金剛「テートクにプレゼントを貰うのは、ワタシデース!!」
ビスマルク「何言ってるの? 私に決まってるじゃない!」
互いを肩で押し合いながら執務室に近づいていく二人の高速戦艦娘。
艤装こそ解除しているものの、その威圧感は他の艦娘を圧倒し、気弱なものに至っては失神するほど。
五十鈴「ちょっと、誰かあの人たち止められない!?」
名取「私たちではちょっと無理、かな……」
由良「戦艦や空母の人たちなら……」
鬼怒「正規空母と戦艦の人はほぼ全員飲み食いに勤しんでるから引き剥がすのは無理だと思うよ」
五十鈴「あぁ、もう! 提督が判断ミスしたら大惨事よ!」
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執務室前
金剛「さぁ、ここが正念場デース」
ビスマルク「ここまで来たら恨みっこなしよ」
そうは言いつつもどちらも末代まで恨みかねない悪鬼羅刹の表情を浮かべている。
金剛「ひとまず開ける前に深呼吸ネー。テートクを怯えさせては仕方ないデース」
ビスマルク「そうね。スーッ、ハーッ」
いつもの表情に戻った二人は執務室の両扉のノブに手を掛ける。
金剛「オーケイ? ワン、ツー、スリーで」
ビスマルク「開けるのね? いいわよ」
金剛「せーの、ワン、ツー、スリー!!」
蝶番の可動限界まで開く扉。
金剛「ヘーイ、テートク! メリークリスマスだよ! さ、私へのプレゼントを早く出すのデス!」
ビスマルク「メリークリスマス! さ、プレゼント渡していいのよ!」
だが、執務机に提督の姿はなく、代わりに座っているのは白いセーラー服に黒髪の巡洋艦娘。
北上「んぁ、提督? 用事があるからって出かけてったよ」
金剛「じ、じゃあテートクからのプレゼントは……」
北上「金剛さんへもビスマルクさんへも別に預かってないねぇ」
金剛「Shit!! 逃げられたデース!」
ビスマルク「ここは一時休戦よ! 提督を追いましょう!」
金剛「Of course!!」
踵を返し、暴風のように執務室から去る二人。
北上「全く、どっちかというと配る側でしょうに。あー、提督から仕事頼まれてなければパーティー参加するんだけどなー……」
ぶつくさ言いながら扉を閉める。
北上「……あ、さっきので蝶番ゆがんだかな。めんどくさーい」
金剛「といってもテートクの居場所、心当たりは?」
ビスマルク「とりあえず食堂行きましょう。パーティ会場になってるから他の娘から聞きだすわよ」
金剛「Nice Idea! それで行きまショウ!」
食堂。150を超える艦娘の腹を満たすに十分な料理が厨房から続々と搬出されていく。ケーキとか七面鳥とかカツとか。
ビスマルク「さて、皆料理に夢中になってるけど」
金剛「あの一角が騒がしいデース! ……あの白い帽子、テートクに違いありまセン!」
騒ぎの方へと駆け出す金剛。
ビスマルク「あれは絶対違うと思うわ……。まぁ、彼女は着任以来まともに挨拶する機会なかったし、これもいい機会ね」
瑞鶴「七面鳥、七面鳥がぁぁぁ!!」
翔鶴「瑞鶴、落ち着いて」
暴れる瑞鶴を羽交い絞めにして押さえつける翔鶴。
??「落ち着くんだ、別にアレはお前をとって食ったりはしない」
飛龍「いや、それはちょっと的外れじゃないかな」(モ゙ッモ゙ッ
説得する白帽に料理を食べながら突っ込みを入れる飛龍。
金剛「Hey!! テートク! 助けに来たネー!」
??「ん? 提督?」
白帽の者が振り返る。
金剛「……What?」
そこにいるのは提督ではなく、
ビスマルク「あなたがこの間着任したグラーフ・ツェッペリンね」
ツェッペリン「ああ、ビスマルクか。貴女もここに来ていたのだな。そしてそちらが……」
ビスマルク「コンゴウよ。私のライバルといったところかしらね」
金剛「」
ツェッペリン「魂が抜けてるようだが」
ビスマルク「ほら、しっかりなさい。Admiralと勘違いしたからってそんなにショック受けること無いじゃない」
金剛「……Oh,そうでした! よろしくお願いしマース!」
ツェッペリン「……でAdmiralを探している、と」
金剛「Yes!!」
蒼龍「いや、こっちには来てないねぇ」
雲龍「それにしても、どうしましょう。瑞鶴さんの乱心で彼女を慕ってた葛城が放心してるし……」
葛城「」
金剛「彼女のTraumaは思った以上に深刻デース……」
それを聞いてビスマルクは七面鳥からモモ肉をちぎり取り、それを瑞鶴に突きつける。
瑞鶴「やだ! その料理は食べない! 私絶対食べない! いらないってば! 翔鶴姉助けムグッ」
電光石火、疾風怒濤。瑞鶴が大口を開けたその瞬間にモモ肉が突っ込まれる。
瑞鶴「う、むぐっ……」
ビスマルク「七面鳥に何の恨みがあるのか知らないけど、七面鳥を喰らってやるぐらいの心意気でいきなさい。それに、美味しいでしょう?」
瑞鶴「うう、おいひぃ……」
体から力が抜けたかのようにくず折れる瑞鶴。翔鶴が支えていなかったらそのまま倒れていたであろう。
金剛「Good Job!! Nice機転デシタ!」
ビスマルク「もっと褒めてもいいのよ?」
金剛「それよりテートク探しの続きと行きまショウ!」
ビスマルク「えっ、ちょ、待ってよ!?」
あっという間にいなくなる二人。
天城「……瑞鶴さんが恨みがあるのは七面鳥を撃つほうだったと思うのですが」
赤城「美味しければ気にならなくなりますよ。ねえ加賀さ、ん……?」
加賀「私の七面鳥……」
幽鬼の如き表情を浮かべながらゆらりと立つ加賀。
正規空母たちのその後については、金剛とビスマルクの知るところではなかった。
ビスマルク「次は誰に訊こうかしら?」
金剛「駆逐艦デース! 人数いマスし、年頃のGirlは噂話にも敏いデース!」
ビスマルク「とりあえず行ってみましょう」
金剛「手分けして聞き込みまショウ」
ビスマルク「もしAdmiralの居所が掴めた場合は……」
金剛「早い者勝ち、デース……!」
こうして、ビスマルクと金剛の聞き込み合戦が始まった。
「司令官? プレゼントは渡したが……その後は知らないな……」
「しれーかんからお菓子もらっちゃったぁ」
「しれぇならプレゼント配りに来てたけど……来る前よりなんか手持ちのプレゼント増えてました!」
「提督さんなら時雨探しにいったっぽい!」
金剛「Yes! 有力情報Getネ!」
ビスマルク「聞こえたわよ! 待ちなさい!」
金剛「ふふん、先手必勝デース!」
時雨「金剛さんにビスマルクさん、何してるんだい?」
金剛「もちろん時雨を探しに……」
ビスマルク「って本人が目の前にいるじゃない!」
時雨「僕に、何か用かな?」
金剛「かくかく」
ビスマルク「しかじか」
時雨「なるほど。提督なら夜風に当たりに行くって言ってたから外じゃないかな」
金剛「Thank you, 時雨! いつかお礼するネ!」
ビスマルク「Gut!! さぁもう一息よ!」
時雨「忙しないなぁ」
鎮守府、埠頭。潮風が心地よい場所。そこに一人佇む影が。
金剛「見つけたネー! Lock On!! Burning......Loooooooooo!?」
助走からの連続前方宙返りでその人影に飛びつく直前、不自然なまでに軌道を変え、受身を取りながら着地した。
ビスマルク「何アレって……あなたは!」
ローマ「Buone feste. 残念だけど私は提督じゃないわよ」
金剛「そうデース! テートク見ませんでした!?」
ローマ「執務室に戻ったんじゃない? 姉さんとプレゼント交換した後、『そろそろ執務室に戻るか』って言ってたし」
金剛「Shit!! 北上と一緒に待つべきデシタ!」
ビスマルク「完全に空回りじゃない!」
ローマ「貴女たちの居所についても訊かれたわね。知らないって言ったら『まぁ執務室にいれば来るだろ』って感じで」
ビスマルク「あぁ、もう! 行くわよ、金ご……」
呼びかけた先には誰もいない。
ローマ「金剛なら貴女が罵ってる間にとっくに駆け出したわ」
ビスマルク「それを先に言ってよ!」
鎮守府、執務室。
提督「駆逐艦の奴ら、バレンタインかなんかと混同してないか? 俺が渡す側のはずだろ。何であいつらからもらってるんだよ俺……」
ぶつぶつ言いながらもらったプレゼントを整理する提督。
外から物凄い足音がしたかと思うとドアが蝶番の可動限界を超えて開いた。
金剛「テートク!」
ビスマルク「Admiral!!」
提督「全く、騒がしいな、お前ら。もうちょっと自重しろよ」
金剛「すごく探しましたヨ!」
ビスマルク「私もよ!」
提督「というかお前らなら絶対欲しがると思ったから駆逐たちにプレゼント渡すついでに探してたんだが。ほらよ」
二人に渡されるプレゼント箱。
金剛「Openしても良いデスカ?」
提督「構わんぞ」
金剛「WoW! 改修済みの35.6cm砲ネ!」
ビスマルク「こっちは五連装酸素魚雷! それも改修済み! Danke!!」
提督「いいだろ?」
ビスマルク「そういえばイタリアとプレゼント交換したって聞いたけど何を貰ったのかしら?」
提督「何って……キスだよキス。頬にだけど」
金剛「」(ピクッ
ビスマルク「」(ピクッ
金剛「テートク、ちょっと用事を思い出しマシタ。これで失礼しマース」
ビスマルク「同じく、用事を思い出したわ」
提督が何か呼びかける前に全速力で退室する二人。
提督「あっ」
この後高速戦艦2vs2時間無制限なのですマッチが行われ、艦娘達を大いに楽しませたがそれはまた別の話。
というわけでこの話はコレでおしまい。
別スレで連載してるとことは別世界線です。
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