu○caをチャージしてくるわね」

ドラム「私も行こう」スッ

フルート「ふるーともいくぅ~!」

トラン「…西瓜?」

トロン「なんだそれ、うまいのか」

ベース「うまくない」



大きな街 の駅前

ワイワイワイワイ ガヤガヤガヤガヤ ブゥゥゥン プップー カッコーカッコー プッシュウウウ ズゴガゴゴゴゴゴ



トラン「………………………………………………………………」

トロン「………………………………………………………………」




ドラム「ほお、なかなか大きな街だな」

ベース「だね」

ホルン「ふふっ。ここなら色んな楽器店が見られそうね」

フルート「うんっ、たのしみたのしみ~!」


ワイワイワイワイ ガヤガヤガヤガヤ カツカツカツカツ プァーーン イラッシャイマセーイラッシャイマセー ガイーンガイーン ~♪~♪



押し寄せる音

それぞれ違う顔がいっぱいウロウロ

常に動く光景

連なる物体に覆い被される感覚

それらの奇妙な感覚が、一斉に彼女達を襲う…



トラン「う…うわぁぁあぁああぁあぁぁあああああ!!」絶叫

トロン「なんなんだぞここおぉぉぉおぉぉぉぉおぉ!!」叫喚

ホルン「なんなんだって、街でしょ」

トラン「まち!?」

ホルン「ええ」

トロン「これが…これが街というものなのか!?」

ホルン「え、ええ。そうよ?」


トラン「こ…これが、街」

トロン「な……なんだか、奇妙なところだぞ」ガクガク

トラン「…うん」ガクガク

ドラム「何故だw」

トロン「だ…だって、あちこちから訳の分からない音が押し寄せて…」

ドラム「音?」


トラン「うぐっ…ほんとだ。耳がいっぱいで痛い…」

トロン「それになんだか、気持ち悪いぞ…」

フルート「えー?」

プップー ブゥゥゥン カッコー

ドラム「……そうか?おまえらどうだ」

ベース「…わたしは、特になんてこと無い普通の音たちだと思う」

ホルン「私も」


トラン「そ、そんな!普通じゃないよここ!」

トロン「そうだぞ。普通じゃないぞ…!」

ドラム「普通だろ。今日は何かのイベントがあるわけでもなさそうだし」

ベース「宣伝に、音楽を使っているわけでもない。平常」

ホルン「そうね。いつもどおりの街だわ」

トラン「い、いんや、ここは普通じゃない!」

トロン「だぞ!」


ホルン「はぁ…。一体何処が普通じゃないってのよゴルァ」

ドラム「そうだ。私らには皆目見当もつかないが」

ベース「…」こくこく

フルート「おねいちゃんたち、よくわかんない。ふつーじゃないとこ、おしえて?」

トラン「オッケー!それでは普通じゃないところその壱!」

トロン「土が少ない!」ビシィ

ベース「……………」

ホルンドラム『は?』


トラン「いいですか皆さん」

トロン「まず、この地面を見ましょう。だぞ」

ホルン「…」

ドラム「…」ジー

ベース「…」

フルート「…」

ホルン「…見たわ」


トロン「なっ…、何も感じないのかだぞ…」

トラン「そ…そうだよ。この地面を見てなんとも思わないの…っ!?」

ドラム「んんー?」

ホルン「???」

ベース「…なんだろ」


トラン「ほ、ホルンちゃん!ホルンちゃんなら分かるよね…!」

ホルン「え、えっとー…」

ホルン「……」

ホルン「こ、コンクリートが敷き詰められた道があるなぁ。…と思った」

ドラム「うむ。私も同じく」

ベース「うん」

フルート「はにゅ」

トラン「な…何たる事か」ガクッ

ホルン「は?」

トロン「こいつらは、土の声を忘れてしまったのだぞ…」

ベース「え……。そ、そうなの…?」

トロン「そうだぞ…」

トラン「そうだよ…」

ベース「あわわ」


フルート「膣の、こえ~?」

ドラム「ばっ…、バカ、土の声だ…!」




トラン「ほら、耳を傾けて!」

トロン「どうだ、聴こえないか!大地の声が!」


トランボーン『神々の声が!』


ホルン「ふーむ。土の声ねぇ」

ベース「…特に聴こえない。無音」

トラン「なっ」

トロン「なに…?」


トラン(信じられん…)

トロン(こいつらは、一体……)


ドラム「ふむ、なるほどな。おまえらグンマー人なのか」

フルート「うわーい、ぐんまぁー!ぐんまぁー!」ドタドタ


トラン「ぐんまー?」

トロン「おお?ぐんまぁって、なんだぞ?」

ドラム「あー。グンマーっていうのはだな」

ベース「………未開の地。らしい」検索

トロン「ほぉぉ」

トラン「で、あたし達二人はそのグンマーからやってきたグンマー人だと」

ドラム「そうだ」


トラン「と…トロンちゃん、ちょっと…」グイ

トロン「お?なんだぞ?」


トラン「トロンちゃん。今日のみんなはなんだかおかしいよ…」ヒソ

トロン「え?なんでだぞ…?」

トラン「だって、この異色な世界にたどり着いても、顔色ひとつ変えないじゃん」

トロン「…!」

トラン「挙句、あたしたち二人のことを外国人だと吐き捨てる…」

トロン「あ……」


トラン「つまり、ここは別の世界なんだよ…!」

トロン「そうか…!電車に乗ってる間にワームホールなるものに突入してしまったんだぞ…!」

トラン「そう、そうだよ。きっとそうだよ!」

ベース「…??????」

トロン「じ、じゃあ今、わたしたちの目の前に居るほるんたちは…」


トランボーン(異世界人!)


ホルン「ん?」

フルート「にゅ?」


トロン「とらん!ここはきっと注連縄が張られた禁所の向こう側だぞ!」

トラン「そうか!だからこんなに違和感のある世界に来ちゃったんだね!」

トロン「そうだぞ!あぁ、ばっちゃのいってたことは本当だったんだぞ…!」

トラン「ごめんなさいおばーちゃん。あたしたちは村の禁を破ってしまった…」


ベース「…??????????」


トロン「わたしたち、もうおばーちゃん会えない…」

トラン「そして、もうこの異世界から出られない…」

トロン「違和感だらけのこの世界で、やせ細って死んでいくんだぞ…」

トラン「やだ…。そんなのやだよぉ…」


トランボーン『バッチャー!』


ドラム「ダメだこいつら田舎者すぎる」

ホルン「はぁ。都会を知らなすぎるのね…」

ベース「…それと、昔話の聞きすぎだよ」


トラン「昔話ってのは事実に基づいて作られ、戒め的要素を含み、なおかつ完成度の高い風刺的な」

ドラム「わかったわかった。とりあえず、楽器屋を探そうか」

トラン「む~」

ホルン「ほら、トロンもしっかりと探すのよ」

フルート「さがしてね?」


トロン「さ、探してるぞ。でも、ひとつの建物に沢山の店があるから外観で判断できないんだぞ…」

トラン「ほんとうだ…一回が服屋なのに二階が本屋で、三階がマツキヨで四階がレストランだ」

トロン「み、脈絡がないぞ~…!」

トラン「看板もいろんなのがビルに張り付いてるから、どれがどこの看板なのかわかんないよ~!」

ドラム「やめろキョロキョロするな恥ずかしい」


フルート「ねえねえおねいちゃん、あれ、がっきやさんじゃなぁい?」

ホルン「どれどれ……。あ、ホントだ楽器屋発見」

ベース「ど、どこ…?どこ…!?」

ホルン「ほら、あそこのお店の二階」

ベース「……!」ぱぁぁ


楽器屋


ドラム「ほほぅ。ベースやらギターやらがいっぱいだな」

フルート「だなー!」

ベース「…はぁ、はぁ、はぁ」じゅるり

ホルン「ベース、あんた口からよだれ出てるわよ」

ベース「……」ふきふき


トラン「ぐぬぬ…何故吹奏楽、オーケストラ系統の本棚はこんなに小さいの…」ワナワナ

トロン「こ、これは………みんなギター系の本に侵食されているんだぞ」ワナワナ

フルート「はうう…。ふるーとのすぺーすが、三十センチもないの…」グス

トラン「おのれ……」

トロン「軽音楽め…」

ホルン「許すまじ!」


メラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラメラ


ドラム「落ち着けよおまえら」

ベース「……」こくこく

トラン「だって、あんまりだよこんなの…」

トロン「迫害だぞ」

ホルン「侵略だわ」

フルート「さべつだよ~」


ドラム「…はぁ」


ドラム「ギターやベースの範囲が広いのは、やはり手軽な楽器だからなのだろうな…」

トラン「てがる…?」

ドラム「そうだ」

トロン「…どこがどう手軽なんだぞ」


ドラム「少ない人数で演奏可能。楽器が一万円から買える」

ベース「j-popが主流。憧れのアーティストが見つけやすい。なにより小難しいイメージがない」

ドラム「これらの理由により軽音楽器は最強かつ無双。吹奏楽、オーケストラは四面楚歌だ」

トラン「」

トロン「」

フルート「わろた」


トラン「と…トランペットとトロンボーンフルートなら、一万円から買えるもん」

トロン「そうだぞ。管楽器のなかでは割りとメジャーだぞ!」

フルート「だぞっ」

ドラム「音量は調整できまい」

トラン「うぐぐ」

トロン「で、できないぞ…」

フルート「……」うるうる

ホルン「管楽器は、外に出るか防音室で吹くかの二択よね」

ベース「それに比べギターやベースは音量が調整できるし、ヘッドホンでも音聞けるし」

ドラム「自室でやるにはもってこいの楽器なわけだな」


ベース「あと、忙しい人でも実力を保持し続けやすい」

ドラム「うむ」

トロン「ぬぬ、楽器はどれも間を開けたら実力が衰退するものだぞ」

ベース「……それはそうなんだけど…」

ドラム「ではトロン。管楽器は二日休むと何日分実力が衰退する?」

トロン「四日分以上」


トラン「ダメだ………勝てるはずがない…!!」

トロン「ぁ…ぁ、あぁ…ぁ」ガクガク

ホルン「ダメか…」

ドラム「このとおり、吹く楽器というのは日頃から練習してないと素人でも分かる程実力が衰退するんだな」

ベース「…」こくこく


トラン「学生はいいな…」

トロン「一日一回吹く時間が設けられているんだぞ」


「それがどんなに幸せなことか」

「あの頃は、どんなに大きい音を出しても怒られない」

「毎日楽器が吹ける」

「そういう、恵まれた環境に置かれていたんだなあと感傷に浸り」

「気付いたら何日も経っていて」

「その日数以上の遅れた実力を取り戻さねばと思うも」

「時間も場所も、仲間もなく」

「結局、今日もまた、感傷に浸りつつまぶたを閉じ…」

「過ぎ去った遠い日に思いをはせ」

「今日一日の、すべてを終えるのである」

「……」グスン


トラン「で…でもやっぱり安さでなら勝負できると思うの!」

トロン「だぞっ」

フルート「はにゅ!」

ドラム「じゃあ聞くが、お前ら一万二万単位の楽器を買うか?」

トラン「絶対買わない」

トロン「まずない」

フルート「そんなの、がっきじゃない」

ホルン「てか、ありえない」

ドラム「だろ?」

トラン「しまった!」

ホルン「やられた!」


ドラム「はっはっは、掛かりおったなドアホ目が」

トラン「ぐぬぬ…」

ホルン「図ったわね!」

ベース「…でも、安い楽器は買わないほうがいいのは事実」


ドラム「さて。そろそろ家に帰るぞ」

トラン「えー。まだ雑誌読んでたい~」

ドラム「買え」

トラン「買う」



俺(安い楽器は損するだけふぇす)



『木管楽器奏者のお喋りは静かと感じたことについて』


フルート「ねえねえばりさき?」

バリサキ「ほえ?なんですかあ?」

フルート「あのね、きのうね、てなーといっしょにおふろにはいったのー」

テナー「はい」

バリサキ「ははぁなるほど。お姉ちゃんのおっぱい、おっきかったでしょー?」

フルート「うんっ。ぷにぷに~の、ぼいんぼい~ん」

テナー「///////」ピーッ!

一方

ホルン「ところでトラン!」

トラン「なあに?」

ホルン「この前にも言ったけど、頭上で音をガーガー鳴らすのは勘弁してよ!」

トラン「なっ、またそれか!」

ホルン「またそれよ。だけど仕方ないじゃないうるさいんだもの!」

トラン「仕方ないとはこっちのセリフだよ、もうどうしようもないんだよ!」

ホルン「どうにかしてよ!」

トラン「はぁぁ!?」



トロン(この会話…わたしに飛び火するぞ絶対にだ………)

ホルン「あぁ。なんとかならないのかしらねこの問題」

トラン「だってだって仕方ないじゃん。ホルンと違ってベルが前を向いてるんだもん」

トロン「…」コクコク

ホルン「だったらそれ、上向きに曲げればいいじゃない」

トラン「曲げるぅ!?」

ホルン「ええ。ユーフォやチューバみたいに上向かせましょ」

トラン「まさかホルンちゃん、アップベルトランペットをイメージして言ってるの?」

ホルン「何だか知らないけど。そんな感じの変わったトランペットあったわよね?」

トラン「あるけど……」

ホルン「なら話は早いわ。曲げましょう、そのトランペット」

トラン「や、やだよ!そんな事したらおかしくなっちゃう!」

ホルン「アップベルトランペットは事故で曲がって出来たって話よ。で、吹いてみたらさほど音は変わらなかったと」

トラン「な…」

ホルン「というわけだから。はい、寄越しなさいそのペット」

トラン「い、いやーっ!」ジタバタ

ホルン「こら!暴れるんじゃないっ」

トラン「いやいやこればっかりはぜったいにいやーーっ!」

トロン「…………………………た、たいへんだなー」シラヌフリ

トラン「そ、そうだ!思えばトロンボーンもベルが前向きだ!」

トロン「!!!」

ホルン「あらそうね。じゃあトロン、あんたのボーンも寄越しなさい。曲げるから」

トロン「ほら見ろこうなった!巻き添え喰らった!ばーかばーか!」

バリサキ「おふろの入浴剤は白乳タイプがいいよねーお姉ちゃん」

テナー「え、えと…わたしは桜のほうがいい……かな…?」

バリサキ「なんと」

フルート「ふるーとはゆず~」

ウフフ クスクス



ホルン「ほら!いいからそれをこっちに寄越しなさい!!」

トラン「いやーーーーっ!」

ホルン「ほら、トロンもよ!」

トロン「ボーンの前はユーフォだぞホルンじゃないぞわたしは関係ないぞー!」

ギャーギャー ワーワー マゲタラナニモカモオシマイダ コノバチアタリー

ドラム「ムフフフフ」ニヤニヤ

ベース「何が可笑しい」

ドラム「金管と木管を見てるのは本当に飽きないなあと思って」

ベース「え…?」

ピアノ「どういうことですの?」

ドラム「なんつーか。種族の違う動物を観察してる、生物学者の気分になる」ニヤニヤ

ピアノ「はいっ?」

ベース「……なるほど。今回も『どらむの生態観察日記』のこーなーというわけだね」

ドラム「ああ。確か、この前にはバスト説を発表しただろう?」

ピアノ「はぁ…あの嘘かホントか分からない怪しい理論ですか」

ドラム「何を言う。現に私らはあいつらより旨が小さいではないか」

ベース「…」ぐすん

ピアノ「よ、余計な事はほじくり返さなくても良いのですわっ…」

ベース「…で、今回はどんな観察結果が叩き出されたの?」

ドラム「うむ。今回はだな、『金管勢と木管勢の生態系は全く以て違う』ということなのだ」

ベース「せ…生態系が、違う?」

ドラム「そうだ」

ベース「……えぇぇ」

ドラム「なんだ」

ピアノ「はぁ…。長い間彼女達を眺めているにつれて、一種の動物への愛着のようなものが湧いたのと違います?」

ドラム「ちがう!断じてあいつらが動物に見えてきた訳ではない!」

ドラム「これは、公平な目であいつらを観察していて発見に至った、完璧かつ信憑性のある結論なのだ」

ベース「…トランたちも、一応ヒトだよ」

ピアノ「毎日ギャーギャーうるさいですけど。一応ヒトということになってますわ」

ドラム「だっから私は動物を観察してたわけではなくヒトをだな…!」

ピアノ「えぇいいですわ分かりました。その説、聞き届けましょう」

ベース「…ましょう」

ドラム「お、おう。それじゃあ話すぞ」

ドラム「えーまず木管共を見ろ」

ピアノ「はいはい、木管ですね」

ベース「…」

______________


バリサキ「ところで、フルーテちゃんはいつから倉庫に置きっぱなしだったんですかー?」

フルート「ぬ。ふるーてじゃないの、ふるーとなの」

バリサキ「リピートアフターミー。flute」

テナー「…ふ、ふるーて」

バリサキ「flute」

テナー「ふるーて」

バリサキ「ほらぁ、やっぱふるーてじゃないですかー」

フルート「のんのん。ふるーとっ!」

ドラム「どうだ。やつらの会話の雰囲気は」

ピアノ「えー。まあ、会話らしい会話でしたわね」

ドラム「雰囲気は?」

ベース「…雰囲気は、静かで落ち着いてる印象を受けた」

ドラム「うむ、大方わたしの予想通りだな。それじゃあ次、それを頭に入れた上で金管を見るぞ」

ピアノ「ええ」

ベース「…」

トロン「ばーかばーか!おまえらふたりともおおばかだぞ!」

トラン「なにー!」

ホルン「どこがどう大馬鹿だってのよ!」

トロン「どこもなにも頭のてっぺんからつま先まで全身全霊身の持て余すところなくおおばかだぞ!」

ホルン「それはトランだけね!」

トラン「異議あり!なんであたしだけおおばかなのでしょうか!」

ホルン「さあ?鏡に向かってお前は誰だと聞いてれば答えが見えてくるかもよ?」

トラン「ゲシュタルト崩壊させる気!?」

ホルン「そうよ!」

トロン「ばーかばーかおおばかまぬけのホルンペットー!」

トラン「うがー!」

ホルン「あんたーー!」

ドラム「どうだ?www」

ピアノ「………………………………」絶句

ドラム「おい、ベースはどうだww」

ベース「すごく……姦しいです」

ドラム「だろ?」

ドラム「えーこのように、木管勢と金管勢とでは会話や雰囲気に温度差が生じるわけです」

ドラム「ここテストに出るからな。まるで囲っとけ」

ベース「…はい」キュッキュ

ピアノ「ふむ。そういえば前者は、暗く大人しい雰囲気の人物がよく目に入りますわね」

ピアノ「それに比べ後者は、お調子者やお喋り好きが目立つように感じますわ」

べース「……なんでだろう」

ドラム「さあな。理由は分からんが、前と後ろで空気がちがうのは確かだ」


ドラム「えーこれについてはまだ解明されていない事柄が多い。今後の実験に期待してくれ」

ピアノ「はいはい」

ベース「……がんばって」

ピアノ「まあ実験を続けるのは良いんですけど。問題はあの姦しさですわっ。何とかなりませんの?」

ベース「……それなんだけど」

ピアノ「? なんですベース」

ベース「ふふ、なんとなんと……ここにこんなものがあるのです」ゴソゴソ ッパ

ドラム「む!」

ピアノ「それは…!」

つミュート

『ミュートとは』

楽器のベル(楽器の口の部分)に取り付ける、三角フラスコ型の追加パーツのこと。弱音器。

これを付けると金管楽器は何だか頼りないフニャフニャ音になってしまうのだビーカー!

ベース「ふふふ……これを三人のお口に突っこんじゃえば…」

ピアノ「世界は平安の境地に至り入るわけですねっ」

ヒソヒソ ツッコミタイ… ニヤニヤ

ドラム「おいおいおい。あいつらは楽器じゃないんだぞ」

ピアノ「いいえ。いまや彼女達は楽器のごとく騒音を奏でていますわ」

ベース「つまり、彼女達は楽器なのです」

ピアノ「とびっきり迷惑なねっ!」

ベース「…というわけで」

ピアノ「早速これをお口に突っ込んできますわ!」ダッ

ベース「…」ダッ

ドラム「おっ、おいこらまて!」

ピシャン!

ナッ ナニモノ!?

ウフフフ カシマシイアナタタチニ ソレソウオウノ テンバツヲ!

グイッ

ウオエッ!

アファファ…!

ナヒスンノホ…!

オーホホホホホホホホ!ソノママ アワアワト シテイラッシャイ!

…ラッシャイ


ドラム「……」




トラン「それぞれの楽器には、良いところと悪いところがあるよ」

ホルン「どの楽器が優れているとかいないとかは関係なし」

トロン「優れているかいないかは、奏者に左右されるぞ」

ベース「みんなちがってみんないい」

ピアノ「楽しむことが最大の目的ですわっ」

テナー「ですから…、みんなで仲良く演奏してくださいね」

フルート「くださいね~」


ドラム「お終い」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年07月18日 (土) 23:31:52   ID: lCMmAR4X

長すぎる。。。

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