京子「守ってあげたい」 (22)

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京子(何か今日一日結衣の様子がおかしい気がする…)

京子(いつもよりツッコミにもキレがなかったし、授業中もボーッとしてたし、綾乃のダジャレにも反応しなかったし)

京子(心配だし、これは聞き出してみる必要がありそうだな…)

京子「結衣ー部室行こうぜー!」

結衣「あ…ごめん。私、今日はもう帰ろうと思うんだ」

京子「えっ、なんで!?」

結衣「いや…ちょっと体調悪くてさ。あかりとちなつちゃんにもそう伝えておいて」

京子(……よし)

京子「じゃあ今日は私も帰る!」

結衣「えっ、なんで?」

京子「体調悪いなら家まで送って行ってあげようかなって。あかりとちなつちゃんには連絡入れとくよ」

結衣「いいのか?」

京子「いいっていいって!私と結衣の仲じゃん?」

結衣「……ありがとな」

京子「帰ったらちゃんと手うがしろよ?」

結衣「だから流行らねえよ」

京子「よし、着いたな!」

結衣「あのさ、京子…」

京子「ん?」

結衣「冷蔵庫にラムレーズンがあるんだけど」

京子「ラムレーズンだと!?」

結衣「食べていかないか?」

京子「食べる食べる!さっすが結衣!」

京子(何とか言って結衣の家には上がらせてもらうつもりだったけどまさか結衣の方から言ってくれるとは…)

京子「ラムレーズンうめぇ〜!」

京子(……さて、どう話を切り出そうか…)

結衣「なぁ、京子」

京子「んー?」

結衣「今日金曜日、なんだけど…その……」

京子「ん?何かハッキリしないな?」

結衣「いや…何でもない」

京子(ん?これはもしかして…)

京子「もしかして泊まっていってほしいの?」

結衣「ち、違う!」

京子「あ、そうなんだ。じゃあラムレーズンも食べ終わったし、もう帰
ろうかな」チラッ

結衣「あ……」シュン

京子「……なーんて、冗談だよん。今日は泊まっていくよ」

結衣「そ、そうか」

京子「まったく、結衣にゃんってば素直じゃないんだから〜」

結衣「う、うっさいわ…」

京子「でも珍しいな。結衣からこんなこと言い出すなんて」

結衣「……たまにはいいだろ…」

京子「それに今日一日ずっと様子おかしかったしさ」

結衣「そ、そんなことないと思うけど…」 ギクッ

京子「どったの?何かあった?」

結衣「……」

京子「話してくれてもいいじゃーん」

結衣「…れにも……」

京子「ん?」

結衣「誰にも…言わないか?」

京子「言うわけないじゃん。もっと京子ちゃんのこと信用しろよ!な?」

結衣「いや、何か信用ならないんだけど」

京子「なんだとー!」

結衣「まぁいいか。実はさ、昨日…変な夢見ちゃって」

京子「変な夢?」

結衣「うん」

京子「どんな夢?」

結衣「いや…」

京子「ここまで言ったなら話せよ!あ、もしかしてエッチな夢見ちゃったとか?やーん、結衣のスケベー」

結衣「違うわアホ!」

結衣「その…蜘蛛に……」

京子「蜘蛛?」

結衣「自分より大きな蜘蛛に襲われる夢を見たんだ….…」

京子(何それ怖い…)

結衣「結構リアルで怖かったんだ。だから今日一日ずっとあの夢が頭から離れなくてさ…」

京子(結衣虫苦手だもんなぁ。というかそんな夢結衣じゃなくても怖いわ)

京子「……それで一人で寝るのも怖くなって結衣から泊まりに誘ってきたの?」

結衣「……」カァア

京子「まぁ、事情はわかった。話してくれてあんがと」

結衣「…何か悪いな……」

京子「お安い御用だって!」

ー夜ー

結衣「じゃあ、電気消すぞ」

京子「うん。大丈夫?寝れそう?」

結衣「多分」

京子「怖いなら京子ちゃんが抱き締めながら寝てあげてもいいんだよ?」

結衣「何だそれ…」

京子「へへっ。そんじゃ、おやすみ!」

結衣「おやすみ」

ー数時間後ー

京子(……)

京子(時計の音と…結衣の寝息だけが響き渡ってる……)

京子(結衣が心配だからかな、何か全然眠れないや…)

京子(まぁ土曜日だからちょっとくらい寝坊しちゃっても問題ないし別にいっか)

結衣「……!」ガバッ

京子(ん?結衣が起き上がってる….どうしたんだろう)

結衣「……」グスッ

京子(泣いてる…?)

京子「結衣?どうしたの?」

結衣「き…京子ぉ……」

京子「怖い夢でも見ちゃった?」ナデナデ

結衣「……」コクンッ

結衣「京子…京子ぉ…」ポロポロ

京子「よしよし」

京子(泣く程怖い夢だったのか。また蜘蛛関連?)

結衣「……京子…いなくなったりしない…よな……?」

京子「? うん、当たり前じゃん」

結衣「……あかりやちなつちゃんも…いなくなったりしない……?」

京子(皆がいなくなっちゃう夢でも見たのかな…)

京子「大丈夫だよ。私もあかりもちなつちゃんも誰もいなくなったりしないからさ。ね?」ポンポン

結衣「……本当…?」

京子「うん、だから安心していいよ」

結衣「……」ギュッ

京子(結衣の方から抱き付いてきた…)

結衣「ありがとな、京子。……おやすみ」

京子「うん。おやすみ、結衣」ギュッ

ー朝ー

京子「ん……」

結衣「京子」

京子「んー……」

結衣「もう朝だぞ、京子」

京子「んんー……」

結衣「起きろって」

京子「もう朝ー……?」

京子(…あれ、いい匂い…お味噌汁の匂い…かな……)

結衣「朝ご飯できてるぞ」

京子「! 起きる!!」

結衣「まったく、しょうがないな京子は。じゃあ私はご飯テーブルに並べたりしてるからその間に顔洗ったりしてこいよ」

京子「はーい」

京子(結衣、いつも通りだ。良かった)

京子「ごちそうさま!ふぅ、美味しかった」

結衣「はいはい、お粗末さまでした」カチャカチャ

京子「ところでさ、あの後は大丈夫だったの?また怖い夢見たりしなかった?」

結衣「ん?ああ、大丈夫だったよ」
ザーッバシャバシャ

京子「そっかそっか、良かった」

結衣「それにしても京子。いつの間に私を抱き締めながら寝てたんだ?」

京子「……ん?」

結衣「寝る前にそんなこと言ってただろ。まさか本当にやるとは思わなかったから目が覚めたら息苦しくてビックリしたよ」

京子「いやいや、結衣から抱き付いてきたんじゃん?」

結衣「え、お前何言ってんの」

京子「え?結衣、夜中に怖い夢見ちゃってそれで……」

結衣「……何で京子がそれ知ってんの…?」

京子「へ?」

結衣「いや、何ていうか…今日は怖い夢じゃなくて、怖い夢を見て泣く夢を見たはずなんだけど……」

京子「……」

結衣「まさか…それ夢じゃなくて……」

京子「あ、うん……」

結衣「……」ガシャーンッ

京子「ちょっ、皿割れたんじゃ…あ、割れてなかった」

結衣「……う、うわあああああああ!!!」

京子「え、何!?どうした!!?」

結衣「……もう嫌だ…恥ずかしい……もう死ぬ………」

京子「いやいや、何にも恥ずかしいことないって!ね?落ち着けよ!」

結衣「うぅ……」

京子「ホラ、とりあえず手に付いてる洗剤洗い流してそこに座ろう?」

結衣「……」ザーッバシャバシャ

京子「……」

結衣「……」ストンッ

京子「……」

結衣「……」

京子(気まずい)

結衣「……なぁ…」

京子「な、何?」

結衣「本当に…夢じゃないのか……?」

京子「うん…私も鮮明に覚えてるし……」

結衣「……」

京子「そ、そんなに恥ずかしがることないじゃん!」

結衣「……」

京子「私だって小さい頃変な夢見て結衣に泣きついたことあったし!」

結衣「……私…もう中学生なんだけど…」

京子「と、年なんて関係ないって!」

結衣「……うぅ…もうほっといてくれ…」カァア

京子(でもあんな風にあからさまに弱ってる結衣、初めて見たな…)

京子(あ…そっか……)

京子(結衣はずっとそういう部分はあまり人に見せないようにしてたから……)

京子「なぁ、結衣」

結衣「……なんだよ」

京子「結衣はもう少し人に弱さを見せてもいいと思うよ」

結衣「!」

京子「小さい頃はさ。結衣…いつも私のこと守ってくれてたよね」

結衣「それは…お前が泣き虫だったから…」

京子「うん、そうだね。嬉しかったよ、いつも守ってくれて」

結衣「……」

京子「小さい頃、結衣が私のためにいじめっ子と喧嘩してくれた時なんかも怪我して泣きそうな顔してたじゃん」

結衣「……う…」

京子「だけど泣くのをグッと我慢して『もう大丈夫だぞ、京子』って言って手を差し伸べてくれたよね」

結衣「……」

京子「そんな結衣を見てたらさ、私思ったんだ。結衣に守られてばかりの私じゃダメだなって。結衣のことを守ってあげられる私になりたいなって」

結衣「京子…」

京子「だから私は強くなれたんだよ 」

京子「結衣はさ、昔も今も…強く見えるけど、強くあろうとしてるけど、だけど本当はそんなに強くないってこと私は知ってるよ」

京子「だから、結衣」

京子「私にも結衣を守らせてよ。守ってあげたいんだよ」

京子「一人で抱え込まないでさ、もっと頼ってよ」

結衣「……京子…」

京子「ね?」

結衣「……うん…」

京子「……」

結衣「……」

京子(……あれ、何か恥ずかしくなってきた…)カァア

結衣「……ありがとな、京子」

京子「ど、どういたしまして」

結衣「私の様子がおかしいことに真っ先に気付いてくれてありがとう」

結衣「いつも泊まりに来てくれてありがとう」

結衣「私に『楽しい』をくれてありがとう」

京子「な、なんだ急に…」

結衣「感謝してるんだ、本当に。いつもはなかなか素直に言えないけどさ…」

京子「結衣…」

結衣「でもさ、京子」

結衣「京子は確かに昔と比べたら強くなったけど根本的に弱い部分はやっぱり変わってないよ」

京子「えーそうかな?」

結衣「そうだろ」

京子「んーだったらさ、お互いに守り合えばいいんじゃないかな。私たち」

結衣「お互いに?」

京子「そう。私が結衣を守って、結衣が私を守るんだよ!うん、我ながら名案だ」

結衣「……京子らしいな」

京子「だろ?」

結衣「うん、それでいいよ。ありがとな、本当に」

京子「へへっ、こちらこそありがとう」

結衣「……ラムレーズン…」

京子「ん?」

結衣「食後のデザートにラムレーズン、食べるか?」

京子「食べる!」

結衣「じゃあちょっと待っ……あ…」

京子「どったの?」

結衣「昨日京子が食べた分が最後の一個だったんだ」

京子「よし、じゃあ買いに行くか!」

結衣「そうだな」

京子「よっしゃ行くぞー!」

京子(これからも結衣と楽しく一緒にいられたらいいなって、結衣を守ってあげられたらいいなって、結衣に守ってもらえたらいいなって、心からそう思うんだ)

京子(大好きだよ、結衣。これからもよろしくね)

END

終わりです。
ありがとうございました。

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